(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080757
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20230602BHJP
H03F 1/26 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H03F3/45 110
H03F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194260
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA13
5J500AC41
5J500AC44
5J500AC54
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5J500AH02
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5J500AK03
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5J500AT01
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5J500DN14
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5J500DN23
5J500DP01
5J500RU02
5J500RU12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】入力バイアス電流や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と発振耐性の向上の両立を可能とする演算増幅器を提供する。
【解決手段】演算増幅器は、入力信号を差動増幅可能に構成されてなる入力差動対101と、その出力を増幅し出力する出力回路102とを有する。出力回路102は、ベース接地増幅回路152と、このベース接地増幅回路152に対して電流供給を行う低速カレントミラー回路151とを有する。低速カレントミラー回路151のカットオフ周波数が、演算増幅器のユニティゲイン周波数以下に設定されて低速化されることで、高周波ノイズ耐性が向上し、発振耐性が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を差動増幅可能に構成されてなる入力差動対と、前記入力差動対の出力を増幅、出力する出力回路とを有してなる演算増幅器であって、
前記出力回路は、ベース接地増幅回路を有すると共に、前記ベース接地増幅回路に対して電流供給を行う低速カレントミラー回路とを有し、
前記低速カレントミラー回路は、カットオフ周波数が、前記演算増幅器のユニティゲイン周波数以下に設定されて低速化されてなることを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のユニティゲイン周波数の1/10以下に設定されてなることを特徴とする請求項1記載の演算増幅器。
【請求項3】
前記入力差動対は、PNP型の差動対用第1及び第2のトランジスタを有し、前記差動対用第1及び第2のトランジスタは、エミッタが相互に接続される共に、当該接続点と正電源端子との間に定電流源が設けられる一方、前記差動対用第1のトランジスタのコレクタは、差動対用第1の抵抗器を介して、前記差動対用第2のトランジスタのコレクタは、差動対用第2の抵抗器を介して、共に負電源端子に接続され、前記差動対用第1のトランジスタのベースが反転入力端子に、前記差動対用第2のトランジスタのベースが非反転入力に、それぞれ接続されてなり、
前記ベース接地増幅回路は、NPN型のバイポーラトランジスタである増幅用第1及び第2のトランジスタを有し、前記増幅用第1及び第2のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、当該接続点と前記負電源端子との間に、第1の定電圧源が設けられ、前記増幅用第1のトランジスタのエミッタは、前記差動対用第1のトランジスタのコレクタと前記差動対用第1の抵抗器の相互の接続点に、前記増幅用第2のトランジスタのエミッタは、前記差動対用第2のトランジスタのコレクタと前記差動対用第2の抵抗器の相互の接続点に、それぞれ接続されてなり、
前記低速カレントミラー回路は、PNP型のバイポーラトランジスタであるカレントミラー用第1及び第2のトランジスタと、低速化用コンデンサとを有し、前記カレントミラー用第1及び第2のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、前記カレントミラー用第1のトランジスタのコレクタと接続され、前記カレントミラー用第1のトランジスタのコレクタは、前記増幅用第1のトランジスタのコレクタに、前記カレントミラー用第2のトランジスタのコレクタは、前記増幅用第2のトランジスタのコレクタに、それぞれ接続される一方、前記カレントミラー用第1及び第2のトランジスタのエミッタは、共に前記正電源端子に接続され、前記低速化用コンデンサは、前記カレントミラー用第1のトランジスタのコレクタと前記負電源端子との間に直列接続されてなることを特徴とする請求項2記載の演算増幅器。
【請求項4】
前記カレントミラー用第1及び第2のトランジスタのエミッタを前記正電源端子に接続することに代えて、前記カレントミラー用第1のトランジスタのエミッタは調整用第1の抵抗器を介して、前記カレントミラー用第2のトランジスタのエミッタは調整用第2の抵抗器を介して、共に前記正電源端子に接続されてなることを特徴とする請求項3記載の演算増幅器。
【請求項5】
前記ベース接地増幅回路は、前記NPN型のバイポーラトランジスタである増幅用第1及び第2のトランジスタに代えて、PNP型のバイポーラトランジスタである増幅用第1及び第2のトランジスタを有し、前記PNP型の増幅用第1及び第2のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、当該接続点と前記正電源端子との間に、第2の定電圧源が設けられ、前記PNP型の増幅用第1及び第2のトランジスタのエミッタは、共に前記正電源端子に接続され、
前記低速カレントミラー回路は、前記PNP型のバイポーラトランジスタであるカレントミラー用第1及び第2のトランジスタに代えて、NPN型のバイポーラトランジスタであるカレントミラー用第1及び第2のトランジスタを有し、前記NPN型のカレントミラー用第1及び第2のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、前記NPN型のカレントミラー用第1のトランジスタのコレクタと接続され、前記NPN型のカレントミラー用第1のトランジスタのコレクタは、前記PNP型の増幅用第1のトランジスタのコレクタに、前記NPN型のカレントミラー用第2のトランジスタのコレクタは、前記PNP型の増幅用第2のトランジスタのコレクタに、それぞれ接続される一方、前記NPN型のカレントミラー用第1のトランジスタのエミッタは、前記差動対用第1のトランジスタのコレクタと前記差動対用第1の抵抗器の相互の接続点に、前記NPN型の増幅用第2のトランジスタのエミッタは、前記差動対用第2のトランジスタのコレクタと前記差動対用第2の抵抗器の相互の接続点に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項3記載の演算増幅器。
【請求項6】
前記低速化用コンデンサの一端は、前記負電源端子に接続されることに代えて、前記正電源端子に接続されてなることを特徴とする請求項3、請求項4、又は、請求項5いずれか記載の演算増幅器。
【請求項7】
前記増幅用第1及び第2のトランジスタのベースと前記増幅用第2のトランジスタのコレクタとの間に、ハイパスフィルタが設けられてなることを特徴とする請求項3記載又は請求項5の演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器に係り、特に、入力バイアス電流や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく高周波ノイズ耐性と発振耐性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
演算増幅器においては、入力端子に高周波ノイズが混入すると、出力電圧が大きく変動することは良く知られている通りである。この問題を解決するため、例えば、特許文献1においては、演算増幅器の入力端子にローパスフィルタLPFを挿入する方策が示されており、典型的な高周波ノイズ対策の一つとして知られている。
この特許文献1に開示された高周波ノイズ対策技術について、
図26乃至
図28を参照しつつ、以下に概括的に説明する。
まず、
図26には、特許文献1に開示された高周波ノイズ対策技術を施す前の従来の演算増幅器の回路構成例が示されている。
この従来回路は、トランジスタQ1,Q2からなる入力差動対301と、トランジスタQ3~Q6及び増幅アンプAOからなる出力回路302とに大別されて構成されてなるものである。
【0003】
図27には、
図26に示された従来回路に高周波ノイズ対策を施した場合の回路構成例が示さている。
すなわち、
図27に示された演算増幅器は、反転入力端子INMとトランジスタQ1のベースとの間にローパスフィルタLPF1が、非反転入力端子INPとトランジスタQ2のベースとの間にローパスフィルタLPF2が、それぞれ設けられた構成となっている。
かかる構成の演算増幅器の高周波ノイズ耐性について、高周波ノイズ対策が施されていない従来回路と比較しつつ以下に説明する。
まず、高周波ノイズ耐性の比較を行うための実験回路について、
図28に示された実験回路例を参照しつつ説明する。
【0004】
この実験回路は、演算増幅器OP1の非反転入力端子に接続されたコンデンサCA1を介して高周波信号RFが印加されるようになっており、その際のDC出力電圧Voutの変化を観測するための回路である。
DC出力電圧Voutの変化が小さいほど、高周波ノイズ耐性が強いと判断される。
【0005】
図29には、上述の実験回路を用いた先の従来回路に対する高周波ノイズ対策の有無の比較検証結果が、入力周波数に対する出力電圧の変化を示す特性線によって示されており、以下、同図を参照しつつ、この比較検証結果について説明する。
まず、
図29において、横軸は入力高周波信号の周波数を、縦軸は演算増幅器の出力電圧を、それぞれ示している。
また、同図において、実線の特性線は、高周波ノイズ対策の無い場合の従来回路(
図26参照)における入力周波数の変化に対する出力電圧の変化を示す特性線である。また、同図において、点線の特性線は、先の高周波ノイズ対策が施された従来回路(
図27参照)における入力周波数の変化に対する出力電圧の変化を示す特性線である。
【0006】
この
図29に示された特性線は、先の
図28に示された実験回路において、高周波信号RFの電圧振幅を0.2Vpp一定とし、周波数を10MHzから3.5GHzまで掃引した際の、演算増幅器OP1におけるDC出力電圧Voutをプロットしたものである。
図29によれば、ローパスフィルタLPFを入力段に挿入することで高周波ノイズ耐性が向上し、演算増幅器の出力電圧Voutの変動が抑制されていることが確認できる。
【0007】
ところが、入力段におけるローパフィルタの挿入は、演算増幅器における発振耐性を損なう問題がある。
この問題について、
図30に示された特性線図を参照しつつ、以下に説明する。
まず、
図30は、発振耐性の指標となる位相余裕の負荷容量CLに対する依存性を示した特性線図であり、横軸は負荷容量CLを、縦軸は位相余裕を、それぞれ示している。
通常、電子回路においては、位相余裕が低いほど発振し易い傾向にある。
【0008】
図30において、実線の特性線は、ローパスフィルタLPFの無い従来の演算増幅器(
図26参照)における負荷容量に対する位相余裕の変化を示す特性線である。また、同図において、点線の特性線は、入力段にローパスフィルタLPFを設けた従来の演算増幅器(
図27参照)における負荷容量に対する位相余裕の変化を示す特性線である。
同図によれば、ローパスフィルタLPFを設けることで位相余裕が減少し、発振し易くなることが確認できる。
【0009】
なお、ローパスフィルタLPFを設けることで位相余裕が減少する理由は、ローパスフィルタLPFで発生するポールにより、演算増幅器の位相特性が低周波でまわるためである。
このように、入力端子にローパスフィルタLPFを挿入し、高周波ノイズ耐性(RFノイズ耐性)を向上させた演算増幅器は、RFノイズ耐性の向上と引き換えに発振耐性が低下するという問題が生ずる。
【0010】
上述のような問題を改善する方策が、例えば、特許文献2に開示されている。
図31には、特許文献2に開示された高周波ノイズ対策が施された従来の演算増幅器の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この特許文献2に開示された方策について概説する。
図31に示された演算増幅器は、低周波用の入力差動対と高周波用の入力差動対が設けられた構成となっている。
【0011】
すなわち、低周波用の入力差動対は、テイル電流源ITAILと、トランジスタQ101,Q102と、ローパスフィルタLPF1,LPF2を用いて構成されている。かかる低周波用の入力差動対においては、ローパスフィルタLPF1,LPF2により高周波ノイズを含む高周波信号は減衰される。
【0012】
一方、高周波用の入力差動対は、トランジスタQ111,Q112と、コンデンサC101を用いて構成されている。かかる高周波用の入力差動対においては、コンデンサC101がトランジスタQ111のエミッタとQ112のエミッタの間に設けられることで、高周波信号はトランジスタQ111とQ112の両エミッタ間を行き交うことが可能となる。そのため、AC(交流)的にトランジスタQ111とQ112の両エミッタ間は接続されて差動対として動作が可能となる。
【0013】
この高周波用の入力差動対に高周波ノイズが印加された場合の回路動作について、以下に説明する。
まず、先に
図26に示されたような従来回路において、入力差動対は、差動対のエミッタ同士が接続さているため、このエミッタノードで高周波ノイズが整流される。この整流作用により差動対がアンバランスになるようなDC電圧が生じ、このアンバランスなDC電圧が意図しないDC出力電圧を生むこととなる。
【0014】
一方、
図31に示された演算増幅器においては、高周波用の入力差動対のエミッタは、DC(直流)的に共通ではなく、コンデンサC101でAC的に接続されているだけである。したがって、この高周波用の入力差動対は、高周波ノイズが印加されてエミッタ部分で整流されたDC電圧が発生することはない。そのため、
図31に示された演算増幅器は、高周波ノイズが印加されても出力電圧が変動することはなく、高周波ノイズ耐性の向上が図られたものとなっている。
【0015】
さらに、
図31に示された演算増幅器は、高周波ノイズ耐性を向上させても発振耐性が低下することがない。
この演算増幅器においては、低周波用の入力差動対のローパスフィルタLPF1,LPF2によりポールが発生し、位相がまわる。その一方で、高周波用の入力差動対は、ハイパスフィルタの構成となっており、ゼロ点が発生して位相が戻る。その結果、このゼロ点によりローパスフィルタによる位相のまわりが打ち消され、位相余裕の低下が改善される。このように、
図31に示された演算増幅器においては、高周波ノイズ対策のローパスフィルタLPF1,LPF2を設けても、発振耐性の低下を招くことはなく、高周波ノイズ耐性と発振耐性の両立が図られたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3886090号公報
【特許文献2】特許第6879862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の特許文献2に開示された演算増幅器においては、従来の回路構成に高周波用の入力差動対のトランジスタQ111,Q112を追加する構成であるため(
図31参照)、入力換算雑音電圧が増加するという問題がある。
以下、この入力換算雑音電圧の増加について概括的に説明する。
例えば、
図31に示された演算増幅器において、低周波用の入力差動対のトランジスタQ101,Q102、及び、高周波用の入力差動対のトランジスタQ111,Q112の各コレクタ電流が、いずれもITAIL/2の大きさで流れた場合を想定する。なお、ここで、ITAILは、テイル電流源ITAILの出力電流の大きさとする。
【0018】
この場合、
図31に示された演算増幅器は、
図27に示された従来の演算増幅器に比べて、入力バイアス電流が2倍、入力換算雑音電圧が2
1/2倍、それぞれ増加する。このような入力バイアス電流や入力換算雑音電圧の増加は、出力電圧に誤差を生じさせるという問題を生む。
【0019】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、入力バイアス電流や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と発振耐性の向上の両立を可能とする演算増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る演算増幅器は、
入力信号を差動増幅可能に構成されてなる入力差動対と、前記入力差動対の出力を増幅、出力する出力回路とを有してなる演算増幅器であって、
前記出力回路は、ベース接地増幅回路を有すると共に、前記ベース接地増幅回路に対して電流供給を行う低速カレントミラー回路とを有し、
前記低速カレントミラー回路は、カットオフ周波数が、前記演算増幅器のユニティゲイン周波数以下に設定されて低速化されてなるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、出力回路に用いられるカレントミラー回路の低速化を図ることで、演算増幅器としての位相を発振抑圧が可能となるように調整でき、このため、高周波ノイズ対策と併用することで、入力バイアス電流や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と発振耐性の向上の両立を可能とするという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態における演算増幅器の第2の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施の形態における演算増幅器の第3の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態における演算増幅器の第4の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図5】本発明の実施の形態における演算増幅器の第5の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図6】本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図7】本発明の実施の形態における演算増幅器の第2の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図8】本発明の実施の形態における演算増幅器の第3の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図9】本発明の実施の形態における演算増幅器の第4の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図10】本発明の実施の形態における演算増幅器の第5の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図11】本発明の実施の形態における演算増幅器の第6の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図12】
図1に示された第1の基本回路構成例におけるトランジスタの種類を変えた場合の第6の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図13】
図1に示された第1の基本回路構成例におけるトランジスタの種類を変えた場合の第7の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図14】
図1に示された第1の基本回路構成例におけるトランジスタの種類を変えた場合の第8の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図15】
図1に示された第1の基本回路構成例におけるトランジスタの種類を変更した第9の基本回路構成例を示す回路図である。
【
図16】
図1に示された第1の基本回路構成例にハイパスフィルタを付加した第10の基本回路例を示す回路図である。
【
図17】
図16に示された第10の基本回路構成例の具体回路例である第7の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図18】
図1に示された第1の基本回路構成例にハイパスフィルタを付加した第11の基本回路例を示す回路図である。
【
図19】
図1に示された第1の基本回路構成例にハイパスフィルタを付加した第12の基本回路例を示す回路図である。
【
図20】
図1に示された第1の基本回路構成例にハイパスフィルタを付加した第13の基本回路例を示す回路図である。
【
図21】
図18に示された第11の基本回路構成例の具体回路例である第8の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図22】
図19に示された第12の基本回路構成例の具体回路例である第9の具体回路構成例を示す回路図である。
【
図23】本発明の実施の形態における演算増幅器の周波数変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線図である。
【
図24】本発明の実施の形態における低速カレントミラー回路が設けられた演算増幅器における負荷容量変化に対する位相余裕の変化特性を示す特性線図である。
【
図25】本発明の実施の形態における低速カレントミラー回路及びハイパスフィルタが設けられた演算増幅器における負荷容量変化に対する位相余裕の変化特性を示す特性線図である。
【
図26】高周波ノイズ対策が施されていない従来の演算増幅器の回路構成例を示す回路図である。
【
図27】
図26に示された従来回路に高周波ノイズ対策を施した場合の回路構成例を示す回路図である。
【
図28】演算増幅器の高周波ノイズ耐性を計測する実験回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図29】
図26に示された演算増幅器と
図27に示された演算増幅器の高周波ノイズ耐性の指標としての周波数変化に対する出力電圧の変動特性を示した特性線図である。
【
図30】
図26に示された演算増幅器と
図27に示された演算増幅器の発振耐性の指標としての負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示した特性線図である。
【
図31】高周波ノイズ耐性と発振耐性の両立を図った従来の演算増幅器の回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図25を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の基本回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における演算増幅器は、入力差動対101と、出力回路102とに大別されてなるもので、この点は、従来と基本的に同様であるが、後述するように出力回路102が従来と異なる構成を有するものとなっている。
【0024】
入力差動対101は、PNP型のバイポーラトランジスタである差動対用第1及び第2のトラジスタ(
図1においては、それぞれ「Q1」、「Q2」と表記)1,2を中心に構成されている。
差動対用第1及び第2のトランジスタ1,2は、エミッタが相互に接続され、その接続点と正電源端子81との間に定電流源60が接続されている。なお、正電源端子81には、外部から電源電圧VCCが印加される。
【0025】
一方、差動対用第1のトランジスタ1のコレクタは、第1の負荷としての第1の抵抗器(
図1においては「R1」と表記)41を介して、差動対用第2のトランジスタ2のコレクタは、第2の負荷としての第2の抵抗器(
図1においては「R2」と表記)42を介して、共に負電源端子82に接続されている。
また、差動対用第1のトランジスタ1のベースは、反転入力端子(
図1においては「INM」と表記)83に、差動対用第2のトランジスタ2のベースは、非反転入力端子(
図1においては「INP」と表記)84に、それぞれ接続されている。
そして、第1及び第2のトランジスタ1,2の各々のコレクタは、次述するように出力回路102の入力段に接続されている。
【0026】
出力回路102は、低速カレントミラー回路(
図1においては「SCMP」と表記)151と、ベース接地増幅回路152と、バッファ増幅器(
図1においては「AO」と表記)153を中心に構成されている。
ベース接地増幅回路152は、NPN型のバイポーラトランジスタを用いた増幅用第1及び第2のトランジスタとしての第3及び第4のトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Q3」、「Q4」と表記)3,4を有して構成されている。
【0027】
第3及び第4のトランジスタ3,4は、ベースが相互に接続されて、その接続点と負電源端子82との間に第1の定電圧源61が設けられている。
また、第3のトランジスタ3のエミッタは、差動対用第1のトランジスタ1のコレクタと第1の抵抗器41との接続点に、第4のトランジスタ4のエミッタは、差動対用第2のトランジスタ2のコレクタと第2の抵抗器42との接続点に、それぞれ接続されている。
【0028】
さらに、第4のトランジスタ4のコレクタには、バッファ増幅器153の入力段が接続され、このバッファ増幅器153の出力段は、増幅出力端子(
図1においては「OUT」と表記)85に接続されている。また、バッファ増幅器153の入力段と出力段との間には、入力段側から位相補償コンデンサ(
図1においては「Cc」と表記)54、位相補償抵抗器(
図1においては「Rz」と表記)46の順で直列接続されて設けられている。
この第1の基本回路構成例においては、上述の入力差動対101とベース接地増幅回路152とによりフォールデットカスコード増幅回路が構成されたものとなっている。
【0029】
一方、低速カレントミラー回路151は、ベース接地増幅回路152の電流源となるもので、従来の出力回路に用いられているカレントミラー回路とは異なり、具体的には後述するようにポールを設けることで低速化(狭帯域化)を図ったものである。
まず、低速カレントミラー回路151の電源は、正電源端子81側から供給されるようになっており、入力段は、第3のトランジスタ3のコレクタに、出力段は、第4のトランジスタ4のコレクタに、それぞれ接続されている。
なお、
図1において、P1~P4は、低速カレントミラー回路151の電源接続及び入出力接続のための端子であって、説明の便宜上、P1を「入力段基準端子」、P2を「出力段基準端子」、P3を「入力端子」、P4を「出力端子」と称することとする。なお、これらの端子が低速カレントミラー回路151中の如何なる部分に接続されるかについては、後述の具体回路構成例において説明することとする。
【0030】
かかる構成において、低速カレントミラー回路151は、カットオフ周波数が、演算増幅器のユニティゲイン周波数の1/10程度に定めて低速化を図ったものとするのが好適である。
このように、カレントミラー回路のカットオフ周波数を演算増幅器のユニティゲイン周波数の1/10程度に設定することで、演算増幅器のユニティゲイン周波数の一桁程度の低い周波数で演算増幅器の位相を僅かに戻すことができる。その結果、位相余裕が増加するため、発振耐性の向上が図られることとなる。
【0031】
次に、第2の基本回路構成例について、
図2を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された第1の基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の基本回路構成例は、
図1に示された第1の基本回路構成例において、高周波ノイズ対策として、入力差動対101の入力側にローパスフィルタを設けた例であり、残余の部分は、
図1に示された基本回路と同一の構成を有してなるものである。
【0032】
すなわち、反転入力端子83と差動対用第1のトランジスタ1のベースとの間には、第1のローパスフィルタ(
図2においては「LPF1」と表記)71が、非反転入力端子84と差動対用第2のトランジスタ2のベースとの間には、第2のローパスフィルタ(
図2においては「LPF2」と表記)72が、それぞれ直列接続されて設けられている。
この第2の基本回路構成例は、低速カレントミラー回路151の使用に加えて、第1及び第2のローパスフィルタ71,72の使用により、高周波ノイズ耐性の向上と発振耐性の向上の両立を図ることが可能となっている。
【0033】
次に、第3の基本回路構成例について、
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された第1の基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の基本回路構成例は、
図1に示された第1の基本回路構成例において、高周波ノイズ対策として、入力差動対101の入力端子間にローパスフィルタを設けた例であり、残余の部分は、
図1に示された基本回路と同一の構成を有してなるものである。
すなわち、この第3の基本回路構成例においては、反転入力端子83と非反転入力端子84の間に、第3のローパスフィルタ(
図3においては「LPF3」と表記)73が設けられている。
これにより、高周波ノイズ耐性の向上と発振耐性の向上の両立が図られるのは、第2の基本回路構成例と同様である。
【0034】
次に、第4の基本回路構成例について、
図4を参照しつつ説明する。
なお、
図1乃至
図3のいずれかに示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第4の基本回路構成例は、高周波ノイズ対策として
図2に示された回路構成に、さらに、
図3に示された回路構成を適用したものである。
【0035】
すなわち、第1及び第2のローパスフィルタ71,72は、
図2に示された第2の基本回路構成例で説明したと同様に設けられている。
また、第3のローパスフィルタ73は、第1及び第2のローパスフィルタ71,72の後段側、すなわち、第1及び第2のトランジスタ1,2のベース側で、第1及び第2のトランジスタ1,2のベース間に接続されている。
かかる構成により、高周波ノイズ耐性のさらなる向上と発振耐性の向上の両立が図られる。
【0036】
次に、第5の基本回路構成例について、
図5を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
第5の基本回路構成例は、PNP型のバイポーラトランジスタを用いたベース接地増幅回路152Aを設けて、低速カレントミラー回路151Aをフォールデットカスコードのベース接地入力部分に位置する構成としたものである。
すなわち、まず、PNP型のバイポーラトランジスタを用いた増幅用第1及び第2のトランジスタとしての第11及び第12のトランジスタ(
図5においては、それぞれ「Q11」、「Q12」と表記)11,12によりベース接地増幅回路152Aが次述するように構成されている。
【0037】
まず、第11及び第12のトランジスタ11,12は、ベース同士が接続されると共に、その接続点と正電源端子81との間には、第2の定電圧源62が設けられている。この第2の定電圧源62は、正極側が正電源端子81に、負極側が第11及び第12のトランジスタ11,12のベース側となるように設けられている。
また、第11及び第12のトランジスタ11,12のエミッタは、共に正電源端子81に接続されている。
【0038】
低速カレントミラー回路(
図5においては「SCMN」と表記)151Aは、その入力段が、入力段基準端子P7(
図1における入力段基準端子P1に相当)を介して差動対用第1のトランジスタ1のコレクタと第1の抵抗器41との相互の接続点に、出力段が、出力段基準端子P8(
図1における出力段基準端子P2に相当)を介して差動対用第2のトランジスタ2のコレクタと第2の抵抗器42との相互の接続点に、それぞれ接続されている。
一方、低速カレントミラー回路151Aの入力段の電源側は、入力端子P5(
図1における入力端子P3に相当)を介して第11のトランジスタ11のコレクタが、低速カレントミラー回路151Aの出力段の電源側は、出力端子P6(
図1における出力端子P4に相当)を介して第12のトランジスタ12のコレクタが、それぞれ接続されている。なお、より具体的な回路接続については、後述の具体回路構成例において説明する。
なお、かかる構成においても、発振耐性の向上が図られるのは、第1の基本回路構成例と同様である。
【0039】
次に、第1の具体回路構成例について、
図6を参照しつつ説明する。
なお、
図2に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第1の具体回路構成例は、先の
図2に示された第2の基本回路構成例に対応する具体回路例であり、特に、低速カレントミラー回路(
図6においては「SCM1」と表記)151の具体的な回路構成例を示したものである。
【0040】
この構成例における低速カレントミラー回路151は、PNP型のバイポーラトランジスタを用いたカレントミラー用第1及び第2のトランジスタとしての第5及び第6のトラジスタ(
図6においては、それぞれ「Q5」、「Q6」と表記)5,6と、低速化用コンデンサ(
図6においては「CX1」と表記)51とを有して構成されている。
第5及び第6のトランジスタ5,6は、ベースが相互に接続されると共に、その相互の接続点は第5のトランジスタ5のコレクタと接続されており、第5のトランジスタ5は、いわゆるダイオード接続状態となっている。
また、第5のトランジスタ5のエミッタは、入力段基準端子P1を介して、第6のトランジスタ6のエミッタは、出力段基準端子P2を介して、共に正電源端子81に接続されている。
【0041】
そして、カレントミラー回路の入力段となる第5のトランジスタ5のコレクタは、入力端子P3を介して第3のトランジスタ3のコレクタに、カレントミラー回路の出力段となる第6のトランジスタ6のコレクタは、出力端子P4を介して第4のトランジスタ4のコレクタ及びバッファ増幅器153の入力端子に、それぞれ接続されている。
一方、低速化用コンデンサ51は、第3及び第5のトランジスタ3,5の各々のコレクタ同士の接続点と負電源端子82との間に接続されている。
【0042】
低速化用コンデンサ51は、先に述べたように、カレントミラー回路のカットオフ周波数を演算増幅器のユニティゲイン周波数の1/10程度とするためのもので、そのため必要とされる容量値CX1は、下記する式1で求められる値に設定すると好適である。
【0043】
CX1≒10×gmQ5/(2・π・fu)・・・式1
【0044】
ここで、CX1は、低速化用コンデンサ51の容量値、gmQ5は、第5のトランジスタ5のトランスコンダクタンス、fuは、演算増幅器のユニティゲイン周波数である。
低速化用コンデンサ51の容量値を上述のような値に設定することで、カレントミラー回路のカットオフ周波数を演算増幅器のユニティゲイン周波数の1/10程度に設定することができる。その結果、演算増幅器のユニティゲイン周波数よりも一桁程度の低い周波数で演算増幅器の位相を僅かに戻すことができ、位相余裕が増加するため、発振耐性の向上が図られることとなる。
例えば、トランスコンダクタンスgmQ5=100μA/V、ユニティゲイン周波数fu=10MHzの場合、低速化用コンデンサ51の容量値CX1は、CX1≒15.9pFとなる。
【0045】
図23には、高周波ノイズ耐性を示す特性例、すなわち、本発明の実施の形態における演算増幅器の入力周波数変化に対する出力変化特性例が従来回路の同特性例と共に示されており、以下、同図について説明する。
図23において、横軸は周波数を、縦軸は演算増幅器の出力電圧を、それぞれ示している。
同図において、点線の特性線は、ローパスフィルタを有しない従来回路(
図26参照)における周波数変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線である。
【0046】
また、同図において、実線の特性線は、
図2、
図6に示された本発明の実施の形態における演算増幅器の周波数変化に対する出力電圧の変化特性を示す特性線である。本発明の実施の形態における演算増幅器の特性を示す実線の特性線は、ローパスフィルタを設けた従来回路(
図27参照)の同様な特性を示す特性線とほぼ一致している。
なお、上述の特性は、先の
図28に示された実験回路を用いて取得されたものである。
図23によれば、本発明の実施の形態における演算増幅器が高周波ノイズ耐性を有し、出力電圧Voutの変動が抑制されることが確認できる。
【0047】
次に、
図24には、発振耐性の指標となる位相余裕の負荷容量CL依存性を示す特性例が示されており、以下、同図について説明する。
図24において、横軸は負荷容量を、縦軸は位相余裕を、それぞれ示している。
また、同図において、実線の特性線は、本発明の実施の形態における演算増幅器(
図6参照)の負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示す特性線である。なお、
図24において、「SCM」は、低速カレントミラー回路151を意味する。
【0048】
さらに、
図24において、二点鎖線の特性性は、ローパスフィルタを有しない従来回路(
図26参照)における負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示す特性線である。
また、同図において、点線の特性線は、ローパスフィルタを設けた従来回路(
図27参照)の同様な特性を示す特性線でもある。
図24によれば、低速カレントミラー回路151を用いた本発明の実施の形態における演算増幅器においては、位相余裕が確実に増加し、発振耐性が向上することが確認できる。
すなわち、この第1の具体回路構成例は、入力差動対101が従来回路(
図26、
図27参照)と同様であるため、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となる。
【0049】
次に、第2の具体回路構成例について、
図7を参照しつつ説明する。
なお、
図6に示された第1の具体回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の具体回路構成例は、先に
図6に示された第1の具体回路構成例に対して、低速化用コンデンサ51の両端電位差を小さくした低速カレントミラー回路(
図7においては「SCM2」と表記)151Bを設け、低耐圧コンデンサの使用を可能とし、チップサイズの縮小化を図ったものである。
すなわち、具体的には、低速カレントミラー回路151Bにおいて、低速化用コンデンサ51の一端が、第3及び第5のトランジスタ3,5のコレクタ同士の接続点に接続される一方、他端が正電源端子81に接続された構成となっている。
【0050】
図6に示された第1の具体回路構成例の場合、低速化用コンデンサ51の両端電位差は、VCC-VEE-1Vbeであるのに対して、この第2の具体回路構成例の場合、低速化用コンデンサ51の両端電位差は、1Vbe≒0.7Vとなる。
ここで、1Vbeは、第5のトランジスタ5のベース・エミッタ間電位差であり、通常、0.7V程度である。
【0051】
このように低速化用コンデンサ51の両端電位差を小さくすることで、低耐圧コンデンサを用いることが可能となる。低耐圧コンデンサは、単位面積あたりの容量値が大きいため、小さな面積で大きな容量を得ることができ、チップサイズの小型化を図ることができる。
低速化用コンデンサ51の容量値は、先に式1で示されたように決して小さな値ではない。そのため、低速化用コンデンサ51に必要とされる容量値が大きい場合、この第2の具体回路構成例が有効となる。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0052】
次に、第3の具体回路構成例について、
図8を参照しつつ説明する。
なお、
図6に示された第1の具体回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の具体回路構成例は、トランスコンダクタンスの減少を図った低速カレントミラー回路(
図8においては「SCM3」と表記)151Cを設けたものである。
以下、具体的に説明すれば、まず、低速カレントミラー回路151Cは、第5及び第6のトランジスタ5,6と、低速化用コンデンサ51と、調整用第1及び第2の抵抗器(
図8においては、それぞれ「RX11」、「RX12」と表記)43,44を有して構成されている。
【0053】
この低速カレントミラー回路151Cは、
図6に示された構成において、第5及び第6のトランジスタ5,6のエミッタ側と正電源端子81との間に、次述するように調整用第1及び第2の抵抗器43,44を設けた点が、
図6に示された構成と異なるもので、残余の部分は、
図6に示された回路構成例と同一の構成を有してなるものである。
【0054】
すなわち、調整用第1の抵抗器43の一端は、入力段基準端子P1を介して、調整用第2の抵抗器44の一端は、出力段基準端子P2を介して、共に正電源端子81に接続される一方、調整用第1の抵抗器43の他端は、第5のトランジスタ5のエミッタに、調整用第2の抵抗器44の他端は、第6のトランジスタ6のエミッタに、それぞれ接続されている。
このように調整用第1及び第2の抵抗器43,44を設けることで、カレントミラー回路のトランスコンダクタンスが減少するため、低速化用コンデンサ51の容量値を小さくすることができ、結局は、チップサイズの縮小が可能となる。さらに、コンデンサの容量値を小さくすることは、コンデンサ自体の故障確率を低減することとなる。
【0055】
この回路構成例における低速化用コンデンサ51の容量値CX1は、下記する式2により求められる。
【0056】
CX1≒{10×gmQ5/(1+RX11×gmQ5)}/(2・π・fu)・・・式2
【0057】
ここで、gmQ5は、第5のトランジスタ5のトランスコンダクタンス、RX11は、調整用第1の抵抗器43の抵抗値である。
例えば、第5のトランジスタ5のトランスコンダクタンスgmQ5=100μA/V、ユニティゲイン周波数fu=10MHzの場合、調整用第1の抵抗器43の有無による低速化用コンデンサ51の容量値CX1違いは、次のようになる。
すなわち、
図6に示された第1の具体回路構成例における低速化用コンデンサ51の容量値は、先の式1により算出され、容量値CX1=15.9pFとなる。
これに対して、調整用第1の抵抗器43を抵抗値RX11=10kΩとすると、この第3の具体回路構成例における低速化用コンデンサ51の容量値は、先の式2により算出され、容量値CX1=8.0pFとなる。
【0058】
このように、この第3の具体回路構成例の場合、調整用第1及び第2の抵抗器43,44を設けることで、調整用第1及び第2の抵抗器43,44を有しない第1の具体回路構成例に比して、低速化用コンデンサ51の容量値を半分程度に減少させることが可能となる
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0059】
次に、第4の具体回路構成例について、
図9を参照しつつ説明する。
なお、
図8に示された具体回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第4の具体回路構成例は、次述する低速カレントミラー回路(
図9においては「SCM4」と表記)151Dが設けられたもので、残余の部分は、
図8に示された回路構成例と同一の構成を有してなるものである。
【0060】
すなわち、この第4の具体回路構成例における低速カレントミラー回路151Dにおいては、低速化用コンデンサ51の接続が、
図8に示された具体回路構成例に比して、その両端電位差が小さくなるように変更されたものとなっている。
具体的には、先に
図7で説明した通りであるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
【0061】
このように、低速化用コンデンサ51の接続について、
図7に示された接続構成を適用することで、低速化用コンデン51の両端電位差を小さくでき、そのため、低耐圧コンデンサを用いることが可能となり、低速化用コンデンサ51の小型化を図ることができる。さらに、調整用第1及び第2の抵抗器43,44を設けることで、式2に示されたように、低速化用コンデンサ51の容量値を小さくすることができるため、先の低速化用コンデンサ51の両端電位差を小さくすることと相まって、第2、第3の具体回路構成例に比してさらなるチップサイズの縮小化が可能となる。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0062】
次に、第5の具体回路構成例について、
図10を参照しつつ説明する。
なお、
図5又は
図6に示された回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第5の具体回路構成例は、先に
図5に示された第5の基本回路構成例の具体回路例で、フォールデットカスコードのベース接地入力部分に低速カレントミラー回路151Eを設けた構成を有するもので、残余の部分は、
図5に示された回路構成例と同一の構成を有してなるものである。
【0063】
以下、具体的に説明すれば、まず、低速カレントミラー回路151Eは、NPN型のバイポーラトランジスタを用いたカレントミラー用第1及び第2のトランジスタとしての第13及び第14のトランジスタ(
図10においては、それぞれ「Q13」、「Q14」と表記)13,14と、低速化用コンデンサ(
図10においては「CX3」と表記)51とを有して構成されている。
第13のトランジスタ13と第14のトランジスタ14は、ベース同士が接続されると共に、第13のトランジスタ13のコレクタと接続されて、第13のトランジスタ13は、いわゆるダイオード接続されたものとなっている。
【0064】
また、第13のトランジスタ13のエミッタは、入力段基準端子P7を介して差動対用第1のトランジスタ1のコレクタに、第14のトランジスタ14のエミッタは、出力段基準端子P8を介して差動対用第2のトランジスタ2のコレクタに、それぞれ接続されている。
一方、第13のトランジスタ13のコレクタは、入力端子P5を介して第11のトランジスタ11のコレクタに、第14のトランジスタ14のコレクタは、出力端子P6を介して第12のトランジスタ12のコレクタに、それぞれ接続されている。
ここで、入力段基準端子P7は、
図6における入力段基準端子P1に、出力段基準端子P8は、
図6における出力段基準端子P2に、入力端子P5は、
図6における入力端子P3に、出力端子P6は、
図6における出力端子P4に、それぞれ対応するものである。
そして、低速化用コンデンサ51は、第11及び第13のトランジスタ11,13のコレクタ同士の接続点と正電源端子81との間に接続されている。
また、第12及び第14のトランジスタ12,14のコレクタ同士の接続点は、バッファ増幅器153の入力段に接続されている。
【0065】
かかる構成において、低速化用コンデンサ51によりカレントミラー回路の低速化が図られるのは、これまで同様であり、その容量値CX3は、下記する式3に基づいて求めることができる。
【0066】
CX3≒{10×gmQ13/(1+R1×gmQ13)}/(2・π・fu)・・・式3
【0067】
ここで、gmQ13は、第13のトランジスタ13のトランスコンダクタンス、R1は、第1の抵抗器41の抵抗値、fuは、演算増幅器のユニティゲイン周波数である。
例えば、トランスコンダクタンスgmQ13=100μA/V、ユニティゲイン周波数fu=10MHzの場合、抵抗値R1=10kΩの場合、低速化用コンデンサ51の容量値CX3≒8pFとなる。
【0068】
ここで、
図8に示された第3の具体回路構成例と、
図10に示された第5の具体回路構成例を比較する。
両者共に、低速カレントミラー回路のエミッタ側に抵抗器を設けてトランスコンダクタンスを引き下げることで、低速化用コンデンサ51の容量値CX1又はCX3を小さくするという点では同一の技術的思想に基づくものである。
しかしながら、
図8に示された第3の具体回路構成例においては、調整用第1及び第2の抵抗器43,44を新たに付加する必要があるのに対して、
図10に示された第5の具体回路構成例の場合、既存の第1及び第2の抵抗器41,42を利用する構成となっている。
そのため、第5の具体回路構成例は、第3の具体回路例に比較して同一の回路動作、作用を得るために必要とされる素子数が少なくて済み、チップサイズのさらなる小型化が可能となっている。
【0069】
この第5の具体回路構成例における高周波ノイズ耐性は、先に
図23に示した通りであり、また、発振耐性は先に
図24に示した通りである。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0070】
次に、第6の具体回路構成例について、
図11を参照しつつ説明する。
なお、
図10に示された第5の具体回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第6の具体回路構成例は、
図10に示された構成例に比して低速化用コンデンサ51の両端電位差を小さくした低速カレントミラー回路(
図11においては「SCM12」と表記)151Fを設け、低耐圧コンデンサの使用を可能とし、チップサイズの縮小化を図ったものである。
すなわち、具体的には、低速カレントミラー回路151Fにおいて、低速化用コンデンサ51の一端が、第11及び第13のトランジスタ11,13のコレクタ同士の接続点に接続される一方、他端が負電源端子82に接続された構成となっている。
【0071】
第6の具体回路構成例において、低速化用コンデンサ51の両端電位差は、先の第5の具体回路構成例と比べると次のようになる。
先の第5の具体回路構成例の場合、低速化用コンデンサ51の両端電位差をVdifとすると、Vdif=VCC-VEE-1Vbe-VR1となる。
これに対して、第6の具体回路構成例の場合、低速化用コンデンサ51の両端電位差Vdifは、Vdif=1Vbe+VR1≒1Vとなる。
ここで、1Vbeは、第13のトランジスタ13のベース・エミッタ間の電位差であり、通常、0.7V程度である。また、VR1は、第1の抵抗器41における電圧降下の大きさであり、例えば、0.3V程度と想定する。
このように低速化用コンデンサ51の両端電位差を小さくすることで、低耐圧コンデンサを用いることが可能となる。低耐圧コンデンサは、単位面積あたりの容量値が大きいため、小さな面積で大きな容量を得ることができ、チップサイズの小型化を図ることができる。
【0072】
低速化用コンデンサ51の容量値CX3は、先に式3で示されたように決して小さな値ではない。そのため、低速化用コンデンサ51に必要とされる容量値が大きい場合、この第6の具体回路構成例が有効となる。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0073】
次に、第6の基本回路構成例について、
図12を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第6の基本回路構成例は、第1の基本回路構成例と異なる極性のトランジスタを用いて構成された入力差動対101Aが設けられたものとなっている。
すなわち、この第6の基本回路構成例において、入力差動対101Aを構成する差動対用第1及び第2のトランジスタ1A,2Aには、NPN型のバイポーラトランジスタが用いられている。
【0074】
したがって、この第6の基本回路構成例においては、正電源端子81と負電源端子82間における差動対用第1及び第2のトランジスタ1A,2Aの接続構成は、
図1に示された第1の基本回路構成例の接続構成と逆となる。
すなわち、まず、差動対用第1及び第2のトランジスタ1A,2Aは、エミッタが相互に接続され、その接続点と負電源端子82との間に定電流源60が接続されている。
一方、差動対用第1のトランジスタ1Aのコレクタは第1の抵抗器41を介して、差動対用第2のトランジスタ2Aは第2の抵抗器42を介して、共に正電源端子81に接続されている。
そして、差動対用第1のトランジスタ1Aのコレクタは、入力段基準端子P1を介して低速カレントミラー回路151の入力段の電源側に、差動対用第2のトランジスタ2Aのコレクタは、出力段基準端子P2を介して低速カレントミラー回路151の出力段の電源側に、それぞれ接続されている。
【0075】
一方、第3のトランジスタ3のコレクタは、低速カレントミラー回路151の入力段に、第4のトランジスタ4のコレクタは、低速カレントミラー回路151の出力段に、それぞれ接続されるのは、第1の基本回路構成例と同様であるが、第3及び第4のトランジスタ3,4の各々のエミッタは、第1の基本回路構成例と異なり、共に負電源端子82に接続されている。そして、第3及び第4のトランジスタ3,4のベースと負電源端子82との間に第1の定電圧原61が、第3及び第4のトランジスタ3,4のベース側が正極となるように設けられている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0076】
次に、第7の基本回路構成例について、
図13を参照しつつ説明する。
なお、
図12に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第7の基本回路構成例は、
図12に示された基本回路構成例におけるベース接地増幅回路152に代えて、PNP型のバイポーラトランジスタを用いて構成されたベース接地増幅回路152Bを設けた構成を有するものである。
【0077】
すなわち、PNP型のバイポーラトランジスタを用いた増幅用第1及び第2のトランジスタとしての第5及び第6のトランジスタ(
図13においては、それぞれ「Q5」、「Q6」と表記)5,6は、ベースが相互に接続されると共に、その接続点と正電源端子81との間に、第2の定電圧源62が、正電源端子81側に正極が位置するように設けられている。
また、第5のトランジスタ5のエミッタは、差動対用第1のトランジスタ1Aのコレクタに、第6のトランジスタ6のエミッタは、差動対用第2のトランジスタ2Aのコレクタに、それぞれ接続されている。
【0078】
さらに、第5のトランジスタ5のコレクタは、入力端子P5を介して低速カレントミラー回路151Aの入力段の電源側に、第6のトランジスタ6のコレクタは、出力端子P6を介して低速カレントミラー回路151Aの出力段の電源側に、それぞれ接続されている。
そして、低速カレントミラー回路151Aの入力段基準端子P7と出力段基準端子P8は、共に負電源端子82に接続されている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0079】
次に、第8の基本回路構成例について、
図14を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第8の基本回路構成例は、第1の基本回路構成例における低速カレントミラー回路151を除いた残余の構成において、バイポーラトランジスタに代えてCMOSトランジスタを用いたものである。
なお、この第8の基本回路構成例における低速カレントミラー回路151は、例えば、
図6に示された具体回路構成例に示された回路構成を前提とし、カレントミラー用第1及び第2のトランジスタとしての第5及び第6のトランジスタもPMOSトランジスタを用いた構成としている。
【0080】
まず、入力差動対101Bは、pチャネルMOSトランジスタを用いた差動対用第1及び第2のトランジスタとしての第1及び第2のMOSトランジスタ(
図14においては、それぞれ「M1」、「M2」と表記)31,32を用いて構成されている。
第1及び第2のMOSトランジスタ31,32は、ソースが相互に接続されると共に、その接続点と正電源端子81との間に、定電流源60が設けられている。
そして、第1のMOSトランジスタ31のドレインと負電源端子82との間に、第1の抵抗器41が、第2のMOSトランジスタ32のドレインと負電源端子82との間に、第2の抵抗器42が、それぞれ接続されている。
【0081】
また、出力回路102においては、ベース接地増幅回路152Cは、nチャネルMOSトランジスタを用いた増幅用第1及び第2のトランジスタとしての第3及び第4のMOSトランジスタ(
図14においては、それぞれ「M3」、「M4」と表記)33,34を用いて構成されている。
第3及び第4のMOSトランジスタ33,34は、ゲート同士が接続されると共に、その接続点と負電源端子82との間には、正極が第3及び第4のMOSトランジスタ33,34のゲート側に位置するように第1の定電圧源61が設けられている。
【0082】
また、第3のMOSトランジスタ33のソースは、第1のMOSトランジスタ31のドレインに、第4のMOSトランジスタ34のソースは、第2のMOSトランジスタ32のドレインに、それぞれ接続されている。
そして、第3のMOSトランジスタ33のドレインは、低速カレントミラー回路151の入力段に、第4のMOSトランジスタ34のドレインは、低速カレントミラー回路151の出力段に、それぞれ接続されている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0083】
次に、第9の基本回路構成例について、
図15を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この
図9の基本回路構成例は、第1の基本回路構成例(
図1参照)における入力差動対101に代えて、能動負荷を用いた構成の入力差動対101Cを設けた構成を有するものである。
【0084】
すなわち能動負荷は、NPN型のバイポーラトランジスタである第21及び第22のトランジスタ(
図15においては、それぞれ「Q21」、「Q22」と表記)21,22により構成されている。
具体的には、まず、第21及び第22のトランジスタ21,22は、ベース同士が接続されると共に、その接続点と負電源端子82との間には、正極が第21及び第22のトランジスタ21,22のベース側に位置するように第3の定電圧源63が設けられている。
また、第21のトランジスタ21のコレクタは、差動対用第1のトランジスタ1のコレクタに、第22のトランジスタ22のコレクタは、差動対用第2のトランジスタ2のコレクタに、それぞれ接続されている。
【0085】
そして、第21及び第22のトランジスタ21,22のエミッタは、共に負電源端子82に接続されている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招く事無く、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例(
図6参照)と同様である。
【0086】
次に、第10の基本回路構成例について、
図16を参照しつつ説明する。
なお、
図1に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
第10の基本回路構成例は、第1の具体回路構成例に、発振耐性向上のためのハイパスフィルタを設けた構成を有するものである。
すなわち、第3及び第4のトランジスタ3,4のベースと第4のトランジスタ4のコレクタとの間に、ハイパスフィルタ(
図16において「HPF」と表記)110が設けられている。
【0087】
図17には、
図16に示された第10の基本回路構成例の具体回路例である第7の具体回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この具体回路構成例について説明する。
なお、第10の基本回路構成例におけるハイパスフィルタ110の発振耐性についての具体的な説明は、
図17に示された具体回路構成例の説明を以て、これに代えることとする。
また、
図6に示された第1の具体回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
【0088】
まず、
図17に示された具体回路構成例は、
図16の基本回路構成例に、さらに、入力差動対101の入力側にローパスフィルタ71,72を付加した構成となっている。
ハイパスフィルタ110は、ハイパス用抵抗器(
図17においては「RX1」と表記)45とハイパス用コンデンサ(
図17においては「CX2」と表記)52により構成されている。
【0089】
具体的には、第4のトランジスタ4のコレクタと第3及び第4のトランジスタ3,4のベースとの間に、第4のトランジスタ4のコレクタ側から、ハイパス用コンデンサ52、ハイパス用抵抗器45の順で直列接続されて設けられている。
この具体回路構成例においては、ハイパスフィルタ110を設けたことにより、負荷容量CLが大きな領域、例えば、CL=1nFを超える領域における発振耐性の向上が顕著である。
このため、ハイパス用コンデンサ52の容量値CX2は、下記する式4に基づいて設定される。
【0090】
CX2≧Cc・・・式4
【0091】
ここで、Ccは、バッファ増幅器153の入出力間に設けられた位相補償コンデンサ54の容量値であるとする。
式4が示すように、ハイパス用コンデンサ52の容量値CX2は、位相補償コンデンサ54の容量値(位相補償容量値)Ccと同程度以上とする必要がある。
このように、容量値CX2を、位相補償容量値Ccと同等以上とするのは、位相補償容量値Ccの両端間に発生する信号振幅以上のAC信号を、第3及び第4のトランジスタ3,4のベースに発生させるためである。
【0092】
図25には、発振耐性を確認するための負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示す特性線図が示されており、以下、同図について説明する。
同図において、横軸は負荷容量の変化を、縦軸は位相余裕の変化を、それぞれ示している。
また、
図25において、実線の特性線は、
図17に示された具体回路構成例における負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示している。さらに、
図25において、一点鎖線の特性線は、
図6に示された第1の具体回路例のように低速カレントミラー回路151のみの場合における負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示している。
【0093】
さらに、
図25において、二点鎖線の特性線は、ローパスフィルタを設けない従来回路(
図26参照)における負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示している。また、
図25において、点線の特性線は、ローパスフィルタを設けた従来回路(
図27参照)における負荷容量の変化に対する位相余裕の変化特性を示している。
図25によれば、
図17に示された具体回路構成例のように低速カレントミラー回路151を設けた構成において、さらにハイパスフィルタを併用することで、
図6に示された第1の具体回路構成例に比して、高負荷容量における位相余裕がより改善されることが確認できる。
【0094】
なお、
図17に示された具体回路構成例における高周波ノイズ耐性は、第1の具体回路構成例(
図6)の高周波ノイズ耐性について先に
図23を参照しつつ説明したと同様の特性を得ることができる。
また、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第1の具体回路構成例と同様である。
【0095】
次に、第11の基本回路構成例について、
図18を参照しつつ説明する。
なお、
図5又は
図16に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第11の基本回路構成例は、
図5に示された第5の基本回路構成例に、ハイパスフィルタ110を付加した構成を有するものである。
すなわち、ハイパスフィルタ110は、第11及び第12のトランジスタ11,12のベースと第12のトランジスタ12のコレクタとの間に設けられている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第10の基本回路構成例(
図16参照)や
図17に示された具体回路構成例と同様である。
【0096】
次に、第12の基本回路構成例について、
図19を参照しつつ説明する。
なお、
図12又は
図16に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第12の基本回路構成例は、
図12に示された第6の基本回路構成例に、ハイパスフィルタ110を付加した構成を有するものである。
すなわち、ハイパスフィルタ110は、第3及び第4のトランジスタ3,4のベースと第4のトランジスタ4のコレクタとの間に直列接続されて設けられている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第10の基本回路構成例(
図16参照)や
図17に示された具体回路構成例と同様である。
【0097】
次に、第13の基本回路構成例について、
図20を参照しつつ説明する。
なお、
図13又は
図16に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第13の基本回路構成例は、
図13に示された第7の基本回路構成例に、ハイパスフィルタ110を付加した構成を有するものである。
すなわち、ハイパスフィルタ110は、第5及び第6のトランジスタ5,6のベースと第6のトランジスタ6のコレクタとの間に設けられている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第10の基本回路構成例(
図16参照)や
図17に示された具体回路構成例と同様である。
【0098】
次に、第8の具体回路構成例について、
図21を参照しつつ説明する。
なお、
図10に示された具体回路構成例、又は、
図18に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第8の具体回路構成例は、
図18に示された第11の基本回路構成例の具体例であって、
図10に示された第5の具体回路構成例にハイパスフィルタ110を付加した構成を有するものである。
【0099】
すなわち、ハイパスフィルタ110は、第11及び第12のトランジスタ11,12のベースと第12のトランジスタ12のコレクタとの間に、第11及び第12のトランジスタ11,12のベース側からハイパス用抵抗器45、ハイパス用コンデンサ52の順で直列接続されて設けられている。
なお、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第10の基本回路構成例(
図16参照)や
図17に示された具体回路構成例と同様である。
【0100】
次に、第9の具体回路構成例について、
図22を参照しつつ説明する。
なお、
図6に示された具体回路構成例、
図12又は
図19に示された基本回路構成例と同一の構成要素については、 同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第9の具体回路構成例は、
図19に示された第12の基本構成例の具体回路例であって、ハイパスフィルタ110と共に、入力差動対101Aの入力側に第1及び第2のローパスフィルタ71,72を設けた構成を有するものである。
また、低速カレントミラー回路151は、基本的に
図6に示された構成を有するものであるが、第3及び第4のトランジスタ3,4のエミッタ側と、第5及び第6のトランジスタ5,6エミッタ側の、それぞれの接続が次述するように異なるものとなっている。
【0101】
すなわち、第3及び第4のトランジスタ3,4のエミッタは、共に負電源端子82に接続されている。
また、第5のトランジスタ5のエミッタは、差動対用第1のトランジスタ1Aのコレクタに、第6のトランジスタ6のエミッタは、差動対用第2のトランジスタ2Aのエミッタに、それぞれ接続されている。
【0102】
さらに、ハイパスフィルタ110は、第3及び第4のトランジスタ3,4のベースと第4のトランジスタ4のコレクタとの間に、第3及び第4のトランジスタ3,4のベース側からハイパス用抵抗器45、ハイパス用コンデンサ52の順で直列接続されて設けられている。
かかる構成においては、入力差動対101Aには、先の
図21に示された具体回路構成例と異なり、NPN型のバイポーラトランジスタが用いられているが、発振耐性については、
図21に示された具体回路構成例と同様である。
【0103】
したがって、入力バイアス電流の増加や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と、発振耐性の向上の両立が可能となるのは、先の第10の基本回路構成例(
図16参照)や
図17に示された具体回路構成例と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
入力バイアス電流や入力換算雑音電圧の増加を招くことなく、高周波ノイズ耐性の向上と発振耐性の向上が所望される演算増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0105】
51…低速化用コンデンサ
52…ハイパス用コンデンサ
101,101A,101B,101C…入力差動対
102…出力回路
110…ハイパスフィルタ
151,151A,151B,151C,151D,151E,151F…低速カレントミラー回路
152,152A,152B,152C…ベース接地増幅回路