(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079494
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】原料ガス供給方法および原料ガス供給機構、ならびに成膜システム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20230601BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192993
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】五味 知之
(72)【発明者】
【氏名】諸井 政幸
(72)【発明者】
【氏名】古屋 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕一
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA12
4K030AA16
4K030BA01
4K030EA01
4K030EA06
4K030FA10
4K030KA39
4K030KA41
4K030KA43
4M104BB04
4M104DD43
4M104DD44
(57)【要約】
【課題】原料容器内に収容された成膜原料を加熱して気化された原料ガスを供給する際に、原料容器内の成膜原料の劣化を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】成膜原料を貯留し封入ガスが封入された原料容器を加熱し、成膜原料を気化させることにより生成された原料ガスを、キャリアガスにより配管を介して処理部に供給する原料ガス供給方法は、原料容器内の封入ガスを、原料ガスを劣化させない置換ガスに置換する工程と、圧力計により前記配管内の圧力を測定して、置換ガスによる置換の判定を行う工程と、置換ガスによる置換が行われたと判定された後、原料容器を加熱し、原料ガスを供給する工程とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜原料を貯留し封入ガスが封入された原料容器を加熱し、前記成膜原料を気化させることにより生成された原料ガスを、キャリアガスにより配管を介して処理部に供給する原料ガス供給方法であって、
前記原料容器内の前記封入ガスを、前記原料ガスを劣化させない置換ガスに置換する工程と、
圧力計により前記配管内の圧力を測定して、前記置換ガスによる置換の判定を行う工程と、
前記置換ガスによる置換が行われたと判定された後、前記原料容器を加熱し、前記原料ガスを供給する工程と、
を有する、原料ガス供給方法。
【請求項2】
前記キャリアガスとして前記置換ガスを供給する、請求項1に記載の原料ガス供給方法。
【請求項3】
前記置換ガスによる置換の判定は、前記圧力計により前記配管の圧力を測定して、前記配管の前記原料容器の近傍に設けられたバルブの異常判定をすることにより行う、請求項1または請求項2に記載の原料ガス供給方法。
【請求項4】
前記バルブの異常判定は、前記バルブに開指令が与えられた際に前記配管内の圧力が設定値より低い場合に異常と判定する、請求項3に記載の原料ガス供給方法。
【請求項5】
前記封入ガスを、前記原料ガスを劣化させない置換ガスに置換する工程は、前記原料容器から前記封入ガスを排出することと、前記原料容器内に残存する前記封入ガスを前記置換ガスでパージ置換することとにより行い、前記パージ置換することは前記バルブの異常判定の際に行う、請求項3または請求項4に記載の原料ガス供給方法。
【請求項6】
前記配管には排気側である前記処理部側に排気側バルブが設けられ、前記排気側バルブに開指令が与えられた際に、前記圧力計の圧力が設定値より高い場合に前記下流側バルブの異常と判定する、請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の原料ガス供給方法。
【請求項7】
前記置換ガスによる置換の判定は、置換ガスの供給不足または配管のリークにより、前記圧力計による圧力が設定値より低くなった場合に置換に失敗したとする、請求項1または請求項2に記載の原料ガス供給方法。
【請求項8】
前記成膜原料はルテニウム原料であり、前記封入ガスはN2ガスであり、前記置換ガスはCOガスである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の原料ガス供給方法。
【請求項9】
前記ルテニウム原料はルテニウムカルボニルである、請求項8に記載の原料ガス供給方法。
【請求項10】
前記置換ガスに置換する工程が終了していない場合、前記原料容器を加熱できないようにインターロックをかける、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の原料ガス供給方法。
【請求項11】
前記置換の判定を行う工程により前記置換ガスによる置換が行われたと判定された際に前記インターロックを解除する、請求項10に記載の原料ガス供給方法。
【請求項12】
成膜原料を気化させることにより生成された原料ガスを、キャリアガスにより処理部に供給する原料ガス供給機構であって、
成膜原料を貯留し封入ガスが封入された原料容器と、
前記原料容器を加熱し、前記成膜原料を気化させる加熱機構と、
前記原料容器内に前記キャリアガスとして前記原料ガスを劣化させない置換ガスを供給する置換ガス供給源と、
前記置換ガス供給源と前記原料容器との間、および前記原料容器から前記処理部との間に設けられた配管と、
前記配管の前記原料容器近傍に設けられたバルブと、
前記配管に設けられた圧力計と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記原料容器内の前記封入ガスを前記置換ガスに置換する工程と、
前記置換する工程において前記バルブに開指令を与え、その際に、前記圧力計により前記配管の圧力を測定いて、前記バルブの異常判定を行い、その結果から前記置換ガスによる置換の判定を行う工程と、
前記置換ガスによる置換が行われたと判定された後、前記加熱機構により前記原料容器を加熱し、前記原料ガスを供給する工程と、
を実行する、原料ガス供給機構。
【請求項13】
前記制御部は、前記バルブに開指令が与えられた際に前記配管内の圧力が設定値より低い場合に異常と判定する、請求項12に記載の原料ガス供給機構。
【請求項14】
前記配管の排気側である前記処理部側に設けられた排気側バルブをさらに有し、前記制御部は、前記排気側バルブに開指令を与えた際に、前記圧力計の圧力が設定値より高い場合に前記下流側バルブの異常と判定する、請求項12または請求項13に記載の原料ガス供給機構。
【請求項15】
前記成膜原料はルテニウム原料であり、前記封入ガスはN2ガスであり、前記置換ガスはCOガスである、請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の原料ガス供給機構。
【請求項16】
前記ルテニウム原料はルテニウムカルボニルである、請求項15に記載の原料ガス供給機構。
【請求項17】
前記制御部はインターロック部を有し、前記インターロック部は、前記置換ガスに置換する工程が終了していない場合、前記原料容器を加熱できないようにインターロックをかける、請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の原料ガス供給機構。
【請求項18】
前記置換の判定を行う工程により前記置換ガスによる置換が行われたと判定された際に前記インターロック部は前記インターロックを解除する、請求項16に記載の原料ガス供給機構。
【請求項19】
基板に対して成膜処理を行う処理部と、
成膜原料を気化させることにより生成された原料ガスを、キャリアガスにより処理部に供給する原料ガス供給機構と、を有する成膜システムであって、
前記原料ガス供給機構は、
成膜原料を貯留し封入ガスが封入された原料容器と、
前記原料容器を加熱し、前記成膜原料を気化させる加熱機構と、
前記原料容器内に前記キャリアガスとして前記原料ガスを劣化させない置換ガスを供給する置換ガス供給源と、
前記置換ガス供給源と前記原料容器との間、および前記原料容器から前記処理部との間に設けられた配管と、
前記配管の前記原料容器近傍に設けられたバルブと、
前記配管に設けられた圧力計と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記原料容器内の前記封入ガスを前記置換ガスに置換する工程と、
前記置換する工程において前記バルブに開指令を与え、その際に、前記圧力計により前記配管の圧力を測定して、前記バルブの異常判定を行い、その結果から前記置換ガスによる置換の判定を行う工程と、
前記置換ガスによる置換が行われたと判定された後、前記加熱機構により前記原料容器を加熱し、前記原料ガスを供給する工程と、
を実行させる、成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料ガス供給方法および原料ガス供給機構、ならびに成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルテニウム原料であるルテニウムカルボニルを収容した容器を加熱し、昇華したルテニウムカルボニルガスを、キャリアガスであるCOガスにより処理容器に搬送し、処理容器内の基板にCVDによりルテニウム膜を成膜する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、原料容器内に収容された成膜原料を加熱して気化された原料ガスを供給する際に、原料容器内の成膜原料の劣化を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る原料ガス供給方法は、成膜原料を貯留し封入ガスが封入された原料容器を加熱し、前記成膜原料を気化させることにより生成された原料ガスを、キャリアガスにより配管を介して処理部に供給する原料ガス供給方法であって、前記原料容器内の前記封入ガスを、前記原料ガスを劣化させない置換ガスに置換する工程と、圧力計により前記配管内の圧力を測定して、前記置換ガスによる置換の判定を行う工程と、前記置換ガスによる置換が行われたと判定された後、前記原料容器を加熱し、前記原料ガスを供給する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、原料容器内に収容された成膜原料を加熱して気化された原料ガスを供給する際に、原料容器内の成膜原料の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る原料ガス供給機構を備えた成膜システムを示す概略図である。
【
図2】
図1に示す成膜システムの原料供給機構を制御する制御部を示すブロック図である。
【
図3】原料ガス供給機構における原料ガス供給方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図3に示す原料ガス供給方法のステップST2におけるN
2ガス排気シーケンスを説明するための図である。
【
図5】
図3に示す原料ガス供給方法のステップST2におけるバルブの異常検知シーケンスを説明するための図である。
【
図6】排気側である処理部側に設けられた排気側バルブの異常検知シーケンスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
【0009】
<成膜システム>
図1は、一実施形態に係る原料ガス供給機構を備えた成膜システムを示す概略図である。
【0010】
この成膜システム100は、基板にCVDによりルテニウム膜を成膜する処理部200と、処理部200にルテニウム原料ガスを供給する原料ガス供給機構300とを有する。
【0011】
処理部200は、処理容器201と、載置台202と、排気装置203と、シャワーヘッド204と、加熱機構205とを有する。
【0012】
処理容器201は内部が真空雰囲気に保持可能となっており、基板Wに対してルテニウム膜の成膜処理を行うためのものである。処理容器201の側面には基板Wを搬入・搬出するための搬入出口211が形成され、搬入出口211はゲートバルブ212で開閉される。また、処理容器201の下部には排気口213が設けられている。
【0013】
載置台202は、処理容器201内に水平に設けられ、その上に基板Wが載置される。載置台202は、処理容器201の底部から延びる支持部材215により支持されている。
【0014】
排気装置203は、真空ポンプや圧力制御バルブを含み、排気口213に接続された排気配管214を介して処理容器201内を真空排気する。
【0015】
シャワーヘッド204は、処理容器201の上部に載置台202と対向するように設けられ、ルテニウム原料ガスを処理容器201内にシャワー状に導入するためのものである。シャワーヘッド204の内部にはガス拡散空間216が形成されており、シャワーヘッド204の底面にはガス拡散空間216に連通した多数のガス吐出孔217が形成されている。
【0016】
加熱機構205は、載置台202の内部に設けられた抵抗加熱ヒータとして構成され、ヒータ電源(図示せず)から給電されることにより、載置台202上の基板Wを所望の温度に加熱して、CVD成膜が行われるようにする。ヒータ電源の出力はヒータコントローラ(図示せず)により制御される。
【0017】
原料ガス供給機構300は、低蒸気圧原料である固体状のルテニウム原料を昇華させ、生成された原料ガスをキャリアガスにより処理部200へ供給するものである。原料ガス供給機構300は、原料容器301と、加熱機構302と、COガス供給源303と、配管群304と、バルブ群305と、圧力計306と、制御部307とを有する。
【0018】
原料容器301は、着脱可能となっており、固体状のルテニウム原料311を収容している。ルテニウム原料は、典型的にはルテニウムカルボニル(Ru3(CO)12)である。加熱機構302は原料容器301の周囲に設けられ、原料容器301内のルテニウム原料311を80℃程度に加熱し、昇華させる。COガス供給源303は、キャリアガスおよび置換ガスとしてのCOガスを供給するものである。使用前の原料容器301内にはN2ガスが封入されており、後述するようにN2ガスが封入されたまま加熱すると、ルテニウム原料が熱分解により劣化してしまう。このため、COガスを原料容器301内のN2ガスを置換する置換ガスとして機能させる。
【0019】
配管群304は、第1配管321と、第2配管322と、第3配管323と、第4配管324とを有する。第1配管321は、COガス供給源303から原料容器301に至り、キャリアガスであるCOガスを原料容器301に供給するためのものである。第2配管322は、原料容器301から処理部200のシャワーヘッド204に至り、原料容器301内で昇華したルテニウム原料ガスをキャリアガスであるCOガスとともに処理容器201へ搬送するためのものである。第3配管323は、第1配管321と原料ガス供給配管322との間に設けられ、COガスを第1配管321から原料容器301を通らずに第2配管322へバイパスさせるバイパス配管として機能する。第4配管324は、第2配管322から分岐して、処理部200の排気配管214に至り、ルテニウム原料ガスのプリフローを行うためのものである。
【0020】
第1配管321には、流量制御器としてマスフローコントローラ(MFC)325が設けられている。また、第1配管321の原料容器301近傍部分と並列に切換配管321aが設けられている。切換配管321aは、第1配管321の原料容器301近傍部分から分岐した後、再度第1配管321に合流するように構成されている。切換配管321aは第1配管321よりもコンダクタンスが小さく構成されている。
【0021】
バルブ群305は、第1配管321に設けられたバルブ331,332,333、切換配管321aに設けられたバルブ334、第2配管322に設けられたバルブ341,342、第3配管323に設けられたバルブ335、第4配管324に設けられたバルブ343を有する。バルブ331および332は、第1配管321のマスフローコントローラ(MFC)325の前後に設けられている。バルブ333は第1配管321における切換配管321aの分岐部と合流部の間に設けられ、バルブ334は切換配管321aに設けられている。バルブ341は、第2配管322の原料容器301近傍部分に設けられている。バルブ342は、第2配管322の処理部200側における第4配管324分岐部よりも下流側部分に設けられている。バルブ343は、第4配管324の分岐部近傍に設けられている。バルブ群305のうち、バルブ333、334、335、341は、原料容器近傍バルブであり、バルブ342、343は排気側バルブである。
【0022】
圧力計306は、第2配管322に設けられ、第2配管322の圧力を測定する。圧力計306は例えばキャパシタンスマノメータで構成される。圧力計306により第2配管322の圧力を測定することにより、原料容器301内のCOガスによる置換の判定を行う。
【0023】
制御部307は、原料ガス供給機構300の各構成部の動作制御を行うものであり、原料容器301内に充填されているN
2ガスをCOガスに置換するシーケンスの制御、バルブの異常検知、原料ガスの供給制御等を行うものである。具体的には、
図2に示すように、制御部307は、バルブ制御部351と、圧力検出信号取得部352と、バルブ異常判定部353と、加熱制御部354と、インターロック部355と、流量制御信号出力部356と、処理制御部357と、記憶部358と、操作部359とを有している。
【0024】
バルブ制御部351は各バルブに開または閉の指令を与える。圧力検出信号取得部352は、圧力計306からの圧力検出信号を取得する。バルブ異常判定部353は、圧力検出信号取得部352で取得した信号に基づいて各バルブの異常の有無を判定する。加熱制御部354は、加熱機構302による原料容器301の加熱を制御する。インターロック部355は、原料容器301内に充填されているN2ガスをCOガスでパージ置換するシーケンスが終了していない場合、原料容器301が加熱できないようにインターロックをかける。流量制御信号出力部356は、マスフローコントローラ(MFC)の流量設定値を制御する。処理制御部357は、原料容器301内のN2ガスをCOガスで置換するシーケンス、バルブ異常検知シーケンス、成膜処理の際のガス供給等を制御する。記憶部358は、制御のためのプロセスパラメータや、ガス置換シーケンス、バルブ異常検知シーケンス、成膜処理の際のガス供給等を制御するための処理レシピを記憶する。操作部359は、制御に必要なパラメータの設定等を行う。
【0025】
原料ガス供給機構300は、他に、パージガスであるN2ガスを供給するN2ガス供給源361と、N2ガス供給配管362と、N2ガス供給配管362に設けられたバルブ363および364を有している。N2ガス供給配管362は第1配管321のバルブ331とマスフローコントローラ325の間、およびバルブ332の下流側に接続されている。原料容器301を交換する際に、COガスの供給を停止し、N2ガス供給源361からN2ガスを供給して配管内や原料容器301内をパージする。
【0026】
<原料ガス供給方法>
次に、原料ガス供給方法について説明する。
図3は、原料ガス供給機構300における原料ガス供給方法を説明するためのフローチャートである。最初に、N
2ガスが充填された原料容器301を装着する(ステップST1)。次に、原料容器301内のN
2ガスをCOガスに置換する(ステップST2)。ステップST2を行っている間に、圧力計306の圧力を測定することにより、COガスによる置換の判定を行う(ステップST3)。ステップST3によりCOガスによる置換が行われたと判定された後、加熱機構302により原料容器301を加熱し、原料ガスを処理部200へ供給する(ステップST4)。ステップST4において処理部200へ原料ガスが供給されることにより、基板W上へのルテニウム膜の成膜が行われる。
【0027】
ルテニウム膜を成膜する成膜システム100においては、原料容器301は着脱可能に設けられており、原料の消費にともなって定期的に交換される。ステップST1でN2ガスが充填された新しい原料容器301を装着し、そのまま成膜のための加熱を行うと、N2ガスによりルテニウム原料が変質して使用できなくなる。このため、ステップST2で原料容器301内のN2ガスをCOガスに置換する。ステップST2はバルブを操作することにより行われる。
【0028】
ステップST2は、例えば、最初に原料容器301内のN2ガスを排出するN2ガス排出シーケンスを行い、その後、原料容器301内に残存するN2ガスをCOガスによりパージして置換するパージ置換を行うことにより実施される。そして、本例ではCOガスによるパージ置換を行っている間に、ステップST3の圧力計306の圧力を測定することによりCOガスによる置換の判定が行われる。
【0029】
原料容器301には、原料容器近傍バルブとしてバルブ333、334、335、341が接続され、原料容器301を交換する際には、これらバルブのバルブ駆動用エアチューブが取り外され、新しく原料容器301を装着した際に駆動用エアチューブが取り付けられる。したがって、ステップST2において、原料容器301内のN2ガスをCOガスに置換する際には、エアチューブの接続不良が生じやすく、それにともなうバルブの動作不良により、COガスによる原料容器301内の置換が失敗することがある。また、バルブ自体の動作不良やCOガスの供給不足、さらにはガス経路のリーク等によってもCOガスによる原料容器301内の置換が失敗する。このようにCOガスによる置換が失敗すると、結局、原料容器301内のN2ガスがCOガスに置換されず、ガス供給時にルテニウム原料の変質が生じてしまう。
【0030】
バルブの動作不良、COガスの供給不足、ガス経路のリークが生じると、配管内の圧力が上昇しないことから、本実施形態では、圧力計306で配管の圧力を測定するという手法で、原料容器301がCOガスにより置換されているかどうかを判定する。このような手法は、配管の圧力を測定するだけでよいので、バルブにセンサを追加するような場合に比べて簡易である。
【0031】
以下、ステップST2およびステップST3の具体例について説明する。
ステップST2では、最初に、
図4に示すように、原料容器301内のN
2ガスを排出するN
2ガス排気シーケンスを行う。なお、
図4において各バルブについては、閉じている状態を黒塗りで示し、開いている状態を白抜きで示している(以下の
図5、
図6も同様)。N
2ガス排気シーケンスにおいては、まず、全てのバルブを閉じた状態から、
図4(a)のようにコンダクタンスの小さい切換配管321aのバルブ334を開く動作と、
図4(b)のようにバルブ334を閉じてバルブ335およびバルブ343を開く動作を複数回(例えば100回)繰り返すスロー排気を行う。次に、全てのバルブを閉じた状態から、
図4(c)のようにバルブ333を開く動作と、
図4(d)のようにバルブ333を閉じてバルブ335およびバルブ343を開く動作を複数回(例えば50回)繰り返すファスト排気を行う。これにより、原料容器301内のN
2ガスがほぼ排出される。
【0032】
次に、ステップST2の残部として、バルブを操作して原料容器301や配管にわずかに残存しているN2ガスをCOガスにより押し出すパージ置換を行い、これと同時に、ステップST3の圧力計306の測定値により原料容器301がCOガスにより置換されているかどうかの判定を行う。
【0033】
COガスによるパージ置換とCOガスにより置換されたか否かの判定は、上述のN
2ガス排出シーケンスが終了後、例えば、
図5に示すバルブ異常検知シーケンスを実行することにより行うことができる。このバルブ異常検知シーケンスは、圧力計306の測定値により原料容器301の周囲のバルブについて異常判定を行い、その過程で、原料容器301等に残存しているN
2ガスをCOガスでパージ置換する。
【0034】
上述したように、例えば駆動用エアチューブに接続不良が生じると制御部307からバルブの開指令があってもバルブが開かずCOガスへの置換が行われない。このため、本例では、ステップST3のCOガスによる置換の判定の典型例として、バルブの異常検知シーケンスを実行し、原料容器301周囲のバルブの開閉異常がないと判定された際に、COガスによる置換が行われたと判定する。
【0035】
バルブの異常検知シーケンスは、
図5に示すように行われる。まず、全てのバルブを閉じた状態から、バルブ331を開き、マスフローコントローラ(MFC)325により流量制御し、さらに、バルブ332、バルブ334、バルブ341、バルブ343を順次開いた
図5(a)に示す状態とする。その状態で、圧力計306により第2配管322の圧力を測定する。このとき、エアチューブの接続不良等によりバルブ334、341が開かない場合は、ガスが流れずに配管圧力が上昇しない。このため、圧力計306により測定された圧力が設定値より低ければ、バルブ異常判定部353がこれらのバルブの開閉異常と判定する。逆に設定値以上であればバルブは正常と判定する。このときの設定値としては、例えば、0.04Torrが用いられる。
【0036】
次に、バルブ334を閉じバルブ333を開いて
図5(b)に示すプリフロー状態とし、その状態で、圧力計306により第2配管322の圧力を測定する。このときも同様に、測定された圧力が設定値より低ければ、バルブ異常判定部353がバルブ333の開閉異常と判定し、逆に設定値以上であればバルブ333は正常と判定する。正常であればプリフローが正常に行われ、原料容器301等に残存するN
2ガスがCOガスで押し出され、原料容器301内等がCOガスに置換される。
【0037】
次に、バルブ333を閉じ、第3配管323のバルブ335を開いて
図5(c)に示すプリバイパス状態とし、その状態で、圧力計306により第2配管322の圧力を測定する。このときも同様に、測定された圧力が設定値より低ければ、バルブ異常判定部353がバルブ335の異常と判定し、逆に設定値以上であればバルブ335は正常と判定する。
【0038】
バルブの異常検知シーケンスにおいて、バルブ開閉状態の異常がなく、原料容器301内がCOガスへ置換されたと判定された場合には、ステップST4が実行される。すなわち、加熱機構302により原料容器301を加熱してルテニウム原料を気化(昇華)させ、原料ガスを処理部200へ供給する。これにより、処理部200の処理容器201内に配置された基板Wに対してルテニウム膜の成膜が行われる。
【0039】
このとき、制御部307のインターロック部355が、原料容器301内に充填されているN2ガスをCOガスで置換するシーケンスが終了するまでの間、原料容器301が加熱できないようにインターロックをかけることが好ましい。この場合には、バルブ異常判定によりバルブ異常なしと判定された際に、COガス置換完了のフラグを立て、インターロックを解除し、原料容器301の加熱を可能とする。これにより、COガスによる置換が確実に完了したことを確認した後に加熱を行うことができ、ルテニウム原料の変質をより確実に防止することができる。フラグは記憶部358に記憶される。処理部200の処理容器201内が大気圧になった場合は、フラグが解除され、インターロック部355はインターロックを再度かけなおす。これは、処理容器201内が大気圧になった場合、原料容器301の交換を行う可能性があり、原料容器301内にN2ガスが封入されているリスクがあるからである。
【0040】
圧力計306を用いたバルブの異常検知シーケンスは、原料容器301周囲のバルブ333、334、335、341の異常判定を行って、COガスへの置換の完了を確認する場合のみならず、排気側である処理部側に設けられた排気側バルブであるバルブ342およびバルブ343の異常検知にも適用可能である。
【0041】
その際の異常検知シーケンスの具体例を
図6に示す。まず、バルブ343の異常検知を行う。全てのバルブを閉じた状態から、
図6(a)に示すように、バルブ331を開き、マスフローコントローラ(MFC)325により流量制御し、さらに、バルブ332、335、343を開いて、プリバイパスフロー制御を行う。次いで、
図6(b)に示すように、バルブ331を閉じて配管内が真空引きされるプリバキューム制御を行う。このとき、制御部307からの開指令によってもバルブ343が開かない場合には、圧力計306の検出圧力が低下しないため、バルブ343の異常を検知することができる。具体的には、圧力計306により測定された圧力が設定値より高ければ、バルブ343が異常であると判定する。このときの設定値としては、例えば0.01Torrが用いられる。
【0042】
次に、バルブ342の異常検知を行う。全てのバルブを閉じた状態から、
図6(a)と同様のプリバイパスフロー制御を行う(
図6(c)参照)。次いで、
図6(d)に示すように、バルブ331を閉じ、バルブ342を開き、バルブ343を閉じた状態とし、バキュームフロー制御を行う。このとき、バルブ342が開かない場合には、圧力計306の検出圧力が低下しないため、バルブ342の異常を検知することができる。
【0043】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0044】
例えば、上記実施形態では、成膜原料としてルテニウム原料を用い、原料容器301内に封入される封入ガスとしてN2ガスを用い、置換ガスとしてCOガスを用いた例を示した。しかし、封入ガスが加熱により成膜原料を劣化させるガスであり、置換ガスで置換されることにより成膜原料の劣化が防止される組み合わせであればこれらの組み合わせに限定されない。また、上記実施形態では、置換ガスとしてキャリアガスであるCOガスを用いた例を示したが、置換ガスはキャリアガスと別個であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
100;成膜システム
200;処理部
201;処理容器
202;載置台
300;原料ガス供給機構
301;原料容器
302;加熱機構
303;COガス供給源
304;配管群
305;バルブ群
306;圧力計
307;制御部
311;ルテニウム原料
321;第1配管
322;第2配管
323;第3配管
324;第4配管
331,332,333,334,335,341,342,343;バルブ
W;基板