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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080748
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】レベルシフト回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0185 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
H03K19/0185 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194249
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5J056
【Fターム(参考)】
5J056AA19
5J056AA29
5J056BB18
5J056CC21
5J056DD13
5J056DD39
(57)【要約】
【課題】動作電圧範囲の改善を図ったレベルシフト回路を提供する。
【解決手段】第1の出力部21が、トランジスタM1、M2、ダイオード接続されたトランジスタM11を有する。第2の出力部22が、トランジスタM3、M4、ダイオード接続されたトランジスタM12を有する。第3の出力部23が、トランジスタM5、M6を有する。トランジスタM6のゲートが、トランジスタM11及びトランジスタM1間の接続ノードAに接続されている。トランジスタM5及びトランジスタM6間の接続ノードCが、出力バッファ部3に入力されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源電圧が供給される第1の電源端子及び第2の電源電圧が供給される第2の電源端子の間に直列接続された第1のトランジスタ及び第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの間に接続された第1の電圧クランプ素子とを有し、前記第1のトランジスタのゲート又はベースに入力信号が入力される第1の出力部と、
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間に直列接続された第3のトランジスタ及び第4のトランジスタと、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの間に直列接続された第2の電圧クランプ素子とを有し、前記第3のトランジスタのゲート又はベースに入力信号の反転信号が入力される第2の出力部と、
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間に直列接続された第5のトランジスタ及び第6のトランジスタを有し、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号及び前記反転信号の何れか一方が入力される第3の出力部とを備え、
前記第4のトランジスタのゲート又はベースには、前記第1のトランジスタ及び前記第1の電圧クランプ素子の間の第1の接続ノードが接続され、
前記第2のトランジスタのゲート又はベースには、前記第3のトランジスタ及び前記第2の電圧クランプ素子の間の第2の接続ノードが接続され、
前記第6のトランジスタのゲート又はベースには、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記反転信号が入力されている場合、前記第1の接続ノードが接続され、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号が入力されている場合、前記第2の接続ノードが接続される、
レベルシフト回路。
【請求項2】
請求項1に記載のレベルシフト回路において、
前記第1の電圧クランプ素子及び前記第2の電圧クランプ素子は、ダイオード接続されたトランジスタから構成されている、
レベルシフト回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレベルシフト回路において、
出力バッファ部を備え、
前記出力バッファ部が、
前記第5のトランジスタ及び前記第6のトランジスタの間の第3の接続ノードが入力に接続されるインバータ回路と、
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子のうち前記第6のトランジスタ側の電源端子と、前記インバータ回路の出力との間に接続される第7のトランジスタとを有し、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースには、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記反転信号が入力されている場合、前記第2の接続ノードが接続され、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号が入力されている場合、前記第1の接続ノードが接続される、
レベルシフト回路。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレベルシフト回路において、
出力バッファ部を備え、
前記出力バッファ部が、
2つの入力の一方に前記第5のトランジスタ及び前記第6のトランジスタの間の第3の接続ノードに接続されたNAND回路を有し、
前記NAND回路の2つの入力の他方には、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記反転信号が入力されている場合、前記第2の接続ノードが接続され、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号が入力されている場合、前記第1の接続ノードが接続される、
レベルシフト回路。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のレベルシフト回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が、電界効果トランジスタから構成されている、
レベルシフト回路。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のレベルシフト回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が、バイポーラトランジスタから構成されている、
レベルシフト回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルシフト回路に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、COのような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、本発明は、半導体集積回路に幅広く使われるレベルシフト回路の低電圧動作化を図り、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
半導体集積回路に用いられているレベルシフト回路として、図5に示すような回路が知られている(例えば特許文献1など参照)。図5に示されているレベルシフト回路100は、第1の出力部101と、第2の出力部102と、出力バッファ部103とを備えている。第1の出力部101は、正電源電圧VDDと負電源電圧VSSとの間に直列接続されたトランジスタM1、M2を有している。トランジスタM1のゲートには、入力信号VINが供給されている。第2の出力部102は、正電源電圧VDDと負電源電圧VSSとの間に直列接続されたトランジスタM3、M4を有している。トランジスタM3のゲートには入力信号を反転した反転信号が供給される。
【0004】
トランジスタM4のゲートは、接続ノードAに接続され、トランジスタM2のゲートは、接続ノードBに接続されている。出力バッファ部103には、接続ノードBが入力されている。
【0005】
また、ダイオード接続されたトランジスタM11が、トランジスタM1とトランジスタM2との間に接続されている。また、ダイオード接続されたトランジスタM12がトランジスタM3とトランジスタM4との間に接続されている。これにより、接続ノードA,Bの電位が下がるのが速くなるため、応答速度を速めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-284021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようにトランジスタM11、M12を設けると応答速度が速くなるが、High状態のときの接続ノードBの電位が下がってしまう。このため、電源電圧が低下すると、後段の出力バッファ部103を安定駆動することが難しく、動作電圧範囲が狭くなる、という問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源電圧が低下しても安定動作することが可能な、動作電圧範囲の改善を図ったレベルシフト回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るレベルシフト回路は、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
第1の電源電圧が供給される第1の電源端子及び第2の電源電圧が供給される第2の電源端子の間に直列接続された第1のトランジスタ及び第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの間に接続された第1の電圧クランプ素子とを有し、前記第1のトランジスタのゲート又はベースに入力信号が入力される第1の出力部と、
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間に直列接続された第3のトランジスタ及び第4のトランジスタと、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの間に直列接続された第2の電圧クランプ素子とを有し、前記第3のトランジスタのゲート又はベースに入力信号の反転信号が入力される第2の出力部と、
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間に直列接続された第5のトランジスタ及び第6のトランジスタを有し、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号及び前記反転信号の何れか一方が入力される第3の出力部とを備え、
前記第4のトランジスタのゲート又はベースには、前記第1のトランジスタ及び前記第1の電圧クランプ素子の間の第1の接続ノードが接続され、
前記第2のトランジスタのゲート又はベースには、前記第3のトランジスタ及び前記第2の電圧クランプ素子の間の第2の接続ノードが接続され、
前記第6のトランジスタのゲート又はベースには、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記反転信号が入力されている場合、前記第1の接続ノードが接続され、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号が入力されている場合、前記第2の接続ノードが接続される、
レベルシフト回路であること。
[2]
[1]に記載のレベルシフト回路において、
前記第1の電圧クランプ素子及び前記第2の電圧クランプ素子は、ダイオード接続されたトランジスタから構成されている、
レベルシフト回路であること。
[3]
[1]又は[2]に記載のレベルシフト回路において、
出力バッファ部を備え、
前記出力バッファ部が、
前記第5のトランジスタ及び前記第6のトランジスタの間の第3の接続ノードが入力に接続されるインバータ回路と、
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子のうち前記第6のトランジスタ側の電源端子と、前記インバータ回路の出力との間に接続される第7のトランジスタとを有し、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースには、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記反転信号が入力されている場合、前記第2の接続ノードが接続され、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号が入力されている場合、前記第1の接続ノードが接続される、
レベルシフト回路であること。
[4]
[1]又は[2]に記載のレベルシフト回路において、
出力バッファ部を備え、
前記出力バッファ部が、
2つの入力の一方に前記第5のトランジスタ及び前記第6のトランジスタの間の第3の接続ノードに接続されたNAND回路を有し、
前記NAND回路の2つの入力の他方には、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記反転信号が入力されている場合、前記第2の接続ノードが接続され、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに前記入力信号が入力されている場合、前記第1の接続ノードが接続される、
レベルシフト回路であること。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載のレベルシフト回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が、電界効果トランジスタから構成されている、
レベルシフト回路であること。
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載のレベルシフト回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が、バイポーラトランジスタから構成されている、
レベルシフト回路であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動作電圧範囲の改善を図ったレベルシフト回路を提供することができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態におけるレベルシフト回路を示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態におけるレベルシフト回路を示す回路図である。
図3図3は、第3実施形態におけるレベルシフト回路を示す回路図である。
図4図4は、第1実施形態の変形例におけるレベルシフト回路を示す回路図である。
図5図5は、従来のレベルシフト回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態のレベルシフト回路1について図1を参照して説明する。同図に示すように、レベルシフト回路1は、入力端子T1に入力された入力信号VINをレベルシフトした出力信号VOUTを出力端子T3から出力する回路である。具体的には、レベルシフト回路1は、負電源電圧VSS(Low状態)、負電源電圧VSS+トランジスタM1の閾値電圧以上(High状態)の入力信号VINを、負電源電圧VSS(Low状態)、正電源電圧VDD(High状態)の出力信号VOUTにレベルシフトする。
【0015】
レベルシフト回路1は、レベルシフト部2と、出力バッファ部3とを備えている。レベルシフト部2は、出力部21(=第1の出力部)と、出力部22(=第2の出力部)と、出力部23(=第3の出力部)と、インバータ回路24とを有している。出力部21は、正電源電圧VDD(第1の電源電圧)が供給される正電源端子T21(第1の電源端子)及び負電源電圧VSS(第2の電源電圧)が供給される負電源端子T22(第2の電源端子)間に直列接続されたトランジスタM1(第1のトランジスタ)及びトランジスタM2(第2のトランジスタ)と、トランジスタM1及びトランジスタM2の間に接続されたトランジスタM11(第1の電圧クランプ素子)とを有する。トランジスタM1はNチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM2、M11はPチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0016】
トランジスタM1は、ゲートに入力信号VINが入力され、ソースが負電源端子T22に接続されている。トランジスタM2は、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインが後述するトランジスタM11のソースに接続されている。トランジスタM11は、ゲート・ドレインが接続されたダイオード接続され、ドレインがトランジスタM1のドレインに接続されている。
【0017】
出力部22は、正電源端子T21及び負電源端子T22間に直列接続されたトランジスタM3(第3のトランジスタ)及びトランジスタM4(第4のトランジスタ)と、トランジスタM3及びトランジスタM4間に接続されたトランジスタM12(第2の電圧クランプ素子)とを有する。トランジスタM3はNチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM4、M12はPチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0018】
トランジスタM3は、ゲートが後述するインバータ回路24の出力に接続され、ゲートに入力信号VINを反転した反転信号が入力される。トランジスタM3は、ソースが負電源端子T22に接続されている。トランジスタM4は、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインが後述するトランジスタM12のソースに接続されている。トランジスタM12は、ゲート・ドレインが接続されたダイオード接続され、ドレインがトランジスタM3のドレインに接続されている。
【0019】
上記トランジスタM4のゲートには、トランジスタM1及びトランジスタM11間の接続ノードA(第1の接続ノード)が接続されている。また、上記トランジスタM2のゲートには、トランジスタM3及びトランジスタM12間の接続ノードB(第2の接続ノード)が接続されている。
【0020】
出力部23は、正電源端子T21及び負電源端子T22間に直列接続されたトランジスタM5(第5のトランジスタ)及びトランジスタM6(第6のトランジスタ)を有している。トランジスタM5は、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインがトランジスタM6のドレインに接続されている。トランジスタM6は、ソースが正電源端子T21に接続されている。トランジスタM5は、ゲートが後述するインバータ回路24の出力に接続され、ゲートに入力信号VINを反転した反転信号が入力される。トランジスタM6は、ゲートが接続ノードAに接続されている。
【0021】
インバータ回路24は、入力信号VINが入力され、入力信号VINを反転した反転信号を出力する。
【0022】
出力バッファ部3は、インバータ回路31、32を有している。インバータ回路31は、入力がトランジスタM6及びトランジスタM5間の接続ノードC(第3の接続ノード)に接続されている。インバータ回路32は、入力がインバータ回路31の出力に接続され、出力が出力端子T3に接続される。
【0023】
次に、上述したレベルシフト回路1の動作について説明する。最初に、入力信号VINがHigh状態からLow状態に反転する場合の動作について説明する。入力信号VINがHigh状態のときは、トランジスタM1、M4、M6はオン状態となり、トランジスタM2、M3、M5はオフ状態となる。接続ノードB、CはHigh状態、接続ノードAはLow状態となっている。このとき、トランジスタM12ではゲート・ソース電圧分の電圧降下が発生し、接続ノードBの電位は、トランジスタM12のゲート・ソース電圧分、低い値にクランプされる。すなわち、トランジスタM12は、接続ノードBが正電源電圧VDD近くまで上昇するのを抑制している。
【0024】
次に、入力信号VINがHigh状態からLow状態に反転すると、トランジスタM1はオフ状態となり、トランジスタM3、M5はオン状態となる。トランジスタM3がオン状態となると、接続ノードBの電位が下がる。トランジスタM2のゲート・ソース間が閾値電圧を超えるまで接続ノードBが下がると、トランジスタM2がオン状態となる。トランジスタM2がオン状態となると、接続ノードAがHigh状態となる。接続ノードAがHigh状態となると、トランジスタM4、M6はオフ状態となるため、接続ノードCはLow状態となる。
【0025】
出力バッファ部3の入力となる接続ノードCがLow状態となるため、出力端子T3の出力信号VOUTはLow状態となる。
【0026】
上述したようにトランジスタM2は、接続ノードBが下がり、ゲート・ソース間が閾値電圧を越えるとオン状態となる。本実施形態では、ダイオード接続されたトランジスタM12の働きにより、接続ノードBは正電源電圧VDD近くよりも低い値から下がり始める。このため、トランジスタM12がない場合、即ち正電源電圧VDD近くから下がり始める場合に比べて、トランジスタM2がオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングを早くすることができる。これにより、入力信号VINがHigh状態からLow状態へ反転してから出力信号VOUTがHigh状態からLow状態へ反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0027】
次に、入力信号VINがLow状態からHigh状態に反転する場合の動作について説明する。入力信号VINがLow状態のときは、トランジスタM1、M4、M6はオフ状態となり、トランジスタM2、M3、M5はオン状態となる。接続ノードB、CはLow状態、接続ノードAはHigh状態となっている。このとき、トランジスタM11ではゲート・ソース電圧分の電圧降下が発生し、接続ノードAの電位は、トランジスタM11のゲート・ソース電圧分、低い値にクランプされる。すなわち、トランジスタM11は、接続ノードAが正電源電圧VDD近くまで上昇するのを抑制している。
【0028】
次に、入力信号VINがLow状態からHigh状態に切り替わると、トランジスタM1はオン状態となり、トランジスタM3、M5はオフ状態となる。トランジスタM1がオン状態となると、接続ノードAの電位が下がる。トランジスタM4、M6のゲート・ソース間が閾値電圧を超えるまで接続ノードAが下がると、トランジスタM4、M6がオン状態となる。トランジスタM4がオン状態となると、接続ノードBがHigh状態となる。接続ノードBがHigh状態となると、トランジスタM2がオフ状態となるため、接続ノードAがLow状態となる。また、トランジスタM6がオン状態となると、接続ノードCはHigh状態となる。
【0029】
出力バッファ部3の入力となる接続ノードCがHigh状態となるため、出力端子T3の出力信号VOUTはHigh状態となる。
【0030】
上述したようにトランジスタM4、M6は、ゲート・ソース間が閾値電圧を越えるまで接続ノードAが下がるとオン状態となる。本実施形態では、ダイオード接続されたトランジスタM11の働きにより、接続ノードAは正電源電圧VDD近くよりも低い値から下がり始める。このため、トランジスタM11がない場合、即ち正電源電圧VDD近くから下がり始める場合に比べて、トランジスタM4、M6がオフ状態からオン状態に切り替わるタイミングを早くすることができる。これにより、入力信号がLow状態からHigh状態へ反転してから出力信号VOUTがLow状態からHigh状態へ反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、トランジスタM6とトランジスタM5の接続ノードCを出力バッファ部3に入力している。これによりHigh状態のときの接続ノードCの電位は、正電源電圧VDD近くとなる。このため、出力バッファ部3の入力に対して、正電源電圧VDDが低下しても安定した電圧を供給することができ、本実施形態のレベルシフト回路1は、正電源電圧VDDが低下しても安定した動作を実現することができる。
【0032】
しかして、この第1実施形態におけるレベルシフト回路1は、正電源電圧VDDが低下しても応答速度の低下や誤動作を招くことなく、安定した動作を実現し、動作電圧範囲の改善を図ることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のレベルシフト回路1Bについて図2を参照して説明する。なお、図2において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
同図に示すように、レベルシフト回路1Bは、レベルシフト部2と、出力バッファ部3Bとを備えている。レベルシフト部2は、第1実施形態で既に説明しているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
出力バッファ部3は、インバータ回路31、32と、トランジスタM7とを有している。インバータ回路31、32は、第1実施形態で既に説明しているため、ここでは詳細な説明を省略する。トランジスタM7は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM7は、ゲートが接続ノードB、ソースが正電源端子T21、ドレインがインバータ回路31の出力及びインバータ回路32の入力に接続されている。
【0036】
上述したレベルシフト回路1Bの動作について以下説明する。まず、入力信号VINがHigh状態からLow状態に反転する場合の動作について説明する。入力信号VINがHigh状態からLow状態に反転すると、トランジスタM1はオフ状態となり、トランジスタM3、M5はオン状態となる。トランジスタM3がオン状態となると、接続ノードBの電位が下がる。トランジスタM2、M7のゲート・ソース間が閾値電圧を超えるまで接続ノードBが下がると、トランジスタM2、M7がオン状態となる。トランジスタM7がオンすると、インバータ回路32の入力がHigh状態となり、出力端子T3からLow状態の出力信号VOUTが出力される。
【0037】
また、トランジスタM2がオン状態となった後の動作は、上述した第1実施形態と同様であり、最終的に、接続ノードAがHigh状態となり、トランジスタM4、M6はオフ状態となるため、接続ノードCはLow状態となる。
【0038】
上述した実施形態によれば、入力信号VINがHigh状態からLow状態に反転する場合、接続ノードCよりも接続ノードBの方がHigh状態からLow状態に切り替わる応答速度が早い。このため、トランジスタM7を設けることで、インバータ回路32の入力がLow状態からHigh状態に変化するタイミングを、第1実施形態よりも早くすることができ、より一層応答速度を早くすることができる。
【0039】
なお、入力信号VINがLow状態からHigh状態に反転する場合は、接続ノードB、Cは同じタイミングでLow状態からHigh状態に切り替わる。
【0040】
しかして、この第2実施形態におけるレベルシフト回路1Bも、正電源電圧VDDが低下しても応答速度の低下や誤動作を招くことなく、安定した動作を実現し、動作電圧範囲の改善を図ることができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のレベルシフト回路1Cについて図3を参照して説明する。なお、図3において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
同図に示すように、レベルシフト回路1Cは、レベルシフト部2と、出力バッファ部3Cとを備えている。レベルシフト部2は、第1実施形態で既に説明しているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
第1実施形態と第3実施形態とで異なる点は、出力バッファ部3Cの構成である。第3実施形態において出力バッファ部3Cは、NAND回路33と、インバータ回路32とを有している。NAND回路33は、2つの入力が接続ノードB、接続ノードCに接続され、出力がインバータ回路32の入力に接続されている。インバータ回路32は、第1実施形態と同様に、出力が出力端子T3に接続されている。
【0044】
上述したレベルシフト回路1Cの動作について説明する。第1実施形態と同様に、入力信号VINがHigh状態からLow状態に切り替わると、トランジスタM1はオフ状態となり、トランジスタM3、M5はオン状態となる。トランジスタM3がオン状態となると、接続ノードBの電位が下がる。接続ノードCは、上述した第1、第2実施形態で説明したように、接続ノードBが下がり、これに応じてトランジスタM2がオンし、接続ノードAが上がり、これに応じてトランジスタM4、M6がオフするタイミングで下がる。すなわち、接続ノードBの方が、接続ノードCよりも先に電位が下がるため、High状態からLow状態に切り替わる応答速度が速い。
【0045】
このため、接続ノードBが接続ノードCよりも先にNAND回路33の閾値電圧(正電源電圧VDDと負電源電圧VSSの中点)以下まで下がり、NAND回路33の出力がLow状態からHigh状態に反転する。NAND回路33の出力がLow状態からHigh状態に切り替わると、Low状態の出力信号VOUTが出力される。その後、接続ノードCがNAND回路33の閾値電圧以下まで下がっても、NAND回路33は出力をHigh状態に維持し、Low状態の出力信号VOUTが維持される。
【0046】
なお、入力信号VINがLow状態からHigh状態に反転する場合は、接続ノードB、Cは同じタイミングでLow状態からHigh状態に切り替わる。
【0047】
上述した実施形態によれば、入力信号VINがHigh状態からLow状態に反転する場合、接続ノードCよりも接続ノードBの方がHigh状態からLow状態に切り替わる応答速度が早い。このため、接続ノードBが入力されたNAND回路33を設けることで、インバータ回路32の入力がHigh状態からLow状態に変化するタイミングを、第1実施形態よりも早くすることができ、より一層応答速度を早くすることができる。しかも、第2実施形態よりも出力バッファ部3Cの貫通電流を小さくすることができる。
【0048】
しかして、この第3実施形態におけるレベルシフト回路1Cも、正電源電圧VDDが低下しても応答速度の低下や誤動作を招くことなく、安定した動作を実現し、動作電圧範囲の改善を図ることができる。
【0049】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のレベルシフト回路1Dについて図4を参照して説明する。なお、図4において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
同図に示すように、レベルシフト回路1Dは、第1実施形態と同様に、レベルシフト部2Dと、出力バッファ部3とを備えている。
【0051】
第1実施形態と第4実施形態とで異なる点は、トランジスタM1、M2、M3、M4、M5、M6、M11、M12に相当するトランジスタM1D、M2D、M3D、M4D、M5D、M6D、M11D、M12Dの導電型を逆にした点である。また、第1実施形態と第4実施形態とで異なる点は、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にした点である。
【0052】
第2~第3実施形態についても同様に、トランジスタM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M11、M12の導電型を逆にし、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にしてもよい。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
また、上述した第1~第4実施形態では、トランジスタM5(D)のゲートに反転信号を入力し、トランジスタM6(D)のゲートを接続ノードAに接続していたが、これに限ったものではない。トランジスタM5(D)のゲートに入力信号VINを入力し、トランジスタM6(D)のゲートを接続ノードBに接続するようにしてもよい。また、この場合、第2実施形態のように、トランジスタM7を設けた場合、トランジスタM7のゲートは、接続ノードAに接続する。また、この場合、第3実施形態のように、NAND回路33を設けた場合、NAND回路の入力には接続ノードBに代えて接続ノードAを接続する。
【0055】
上述した第1~第4実施形態では、トランジスタM1(D)~M7、M11(D)、M12(D)が電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタM1(D)~M7、M11(D)、M12(D)の少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタM1(D)~M7(D)、M11(D)、M12(D)のゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【0056】
また、上述した第1~第4実施形態では、第1の電圧クランプ素子、第2の電圧クランプ素子として、ダイオード接続されたトランジスタM11、M12、M11D、M12Dを用いていたが、これに限ったものではない。第1の電圧クランプ素子、第2の電圧クランプ素子は電圧降下が発生するものであればよく、ダイオードから構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1B~1D レベルシフト回路
3、3B、3C 出力バッファ部
21、21D 出力部(第1の出力部)
22、22D 出力部(第2の出力部)
23、23D 出力部(第3の出力部)
24 インバータ回路
33 NAND回路
A 接続ノード(第1の接続ノード)
B 接続ノード(第2の接続ノード)
C 接続ノード(第3の接続ノード)
M1、M1D トランジスタ(第1のトランジスタ)
M2、M2D トランジスタ(第2のトランジスタ)
M3、M3D トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4、M4D トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5、M5D トランジスタ(第5のトランジスタ)
M6、M6D トランジスタ(第6のトランジスタ)
M7 トランジスタ(第7のトランジスタ)
M11、M11D トランジスタ(第1の電圧クランプ素子)
M12、M12D トランジスタ(第2の電圧クランプ素子)
T21 正電源端子(第1の電源端子)
T22 負電源端子(第2の電源端子)
VDD 正電源電圧(第1の電源電圧)
VSS 負電源電圧(第2の電源電圧)
VIN 入力信号
VOUT 出力信号
図1
図2
図3
図4
図5