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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079882
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】積層フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20230601BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230601BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230601BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20230601BHJP
   B29C 48/76 20190101ALI20230601BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B29C48/08
B29C48/21
B29C48/40
B29C48/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193566
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑 勇輝
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK02A
4F100AK02B
4F100AK12B
4F100AK25B
4F100AL01B
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA07A
4F100DE01B
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EH20
4F100GB41
4F100JA05
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JK16
4F100JN18
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F207AB11
4F207AB17
4F207AC01
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR02
4F207AR12
4F207AR15
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KK13
4F207KL41
4F207KL43
4F207KL45
4F207KM14
(57)【要約】
【課題】滑り性が良好でありながら、製造装置の汚染を低減させうる積層フィルム。
【解決手段】樹脂(A)を含む樹脂層(a)と、前記樹脂層(a)の少なくとも一方の主面上に設けられ、粒子及び樹脂(B)を含む樹脂層(b)とを含む積層フィルムであって、TPD-MS法によりヘリウムガス下で測定された、前記樹脂層(b)を25℃から280℃まで速度10℃/minで昇温させたときに前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量が、樹脂層(b)の重量を基準として30重量ppm以下である、積層フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)を含む樹脂層(a)と、前記樹脂層(a)の少なくとも一方の主面上に設けられ、粒子及び樹脂(B)を含む樹脂層(b)とを含む積層フィルムであって、
TPD-MS法によりヘリウムガス下で測定された、前記樹脂層(b)を25℃から280℃まで速度10℃/minで昇温させたときに前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量が、樹脂層(b)の重量を基準として30重量ppm以下である、積層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、
前記製造方法は、
樹脂(A)を加熱して溶融樹脂(A’)を得る工程(1)、
粒子と樹脂(B)とを二軸押出機により混練する工程(2)、
前記粒子と前記樹脂(B)とを加熱して溶融樹脂(B’)を得る工程(3)、及び
前記溶融樹脂(A’)と前記溶融樹脂(B’)とを層状に押し出す工程(4)を含み、
前記工程(2)において、前記二軸押出機からベントを行う、
積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)が、前記粒子と前記樹脂(B)とを前記二軸押出機により混練して前記粒子と前記樹脂(B)との混練物を得ることを含み、前記工程(3)が、前記粒子と前記樹脂(B)との前記混練物を加熱して前記溶融樹脂(B’)を得ることを含み、前記工程(2)の後に前記工程(3)が行われる、請求項2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)と前記工程(3)が同時に、同一の前記二軸押出機により行われる、請求項2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記二軸押出機の内径D及び前記二軸押出機の出口からベント口までの長さLvが、下記式(1)を満たす、請求項2~4のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
2< Lv/D ≦15 (1)
【請求項6】
前記ベントを、1kPaを超え100kPa以下の吸引圧力で行う、請求項2~5のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などに用いられる偏光板は、通常偏光子と、偏光子を保護するための偏光子保護フィルムとを含む。特許文献1、2には、微粒子を含む偏光子保護フィルムが開示されている。特許文献3、4には、紫外線吸収剤を含む樹脂層に、更に表面層が積層された積層フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3499974号公報
【特許文献2】特開2011-011394号公報
【特許文献3】特開2005-181615号公報
【特許文献4】国際公開第2020/085326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂フィルムを、例えば画像表示装置などの光学素子に用いるためには、樹脂フィルムには、擦り傷などの欠陥の少ないことが求められる。樹脂フィルムを形成する樹脂の種類によっては、樹脂フィルムの滑り性が低い場合がある。滑り性が低い樹脂フィルムを巻き回してロールの形態とすると、特に擦り傷などの欠陥が多くなる場合がある。
そのため、本発明者は、樹脂フィルムを形成する樹脂の種類に拘わらず、樹脂フィルムの滑り性を向上させるために、樹脂層に、樹脂及び粒子を含む材料により形成された樹脂層が積層されている積層フィルムを考案した。
【0005】
しかし、かかる積層フィルムを押出成形により製造する工程において、冷却ロールなどの製造装置に汚れが付着して、積層フィルムの品質が低下する場合があった。
【0006】
よって、滑り性が良好でありながら、製造装置の汚染を低減させうる積層フィルム;かかる積層フィルムを製造しうる積層フィルムの製造方法;が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、製造装置に付着した汚れが、積層フィルムに積層された、樹脂及び粒子を含む材料により形成された樹脂層に起因することを見出した。本発明者は、樹脂及び粒子を含む樹脂層を、特定の樹脂層とすることにより、前記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 樹脂(A)を含む樹脂層(a)と、前記樹脂層(a)の少なくとも一方の主面上に設けられ、粒子及び樹脂(B)を含む樹脂層(b)とを含む積層フィルムであって、
TPD-MS法によりヘリウムガス下で測定された、前記樹脂層(b)を25℃から280℃まで速度10℃/minで昇温させたときに前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量が、樹脂層(b)の重量を基準として30重量ppm以下である、積層フィルム。
[2] [1]に記載の積層フィルムの製造方法であって、
前記製造方法は、
樹脂(A)を加熱して溶融樹脂(A’)を得る工程(1)、
粒子と樹脂(B)とを二軸押出機により混練する工程(2)、
前記粒子と前記樹脂(B)とを加熱して溶融樹脂(B’)を得る工程(3)、及び
前記溶融樹脂(A’)と前記溶融樹脂(B’)とを層状に押し出す工程(4)を含み、
前記工程(2)において、前記二軸押出機からベントを行う、
積層フィルムの製造方法。
[3] 前記工程(2)が、前記粒子と前記樹脂(B)とを前記二軸押出機により混練して前記粒子と前記樹脂(B)との混練物を得ることを含み、前記工程(3)が、前記粒子と前記樹脂(B)との前記混練物を加熱して前記溶融樹脂(B’)を得ることを含み、前記工程(2)の後に前記工程(3)が行われる、[2]に記載の積層フィルムの製造方法。
[4] 前記工程(2)と前記工程(3)が同時に、同一の前記二軸押出機により行われる、[2]に記載の積層フィルムの製造方法。
[5] 前記二軸押出機の内径D及び前記二軸押出機の出口からベント口までの長さLvが、下記式(1)を満たす、[2]~[4]のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
2< Lv/D ≦15 (1)
[6] 前記ベントを、1kPaを超え100kPa以下の吸引圧力で行う、[2]~[5]のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、滑り性が良好でありながら、製造装置の汚染を低減させうる積層フィルム;かかる積層フィルムを製造しうる積層フィルムの製造方法;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。また、図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0012】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0013】
[1.積層フィルム]
[1.1.積層フィルムの概要]
本発明の一実施形態に係る積層フィルムは、樹脂(A)を含む樹脂層(a)と、前記樹脂層(a)の少なくとも一方の主面上に設けられ、粒子及び樹脂(B)を含む樹脂層(b)とを含み、かつ、TPD-MS法によりヘリウムガス下で測定された、前記樹脂層(b)を25℃から280℃まで速度10℃/minにより昇温させたときに前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量が、樹脂層(b)の重量を基準として30重量ppm以下である。
【0014】
前記積層フィルムは、樹脂層(a)の少なくとも一方の主面上に、粒子及び樹脂(B)を含む樹脂層(b)が設けられていることにより、樹脂層(a)が、滑り性の高い層及び滑り性の低い層のいずれであっても、樹脂層(b)により積層フィルムに良好な滑り性が付与される。その結果、積層フィルムのブロッキングが低減されて、積層フィルムに擦り傷が生じることを抑制しうる。
【0015】
一方、前記積層フィルムは、粒子を含む樹脂層(b)が設けられていないフィルムと比較して、製造装置が汚染されやすい傾向にある。製造装置の汚染は、本発明を限定するものではないが、樹脂層(b)に含まれる粒子に含まれる残留溶媒、また粒子の加熱により生じる揮発性の分解成分によるものと推察される。
【0016】
前記積層フィルムは、所定の条件で前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量が、樹脂層(b)の重量を基準として、通常30重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下、更に好ましくは5重量ppm以下であり、0重量ppmであることが好ましいが、1重量ppm以上であってもよい。
【0017】
所定の条件で前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量が、前記範囲内であることにより、ブロッキングが低減された積層フィルムを製造する際に、製造装置の汚染を低減しうる。特に、積層フィルムを溶融押出法により製造する場合、押し出された積層フィルムを冷却するためのロールの汚染を効果的に低減しうる。
【0018】
前記樹脂層(b)から放出されたガスの総量は、TPD-MS法(Temperature Programmed Desorption-Mass Spectrometry)により、ヘリウムガス下で測定されうる。昇温条件は、10℃/minとし、25℃から280℃までに放出されたガスの総量を、サンプルとする樹脂層(b)の重量を基準として、測定する。
【0019】
サンプルとする樹脂層(b)は、積層フィルムから、表面の樹脂層(b)をミクロトームにより剥離し、剥離した樹脂層(b)から1mgを量り取って用意しうる。
【0020】
[1.2.樹脂層(a)]
樹脂層(a)は、樹脂(A)を含む。
樹脂(A)は、好ましくは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、通常重合体と、必要に応じて用いられる任意成分とを含む。
樹脂(A)に含まれうる重合体としては、積層フィルムの耐熱性及び耐湿性を高めることができるので、脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0021】
脂環式構造含有重合体とは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を含有する重合体をいう。脂環式構造含有重合体としては、積層フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させる観点から、主鎖に脂環式構造を含有する脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0022】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度および耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造がより好ましい。
【0023】
脂環式構造を構成する炭素原子数に特に制限はないが、通常4個以上、好ましくは5個以上であり、通常30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数が前記の範囲に収まるようにすることで、積層フィルムの機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされ、好適である。
【0024】
脂環式構造含有重合体中に占める脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、積層フィルムの使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造含有重合体100重量%中に占める脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%以下である。脂環式構造含有重合体に占める脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合が前記の範囲にあると、積層フィルムの透明性および耐熱性を効果的に向上させることができる。
【0025】
脂環式構造含有重合体の例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
【0026】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0027】
ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0028】
樹脂(A)は、1種類の脂環式構造含有重合体を単独で含んでいてもよく、2種類以上の脂環式構造含有重合体を任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。
本発明の利点を顕著に発揮させる観点から、樹脂(A)中の脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%以下である。
【0029】
本発明の効果を著しく損なわない限り、樹脂(A)は、重合体以外の任意成分を含有していてもよい。任意成分の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤が挙げられる。樹脂(A)は、任意成分を1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。
【0030】
樹脂(A)は、任意成分として、紫外線吸収剤を含有していてもよい。これにより、積層フィルムが紫外線に対する耐性を獲得することができる。このため、例えば偏光子保護フィルムなどの光学フィルムとして紫外線吸収剤を含有する積層フィルムを用いる場合、積層フィルム及びこの積層フィルムにより保護される偏光子等の保護対象を、紫外線による劣化から効果的に保護できる。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが使用可能である。中でも、紫外線吸収剤としては、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が好適に用いられる。紫外線吸収剤は、1種類で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
樹脂(A)中の、紫外線吸収剤の重量比率は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは3.0重量%以上であり、好ましくは23重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。紫外線吸収剤の重量比率が前記範囲の下限値以上であると、紫外線を効果的に遮断することができる。紫外線吸収剤の濃度が前記範囲の上限値以下であると、紫外線吸収剤の分散不良により積層フィルムに点欠陥が発生することを抑制でき、また積層フィルムの強度低下を抑制できる。
【0033】
樹脂層(a)の厚みは、積層フィルムの使用目的などに応じて任意に設定できる。樹脂層(a)の厚みは、例えば、1μm以上99μm以下としてよい。
【0034】
[1.3.樹脂層(b)]
樹脂層(b)は、粒子及び樹脂(B)を含む。
樹脂(B)は、好ましくは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、通常重合体と、必要に応じて用いられる任意成分とを含む。任意成分の例としては、樹脂(A)に含まれうる任意成分と同様の成分が挙げられる。
【0035】
樹脂(B)に含まれうる重合体は、樹脂(A)に含まれうる重合体と同一であってもよく、異なっていてもよい。樹脂(B)に含まれうる重合体と樹脂(A)に含まれうる重合体とを同一とすることにより、樹脂層(a)と樹脂層(b)との親和性が通常は高くなるため、樹脂層(a)と樹脂層(b)との接着強度を高めることができる。
樹脂(B)に含まれうる重合体としては、積層フィルムの耐熱性及び耐湿性を高めることができるので、脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0036】
樹脂(B)に含まれうる脂環式構造含有重合体の例としては、樹脂(A)に含まれうる脂環式構造含有重合体の例及び好ましい例と同様の例が挙げられる。
【0037】
樹脂(B)は、1種類の脂環式構造含有重合体を単独で含んでいてもよく、2種類以上の脂環式構造含有重合体を任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。
本発明の利点を顕著に発揮させる観点から、樹脂(B)中の脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%以下である。
【0038】
樹脂層(b)に含まれる粒子は、無機粒子でもよく、有機粒子でもよく、無機材料及び有機材料を組み合わせた複合粒子でもよい。以下、樹脂層(b)に含まれる粒子を粒子Cともいう。粒子Cは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
一実施形態において、粒子Cは、好ましくは有機粒子であり、粒子の屈折率調整を容易とし、粒度分布の広がりを狭くする観点から、より好ましくは有機重合体の粒子である。
【0040】
粒子Cを構成しうる有機重合体の例としては、メタクリル酸メチルとスチレンとの架橋共重合体、及び脂環式構造含有架橋重合体が挙げられる。
屈折率の調整を容易とする観点から、粒子Cは、好ましくはメタクリル酸メチルとスチレンとの架橋共重合体の粒子である。
樹脂(B)が、脂環式構造含有重合体を含む場合、樹脂(B)と近い屈折率を有する粒子とする観点から、粒子Cは、好ましくは脂環式構造含有架橋重合体の粒子である。
【0041】
前記のとおり、粒子Cは、メタクリル酸メチルとスチレンとの架橋共重合体の粒子であってもよい。ここで、メタクリル酸メチルとスチレンとの架橋共重合体とは、メタクリル酸メチル、スチレン、及び架橋性単量体の共重合体である。ここで、架橋性単量体の例としては、一分子当たり二以上の重合性基を含む、多官能性単量体が挙げられ、具体例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、及びトリプロピレングリコールジメタクリレートが挙げられる。前記架橋共重合体の粒子は、例えば、メタクリル酸メチル、スチレン、及び架橋性単量体を含む単量体混合物を、懸濁重合する方法により得られうる。メタクリル酸メチル、スチレン、及び架橋性単量体の重量比は、任意に設定できる。
【0042】
前記メタクリル酸メチルとスチレンとの架橋共重合体の粒子としては、様々な平均粒子径の粒子が市販され、これらが用いられうる。かかる粒子の市販品の例としては、積水化成品工業社製「テクポリマー」が挙げられる。
【0043】
前記のとおり、粒子Cは、脂環式構造含有架橋重合体の粒子であってもよい。ここで、脂環式構造含有架橋重合体とは、脂環式構造を含有する繰り返し単位が架橋された構造を含む重合体である。脂環式構造含有架橋重合体に含まれる脂環式構造の例及び好ましい例、脂環式構造を構成する炭素原子数の好ましい範囲、脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合の好ましい範囲は、樹脂(B)における脂環式構造含有重合体について説明した例及び好ましい範囲と同様である。樹脂(B)が、脂環式構造含有重合体を含む場合、粒子Cを、脂環式構造含有架橋重合体の粒子とすることにより、粒子Cの屈折率を樹脂層(b)に含まれうる脂環式構造含有重合体を含む樹脂(B)の屈折率と近いものとして、積層フィルムの内部ヘイズを効果的に低くできる。
【0044】
脂環式構造含有架橋重合体の例としては、ノルボルネン系架橋重合体、単環の環状オレフィン系架橋重合体、環状共役ジエン系架橋重合体、ビニル脂環式炭化水素系架橋重合体、及び、これらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系架橋重合体及びこれらの水素化物は、透明性が良好なため、好適である。
【0045】
ノルボルネン系架橋重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体単位の架橋重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体とこれと共重合しうる任意の単量体との共重合体の架橋体及びその水素化物;が挙げられる。共重合体は、ノルボルネン構造を有する単量体の、開環共重合体であってもよく、付加共重合体であってもよい。
【0046】
脂環式構造含有架橋重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体を、架橋剤存在下にて懸濁重合させることで架橋させた粒子や、ノルボルネン構造を有する重合体を、架橋剤存在下にて架橋させた粒子等を用いることができる。
【0047】
粒子Cは、無機粒子であってもよい。無機粒子の例としては、シリカ粒子、合成ゼオライト粒子、及びガラス粒子が挙げられる。
粒度分布を均一とする観点から、粒子Cは好ましくはシリカの粒子である。
シリカの粒子としては、様々な平均粒子径の粒子が市販され、これらが用いられうる。市販品の例としては、信越化学工業社製「QSG」シリーズ、日本触媒社製「シーホスター」シリーズ、アドマテックス社製「アドマナノ」などが挙げられる。
【0048】
粒子Cの数平均粒子径は、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上であり、好ましくは0.80μm以下、より好ましくは0.50μm以下である。数平均粒子径が、前記下限値以上であると、積層フィルムの滑り性を十分なものとしうる。数平均粒子径が、前記上限値以下であることにより、積層フィルムの内部ヘイズを低下させうる。また樹脂(B)と粒子Cとを含む溶融物を、ポリマーフィルターに通した場合に、ポリマーフィルターの目詰まりを低減できる。そのため、積層フィルムの生産性の低下を抑制できる。
【0049】
粒子Cが有機粒子である場合、粒子Cの数平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは0.8μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
【0050】
粒子Cが無機粒子である場合、粒子Cの数平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。
【0051】
粒子Cの数平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法により測定して得られた値である。
【0052】
粒子Cは、粒子径が1μm以上である粗大粒子の体積割合が、小さいことが好ましい。これにより、樹脂(B)と粒子Cとを含む溶融物を、ポリマーフィルターに通した場合に、ポリマーフィルターの目詰まりをより低減できるので、積層フィルムの生産性がより向上する。粒子Cにおける、粒子径が1μm以上である粗大粒子の体積割合は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下であり、通常0%以上であり、0%が好ましいが、0.01%以上であってもよい。粗大粒子の割合の計算上、粗大粒子の粒子径の上限は、特に限定されないが例えば1mm以下としうる。但し、通常の製造において粒子径が1mm超の粒子は完全に取り除かれるので、1mm超の粒子を計算に含めたとしても、粗大粒子の割合の好ましい範囲は、上に述べた値と同じである。
粒子Cにおける前記粗大粒子の体積割合は、粒子Cをふるい分けなどにより分級して粗大粒子を取り除くことにより、小さくすることができる。
【0053】
樹脂(B)の屈折率nb及び粒子Cの屈折率ncは、下記式を満たすことが好ましい。
|nb-nc|≦0.03
屈折率nb及び屈折率ncが、上記式を満たすことにより、積層フィルムの内部ヘイズをより低減できる。
|nb-nc|の値は、より好ましくは0.02以下であり、更に好ましくは0.01以下であり、通常0以上であり、理想的には0であるが、0.005以上であってもよい。
屈折率は、波長589nmの光について、実施例記載の方法により測定しうる。
【0054】
樹脂層(b)において、粒子Cの重量割合は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、更に好ましくは8重量%以下である。ただし、粒子C及び樹脂(B)の合計重量を100重量%とする。
【0055】
樹脂層(b)中の粒子Cの重量割合が、前記下限値以上であることにより、積層フィルムが長さ2000mを超える長尺のフィルムであって、ロールとした際に巻き芯の付近に大きな荷重がかかるものである場合であっても、フィルムの滑り性が向上することにより、巻き芯付近でブロッキングが発生しにくくなり、擦り傷などの不良が発生しにくくなる。
【0056】
樹脂層(b)中の粒子Cの重量割合が、前記上限値以下であることにより、樹脂層(b)の表面粗さが適度なものとなり、積層フィルムの外部ヘイズの上昇が抑制される。その結果、積層フィルムを画像表示装置の構成要素として用いた場合に、画像表示装置の視認性を向上させうる。また、積層フィルムにハードコート層などの任意の追加の層を積層する際に、樹脂層(b)と追加の層との密着性が良好となる。また、樹脂層(b)中の粒子Cの重量割合が、前記上限値以下であることにより、製造コストの点で有利である。さらに、樹脂層(b)を構成するための材料を製造する際に、粒子Cの樹脂(B)への分散不良を抑制できる。
【0057】
樹脂層(b)は、樹脂(B)及び粒子Cの他に、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制する観点から、樹脂層(b)における、紫外線吸収剤の樹脂(B)の100重量部に対する重量割合は、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下であり、通常0重量部以上であり、0重量部であってもよく、0.1重量部以上であってもよい。
【0058】
樹脂層(b)の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。
樹脂層(b)の厚みが前記下限値以上であることにより、例えば共押出法などの押出成形により樹脂層(b)を成形する際に、厚みの制御を容易に行いうる。また樹脂層(b)の厚みが前記上限値以下であることにより、粒子Cを含む樹脂層(b)の滑り性と樹脂層(b)の強度低下とがバランスして、積層フィルムの強度を良好にしうるともに、積層フィルムを搬送する際に、積層フィルムに破断が生じることを抑制して、積層フィルムのハンドリング性を優れたものとしうる。ここで、積層フィルムが複数層の樹脂層(b)を有する場合、それぞれの樹脂層(b)の厚みが、前記範囲内であることが好ましい。
【0059】
樹脂層(b)の厚みの、樹脂層(a)の厚みに対する比(樹脂層(b)の厚み/樹脂層層(a)の厚み)は0.32以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.11以下が更に好ましい。前記比が前記上限値以下であることにより、積層フィルムの強度をより良好にしうる。また前記比は0.02以上が好ましく、0.04以上がより好ましい。前記比が前記下限値以上であることにより、積層フィルムの厚み制御をより良好に行いうる。ここで、積層フィルムが複数層の樹脂層(b)を有する場合、それぞれの樹脂層(b)の厚みが、前記範囲内であることが好ましい。
【0060】
[1.4.積層フィルムの構成]
本発明の一実施形態に係る積層フィルムは、樹脂層(a)と樹脂層(b)とを有する。積層フィルムは、樹脂層(a)及び樹脂層(b)の2層のみからなる積層フィルムであってもよい。積層フィルムは樹脂層(a)及び樹脂層(b)の他に、任意の層を有していてもよい。任意の層は、1層でもよく、2層以上であってもよい。また、任意の層が2層以上存在する場合、任意の層は、厚み、材料などが同じ層であってもよく、異なる層であってもよい。任意の層の位置は任意に設定できる。積層フィルムを薄型化する観点から、積層フィルムは、樹脂層(a)及び樹脂層(b)以外の層を有さないことが好ましい。
【0061】
積層フィルムは、樹脂層(b)を二つ有していてもよい。積層フィルムが二つの樹脂層(b)を有する場合、通常積層フィルムは、樹脂層(b)、樹脂層(a)、及び樹脂層(b)をこの順に有する積層フィルムであり、通常樹脂層(b)は、樹脂層(a)の二つの主面上に設けられている。樹脂層(b)は、積層フィルムの両方の表面に配置されて、二つの樹脂層(b)のそれぞれが、積層フィルムの両方の表面のそれぞれに露出していることが好ましい。積層フィルムが二つの樹脂層(b)を有する場合、それぞれを、樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)という場合がある。
【0062】
積層フィルムは、樹脂層(a)が含んでいてもよい紫外線吸収剤などの添加剤がブリードアウトすることを抑制し、滑り性をより向上させる観点から、樹脂層(b)を二つ有し、第一の樹脂層(b)、樹脂層(a)、及び第二の樹脂層(b)をこの順で有することが好ましい。
【0063】
積層フィルムが樹脂層(b)を二つ有する場合、二つの樹脂層(b)は、同一の材料により構成され、同一の厚みを有していてもよく、同一の材料により構成されるが厚みが異なっていてもよく、成分の種類、成分の重量比などが異なる材料により構成されていてもよい。積層フィルムが樹脂層(b)を二つ有する場合、製造を容易にしうると共に、積層フィルムのカールを抑制しうるので、二つの樹脂層(b)は、好ましくは同一の材料により構成され且つ同一の厚みを有する。
【0064】
積層フィルムは、樹脂層(a)を複数有していてもよい。積層フィルムが樹脂層(a)を複数有する場合、複数の樹脂層(a)はそれぞれ、成分の種類、成分の重量比などが互いに異なる材料により構成されていてもよい。
【0065】
以下、図を用いて本発明の実施形態に係る積層フィルムの層構成を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。本実施形態の積層フィルム100は、樹脂層(a)110と、樹脂層(a)の一方の主面である面110Uと接するように配置された樹脂層(b)120とを備える。樹脂層(b)120は、積層フィルム100の最も表面に配置されていて、樹脂層(b)120の面120Uが露出している。
【0066】
図2は、本発明の別の実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。本実施形態の積層フィルム200は、樹脂層(b)221と、樹脂層(a)210と、樹脂層(b)222とを、この順で備える。樹脂層(b)221は、樹脂層(a)210の一方の主面である面210Uと接するように配置されている。樹脂層(b)222は、樹脂層(a)210のもう一方の主面である面210Dと接するように配置されている。樹脂層(b)221及び樹脂層(b)222は、それぞれ積層フィルム200の最も表面に配置されていて、樹脂層(b)221の面221U及び樹脂層(b)222の面222Dが露出している。
【0067】
[1.5.積層フィルムの厚み、長さ、特性]
(厚み)
積層フィルムの厚みは、任意の厚さに設定できるが、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上80μm以下としうる。
【0068】
(積層フィルムの長さ)
積層フィルムは、枚葉であっても、長尺であってもよい。本実施形態の積層フィルムは、巻き芯付近でのブロッキングの発生、擦り傷などの不良の発生が低減できるので、好ましくは長尺であって、ロールの形態である。積層フィルムが長尺である場合、積層フィルムの長さは、2000mを超えていてもよい。本実施形態の積層フィルムは、このように長尺のフィルムを巻き回してロールの形態とした場合であっても、前記のとおり巻き芯付近でのブロッキングの発生、擦り傷などの不良の発生を低減できる。
【0069】
(紫外線透過率)
積層フィルムは、紫外線透過率が低いことが好ましい。積層フィルムは、波長380nmの紫外線の透過率が、好ましくは4%以下、より好ましくは1%以下であり、通常0%以上であり、0%であってもよい。紫外線透過率が前記上限値以下である積層フィルムは、画像表示装置の構成要素(特に、有機エレクトロルミネッセンス素子の構成要素、偏光子など)の保護フィルムとして好適に用いられうる。紫外線透過率は、分光光度計(例えば、日本分光社製「V-7200DS」)を用いて測定できる。
【0070】
積層フィルムを構成する層のいずれかに、紫外線吸収剤を含有させることにより、積層フィルムの紫外線透過率を低減しうる。
積層フィルムを構成する層のうち、樹脂層(a)が紫外線吸収剤を含んでいてもよく、樹脂層(b)が紫外線吸収剤を含んでいてもよく、樹脂層(a)及び樹脂層(b)の両方が紫外線吸収剤を含んでいてもよく、樹脂層(a)及び樹脂層(b)のいずれでもない任意の層が、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。積層フィルムが紫外線吸収剤を含むフィルムである場合、樹脂層(a)が紫外線吸収剤を含み、樹脂層(b)は紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。
【0071】
(滑り性:静摩擦係数)
積層フィルムは、優れた滑り性を備える。滑り性は、摩擦試験機を用いて、JIS K7125に準拠し、荷重を1kgfとして積層フィルムの静摩擦係数を求めることにより評価できる。積層フィルムは、実施例の項に記載の方法により求められる静摩擦係数が、好ましくは0.4以上であり、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下である。
【0072】
荷重1kgfとして測定された積層フィルムの静摩擦係数が、前記下限値以上であることにより、積層フィルムの滑り性を適度なものとして、積層フィルムの巻き取りの際のハンドリング性をより優れたものとしうる。また、荷重1kgfとして測定された積層フィルムの静摩擦係数が、前記上限値以下であることにより、積層フィルムが長さ2000mを超える長尺のフィルムのように、ロールとした際に巻き芯の付近に大きな荷重がかかるものであっても、巻き芯付近でのブロッキングを低減し、擦り傷などの不良の発生を低減できる。
【0073】
(内部ヘイズ)
本発明の一実施形態に係る積層フィルムは、内部ヘイズが低い。
積層フィルムの内部ヘイズは、好ましくは0.7%未満、より好ましくは0.6%以下、更に好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.2%以下であり、通常0.0%以上であり、理想的には0.0%である。積層フィルムの内部ヘイズが低いことにより、積層フィルムを、精細な表示性能が求められる画像表示装置の構成要素として、好適に用いうる。積層フィルムの内部ヘイズは、ヘイズメーターを用いて、測定しうる。
【0074】
[2.積層フィルムの製造方法]
「2.1.積層フィルムの製造方法の概要]
前記の積層フィルムは、任意の方法により製造しうるが、下記工程(1)~(4)を含む製造方法により製造することが好ましい。
工程(1):樹脂(A)を加熱して溶融樹脂(A’)を得ること。
工程(2):粒子と樹脂(B)とを二軸押出機により混練すること。
工程(3):前記粒子と前記樹脂(B)とを加熱して溶融樹脂(B’)を得ること。
工程(4):前記溶融樹脂(A’)と前記溶融樹脂(B’)とを層状に押し出すこと。
ここで、前記工程(2)において、前記二軸押出機からベントを行う。
【0075】
積層フィルムの製造方法は、前記工程(1)~(4)に加えて、任意の工程を含んでいてもよい。
【0076】
工程(4)は、通常工程(1)~(3)の後に行われる。
工程(1)及び工程(3)は、好ましくは同時に行われる。
工程(3)は、通常、工程(2)の後に行われるかまたは工程(2)と同時に行われる。
【0077】
工程(1)における樹脂(A)の加熱は、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機により行いうる。樹脂(A)が、重合体に加えて紫外線吸収剤などの任意成分を含む場合、二軸押出機に重合体と任意成分とを供給して混錬しながら加熱を行って、任意成分を含む樹脂(A)を溶融してもよい。工程(1)により、溶融樹脂(A’)が得られる。
工程(1)における加熱温度は、樹脂(A)に含まれる重合体のガラス転移温度Tg、樹脂(A)に含まれうる紫外線吸収剤などの任意成分の重量割合によって、適宜設定しうる。工程(1)における加熱温度は、好ましくはTg+80℃以上、より好ましくはTg+90℃以上、更に好ましくはTg+100℃以上であり、好ましくはTg+140℃以下、より好ましくはTg+130℃以下、更に好ましくはTg+120℃以下である。ここで、Tgは、樹脂(A)に含まれる重合体のガラス転移温度を表す。工程(1)における加熱温度を、前記下限値以上とすることにより、溶融樹脂(A’)の流動性を良好なものとしうる。また加熱温度を前記上限値以下とすることにより、溶融樹脂(A’)の分解を抑制しうる。
【0078】
工程(2)における混練は、二軸押出機により行われる。二軸押出機は、任意の方式の二軸押出機であってよい。二軸押出機は、逆方向回転二軸押出機であってもよく、同方向回転二軸押出機であってもよいが、粒子分散性の効果の点から、同方向回転二軸押出機であることが好ましい。
【0079】
工程(2)において用いられる二軸押出機は、ベントを行うためのベント口を備える。二軸押出機は、ベント口を一つのみ備えていてもよいし、複数備えていてもよい。ベント口は、通常、二軸押出機のバレル周面に設けられている。ベント口に減圧装置を接続することにより、二軸押出機のバレル内部から、揮発物質を吸引しうる。二軸押出機がベント口を複数備えている場合、ベントを複数のベント口から行ってもよい。好ましくは二軸押出機は、ベント口を一つのみ備え、ベントを一か所のベント口から行う。
【0080】
工程(2)において、ベントを行うことにより、樹脂(B)及び粒子を含む材料を溶融し押出加工する際に、残留溶媒、樹脂(B)又は粒子の揮発性分解物により製造装置が汚染されることを抑制できる。
【0081】
ベントは、好ましくは、二軸押出機の内径D及び前記二軸押出機の出口からベント口までの軸方向の長さLvが、下記式(1)を満たすように行う。
2< Lv/D ≦15 (1)
(二軸押出機の出口からベント口までの軸方向の長さLv)/(軸方向の内径D)の値は、より好ましくは3以上、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
Lv/Dの値が、2を超えることにより、ベント口から樹脂(B)が吸引されることを抑制し、操業安定性を向上させうる。Lv/Dの値が、前記上限値以下であることにより、樹脂(B)に含まれる揮発成分を効率よくベントしうる。
【0082】
ベントは、吸引圧力(絶対圧)が、好ましくは100kPa以下、より好ましくは40kPa以下、更に好ましくは30kPa以下、更に好ましくは25kPa以下、更に好ましくは20kPa以下であり、好ましくは1kPaを超え、より好ましくは5kPa以上であるように行う。吸引圧力が、1kPa超であることにより、ベント口から樹脂(B)が吸引されることを抑制して操業安定性を向上させうる。吸引圧力が前記上限値以下であることにより、樹脂(B)に含まれる揮発成分を効率よくベントしうる。
【0083】
工程(3)における粒子及び樹脂(B)の加熱は、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機により行いうる。
工程(3)における加熱温度は、樹脂(B)に含まれる重合体のガラス転移温度Tg、粒子のガラス転移温度によって適宜設定しうる。工程(3)における加熱温度は、好ましくはTg+80℃以上、より好ましくはTg+90℃以上、更に好ましくはTg+100℃以上であり、好ましくはTg+140℃以下、より好ましくはTg+130℃以下、更に好ましくはTg+120℃以下である。ここで、Tgは、樹脂(B)に含まれる重合体のガラス転移温度を表す。工程(3)における加熱温度を、前記下限値以上とすることにより、溶融樹脂(B’)の流動性を良好なものとしうる。また加熱温度を前記上限値以下とすることにより、溶融樹脂(B’)の分解を抑制しうる。
【0084】
工程(4)における溶融樹脂(A’)と溶融樹脂(B’)とを層状に押し出すことは、共押出による成型方法により行いうる。共押出による成型方法の例としては共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、及び共押出ラミネーション法が挙げられ、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法の例としては、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式が挙げられ、設備の構成を単純としうる点から、フィードブロック方式が好ましい。
【0085】
工程(4)において層状に押し出された溶融樹脂(A’)及び溶融樹脂(B’)は、通常冷却される。冷却手段の例としては、冷却ロールが挙げられる。冷却手段として、冷却ロールを用いる場合、層状に押し出された溶融樹脂(A’)及び溶融樹脂(B’)を冷却ロール上にキャストして搬送することにより、層状に押し出された溶融樹脂(A’)及び溶融樹脂(B’)が冷却されて固化し、樹脂層(a)及び樹脂層(b)が積層された積層フィルムが製造される。
【0086】
冷却ロールの温度は、好ましくはTg-10℃以下、より好ましくはTg-20℃以下、更に好ましくはTg-30℃以下であり、好ましくはTg-80℃以上である。ここで、Tgは、樹脂(A)に含まれる重合体のガラス転移温度を表す。
【0087】
積層フィルムの製造方法は、工程(4)において押し出された積層フィルムを、任意の方法により延伸する工程を含んでもよい。
例えば、積層フィルムは、工程(4)の後、縦一軸延伸、横一軸延伸、縦横同時二軸延伸、逐次二軸延伸、斜め延伸などの、任意の延伸工程を経たフィルムであってもよい。したがって、積層フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであっても、延伸された延伸フィルムであってもよい。積層フィルムは、未延伸フィルムであることが好ましい。未延伸フィルムは、画像表示装置の偏光を乱しにくいこと、フィルム製造時に粒子の脱落が起こりにくいこと、及び、積層フィルムの表層付近で凝集破壊が起きにくく、積層フィルムと他部材との接着強度が確保できること、の三つの観点から好ましい。
【0088】
[2.2.積層フィルムの製造方法の第一実施形態]
第一実施形態に係る積層フィルムの製造方法は、前記工程(2)が、前記粒子と前記樹脂(B)とを前記二軸押出機により混練して前記粒子と前記樹脂(B)との混練物を得ることを含み、前記工程(3)が、前記粒子と前記樹脂(B)との前記混練物を加熱して前記溶融樹脂(B’)を得ることを含み、前記工程(2)の後に前記工程(3)が行われる。
【0089】
本実施形態に係る積層フィルムの製造方法では、工程(2)及び工程(3)が、同時には行われず、工程(2)の後に工程(3)が行われる。工程(2)においては、前記のとおり、二軸押出機からベントを行う。ベントの条件は、前記の好ましい条件と同様の条件としうる。
【0090】
工程(2)は更に、二軸押出機により混練して得られる粒子と樹脂(B)との混練物を、ペレット状に成形する工程を含んでいてもよい。
【0091】
工程(3)において、混練物を加熱して溶融樹脂(B’)を得るための装置の例としては、単軸押出機及び二軸押出機が挙げられ、装置の構成を単純にできることから、単軸押出機が好ましい。
【0092】
本実施形態の製造方法は、粒子及び樹脂(B)との混練物を得る工程においてベントを行うことから、以降の工程に用いる製造装置の汚染が効果的に低減され、また、ダイ口に付着する異物(目ヤニ)を低減できるという利点を有する。
【0093】
[2.3.積層フィルムの製造方法の第二実施形態]
本実施形態に係る積層フィルムの製造方法は、前記工程(2)と前記工程(3)が同時に、同一の前記二軸押出機により行われる。すなわち、本実施形態の製造方法では、粒子と樹脂(B)とを二軸押出機に供給し、混練しながら加熱して粒子と樹脂(B)の溶融物とを含む溶融樹脂(B’)を得る。工程(2)においては、前記のとおり、二軸押出機からベントを行う。ベントの条件は、前記の好ましい条件と同様の条件としうる。
【0094】
本実施形態の製造方法では、工程(2)及び(3)で用いられる二軸押出機のベントを行うベント口から、工程(4)において溶融樹脂(A’)と溶融樹脂(B’)とを層状に押し出すまで(通常、押出成形機のダイ出口まで)の、平均滞留時間は、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下であり、通常0時間より長い。
平均滞留時間が、前記の上限値以下であることにより、樹脂(B)及び粒子の分解を効果的に抑制しうる。
【0095】
本実施形態の製造方法は、粒子と樹脂(B)とを加熱して溶融樹脂(B’)を得る工程においてベントを行うことから、押出工程の前において発生する揮発性不純物を、効率的に低減することができ、また、ダイ口に付着する異物(目ヤニ)を低減できるという利点を有する。
【0096】
[3.積層フィルムの用途]
前記の積層フィルムは、良好な滑り性を有し、擦り傷などの欠陥が低減されている。そのため、偏光子保護フィルムなどの光学フィルムとして、好適に用いうる。
【実施例0097】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0098】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0099】
[評価方法]
(TPD-MS法による樹脂層(b)アウトガス量の測定)
積層フィルムから、樹脂層(b1)をミクロトームにより剥離した。剥離された樹脂層(b1)から1mgを量り取った。量り取った樹脂層(b1)の試料を、加熱装置を備える質量分析装置にセットした。当該質量分析装置は、加熱装置として、TRC社製加熱装置を備え、質量分析部として、島津製作所製「GCMS-QP2020(14)」を備える装置である。
試料を加熱する前に、測定チャンバー内にキャリアーガス(ヘリウム)を15分間以上流し続けた。次いで、試料を室温(25℃)から昇温速度10℃/minで400℃まで加熱し、発生するガスの質量分析測定を行い、室温から280℃までの加熱の間に試料から放出されたガスの総重量を得た。
質量分析条件は、下記のとおりとした。
・MS感度 Gain 1.60kV
・質量数範囲m/z=10~300
・雰囲気 ヘリウム流(50mL/min)
室温から280℃までの加熱の間に試料から放出されたガスの総重量の、量り取った試料の重量に対する割合(重量ppm)を算出した。
【0100】
(フィルムの各層の厚み)
フィルムをミクロトーム(大和光機社製「RV-240」)を用いて0.05μm厚にスライスし顕微鏡下で断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
【0101】
(樹脂のガラス転移温度)
樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量測定法により、日立製作所製「DSC7020」を用いて測定した。測定は窒素雰囲気下で行い、昇温速度20℃/min、保持時間30minで行った。
【0102】
(屈折率)
樹脂又は粒子の屈折率は、ベッケ法(JIS K7142)にて測定した。樹脂ペレット又は粒子を、屈折率既知の液体に浸して樹脂ペレット又は粒子の輪郭を確認することで屈折率を測定した。顕微鏡の光源として、単色光である波長589nmのナトリウムD線を用いた。
【0103】
(粒子の数平均粒子径)
粒子の数平均粒子径を、以下の方法により測定した。
粒子濃度が2重量%の水スラリーを作製し、セイシン企業株式会社製「LMS-3000」を用い、レーザー回折・散乱法により測定した。
【0104】
(ロール汚染)
積層フィルムの製造を開始してから、冷却ロールの汚染が始まるまでの時間を測定した。
ロール汚染の有無の判定は、下記手順に従い、汚染により積層フィルムに転写される凹凸欠陥の数に基づいて行った。
(手順)
積層フィルムを長さ1.5mにカットし、プロジェクター、積層フィルム、及びスクリーンの順に配置し投影検査を行った。
投影に使用するプロジェクターとして、日本技術センター製「S-light」を使用した。
プロジェクター及び積層フィルムの間の距離は2300mmとした。
積層フィルム及びスクリーンの間の距離は200mmとした。
この方法で検出された積層フィルムの凹凸の高さを、Zygo社レーザー干渉計にて測定し、起伏高さが300nmを超えるもののが1個/mを超える場合に、ロールが汚染していると判断した。
【0105】
(フィルムの静摩擦係数)
摩擦試験機(東洋精機製作所製「TR-2」)を用い、JIS K7125に準拠して、各例で得られたフィルムの静摩擦係数を測定した。測定は、試験片の大きさが140mm×65mm、荷重が1kgf、速度が500mm/minの条件で行った。静摩擦係数が小さいほどフィルムの滑り性が大きい。
【0106】
[実施例1]
(樹脂層(a)用材料の調製)
日本ゼオン社製「ゼオノア1600」(ガラス転移温度160℃、屈折率1.53)を95重量部と、紫外線吸収剤(ADEKA社製「アデカスタブLA-31」(2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール])を5重量部とを、同方向回転二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX-44αII」、内径DΦ=25mm,バレル長さL/D=42)に供給し、混練温度260℃で混練して、樹脂層(a)のための樹脂(A)を得た。
樹脂(A)を、二軸押出機からストランド状に押し出し、ペレタイザーにより成形して、樹脂(A)のペレットを得た。「ゼオノア1600」は、脂環式構造含有重合体(ノルボルネン系重合体)を含む樹脂である。「アデカスタブLA-31」は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0107】
(樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)用材料の調製:混練工程)
樹脂(B)としての日本ゼオン社製「ゼオノア1600」(ガラス転移温度160℃、屈折率1.53)を95重量部と、粒子Cとしての積水化成品工業社製ポリマービーズ「テクポリマー」(数平均粒子径0.5μm、屈折率1.53)を5重量部とを、ベント口付きの同方向回転二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX-44αII」、内径DΦ=25mm、バレル長さL/D=42)に供給し、ベント口から吸引圧力20kPa(絶対圧)でベントを行いながら、混練温度270℃で混練し、粒子と樹脂(B)との混練物(樹脂(B’))を得た。二軸押出機の出口から、ベントを行うベント口までの軸方向の長さLvを二軸押出機の内径Dで除した値(Lv/D)は、3であった。
樹脂(B’)を、二軸押出機からストランド状に押し出して、ペレタイザーにより成形して、樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)のための、樹脂(pr)のペレットを得た。
「テクポリマー」は、メタクリル酸メチルとスチレンとの架橋共重合体の微粒子である。樹脂(B)の屈折率nb及び粒子Cの屈折率ncの差の絶対値(|nb-nc|)は、0である。
【0108】
(積層フィルムの製造:溶融樹脂(A’)及び溶融樹脂(B’)の押出工程)
フィードブロックを有する、二種三層多層押出機(芝浦機械社製)を用いて、共押し出しにより積層フィルムを製造した。当該フィードブロックは、樹脂層(b1)/樹脂層(a)/樹脂層(b2)の三層構成を有する積層体を形成しうる構造を有する。フィードブロックには、樹脂層(a)を形成するための樹脂を溶融して、溶融樹脂(A’)を得て、これを押し出すための第一の単軸押出機と、樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)を形成するための樹脂を溶融して溶融樹脂(B’)を得て、これを押し出すための第二の単軸押出機が接続されている。樹脂層(a)の樹脂として第一の単軸押出機に、樹脂(A)のペレットを供給し、樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)の樹脂として第二の単軸押出機に樹脂(pr)のペレットを供給した。フィードブロックに接続されたダイから冷却ロール上に、積層された溶融樹脂を吐出させ冷却し、樹脂層(b1)、樹脂層(a)、及び樹脂層(b2)をこの順に備える積層フィルムを得た。押出加工の樹脂温度は265℃とし、冷却ロールの温度は130℃とした。樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)の厚みがそれぞれ2μm、樹脂層(a)の厚みが36μm、積層フィルムの総厚みが40μmとなるように、押出条件を調整した。
【0109】
得られた積層フィルムを、前記の方法により評価した。
【0110】
[実施例2]
フィードブロックを有する二種三層多層押出機(芝浦機械社製)を用いて、共押し出しにより積層フィルムを製造した。当該フィードブロックは、樹脂層(b1)/樹脂層(a)/樹脂層(b2)の三層構成を有する積層体を形成しうる構造を有する。フィードブロックには、樹脂層(a)を形成するための樹脂を溶融し押し出すための、第一の二軸押出機(芝浦機械社製「TEM-41SS」、内径DΦ=41mm、バレル長さL/D=42)と、樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)を形成するための樹脂を溶融し押し出すための、ベント口付きの第二の二軸押出機(芝浦機械社製「TEM-41SS」内径DΦ=41mm,バレル長さL/D=42)とが接続されている。
【0111】
(混練溶融押出工程)
脂環式構造含有樹脂として日本ゼオン社製「ゼオノア1600」(ガラス転移温度160℃、屈折率1.53)を95重量部と、紫外線吸収剤(ADEKA社製「アデカスタブLA-31」)を5重量部とを、第一の二軸押出機に供給して温度260℃で混錬して溶融し、得られた溶融樹脂(溶融樹脂(A’))を、フィードブロックに供給した。
樹脂(B)として、脂環式構造含有樹脂である日本ゼオン社製「ゼオノア1600」(ガラス転移温度160℃、屈折率1.53)を95重量部と、粒子Cとしての積水化成品工業社製ポリマービーズ「テクポリマー」(数平均粒子径0.5μm、屈折率1.53)を5重量部とを、第二の二軸押出機に供給して、ベント口から吸引圧力25kPa(絶対圧)でベントを行いながら、混練温度270℃で混練して溶融し、得られた溶融樹脂(溶融樹脂(B’))を、フィードブロックに供給した。第二の二軸押出機の出口から、ベントを行うベント口までの軸方向の長さLvを二軸押出機の内径Dで除した値(Lv/D)は、3であった。
樹脂(B)の屈折率nb及び粒子Cの屈折率ncの差の絶対値(|nb-nc|)は、0である。
【0112】
フィードブロックに接続されたダイから冷却ロール上に、積層された溶融樹脂を吐出させ冷却し、樹脂層(b1)、樹脂層(a)、及び樹脂層(b2)をこの順に備える積層フィルムを得た。押出加工の樹脂温度は265℃とし、冷却ロールの温度は130℃とした。樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)の厚みがそれぞれ2μm、樹脂層(a)の厚みが36μm、積層フィルムの総厚みが40μmとなるように、押出条件を調整した。また、ベントを行う第二の二軸押出機のベント口からダイまでの、樹脂の平均滞留時間が、4時間となるように押出条件を調整した。
【0113】
得られた積層フィルムを、前記の方法により評価した。
【0114】
[実施例3]
ベントを行う第二の二軸押出機のベント口からダイまでの、樹脂の平均滞留時間が、2時間となるように押出条件を調整した。以上の事項以外は、実施例2と同様に操作して、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、前記の方法により評価した。
【0115】
[比較例1]
(樹脂層(b1)及び樹脂層(b2)用材料の調製)において、二軸押出機のベント口からベントを行わなかった。以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、前記の方法により評価した。
【0116】
[結果]
結果を表1に示す。
表1において、略号は下記の意味を表す。
「ZNR1600」:日本ゼオン社製「ゼオノア1600」
「UVA」:紫外線吸収剤(ADEKA社製「アデカスタブLA-31」)
「粒子C」:積水化成品工業社製ポリマービーズ「テクポリマー」
「Lv/D」:二軸押出機の出口から、ベントを行うベント口までの軸方向の長さLvを二軸押出機の内径Dで除した値
【0117】
【表1】
【0118】
以上の結果より、所定の条件で測定された、樹脂層(b)のアウトガス量が30重量ppm以下である、実施例1~3の積層フィルムは、静摩擦係数が低く、滑り性が良好であるにも拘らず、ロールの汚染が低減されている。
また、比較例1の積層フィルムは、ロールの汚染の程度が大きい。
【符号の説明】
【0119】
100 積層フィルム
110 樹脂層(a)
110U 面
120 樹脂層(b)
120U 面
200 積層フィルム
210 樹脂層(a)
210U 面
210D 面
221 樹脂層(b)
221U 面
222 樹脂層(b)
222D 面
図1
図2