(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079580
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】酸化物触媒、炭化水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/10 20060101AFI20230601BHJP
C07C 9/06 20060101ALI20230601BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20230601BHJP
C07C 2/84 20060101ALI20230601BHJP
B01J 23/83 20060101ALI20230601BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20230601BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
B01J23/10 Z
C07C9/06
C07C11/04
C07C2/84
B01J23/83 Z
B01J23/63 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193102
(22)【出願日】2021-11-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、戦略的創造研究推進事業(CREST)「ハイスループット計算によるデータ集積とデータ科学による触媒設計」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】大山 順也
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
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4G169BC12B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC35A
4G169BC35B
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4G169BC40B
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4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
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4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CB07
4G169CB46
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4G169DA06
4H006AA02
4H006AC23
4H006AC29
4H006BA06
4H006BA08
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA21
4H006BC10
4H006BE30
4H039CA12
4H039CL11
(57)【要約】
【課題】 メタンの酸化的カップリング反応をより低温で進行できる酸化物触媒の提供。
【解決手段】 酸化物触媒であって、含有元素として少なくともランタンを含み、所定の組み合わせの第1元素、第2元素および第3元素を含むか、所定の組み合わせの第1元素および第2元素を含み、所定の第3元素を含まない、酸化物触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物触媒であって、
含有元素として、少なくともランタンを含み、
以下の要件のいずれかを満たす、酸化物触媒。
要件1:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素として第2族元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてカルシウム、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、もしくは、ハフニウムを含むか、または、前記第3元素を含まない。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件2:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてランタンを除くランタノイド元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてシリコン、ガリウム、イットリウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、または、タングステンを含む。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件3:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素および第3元素として第4族元素から選択される2種の元素を含む。
要件4:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素として亜鉛を含み、第3元素としてガリウム、イットリウム、ジルコニウム、パラジウム、ユーロピウム、または、ハフニウムを含む。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件5:前記酸化物触媒が、第1元素としてランタンを除くランタノイド元素から選択される1種の元素を含み、第2元素として第2族元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてマグネシウム、ストロンチウム、または、ハフニウムを含む。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【請求項2】
前記要件1~5が、それぞれ下記要件1A~5Aである、請求項1に記載の酸化物触媒。
要件1A:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてカルシウム、ストロンチウム、または、バリウムを含み、第3元素としてカルシウム、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、もしくは、ハフニウムを含むか、または、前記第3元素を含まない。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件2A:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてセリウム、ユーロピウム、テルビウム、または、イッテルビウムを含み、第3元素としてシリコン、ガリウム、イットリウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、または、タングステンを含む。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件3A:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてジルコニウム、第3元素としてハフニウムを含む。
要件4A:前記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素として亜鉛を含み、第3元素としてガリウム、イットリウム、ジルコニウム、パラジウム、ユーロピウム、または、ハフニウムを含む。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件5A:前記酸化物触媒が、第1元素としてネオジム、ユーロピウム、または、イッテルビウムを含み、第2元素としてマグネシウム、カルシウム、または、ストロンチウムを含み、第3元素としてマグネシウム、ストロンチウム、または、ハフニウムを含む。ただし、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【請求項3】
前記酸化物触媒が、イットリウムとユーロピウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとユーロピウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとバリウムとを含むか、ネオジムとマグネシウムとハフニウムとを含むか、ユーロピウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとネオジムとを含むか、ネオジムとストロンチウムとハフニウムとを含むか、ユーロピウムとマグネシウムとハフニウムとを含むか、ガリウムとユーロピウムと亜鉛とを含むか、マグネシウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとイッテルビウムとタングステンとを含むか、ガリウムとカルシウムとイッテルビウムとを含むか、もしくは、ガリウムとイッテルビウムとシリコンとを含むか、または、
前記酸化物触媒が、イットリウムとカルシウムとを含み、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、および、ハフニウムのいずれも含まない、請求項1または2に記載の酸化物触媒。
【請求項4】
前記酸化物触媒が、イットリウムとユーロピウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとユーロピウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとバリウムとを含むか、ユーロピウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとネオジムとを含むか、ユーロピウムとマグネシウムとハフニウムとを含むか、マグネシウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとユーロピウムと亜鉛とを含むか、ガリウムとイッテルビウムとタングステンとを含むか、ガリウムとカルシウムとイッテルビウムとを含むか、もしくは、ガリウムとイッテルビウムとシリコンとを含むか、または、
前記酸化物触媒が、イットリウムとカルシウムとを含み、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、および、ハフニウムのいずれも含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化物触媒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化物触媒を用いて、メタンの酸化的カップリングを行い、炭素数が2の炭化水素を生成する工程を含む、炭化水素の製造方法。
【請求項6】
前記工程の温度が、650℃以下である、請求項5に記載の炭化水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物触媒、および、炭化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素数が2の炭化水素(例えば、エタンおよびエチレン)は、様々な化合物の原料となる点で、工業上重要な化合物である。
炭素数が2の炭化水素の製造は、一般的に、ナフサのクラッキングで得る方法が行われている。一方で、資源の有効活用等の点から、メタンの酸化的カップリング(OCM:Oxidative Coupling of Mathane)反応による炭素数が2の炭化水素の製造が検討されている。
【0003】
OCM反応を円滑に進行させる触媒として、例えば、ナトリウムとマンガンとを含み、かつ、シリコン酸化物とタングステン酸化物を含む触媒(Ma/Na2WO4/SiO2触媒)が知られている(非特許文献1)。しかしながら、Ma/Na2WO4/SiO2触媒においては、反応に800℃程度の高温が必要であった。800℃といった高温の反応温度では、反応容器等の材料が制限されるため、好ましくなかった。
一方、OCM反応を低温で進行させる触媒としては、La2O3が有効であることが知られており、非特許文献2では、La2O3に他の元素を1種類ドープして更なる低温化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Catalysis,1998,222-230
【非特許文献2】Catalysis Science & Technology,2021,11,524-530
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工業化の点で、反応器の設計および制御、ならびに、炭素数が2の炭化水素の分解抑制を図るため、OCM反応の反応温度の更なる低温化が望まれている。
本発明者らがOCM反応の反応温度の更なる低温化について検討したところ、上記非特許文献1および2に記載の触媒には、改善の余地があることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、メタンの酸化的カップリング(OCM)反応をより低温で進行できる、酸化物触媒の提供を課題とする。
また、本発明は、酸化物触媒を用いた炭化水素の製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
〔1〕 酸化物触媒であって、
含有元素として、少なくともランタンを含み、
以下の要件のいずれかを満たす、酸化物触媒。
要件1:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素として第2族元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてカルシウム、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、もしくは、ハフニウムを含むか、または、上記第3元素を含まない。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件2:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてランタンを除くランタノイド元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてシリコン、ガリウム、イットリウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、または、タングステンを含む。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件3:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素および第3元素として第4族元素から選択される2種の元素を含む。
要件4:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素として亜鉛を含み、第3元素としてガリウム、イットリウム、ジルコニウム、パラジウム、ユーロピウム、または、ハフニウムを含む。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件5:上記酸化物触媒が、第1元素としてランタンを除くランタノイド元素から選択される1種の元素を含み、第2元素として第2族元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてマグネシウム、ストロンチウム、または、ハフニウムを含む。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
〔2〕 上記要件1~5が、それぞれ下記要件1A~5Aである、〔1〕に記載の酸化物触媒。
要件1A:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてカルシウム、ストロンチウム、または、バリウムを含み、第3元素としてカルシウム、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、もしくは、ハフニウムを含むか、または、上記第3元素を含まない。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件2A:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてセリウム、ユーロピウム、テルビウム、または、イッテルビウムを含み、第3元素としてシリコン、ガリウム、イットリウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、または、タングステンを含む。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件3A:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素としてジルコニウム、第3元素としてハフニウムを含む。
要件4A:上記酸化物触媒が、第1元素としてガリウムまたはイットリウムを含み、第2元素として亜鉛を含み、第3元素としてガリウム、イットリウム、ジルコニウム、パラジウム、ユーロピウム、または、ハフニウムを含む。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
要件5A:上記酸化物触媒が、第1元素としてネオジム、ユーロピウム、または、イッテルビウムを含み、第2元素としてマグネシウム、カルシウム、または、ストロンチウムを含み、第3元素としてマグネシウム、ストロンチウム、または、ハフニウムを含む。ただし、上記第1元素、上記第2元素および上記第3元素はそれぞれ異なる元素である。
〔3〕 上記酸化物触媒が、イットリウムとユーロピウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとユーロピウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとバリウムとを含むか、ネオジムとマグネシウムとハフニウムとを含むか、ユーロピウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとネオジムとを含むか、ネオジムとストロンチウムとハフニウムとを含むか、ユーロピウムとマグネシウムとハフニウムとを含むか、ガリウムとユーロピウムと亜鉛とを含むか、マグネシウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとイッテルビウムとタングステンとを含むか、ガリウムとカルシウムとイッテルビウムとを含むか、もしくは、ガリウムとイッテルビウムとシリコンとを含むか、または、
上記酸化物触媒が、イットリウムとカルシウムとを含み、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、および、ハフニウムのいずれも含まない、〔1〕または〔2〕に記載の酸化物触媒。
〔4〕 上記酸化物触媒が、イットリウムとユーロピウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとユーロピウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとバリウムとを含むか、ユーロピウムとカルシウムとハフニウムとを含むか、イットリウムとカルシウムとネオジムとを含むか、ユーロピウムとマグネシウムとハフニウムとを含むか、マグネシウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとストロンチウムとイッテルビウムとを含むか、ガリウムとユーロピウムと亜鉛とを含むか、ガリウムとイッテルビウムとタングステンとを含むか、ガリウムとカルシウムとイッテルビウムとを含むか、もしくは、ガリウムとイッテルビウムとシリコンとを含むか、または、
上記酸化物触媒が、イットリウムとカルシウムとを含み、ニッケル、ガリウム、イットリウム、バリウム、ネオジム、ユーロピウム、イッテルビウム、および、ハフニウムのいずれも含まない、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の酸化物触媒。
〔5〕 〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の酸化物触媒を用いて、メタンの酸化的カップリングを行い、炭素数が2の炭化水素を生成する工程を含む、炭化水素の製造方法。
〔6〕 上記工程の温度が、700℃以下である、〔5〕に記載の炭化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、OCM反応をより低温で進行できる、酸化物触媒を提供できる。
また、本発明によれば、炭化水素の製造方法も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0011】
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<酸化物触媒>
本発明の酸化物触媒は、含有元素として、少なくともランタン(La)を含み、後述する要件のいずれかを満たす。すなわち、後述する要件に記載される組み合わせの元素を含む。
本発明の酸化物触媒が、より低温でOCM反応を進行できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
OCM反応は、発熱反応である。本発明の酸化物触媒においては、Laと、後述する組み合わせの元素とを含むことで、Laおよび上記元素、または、上記元素同士が協奏的に作用し、単体のLa2O3触媒では反応が開始しにくい、より低温で初期反応が円滑に進行し、その反応熱の作用により継続的な反応を進行させていると考えられる。結果として、本発明の酸化物触媒は、OCM反応をより低温で開始させ、反応を進行できると推測される。
以下、本発明の酸化物触媒を用いてOCM反応を単体のLa2O3触媒と同条件で進行させた場合、単体のLa2O3触媒より低温で進行させることができることを、「低温活性に優れる」ともいう。
以下、本発明の酸化物触媒が満たす要件について説明し、各要件における好ましい態様を説明する。
【0013】
[要件1]
本発明の酸化物触媒の第1態様は、含有元素として、少なくともランタン(La)を含み、以下の要件1を満たす。
要件1:酸化物触媒が、第1元素としてガリウム(Ga)またはイットリウム(Y)を含み、第2元素として第2族元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてカルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、バリウム(Ba)、ネオジム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、もしくは、ハフニウム(Hf)を含むか、または、第3元素を含まない。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
すなわち、酸化物触媒の第1態様は、Laと、上記第1元素、第2元素および第3元素とを含むか、Laと、上記第1元素および第2元素とを含み、第3元素を含まない。なお、酸化物触媒の第1態様は、酸素(O)を含む。
【0014】
また、酸化物触媒の第1態様が満たす上記要件1は、下記要件1Aであることが好ましい。
要件1A:酸化物触媒が、第1元素としてGaまたはYを含み、第2元素としてカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、または、バリウム(Ba)を含み、第3元素としてCa、Ni、Ga、Y、Ba、Nd、Eu、Yb、もしくは、Hfを含むか、または、第3元素を含まない。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0015】
上記第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせとしては、例えば、YとCaとHfとの組み合わせ、YとMgとHfとの組み合わせ、YとCaとEuとの組み合わせ、YとSrとEuとの組み合わせ、YとCaとBaとの組み合わせ、YとMgとBaとの組み合わせ、YとCaとNdとの組み合わせ、YとSrとNdとの組み合わせ、YとMgとNiとの組み合わせ、YとCaとNiとの組み合わせ、YとSrとNiとの組み合わせ、GaとCaとEuとの組み合わせ、GaとSrとEuとの組み合わせ、YとSrとGaとの組み合わせ、YとCaとGaとの組み合わせ、GaとCaとHfとの組み合わせ、GaとSrとHfとの組み合わせ、GaとSrとYbとの組み合わせ、GaとCaとYbとの組み合わせ、および、GaとBaとYbとの組み合わせが挙げられる。
低温活性に優れる点で、YとCaとHfとの組み合わせ、YとCaとEuとの組み合わせ、YとCaとBaとの組み合わせ、YとCaとNdとの組み合わせ、YとCaとNiとの組み合わせ、GaとSrとEuとの組み合わせ、YとSrとGaとの組み合わせ、GaとSrとHfとの組み合わせ、GaとSrとYbとの組み合わせ、GaとCaとYbとの組み合わせ、または、GaとBaとYbとの組み合わせが好ましい。
低温活性により優れる点で、YとCaとHfとの組み合わせ、YとCaとEuとの組み合わせ、YとCaとBaとの組み合わせ、YとCaとNdとの組み合わせ、GaとSrとYbとの組み合わせ、または、GaとCaとYbとの組み合わせがより好ましく、YとCaとHfとの組み合わせ、YとCaとEuとの組み合わせ、YとCaとBaとの組み合わせ、または、YとCaとNdとの組み合わせがさらに好ましい。
上記第1元素と第2元素との組み合わせとしては、YとCaとの組み合わせ、YとSrとの組み合わせ、YとBaとの組み合わせが挙げられ、低温活性の点で、YとCaとの組み合わせが好ましい。
【0016】
本発明の酸化物触媒の第1態様は、上記要件1を満たしていればその性状は特に制限されない。上記性状とは、酸化物触媒のあらゆる状態が含まれ、例えば、酸化物触媒の構成元素比、酸化物触媒の結晶状態、酸化物触媒に含まれる各元素の配置、酸化物触媒の形状および大きさ等が挙げられる。
以下、酸化物触媒の性状について説明する。
【0017】
(酸化物触媒の構成元素比)
本発明の酸化物触媒の第1態様における構成元素比は特に制限されない。
酸化物触媒の第1態様は、La、第1元素、第2元素、第3元素、および、Oを構成元素として含むか、La、第1元素、第2元素、および、Oを構成元素として含み、第3元素を含まない。
【0018】
第3元素を含む場合、第1元素、第2元素、および、第3元素の合計含有量に対する各元素の含有量は、それぞれ、各元素単体として、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、25~50質量%がさらに好ましい。
また、第3元素を含む場合、第1元素、第2元素、および、第3元素の合計含有量は、各元素単体の合計含有量として、酸化物触媒の全質量に対して0.01~50質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~5質量%がさらに好ましく、0.6~3質量%が特に好ましく、0.9~1.5質量%が最も好ましい。
第3元素を含む場合、第1元素、第2元素、および、第3元素の合計含有量は、各元素の酸化物の合計含有量として、酸化物触媒の全質量に対して0.01~65質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.3~6.5質量%がさらに好ましく、0.6~4質量%が特に好ましく、0.9~2質量%が最も好ましい。
【0019】
第3元素を含まない場合、第1元素および第2元素の合計含有量に対する各元素の含有量は、それぞれ、各元素単体として、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、30~70質量%がさらに好ましい。
また、第3元素を含まない場合、第1元素および第2元素の合計含有量は、各元素単体の合計含有量として、酸化物触媒の全質量に対して0.01~50質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.3~5質量%がさらに好ましく、0.6~3質量%が特に好ましく、0.6~1.5質量%が最も好ましい。
第3元素を含まない場合、第1元素および第2元素の合計含有量は、各元素の酸化物の合計含有量として、酸化物触媒の全質量に対して0.01~65質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.3~6.5質量%がさらに好ましく、0.6~4質量%が特に好ましく、0.6~2質量%が最も好ましい。
【0020】
Oの含有量は、酸化物触媒の全質量に対して、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。
Laの含有量は、La単体の含有量として、酸化物触媒の全質量に対して、60~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましく、80~90質量%がさらに好ましい。
【0021】
酸化物触媒の第1態様は、上記構成元素以外の元素を含んでいてもよい。
上記以外の元素としては、例えば、炭素(C)、窒素(N)、フッ素(F)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、および、臭素(Br)等が挙げられるが、これらには特に制限されない。
酸化物触媒の第1態様において、La、第1元素、第2元素、第3元素、および、O(第3元素を含まない場合には、La、第1元素、第2元素、および、O)の合計含有量は、酸化物触媒の全質量に対して、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。合計含有量の上限は、100質量%が挙げられる。
【0022】
(酸化物触媒の結晶状態)
本発明の酸化物触媒の第1態様における結晶状態は特に制限されない。
酸化物触媒の結晶状態は、アモルファス(非結晶)であってもよく、結晶質であってもよい。結晶質である場合の結晶子径は特に制限されず、例えば、0.5~1000nmが挙げられる。
【0023】
(酸化物触媒の元素の配置)
本発明の酸化物触媒の第1態様における元素の配置は特に制限されない。
酸化物触媒において、上記構成元素が均一に混合した複合酸化物であってもよく、各元素の酸化物が、酸化物触媒の一部に偏在していてもよい。
なかでも、第3元素を含む場合、酸化物触媒の表面に、第1元素、第2元素および第3元素の少なくとも1種の元素が存在していることが好ましく、少なくとも2種が存在していることがより好ましく、3種が存在していることがさらに好ましい。
第3元素を含まない場合、酸化物触媒の表面に、第1元素および第2元素の少なくとも1種の元素が存在していることが好ましく、2種が存在していることがより好ましい。
なお、第1元素、第2元素および第3元素の少なくとも1種以上(第3元素を含まない場合は第1元素および第2元素の少なくとも1種以上)が酸化物触媒の表面に存在している場合は、上記元素が酸化物触媒の表面上で一部に偏在していてもよく、酸化物触媒の表面上で均一に分布して存在していてもよい。なかでも、上記元素が酸化物触媒の表面上で均一に分布して存在していることが好ましい。
【0024】
また、上記構成元素の各元素の酸化物が、酸化物触媒の一部(例えば表面)に存在していて、かつ、構成元素の合計含有量が、酸化物触媒の全質量に対して、上記好ましい範囲であることも好ましい。
上記態様の一例として、La2O3を担体として、第1元素、第2元素および第3元素(第3元素を含まない場合は第1元素および第2元素)の酸化物が担持されている態様を挙げることができる。上記各元素の酸化物は、第1元素、第2元素および第3元素(第3元素を含まない場合は第1元素および第2元素)から選択される2種以上の元素を含む複合酸化物であってもよい。また、上記複合酸化物には、Laが含まれていてもよい。
【0025】
(酸化物触媒の形状)
本発明の酸化物触媒の第1態様における酸化物触媒の形状は特に制限されない。
酸化物触媒は、通常、粒子状であり、その粒子の形状は特に制限されない。
酸化物触媒の形状としては、例えば、球状、多面体状(例えば、八面体状、菱形十二面体状)、多角柱形状、および、平板状等が挙げられる。また、上記形状の粒子が凝集してなる凝集体であってもよい。また、酸化物触媒の形状は、気体が通過できるような連通孔を有する構造体を形成していてもよく、例えば、ハニカム状、および、スポンジ状であってもよい。
【0026】
(酸化物触媒の大きさ)
本発明の酸化物粒子触媒の第1態様における酸化物触媒の大きさは特に制限されない。
酸化物触媒の大きさは、例えば、0.5nm~500μmを挙げることができる。
酸化物触媒の大きさは、その大きさに応じて、公知の方法で測定することができる。
上記第1元素、第2元素および第3元素(第3元素を含まない場合は第1元素および第2元素)の単体または酸化物が担持されている態様の場合、その担持された粒子の大きさは、特に制限されないが、例えば、0.2~1000nmを挙げることができる。
【0027】
[要件2]
本発明の酸化物触媒の第2態様は、含有元素として、少なくともランタン(La)を含み、以下の要件2を満たす。
要件2:酸化物触媒が、第1元素としてガリウム(Ga)またはイットリウム(Y)を含み、第2元素としてランタン(La)を除くランタノイド元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてシリコン(Si)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、または、タングステン(W)を含む。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0028】
また、酸化物触媒の第2態様が満たす上記要件2は、下記要件2Aであることが好ましい。
要件2A:酸化物触媒が、第1元素としてGaまたはYを含み、第2元素としてセリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、または、イッテルビウム(Yb)を含み、第3元素としてSi、Ga、Y、Ce、Eu、Tb、Yb、Hf、または、Wを含む。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0029】
上記第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせとしては、例えば、YとCeとHfとの組み合わせ、YとNdとHfとの組み合わせ、YとEuとHfとの組み合わせ、YとEuとWとの組み合わせ、Yとガドリニウム(Gd)とHfとの組み合わせ、GaとTbとSiとの組み合わせ、GaとTbとHfとの組み合わせ、GaとEuとHfとの組み合わせ、YとEuとGaとの組み合わせ、GaとYbとHfとの組み合わせ、GaとEuとTbとの組み合わせ、GaとYbとWとの組み合わせ、GaとEuとYbとの組み合わせ、GaとYbとSiとの組み合わせ、GaとCeとYbとの組み合わせ、GaとCeとHfとの組み合わせ、および、GaとNdとWとの組み合わせが挙げられる。
低温活性に優れる点で、YとEuとHfとの組み合わせ、GaとTbとHfとの組み合わせ、GaとEuとHfとの組み合わせ、YとEuとGaとの組み合わせ、GaとYbとHfとの組み合わせ、GaとEuとTbとの組み合わせ、GaとYbとWとの組み合わせ、GaとEuとYbとの組み合わせ、GaとYbとSiとの組み合わせ、または、GaとCeとYbとの組み合わせが好ましく、GaとYbとWとの組み合わせ、または、GaとYbとSiとの組み合わせがより好ましい。
【0030】
本発明の酸化物触媒の第2態様は、上記要件2を満たしていればその性状は特に制限されない。上記性状とは、酸化物触媒のあらゆる状態が含まれ、例えば、酸化物触媒の構成元素比、酸化物触媒の結晶状態、酸化物触媒に含まれる各元素の配置、酸化物触媒の形状および大きさ等が挙げられる。
以下、酸化物触媒の性状について説明する。
【0031】
(酸化物触媒の構成元素比)
本発明の酸化物触媒の第2態様における構成元素比は特に制限されない。
酸化物触媒の第2態様は、La、第1元素、第2元素、第3元素、および、Oを構成元素として含む。
第2態様における構成元素比の好ましい態様は、第1態様における第3元素を含む場合と同様であるため、説明を省略する。
【0032】
(酸化物触媒の結晶状態)
本発明の酸化物触媒の第2態様における結晶状態は特に制限されない。
第2態様における結晶状態の好ましい態様は、第1態様の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0033】
(酸化物触媒の元素の配置)
本発明の酸化物触媒の第2態様における元素の配置は特に制限されない。
第2態様における元素の配置の好ましい態様は、第1態様における第3元素を含む場合と同様であるため、説明を省略する。
【0034】
(酸化物触媒の形状および大きさ)
本発明の酸化物触媒の第1態様における酸化物触媒の形状および大きさは特に制限されない。
第2態様における酸化物触媒の形状および大きさの好ましい態様は、第1態様の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
[要件3]
本発明の酸化物触媒の第3態様は、含有元素として、少なくともランタン(La)を含み、以下の要件3を満たす。
要件3:酸化物触媒が、第1元素としてガリウム(Ga)またはイットリウム(Y)を含み、第2元素および第3元素として第4族元素から選択される2種の元素を含む。
【0036】
また、酸化物触媒の第3態様が満たす上記要件3は、下記要件3Aであることが好ましい。
要件3A:酸化物触媒が、第1元素としてGaまたはYを含み、第2元素としてジルコニウム(Zr)、第3元素としてハフニウム(Hf)を含む。
【0037】
上記第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせとしては、例えば、Yとチタン(Ti)とZrとの組み合わせ、YとTiとHfとの組み合わせ、YとZrとHfとの組み合わせ、GaとTiとZrとの組み合わせ、GaとTiとHfとの組み合わせ、および、GaとZrとHfとの組み合わせが挙げられる。
低温活性に優れる点で、YとZrとHfとの組み合わせが好ましい。
【0038】
本発明の酸化物触媒の第3態様は、上記要件3を満たしていればその性状は特に制限されない。上記性状とは、酸化物触媒のあらゆる状態が含まれ、例えば、酸化物触媒の構成元素比、酸化物触媒の結晶状態、酸化物触媒に含まれる各元素の配置、酸化物触媒の形状および大きさ等が挙げられる。
酸化物触媒の第3態様の性状の好ましい態様は、第2態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
[要件4]
本発明の酸化物触媒の第4態様は、含有元素として、少なくともランタン(La)を含み、以下の要件4を満たす。
要件4:酸化物触媒が、第1元素としてガリウム(Ga)またはイットリウム(Y)を含み、第2元素として亜鉛(Zn)を含み、第3元素としてガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、ユーロピウム(Eu)、または、ハフニウム(Hf)を含む。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0040】
また、酸化物触媒の第4態様が満たす上記要件4は、下記要件4Aであることが好ましい。
要件4A:酸化物触媒が、第1元素としてGaまたはYを含み、第2元素としてZnを含み、第3元素としてGa、Y、Zr、Pd、Eu、または、Hfを含む。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0041】
上記第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせとしては、YとZnとPdとの組み合わせ、YとZnとZrとの組み合わせ、YとZnとEuとの組み合わせ、YとZnとHfとの組み合わせ、YとZnとGaとの組み合わせ、GaとZnとEuとの組み合わせ、GaとZnとHfとの組み合わせが挙げられる
低温活性に優れる点で、YとZnとPdとの組み合わせ、YとZnとZrとの組み合わせ、YとZnとHfとの組み合わせ、YとZnとGaとの組み合わせ、GaとZnとEuとの組み合わせが好ましく、GaとZnとEuとの組み合わせがより好ましい。
【0042】
本発明の酸化物触媒の第4態様は、上記要件4を満たしていればその性状は特に制限されない。上記性状とは、酸化物触媒のあらゆる状態が含まれ、例えば、酸化物触媒の構成元素比、酸化物触媒の結晶状態、酸化物触媒に含まれる各元素の配置、酸化物触媒の形状および大きさ等が挙げられる。
酸化物触媒の第4態様の性状の好ましい態様は、第2態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
[要件5]
本発明の酸化物触媒の第2態様は、含有元素として、少なくともランタン(La)を含み、以下の要件5を満たす。
要件5:酸化物触媒が、第1元素としてランタン(La)を除くランタノイド元素から選択される1種の元素を含み、第2元素として第2族元素から選択される1種の元素を含み、第3元素としてマグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、または、ハフニウム(Hf)を含む。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0044】
また、酸化物触媒の第5態様が満たす上記要件5は、下記要件5Aであることが好ましい。
要件5A:酸化物触媒が、第1元素としてネオジム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、または、イッテルビウム(Yb)を含み、第2元素としてマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、または、ストロンチウム(Sr)を含み、第3元素としてMg、Sr、または、Hfを含む。ただし、第1元素、第2元素および第3元素はそれぞれ異なる元素である。
【0045】
上記第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせとしては、NdとMgとHfとの組み合わせ、NdとCaとHfとの組み合わせ、EuとCaとHfとの組み合わせ、GdとMgとHfとの組み合わせ、NdとSrとHfとの組み合わせ、EuとMgとHfとの組み合わせ、EuとSrとHfとの組み合わせ、CeとMgとSrとの組み合わせ、NdとMgとSrとの組み合わせ、EuとMgとSrとの組み合わせ、EuとMgとBaとの組み合わせ、YbとMgとSrとの組み合わせ、および、YbとCaとSrとの組み合わせが挙げられる。
低温活性に優れる点で、NdとMgとHfとの組み合わせ、EuとCaとHfとの組み合わせ、NdとSrとHfとの組み合わせ、EuとMgとHfとの組み合わせ、YbとMgとSrとの組み合わせが好ましく、EuとCaとHfとの組み合わせ、EuとMgとHfとの組み合わせがより好ましい。
【0046】
本発明の酸化物触媒の第5態様は、上記要件5を満たしていればその性状は特に制限されない。上記性状とは、酸化物触媒のあらゆる状態が含まれ、例えば、酸化物触媒の構成元素比、酸化物触媒の結晶状態、酸化物触媒に含まれる各元素の配置、酸化物触媒の形状および大きさ等が挙げられる。
酸化物触媒の第5態様の性状の好ましい態様は、第2態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
<酸化物触媒の製造方法>
本発明の酸化物粒子触媒の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
酸化物触媒の製造方法としては、例えば、湿式法および乾式法が挙げられる。
湿式法としては、上記構成元素を含む前駆体溶液に対して、酸化処理および還元処理等を行って触媒前駆体粒子を生成し、酸化処理によって酸化物触媒を得る方法(析出法)が挙げられる。
湿式法としては、所望の粒子径を有する担体と、上記構成元素を含む前駆体溶液とを接触させて前駆体を担体に吸着させ、酸化処理によって酸化物触媒を得る方法(含浸法)も挙げられる。上記担体は、上記構成元素を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、上記構成元素を含んでいることが好ましく、Laを含んでいることがより好ましく、La2O3を含む粒子であることがさらに好ましい。
湿式法における前駆体溶液は、上記構成元素を全て含んでいてもよく、上記構成元素の一部を含んでいてもよい。すなわち、上記析出法および含浸法において、酸化物触媒の製造は、例えば、上記構成元素を全て含む前駆体溶液を用いて1回の上記処理によって製造されてもよく、上記構成元素の一部を含む前駆体溶媒を用いて、例えば元素毎に上記処理を段階的に実施してもよい。
【0048】
上記酸化処理は、上記前駆体粒子または前駆体が酸化されれば特に制限されず、公知の方法で行うことができる。酸化処理としては、例えば、酸素を含む雰囲気下での100~1500℃の温度で焼成する方法、気相中で酸化剤を用いて酸化処理を行う方法、および、溶液中で酸化剤により処理する方法等が挙げられる。酸化処理は、上記方法を組み合わせて実施してもよい。
また、上記酸化処理の前後において、必要に応じて乾燥処理を実施してもよい。乾燥処理の方法は、公知の方法で行うことができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、溶媒置換乾燥、超臨界乾燥、凍結乾燥、および、スプレードライ等が挙げられる。乾燥処理は、上記方法を組み合わせて実施してもよい。
【0049】
乾式法としては、粉末法、CVD(chemical vapor deposition)法、および、PVD(Physical vapor deposition)法が挙げられる。乾式法においては、CVD法またはPVD法によって、担体に対して上記含有元素を含む層または粒子を形成する方法が好ましい。
粉末法としては、公知の方法を用いることができ、上記構成元素を含む固体の前駆体を混合し、焼成処理を行う方法が挙げられる。焼成処理においては、上記酸化処理を同時に実施してもよい。
CVD法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、および、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。
PVD法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、および、イオンプレーティング法が挙げられる。
乾式法においては、上記湿式法で挙げた酸化処理および乾燥処理を実施してもよい。
【0050】
酸化物触媒の製造方法としては、上記方法の中でも、製造が簡便である点で、上記湿式法が好ましく、上記含浸法がより好ましい。
【0051】
<炭化水素の製造方法>
本発明のガスの製造方法は、本発明の酸化物触媒を用いてメタンの酸化的カップリング(OCM)を行い、炭素数が2の炭化水素を生成する工程(反応工程)を含む、炭化水素の製造方法である。
本発明のガスの製造方法は、上記反応工程を含んでいれば特に制限されない。
本発明のガスの製造方法は、上記工程以外に、メタンを含むガスを本発明の酸化物触媒が配置された反応部に供給する供給工程と、反応工程を経て得られた炭素数が2の炭化水素を含むガスから炭素数が2の炭化水素を精製する精製工程とが含まれていてもよい。
以下、本発明のガスの製造方法が含みうる各工程について説明する。
【0052】
[供給工程]
供給工程は、メタンを含むガスを、酸化物触媒が配置された反応部に供給する。
メタンを含むガスは、メタン以外の成分を含んでいてもよく、酸化剤を含むことが好ましい。酸化剤としては、特に制限されないが、酸素が好ましい。
酸化剤が酸素である場合、酸素の含有量に対するメタンの含有量の体積比は、1.5~10.0が好ましく、1.8~8.0がより好ましく、2.0~6.0がさらに好ましい。
メタンおよび酸化剤の合計含有量は、メタンを含むガス全量に対して、50体積%以上が好ましく、70体積%以上がより好ましく、80体積%以上がさらに好ましい。
メタンを含むガスは、後述する反応工程における反応温度以下で予熱を行ってもよい。
【0053】
[反応工程]
反応工程は、本発明の酸化物触媒を用いてOCMを行い、炭素数が2の炭化水素を生成する。
反応工程の温度は、一般に900℃以下であり、850℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、650℃以下が更に好ましく、600℃以下が特に好ましい。下限は、一般的に400℃以上である。本発明の酸化物触媒によれば、例えば600℃以下の低温でも、OCMが進行し、効率的に炭素数が2の炭化水素を製造できる。
酸化剤として酸素を含むガスを供給した場合、炭素数が2の炭化水素として、エタン、および、エチレンが生成し、同時に、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、および、水等が生成する。
反応工程においては、酸化物触媒と、供給されるメタンを含むガスとを接触させることが好ましい。酸化物触媒と上記ガスとの反応は、固定床方式であっても、流動床方式であってもよく、固定床方式が好ましい。
固定床方式の場合、酸化物触媒が配置された反応部の体積に対する供給ガス量の比、すなわちガス空間速度(h-1)は、適宜設定すればよい。また、酸化物触媒が配置された反応部の断面積に対する供給ガス量の比、すなわち線速度(m/s)も、適宜設定すればよい。
【0054】
[精製工程]
精製工程は、反応工程を経て得られた炭素数が2の炭化水素を含むガスから、炭素数が2の炭化水素を精製する。炭素数が2の炭化水素としては、例えば、エタン、エチレンが挙げられる。
精製方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
精製方法としては、例えば、深冷分離法、吸着法、および、吸収法が挙げられ、深冷分離法が好ましい。
【実施例0055】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0056】
<酸化物触媒の調製>
実施例に用いた酸化物触媒、および、比較例に用いた酸化物触媒は、以下の手順で調製した。
酸化物触媒は、共含浸法で第1元素、第2元素および第3元素を含む前駆体をLa2O3粒子に付着させた前駆体粒子を得て、前駆体粒子を焼成することで酸化物触媒を得た。
より具体的には、まず、第1元素、第2元素および第3元素を含むそれぞれの前駆体が含まれる6mLの前駆体水溶液を調製した。各前駆体の含有量は、各元素が重量として3mg含まれるように調整した。各前駆体として用いた試薬は、後段に示す。第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせは、後段の表に示すとおりである。
上記前駆体水溶液に対し、担体としてLa2O3(関東化学社製)1.0gを入れて分散させ、50℃で6時間撹拌した。撹拌処理後、遠心エバポレーター(CVE-3110、東京理化機械社製)で80℃にて減圧乾燥して前駆体粒子を得た。前駆体粒子は、さらに乾燥機(ETTAS ON-300S、アズワン社製)で110℃にて2時間乾燥した。
乾燥した前駆体粒子を解砕し、マッフル炉(KDF 3000plus、デンケン・ハイデンタル社製)で600℃にて3時間、空気雰囲気で焼成し、酸化物触媒を得た。
【0057】
なお、比較例の酸化物触媒は、上記手順に準じて調製した。
具体的には、比較例1に用いた触媒は、第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせを後段の表に示すとおりとし、担体をSiO2(メジアン径:46~50μm、関東化学社製)として調製した。
比較例2に用いた酸化物触媒は、第1元素、第2元素および第3元素を含むそれぞれの前駆体を入れない以外は、上記手順に従って調整した。
【0058】
第1元素、第2元素および第3元素を含む前駆体は、以下に示すものを用いた。
・Na:Na2CO3・10H2O、富士フイルム和光純薬
・Mg:Mg(NO3)2・6H2O、富士フイルム和光純薬
・Si:Si(OC2H5)4、Aldrich
・Ca:Ca(NO3)2・4H2O、富士フイルム和光純薬
・Mn:Mn(NO3)2・4H2O、富士フイルム和光純薬
・Ni:Ni(NO3)2・6H2O、富士フイルム和光純薬
・Zn:Zn(NO3)2・6H2O、富士フイルム和光純薬
・Ga:Ga(NO3)3・nH2O、富士フイルム和光純薬
・Sr:Sr(NO3)2、Alfa Aeser
・Y:Y(NO3)2・6H2O、Aldrich
・Zr:ZrCl2O・8H2O、関東化学
・Pd:Pd(NO3)2、富士フイルム和光純薬
・Ba:Ba(CH3COO)2、富士フイルム和光純薬
・La:La(NO3)3・6H2O、富士フイルム和光純薬
・Ce:Ce(NO3)3・6H2O、富士フイルム和光純薬
・Nd:Nd(NO3)3・6H2O、Aldrich
・Eu:Eu(NO3)3・5H2O、Aldrich
・Tb:Tb(NO3)3・6H2O、関東化学
・Yb:Yb(NO3)3・5H2O、Aldrich
・Hf:HfCl2O・8H2O、Strem Chemicals
・W:5(NH4)2O・12(WO3)・5H2O、関東化学
【0059】
<評価>
実施例および比較例の各酸化物触媒について、以下の手順でOCM反応の活性を評価した。
酸化物触媒のOCM反応の活性は、酸化物触媒を反応管に設置し、温度を調整した酸化物触媒にメタンを含むガスを供給し、排出されたガスの成分を分析することで測定した。
より具体的には、内径4mm(ガス導入側)および内径2mm(ガス出口側)の石英管が接続された反応管を、ガス導入側が上部となるようにした状態で、その接続部にガス導入側からガラスウールを設置し、そのガラスウール上に酸化物触媒50mgを設置し、さらにガラスウールを設置した。上記反応管の内径4mmの部分の長さは235mm、内径2mmの部分の長さは150mmであった。
酸化物触媒を設置した反応管をガス導入側が上部となるように環状炉(ARF-30KC、アサヒ理化製作所製、加熱部は270mm)に固定し、ガス導入側から酸素を20mL/分で供給しながら、触媒温度400℃で前処理を実施した。なお、上記触媒温度は、反応管の接続部付近に設置したR熱電対でモニターし、コントロールユニット(モデルSU、チノー社製)で制御した。
【0060】
前処理後、20mL/分で窒素ガスを供給してパージした後、メタン、酸素および窒素の混合ガスを21mL/分で反応管に供給した。混合ガスは、それぞれ、メタンの流量を12mL/分、酸素の流量を6mL/分、窒素の流量を3mL/分として、反応管に供給される前に混合して供給した(CH4/O2=2.0)。なお、反応管のガス出口側には、凝縮式水トラップ、および、ガスクロマトグラフ(マイクロGC FUSION、INFICON社製)を接続した。
上記混合ガスを反応管に供給し続けた状態で、触媒温度を400℃に17分間保持し、反応管のガス出口側に設置したガスクロマトグラフでガス成分分析を行った。ガス成分分析は、17分の保持開始後、10分後の時点で行った。得られたガス成分分析結果から、400℃における、炭素数が2の炭化水素の収率(C2化合物収率)、および、反応生成物に占める炭素数が2の炭化水素の体積割合(C2化合物選択性)を得た。なお、ガス分析には、Rt-Msieve 5A カラム(0.25mm×10m、キャリアガス:アルゴン、Restek社製)、および、Rt-U-BOND カラム(0.25mm×8m、キャリアガス:ヘリウム、Restek社製)を用いた。
400℃での測定後、5分間で触媒温度を450℃に昇温し、上記温度保持およびガス成分分析を同様に行い、C2化合物収率およびC2化合物選択性を得た。上記昇温およびガス成分分析を、50℃毎に850℃まで実施した。
【0061】
また、上記反応管に供給する混合ガスにおいて、各成分の流量を、それぞれ、メタンの流量を14mL/分、酸素の流量を4mL/分、窒素の流量を3mL/分とした場合(CH4/O2=3.5)、メタンの流量を15mL/分、酸素の流量を3mL/分、窒素の流量を3mL/分とした場合(CH4/O2=5.0)においても、一部の実施例について、同様の評価を実施した。
【0062】
<結果>
各実施例および各比較例の酸化物触媒の450℃または550℃におけるC2化合物収率およびC2化合物選択性の評価結果を表1-1および表1-2に示す。
なお、各元素の「担体に対する含有量」とは、担体に対する、各元素が元素(例えば金属)として存在するときの含有量(質量%)を表す。
なお、実施例4は、上記要件1または要件1Aの第3元素を含まない態様に該当し、第3元素として記載した「La」は、Laの含有量として計算される。
【0063】
【0064】
【0065】
表1-1および表1-2の結果から、実施例と比較例とを対比すると、本発明の酸化物触媒は、450℃におけるC2化合物収率およびC2化合物選択性が優れ、OCM反応をより低温で進行できることが確認された。
実施例1~9、11、20、25~29および31と、他の実施例との比較から、第1元素と第2元素と第3元素との組み合わせYとEuとHfとの組み合わせ、YとCaとHfとの組み合わせ、YとCaとEuとの組み合わせ、YとCaとBaとの組み合わせ、NdとMgとHfとの組み合わせ、EuとCaとHfとの組み合わせ、YとCaとNdとの組み合わせ、NdとSrとHfとの組み合わせ、EuとMgとHfとの組み合わせ、GaとEuとZnとの組み合わせ、MgとSrとYbとの組み合わせ、GaとSrとYbとの組み合わせ、GaとYbとWとの組み合わせ、GaとCaとYbとの組み合わせ、もしくは、GaとYbとSiとの組み合わせであるか、または、第1元素と第2元素との組み合わせが、YとCaとの組み合わせである場合、450℃におけるC2化合物収率およびC2化合物選択性の少なくとも一方がより優れることが確認された。
実施例2、11、20、28および30と他の実施例との比較から、YとCaとHfとの組み合わせ、EuとMgとHfとの組み合わせ、GaとZnとEuとの組み合わせ、GaとYbとWとの組み合わせ、または、GaとYbとSiとの組み合わせである場合、メタン/酸素流量比が大きい場合でも、450℃におけるC2化合物収率がより優れることが確認された。