(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080297
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】電極、電極の製造方法、非水系蓄電素子及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230601BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230601BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066239
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2018224519の分割
【原出願日】2018-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018049455
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 綾
(72)【発明者】
【氏名】升澤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康司
(72)【発明者】
【氏名】座間 優
(72)【発明者】
【氏名】広渡 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】柳田 英雄
(57)【要約】
【課題】正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することが可能な電極を提供する。
【解決手段】電極10は、電極基体11上に、電極合材層12及び絶縁層13が順次積層されている。電極合材層12は、活物質14を含み、空隙15が存在している。絶縁層13は、絶縁性無機粒子16と、樹脂を含み、絶縁性無機粒子16の含有量が80質量%以上である。電極10は、電極合材層12の絶縁層13との境界領域17において、空隙15の一部に、絶縁性無機粒子16と、樹脂が存在している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基体と、
前記電極基体上に設けられた電極合材層と、
前記電極合材層上に設けられた絶縁層と、を備え、
前記電極合材層は、活物質を含み、空隙が存在しており、
前記絶縁層は、絶縁性無機粒子と、樹脂を含み、
前記絶縁性無機粒子の含有量が80質量%以上であり、
前記電極合材層の前記絶縁層との境界領域において、前記空隙の一部に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂が存在し、
前記電極合材層の、前記絶縁層との境界領域ではない領域において、前記空隙に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂が存在しないことを特徴とする電極。
【請求項2】
電極基体と、
前記電極基体上に設けられた電極合材層と、
前記電極合材層上に設けられた絶縁層と、を備え、
前記電極合材層は、活物質を含み、空隙が存在しており、
前記絶縁層は、絶縁性無機粒子と、樹脂を含み、
前記絶縁性無機粒子の含有量が80質量%以上であり、
前記電極合材層の前記絶縁層との境界領域において、前記空隙の一部に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂が存在し、
前記電極合材層の表面から前記絶縁層の表面までの距離が0.3~20μmであり、
前記電極合材層の、前記絶縁層との境界領域ではない領域において、前記空隙に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂が存在しないことを特徴とする電極。
【請求項3】
前記絶縁性無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、前記金属酸化物及び前記金属窒化物以外の金属化合物並びにガラスセラミックからなる群より選択される一種以上の材料を含むことを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載の電極。
【請求項4】
前記絶縁性無機粒子は、アルミナであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記絶縁性無機粒子の平均粒径は10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記樹脂の含有量が0.1~10質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電極の製造方法であって、
電極基体上に、活物質を含み、空隙が存在している電極合材層を形成する工程と、
絶縁性無機粒子と、樹脂と、有機溶剤とを含む塗布液を、前記電極合材層上に塗布して絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項8】
前記塗布液の液滴を吐出させて前記絶縁層を形成することを特徴とする請求項7に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁層を形成する工程は、前記塗布液を、インクジェット法で前記電極合材層上に塗布して絶縁層を形成する工程であることを特徴とする請求項7乃至8のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
前記電極合材層が形成されている前記電極基体を搬送しながら、前記塗布液を塗布することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記電極基体を搬送しながら、前記電極合材層を形成することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項12】
前記塗布液の25℃における粘度は、5~20mPa・sであることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項13】
前記塗布液における絶縁性無機粒子の含有量は、20~60質量%であることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項14】
前記塗布液における前記有機溶剤の沸点は、140~300℃であることを特徴とする請求項7乃至13のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項15】
前記塗布液における前記樹脂の含有量は、10質量%以下であることを特徴とする請求項7乃至14のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電極を有することを特徴とする非水系蓄電素子。
【請求項17】
請求項16に記載の非水系蓄電素子を有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項18】
電極基体と、
前記電極基体上に設けられた電極合材層と、
前記電極合材層上に設けられた絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、絶縁性無機粒子と、樹脂と、を含み、
前記絶縁層における前記絶縁性無機粒子の含有量が80質量%以上であり、
前記電極合材層は、活物質を含み、空隙が存在しており、
前記電極合材層は、
前記絶縁層側に、前記空隙の一部に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂を更に有する層と、
前記電極基体側に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂を有しない層と、を有することを特徴とする電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、絶縁層用塗布液、電極の製造方法、非水系蓄電素子及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の非水系蓄電素子は、高出力化、高容量化、高寿命化の要請が急速に高まっている。
【0003】
しかしながら、高出力化、高容量化、高寿命化を実現させるためには、非水系蓄電素子の安全性に関わる様々な課題が存在している。
【0004】
例えば、正極と負極が短絡した場合に、瞬時に発熱することで、正極と負極との間に配置されているセパレータが溶融して短絡箇所が拡大することに伴い、異常発熱するという問題がある。
【0005】
このため、正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することが望まれている。
【0006】
特許文献1には、正極活物質を含有する合剤層を備えた正極、負極活物質を含有する合剤層を備えた負極及び非水電解質を含む非水電解質二次電池が開示されている。ここで、正極及び/又は負極は、多孔質の絶縁層が合剤層の上に形成されている。また、多孔質の絶縁層は、架橋構造を有する樹脂と、無機粒子とを含む。さらに、多孔質の絶縁層と合剤層の界面には、絶縁層の成分と合剤層の成分とを含む混合層を有する。また、絶縁層を備えた電極の絶縁層の表面、及び/又は、絶縁層を備えていない電極の合剤層の表面に、融点が100~170℃である熱溶融性樹脂を含む多孔質の樹脂層が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、多孔質の絶縁層にセパレータとしての機能を付与するために、架橋構造を有する樹脂の含有量が多い。その結果、架橋構造を有する樹脂の軟化点が低いと、正極と負極が短絡すると、架橋構造を有する樹脂が溶融するため、発熱を抑制することができないという問題がある。
【0008】
本発明の一態様は、上記問題に鑑み、正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することが可能な電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電極において、電極基体上に、電極合材層及び絶縁層が順次積層されており、前記電極合材層は、活物質を含み、空隙が存在しており、前記絶縁層は、絶縁性無機粒子と、樹脂を含み、前記絶縁性無機粒子の含有量が80質量%以上であり、前記電極合材層の前記絶縁層との境界領域において、前記空隙の一部に、前記絶縁性無機粒子と、前記樹脂が存在している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することが可能な電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の電極の一例を示す断面模式図である。
【
図3】
図1の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図4】
図1の電極の製造方法の他の例を示す模式図である。
【
図5】本実施形態の非水系蓄電素子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
【0014】
電極10は、電極基体11上に、電極合材層12及び絶縁層13が順次積層されている。ここで、電極合材層12は、活物質14を含み、空隙15が存在している。また、絶縁層13は、絶縁性無機粒子16と、樹脂21を含む(
図2参照)。樹脂21は、活物質14と絶縁性無機粒子16の間、及び、絶縁性無機粒子16同士の間に存在している。
【0015】
電極10は、電極合材層12の絶縁層13との境界領域17において、空隙15の一部に、絶縁性無機粒子16と、樹脂21が存在している。これにより、電極合材層12と絶縁層13の接合強度が向上するため、絶縁層13中の樹脂の含有量を減少させることができる。
【0016】
なお、絶縁層13は、電極合材層12の絶縁層13との境界領域17を含まない領域、即ち、活物質14を含まない領域を意味する。
【0017】
絶縁層13中の絶縁性無機粒子16の含有量は、80質量%以上である。絶縁層13中の絶縁性無機粒子16の含有量が80質量%未満であると、正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することができない。なお、絶縁層13中の絶縁性無機粒子16の含有量は、通常、99質量%以下である。
【0018】
なお、絶縁層13中の絶縁性無機粒子16の含有量は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、絶縁層13の断面を観察し、X線回折法により、絶縁性無機粒子16を同定することにより算出することができる。
【0019】
<電極基体>
電極基体11を構成する材料としては、導電性を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタル等が挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、銅、アルミニウムが特に好ましい。
【0020】
電極基体11の形状及び大きさは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
<電極合材層>
電極合材層12(負極合材層又は正極合材層)は、活物質14(負極活物質又は正極活物質)を含み、空隙15が存在していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
電極合材層12の平均厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
正極合材層の平均厚さは、10~300μmであることが好ましく、40~150μmであることがより好ましい。正極合材層の平均厚さが20μm以上であると、非水系蓄電素子のエネルギー密度が向上し、300μm以下であると、非水系蓄電素子の負荷特性が向上する。
【0024】
また、負極合材層の平均厚さは、10~450μmであることが好ましく、10~150μmであることがより好ましい。負極合材層の平均厚さが10μm以上であると、非水系蓄電素子のエネルギー密度が向上し、450μm以下であると、非水系蓄電素子のサイクル特性が向上する。
【0025】
電極合材層12は、例えば、活物質14が分散媒中に分散している、又は、活物質14、分散媒を含む組成物を混練して製造されている塗布液を、電極基体11上に塗布し、乾燥させた後、例えば、約100kNの力で、プレスすることにより、形成することができる。
【0026】
分散媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、2-ピロリドン、水等を用いることができる。
【0027】
<活物質>
活物質14を構成する材料としては、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
正極活物質としては、例えば、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0029】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、一般式
LiNixCoyMnzO2
(ただし、式
x+y+z=1
を満たす。)
で表される化合物を基本骨格とするリチウムニッケル複合酸化物、一般式
LixMy(PO4)z
(ただし、Mは、遷移金属であり、式
0.5≦x≦4
0.5≦y≦2.5
0.5≦z≦3.5
を満たす。)
で表される化合物を基本骨格とするリチウムリン酸系材料等が挙げられる。
【0030】
リチウムニッケル複合酸化物の基本骨格の具体例としては、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.2O2等が挙げられる。
【0031】
リチウムリン酸系材料の基本骨格の具体例としては、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)、オリビン鉄(LiFePO4)、オリビンマンガン(LiMnPO4)、オリビンコバルト(LiCoPO4)、オリビンニッケル(LiNiPO4)、オリビンバナジウム(LiVOPO4)等が挙げられる。
【0032】
なお、アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、基本骨格に異種元素をドープした類似化合物を用いることができる。
【0033】
また、負極活物質としては、例えば、炭素質材料を用いることができる。
【0034】
炭素質材料としては、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、様々な熱分解条件による有機物の熱分解物、非晶質カーボン等が挙げられる。これらの中でも、人造グラファイト、天然グラファイト、非晶質カーボンが特に好ましい。
【0035】
<樹脂、導電剤>
電極合材層12は、必要に応じて、樹脂、導電剤等をさらに含んでいてもよい。
【0036】
樹脂としては、例えば、PVDF、PVP、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等の重合体や、これらの重合体と同様の骨格を持つ類似化合物を用いることができる。
【0037】
また、樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等の単量体の共重合体を用いてもよい。
【0038】
さらに、樹脂としては、メガファック(DIC社製)、マリアリム(日油社製)、エスリーム(日油社製)、ソルスパース(Lubrizol社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、BYK-DISPER(BYK社)等の分散剤(界面活性剤)を用いてもよい。
【0039】
なお、樹脂は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0040】
導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等を用いることができる。
【0041】
<絶縁層>
絶縁層13の厚さ、即ち、電極合材層12の表面から絶縁層13の表面までの距離は、0.3~20μmであることが好ましい。絶縁層13の厚さが0.3μm以上であると、正極と負極が短絡した場合の発熱がさらに抑制され、20μm以下であると、電極10を薄膜化することができる。
【0042】
<絶縁性無機粒子>
絶縁性無機粒子16を構成する材料としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、金属酸化物、金属窒化物、金属酸化物及び金属窒化物以外の金属化合物、ガラスセラミック等が挙げられる。
【0043】
なお、絶縁性無機粒子16は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0044】
金属酸化物としては、例えば、Al2O3(アルミナ)、TiO2、BaTiO3、ZrO2等が挙げられる。
【0045】
金属窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0046】
金属酸化物、金属窒化物以外の金属化合物としては、例えば、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト等の鉱物資源に由来する物質又はそれらの人造物等が挙げられる。
【0047】
ガラスセラミックとしては、例えば、ZnO-MgO-Al2O3-SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO-Al2O3-SiO2系セラミックやAl2O3-CaO-SiO2-MgO-B2O3系セラミック等を用いた非ガラス系セラミック等が挙げられる。
【0048】
絶縁性無機粒子16の平均粒径は、特に制限はなく、電極合材層12の空隙15のサイズに応じて適宜選択することができるが、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
【0049】
<樹脂>
樹脂21を構成する材料としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される一種以上の元素を含む無機樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、スチレンブタジエンゴム等の重合体が挙げられる。
【0050】
また、樹脂21を構成する材料としては、メガファック(DIC社製)、マリアリム(日油社製)、エスリーム(日油社製)、ソルスパース(Lubrizol社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、BYK-DISPER(BYK社)等の分散剤(界面活性剤)が挙げられる。
【0051】
なお、樹脂21は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0052】
絶縁層13中の樹脂21の含有量は、特に制限はなく、絶縁性無機粒子16の含有量や表面積に応じて適宜選択することができるが、0.1~10質量%であることが好ましい。絶縁層13中の樹脂21の含有量が0.1質量%以上であると、電極合材層12と絶縁層13の接合強度が向上する。一方、絶縁層13中の樹脂21の含有量が10質量%以上であっても、電極合材層12と絶縁層13の接合強度が飽和する。
【0053】
<絶縁層用塗布液>
本実施形態の絶縁層用塗布液は、絶縁層13の形成に用いられ、絶縁性無機粒子16と、樹脂21と、有機溶剤を含む。
【0054】
絶縁層用塗布液の25℃における粘度は、5~20mPa・sであり、8~12mPa・sであることが好ましい。絶縁層用塗布液の25℃における粘度が5mPa・s未満であると、絶縁層用塗布液が電極合材層12の空隙15に過剰に浸透し、電極合材層12の空隙率が低下する。一方、絶縁層用塗布液の25℃における粘度が20mPa・sを超えると、絶縁層用塗布液が電極合材層12の空隙15に十分に浸透することができず、電極合材層12と絶縁層13の接合強度が低下する。
【0055】
絶縁層用塗布液中の絶縁性無機粒子16の含有量は、20~60質量%である。絶縁層用塗布液中の絶縁性無機粒子16の含有量が20質量%未満であると、絶縁層用塗布液が電極合材層12の空隙15に過剰に浸透し、電極合材層12の空隙率が低下する。一方、絶縁層用塗布液中の絶縁性無機粒子16の含有量が60質量%を超えると、絶縁層用塗布液が電極合材層12の空隙15に十分に浸透することができず、電極合材層12と絶縁層13の接合強度が低下する。
【0056】
有機溶剤の沸点は、140~300℃である。有機溶剤の沸点が140℃未満であると、絶縁層用塗布液が乾燥しやすくなるため、絶縁層用塗布液が電極合材層12の空隙15に十分に浸透することができず、電極合材層12と絶縁層13の接合強度が低下する。一方、有機溶剤の沸点が300℃を超えると、絶縁層用塗布液が乾燥しにくくなるため、絶縁層用塗布液が電極合材層12の空隙15に過剰に浸透し、電極合材層12の空隙率が低下する。
【0057】
絶縁層用塗布液中の樹脂21の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。絶縁層用塗布液中の樹脂21の含有量が10質量%以下であると、正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することができる。なお、絶縁層用塗布液中の樹脂21の含有量は、通常、1質量%以上である。
【0058】
絶縁層用塗布液は、必要に応じて、分散媒等をさらに含んでいてもよい。
【0059】
分散媒としては、絶縁性無機粒子16及び樹脂21を分散または溶解させることが可能であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、水、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等を用いることができる。
【0060】
絶縁層用塗布液は、絶縁性無機粒子16と、樹脂21と、有機溶剤を含む組成物を分散させることにより、製造することができる。
【0061】
組成物を分散させる際に用いる分散機としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、ホモジナイザー、攪拌機、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ホバートミキサー等が挙げられる。
【0062】
ここで、ホモジナイザーとしては、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式等を用いることができる。
【0063】
<電極の製造方法>
電極10の製造方法は、電極基体11上に電極合材層12を形成する工程と、本実施形態の絶縁層用塗布液を電極合材層12上に塗布して絶縁層13を形成する工程を有する。
【0064】
絶縁層用塗布液の塗布方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、公知の印刷方法を用いることができる。これらの中でも、少量の絶縁層用塗布液で薄膜を形成することができることから、液滴吐出方法が好ましい。
【0065】
液滴吐出方法としては、例えば、インクジェット法、スプレードライ法、ジェットディスペンサー法等が挙げられる。
【0066】
【0067】
電極合材層12が形成されている電極基体11を搬送しながら、絶縁層用塗布液31を塗布することにより、電極10を製造する。
【0068】
具体的には、まず、所定の領域に電極合材層12が形成されている電極基体11を筒状の芯に巻き付け、電極合材層12が形成されている側が上側になるように、送り出しローラ32と巻き取りローラ33にセットする。ここで、送り出しローラ32と巻き取りローラ33は、反時計回りに回転し、電極基体11は、右から左の方向に搬送される。
【0069】
次に、液滴吐出機構34は、搬送される電極基体11の電極合材層12上に絶縁層用塗布液31の液滴を吐出する。ここで、液滴吐出機構34は、送り出しローラ32と巻き取りローラ33の間の電極基体11の上部に設置されており、絶縁層用塗布液31は、タンク35から、チューブ36を経由して、液滴吐出機構34に供給される。また、絶縁層用塗布液31の液滴は、電極合材層12の少なくとも一部を覆うように吐出される。
【0070】
なお、液滴吐出機構34は、電極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数設置されていてもよい。
【0071】
次に、絶縁層用塗布液31で覆われた電極基体11は、送り出しローラ32と巻き取りローラ33によって、乾燥機構37に搬送され、乾燥する。その結果、電極合材層12上に絶縁層13が形成される。
【0072】
乾燥機構37としては、絶縁層用塗布液31に直接接触しない機構であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等が挙げられる。
【0073】
なお、乾燥機構37は、電極基体11の上下のいずれか一方に設置されていてもよい。
【0074】
また、乾燥機構37は、電極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向に、複数設置されていてもよい。
【0075】
【0076】
電極合材層12が形成されている電極基体11を搬送しながら、絶縁層用塗布液31を塗布する前に、電極基体11を搬送しながら、電極合材層用塗布液41を塗布する以外は、
図3と同様にして、電極10を製造する。
【0077】
具体的には、まず、電極基体11を筒状の芯に巻き付け、送り出しローラ32と巻き取りローラ33にセットする。
【0078】
次に、液滴吐出機構42は、搬送される電極基体11上に電極合材層用塗布液41の液滴を吐出する。ここで、液滴吐出機構42は、送り出しローラ32と液滴吐出機構34の間の電極基体11の上部に設置されており、電極合材層用塗布液41は、タンク43から、チューブ44を経由して、液滴吐出機構42に供給される。また、電極合材層用塗布液41の液滴は、電極基体11の所定の領域を覆うように吐出される。
【0079】
なお、液滴吐出機構42の代わりに、例えば、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ドクターブレード等を用いてもよい。
【0080】
次に、電極合材層用塗布液41で覆われた電極基体11は、送り出しローラ32と巻き取りローラ33によって、乾燥機構45に搬送され、乾燥する。その結果、電極基体11上に電極合材層12が形成される。
【0081】
乾燥機構45としては、電極合材層用塗布液41に直接接触しない機構であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等が挙げられる。
【0082】
なお、乾燥機構45は、電極基体11の上下のいずれか一方に設置されていてもよい。
【0083】
また、乾燥機構45は、電極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向に、複数設置されていてもよい。
【0084】
次に、
図3と同様にして、電極合材層12上に絶縁層13が形成される。
【0085】
<非水系蓄電素子>
本実施形態の非水系蓄電素子は、本実施形態の電極を有する。このとき、本実施形態の電極は、正極及び/又は負極として、使用される。
【0086】
本実施形態の非水系蓄電素子は、セパレータを介して、正極と負極が配置されているが、セパレータを介して、正極と負極が交互に積層されていることが好ましい。このとき、正極と負極の積層数は、任意に決定することができる。
【0087】
本実施形態の非水系蓄電素子は、非水電解液が注入されており、外装で封止されていることが好ましい。このとき、外装と絶縁するために、両側の電極と外装の間に、セパレータが設けられていることが好ましい。
【0088】
非水系蓄電素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが
、例えば、非水系二次電池、非水系キャパシタ等が挙げられる。
【0089】
非水系蓄電素子の形状としては、特に制限はなく、公知の形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0090】
【0091】
非水系蓄電素子50は、正極51と、負極52と、非水電解液を保持しているセパレータ53と、外装缶54と、正極51の引き出し線55と、負極52の引き出し線56とを有する。
【0092】
<セパレータ>
セパレータは、負極と正極の短絡を防ぐために、負極と正極との間に設けられる。
【0093】
セパレータは、イオン透過性を有し、かつ、電子伝導性を有しない。
【0094】
セパレータとしては、特に制限はなく、目的に応じて 適宜選択することができるが、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトフロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜等が挙げられる。
【0095】
セパレータは、非水電解液を保持する観点から、気孔率が50%以上であることが好ましい。
【0096】
セパレータの平均厚さは、3~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。セパレータの平均厚さが3μm以上であると、負極と正極び短絡を防止しやすくなり、50μm以下であると、負極と正極の間の電気抵抗が増加しにくくなる。
【0097】
セパレータの形状としては、非水系蓄電素子に適用することが可能であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、シート状等が挙げられる。
【0098】
セパレータの大きさは、非水系蓄電素子に適用することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0099】
セパレータは、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0100】
<非水電解液>
非水電解液は、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
【0101】
<非水溶媒>
非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶剤が好ましい。
【0102】
非プロトン性有機溶剤としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶剤を用いることができる。
【0103】
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピオネート(MP)等が挙げられる。
【0104】
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。
【0105】
これらの中でも、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を併用することが好ましい。このとき、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)の混合割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0106】
本実施形態においては、必要に応じて、カーボネート系有機溶剤以外の非水溶媒を用いてもよい。
【0107】
カーボネート系有機溶剤以外の非水溶媒としては、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶剤、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶剤等を用いることができる。
【0108】
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。
【0109】
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(酢酸メチル(MA)、酢酸エチル等)、ギ酸アルキルエステル(ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル等)等が挙げられる。
【0110】
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン等が挙げられる。
【0111】
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0112】
<電解質塩>
電解質塩としては、イオン伝導度が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限はないが、リチウム塩が好ましい。
【0113】
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、塩化リチウム(LiCl)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C2F5SO2)2)等が挙げられる。これらの中でも、炭素電極中へのアニオンの吸蔵量の観点から、LiPF6が特に好ましい。
【0114】
なお、電解質塩は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0115】
非水電解液中の電解質塩の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.7~4mol/Lであることが好ましく、1.0~3mol/Lであることがより好ましく、1.0~2.5mol/Lであることがさらに好ましい。
【0116】
<電子デバイス>
本実施形態の電子デバイスは、本実施形態の非水系蓄電素子を有する。
【0117】
電子デバイスとしては、特に制限はなく、各種用途に用いることができるが、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等が挙げられる。
【実施例0118】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0119】
後述する方法により作製した絶縁層用塗布液の粘度、絶縁性無機粒子の平均粒径を、以下の方法により、測定した。
【0120】
[粘度]
E型粘度計にCPA-40Zのロータを装着して、絶縁層用塗布液の100rpmにおける粘度を25℃で計測した。
【0121】
[絶縁性無機粒子の平均粒径]
レーザ回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(Malvern Panaltycal社製)を用いて、絶縁層用塗布液の絶縁性無機粒子の平均粒径を計測した。
【0122】
[実施例1]
(絶縁層用塗布液の作製)
絶縁性無機粒子として、アルミナ粒子AA-05(住友化学社製)、第一の樹脂として、アクリル系樹脂AZ9129(日本ゼオン社製)、第二の樹脂として、マリアリムHKM-50A(日油社製)、有機溶剤として、イソプロピルグリコール(沸点141℃)、分散媒として、イオン交換水を用いた。
【0123】
スターラーを用いて、絶縁性無機粒子、第二の樹脂、分散媒の一部を分散させた後、第一の樹脂を添加し、ホモジナイザーG-smasher(リックス社製)を用いて、分散させ、絶縁性無機粒子を60質量%含む分散液を作製した。次に、有機溶剤、分散媒の残部を添加した後、超音波分散機UH-150(エスエムテー社製)を用いて、分散させ、絶縁層用塗布液を作製した。
【0124】
絶縁層用塗布液の組成は、絶縁性無機粒子20質量%、第一の樹脂0.3質量%、第二の樹脂0.2質量%、有機溶剤30質量%、分散媒49.5質量%であった。また、絶縁層用塗布液は、粘度が3.1mPa・s、絶縁性無機粒子の平均粒径は約0.64μmであった。
【0125】
(負極合材層用塗布液の作製)
負極活物質としての、カーボンALM900(三菱商事製)及びALM400(三菱商事製)と、導電剤を水中に分散させ、固形分濃度60質量%の負極合材層用塗布液を作製した。
【0126】
(正極合材層用塗布液の作製)
正極活物質としての、リチウム-ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物粒子NCA 503H(JFEミネラル社製)と、導電剤を、N-メチル-2-ピロリドン中に分散させ、固形分濃度77質量%の正極合材層用塗布液を作製した。
【0127】
(負極の製造)
図4の電極の製造方法を用いて、負極を製造した。具体的には、銅製の集電箔の一方の面の所定の領域に負極合材層用塗布液の液滴を吐出した後、乾燥させて、負極合材層を形成した。このとき、負極合材層の単位面積当たりの質量(面積密度)が約17mg/cm
2となるように、負極合材層用塗布液の液滴を吐出した。次に、負極合材層上に、絶縁層用塗布液の液滴を吐出した後、乾燥させて、絶縁層を形成した。このとき、絶縁層の単位面積当たりの質量(面積密度)が約1.96mg/cm
2となるように、絶縁層用塗布液の液滴を吐出した。次に、上記と同様にして、銅製の集電箔の他方の面に、負極合材層及び絶縁層を形成した。なお、液滴吐出機構34、42としては、産業用インクジェットMH2420(リコー社製)を用いた。
【0128】
次に、負極の引き出し線(銅製の集電箔)を残し、負極合材層及び絶縁層が50mm×30mmとなる形状にプレスで打ち抜き、負極を製造した。
【0129】
なお、走査型電子顕微鏡を用いて、負極の断面を観察したところ、絶縁層の一部が負極合材層の空隙の一部に存在しており、絶縁層の厚さ、即ち、負極合材層の表面から絶縁層の表面までの距離は、11.3μmであった。
【0130】
(正極の製造)
銅製の集電箔の代わりに、アルミニウム製の集電箔を用い、負極合材層用塗布液の代わりに、正極合材層用塗布液を用いた以外は、(負極の製造)と同様にして、アルミニウム製の集電箔の両面に、正極合材層及び絶縁層を形成した。このとき、正極合材層の単位面積当たりの質量(面積密度)が約28mg/cm2となるように、正極合材層用塗布液の液滴を吐出した。
【0131】
次に、正極の引き出し線(アルミニウム製の集電箔)を残し、正極合材層及び絶縁層が43mm×29mmとなる形状にプレスで打ち抜き、正極を製造した。
【0132】
なお、走査型電子顕微鏡を用いて、正極の断面を観察したところ、絶縁層の一部が正極合材層の空隙の一部に存在しており、絶縁層の厚さ、即ち、正極合材層の表面から絶縁層の表面までの距離は、11.3μmであった。
【0133】
(非水電解液の作製)
ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)とホウフッ化リチウム(LiBF4)をエチレンカーボネートに溶解させ、非水電解液を作製した。
【0134】
(リチウムイオン二次電池の製造)
引き出し線が重ならない状態にして、正極10枚、負極11枚を、セパレータを介して、交互に積層した。セパレータとしては、厚さ15μmのポリプロピレン微多孔膜とポリエチレン微多孔膜の複合材料を用いた。次に、ラミネートシールにより、袋状の外装を形成した後、非水電解液を外装内に注入して、注液部分を封止し、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0135】
[比較例1]
正極、負極を製造する際に、絶縁層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0136】
[釘刺し試験]
実施例1、比較例1のリチウムイオン二次電池の釘刺し試験を実施した。具体的には、リチウムイオン二次電池を満充電状態(SOC(充電率)100%)とした後、電極が積層されている方向と平行に、直径4.5mmの釘を刺し、意図的に短絡させた状態で、釘の温度を測定した。その結果、実施例1のリチウムイオン二次電池は、81.9℃まで上昇したのに対し、比較例1のリチウムイオン二次電池は152.5℃まで上昇した。以上の結果から、実施例1のリチウムイオン二次電池は、正極と負極が短絡した場合の発熱を抑制することができると考えられる。
【0137】
[実施例2]
有機溶剤として、プロピレングリコール(沸点188.2℃)を用い、有機溶剤、分散媒の残部を添加する際に、第三の樹脂として、メガファックF-444(DIC社製)をさらに添加し、各成分の添加量を調整した以外は、実施例1と同様にして、絶縁層用塗布液を作製した。
【0138】
絶縁層用塗布液の組成は、絶縁性無機粒子35質量%、第一の樹脂0.525質量%、第二の樹脂0.35質量%、有機溶剤35質量%、第三の樹脂0.1質量%、分散媒29.025質量%であった。また、絶縁層用塗布液は、粘度が11.2mPa・s、絶縁性無機粒子の平均粒径が約0.56μmであった。
【0139】
[実施例3]
絶縁性無機粒子として、アルミナ粒子AKP-3000(住友化学社製)、第一の樹脂として、フッ素アクリル系樹脂TRD-202A(JSR社製)を用い、各成分の添加量を調整し、絶縁性無機粒子を64質量%含む分散液を作製した以外は、実施例2と同様にして、絶縁層用塗布液を作製した。
【0140】
絶縁層用塗布液の組成は、絶縁性無機粒子35質量%、第一の樹脂0.525質量%、第二の樹脂0.875質量%、有機溶剤30質量%、第三の樹脂0.61質量%、分散媒33.44質量%であった。絶縁層用塗布液は、粘度が12.3mPa・s、絶縁性無機粒子の平均粒径が約0.45μmであった。
【0141】
[実施例4]
有機溶剤として、グリセリン(沸点290℃)を用いた以外は、実施例2と同様にして、絶縁層用塗布液を作製した。
【0142】
絶縁層用塗布液の組成は、絶縁性無機粒子35質量%、第一の樹脂0.525質量%、第二の樹脂0.35質量%、有機溶剤35質量%、第三の樹脂0.1質量%、分散媒29.025質量%であった。絶縁層用塗布液は、粘度が17.4mPa・sであり、絶縁性無機粒子の平均粒径が実施例1~3と同等であった。
【0143】
[実施例5]
有機溶剤として、グリセリン(沸点290℃)を用い、各成分の添加量を調整した以外は、実施例3と同様にして、絶縁層用塗布液を作製した。
【0144】
絶縁層用塗布液の組成は、絶縁性無機粒子35質量%、第一の樹脂0.525質量%、第二の樹脂0.875質量%、有機溶剤30質量%、第三の樹脂0.61質量%、分散媒33.44質量%であった。絶縁層用塗布液は、粘度が18.1mPa・sであり、絶縁性無機粒子の平均粒径が実施例1~3と同等であった。
【0145】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。