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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008046
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20230112BHJP
   C10M 135/36 20060101ALI20230112BHJP
   C10M 139/00 20060101ALI20230112BHJP
   C10M 135/04 20060101ALI20230112BHJP
   C10M 137/04 20060101ALI20230112BHJP
   C10M 137/02 20060101ALI20230112BHJP
   C10M 137/10 20060101ALI20230112BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 30/14 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230112BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M135/36
C10M139/00 A
C10M135/04
C10M137/04
C10M137/02
C10M137/10
C10N30:06
C10N30:14
C10N30:10
C10N30:00 Z
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:25
C10N40:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111291
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】巽 浩之
(72)【発明者】
【氏名】松原 和茂
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BG02C
4H104BG19C
4H104BH02C
4H104BH03A
4H104BH03C
4H104BH06C
4H104BJ05C
4H104CA04A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104LA03
4H104LA05
4H104LA07
4H104LA20
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA20
4H104PA41
(57)【要約】
【課題】装置内に組み込まれた各種機構に応じた潤滑に適した特性(例えば、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性等)を有する新たな潤滑油組成物が求められている。
【解決手段】基油(A)、チアジアゾール系化合物(B)、及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C)を含有する潤滑油組成物であって、成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.60質量%未満であり、成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35以上であり、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm以下である、潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)、チアジアゾール系化合物(B)、及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.60質量%未満であり、
成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35以上であり、
成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm以下である、
潤滑油組成物。
【請求項2】
成分(C)に由来する窒素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、320質量ppm以下である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
成分(C)に由来する窒素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、5.0~320質量ppmである、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35~2.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、3.0~300質量ppmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
成分(C)が、ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C1)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
成分(B)が、分岐鎖アルキル基を有するチアジアゾール系化合物(B1)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
硫化オレフィンの含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.20質量%未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物の100℃における動粘度が2.1mm/s以上5.0mm/s未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
さらにリン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる1種以上のリン系化合物(D)を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
成分(D)が、硫黄原子含有リン酸エステル及び硫黄原子含有亜リン酸エステルから選ばれる1種以上の硫黄リン系化合物(D1)を含む、請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
減速機の潤滑に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を適用した、減速機。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を減速機の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、減速機、及び潤滑油組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、変速機、減速機、圧縮機、油圧装置等の各種装置は、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構等の機構を有する。これらの機構においては、潤滑油組成物が用いられており、様々な要求に対応し得る潤滑油組成物が開発されている。
例えば、特許文献1には、省燃費性能と歯車や軸受け等の十分な耐久性を兼ね備えたギヤ油組成物の提供を目的として、低粘度の鉱油系潤滑油基油と高粘度の溶剤精製鉱油系潤滑油とを所定の割合で配合してなる基油に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及びアルカリ土類金属系清浄剤を所定の配合量で配合してなるギヤ油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-193255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、電動モーター等の各種装置に用いられる潤滑油組成物には、絶縁性と共に、その装置の態様によっては、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性等の特性が要求される場合がある。つまり、装置内に組み込まれた各種機構に応じた潤滑に適した特性(例えば、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性等)を有する新たな潤滑油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基油と共に、チアジアゾール系化合物、及び、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドを含有し、チアジアゾール系化合物の含有量、並びに、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドに由来のホウ素原子及び窒素原子の含有量を所定の範囲に調整した潤滑油組成物を提供する。
具体的には、下記[1]~[14]の態様に係る潤滑油組成物、減速機、及び潤滑油組成物の使用を提供する。
[1]基油(A)、チアジアゾール系化合物(B)、及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.60質量%未満であり、
成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35以上であり、
成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm以下である、
潤滑油組成物。
[2]成分(C)に由来する窒素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、320質量ppm以下である、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]成分(C)に由来する窒素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、5.0~320質量ppmである、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4]成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35~2.0である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[5]成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、3.0~300質量ppmである、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[6]成分(C)が、ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C1)を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[7]成分(B)が、分岐鎖アルキル基を有するチアジアゾール系化合物(B1)を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[8]硫化オレフィンの含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.20質量%未満である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[9]前記潤滑油組成物の100℃における動粘度が2.1mm/s以上5.0mm/s未満である、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[10]さらにリン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる1種以上のリン系化合物(D)を含有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[11]成分(D)が、硫黄原子含有リン酸エステル及び硫黄原子含有亜リン酸エステルから選ばれる1種以上の硫黄リン系化合物(D1)を含む、上記[10]に記載の潤滑油組成物。
[12]減速機の潤滑に用いられる、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[13]上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を適用した、減速機。
[14]上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を減速機の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、装置内に組み込まれた各種機構に適した特性を有する潤滑油組成物であり、より好適な一態様の潤滑油組成物は、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性等の特性をバランス良く向上させ得る。そのため、これらの潤滑油組成物は、減速機等の潤滑に好適に使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
【0008】
本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
本明細書において、ホウ素原子及びリン原子の含有量は、JPI-5S-38-92に準拠して測定した値を意味する。
本明細書において、窒素原子の含有量は、JIS K2609に準拠して測定した値を意味する。
本明細書において、硫黄原子の含有量は、JIS K2541-6:2013に準拠して測定した値を意味する。
【0009】
〔潤滑油組成物の構成〕
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油(A)(以下、「成分(A)」ともいう)、チアジアゾール系化合物(以下、「成分(B)」ともいう)、及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(以下、「成分(C)」ともいう)を含有する。
装置内に組み込まれた各種機構の歯面等のすべり接触面の潤滑において、スカッフィングと呼ばれる固相凝着による局部的表面損傷の発生が問題となる。本発明者らの検討によれば、スカッフィングは、動粘度が低い潤滑油組成物ほど生じ易いことが分かった。また、動粘度が低い潤滑油組成物は、体積抵抗率の低下も見られ、絶縁性にも問題も生じ易い。
本発明者らは、チアジアゾール系化合物を含む潤滑油組成物とすることで、耐スカッフィング性を向上させることを見出したが、同時に、銅溶出量の増大や酸化安定性の低下といった新たな問題が生じることも分かった。そこで、このような問題の解決するために様々な検討をした結果、本発明者らは、チアジアゾール系化合物の含有量、並びに、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドに由来のホウ素原子及び窒素原子の含有量を所定の範囲に調整した潤滑油組成物とすることで、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性等の特性をバランス良く向上させた潤滑油組成物となり得るとの知見を得た。本発明の一態様の潤滑油組成物は、この知見に基づいて成されたものである。
【0010】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、さらにリン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる1種以上のリン系化合物(D)(以下、「成分(D)」ともいう)を含有することが好ましい。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(B)~(D)以外の各種添加剤をさらに含有してもよい。
【0011】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、さらに、85質量%以上、90質量%以上、又は92質量%以上としてもよく、また、100質量%以下、99.5質量%以下、99.0質量%以下、98.5質量%以下、98.0質量%以下、97.5質量%以下、97.0質量%以下、96.5質量%以下、又は96.0質量%以下としてもよい。
【0012】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%超、更に好ましくは70質量%超、より更に好ましくは75質量%超、特に好ましくは80質量%超であり、さらに、83質量%超、85質量%超、87質量%超、90質量%超、92質量%超、又は94質量%以上としてもよく、また、100質量%以下、99.9質量%以下、99.5質量%以下、99.0質量%以下、98.5質量%以下、98.0質量%以下、97.5質量%以下、97.0質量%以下、96.5質量%以下、又は96.0質量%以下としてもよい。
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0013】
<成分(A):基油>
本発明の一態様で用いる成分(A)である基油としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製(水素化分解)等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
【0014】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
【0015】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ2及びグループ3に分類される鉱油、並びに、合成油から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の一態様で用いる成分(A)の100℃における動粘度は、好ましくは1.9mm/s以上、より好ましくは2.0mm/s以上、より好ましくは2.1mm/s以上、更に好ましくは2.2mm/s以上であり、さらに、2.3mm/s以上、2.5mm/s以上、2.7mm/s以上、2.9mm/s以上、3.0mm/s以上、3.2mm/s以上、3.4mm/s以上、又は3.6mm/s以上としてもよく、また、好ましくは5.0mm/s以下、より好ましくは4.8mm/s以下、より好ましくは4.6mm/s以下、更に好ましくは4.5mm/s以下、より更に好ましくは4.3mm/s以下、特に好ましくは4.2mm/s以下であり、さらに、4.0mm/s以下、3.8mm/s以下、3.7mm/s以下、3.6mm/s以下、3.5mm/s以下、3.4mm/s以下、3.3mm/s以下、3.2mm/s以下、3.0mm/s以下、2.8mm/s以下、又は2.6mm/s以下としてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様で用いる成分(A)の粘度指数は、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上、より更に好ましくは100以上である。
【0018】
また、本発明の一態様において、成分(A)として、2種以上の基油を組み合わせた混合油を用いる場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。そのため、低粘度の基油と、高粘度の基油を併用して、上記範囲の動粘度及び粘度指数となるように調製してもよい。
【0019】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、さらに、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は92質量%以上としてもよく、また、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.90質量%以下、より好ましくは99.50質量%以下、更に好ましくは99.00質量%以下、より更に好ましくは98.50質量%以下、特に好ましくは98.00質量%以下であり、さらに、97.50質量%以下、97.00質量%以下、96.50質量%以下、又は96.00質量%以下としてもよい。
【0020】
<成分(B):チアジアゾール系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(B)として、チアジアゾール系化合物を含有することで、耐スカッフィング性を向上させた潤滑油組成物となり得る。成分(B)による耐スカッフィング性の向上効果は、低粘度化した潤滑油組成物においてもより効果的に発現し得る。
成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ただし、成分(B)は、銅溶出量の増大や酸化安定性の低下を引き起こす要因ともなる。そのため、本発明の一態様の潤滑油組成物では、成分(B)の含有量を、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、0.60質量%未満に制限している。
【0021】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、銅溶出抑制効果及び酸化安定性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、成分(B)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、0.60質量%未満であり、好ましくは0.57質量%以下、より好ましくは0.55質量%以下、より好ましくは0.52質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下、更に好ましくは0.47質量%以下、更に好ましくは0.45質量%以下、更に好ましくは0.42質量%以下、より更に好ましくは0.40質量%以下、特に好ましくは0.39質量%以下であり、さらに、0.38質量%以下、0.37質量%以下、0.36質量%以下、0.35質量%以下、0.34質量%以下、0.33質量%以下、又は0.32質量%以下としてもよい。
【0022】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(B)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.12質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.17質量%以上、より更に好ましくは0.20質量%以上、特に好ましくは0.22質量%以上であり、さらに、0.23質量%以上、0.24質量%以上、0.25質量%以上、0.26質量%以上、0.27質量%以上、又は0.28質量%以上としてもよい。
【0023】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)の硫黄原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは30質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは150質量ppm以上、更に好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは250質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、より更に好ましくは400質量ppm以上、特に好ましくは500質量ppm以上であり、さらに、600質量ppm以上、650質量ppm以上、700質量ppm以上、750質量ppm以上、800質量ppm以上、850質量ppm以上、900質量ppm以上、950質量ppm以上、又は1000質量ppm以上としてもよく、また、銅溶出抑制効果及び酸化安定性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、好ましくは2500質量ppm以下、より好ましくは2000質量ppm以下、より好ましくは1900質量ppm以下、より好ましくは1800質量ppm以下、更に好ましくは1700質量ppm以下、更に好ましくは1600質量ppm以下、更に好ましくは1500質量ppm以下、より更に好ましくは1400質量ppm以下、特に好ましくは1300質量ppm以下であり、さらに、1250質量ppm以下、1200質量ppm以下、1150質量ppm以下、1100質量ppm以下、又は1050質量ppm以下としてもよい。
【0024】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)の窒素原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは30質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは60質量ppm以上、更に好ましくは70質量ppm以上、更に好ましくは80質量ppm以上、更に好ましくは90質量ppm以上、より更に好ましくは100質量ppm以上、特に好ましくは120質量ppm以上であり、さらに、130質量ppm以上、140質量ppm以上、150質量ppm以上、160質量ppm以上、170質量ppm以上、180質量ppm以上、又は190質量ppm以上としてもよく、また、銅溶出抑制効果及び酸化安定性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは450質量ppm以下、より好ましくは400質量ppm以下、より好ましくは350質量ppm以下、更に好ましくは320質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下、更に好ましくは290質量ppm以下、より更に好ましくは280質量ppm以下、特に好ましくは270質量ppm以下であり、さらに、260質量ppm以下、250質量ppm以下、240質量ppm以下、230質量ppm以下、220質量ppm以下、210質量ppm以下、又は200質量ppm以下としてもよい。
【0025】
本発明の一態様で用いる成分(B)であるチアジアゾール系化合物としては、チアジアゾール環を有する化合物であればよいが、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、下記一般式(b-1)~(b-4)のいずれかで表される化合物を含むことが好ましく、下記一般式(b-1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
なお、成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
【化1】
【0027】
上記式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭化水素基である。
m及びnは、それぞれ独立して、1~10の整数であるが、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数、更に好ましくは2~3の整数、より更に好ましくは2である。
【0028】
及びRとして選択し得る、前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、1,1-ジメチルヘプチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のアルキル基を有してもよいシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0029】
及びRとして選択し得る、前記炭化水素基の炭素数は、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは5以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは12以下である。
【0030】
これらの中でも、R及びRは、それぞれ独立して、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、アルキル基であることが好ましく、耐スカッフィング性と共に、銅腐食防止性を向上させて銅の溶出を効果的に抑制し得る潤滑油組成物とする観点から、分岐鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数5以上の分岐鎖アルキル基であることが更に好ましい。
分岐鎖アルキル基の炭素数は、上記観点から、好ましくは5以上であるが、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは12以下である。
【0031】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐スカッフィング性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、前記一般式(b-1)~(b-4)のいずれかで表される化合物の合計含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(B)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0032】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、上記観点から、前記一般式(b-1)で表される化合物の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(B)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
【0033】
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、下記一般式(b-x)で表される化合物の含有割合が、当該潤滑油組成物に含まれる成分(B)の全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量%未満、より好ましくは8質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、より更に好ましくは3質量%未満、特に好ましくは1質量%未満である。
【化2】
〔上記式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基である。pは、0又は1である。〕
【0034】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐スカッフィング性をより向上させると共に、銅溶出抑制効果を良好とした潤滑油組成物とする観点から、成分(B)が、分岐鎖アルキル基を有するチアジアゾール系化合物(B1)(以下、「成分(B1)」ともいう)を含むことが好ましい。
上記観点から、成分(B1)の含有割合は、前記潤滑油組成物に含まれる成分(B)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0035】
成分(B1)が有する分岐鎖アルキル基の炭素数は、耐スカッフィング性をより向上させると共に、銅溶出抑制効果を良好とした潤滑油組成物とする観点から、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは12以下である。
【0036】
耐スカッフィング性をより向上させると共に、銅溶出抑制効果を良好とした潤滑油組成物とする観点から、成分(B1)は、前記一般式(b-1)~(b-4)のいずれかで表され、各式中のR及びRが、それぞれ独立して、分岐鎖アルキル基である化合物であることが好ましく、前記一般式(b-1)で表され、式中のR及びRが、それぞれ独立して、分岐鎖アルキル基である化合物であることがより好ましい。なお、分岐鎖アルキル基の炭素数の好適範囲は上述のとおりである。
【0037】
<硫化オレフィン>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、硫化オレフィンを含有してもよい。ただし、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、硫化オレフィンの含有量は少ないほど好ましい。
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、硫化オレフィンの含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.20質量%未満、より好ましくは0.18質量%未満、より好ましくは0.15質量%未満、更に好ましくは0.12質量%未満、より更に好ましくは0.10質量%未満、特に好ましくは0.07質量%未満であり、さらに、0.05質量%未満、0.04質量%未満、0.03質量%未満、0.02質量%未満、0.01質量%未満、又は0.001質量%未満としてもよい。
【0038】
硫化オレフィンとしては、例えば、下記一般式(i)で表される化合物が挙げられる。
R-(S)-R’ (i)
上記式(i)中、Rは、炭素数2~20のアルケニル基であり、R’は、炭素数2~20のアルケニル基又は炭素数2~20のアルキル基であり、qは1~10の整数である。
【0039】
<成分(C):ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(C)として、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドを含有する。上述のとおり、成分(B)は、耐スカッフィング性の向上には寄与するが、同時に銅溶出量の増大や酸化安定性の低下の要因ともなる。そこで、本発明の一態様の潤滑油組成物では、成分(B)と共に、成分(C)を含有することで、優れた耐スカッフィング性を発現しつつ、銅溶出抑制効果及び酸化安定性に優れた潤滑油組成物としている。
なお、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)は、下記要件(I)及び(II)を満たす。
・要件(I):成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35以上である。
・要件(II):成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm以下である。
要件(I)を満たすように、前記含有量比〔B/N〕を0.35以上とすることで、銅溶出抑制効果及び酸化安定性を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
また、要件(II)を満たすように、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量を調整することで、耐スカッフィング性及び絶縁性を良好に保持した潤滑油組成物とすることができる。
【0041】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、銅溶出抑制効果及び酸化安定性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]は、質量比で、上記要件(I)のとおり0.35以上であり、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.45以上、より好ましくは0.50以上、より好ましくは0.55以上、更に好ましくは0.60以上、更に好ましくは0.65以上、更に好ましくは0.70以上、より更に好ましくは0.75以上、特に好ましくは0.80以上であり、さらに、0.85以上、又は0.90以上としてもよい。
また、成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]は、質量比で、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、又は1.3以下としてもよい。
【0042】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐スカッフィング性及び絶縁性を良好に保持した潤滑油組成物とする観点から、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、300質量ppm以下であり、好ましくは280質量ppm以下、より好ましくは250質量ppm以下、より好ましくは220質量ppm以下、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは180質量ppm以下、更に好ましくは160質量ppm以下、更に好ましくは150質量ppm以下、より更に好ましくは140質量ppm以下、特に好ましくは130質量ppm以下であり、さらに、125質量ppm以下、120質量ppm以下、115質量ppm以下、又は110質量ppm以下としてもよい。
また、銅溶出抑制効果及び酸化安定性に優れた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは3.0質量ppm以上、より好ましくは5.0質量ppm以上、より好ましくは7.0質量ppm以上、より好ましくは10.0質量ppm以上、更に好ましくは12.0質量ppm以上、更に好ましくは15.0質量ppm以上、更に好ましくは17.0質量ppm以上、より更に好ましくは20.0質量ppm以上、特に好ましくは22.0質量ppm以上であり、さらに、25.0質量ppm以上、30.0質量ppm以上、35.0質量ppm以上、40.0質量ppm以上、45.0質量ppm以上、50.0質量ppm以上、55.0質量ppm以上、60.0質量ppm以上、65.0質量ppm以上、70.0質量ppm以上、又は75.0質量ppm以上としてもよい。
【0043】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐スカッフィング性及び絶縁性をより良好に保持し、銅溶出抑制効果及び酸化安定性に優れた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)に由来する窒素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは5.0質量ppm以上、より好ましくは7.0質量ppm以上、より好ましくは9.0質量ppm以上、より好ましくは10.0質量ppm以上、更に好ましくは12.0質量ppm以上、更に好ましくは15.0質量ppm以上、更に好ましくは17.0質量ppm以上、より更に好ましくは20.0質量ppm以上、特に好ましくは22.0質量ppm以上であり、さらに、25.0質量ppm以上、30.0質量ppm以上、35.0質量ppm以上、40.0質量ppm以上、45.0質量ppm以上、50.0質量ppm以上、55.0質量ppm以上、60.0質量ppm以上、65.0質量ppm以上、70.0質量ppm以上、75.0質量ppm以上、80質量ppm以上、又は85質量ppm以上としてもよく、また、好ましくは320質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは280質量ppm以下、より好ましくは250質量ppm以下、更に好ましくは220質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは180質量ppm以下、より更に好ましくは160質量ppm以下、特に好ましくは150質量ppm以下であり、さらに、140質量ppm以下、135質量ppm以下、130質量ppm以下、125質量ppm以下、120質量ppm以下、115質量ppm以下、110質量ppm以下、105質量ppm以下、又は100質量ppm以下としてもよい。
【0044】
本発明の一態様で用いる成分(C)は、ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C1)及びホウ素変性アルケニルコハク酸モノイミド(C2)から選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明の一態様で用いる成分(C)は、優れた耐スカッフィング性を発現しつつ、銅溶出抑制効果及び酸化安定性に優れた潤滑油組成物とする観点から、ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C1)を含むことが好ましい。
上記観点から、成分(C1)の含有割合は、前記潤滑油組成物に含まれる成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは20~100質量%、より好ましくは40~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
【0045】
成分(C1)としては、前記一般式(c-1)で表される化合物のホウ素変性物が挙げられる。また、成分(C2)としては、前記一般式(c-2)で表される化合物のホウ素変性物が挙げられる。
【0046】
【化3】
【0047】
上記一般式(c-1)及び(c-2)中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立に、質量平均分子量(Mw)が500~3000(好ましくは900~2500)のアルケニル基である。
a1、Ra2及びRa3して選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
b1、Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。
z1は0~10の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2又は3である。
z2は1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
【0048】
<成分(C)以外の無灰分散剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(C)以外の無灰分散剤を含有してもよい。
成分(C)以外の無灰分散剤としては、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸イミドのホウ素以外の変性物が挙げられる。
非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドとしては、例えば、前記一般式(c-1)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミド、及び、前記一般式(c-2)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド等が挙げられる。
アルケニルコハク酸イミドのホウ素以外の変性物としては、例えば、前記一般式(c-1)又は(c-2)で表される化合物と、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、エポキシ化合物、及び有機酸等から選ばれる1種以上とを反応させた、反応生成物が挙げられる。
【0049】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)以外の無灰分散剤の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.7質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、又は0.1質量%以下としてもよく、また、0質量%以上、0.001質量%以上、又は0.01質量%以上としてもよい。
【0050】
<成分(D):リン系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、さらにリン酸エステル及び亜リン酸エステルから選ばれる1種以上のリン系化合物(D)を含有することが好ましい。
【0051】
本発明の一態様で成分(D)として用いるリン酸エステルは、例えば、下記一般式(d-1)で表される中性リン酸エステル、下記一般式(d-2)又は(d-3)で表される酸性リン酸エステルが挙げられる。
また、本発明の一態様で成分(D)として用いる亜リン酸エステルは、例えば、下記一般式(d-4)又は(d-5)で表される酸性亜リン酸エステルが挙げられる。
【0052】
【化4】
【0053】
上記式中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい炭素数6~18のアリール基、スルフィド結合を有する基等が挙げられる。なお、複数のRは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0054】
として選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
これらのアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
前記アルキル基の炭素数は、1~30であるが、好ましくは3~20、より好ましくは5~16、更に好ましくは6~14、より更に好ましくは8~12である。
【0055】
として選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
これらのアルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
前記アルケニル基の炭素数は、2~20であるが、好ましくは3~16、より好ましくは6~12である。
【0056】
として選択し得る、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
なお、これらアリール基に置換し得る「炭素数1~6のアルキル基」としては、上述のアルキル基のうち、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0057】
として選択し得る、スルフィド結合を有する基としては、下記一般式(ii)で表される基が好ましい。
【化5】
上記式(ii)中、RA01は水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。RA02は2価の有機基である。xは1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数、更に好ましくは1~3の整数、より更に好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。*は結合位置を示す。
【0058】
A01として選択し得る、1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられるが、炭素数1~20のアルキル基、もしくは、炭素数1~20のアルキル基の少なくとも1つの-CH-構造が、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CSO-、-OCS-、-CH=CH-又は-C≡C-に置換された基であることが好ましく、アルキル基がより好ましい。
A01として選択し得る、アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
また、当該アルキル基の炭素数は、1~20であるが、好ましくは2~18、より好ましくは4~16、更に好ましくは6~12、より更に好ましくは8~10である。
【0059】
A02として選択し得る、2価の有機基としては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数1~20のアルケニレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基等が挙げられるが、炭素数1~20のアルキレン基、もしくは、炭素数1~20のアルキレン基の少なくとも1つの-CH-構造が、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CSO-、-OCS-、-CH=CH-又は-C≡C-に置換された基であることが好ましく、炭素数2~20のアルキレン基がより好ましい。
A02として選択し得る、アルキレン基は、直鎖アルキレン基であってもよく、分岐鎖アルキレン基であってもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
また、当該アルキレン基の炭素数は、1~20であるが、好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1、2又は4、特に好ましくは2である。
【0060】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)が、硫黄原子含有リン酸エステル及び硫黄原子含有亜リン酸エステルから選ばれる1種以上の硫黄リン系化合物(D1)を含むことが好ましい。
【0061】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(D)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%、特に好ましくは98~100質量%である。
【0062】
硫黄原子含有リン酸エステル及び硫黄原子含有亜リン酸エステルとしては、前記式(ii)で表される基を有する硫黄原子含有リン酸エステル及び硫黄原子含有亜リン酸エステルが挙げられる。
さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(D1)は、前記式(ii)で表される基を有する硫黄原子含有亜リン酸エステルが好ましく、下記一般式(d-11)で表される化合物(D11)及び下記一般式(d-12)で表される化合物(D12)が選ばれる1種以上がより好ましい。
【0063】
【化6】
【0064】
前記式(d-11)、(d-12)中、RA11、RA21及びRA22は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基である。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
また、当該アルキル基の炭素数は1~20であるが、好ましくは2~18、より好ましくは4~16、更に好ましくは6~12、より更に好ましくは8~10である。
また、a1、a2及びa3は、それぞれ独立に、1~20の整数であるが、好ましくは1~12の整数、より好ましくは1~8の整数、更に好ましくは1~4の整数、より更に好ましくは1、2又は4、特に好ましくは2である。
【0065】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)が、前記一般式(d-11)で表される化合物(D11)及び前記一般式(d-12)で表される化合物(D12)を共に含むことが更に好ましい。
本発明の一態様において、化合物(D11)と、化合物(D12)との含有量比〔(D11)/(D12)〕は、質量比で、好ましくは1/20~20/1、より好ましくは1/16~10/1、より好ましくは1/14~5/1、更に好ましくは1/12~2/1、より更に好ましくは1/11~1/1、特に好ましくは1/10~1/2である。
【0066】
なお、本発明の一態様で成分(D)として用いる酸性リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは、アミン塩の形態であってもよい。
アミン塩を形成するアミンとしては、下記一般式(d-i)で表される化合物であることが好ましい。当該アミンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化7】
【0067】
上記一般式(d-i)中、rは、1~3の整数であり、1であることが好ましい。
は、それぞれ独立に、炭素数6~18のアルキル基、炭素数6~18のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、又は炭素数6~18のヒドロキシアルキル基である。
なお、Rが複数存在する場合、複数のRは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0068】
として選択し得る、炭素数6~18のアルキル基、炭素数6~18のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基としては、上述のR11~R13及びR21~R23として選択し得るアルキル基、アルケニル基、及びアリール基として例示した基のうち、上記範囲の炭素数である基が挙げられる。
また、炭素数6~18のヒドロキシアルキル基としては、炭素数6~18のアルキル基が有する水素原子がヒドロキシ基に置換された基が挙げられ、具体的には、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基等が挙げられる。
【0069】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上であり、さらに、0.17質量%以上、0.20質量%以上、0.23質量%以上、0.25質量%以上、0.27質量%以上、又は0.30質量%以上であり、また、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下であり、さらに、1.0質量%以下、0.95質量%以下、0.90質量%以下、0.85質量%以下、0.80質量%以下、0.75質量%以下、0.70質量%以下、0.65質量%以下、0.60質量%以下、0.55質量%以下、又は0.50質量%以下としてもよい。
【0070】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)のリン原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは30質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは70質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、更に好ましくは120質量ppm以上、更に好ましくは150質量ppm以上、更に好ましくは180質量ppm以上、より更に好ましくは200質量ppm以上、より更に好ましくは220質量ppm以上、より更に好ましくは250質量ppm以上、特に好ましくは270質量ppm以上であり、また、好ましくは800質量ppm以下、より好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは600質量ppm以下、より更に好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは450質量ppm以下である。
【0071】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、さらに耐摩耗性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)の硫黄原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは70質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは120質量ppm以上、更に好ましくは150質量ppm以上、更に好ましくは180質量ppm以上、更に好ましくは200質量ppm以上、より更に好ましくは220質量ppm以上、より更に好ましくは250質量ppm以上、より更に好ましくは270質量ppm以上、特に好ましくは300質量ppm以上であり、また、好ましくは800質量ppm以下、より好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは600質量ppm以下、より更に好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは450質量ppm以下である。
【0072】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、硫黄原子非含有の酸性リン酸エステルのリン原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、100質量ppm未満、50質量ppm未満、10質量ppm未満、8質量ppm未満、5質量ppm未満、3質量ppm未満、又は1質量ppm未満としてもよい。
【0073】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、硫黄原子非含有の中性リン酸エステルのリン原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、50質量ppm未満、10質量ppm未満、8質量ppm未満、5質量ppm未満、3質量ppm未満、又は1質量ppm未満としてもよい。
【0074】
<成分(B)~(D)以外の各種添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(B)~(D)以外の各種添加剤を含有してもよい。
このような各種添加剤としては、例えば、流動点降下剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
これらの潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれの添加剤ごとに独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0076】
[流動点降下剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに流動点降下剤を含有してもよい。流動点降下剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0077】
[酸化防止剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、アルキル化フェニルナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤;2、6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6ージーtーブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
【0078】
[金属系清浄剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに金属系清浄剤を含有してもよい。金属系清浄剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる金属系清浄剤としては、金属スルホネート、金属サリシレート、及び金属フェネート等の金属塩が挙げられる。また、当該金属塩を構成する金属原子としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子が好ましく、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムがより好ましく、カルシウムが更に好ましい。
【0079】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、金属系清浄剤は、カルシウムスルホネート、カルシウムサリシレート、及びカルシウムフェネートから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、カルシウムスルホネートを含むことがより好ましい。
カルシウムスルホネートの含有割合としては、潤滑油組成物に含まれる金属系清浄剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%である。
【0080】
金属系清浄剤の塩基価としては、好ましくは0~600mgKOH/gである。
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、金属系清浄剤は、塩基価が100mgKOH/g以上の過塩基性金属系清浄剤であることが好ましい。
過塩基性金属系清浄剤の塩基価としては、100mgKOH/g以上であるが、好ましくは150~500mgKOH/g、より好ましくは200~450mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501:2003「石油製品および潤滑油-中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
【0081】
[金属不活性化剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに金属不活性化剤を含有してもよい。金属不活性化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。
【0082】
[摩擦調整剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに摩擦調整剤を含有してもよい。当該摩擦調整剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる摩擦調整剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、モリブテン酸のアミン塩等のモリブデン系摩擦調整剤;炭素数6~30のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤;油脂類、アミン、アミド、硫化エステル等が挙げられる。
【0083】
[防錆剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに防錆剤を含有してもよい。防錆剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
【0084】
[消泡剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに消泡剤を含有してもよい。消泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0085】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点から、成分(A)に、成分(B)及び(C)、並びに、必要に応じて、成分(D)及び成分(B)~(D)以外の上述の各種添加剤を配合する工程を有することが好ましい。
ここで、成分(A)~(D)及び各種添加剤の好適な化合物及び配合量は、上述のとおりである。
【0086】
〔潤滑油組成物の性状〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、絶縁性をより向上させると共に、引火点を高くし、取扱性に優れた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは2.1mm/s以上、より好ましくは2.2mm/s以上、より好ましくは2.4mm/s以上、更に好ましくは2.5mm/s以上、より更に好ましくは2.7mm/s以上、特に好ましくは2.8mm/s以上であり、また、冷却性に優れた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは5.0mm/s未満、より好ましくは4.8mm/s以下、より好ましくは4.5mm/s以下、より好ましくは4.2mm/s以下、更に好ましくは4.1mm/s以下、更に好ましくは3.9mm/s以下、より更に好ましくは3.7mm/s以下、より更に好ましくは3.5mm/s以下、特に好ましくは3.2mm/s以下であり、さらに、3.0mm/s以下、2.8mm/s以下、又は2.6mm/s以下としてもよい。
【0087】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数としては、好ましくは80以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上、より更に好ましくは110以上、特に好ましくは117以上である。
【0088】
本発明の一態様の潤滑油組成物について、ASTM D5182に準拠し、後述の実施例に記載の条件下で測定したスカッフィングが発生した際の荷重のステージは、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、より更に好ましくは8以上である。
【0089】
本発明の一態様の潤滑油組成物について、JIS K2514に準拠するISOT試験を、銅片を触媒として用いて、後述の実施例に記載のとおり、温度150℃、72時間行った際の当該潤滑油組成物の銅溶出量は、好ましくは15質量ppm未満、より好ましくは14質量ppm以下、更に好ましくは13質量ppm以下、より更に好ましくは12質量ppm以下、特に好ましくは11質量ppm以下である。
なお、本明細書において、銅溶出量は、JPI-5S-38-92に準拠して測定した値を意味する。
【0090】
本発明の一態様の潤滑油組成物について、CEC L-48-A-00(B)に準拠した酸化安定性試験を、後述の実施例に記載のとおり、温度160℃、192時間行った際の試験前後での100℃動粘度増加率は、好ましくは12%未満、より好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下、更に好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下、より更に好ましくは6%以下、特に好ましくは5%以下である。
なお、100℃動粘度増加率は、下記式から算出した値であり、動粘度はJIS K2283:2000に準拠して測定した値である。
・[100℃動粘度増粘率(%)]=([試験後の潤滑油組成物の100℃動粘度(mm/s)]-[試験前の潤滑油組成物の100℃動粘度(mm/s)])/[試験前の潤滑油組成物の100℃動粘度(mm/s)]×100
【0091】
本発明の一態様の潤滑油組成物について、JIS C2101に準拠し、後述の実施例に記載条件下で測定した、当該潤滑油組成物の体積抵抗率は、好ましくは1.7×10Ω・m以上、より好ましくは1.9×10Ω・m以上、より好ましくは2.0×10Ω・m以上、更に好ましくは2.2×10Ω・m以上、更に好ましくは2.3×10Ω・m以上、より更に好ましくは2.5×10Ω・m以上、特に好ましくは2.7×10Ω・m以上であり、また、通常1.0×109Ω・m以下である。
【0092】
〔潤滑油組成物の用途〕
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性等の特性をバランス良く向上させ得る。特に、本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、低粘度化してもこれらの特性を良好に保持することができるため、冷却性の点でも優れている。

このような特性を考慮し、本発明の一態様の潤滑油組成物は、例えば、エンジン、変速機、減速機、圧縮機、油圧装置等の各種装置に組み込まれている、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構等の機構における潤滑に好適に使用することができる。これらの中でも、本発明の一態様の潤滑油組成物は、減速機の潤滑に用いられることが好ましい。
【0093】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物の上述の特性を考慮すると、本発明は、以下の[1]及び[2]も提供し得る。
[1]基油(A)、チアジアゾール系化合物(B)、及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C)を含有し、成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.60質量%未満であり、成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35以上であり、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm以下である、
潤滑油組成物を用いた、減速機。
[2]基油(A)、チアジアゾール系化合物(B)、及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C)を含有し、成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.60質量%未満であり、成分(C)に由来するホウ素原子と窒素原子の含有量比[B/N]が、質量比で、0.35以上であり、成分(C)に由来するホウ素原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、300質量ppm以下である、
潤滑油組成物を減速機の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用。
なお、上記[1]及び[2]に記載の潤滑油組成物の好適な態様は、上述のとおりである。
【実施例0094】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法は、下記のとおりである。
【0095】
(1)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)ホウ素原子、リン原子の含有量
JPI-5S-38-92に準拠して測定した。
(3)窒素原子の含有量
JIS K2609に準拠して測定した。
(4)硫黄原子の含有量
JIS K2541-6:2013に準拠して測定した。
【0096】
実施例1~4、比較例1~4
表1に示す種類の基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量にて添加して混合し、潤滑油組成物をそれぞれ調製した。当該潤滑油組成物の調製に使用した、各成分の詳細は以下のとおりである。なお、いずれの潤滑油組成物についても、モリブデン原子の含有量は2質量ppm未満であった。
【0097】
<成分(A):基油>
・「鉱油(1)」:60N水素化分解鉱油、100℃動粘度=2.2mm/s、粘度指数=108。
・「鉱油(2)」:100N水素化分解鉱油、100℃動粘度=4.2mm/s、粘度指数=122。
【0098】
<成分(B):チアジアゾール系化合物>
・「チアジアゾール(分岐鎖)」:2,5-ビス(1,1-ジメチルヘプチルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、前記一般式(b-1)中、m=n=2、R及びRが1,1-ジメチルヘプチル基であるチアジアゾール。硫黄原子含有量=33.3質量%、窒素原子含有量=6.4質量%。
【0099】
<成分(C):ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド>
・「B変性ポリブテニルコハク酸ビスイミド(1)」:ポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性物。
・「B変性ポリブテニルコハク酸ビスイミド(2)」:ポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性物。
・「B変性ポリブテニルコハク酸ビスイミド(3)」:ポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性物。
・「B変性ポリブテニルコハク酸ビスイミド(4)」:ポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性物。
【0100】
<成分(D):リン系化合物>
・「硫黄リン系化合物」:前記一般式(c-11)中のa1=2、RA11=n-オクチル基である硫黄原子含有亜リン酸エステルと、前記一般式(c-12)中のa2=a3=2、RA21、RA22=n-オクチル基である硫黄原子含有亜リン酸エステルとの混合物。リン原子含有量=10質量%、硫黄原子含有量=10.7質量%。
【0101】
<無灰分散剤>
・「非変性ポリブテニルコハク酸ビスイミド」:ポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸ビスイミド。
<他の添加剤>
・「添加剤混合物」:流動点降下剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、分散剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、及び消泡剤の混合物。
【0102】
調製した潤滑油組成物について、動粘度及び粘度指数を測定及び算出すると共に、以下の試験を行った。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0103】
(1)FZGスカッフィング試験(A10/16.6R/90)
ASTM D5182に準拠し、A10タイプ歯車を用いて、試料油温度90℃、回転数2900rpm、運転時間約7.5分間の条件下で、規定に沿って段階的に荷重を上げ、スカッフィングが発生した際の荷重のステージを求めた。当該ステージの値が高いほど、ギヤ耐スカッフィング性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
【0104】
(2)銅溶出試験
JIS K2514に準拠するISOT試験を、銅片及び鉄片を触媒として用いて、温度150℃、72時間行い、試料油を劣化させた。劣化後の試料油に対して、JPI-5S-38-92に準拠した方法にて、銅溶出量(単位:質量ppm)を測定した。当該銅溶出量の値が少ないほど、銅溶出抑制効果の高い潤滑油組成物であるといえる。
【0105】
(3)酸化安定性試験
CEC L-48-A-00(B)に準拠して、160℃で192時間の条件で、酸化安定性試験を行った。そして、試験後の潤滑油組成物の100℃動粘度をJIS K2283:2000に準拠して測定し、下記式から100℃動粘度増粘率を算出した。
・[100℃動粘度増粘率(%)]=([試験後の潤滑油組成物の100℃動粘度(mm/s)]-[試験前の潤滑油組成物の100℃動粘度(mm/s)])/[試験前の潤滑油組成物の100℃動粘度(mm/s)]×100
【0106】
(4)絶縁性試験
JIS C2101に準拠して、測定温度80℃、印加電圧250V、測定時間1分間の試験条件において、試料油の体積抵抗率を測定した。当該体積抵抗率の値が高いほど、絶縁性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
表1より、実施例1~13の潤滑油組成物は、耐スカッフィング性、銅溶出抑制効果、酸化安定性、及び絶縁性の特性がいずれもがバランス良く優れた結果となった。
一方で、表2より、比較例1の潤滑油組成物は、酸化安定性が劣り、比較例2~3及び6~7は、銅溶出抑制効果が劣る結果となった。さらに、比較例4~5の潤滑油組成物は、耐スカッフィング性と共に絶縁性も劣る結果となった。