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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080293
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02253 20210101AFI20230601BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/40
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066028
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2019100022の分割
【原出願日】2019-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2018166642
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 創一郎
(72)【発明者】
【氏名】金澤 龍也
(57)【要約】
【課題】 互いに偏光方向の異なる複数の発光素子からの光を、偏光方向を揃えて出射させることが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】 発光装置は、底部を有する基部と、基部の底部に配置される第1半導体レーザ素子と、基部の底部に配置される、第1半導体レーザ素子と偏光方向の異なる第2半導体レーザ素子と、第1半導体レーザ素子及び第2半導体レーザ素子から放射された光が入射するレンズ部材と、レンズ部材に配され、第1半導体レーザ素子の偏光方向を変える波長板と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を有する基部と、
前記基部の底部上に配置される第1半導体レーザ素子と、
下面側にレンズ面が設けられ、かつ、上面側にはレンズ面が設けられておらず、平面である上面を有し、前記第1半導体レーザ素子の上方に配置され、前記基部に固定されるレンズ部材と、
前記レンズ部材の前記上面に接合され、光の偏光方向を変える波長板と、
を有し、
前記レンズ部材は、前記レンズ面を有するレンズ部と前記上面を有する非レンズ部が同一材料により一体合成されて形成され、前記レンズ面に前記第1半導体レーザ素子から放射された光が入射し、
前記波長板には、前記第1半導体レーザ素子から放射され、前記レンズ面を通過した光が入射する発光装置。
【請求項2】
前記基部に接合され、前記第1半導体レーザ素子が配置される空間を気密封止する蓋部材をさらに有し、
前記レンズ部材は、前記レンズ面よりも下方に位置する、平面である下面を有し、
前記レンズ部材は、前記レンズ部材の下面が前記蓋部材に接合されることで、前記蓋部材を介して前記基部に固定される、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記レンズ部材の前記レンズ面は、前記発光装置が有する他の構成要素と接触しない、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記波長板は、樹脂接着剤により、前記レンズ部材に接合される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記基部の底部上に配置され、前記第1半導体レーザ素子から放射される光を反射する光反射部材をさらに有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記基部は、前記第1半導体レーザ素子が配置される前記底部と、上面視で、前記第1半導体レーザ素子を囲う枠部と、を有し、セラミックを主材料として形成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基部は、前記第1半導体レーザ素子が配置される前記底部と、上面視で、前記第1半導体レーザ素子を囲う枠部と、を有し、
前記底部は金属を主材料として形成され、
前記枠部はセラミックを主材料として形成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記枠部は、内側面の一部に設けられる段差部を有し、
前記段差部の上面には、ワイヤによって前記第1半導体レーザ素子と電気的に接続される金属膜が設けられている、請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記基部の底部上に配置される、前記第1半導体レーザ素子と偏光方向の異なる第2半導体レーザ素子をさらに有し、
前記第2半導体レーザ素子から放射された光は、前記レンズ部材を通過し、
前記第2半導体レーザ素子から放射され前記レンズ部材から出射される光の偏光方向と、前記第1半導体レーザ素子から放射され前記波長板から出射される光の偏光方向が同じである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LEDやレーザなどの発光素子が複数搭載される発光装置が知られている。また、プロジェクター、液晶ディスプレイ、ヘッドライトなどの種々の光源装置では、複数の発光素子が組み込まれて光学系が設計されることも多い。このような光学系の設計では、光学特性に関する1または複数の条件が定められる。
【0003】
例えば特許文献1では、表示装置に備わるレーザ光源であって、赤色レーザ光源、青色レーザ光源及び緑色レーザ光源の偏光方向が揃えられたレーザ光源が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-90799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、偏光方向の異なる複数の発光素子が配置された発光装置に対する解決手段を開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、底部を有する基部と、前記基部の底部に配置される第1半導体レーザ素子と、前記基部の底部に配置される、第1半導体レーザ素子と偏光方向の異なる第2半導体レーザ素子と、前記第1半導体レーザ素子及び前記第2半導体レーザ素子から放射された光が入射するレンズ部材と、前記レンズ部材に配され、前記第1半導体レーザ素子の偏光方向を変える波長板と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、互いに偏光方向の異なる複数の発光素子からの光を、偏光方向を揃えて出射させる発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る発光装置の上面図である。
図3図3は、図2のIII-IIIを結ぶ直線における第1実施形態に係る発光装置の断面図である。
図4図4は、図2のIV-IVを結ぶ直線における第1実施形態に係る発光装置の断面図である。
図5図5は、図2のV-Vを結ぶ直線における第1実施形態に係る発光装置の断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る発光装置を、その構成の一部を取り除いて図1と同様の方向から見た斜視図である。
図7図7は、図6に対応する第1実施形態に係る発光装置の上面図である。
図8図8は、第1実施形態に係る発光装置の第1半導体レーザ素子及び第2半導体レーザ素子から放射される主要部分の光を示す模式図である。
図9図9は、第2実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図10図10は、第2実施形態に係る発光装置の上面図である。
図11図11は、図10のXI-XIを結ぶ直線における第1実施形態に係る発光装置の断面図である。
図12図12は、第2実施形態に係る発光装置を、その構成の一部を取り除いて図9と同様の方向から見た斜視図である。
図13図13は、第3実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図14図14は、第3実施形態に係る発光装置の上面図である。
図15図15は、図14のXV-XVを結ぶ直線における第2実施形態に係る発光装置の断面図である。
図16図16は、第3実施形態に係る発光装置を、その構成の一部を取り除いて図13と同様の方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0010】
<第1実施形態>
図1乃至図7は、第1実施形態に係る発光装置1の構造を説明するための図である。図1は、発光装置1を光が出射される側から見た斜視図である。図2は、光が出射される側を上面とした場合の、図1で示した発光装置1の上面図である。図3は、図2のIII-IIIを結ぶ直線における発光装置1の断面図である。図4は、図2のIV-IVを結ぶ直線における発光装置1の断面図である。図5は、図2のV-Vを結ぶ直線における発光装置1の断面図である。図6は、構成の一部を取り除き半導体レーザ素子が配される空間を可視化した状態の発光装置1を、図1と同様の方向から見た斜視図である。図7は、光が出射される側を上面とした場合の、図6で示した発光装置1の上面図である。なお、図7ではワイヤを含めた発光装置1の図を記し、その他の図では図が煩雑にならないようにワイヤを省略している。
【0011】
発光装置1を構成する構成要素として、基部10、1つの第1半導体レーザ素子20、2つの第2半導体レーザ素子30、サブマウント40、第1光反射部材50、第2光反射部材60、蓋部材70、レンズ部材80、接着部90、ワイヤ91、及び、波長板100を有する。
【0012】
次に、各構成要素について説明する。
基部10は、基部10の底面を形成する底部と、基部10の側面を形成する枠部とを有する。また、枠部は内側面ISを有し、内側面ISと底部の上面USによって、基部10に中央部が凹んだ凹構造が形成される(図6及び図7参照)。枠部の内側面の一部には段差部STが設けられる。なお、内側面の全体に亘って段差部STを設けてもよい。段差部の上面には金属膜が設けられる。
【0013】
基部10は、セラミックを主材料として形成することができる。なお、セラミックに限らず金属で形成してもよい。基部10の主材料としては、例えば、セラミックでは窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素を、金属では銅、アルミニウム、鉄、複合物として銅モリブデン、銅-ダイヤモンド複合材料、銅タングステンを主材料に用いることができる。あるいは、底部と枠部を、それぞれ主材料が異なる別個の部材として形成し、底部と枠部を接合して基部10を形成してもよい。例えば、底部と枠部の主材料に異なる金属を用いる場合や、金属を主材料とした底部とセラミックを主材料とした枠部とを用いる場合なども考えられる。
【0014】
第1半導体レーザ素子20及び第2半導体レーザ素子30はレーザ光を放射する。これら半導体レーザ素子から放射されるレーザ光は拡がりを有し、光の出射端面と平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。なお、FFPは、光の出射端面からある程度離れており且つ光出射端面と平行な面における光の光強度分布から特定される。FFPの形状は、ピーク強度値に対して1/e以上の強度を有する光が分布する領域として特定することができる。FFPの形状を形成する光を、主要部分の光と呼ぶものとする。
【0015】
図8は、発光装置1の第1半導体レーザ素子20と第2半導体レーザ素子30から放射される主要部分の光を示した模式図である。なお、説明に必要な発光装置1の一部分のみを記している。図8に示すように、FFPの形状は、活性層を含む複数の半導体層の積層方向における長さがそれに垂直な方向における長さよりも長い楕円形状である。本明細書では、この楕円形状の長径に対応する方向の光の拡がりを垂直方向の拡がり、短径に対応する方向の光の拡がりを水平方向の拡がりとする。
【0016】
また、主要部分の光が放射される空間内において、光の出射端面から楕円形状の長径の両端を進む光の成す角の半値をその光の垂直方向の拡がり角といい、光の出射端面から楕円形状の短径の両端を進む光の成す角の半値をその光の水平方向の拡がり角というものとする。図8に基づけば、第1及び第2半導体レーザ素子の垂直方向の拡がり角はθ1/2で、水平方向の拡がり角はθ2/2となる。第1及び第2半導体レーザ素子20及び30から放射される光の拡がり角は、いずれも、水平方向の拡がり角よりも垂直方向の拡がり角の方が大きいと言える。
【0017】
第1半導体レーザ素子20から放射される光は、第2半導体レーザ素子30から放射される光よりも、垂直方向の拡がり角が大きい。なお、採用する半導体レーザ素子の拡がり角にも依るが、第1実施形態の発光装置1を効果的に適用する上で、第1半導体レーザ素子20と第2半導体レーザ素子30との間に、第1半導体レーザ素子20から放射されるレーザ光の方が垂直方向の拡がり角が10度以上大きい、という条件が成立していることが好ましい。第1半導体レーザ素子20と第2半導体レーザ素子30とのレーザ光の垂直方向の拡がり角の差は、例えば30度以下とすることができる。
【0018】
例えば、第1半導体レーザ素子20には、赤色の光を放射する半導体レーザ素子が採用され、第2半導体レーザ素子30には、青色の光を放射する半導体レーザ素子と緑色の光を放射する半導体レーザ素子が採用される。なお、3色の半導体レーザ素子を用いる以外に、色の組合せを変えてもよい。
【0019】
赤色の光は、その発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にあることが好ましく、610nm~700nmの範囲内にあることがより好ましい。赤色の光を発する半導体レーザ素子としては、例えば、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。これらの半導体を含む半導体レーザ素子は、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子と比べると、熱によって出力が低下しやすい。この点を考慮して、2以上の導波路領域を備えるとよい。導波路領域を増やすことにより熱を分散させ、半導体レーザ素子の出力低下を低減することができる。
【0020】
青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にあることが好ましく、440nm~475nmの範囲内にあることがより好ましい。青色の光を発する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。
【0021】
緑色の光は、その発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にあることが好ましく、510nm~550nmの範囲内にあることがより好ましい。緑色の光を発する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。
【0022】
また、第1半導体レーザ素子20と、第2半導体レーザ素子30と、で偏光方向が90度異なっている。例えば、第1半導体レーザ素子20はp偏光のレーザ光を、第2半導体レーザ素子30はs偏光のレーザ光を、それぞれ出射端面から放射する。
【0023】
サブマウント40は直方体の形状で構成される。なお、形状は直方体に限らなくてよい。サブマウント40は、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いて形成することができる。また、これに限らず他の材料を用いることも出来る。また、サブマウント40には一部に金属膜が設けられている。
【0024】
第1及び第2光反射部材50及び60は、底面と、底面から垂直に伸びる側面と、底面と反対側で側面と交わる上面と、を有する。上面の一部の領域は底面と平行ではない。また、上面の一部の領域は底面と平行である。少なくとも底面と平行でない領域において光を反射する光反射面が形成される。第1光反射部材50の光反射面と第2光反射部材60の光反射面とは異なる形状を有している。第1光反射部材50は光反射面が窪んだ曲面形状となっており、第2光反射部材60は光反射面が平面となっている。第2光反射部材60の光反射面である平面と、底面と、が成す角度は45度となるように設計される。
【0025】
第1及び第2光反射部材50及び60は、熱に強い材料を主材料に用いてその外形を形成し、形成した外形のうち光反射面を設けたい面に光反射率の高い材料を用いることで形成できる。主材料としては、石英若しくはBK7(硼珪酸ガラス)等のガラス、アルミニウム等の金属、又はSi等を採用することができる。光反射面としては、Ag、Al等の金属やTa/SiO、TiO/SiO、Nb/SiO等の誘電体多層膜等を採用することができる。第1及び第2光反射部材50及び60は、金属等の光反射率の高い材料を用いてその外形を形成し、光反射膜を省略してもよい。第1及び第2光反射部材50及び60の光反射面は、それぞれ、反射させるレーザ光のピーク波長に対する光反射率を99%以上とすることができる。これらの光反射率は100%以下あるいは100%未満とすることができる。
【0026】
蓋部材70は直方体の形状で構成される。また、蓋部材70は全体として透光性である。なお、一部に非透光性の領域を有していてもよい。また、形状は直方体に限らなくて良い。蓋部材70は、サファイアを主材料に用いて形成することができる。また、一部の領域に金属膜が設けられる。サファイアは、比較的屈折率が高く、比較的強度も高い材料である。なお、主材料には、サファイアの他に、例えばガラス等を用いることもできる。
【0027】
レンズ部材80は、レンズ形状を有する3つのレンズ部82と、それ以外の非レンズ部81と、を有する。非レンズ部81の1つの面上に3つのレンズ部82が連結して設けられたような形でレンズ部材80は形成される。レンズ部材80は、非レンズ部81及びレンズ部82が一体となった形状で形成することができる。例えば、このような形状の型を用いて成形することで、非レンズ部81及びレンズ部82が一体合成されたレンズ部材80を製造することができる。一体合成されたレンズ部材80を製造することは、生産性の面で優れている。
【0028】
あるいは、非レンズ部81の形状を整形した部材と、レンズ部82の形状を整形した部材と、をそれぞれ別個に用意し、非レンズ部81の面上にレンズ部82を接合して形成するようにしてもよい。レンズ部材80には、例えば、BK7、B270、ホウケイ酸ガラス等のガラス等を用いることができる。
【0029】
なお、非レンズ部81においてレンズ部82が設けられる面と重なる平面をレンズ部82あるいは非レンズ部81の境界面とする。レンズ部82の境界面というときは、レンズ部82においてこの境界面と重なる面を示すものとする。レンズ部82と非レンズ部81とが一体的に形成されている場合であっても、仮想的に境界面と重なる領域をこれと捉えることができる。また、レンズ部材80が非レンズ部81を有さない場合には、レンズ部82においてレンズ形状(曲面構造)を有する面と反対側の平面をレンズ部82の境界面と捉えるものとする。
【0030】
非レンズ部81は凹形状で構成される。そして、非レンズ部81の凹形状の窪みに3つのレンズ部82が設けられる。また、凹形状の窪みに設けられた3つのレンズ部82の境界面からの高さは、境界面から凹形状の最上面までの高さと等しい。ここでの等しいは、0.1mm以内の差を含むものとする。なお、レンズ部82の高さの方が凹形状の最上面までの高さよりも小さい分には、0.1mm以上の差を有してもよい。つまり、3つのレンズ部82の境界面からの高さは、凹形状の境界面から最上面までの高さに等しいか小さくなるように設計される。なお、接着部90による厚みを増して高さを調整することで、レンズ部82の高さを凹形状の最上面までの高さよりも大きくすることは可能である。
【0031】
接着部90は、接着剤が固まって形成される。接着部90を形成する接着剤としては、紫外線硬化型の樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化型の樹脂は加熱せずに比較的短い時間で硬化することができるため所望の位置にレンズ部材80を固定しやすい。
【0032】
波長板100としては、光の偏光方向を90度変える1/2波長板を採用することができる。また、波長板100は、平板の形状で形成される。また、波長板100は、上面視でみた形状が長方形である。なお、長方形でなくてもよいが、例えば、楕円形などのように、一方が他方より長い形状をしている。
【0033】
次に、これらの構成要素を用いて製造される発光装置1について説明する。
基部10の底面を形成する底部の上面USに、サブマウント40を介して1つの第1半導体レーザ素子20と2つの第2半導体レーザ素子30が配置される。なお、サブマウント40を介さない場合は、底部の上面USに直接第1及び第2半導体レーザ素子が配置される。また、発光装置1において、赤色の第1半導体レーザ素子20と、青色の第2半導体レーザ素子30及び緑色の第2半導体レーザ素子30と、が配置される。
【0034】
発光装置1において、赤色の光を放射する第1半導体レーザ素子20青色の光を放射する第2半導体レーザ素子30が中央に配置され、それを挟む位置に赤色の光を放射する第1半導体レーザ素子20及び緑色の光を放射する第2半導体レーザ素子30が配置されている。これは、赤色の光を放射する第1半導体レーザ素子20は熱に対する光出力特性が他と比べて悪いことを考慮している。またさらに、青色の光を放射する第2半導体レーザ素子30の方が緑色の光を放射する第2半導体レーザ素子30よりも発熱量が少ないことを考慮している。つまり、このような熱に対する特性を考慮して、3つの半導体レーザ素子のうち特性が最も良好なものを真ん中に配置すると良い。
【0035】
また、底部の上面USに、1つの第1光反射部材50と1つの第2光反射部材60が配される。底部の上面USは、第1及び第2光反射部材の底面と接合する。第1半導体レーザ素子20から放射された光の主要部分が第1光反射部材50の光反射面に照射され、第2半導体レーザ素子30から放射された光の主要部分が第2光反射部材60の光反射面に照射されるように、第1及び第2光反射部材は配置される。
【0036】
光反射部材による反射を介することで、光反射部材を介在させない場合と比べて光路長を長くすることができる。光路長が長い方が光反射部材と半導体レーザ素子との実装ずれによる影響を小さくすることができる。なお、1の第2光反射部材60で2つの第2半導体レーザ素子30に対応する代わりに、2つの第2半導体レーザ素子30のそれぞれに応じて2つの第2光反射部材60が用意されてもよい。
【0037】
基部10の枠部は、底部の上面USに配された第1及び第2半導体レーザ素子20及び30、サブマウント40、及び、第1及び第2光反射部材50及び60を囲う。従って、枠部による枠の内側で、底部の上面USの上にこれらの構成要素は配置される。枠部の段差部STの上面に設けられた金属膜には、複数のワイヤ91の一端が接合される。複数のワイヤ91の他端は第1及び第2半導体レーザ素子に接合される。これにより第1及び第2半導体レーザ素子20及び30は発光装置1の外部に設けられる電源と電気的に接続される。
【0038】
基部10の枠部の内側面ISのうち一部の領域に段差部STは設けられていない。また、第1半導体レーザ素子20の第1光反射部材50に近い側の側面とは反対側の側面と、第1光反射部材50の第1半導体レーザ素子20に近い側の側面とは反対側の側面と、にこの領域が来るように配置される。なお、第1半導体レーザ素子20に近い側の側面と反対側の側面に段差部STを設けた場合、第1半導体レーザ素子20に繋げるワイヤ91を張ると第1光反射部材50を跨ぐようになる。そのため、ここに電気的な接続を図るための段差部STは設けていない。このように一部に段差部STを設けないことで、より小型の発光装置1とすることができる。
【0039】
サブマウント40は、その上面に3つの半導体レーザ素子を配する。なお、第1及び第2半導体レーザ素子20及び30の各半導体レーザ素子に対応して、1対1でサブマウント40を設けてもよい。サブマウント40は、その底面で基部10の底部と接合し、上面で半導体レーザ素子と接合する。半導体レーザ素子はAu-Sn等の導電性の接合剤を介してサブマウント40の上面に設けられた金属膜に接合される。
【0040】
放熱性の観点からすると、サブマウント40は、その熱伝導率が基部10の底部の熱伝導率よりも高いものを用いると、ヒートスプレッダーとしてより高い効果を得ることができる。例えば、半導体レーザ素子として窒化物半導体を含む材料を用い、基部10の主材料として窒化アルミニウムを用いる場合、サブマウント40として、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いることができる。なお、基部10及びサブマウント40に窒化アルミニウムを用いる場合、サブマウント40に用いる窒化アルミニウムの方が、基部10に用いる窒化アルミニウムよりも熱伝導率の高いものを用いることができる。
【0041】
また、各半導体レーザ素子20及び30の底部からの高さが同じになるように、サブマウント40の形状は設計される。さらに、第1半導体レーザ素子20に設けられたサブマウント40と第1光反射部材50との間の距離は、第2半導体レーザ素子30に設けられたサブマウント40と第2光反射部材60との間の距離と同じになるように設計される。なお、設計上は同じでも実装段階における部材公差や実装公差などによって誤差は生じる。発光装置1において高さや長さ、あるいは、配置する位置などに関して同じというときは、このような誤差は許容範囲を含まれるものとする。また、これらの高さや距離は、必ずしも同じになっていなくてよい。
【0042】
第1半導体レーザ素子20の出射端面と第1光反射部材50との間の距離は、第2半導体レーザ素子30の出射端面と第2光反射部材60との間の距離と同じになるように設計される。また、第1及び第2半導体レーザ素子の出射端面は、同じ平面上に設けられるように設計される。つまり、仮想的な2つの平行な平面のうち1の平面に第1及び第2半導体レーザ素子の出射端面が配され、さらに、他方の平面に第1半導体レーザ素子20に最も近い第1光反射部材50の側面と第2半導体レーザ素子30に最も近い第2光反射部材60の側面とが配されるように設計される。
【0043】
蓋部材70は、基部10の底面とは反対側の上面において枠部と接合し、枠部の内側面ISより形成される枠を覆う。蓋部材70の下面において、基部10と接合される領域に金属膜が設けられ、Au-Sn等を介して蓋部材70は基部10に固定される。直方体の蓋部材70により枠を覆う場合、基部10の底面から枠の上面までの高さは、底面から第1及び第2半導体レーザ素子20及び30までの高さよりも高く、かつ、第1及び第2光反射部材50及び60までの高さよりも高い。
【0044】
また、基部10と蓋部材70とが接合することで形成された閉空間は気密封止された空間となる。このように気密封止することで、第1及び第2半導体レーザ素子の光の出射端面に有機物等が集塵することを抑制することができる。
【0045】
第1及び第2光反射部材50及び60の光反射面により反射された反射光は蓋部材70に入射する。蓋部材70は、少なくとも主要部分の光が反射された反射光が、蓋部材70を通過して上面に出射されるように、反射光が入射してから出射するまでの領域が透光性となるように設計される。ここで、透光性とは、光に対する透過率が80%以上であることとする。言い換えれば、光反射面により反射された主要部分の光は、第1及び第2半導体レーザ素子20及び30が放射する光の波長域に対して透光性を有する蓋部材70を通過して、気密封止された空間の外へと出射する。
【0046】
なお、光の通過する領域において、蓋部材70を形成する材料は、その屈折率が高いほど光の拡がりを抑えることができる。例えば蓋部材70は、少なくとも第1及び第2半導体レーザ素子から放射された主要部分の光のうち第1あるいは第2光反射部材の光反射面により反射された光が通過する領域において、サファイアで構成されるとよい。
【0047】
接着部90は、蓋部材70の上面において、蓋部材70とレンズ部材80とを接着する領域に形成される。接着部90は、蓋部材70の上面の接着領域に接着剤を付し、そこにレンズ部材80の下面を付けて接着剤を硬化することで、蓋部材70とレンズ部材80の間に形成される。また、接着部90は、蓋部材70とレンズ部材80が接触しないように、ある程度の厚みを有して形成される。この厚みは、実装誤差及び部材公差を考慮して設計される。これにより、基部10に配置された半導体レーザ素子及び光反射部材の実装誤差に応じて蓋部材70を通過する光の位置にずれが生じた場合に、レンズ部材80を配置する位置や高さなどを調整した上で、レンズ部材80を蓋部材70に接合することができる。
【0048】
また、接着部90は、蓋部材70の上面の全域あるいはレンズ部材80の下面の全域に形成されずに、第1及び第2半導体レーザ素子20及び30から発せられた光の経路の邪魔にならないよう設けられる。そのため、好ましくは、接着部90は、レンズ部材80のレンズ部82が形成されている領域に対応するレンズ部材80の下面には形成されず、レンズ部材80の外縁の領域に形成される。
【0049】
レンズ部材80は、蓋部材70の上で、接着部90を介して蓋部材70と接合する。また、レンズ部材80は、蓋部材70の上面に近い側に3つのレンズ部82が来るように配される。従って、基部の上方に配置されたレンズ部材に対して、3つのレンズ部82の上面(レンズ面)は下方側を向く。
【0050】
また、レンズ部材80の凹形状の最上面と蓋部材70の上面とが接着剤を介して接合され、接着部90が形成される。非レンズ部81の凹形状をレンズ部材80の上面側とし、反対側の平面を下面側として見た場合に、レンズ部材80はこれをひっくり返して下面側の平面が発光装置の上面側に来るように配される。
【0051】
上述したように3つのレンズ部82が非レンズ部81の凹面の上面を超えないように設計されるのは、蓋部材70との接触を避けるためである。蓋部材70と接触するように設計されると、レンズ部材80を蓋部材70に接合するときに、位置や高さの調整がしづらくなる。
【0052】
レンズ部材80の3つのレンズ部82のそれぞれは、底部に配置された3つの半導体レーザ素子のそれぞれに対応して配置される。つまり、3つのレンズ部82の上面(レンズ面)は、3つの半導体レーザ素子から放射されてレンズ部材80に入射する光の入射面となる。
【0053】
第1半導体レーザ素子20から放射された光の主要部分が、第1光反射部材50の光反射面により反射され、蓋部材70を通過してレンズ部材80に入射し、3つのレンズ部82のうちの1つである第1レンズ部83を通過して、レンズ部材80の外へと出射する。
【0054】
2つのうち一方の第2半導体レーザ素子30から放射された光の主要部分が、第2光反射部材60の光反射面により反射され、蓋部材70を通過してレンズ部材80に入射し、3つのレンズ部82のうちの1つでありかつ第1レンズ部83とは異なる第2レンズ部84を通過して、レンズ部材80の外へと出射する。
【0055】
2つのうち他方の第2半導体レーザ素子30から放射された光の主要部分が、第2光反射部材60の光反射面により反射され、蓋部材70を通過してレンズ部材80に入射し、3つのレンズ部82のうちの残り1つである第3レンズ部85を通過して、レンズ部材80の外へと出射する。
【0056】
このように、1のレンズ部82が1の半導体レーザ素子に対応して、レンズ部82は形成される。従って、発光装置1に搭載される半導体レーザ素子の数によって、形成されるレンズ部82の数も変動し得る。例えば、1つの半導体レーザ素子のみが配置される発光装置1であれば、レンズ部材80において形成されるレンズ部82も1つでよい。つまり、レンズ部82は、1又は複数で構成され得る。
【0057】
それぞれのレンズ部82のレンズ形状は、対応する半導体レーザ素子からの光がコリメートして出射されるように設計される。発光装置1において、第1乃至第3レンズ部83乃至85は、それぞれ異なるレンズ形状を有しているが、このことは、同じレンズ形状の複数のレンズ部82が形成され得ることを示している。なお、コリメートに限らず、集光などその他の目的で、光の進行方向を制御するレンズ形状を有していてもよい。
【0058】
また、レンズ部材80において、非レンズ部81と、第1乃至第3レンズ部のそれぞれと、が別個に用意される場合、接着剤を用いて蓋部材70の上に非レンズ部81を接合した後に、それぞれのレンズ部82を非レンズ部81の上面に配置して接合するようにしてもよい。この場合、第1及び第2半導体レーザ素子による光を放射して非レンズ部81から出射する光の位置と進行方向を計測し、この計測結果に基づいてレンズ部82の配置位置を決定することができる。
【0059】
波長板100は、第1半導体レーザ素子20から放射された光の偏光方向を変えるために配される。そのため、レンズ部材80の第1レンズ部83が配される凹面とは反対側の面において、第1半導体レーザ素子20から放射され第1レンズ部83に入射した光が通過する領域に、波長板100は配される。
【0060】
波長板100は、その下面で、レンズ部材80の第1レンズ部83が配される凹面とは反対側の面と接合される。従って、発光装置1において、波長板100は、レンズ部材80の上方に配置される。また、上面視でみて、波長板100の長手方向は、第1レンズ部83の短手方向よりも長手方向に近い。発光装置1では、波長板100の長手方向を第1レンズ部83の長手方向に合わせて、波長板100が配置される。
【0061】
また、波長板100は、上面視で、第1レンズ部83を覆う位置に設けられる。また、波長板100は、上面視で、第1レンズ部83は覆うが、第1レンズ部83以外のレンズ部は覆わない位置及び領域に設けられる。具体的に、発光装置1では、上面視で、第2レンズ部84及び第3レンズ部85を覆う位置には設けられない。
【0062】
つまり、偏光方向を合わせる基準となる半導体レーザ素子からの光の光路上に波長板は設けられず、その基準となる偏光方向と合っていない半導体レーザ素子からの光の光路上には、基準と合わせるための波長板が設けられる。
【0063】
波長板100は、上面視で、その長手方向の長さが、第1レンズ部83の長手方向の長さと同じか、これよりも大きい。また、好ましくは、さらに、第1レンズ部83の長手方向と同じ方向のレンズ部材80の長さと同じか、これよりも小さい。これにより、波長板100をレンズ部材80から突出させずに配置させることができる。波長板100が突出していると、その突出部分に引っ掛かり波長板100が離脱するおそれがある。
【0064】
波長板100は、上面視で、その短手方向の長さが、第1レンズ部83の短手方向の長さと同じか、これよりも大きい。また、好ましくは、さらに、第1レンズ部83の短手方向と同じ方向であって、第2レンズ部84から第1レンズ部83へと向かう方向の先にあるレンズ部材80の外側面を超えない。これにより、波長板100をレンズ部材80から突出させずに配置させることができる。
【0065】
また、より好ましくは、第1レンズ部83の短手方向と同じ方向であって、第2レンズ部84から第1レンズ部83へと向かう方向の先にある、レンズ部材80の凹形状を形成する内側面を超えない。これにより、波長板100のサイズを大きくし過ぎずに、光の偏光方向の制御ができる。
【0066】
波長板100は、レンズ部材80に接合される。接合には、例えば、透光性の樹脂接着剤を用いることができる。なお、透光性を有さない接着剤を用いることもできるが、この場合は、光の通過を妨げないように光が通過する領域以外に接着剤が設けられるのが望ましい。樹脂の接着剤を使用することで、波長板100とレンズ部材80との応力を緩和し、波長板100の離脱を抑えることができる。
【0067】
第1半導体レーザ素子20と、第2半導体レーザ素子30と、で偏光方向が90度異なっている。例えば、第1半導体レーザ素子20はp偏光のレーザ光を、第2半導体レーザ素子30はs偏光のレーザ光を、それぞれ出射端面から放射する。従って、第1半導体レーザ素子20から放射された光を波長板100に通すことで、第1及び第2半導体レーザ素子20及び30から放射されて発光装置1から出射する光の偏光方向を揃えることができる。そのため、波長板100は、偏光方向のずれを無くすものであればよい。
【0068】
このように、レンズ部材80のレンズ部82が設けられる面とは反対側の面に波長板100を設けることで、コンパクトな設計で、偏光方向の揃った光を出射する発光装置を実現することができる。また、発光装置1の構成によれば、コリメートされた光を波長板100に入射させるので、拡散あるいは集光する光を入射させる場合と比較して、波長板100の表面での反射のロスを低減することができる。
【0069】
次に、このように構成された発光装置1において、半導体レーザ素子から放射された光の進行がどのように制御されるかを説明する(図4及び図5参照)。
【0070】
ここで、第1及び第2半導体レーザ素子20及び30に関し、各半導体レーザ素子から放射された主要部分の光のうち、各半導体レーザ素子の出射端面からの距離が最も短い位置で光反射面に照射される光を下端光とする。また、各半導体レーザ素子から放射された主要部分の光のうち、各半導体レーザ素子の出射端面からの距離が最も遠い位置で光反射面に照射される光を上端光とする。また、各半導体レーザ素子から放射された光のうち、各半導体レーザ素子の光出射端面と垂直な方向に進む光、つまり光軸上を通る光を、中心光と呼ぶものとする。
【0071】
図8に、第1光反射部材50の光反射面において第1半導体レーザ素子20から放射された中心光が照射される位置をCP1、第2光反射部材60の光反射面において第2半導体レーザ素子30から放射された中心光が照射される位置をCP2で示す。
【0072】
発光装置1において、第1及び第2半導体レーザ素子から放射された光は、第1あるいは第2光反射部材の光反射面を介して反射され、気密封止された空間から蓋部材70に入射する。蓋部材70を通過して外に出射した光は、接着部90によって生じた蓋部材70とレンズ部材80の間の隙間を通過して、レンズ部材80に入射する。そして、レンズ部材80に入射した光はレンズ部82を通過して発光装置1の外部に出射する。また、第1半導体レーザ素子20から放射された光については、レンズ部材80から出射された光が波長板100を通過して発光装置1の外部に出射する。
【0073】
第1光反射部材50の光反射面は、第1半導体レーザ素子20から放射された光の垂直方向の拡がりを狭める。言い換えると、光の垂直方向に関して、第1半導体レーザ素子20から放射され光反射面に照射される光の拡がり角よりも反射された光の拡がり角が小さくなるように光を反射する。
【0074】
また、第1光反射部材50の光反射面は、第1半導体レーザ素子20から放射された光の垂直方向の拡がりを狭めるが、コリメートはしない。また、図5に示すように、発光装置1において第1光反射部材50の光反射面は、反射光が多少の拡がりを有するように設計されている。
【0075】
なお、光が拡がりを有するとは、1の半導体レーザ素子から放射された光のうち光路長が同じで位置が異なる2点を通過する光に関し、光路長が大きくなるほど、同じ光路長における2点間の距離が大きくなる関係を満たすことをいうものとする。よって、発光装置1では、少なくとも光反射面において反射され蓋部材70に入射するまでの間でこの関係が満たされる。例えば、焦点から放射された光が双曲面の反射面で反射される場合、反射された光は拡がりを有している。
【0076】
仮に反射光がコリメートされるように設計した場合、レンズ部材80に入射する光が既にコリメートされていることから、第1レンズ部83を設ける必要がなくなる。すると、第1半導体レーザ素子20や第1光反射部材50の実装位置などが設計値からずれた場合に、そのずれによる影響をレンズ部材80の実装位置や高さを調整しても補正できなくなる。一方で、第1光反射部材50の光反射面の形状を、反射により光の拡がりを抑えつつも、光が拡がりを有するように設計することで、レンズ部材80に設けられた第1レンズ部83による出射光の調整が可能となる。
【0077】
なお、第1光反射部材50の光反射面の形状は、反射光に拡がりを持たせる形状に代えて、狭まりを持たせる形状としてもよい。光が狭まりを有するとは、光路長が同じで位置が異なる2点を通過する光に関し、光路長が大きくなるほど、同じ光路長における2点間の距離が小さくなる関係を満たすことをいうものとする。例えば、焦点から放射された光が楕円面の反射面で反射される場合、反射された光は狭まりを有している。なお、焦点から放射された光が放物面の反射面で反射される場合、反射された光はコリメートされる。
【0078】
また、第1半導体レーザ素子20の出射端面から、第1光反射部材50の光反射面上で第1半導体レーザ素子20の中心光が照射される位置CP1までの距離は、第2半導体レーザ素子30の出射端面から、第2光反射部材60の光反射面上でその第2半導体レーザ素子30の中心光が照射される位置CP2までの距離よりも長い。つまり、第1半導体レーザ素子20の中心光の方がより遠い位置で反射される。
【0079】
第1光反射部材50の光反射面は、第1半導体レーザ素子20から放射された光の中心光が、光軸に対して垂直方向ではなく、鋭角方向に反射するように設計されている。一方で、第2光反射部材60の光反射面は、第2半導体レーザ素子30から放射された光の中心光が、垂直方向に反射するように設計されている。
【0080】
第1乃至第3レンズ部は、レンズ部82の境界面における光の長径に対応した方向に関し、レンズ幅LWが同じであり、かつ、レンズ幅LWの中心も同じとなるように、連結されている。このようにすることで、レンズ部82の境界面における光の長径に対応した方向に関し、同じ幅のコリメート光をそれぞれのレンズ部82から出射することができる。また、レンズ部82の境界面における光の長径に対応した方向におけるコリメート光の出射位置を揃えることができる。
【0081】
具体的に、レンズ部82の境界面における光の長径に対応した方向に関して、光反射面における第1半導体レーザ素子20の中心光の照射点と第2半導体レーザ素子30の中心光の照射点との間の距離よりも、レンズ部82を出射する第1半導体レーザ素子20の中心光の出射点と第2半導体レーザ素子30の中心光の出射点との間の距離の方が小さくなるように、光反射面の形状は設計される。
【0082】
以上、第1実施形態に係る発光装置1によれば、互いに偏光方向の異なる発光素子である第1半導体レーザ素子及び第2半導体レーザ素子からの光を、偏光方向を揃えて出射させる発光装置を提供できる。
【0083】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る発光装置2を説明する。構成要素として、基部、1つの第1半導体レーザ素子、2つの第2半導体レーザ素子、2つの光反射部材、サブマウント、蓋部材、レンズ部材、接着部、ワイヤ、及び、波長板を有する点は、第1実施形態の発光装置1と同様である。一方で、レンズ部材が配置される向き、波長板の形状、レンズ部材と波長板との接合態様、及び、第1光反射部材における光反射面の形状、については第1実施形態の発光装置1と異なる。
【0084】
図9は、発光装置2を光が出射される側から見た斜視図である。図10は、光が出射される側を上面とした場合の、図9で示した発光装置2の上面図である。図11は、図10のXI-XIを結ぶ直線における発光装置2の断面図である。図12は、構成の一部を取り除き半導体レーザ素子が配される空間を可視化した状態の発光装置2を、図9と同様の方向から見た斜視図である。
【0085】
発光装置2では、レンズ部材80は、レンズ部材80の有するレンズ部82が、蓋部材70と接合する面とは反対側の面に設けられるように、配置される。つまり、蓋部材70の上面に近い側とは反対側に3つのレンズ部82が来るように、レンズ部材80は配される。また、基部10の上方に配置されたレンズ部材80に対して、3つのレンズ部82の上面(レンズ面)は上方側を向く。
【0086】
また、レンズ部材80は、蓋部材70の上で、接着部90を介して蓋部材70と接合される。つまり、レンズ部材80の下面と蓋部材70の上面とが接着剤を介して接合され、接着部90が形成される。これにより、第1及び第2半導体レーザ素子から放射された光は、レンズ部材80の非レンズ部81に入射して、レンズ部材80のレンズ部82から出射する。
【0087】
発光装置2では、非レンズ部81の凹形状をレンズ部材80の上面側とし、反対側の平面を下面側として見た場合に、発光装置1のようにレンズ部材80をひっくり返すことなく、レンズ部材80の上面側が発光装置2の上面側に来るように配される。
【0088】
レンズ部材80の3つのレンズ部82のそれぞれは、基部10の底部に配置された3つの半導体レーザ素子のそれぞれに対応して配置される。つまり、3つのレンズ部82の上面(レンズ面)は、3つの半導体レーザ素子から放射されてレンズ部材80に入射した光の出射面となる。
【0089】
波長板200は、第1半導体レーザ素子20から放射された光の偏光方向を変えるために配される。また、波長板200は、レンズ部材80の上に配される。また、波長板200は、レンズ部材80の凹形状が形成される側の面(凹面側の面)に配される。
【0090】
また、レンズ部材80の第1レンズ部83の上方であって、第1半導体レーザ素子20から放射され第1レンズ部83から出射した光が通過する領域に波長板200は配される。これにより、第1半導体レーザ素子20から放射され、レンズ部材80の非レンズ部81に入射し、レンズ部材80の第1レンズ部83から出射した光が、波長板200に入射する。
【0091】
発光装置2では、波長板200は非レンズ部81の凹形状の上面に接合される。より詳細には、波長板200はレンズ部材80の凹形状の最上面に接合される。波長板200と第1レンズ部83との接触を避けるため、少なくともレンズ部材80の蓋部材90との接合面から第1レンズ部83までの距離(高さ)は、レンズ部材80の蓋部材90との接合面から非レンズ部81の凹形状における波長板200との接合面までの距離(高さ)を超えないように設計されるのが好ましい。
【0092】
非レンズ部81の凹形状の上面に接合されるため、波長板200は、非レンズ部81と接合する領域を確保した形状で形成される。発光装置2における波長板200は、非レンズ部81の凹形状の上面と接合する接合領域と、この接合領域から第1レンズ部83の方向へと延伸する非接合領域と、を有する。
【0093】
このような接合態様によれば、接合に用いる接着剤がレンズ部材80と波長板200との間の光の通過領域に侵入することを心配しなくてよいため、容易に実装することができる。
【0094】
また、非接合領域は、第1レンズ部83と接触しないのが好ましい。接触すると、第1レンズ部83のレンズ形状を成形するときの公差が、波長板200の実装精度に影響するためである。レンズ部材80の第1レンズ部83から出射した光は、波長板200の非接合領域に入射し、これを通過する。発光装置の小型化の観点から、波長板200は、上面視で、レンズ部材80の外形に収まるのが好ましい。
【0095】
また、波長板200の接合領域は、非接合領域と同じか、非接合領域よりも大きい。接合をより強固にするためには、好ましくは、接合領域の方が大きくなるように波長板200及びレンズ部材80を設計するとよい。つまり、上面視で、レンズ部材80の接合面の外形を、第1レンズ部83の外形よりも大きくする。なお、接合領域の方が非接合領域より小さくてもよいが、接合領域が小さすぎると接合が不安定になる。
【0096】
なお、非レンズ部81の凹形状における波長板200との接合面は、第1乃至第3レンズ部が並ぶ方向(連結方向)に沿って、第1レンズ部83の側方に設けられる。上面視で見た場合に、非レンズ部81の接合面は、第1レンズ部83が非レンズ部81の接合面と第2レンズ部84とに挟まれる位置に来るように設けられる。
【0097】
また、発光装置2では、第1光反射部材250の光反射面の形状が、曲面ではなく平面である。また、第1光反射部材250は、第2光反射部材60と同様に、平面の光反射面を有する。曲面から平面になることで、第1半導体レーザ素子20の中心光が照射される位置CP1は、第2半導体レーザ素子30の中心光が照射される位置CP2に近くなる。
【0098】
第1光反射部材250の光反射面である平面と、底面と、が成す角度は、第1実施形態と同様に、レンズ部材80によってコリメートされる地点において、より効率的に光がコリメートされるように決定すればよい。そのため、第2光反射部材60における角度と異なる場合もあれば、同じになる場合もあり得る。
【0099】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る発光装置3を説明する。構成要素として、基部、1つの第1半導体レーザ素子、2つの第2半導体レーザ素子、サブマウント、光反射部材、蓋部材、レンズ部材、接着部、ワイヤ、及び、波長板を有する点は、第2実施形態の発光装置2と同様である。一方で、レンズ部材の形状、波長板の形状、レンズ部材と波長板との接合態様、及び、光反射部材の数については、第2実施形態の発光装置2と異なる。
【0100】
図13は、発光装置3を光が出射される側から見た斜視図である。図14は、光が出射される側を上面とした場合の、図13で示した発光装置3の上面図である。図15は、図14のXV-XVを結ぶ直線における発光装置3の断面図である。図16は、構成の一部を取り除き半導体レーザ素子が配される空間を可視化した状態の発光装置3を、図13と同様の方向から見た斜視図である。
【0101】
発光装置3では、レンズ部材380の非レンズ部381における凹形状が、レンズ部382を囲うようにして形成される。また、第1乃至第3レンズ部が並ぶ方向(連結方向)ではなく、非連結方向に沿って、第1レンズ部383の両側方に、凹形状は設けられる。非連結方向とは、その方向に対して、1のレンズ部382が、他のレンズ部382と連結しない方向のことである。つまり、連結方向に引いた直線は、1のレンズ部382のみとしか交わらない。
【0102】
発光装置3では、波長板300は、凹形状の上面の、非連結方向に沿って第1レンズ部383の両側方に設けられた部分と接合される。上面視で見た場合に、非レンズ部381の接合面は、第1レンズ部383が非レンズ部381の接合面に挟まれるように設けられる。一方で、凹形状の上面の、連結方向に沿って設けられた部分とは接合していない。なお、連結方向に沿って設けられた部分を含めて接合していてもよい。
【0103】
また、波長板300は、一方の側方において非レンズ部381の凹形状の上面と接合する接合領域である第1接合領域と、この接合領域から第1レンズ部383の方向へと延伸する非接合領域と、この非接合領域から他方の側方において非レンズ部381の凹形状の上面と接合する接合領域である第2接合領域と、を有する。
【0104】
このような接合態様によれば、第1レンズ部383を跨いだ2つの領域で波長板300と接合するため、より安定して波長板300を固定させることができる。
【0105】
また、発光装置3では、1つの光反射部材(第1光反射部材350)によって、第1及び第2半導体レーザ素子からの光を反射する光反射面を形成する。また、光反射面の形状は平面である。なお、光反射面の形状は曲面でもよい。1つの第1光反射部材で構成することで、第1半導体レーザ素子20の中心光が照射される位置CP1までの光路長と、第2半導体レーザ素子30の中心光が照射される位置CP2までの光路長と、が同じになる。
【0106】
以上、説明してきたが、明細書により開示された技術的特徴を有する本発明に係る発光装置は、明細書の各実施形態で説明した発光装置1、発光装置2、及び、発光装置3の構造に限られるわけではない。例えば、各実施形態のいずれにも開示のない構成要素を有する発光装置においても本発明は適用され得るものであり、開示された発光装置と違いがあることは本発明を適用できないことの根拠とはならない。
【0107】
また、他の実施形態において開示された構成の一部を組み込む、あるいは、交換するなどして一部の構成が変更された発光装置であっても、その変更が、当業者にとっての通常の設計事項の範疇であれば、実質的に本発明の開示であることは言うまでもない。
【0108】
このことはつまり、いずれかの実施形態により開示された発光装置の全ての構成要素を必要十分に備えることを必須としないものであっても、本発明が適用され得ることを示す。例えば、特許請求の範囲に、各実施形態により開示された発光装置の一部の構成要素が記載されていなかった場合、その構成要素については、本実施形態に開示されたものに限らず、代替、省略、形状の変形、材料の変更などといった当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを請求するものである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
各実施形態に記載の発光装置は、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクター、車載ヘッドライト、照明、ディスプレイのバックライト等の光源に使用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3 発光装置
10 基部
20 第1半導体レーザ素子
30 第2半導体レーザ素子
40 サブマウント
50、250、350 第1光反射部材
60 第2光反射部材
70 蓋部材
80、380 レンズ部材
81、381 非レンズ部
82、382 レンズ部
83、383 第1レンズ部
84、384 第2レンズ部
85、385 第3レンズ部
90 接着部
91 ワイヤ
100、200、300 波長板
図1
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