(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080013
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】発光素子および発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20230601BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20230601BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162492
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2021193193
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】安倍 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】船越 良太
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA24
5F241CA03
5F241CA05
5F241CA08
5F241CA13
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA74
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】順方向電圧が低い発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子は、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第1n側層と、第1活性層と、第1p側層と、を含む第1発光部と、前記第1発光部の上方に配置され、n型不純物を含む窒化物半導体からなる中間層と、前記中間層の上方に配置された第2発光部であって、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第2n側層と、第2活性層と、第2p側層と、を含む第2発光部と、を備える。前記第1p側層は、アルミニウムおよびガリウムを含み、第1p型不純物濃度を有する第1層と、前記第1層よりも上方に配置され、アルミニウムおよびガリウムを含み、前記第1p型不純物濃度よりも低い第2p型不純物濃度を有する第2層と、を有する。前記第2層におけるアルミニウムの組成比の値は、前記第1層におけるアルミニウムの組成比の値よりも高い。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第1n側層と、第1活性層と、第1p側層と、を含む第1発光部と、
前記第1発光部の上方に配置され、n型不純物を含む窒化物半導体からなる中間層と、
前記中間層の上方に配置された第2発光部であって、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第2n側層と、第2活性層と、第2p側層と、を含む第2発光部と、
を備え、
前記中間層のn型不純物濃度は、前記第1n側層のn型不純物濃度よりも高く、
前記第1p側層は、アルミニウムおよびガリウムを含み、第1p型不純物濃度を有する第1層と、前記第1層よりも上方に配置され、アルミニウムおよびガリウムを含み、第2p型不純物濃度を有する第2層と、を有し、
前記第2層におけるアルミニウムの組成比の値は、前記第1層におけるアルミニウムの組成比の値よりも高く、
前記第2p型不純物濃度は、前記第1p型不純物濃度よりも低い発光素子。
【請求項2】
前記第2p側層は、アルミニウムおよびガリウムを含み、第3p型不純物濃度を有する第3層と、前記第3層よりも上方に配置され、アルミニウムおよびガリウムを含み、第4p型不純物濃度を有する第4層と、を有し、
前記第4層におけるアルミニウムの組成比の値は、前記第3層におけるアルミニウムの組成比の値よりも高く、
前記第4p型不純物濃度は、前記第3p型不純物濃度よりも低い請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第4層におけるアルミニウムの組成比の値は、前記第2層におけるアルミニウムの組成比の値よりも低く、
前記第3層におけるアルミニウムの組成比の値は、前記第1層におけるアルミニウムの組成比の値よりも低い請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1p型不純物濃度は、前記第3p型不純物濃度よりも低く、
前記第2p型不純物濃度は、前記第4p型不純物濃度よりも低い請求項2または3に記載の発光素子。
【請求項5】
下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第1n側層と、第1活性層と、第1p側層と、を含む第1発光部を形成する工程と、
前記第1発光部の上方に、n型不純物を含む窒化物半導体層からなる中間層を形成する工程と、
前記中間層の上方に第2発光部を形成する工程であって、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第2n側層と、第2活性層と、第2p側層と、を含む第2発光部を形成する工程と、
を備え、
前記中間層を形成する工程において、前記第1n側層のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有する前記中間層を形成し、
前記第1p側層を形成する工程は、
アルミニウムおよびガリウムを含み、第1p型不純物濃度を有する第1層を形成する工程と、
アルミニウムおよびガリウムを含み、アルミニウムの組成比の値が前記第1層のアルミニウムの組成比の値よりも高く、前記第1p型不純物濃度よりも低い第2p型不純物濃度を有する第2層を、前記第1層の上方に形成する工程と、
を有する発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2p側層を形成する工程は、
アルミニウムおよびガリウムを含み、第3p型不純物濃度を有する第3層を形成する工程と、
アルミニウムおよびガリウムを含み、アルミニウムの組成比の値が前記第3層のアルミニウムの組成比の値よりも高く、前記第3p型不純物濃度よりも低い第4p型不純物濃度を有する第4層を、前記第3層よりも上方に形成する工程と、
を有する請求項5に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第4層を形成する工程において、アルミニウムの組成比の値が、前記第2層のアルミニウムの組成比の値よりも低くなるように前記第4層を形成し、
前記第3層を形成する工程において、アルミニウムの組成比の値が、前記第1層のアルミニウムの組成比の値よりも低くなるように前記第3層を形成する請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1層を形成する工程において、前記第1p型不純物濃度が、前記第3p型不純物濃度よりも低くなるように前記第1層を形成し、
前記第2層を形成する工程において、前記第2p型不純物濃度が、前記第4p型不純物濃度よりも低くなるように前記第2層を形成する請求項6または7に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子および発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、第1のn型層、第1の活性層、および第1のp型層を含む第1発光部と、第1発光部上に配置されたトンネル接合層と、トンネル接合層上に配置され、第2のn型層、第2の活性層、および第2のp型層を含む第2発光部と、を備える発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、順方向電圧が低い発光素子および発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る発光素子は、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第1n側層と、第1活性層と、第1p側層と、を含む第1発光部と、前記第1発光部の上方に配置され、n型不純物を含む窒化物半導体からなる中間層と、前記中間層の上方に配置された第2発光部であって、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第2n側層と、第2活性層と、第2p側層と、を含む第2発光部と、を備える。前記中間層のn型不純物濃度は、前記第1n側層のn型不純物濃度よりも高い。前記第1p側層は、アルミニウムおよびガリウムを含み、第1p型不純物濃度を有する第1層と、前記第1層よりも上方に配置され、アルミニウムおよびガリウムを含み、第2p型不純物濃度を有する第2層と、を有する。前記第2層におけるアルミニウムの組成比の値は、前記第1層におけるアルミニウムの組成比の値よりも高い。前記第2p型不純物濃度は、前記第1p型不純物濃度よりも低い。
【0006】
本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法は、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第1n側層と、第1活性層と、第1p側層と、を含む第1発光部を形成する工程と、前記第1発光部の上方に、n型不純物を含む窒化物半導体層からなる中間層を形成する工程と、前記中間層の上方に第2発光部を形成する工程であって、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第2n側層と、第2活性層と、第2p側層と、を含む第2発光部を形成する工程と、を備える。前記中間層を形成する工程において、前記第1n側層のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有する前記中間層を形成する。前記第1p側層を形成する工程は、アルミニウムおよびガリウムを含み、第1p型不純物濃度を有する第1層を形成する工程と、アルミニウムおよびガリウムを含み、アルミニウムの組成比の値が前記第1層のアルミニウムの組成比の値よりも高く、前記第1p型不純物濃度よりも低い第2p型不純物濃度を有する第2層を、前記第1層の上方に形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、順方向電圧が低い発光素子および発光素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る発光素子を示す断面図である。
【
図2A】
図1の第1p側層を拡大して示す断面図である。
【
図2B】
図1の第2p側層を拡大して示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】
図3の第1p側層を形成する工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図4B】
図3の第2p側層を形成する工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る発光素子の製造過程を説明するための断面図である。
【
図6】実施形態に係る発光素子の製造過程を説明するための断面図である。
【
図7】実施形態に係る発光素子の製造過程を説明するための断面図である。
【
図8】実施形態に係る発光素子の製造過程を説明するための断面図である。
【
図9A】参考例および実施例1~3に係る発光素子の各順方向電圧Vfを正規化した値Vf/Vfrefを示すグラフである。
【
図9B】参考例および実施例1~3に係る発光素子の各出力Poを正規化した値Po/Porefを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
また、以下では、説明をわかりやすくするために、XYZ直交座標系を用いて、各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交している。またX軸が延びる方向を「X方向」とし、Y軸が延びる方向を「Y方向」とし、Z軸が延びる方向を「Z方向」とする。また、説明をわかりやすくするために、上方をZ方向、下方をその反対方向とするが、これらの方向は、相対的なものであり重力方向とは無関係である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る発光素子10を示す断面図である。
図2Aは、
図1の第1p側層114を拡大して示す断面図である。
図2Bは、
図1の第2p側層133を拡大して示す断面図である。
発光素子10は、
図1に示すように、基板11と、半導体構造体12と、n側電極13と、p側電極14と、を備える。
【0012】
基板11の形状は平板状である。基板11の上面および下面は、例えば、XY平面に概ね平行である。基板11は、例えば、サファイア(Al2O3)からなる。ただし、基板11には、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、または窒化ガリウム(GaN)等他の材料を用いてもよい。基板11の上には、半導体構造体12が配置されている。例えば、基板11としてサファイア基板を用いる場合、半導体構造体12はサファイア基板のC面上に配置される。
【0013】
半導体構造体12は、例えば、窒化物半導体からなる複数の半導体層が積層された積層体である。ここで、「窒化物半導体」とは、窒素を含む半導体であって、典型的には、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比xおよびyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものである。
【0014】
半導体構造体12は、下方から上方に向かって順に、第1発光部110と、中間層120と、第2発光部130と、を有する。第1発光部110は、下方から上方に向かって順に、第1n側層112と、第1活性層113と、第1p側層114と、を含む。第1発光部110は、第1n側層112の下に配置された下地層111をさらに含む。第2発光部130は、下方から上方に向かって順に、第2n側層131と、第2活性層132と、第2p側層133と、を含む。以下、半導体構造体12の各部について詳述する。
【0015】
第1発光部110の下地層111は、基板11の上に配置されている。下地層111は、例えば、アンドープの半導体層を含む。本明細書において、「アンドープ」とは、n型不純物およびp型不純物を意図的にドープしていないことを意味する。すなわち、アンドープの半導体層は、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスを供給させずに形成した半導体層である。「n型不純物」とは、ドナーとなる不純物を意味する。「p型不純物」とは、アクセプターとなる不純物を意味する。アンドープの半導体層が、n型不純物および/またはp型不純物を意図的にドープした層と隣接している場合、その隣接した層からの拡散等によって、アンドープの半導体層にn型不純物および/またはp型不純物が含まれる場合がある。
【0016】
下地層111におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。下地層111の上には、第1n側層112が配置されている。ただし、第1発光部に下地層が配置されておらず、第1n側層が基板上に直接配置されていてもよい。
【0017】
第1n側層112は、1以上のn型半導体層を含む。第1n側層112におけるn型半導体層は、例えば、n型不純物であるシリコン(Si)がドープされたGaNを含む。第1n側層112におけるn型半導体層は、インジウム(In)またはアルミニウム(Al)等をさらに含んでもよい。
【0018】
また、第1n側層112は、電子を供給するという機能を有していればよく、1以上のアンドープの半導体層をさらに含んでいてもよい。第1n側層112におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。
【0019】
第1n側層112の上面は、第1面112s1、第2面112s2、および第3面112s3を含む。第1面112s1は、X-Y平面に概ね平行な面である。第2面112s2は、第1面112s1よりも上方に位置し、X-Y平面に概ね平行な面である。上面視において、第2面112s2は第1面112s1とX方向に隣り合っている。第3面112s3は、第1面112s1と第2面112s2の間に位置し、Y-Z平面に概ね平行な面である。第2面112s2上には、第1活性層113が配置されている。
【0020】
第1活性層113は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造を有する。複数の井戸層には、例えば窒化インジウムガリウム(InGaN)を用いることができる。複数の障壁層には、例えばGaNを用いることができる。井戸層および障壁層は、例えば、アンドープの半導体層であってもよい。また、井戸層および障壁層の少なくとも一部にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第1活性層113の上には、第1p側層114が配置されている。
【0021】
図2Aに示すように、第1p側層114は、第1層114aと、第1層114aよりも上方に配置される第2層114cと、を有する。第1p側層114は、本実施形態では、第1層114aと第2層114cとの間に配置される第5層114bと、第2層114c上に配置される第6層114dと、第6層114d上に配置される第7層114eと、をさらに有する。すなわち、第1p側層114は、下方から上方に向かって順に第1層114a、第5層114b、第2層114c、第6層114d、および第7層114eを有する。
【0022】
第1層114aは、p型不純物であるマグネシウム(Mg)がドープされ、窒化アルミニウム(AlN)とGaNを混晶した窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を含む。以下、第1層114aのp型不純物濃度を「第1p型不純物濃度」という。第1p型不純物濃度は、例えば、1×1020cm-3以上3×1020cm-3以下である。第1層114aにおけるAlの組成比の値は、例えば、5%以上15%以下である。
【0023】
第5層114bは、アンドープのAlGaNを含む。第5層114bにおけるAlの組成比の値は、例えば、第1層114aにおけるAlの組成比の値と概ね同じである。ただし、第5層のAlの組成比の値と第1層の組成比の値との関係は、上記に限定されない。
【0024】
第2層114cは、p型不純物であるMgがドープされたAlGaNからなる。以下、第2層114cのp型不純物濃度を「第2p型不純物濃度」という。第2p型不純物濃度は、第1p型不純物濃度よりも低い。第1層114aよりも中間層120に近い第2層114cの第2p型不純物濃度を低くすることで、第1p側層114から中間層120側に拡散するp型不純物の量を低減できる。これにより、pn接合を形成するn型半導体層が意図せずp型化することが低減され、pn接合により形成される空乏層の幅を狭くすることができるので、発光素子10の順方向電圧Vfを低減できる。
【0025】
また、第1活性層113上に配置される第1層114aの第1p型不純物濃度を高くすることで、第1p側層114から第1活性層113への正孔の注入効率を向上できる。これにより、発光素子10の順方向電圧Vfを低減できる。第2p型不純物濃度は、例えば、4×1019cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0026】
また、第2層114cにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも高い。そのため、第2層114cを、第1活性層113から第2層114cよりも上方に位置する第6層114d、第7層114eおよび中間層120等に電子が向かうことを低減する電子ブロック層として好適に機能させることができる。また、第1活性層113上に配置される第1層114aにおけるAlの組成比の値を低くすることで、第1p側層114から第1活性層113への正孔の注入効率を向上できる。その結果、発光素子10の順方向電圧Vfを低減できる。第2層114cにおけるAlの組成比の値は、例えば、25%以上35%以下である。
【0027】
第6層114dは、本実施形態ではアンドープのGaNを含む。ただし、第6層114dには、p型不純物であるMgがドープされてもよい。
【0028】
第7層114eは、例えば、1以上のp型半導体層を含む。第7層114eにおけるp型半導体層は、例えば、p型不純物であるMgがドープされたGaNを含む。第7層114eにおけるp型半導体層のp型不純物濃度は、第1p型不純物濃度及び第2p型不純物濃度よりも高い。第7層114eにおけるp型半導体層のp型不純物濃度は、例えば、3×1020cm-3以上5×1020cm-3以下である。第7層114eは、例えば1以上のアンドープの半導体層をさらに含んでもよい。第7層114eにおけるアンドープの半導体層は、例えば、GaNを含む。
【0029】
第1層114aの厚みは、例えば、3nm以上7nm以下である。第5層114bの厚みは、例えば、第1層114aの厚みより小さい。第5層114bの厚みは、例えば、0.5nm以上3nm以下である。第2層114cの厚みは、例えば、第1層114aの厚みと概ね同じである。第6層114dの厚みは、例えば、第1層114aの厚みより小さく第5層114bの厚みより大きい。第6層114dの厚みは、例えば、1nm以上5nm以下である。なお、各層の厚みとは、半導体構造体12の積層方向における厚みである。
【0030】
中間層120は、
図1に示すように、第1発光部110と第2発光部130との間に配置されている。中間層120は、n型不純物を含む。具体的には、中間層120は、第1n側層112および後述する第2n側層131のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有するn型半導体層を含む。中間層120におけるn型半導体層は、例えば、n型不純物としてSiがドープされたGaNを含む。中間層120におけるn型半導体層のn型不純物濃度は、例えば、1×10
20cm
-3以上1×10
21cm
-3以下である。中間層120は、第1p側層114とトンネル接合を形成する。
【0031】
中間層120は、第1p側層114のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有するp型半導体層をさらに含んでもよい。このp型半導体層は、例えば、p型不純物としてMgがドープされたGaNを含む。中間層120のp型半導体層は、中間層120のn型半導体層よりも第1発光部110側に配置される。このように、中間層120にp型半導体層が配置されている場合、中間層120におけるn型半導体層とp型半導体層とがトンネル接合を形成する。
【0032】
第2発光部130の第2n側層131は、中間層120上に配置されている。第2n側層131は、1以上のn型半導体層を含む。第2n側層131におけるn型半導体層は、例えば、n型不純物であるSiがドープされたGaNを含む。第2n側層131におけるn型半導体層は、InまたはAl等をさらに含んでもよい。
【0033】
また、第2n側層131は、電子を供給するという機能を有していればよく、1以上のアンドープの半導体層をさらに含んでいてもよい。第2n側層131におけるアンドープの半導体層は、例えば、GaNを含む。第2n側層131上には、第2活性層132が配置されている。
【0034】
第2活性層132は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造を有する。複数の井戸層には、例えばInGaNを用いることができる。複数の障壁層には、例えばGaNを用いることができる。井戸層および障壁層は、例えば、アンドープの半導体層であってもよい。また、井戸層および障壁層の少なくとも一部にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。
【0035】
第1活性層113および第2活性層132が発する光は、例えば、紫外光または可視光である。第1活性層113の発光ピーク波長と第2活性層132の発光ピーク波長と同じとすることができる。例えば、第1活性層113と第2活性層132が青色光を発してもよい。第1活性層113の発光ピーク波長と第2活性層132の発光ピーク波長は異なっていてもよい。例えば、第1活性層113が青色光を発し、第2活性層132が緑色光を発してもよい。青色光の発光ピーク波長は、例えば、430nm以上490nm以下である。緑色光の発光ピーク波長は、例えば、500nm以上540nm以下である。
【0036】
第2活性層132の上には、第2p側層133が配置されている。第2p側層133は、
図2Bに示すように、第3層133aと、第3層133aよりも上方に配置される第4層133cを有する。第2p側層133は、本実施形態では、第3層133aと第4層133cとの間に配置される第8層133bと、第4層133c上に配置される第9層133dと、第9層133d上に配置される第10層133eと、をさらに有する。すなわち、第2p側層133は、下方から上方に向かって順に第3層133a、第8層133b、第4層133c、第9層133d、および第10層133eを有する。
【0037】
第3層133aは、p型不純物であるMgがドープされたAlGaNを含む。以下、第3層133aのp型不純物濃度を「第3p型不純物濃度」という。第1p型不純物濃度は、本実施形態では、第3p型不純物濃度よりも低い。このように、中間層120の下方に配置された第1p側層114のp型不純物濃度を低くしつつ、中間層120よりも上方に配置された第2p側層133のp型不純物濃度を高くしている。これにより、第1p側層114から中間層120に拡散するp型不純物の量を低減しつつ、第2p側層133から第2活性層132への正孔の注入効率を向上できる。第3p型不純物濃度は、例えば、2×1020cm-3以上4×1020cm-3以下である。ただし、第1p型不純物濃度と第3p型不純物濃度との関係は、上記に限定されない。
【0038】
第3層133aにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも低い。第3層133aにおけるAlの組成比の値は、例えば、1%以上5%以下である。ただし、第1層114aにおけるAlの組成比の値と第3層133aにおけるAlの組成比の値との関係は、上記に限定されない。
【0039】
第8層133bは、アンドープのAlGaNを含む。第8層133bにおけるAlの組成比の値は、例えば、第3層133aにおけるAlの組成比の値と概ね同じである。ただし、第8層133bにおけるAlの組成比の値と第3層133aにおけるAlの組成比の値との関係は、上記に限定されない。
【0040】
第4層133cは、p型不純物であるMgがドープされたAlGaNを含む。以下、第4層133cのp型不純物濃度を「第4p型不純物濃度」という。第4p型不純物濃度は、第3p型不純物濃度よりも低い。そのため、例えば100℃以上の高温下で発光素子10を駆動させる場合に、発光素子10の出力が低下することを低減できる。また、第4p型不純物濃度は、第2p型不純物濃度よりも高い。そのため、第1p側層114から中間層120に拡散するp型不純物の量を低減しつつ、第2p側層133から第2活性層132への正孔の注入効率を向上できる。第4p型不純物濃度は、例えば、5×1019cm-3以上2×1020cm-3以下である。ただし、第4p型不純物濃度、第3p型不純物濃度、および第2p型不純物濃度の関係は、上記に限定されない。
【0041】
第4層133cにおけるAlの組成比の値は、本実施形態では、第3層133aにおけるAlの組成比の値よりも高い。そのため、第4層133cを、第2活性層132から第4層133cよりも上方に位置する第9層133dおよび第10層133e等に電子が向かうことを低減する電子ブロック層として機能させることができる。また、第2活性層132上に配置される第3層133aにおけるAlの組成比の値を低くすることで、第2p側層133から第2活性層132への正孔の注入効率を向上できる。
【0042】
また、本実施形態では、第4層133cにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも高く、第2層114cにおけるAlの組成比の値よりも低い。すなわち、第2層114cにおけるAlの組成比の値>第4層133cにおけるAlの組成比の値>第1層114aにおけるAlの組成比の値>第3層133aにおけるAlの組成比の値である。第4層133cにおけるAlの組成比の値は、例えば、15%以上25%以下である。ただし、第1層114aのAl組成比の値、第2層114cのAl組成比の値、第3層133aのAl組成比の値、および第4層133cのAl組成比の値は、上記の関係に限定されない。
【0043】
第9層133dは、p型不純物であるMgがドープされたGaNを含む。ただし、第9層133dには、p型不純物であるMgがドープされてもよい。
【0044】
第10層133eは、例えば、1以上のp型半導体層を含む。第10層133eにおけるp型半導体層は、例えば、p型不純物であるMgがドープされたGaNを含む。第10層133eは、例えばアンドープの半導体層をさらに含んでもよい。第10層133eにおけるアンドープの半導体層は、例えば、GaNを含む。
【0045】
第3層133aの厚みは、例えば、第1層114aの厚みと概ね同じである。第8層133bの厚みは、例えば、第5層114bの厚みと概ね同じである。第4層133cの厚みは、例えば、第2層114cの厚みと概ね同じである。第9層133dの厚みは、例えば、第6層114dの厚みと概ね同じである。ただし、これらの層114a、114b、114c、144d、133a、133b、133c、133dの厚みの関係は、上記に限定されない。
【0046】
n側電極13は、
図1に示すように、第1n側層112の第1面112s1上に配置されている。n側電極13は、第1n側層112に電気的に接続されている。p側電極14は、第2p側層133上に配置されている。p側電極14は、第2p側層133に電気的に接続されている。n側電極13とp側電極14との間に順方向電圧Vfを印加することで第1活性層113および第2活性層132が発光する。
【0047】
n側電極13とp側電極14との間に順方向電圧Vfが印加された場合、すなわち、p側電極14に正電位が、n側電極13にp側電極14よりも低い電位が印加された場合、第2n側層131と、第1p側層114との間には逆方向電圧が印加される。そのため、第2n側層131と、第1p側層114との間に電流を流すために、中間層120によるトンネル効果を利用する。第1p側層114の価電子帯に存在する電子を、第2n側層131の伝導帯にトンネリングさせることで電流を流す。
【0048】
このようなトンネル効果を得るために、前述したように、中間層120は、第1n側層112および第2n側層131のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有するn型半導体層を含む。例えば、この中間層120におけるn型半導体層と第1p側層114とにより、pn接合を形成してもよい。また、例えば、中間層120は、この中間層120におけるn型半導体層よりも下方に、第1p側層114のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有するp型半導体層をさらに含んでいてもよい。中間層120が上記したn型半導体層およびp型半導体層を含む場合、中間層120におけるn型半導体層とp型半導体層とにより、pn接合を形成してもよい。pn接合を形成する半導体層に含まれる各導電型不純物の濃度を高くすることで、pn接合により形成される空乏層の幅を狭くすることができる。そして、空乏層の幅が狭いほど、電圧印加時に、第1p側層114の価電子帯に存在する電子が、空乏層をトンネリングし、第2n側層131の伝導帯に移動しやすくなる。
【0049】
上述した実施形態では、第2層114cにおけるAlの組成比の値が、25%以上35%以下である例を説明したが、第2層114cにおけるAlの組成比の値を、例えば、8%以上25%以下としてもよい。この場合は、第1層114aにおけるAlの組成比の値を、例えば、3%以上7%以下としてもよい。これにより、第1p側層114から第1活性層113への正孔の注入効率をさらに向上できる。この場合、第4層133cにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値、及び第2層114cにおけるAlの組成比の値よりも高い。
【0050】
次に、発光素子10の製造方法を説明する。
図3は、本実施形態に係る発光素子10の製造方法を示すフローチャートである。
図4Aは、
図3の第1p側層114を形成する工程の詳細を示すフローチャートである。
図4Bは、
図3の第2p側層133を形成する工程の詳細を示すフローチャートである。
図5は、本実施形態に係る発光素子10の製造過程を説明するための断面図である。
図6は、本実施形態に係る発光素子10の製造過程を説明するための断面図である。
図7は、本実施形態に係る発光素子10の製造過程を説明するための断面図である。
図8は、本実施形態に係る発光素子10の製造過程を説明するための断面図である。
【0051】
発光素子10の製造方法を、
図3を参照して概説する。発光素子10の製造方法は、第1発光部110を形成する工程S1と、中間層120を形成する工程S2と、第2発光部130を形成する工程S3と、n側電極13およびp側電極14を形成する工程S4と、を備える。
【0052】
半導体構造体12に含まれる第1発光部110、中間層120、および第2発光部130は、例えば、圧力および温度の調整が可能な炉内において、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により形成される。具体的には、半導体構造体12は、炉内にキャリアガスおよび原料ガスを供給することで形成される。
【0053】
キャリアガスとしては、例えば、水素(H2)ガスまたは窒素(N2)ガス等を用いることができる。
【0054】
原料ガスは、形成する半導体層に応じて適宜選択される。Gaを含む半導体層を形成する場合は、例えば、トリメチルガリウム(TMG)ガスまたはトリエチルガリウム(TEG)ガス等のGaを含む原料ガスが用いられる。Nを含む半導体層を形成する場合は、例えば、アンモニア(NH3)ガス等のNを含む原料ガスが用いられる。Alを含む半導体層を形成する場合は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)ガス等のAlを含む原料ガスが用いられる。Inを含む半導体層を形成する場合は、例えば、トリメチルインジウム(TMI)等のInを含む原料ガスが用いられる。Siを含む半導体層を形成する場合は、例えば、モノシラン(SiH4)ガス等のSiを含むガスが用いられる。Mgを含む半導体層を形成する場合は、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)ガス等のMgを含む原料ガスが用いられる。なお、以下において、炉内に、一の元素を含む原料ガスおよび他の元素を含む原料ガスを供給することを、単に「一の元素および他の元素を含む原料ガスを供給する」ともいう。以下、各工程について詳述する。
【0055】
先ず、第1発光部110を形成する工程S1を行う。
第1発光部110を形成する工程S1は、下地層111を形成する工程S11と、第1n側層112を形成する工程S12と、第1活性層113を形成する工程S13と、第1p側層114を形成する工程S14と、を含む。
【0056】
下地層111を形成する工程S11においては、炉内に、下地層111に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、下地層111を基板11上に形成する。
【0057】
第1n側層112を形成する工程S12においては、炉内に、第1n側層112に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第1n側層112を下地層111上に形成する。
【0058】
第1活性層113を形成する工程S13は、炉内に、第1活性層113に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第1活性層113を第1n側層112上に形成する。
【0059】
第1p側層114を形成する工程S14は、
図4Aに示すように、第1層114aを形成する工程S14aと、第5層114bを形成する工程S14bと、第2層114cを形成する工程S14cと、第6層114dを形成する工程S14dと、第7層114eを形成する工程S14eと、を有する。
【0060】
第1層114aを形成する工程S14aでは、例えば、炉内に、Al、Ga、およびNを含む原料ガスと、p型不純物であるMgを含む原料ガスとを供給する。これにより、MgがドープされたAlGaNを含む第1層114aを第1活性層113上に形成する。
【0061】
第5層114bを形成する工程S14bでは、例えば、炉内に、Al、Ga、およびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスは供給しない。これにより、アンドープのAlGaNを含む第5層114bを第1層114a上に形成する。
【0062】
本実施形態では、第5層114bを形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第5層114bを形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第5層114bを形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のAlを含む原料ガスの流量と概ね同じである。これにより、第5層114bにおけるAlの組成比の値が、第1層114aにおけるAlの組成比の値と概ね同じとなる。
【0063】
第2層114cを形成する工程S14cでは、例えば、炉内に、Al、Ga、およびNを含む原料ガスと、p型不純物であるMgを含む原料ガスとを供給する。これにより、MgがドープされたAlGaNを含む第2層114cを第5層114b上に形成する。
【0064】
本実施形態では、第2層114cを形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第2層114cを形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第2層114cを形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のAlを含む原料ガスの流量よりも多い。これにより、第2層114cにおけるAlの組成比の値を、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも高くできる。
【0065】
さらに、本実施形態では、第2層114cを形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のMgを含む原料ガスの流量よりも少ない。これにより、第2p型不純物濃度を、第1p型不純物濃度よりも低くできる。
【0066】
第6層114dを形成する工程S14dでは、例えば、炉内に、GaおよびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスは供給しない。これにより、アンドープのGaNを含む第6層114dを第2層114c上に形成する。
【0067】
第7層114eを形成する工程S14eでは、例えば、アンドープの半導体層と、p型半導体層と、を形成する。アンドープの半導体層は、炉内に、GaおよびNを含む原料ガスを供給し、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスは供給しないことで形成する。p型半導体層は、炉内に、GaおよびNを含む原料ガスと、p型不純物であるMgを含む原料ガスと、を供給することで形成する。
【0068】
以上により、
図5に示すように、下地層111、第1n側層112、第1活性層113、および第1p側層114を含む第1発光部110を、基板11上に形成する。
【0069】
次に、中間層120を形成する工程S2を行う。
中間層120を形成する工程S2では、例えば、炉内に、キャリアガスと、GaおよびNを含む原料ガスと、n型不純物であるSiを含む原料ガスとを供給する。これにより、
図6に示すように、中間層120を第1発光部110上に形成する。なお、中間層120は、MOCVD法ではなく、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法で形成してもよい。
【0070】
次に、第2発光部130を形成する工程S3を行う。
第2発光部130を形成する工程S3は、
図3に示すように、第2n側層131を形成する工程S31と、第2活性層132を形成する工程S32と、第2p側層133を形成する工程S33と、を含む。
【0071】
第2n側層131を形成する工程S31においては、炉内に、第2n側層131に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第2n側層131を中間層120上に形成する。
【0072】
第2活性層132を形成する工程S32は、炉内に、第2活性層132に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第2活性層132を第2n側層131上に形成する。
【0073】
第2p側層133を形成する工程S33は、
図4Bに示すように、第3層133aを形成する工程S33aと、第8層133bを形成する工程S33bと、第4層133cを形成する工程S33cと、第9層133dを形成する工程S33dと、第10層133eを形成する工程S33eと、を有する。
【0074】
第3層133aを形成する工程S33aでは、例えば、炉内に、Al、Ga、およびNを含む原料ガスと、p型不純物であるMgを含む原料ガスとを供給する。これにより、MgがドープされたAlGaNを含む第3層133aを第2活性層132上に形成する。
【0075】
本実施形態では、第3層133aを形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第3層133aを形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第3層133aを形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のAlを含む原料ガスの流量よりも少ない。これにより、第3層133aにおけるAlの組成比の値が、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも低くなる。
【0076】
また、本実施形態では、第3層133aを形成する際のMgを含む原料ガスの流量が、第1層114aを形成する際のMgを含む原料ガスの流量よりも多い。そのため、第3p型不純物濃度を第1p型不純物濃度よりも高くできる。
【0077】
第8層133bを形成する工程S33bでは、例えば、炉内に、Al、Ga、およびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスは供給しない。これにより、アンドープのAlGaNを含む第8層133bを第3層133a上に形成する。
【0078】
本実施形態では、第8層133bを形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第3層133aを形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第8層133bを形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第3層133aを形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じである。第8層133bを形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第3層133aを形成する際のAlを含む原料ガスの流量と同じである。これにより、第8層133bにおけるAlの組成比の値が、第3層133aにおけるAlの組成比の値と概ね同じとなる。
【0079】
第4層133cを形成する工程S33cでは、例えば、炉内に、Al、Ga、およびNを含む原料ガスと、p型不純物であるMgを含む原料ガスとを供給する。これにより、MgがドープされたAlGaNを含む第4層133cを第8層133b上に形成する。
【0080】
本実施形態では、第4層133cを形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のGaを含む原料ガスの流量と同じである。第4層133cを形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のNを含む原料ガスの流量と同じである。第4層133cを形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第1層114aを形成する際のAlを含む原料ガスの流量よりも多く、第2層114cを形成する際のAlを含む原料ガスの流量よりも少ない。これにより、第4層133cにおけるAlの組成比の値を、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも高く、第2層114cにおけるAlの組成比の値よりも低くできる。
【0081】
さらに、本実施形態では、第4層133cを形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、第3層133aを形成する際のMgを含む原料ガスの流量よりも少なく、第2層114cを形成する際のMgを含む原料ガスの流量よりも多い。これにより、第4p型不純物濃度を、第3p型不純物濃度よりも低く、第2p型不純物濃度よりも高くできる。
【0082】
第9層133dを形成する工程S33dでは、例えば、炉内に、GaおよびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスは供給しない。これにより、アンドープのGaNを含む第9層133dを第4層133c上に形成する。ただし、この際、Mg等のp型不純物を含む原料ガスを供給してもよい。
【0083】
第10層133eを形成する工程S33eでは、例えば、アンドープの半導体層と、p型半導体層と、を形成する。アンドープの半導体層は、炉内に、GaおよびNを含む原料ガスを供給し、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスは供給しないことで形成される。p型半導体層は、炉内に、GaおよびNを含む原料ガスと、p型不純物であるMgを含む原料ガスと、を供給することで形成される。
【0084】
以上により、
図7に示すように、第2n側層131、第2活性層132、および第2p側層133を含む第2発光部130を、中間層120上に形成する。
【0085】
次に、n側電極13およびp側電極14を形成する工程S4を行う。
n側電極13およびp側電極14を形成する工程S4では、先ず、
図8に示すように、半導体構造体12の一部を除去して、第1n側層112の第1面112s1および第3面112s3を、第1活性層113、第1p側層114、中間層120、および第2発光部130から露出させる。半導体構造体12の一部は、例えば、レジストを用いて選択的にエッチングすることにより除去することができる。
【0086】
次に、露出した第1面112s1の上にn側電極13を形成する。また、第2p側層133上にp側電極14を形成する。n側電極13およびp側電極14は、例えば、スパッタリング法または蒸着法により形成することができる。
【0087】
以上により、発光素子10を得ることができる。ただし、発光素子10の製造方法は、上記の方法に限定されない。例えば、発光素子10の製造方法は、下地層111を形成する工程S11を含まず、基板11上に第1n側層112が直接形成されてもよい。
【0088】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態に係る発光素子10は、第1発光部110と、中間層120と、第2発光部130と、を備える。第1発光部110は、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第1n側層112と、第1活性層113と、第1p側層114と、を含む。中間層120は、第1発光部110の上方に配置され、n型不純物を含む窒化物半導体からなる。第2発光部130は、中間層120の上方に配置される。第2発光部130は、下方から上方に向かって順に、それぞれが窒化物半導体からなる、第2n側層131と、第2活性層132と、第2p側層133と、を含む。中間層120のn型不純物濃度は、第1n側層112のn型不純物濃度よりも高い。第1p側層114は、AlおよびGaを含み、第1p型不純物濃度を有する第1層114aと、第1層114aよりも上方に配置され、AlおよびGaを含み、第2p型不純物濃度を有する第2層114cと、を有する。第2層114cにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも高い。第2p型不純物濃度は、第1p型不純物濃度よりも低い。
【0089】
このように第2層114cにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも高いため、第2層114cを電子ブロック層として機能させつつ、第1p側層114から第1活性層113への正孔の注入効率を向上できる。さらに、第2p型不純物濃度は、第1p型不純物濃度よりも低いため、第1p側層114から中間層120側に拡散するp型不純物の量を低減することができる。これにより、第2p型不純物濃度よりも高い第1p型不純物濃度の第1p側層114から第1活性層113への正孔の注入効率を向上できる。以上により、発光素子10の順方向電圧Vfを低減できる。
【0090】
また、第2p側層133は、AlおよびGaを含み、第3p型不純物濃度を有する第3層133aと、第3層133aよりも上方に配置され、AlおよびGaを含み、第4p型不純物濃度を有する第4層133cと、を有する。第4層133cにおけるAlの組成比の値は、第3層133aにおけるAlの組成比の値よりも高い。第4p型不純物濃度は、第3p型不純物濃度よりも低い。このように第3層133aにおけるAlの組成比の値は、第4層133cにおけるAlの組成比の値よりも高いため、第4層133cを電子ブロック層として機能させつつ、第3層133aから第2活性層132への正孔の注入効率を向上できる。さらに、第3p型不純物濃度が第4p型不純物濃度よりも高いため、第2p側層133から第2活性層132への正孔の注入効率を向上できる。また、例えば100℃以上の高温下で発光素子10を駆動する場合に、発光素子10の出力が低下することを低減できる。
【0091】
また、第4層133cにおけるAlの組成比の値は、第2層114cにおけるAlの組成比の値よりも低く、第3層133aにおけるAlの組成比の値は、第1層114aにおけるAlの組成比の値よりも低い。これにより、第2活性層132に正孔が供給されやすくなり、順方向電圧Vfを低減できる。
【0092】
また、第1p型不純物濃度は、第3p型不純物濃度よりも低く、第2p型不純物濃度は、第4p型不純物濃度よりも低い。そのため、第1p側層114から中間層120に拡散するp型不純物の量を低減しつつ、第2p側層133から第2活性層132への正孔の注入効率を向上できる。
【0093】
<実施例>
次に、実施例および参考例について説明する。
参考例および実施例1~3に係る発光素子を作成した。参考例および実施例1~3に係る発光素子は、それぞれ、
図1に示す発光素子10と同様の層構造を有する。参考例および実施例1~3に係る発光素子は、それぞれ、下記の表に示すAlを含む原料ガスの流量およびMgを含む原料ガスの流量で、第1p側層の第1層、第5層、および第2層と、第2p側層の第3層、第8層、および第4層を形成し、その他の層の形成方法が共通するように作成した。
【0094】
【0095】
なお、上記の表において、流量F2は、流量F1よりも多い。以下、参考例および実施例1~3に係る発光素子の製造方法について詳述する。
【0096】
先ず、サファイアからなる基板上に、アンドープのGaN層を含む厚み約5μmの下地層を形成した。
【0097】
次に、下地層上に、SiがドープされたGaN層と、アンドープのGaN層とを含む厚み約5.5μmの第1n側層を形成した。
【0098】
次に、第1n側層上に、アンドープのGaN層を含む複数の障壁層と、アンドープのInGaN層を含む複数の井戸層と、を含む厚み約50nmの第1活性層を形成した。第1活性層は、障壁層と井戸層のペアを7組含むように形成した。
【0099】
次に、第1活性層上に、第1層、第5層、第2層、第6層、および第7層を含む第1p側層を形成した。
【0100】
第1層は、MgがドープされたAlGaN層を含む。第1層の厚みは、約5nmである。参考例および実施例1~3においては、第1層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量を概ね同じ流量とし、第1層を形成する際のNを含む原料ガスの流量を概ね同じ流量とした。また、参考例および実施例1~3のいずれにおいても、第1層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、概ね同じ流量F1とした。
【0101】
参考例においては、第1層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量を流量F3とした。実施例1~3においては、それぞれ、第1層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、流量F3の1.25倍の流量とした。
【0102】
第5層は、アンドープのAlGaNを含む。第5層の厚みは、約2nmである。参考例および実施例1~3においては、第5層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第1層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じとし、第5層を形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第1層を形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じとし、第5層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第1層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量と概ね同じとした。したがって、参考例および実施例1~3のいずれにおいても、第5層におけるAlの組成比の値は、第1層におけるAlの組成比の値と概ね同じである。
【0103】
第2層は、MgがドープされたAlGaNを含む。第2層の厚みは、約5nmである。参考例および実施例1~3においては、第2層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第1層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量と同じとし、第2層を形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第1層を形成する際のNを含む原料ガスの流量と同じとした。また、参考例および実施例1~3のいずれにおいても、第2層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、流量F1より多い流量F2とした。したがって、参考例および実施例1~3のいずれにおいても、第2層におけるAlの組成比の値は、第1層におけるAlの組成比の値よりも高い。
【0104】
また、参考例においては、第2層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量を、第1層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量と同じ流量F3とした。したがって、参考例では、第2p型不純物濃度は、第1p型不純物濃度と概ね同じである。
【0105】
実施例1~3においては、第2層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量を、流量F3の0.5倍の流量とした。したがって、実施例1~3では、第2p型不純物濃度は、第1p型不純物濃度よりも低い。
【0106】
第6層は、アンドープのGaNを含む。第6層の厚みは、約3nmである。
【0107】
第7層は、アンドープのGaNと、MgがドープされたGaNと、を含む。第7層の厚みは、約70nmである。
【0108】
次に、第1p側層上に、SiがドープされたGaN層を含む厚み約140nmの中間層を形成した。
【0109】
次に、中間層上に、複数のSiがドープされたInGaN層と、複数のSiがドープされたGaN層とを含む厚み約56nmの第2n側層を形成した。
【0110】
次に、第2n側層上に、アンドープのGaNからなる複数の障壁層と、アンドープのInGaNからなる複数の井戸層と、を含む厚み約50nmの第2活性層を形成した。第2活性層は、障壁層と井戸層のペアを7組含むように形成した。
【0111】
次に、第2活性層上に、第3層、第8層、第4層、第9層、および第10層を含む第2p側層を形成した。
【0112】
第3層は、MgがドープされたAlGaNを含む。第3層の厚みは、約5nmである。参考例および実施例1~3においては、第3層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量を、第1層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じとし、第3層を形成する際のNを含む原料ガスの流量を、第1層を形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じとした。
【0113】
また、参考例、実施例1、および実施例2においては、第3層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第1層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量と同じ流量F1とした。したがって、参考例、実施例1および実施例2では、第3層におけるAlの組成比の値は、第1層におけるAlの組成比の値と概ね同じである。
【0114】
実施例3においては、第3層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、流量F1の0.75倍とした。すなわち、実施例3では、第3層におけるAlの組成比の値が、第1層におけるAlの組成比の値よりも低い。
【0115】
また、参考例においては、第3層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量を、第1層を形成する際のMgを原料ガスの流量と同じ流量F3とした。実施例1および実施例3においては、第3層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、流量F3の1.25倍の流量とした。すなわち、参考例、実施例1、および実施例3においては、第3p型不純物濃度が、第1p型不純物濃度と概ね同じである。
【0116】
実施例2においては、第3層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、流量F3の1.5倍の流量とした。すなわち、実施例2においては、第3p型不純物濃度が、第1p型不純物濃度よりも高い。
【0117】
第8層は、アンドープのAlGaNを含む。第8層の厚みは、約2nmである。参考例および実施例1~3においては、第8層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第3層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量と概ね同じとし、第8層を形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第3層を形成する際のNを含む原料ガスの流量と概ね同じとし、第8層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第3層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量と概ね同じとした。したがって、参考例および実施例1~3のいずれにおいても、第8層におけるAlの組成比の値は、第3層におけるAlの組成比の値と概ね同じである。
【0118】
第4層は、MgがドープされたAlGaNを含む。第4層の厚みは、約5nmである。参考例および実施例1~3においては、第4層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量は、第3層を形成する際のGaを含む原料ガスの流量と同じとし、第4層を形成する際のNを含む原料ガスの流量は、第3層を形成する際のNを含む原料ガスの流量と同じとした。
【0119】
また、参考例、実施例1および実施例2においては、第4層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、第3層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量F1よりも多く、第2層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量と同じ流量F2とした。したがって、参考例、実施例1および実施例2においては、第4層におけるAlの組成比の値は、第3層におけるAlの組成比の値よりも高く、第2層におけるAlの組成比の値と概ね同じである。
【0120】
実施例3においては、第4層を形成する際のAlを含む原料ガスの流量は、流量F2の0.75倍とした。したがって、実施例3においては、第4層におけるAlの組成比の値は、第3層におけるAlの組成比の値よりも高く、第2層におけるAlの組成比の値よりも低い。
【0121】
また、参考例においては、第4層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量を、第1層、第2層、および第3層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量と概ね同じ流量F3とした。したがって、参考例においては、第4p型不純物濃度は、第2p型不純物濃度および第3p型不純物濃度と概ね同じである。
【0122】
実施例1および実施例3においては、第4層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、流量F3の0.5倍の流量とした。したがって、実施例1および実施例3においては、第4p型不純物濃度は、第2p型不純物濃度と概ね同じであり、第3p型不純物濃度よりも低い。
【0123】
実施例2においては、第4層を形成する際のMgを含む原料ガスの流量は、流量F3の1.5倍の流量とした。すなわち、実施例2においては、第4p型不純物濃度は、第2p型不純物濃度よりも高く、第3p型不純物濃度と概ね同じである。
【0124】
第9層は、アンドープのGaN層を含む。第9層の厚みは、約3nmである。
【0125】
第10層は、アンドープのGaN層と、MgがドープされたGaN層と、を含む。第10層の厚みは、約100nmである。
【0126】
次に、第1n側層、第1活性層、第1p側層、中間層、第2n側層、第2活性層、および第2p側層の一部を除去して、露出した第1n側層上にn側電極を形成し、第2p側層上にp側電極を形成した。
【0127】
図9Aは、参考例および実施例1~3に係る発光素子の各順方向電圧Vfを正規化した値Vf/Vfrefを示すグラフである。
図9Bは、参考例および実施例1~3に係る発光素子の各出力Poを正規化した値Po/Porefを示すグラフである。
作成した参考例および実施例1~3に係る発光素子の順方向電圧Vfをそれぞれ測定した。その結果を
図9Aに示す。なお、
図9Aの縦軸は、参考例における順方向電圧Vfを基準となる順方向電圧Vfrefとし、測定した各順方向電圧Vfを基準となる順方向電圧Vfrefで除算することにより、正規化した値である。
【0128】
同様に、作成した参考例および実施例1~3に係る発光素子の出力Poをそれぞれ測定した。その結果を
図9Bに示す。なお、
図9Bの縦軸は、参考例における出力Poを基準となる出力Porefとし、測定した各出力Poを基準となる出力Porefで除算することにより、正規化した値である。
【0129】
実施例1の順方向電圧Vfは、参考例の順方向電圧Vfより低く、実施例1の出力Poは、参考例の出力Poよりも高い。実施例1は、第2p型不純物濃度が第1p型不純物濃度よりも低く、第4p型不純物濃度が第3p型不純物濃度よりも低い点において、参考例と相違する。実施例1では、第2p型不純物濃度を第1p型不純物濃度よりも低くすることで、第1p側層から中間層120側に拡散するMgの量を低減することができる。これにより、第2p型不純物濃度よりも高い第1p型不純物濃度の第1p側層から第1活性層への正孔の注入効率を向上できたと考えられる。また、第3p型不純物濃度を第4p型不純物濃度よりも高くすることで、第2p側層から第2活性層への正孔の注入効率を向上できたと考えられる。そのため、順方向電圧Vfを低減し、出力Poを向上できたと考えられる。したがって、第2p型不純物濃度が第1p型不純物濃度よりも低く、第4p型不純物濃度が第3p型不純物濃度よりも低いことが好ましい。
【0130】
また、実施例2の順方向電圧Vfは、実施例1の順方向電圧Vfより低く、実施例2の出力Poは、実施例1の出力Poよりも高い。実施例2においては、第3p型不純物濃度が第1p型不純物濃度よりも高く、第4p型不純物濃度が第2p型不純物濃度よりも高い点において、実施例1と相違する。実施例2においては、第3p型不純物濃度を第1p型不純物濃度よりも高く、第4p型不純物濃度を第2p型不純物濃度よりも高くしたことで、第1p側層から中間層側に拡散するMgの量を低減しつつ、第2p側層から第2活性層への正孔の注入効率を向上できたと考えられる。そのため、順方向電圧Vfを低減し、出力Poを向上できたと考えられる。したがって、第3p型不純物濃度が第1p型不純物濃度よりも高く、第4p型不純物濃度が第2p型不純物濃度よりも高いことが好ましい。
【0131】
また、実施例3の順方向電圧Vfは、実施例1の順方向電圧Vfより低く、実施例3の出力Poは、実施例1の出力Poよりも高い。実施例3は、第3層のAlの組成比の値が第1層のAlの組成比の値よりも低く、第4層のAlの組成比の値が第2層のAlの組成比の値よりも低い点において、実施例1と相違する。これにより、実施例3においては、第2活性層に正孔が供給されやすくなり、順方向電圧Vfを低減できたと考えられる。したがって、第3層のAlの組成比の値が第1層のAlの組成比の値よりも低く、第4層のAlの組成比の値が第2層のAlの組成比の値よりも低いことが好ましい。
【符号の説明】
【0132】
10 :発光素子
11 :基板
12 :半導体構造体
13 :n側電極
14 :p側電極
110 :第1発光部
111 :下地層
112 :第1n側層
112s1 :第1面
112s2 :第2面
112s3 :第3面
113 :第1活性層
114 :第1p側層
114a :第1層
114b :第5層
114c :第2層
114d :第6層
114e :第7層
120 :中間層
130 :第2発光部
131 :第2n側層
132 :第2活性層
133 :第2p側層
133a :第3層
133b :第8層
133c :第4層
133d :第9層
133e :第10層