(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080868
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】フィルム、および、フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230602BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20230602BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230602BHJP
C08F 210/08 20060101ALI20230602BHJP
C08F 210/14 20060101ALI20230602BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20230602BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L23/12
C08L23/08
C08F210/08
C08F210/14
B29C48/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194406
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】越智 直子
(72)【発明者】
【氏名】桑▲崎▼ 直人
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA19
4F071AA20
4F071AA81
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4J100DA42
4J100EA05
4J100FA10
4J100FA22
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】ヒートシールにより、比較的高い剥離強度のシールを形成することができると共に、剥離強度の安定性に優れたシールを形成することができるフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】フィルムは、以下の要件(1)と要件(2)と要件(3)と要件(4)とを満たし、厚みが10μm以上300μm以下である。要件(1):フィルムの全質量を100質量%として、70質量%以上95質量%以下のポリプロピレンと、5質量%以上30質量%以下のポリエチレンとを含む。要件(2):赤外ATR法によって求められるフィルムのポリプロピレンのピーク強度に対する、ポリエチレンのピーク強度の比が0.3以上0.55以下である。要件(3):赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度が0以上0.17以下である。要件(4):20℃から130℃までに要した融解熱量が50J/g以上70J/g以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件(1)と要件(2)と要件(3)と要件(4)とを満たし、
厚みが10μm以上300μm以下である、
フィルム。
要件(1):フィルムの全質量を100質量%として、70質量%以上95質量%以下のポリプロピレンと、5質量%以上30質量%以下のポリエチレンとを含む。
要件(2):赤外ATR法によって求められるフィルムのポリプロピレンのピーク強度に対する、ポリエチレンのピーク強度の比が0.3以上0.55以下である。
要件(3):赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度が0以上0.17以下である。
要件(4):20℃から130℃までに要した融解熱量が50J/g以上70J/g以下である。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムであって、
80質量%以上95質量%以下のポリプロピレンと、5質量%以上20質量%以下のポリエチレンとを含む、
フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルムであって、
ポリエチレンが長鎖分岐を有するエチレン-α-オレフィン共重合体である、
フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムであって、
空冷インフレーション製膜法を用いて製造される、
フィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法であって、
空冷インフレーション製膜法を用いる、
フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、および、フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の包装袋や包装容器等の材料として用いられる包装フィルムとしては、基材フィルムと該基材フィルムに積層されたシーラントフィルムとを備えるものが知られている。斯かる包装フィルムは、シーラントフィルムを対峙するように重ね合わせた部分でヒートシールすることによってシールを形成することができる。これにより、包装フィルムを用いて物品を包装する際に、物品の収容空間をシールによって閉塞することができる。
【0003】
上記のように、包装フィルムを用いて物品を包装した際には、シールの密封性(即ち、剥離強度)が良好であること、シールにおける包装フィルムの剥離性が良好であることが要求される場合がある。このような要求を満たすシールを形成し得る包装フィルムとして、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを所定量含有するシーラントフィルムを備える包装フィルムが開示されている。斯かる包装フィルムでは、シーラントフィルムに含有されるポリエチレン系樹脂は、エチレン構成単位が95mol%以上、炭素原子数5の分岐数が炭素原子1000個あたり0.1未満、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようにヒートシールを行ってシールを形成する際には、ヒートシールを行う装置の状態や環境温度等の影響によって、包装フィルムを加熱する温度にバラツキが生じることがある。このように、包装フィルムの加熱温度にバラツキが生じると、シールにおける包装フィルムの剥離強度にバラツキが生じる(換言すれば、剥離強度の安定性が低くなる)虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ヒートシールにより、比較的高い剥離強度のシールを形成することができると共に、剥離強度の安定性に優れたシールを形成することができるフィルムを提供すること、および、該フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフィルムは、以下の要件(1)と要件(2)と要件(3)と要件(4)とを満たし、厚みが10μm以上300μm以下である。
要件(1):フィルムの全質量を100質量%として、70質量%以上95質量%以下のポリプロピレンと、5質量%以上30質量%以下のポリエチレンとを含む。
要件(2):赤外ATR法によって求められるフィルムのポリプロピレンのピーク強度に対する、ポリエチレンのピーク強度の比が0.3以上0.55以下である。
要件(3):赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度が0以上0.17以下である。
要件(4):20℃から130℃までに要した融解熱量が50J/g以上70J/g以下である。
【0008】
本発明に係るフィルムの製造方法は、上記フィルムの製造方法であって、空冷インフレーション製膜法を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシールにより、比較的高い剥離強度のシールを形成することができると共に、剥離強度の安定性に優れたシールを形成することができるフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係るフィルムは、以下の要件(1)~(4)を満たし、厚みが10μm以上300μm以下である。フィルムの厚みは、好ましくは15μm以上200μm以下であり、より好ましくは20μm以上150μm以下である。
【0012】
<要件(1)>
フィルムの全質量を100質量%として、70質量%以上95質量%以下のポリプロピレンと、5質量%以上30質量%以下のポリエチレンとを含む。一態様として、フィルムは、フィルムの全質量を100質量%として、80質量%以上95質量%以下のポリプロピレンと、5質量%以上20質量%以下のポリエチレンとを含むことが好ましい。
【0013】
<要件(2)>
赤外ATR法によって求められるフィルムのポリプロピレンのピーク強度に対する、ポリエチレンのピーク強度の比は、0.30以上0.55以下であり、好ましくは0.35以上0.54以下であり、より好ましくは0.40以上0.53以下である。上記のポリエチレンのピーク強度の比は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、減衰全反射法(ATR法)によって求めることができ、具体的には、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。上記のポリエチレンのピーク強度の比は、ポリエチレンの含有量とポリエチレンの密度を調整して結晶性を調整することによって変化させることができる。
【0014】
<要件(3)>
赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度は、0以上0.17以下であり、好ましくは0.05以上0.17以下であり、より好ましくは0.10以上0.17以下である。赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて求めることができ、具体的には、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。上記の赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度は、後述するメルトフローレート(MFR)が低いポリエチレンや長鎖分岐を有するポリエチレンを用いることで変化させることができる。
【0015】
<要件(4)>
20℃から130℃までに要したフィルムの融解熱量は、50J/g以上70J/g以下であり、好ましくは53J/g以上67J/g以下であり、より好ましくは55J/g以上64J/g以下である。融解熱量は、示差走査熱量計を用いて求めることができ、具体的には、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。上記のフィルムの融解熱量は、ポリプロピレンに応じて、ポリエチレンの含有量、融点、密度を適切に選択することによって変化させることができる。
【0016】
本実施形態に係るフィルムは、上記のように構成されることで、ヒートシールした際に、比較的高い剥離強度のシール部を形成することができると共に、剥離強度の安定性に優れたシール部を形成することができる。
【0017】
<ポリプロピレン>
上記のフィルムに含まれるポリプロピレンは、プロピレンに由来する構成単位を50質量%超含むプロピレン系重合体であり、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンに由来する構成単位を50質量%超含むプロピレン系共重合体であってもよい。プロピレン系共重合体は、プロピレンに由来する構成単位を、好ましくは70質量%以上98質量%以下含み、より好ましくは80質量%以上98質量%以下含み、さらに好ましくは90質量%以上98質量%以下含む。また、プロピレン系共重合体は、プロピレン以外に由来する構成単位を、好ましくは2質量%以上30質量%以下含み、より好ましくは2質量%以上20質量%以下含み、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下含む。プロピレン系共重合体に含まれるプロピレン以外の構成単位としては、例えば、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構成単位が挙げられる。
【0018】
プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。プロピレン系ランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体(以下、プロピレン-エチレンランダム共重合体とも記す)、プロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体(以下、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体とも記す)、および、プロピレンとエチレンとα-オレフィンとの三元共重合体(以下、プロピレン-エチレン-α-オレフィン三元共重合体とも記す)等が挙げられる。
【0019】
プロピレン-エチレンランダム共重合体は、エチレンに由来する構成単位を、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下含み、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下含み、さらに好ましくは0.5質量%以上6質量%以下含み、特に好ましくは2質量%以上6質量%以下含む。
【0020】
プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体は、α-オレフィンに由来する構成単位を、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下含み、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下含み、さらに好ましくは0.5質量%以上6質量%以下含む。
【0021】
プロピレン-エチレン-α-オレフィン三元共重合体は、エチレンに由来する構成単位を、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下含み、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下含み、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下含み、特に好ましくは0.5質量%以上3質量%以下含む。また、プロピレン-エチレン-α-オレフィン三元共重合体は、α-オレフィンに由来する構成単位を、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下含み、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下含み、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下含み、特に好ましくは3質量%以上10質量%以下含む。
【0022】
上記の各構成単位は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により、赤外線(IR)スペクトル測定を行うことで求めることができる。
【0023】
プロピレン系重合体は、該プロピレン系重合体を構成する成分を二段階以上の多段階で重合して得られるプロピレン系多段重合体であってもよい。プロピレン系多段重合体を構成する成分の組合せは、プロピレン単独重合体成分同士であってもよいし、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン系共重合体成分であってもよいし、プロピレン系共重合体成分同士であってもよい。少なくとも2種のプロピレン系重合体成分を多段階で重合する場合、プロピレン系多段重合体は、少なくとも2種のプロピレン系重合体成分を含有するプロピレン系重合体組成物である。
【0024】
プロピレン系多段重合体は、プロピレンに由来する構成単位を95質量%以上含む重合体成分(A)、ならびに、プロピレンに由来する構成単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上に由来する構成単位とを50質量%以上85質量%以下含む共重合体成分(B)を含むことが好ましい。重合体成分(A)は、プロピレン単独重合体成分であることが好ましく、共重合体成分(B)は、プロピレン系共重合体成分であることが好ましい。
【0025】
プロピレン系多段重合体は、重合体成分(A)および共重合体成分(B)の合計含有量100質量%に対して、重合体成分(A)を、好ましくは50質量%以上90質量%以下含み、より好ましくは70質量%以上85質量%以下含む。また、プロピレン系多段重合体は、重合体成分(A)および共重合体成分(B)の合計含有量100質量%に対して、共重合体成分(B)を、好ましくは10質量%以上50質量%以下含み、より好ましくは15質量%以上30質量%以下含む。
【0026】
重合体成分(A)は、エチレン、および、1-ブテンからなる群から選択される1種以上に由来する他の構成単位を含んでもよい。他の構成単位は、重合体成分(A)に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0027】
共重合体成分(B)は、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上に由来する構成単位を、10質量%以上50質量%以下含み、好ましくは15質量%以上30質量%以下含む。エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上に由来する構成単位は、エチレンに由来する構成単位であることが好ましい。
【0028】
炭素原子数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、または、1-オクテンであり、共重合特性、経済性等の観点から、より好ましくは、1-ブテン、または、1-ヘキセンであり、さらに好ましくは、1-ブテンである。また、炭素原子数4~20のα-オレフィンとしては、上記の物質の1種を単独で用いてもよく、上記の物質の2種以上を併用してもよい。
【0029】
プロピレン系重合体の製造方法としては、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒またはメタロセン触媒の存在下で、プロピレンを単独重合する方法、プロピレン以外のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法等が挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせた触媒等が挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi-Mg系触媒、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物などの第三成分とを組み合わせた触媒等が挙げられる。メタロセン触媒としては、例えば、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1つ有する周期表第4族~第6族の遷移金属化合物と助触媒成分とを組み合わせた触媒等が挙げられる。
【0030】
重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒中で行われるスラリー重合法や溶液重合法、溶媒の不存在下で行われる液相重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法等が挙げられる。スラリー重合法および溶液重合法で用いる不活性炭化水素溶媒としては、例えば、重合阻害物質を除去したヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの重合方法による重合は、パッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。プロピレン系多段重合体の重合方法としては、気相重合法を採用することが好ましい。該気相重合法では、上記の重合体成分(A)を重合する第一工程を行い、次いで、得らえた重合体成分(A)の存在下で、上記の共重合体成分(B)を重合する第二工程を行う。
【0031】
重合体成分(A)および共重合体成分(B)における分子量の調整方法としては、例えば、各工程で、分子量調節剤(例えば、水素ガスや金属化合物など)を適切な量で加える方法、重合時の温度・圧力などを調節する方法等が挙げられる。重合体成分(A)および共重合体成分(B)におけるエチレンに由来する構成単位の含有量の調整方法としては、重合時の各工程において、エチレンを適切な量で加える方法等が挙げられる。プロピレン系多段重合体における重合体成分(A)および共重合体成分(B)の質量割合は、例えば、プロピレン系多段重合体の製造時の重合時間、重合槽の大きさ、重合槽中の重合体の保持量、重合温度、重合圧力などにより制御することができる。
【0032】
プロピレン系多段重合体の製造において、残留溶媒、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するためには、例えば、生成したプロピレン系重合体が融解する温度以下の温度で、プロピレン系重合体の乾燥を行ってもよい。乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特開昭55-75410号、特許第2565753号公報に記載された方法が挙げられる。
【0033】
プロピレン系重合体の融点は、耐熱性の観点から、好ましくは120℃以上170℃以下であり、より好ましくは130℃以上170℃以下である。
【0034】
また、プロピレン系重合体の密度は、好ましくは880kg/m3以上910kg/m3以下であり、より好ましくは890kg/m3以上910kg/m3以下である。
【0035】
また、プロピレン系重合体のメルトフローレート(以下では、「MFR」とも記す)は、特に限定されず、例えば、0.1g/10分以上200g/10分以下であってもよく、0.5g/10分以上50g/10分以下であってもよく、1g/10分以上10g/10分以下であってもよく、1g/10分以上5g/10分以下であってもよい。成形性の観点から、プロピレン系重合体のMFRは、好ましくは0.5g/10分以上50g/10分以下である。なお、プロピレン系重合体のMFRは、JIS K7210-1995に規定されたA法に従って、温度230℃、荷重2.16kgで測定できる。
【0036】
また、プロピレン系重合体の分子量分布は、好ましくは2以上6以下であり、より好ましくは2以上4以下である。プロピレン系重合体の分子量分布を上記の範囲とする方法としては、例えば、触媒種や触媒量を調整する方法、重合条件を調整する方法、過酸化物などの分解剤を使用する方法、多段重合や2種以上の重合体をブレンドすることにより異なる分子量の重合体を混合する方法等が挙げられる。なお、分子量分布とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と記載することがある。)により測定される重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)であり、具体的には、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。
【0037】
プロピレン系重合体の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよい。本発明においては、耐熱性の点から、シンジオタクチックまたはアイソタクチックが好ましい。
【0038】
<ポリエチレン>
上記のフィルムに含まれるポリエチレンは、エチレンに由来する構成単位を50質量%超含むエチレン系重合体であり、エチレン単独重合体であってもよく、エチレンに由来する構成単位を50質量%超含むエチレン系共重合体であってもよい。エチレン系共重合体は、エチレンに由来する構成単位を、好ましくは80質量%以上97質量%以下、より好ましくは85質量%以上97質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上97質量%以下含む。また、エチレン系共重合体は、エチレン以外に由来する構成単位を、好ましくは3質量%以上20質量%以下、より好ましくは3質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下含む。エチレン系共重合体に含まれるエチレン以外の構成単位としては、例えば、α-オレフィンに由来する構成単位が挙げられる。エチレン系重合体としては、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(以下では、「エチレン-α-オレフィン共重合体」とも記す)が好ましい。
【0039】
エチレン単独重合体としては、例えば、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合によって生成される高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、所定の触媒を用いて生成される高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)は、繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐構造をもって結合したものである。高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)の密度としては、例えば、910kg/m3以上935kg/m3以下であってもよい。高密度ポリエチレン(HDPE)は、繰り返し単位のエチレンが実質的に分岐を持たずに直鎖状に結合したものである。高密度ポリエチレン(HDPE)の密度としては、例えば、940kg/m3以上970kg/m3以下であってもよい。エチレン系重合体としては、好ましくは高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)である。
【0040】
「エチレン-α-オレフィン共重合体」とは、エチレンに基づく構成単位と、α-オレフィンに基づく構成単位とを有する共重合体である。エチレン-α-オレフィン共重合体は、該共重合体の全質量100質量%に対して、エチレンに基づく構成単位とα-オレフィンに基づく構成単位との合計含有量が95質量%以上であることが好ましい。また、「α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素不飽和二重結合を有する直鎖状または分岐状のオレフィンをいう。
【0041】
エチレン-α-オレフィン共重合体が含むα-オレフィンに基づく構成単位は、炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく構成単位であってもよく、炭素原子数4~20のα-オレフィンに基づく構成単位であってもよく、炭素原子数5~20のα-オレフィンに基づく構成単位であってもよく、炭素原子数6~20のα-オレフィンに基づく構成単位であってもよい。
【0042】
炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または、1-オクテンが好ましく、1-ヘキセン、または、1-オクテンがより好ましい。また、炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、上記の物質の1種を単独で用いてもよく、上記の物質の2種以上を併用してもよい。
【0043】
エチレンに基づく構成単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量100質量%に対して、好ましくは80質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上97質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上97質量%以下である。また、α-オレフィンに基づく構成単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量100質量%に対して、好ましくは3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
【0044】
エチレンに基づく構成単位の含有量は、フィルムのベタツキ抑制、耐熱性の観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100mol%とするとき、好ましくは95mol%以上であり、より好ましくは96mol%以上であり、さらに好ましくは97mol%以上である。この場合、炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく構成単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100mol%とするとき、好ましくは5mol%以下であり、より好ましくは4mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。
【0045】
また、エチレンに基づく構成単位の含有量は、フィルムの柔軟性の観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100mol%とするとき、好ましくは99mol%以下である。この場合、炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく構成単位の含有量は、好ましくは1mol%以上である。
【0046】
エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、エチレン-α-オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-1-オクテン共重合体、または、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体であり、より好ましくは、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、または、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体であり、さらに好ましくは、エチレン-1-ヘキセン共重合体、または、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体である。
【0047】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体に基づく構成単位を有してもよい。エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体としては、例えば、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン、1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン、アクリル酸、アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0048】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有することが好ましい。すなわち、ヒートシールにより、比較的高い剥離強度のシールを形成すると共に、剥離強度の安定性に優れたシールを形成する観点から、ポリエチレンが長鎖分岐を有するエチレン-α-オレフィン共重合体であることが好ましい。長鎖分岐とは、炭素原子数6以上の分岐鎖をいう。また、エチレン-α-オレフィン共重合体は、ヒートシールの剥離性を良好にする観点から、13C-NMRにより測定される炭素原子数6以上の分岐数(以下「NLCB」と記載する)が、炭素原子1000個あたり、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.1以上である。また、ヒートシールによるシールの密封性を高める観点から、NLCBは、炭素原子1000個あたり、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.7以下である。また、エチレン-α-オレフィン共重合体は、13C-NMRにより測定される炭素原子数5の分岐数(以下「Nc5」と記載する)が、炭素原子1000個あたり、好ましくは0.1未満であり、より好ましくは0.05未満であり、さらに好ましくは0.01未満であり、特に好ましくはゼロである。
【0049】
NLCB、Nc5は、気相重合、スラリー重合などの製造方法の選択や、重合触媒の選択、重合温度、重合圧、コモノマーの種類や添加量などの重合条件によって調整することができる。例えば、水素濃度またはエチレン圧を低くすると、エチレン-α-オレフィン共重合体のNLCBが大きくなる。また、プレ重合をすることによりNLCBを増加させることができる。
【0050】
NLCBは、次の方法で求めることができる。具体的には、窓関数にエクスポネンシャルを適用した600MHz、クライオプローブを使用した13C-NMRスペクトルから、5ppm~50ppmに観測されるすべてのピークの総和を1000として、38.09ppm~38.27ppmの付近にピークトップを有するピークのピーク面積をAとする。このAは、炭素原子数4以上の分岐メチン炭素の数に相当する値である。炭素原子数5以下の分岐メチン炭素と炭素原子数6以上の分岐メチン炭素のピークを分離するために、窓関数にガウシャンを適用し、ガウシャンを適用した13C-NMRスペクトルにおいて、38.21ppm~38.27ppmに観測されるピークをB、38.21ppm~38.09ppmに観測されるピークをCとする。そして以下の式(1)より、NLCBを求めた。
NLCB=A×B/(B+C) (1)
【0051】
N
c5は、次の方法で求めることができる。具体的には、窓関数にエクスポネンシャルを適用した
13C-NMRスペクトルにおいて、5ppm~50ppmに観測されるすべてのピークの総和を1000として、32.5ppm~32.7ppmの付近にピークトップを有するピークのピーク面積を求めた。該ピーク面積は、炭素原子数5の分岐メチレン炭素の数(下記構造式中のC
**)に相当する値である。
【化1】
なお、前記炭素原子数5以上の分岐が結合したメチン炭素に由来するピークの位置は、測定装置および測定条件によりずれることがあるため、測定装置および測定条件毎に、標品の測定を行って決定することができる。また、スペクトル解析には、窓関数として、負の指数関数を用いることができる。
【0052】
エチレン系重合体は、易剥離性の観点から、流動の活性化エネルギー(以下では、「Ea」とも記す)が、好ましくは40kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mo1以上であり、さらに好ましくは55kJ/mol以上であり、特に好ましくは60kJ/mol以上である。また、密封性の観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。Eaは、例えば、重合時の水素濃度またはエチレン圧により調整することができ、水素濃度またはエチレン圧を低くすると、Eaが大きくなる。
【0053】
Eaは、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位Pa・sec)の角周波数(単位rad/sec)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃および190℃夫々の温度(T、単位:℃)におけるエチレン系重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度-角周波数曲線毎に、190℃でのエチレン系共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記式(2))を算出する。次に、該一次式の傾きmと下記式(3)とからEaを求める。
ln(aT)=m{1/(T+273.16)}+n (2)
Ea=|0.008314×m| (3)
aT:シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T:温度(単位:℃)
【0054】
上記の計算は、市販の計算ソフトウェアを用いて行うことがき、該計算ソフトウェアとしては、例えば、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などが挙げられる。
【0055】
なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線を、log(Y)=-log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線は、曲線ごとに、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。また、130℃、150℃、170℃および190℃の4点の値から式(2)を最小自乗法で求めるときの相関係数は、0.99以上である。
【0056】
溶融複素粘度-角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製 Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS-800など。)を用い、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5mm~2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1rad/秒~100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は、窒素雰囲気下で行われる。また、測定試料には、予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm)配合する。
【0057】
エチレン系重合体の密度は、好ましくは900kg/m3以上950kg/m3以下であり、耐熱性、ブロッキング性、剥離強度の安定性の観点から、より好ましくは910kg/m3以上940kg/m3以下であり、さらに好ましくは920kg/m3以上930kg/m3以下である。
【0058】
また、エチレン系重合体の密度は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、好ましくは915kg/m3以上であり、より好ましくは918kg/m3以上であり、さらに好ましくは921kg/m3以上であり、特に好ましくは924kg/m3以上である。また、エチレン系重合体の密度は、フィルムのフィッシュアイの発生を抑制する観点から、好ましくは950kg/m3以下であり、より好ましくは945kg/m3以下であり、さらに好ましくは940kg/m3以下であり、特に好ましくは930kg/m3以下である。エチレン系重合体の密度は、一つの態様においては915kg/m3以上950kg/m3以下であってもよく、他の態様においては918kg/m3以上945kg/m3以下であってもよく、さらに他の態様においては921kg/m3以上940kg/m3以下であってもよく、さらに他の態様においては924kg/m3以上930kg/m3以下であてもよい。なお、エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法において、気相重合時のα-オレフィン濃度を調整することにより、調整することができる。また、密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法(水中置換法)に従い求めることができ、具体的には、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。
【0059】
エチレン系重合体のMFRは、好ましくは0.01g/10分以上50g/10分以下である。また、エチレン系重合体のMFRは、ヒートシールの密封性を高める観点から、好ましくは5g/l0分以下であり、より好ましくは3g/l0分以下である。
【0060】
また、エチレン系重合体のMFRは、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、好ましくは0.0005g/10分以上であり、より好ましくは0.001g/10分以上である。また、エチレン系重合体のMFRは、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、好ましくは0.1g/10分以下であり、より好ましくは0.08g/10分以下であり、さらに好ましくは0.05g/10分以下である。エチレン系重合体のMFRは、一つの態様においては0.0005g/10分以上0.1g/10分以下であってもよく、他の態様においては0.001g/10分以上0.08g/10分以下であってもよく、さらに他の態様においては0.003g/10分以上0.05g/10分以下であってもよい。なお、エチレン系重合体のMFRの測定では、エチレン系重合体に酸化防止剤を1000ppm程度(好ましくは、1000ppm)配合した試料を用いる。MFRは、後述するエチレン系重合体の製造方法において、気相重合時の連鎖移動剤濃度を調整することにより、調整することができる。また、MFRは、JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0061】
エチレン系重合体のメルトフローレート比(以下では、MFRRとも記す)は、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるMFRに対する、温度190℃、荷重21.60kgの条件で測定されるMFRの比である。MFRRは、フィルムの成形加工性の観点、特にフィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、例えば、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、17以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。また、エチレン系重合体のMFRRは、フィルムの強度の観点から、例えば、30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、26以下であることがさらに好ましい。エチレン系重合体のMFRRは、一つの態様においては10以上30以下であってもよく、他の態様においては15以上28以下であってもよく、さらに他の態様においては17以上26以下であってもよく、さらに他の態様においては20以上26以下であってもよい。エチレン系重合体のMFRRを求める際には、各MFRの測定において、エチレン系重合体に酸化防止剤を1000ppm程度(好ましくは、1000ppm)配合した試料を用いる。
【0062】
エチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは4.0以上であり、さらに好ましくは5.0以上であり、特に好ましくは6.0以上である。また、フィルムの機械強度の観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは9.0以下であり、より好ましくは8.5以下である。なお、分子量分布(Mw/Mn)とは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。なお、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、重合時の水素濃度または重合温度により調整することができ、水素濃度または重合温度を高くすると、分子量分布(Mw/Mn)が大きくなる。
【0063】
エチレン系重合体は、下記式(4)で定義されるg*が0.70以上0.95以下であることが好ましい。
g*=[η]/([η]GPC×gSCB*) (4)
(式中、[η]は、エチレン系重合体の極限粘度(単位:dl/g)を表し、下記式(4-1)によって定義される。)
(式中、[η]GPCは、下記式(4-2)によって定義される。)
(式中、gSCB*は、下記式(4-3)によって定義される。)
[η]=23.3×log(ηrel) (4-1)
(式中、ηre1は、エチレン系重合体の相対粘度を表す。)
[η]GPC=0.00046×Mv0.725 (4-2)
(式中、Mvは、エチレン系重合体の粘度平均分子量を表す。)
gSCB*=(1-A)1.725 (4-3)
(式中、Aは、エチレン系重合体中の短鎖分岐の含量を測定し、下記式(4-4)によって定義される。)
A={(12×n+2n+1)×y)}/{(1000-2y-2)×14+(y+2)×15+y×13} (4-4)
(式中、nは短鎖分岐の分岐炭素原子数を表し(例えばα-オレフィンとしてブテンを用いた場合はn=2、ヘキセンを用いた場合はn=4)、yはNMRないしは赤外分光より求められる炭素原子1000個あたりの短鎖分岐数を表す。)
なお、g*については、以下の文献を参考にした。Developments in Polymer Characterisation-4,.J.V..Dawkins,.Ed.,.Applied Science,London,.1983,Chapter.I,.「Characterization. of.Long Chain Branching in Polymers」Th.G.Scholte著
【0064】
[η]GPCは、分子量分布がエチレン系重合体と同一の分子量分布であって、かつ、分子鎖が直鎖状であると仮定した重合体の極限粘度(単位:dl/g)を表す。
gSCB*は、エチレン系重合体に短鎖分岐を導入することによって生じるg*への寄与を表す。
式(4-2)は、L.H.Tung著 Journal of Polymer Science,36,130(1959)287-294頁に記載の式を用いた。
【0065】
エチレン系重合体の相対粘度(ηre1)は、次の方法で求めることができる。熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.5質量%含むテトラリン100mlに、エチレン系重合体100mgを135℃で溶解してサンプル溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて前記サンプル溶液と熱劣化防止剤としてBHTを0.5質量%のみを含むテトラリンからなるブランク溶液との降下時間から算出する。エチレン系重合体の粘度平均分子量(Mv)は、下式(4-5)で定義される。式中では、a=0.725とした。
【数1】
【0066】
g*は、長鎖分岐に起因する、溶液中での分子の収縮度を表す指標であり、分子鎖あたりの長鎖分岐を含有する量が多ければ分子鎖の収縮は大きくなり、g*は小さくなる。エチレン系重合体のg*は、易剥離性の観点から、好ましくは0.70以上0.95以下であり、より好ましくは0.75以上0.90以下であり、さらに好ましくは0.75以上0.85以下である。g*が0.95以下であると、長鎖分岐が十分に含まれているため、ヒートシールによるシールの剥離強度が高くなりすぎず、易剥離性に優れる。また、g*が0.70以上であると、結晶を形成したときの分子鎖の広がりが十分であるため、タイ分子の生成確率が高く、また、分子鎖の緩和時間が短く、ヒートシールによるシールの密封性に優れる。
【0067】
エチレン系重合体の極限粘度(以下、[η]と表記する;単位はdl/gである。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、好ましくは1.0dl/g以上であり、より好ましくは1.2dl/g以上であり、さらに好ましくは1.3dl/g以上である。エチレン系重合体の[η]は、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、好ましくは2.0dl/g以下であり、より好ましくは1.9dl/g以下であり、さらに好ましくは1.7dl/g以下である。エチレン系重合体の[η]は、一の態様においては1.0dl/g以上2.0dl/g以下であってもよく、他の態様においては1.2dl/g以上1.9dl/g以下であってもよく、さらに他の態様においては1.3dl/g以上1.7dl/g以下であってもよい。エチレン系重合体の[η]は、テトラリンを溶媒として用い、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定することができ、具体的には、下記の[実施例]に記載の方法で求めることができる。
【0068】
エチレン系重合体は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、温度190℃におけるゼロせん断粘度(以下、η0とも記す)が、好ましくは2×105Pa・sec以上であり、より好ましくは3×105Pa・sec以上であり、さらに好ましくは5×105Pa・sec以上である。エチレン系重合体のη0は、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、好ましくは5×106Pa・sec以下であり、より好ましくは3×106Pa・sec以下であり、さらに好ましくは1×106Pa・sec以下である。エチレン系重合体のη0は、一つの態様においては2×105Pa・sec以上5×106Pa・sec以下であってもよく、他の態様においては3×105Pa・sec以上3×106Pa・sec以下であってもよく、さらに他の態様においては5×105Pa・sec以上1×106Pa・sec以下であってもよい。
【0069】
η0は、下記式(5)で表されるCarreau-Yasudaモデルを非線形最小二乗法により、測定温度190℃におけるせん断粘度(η*;単位はPa・secである。)-角周波数(ω、単位はrad/secである)曲線にフィッティングさせることにより算出される値である。
η*=η0(1+(λω)a)(n-1)/a (5)
λ:時定数(Time constant)
a:幅パラメータ(Breadth parameter)
n:べき乗則インデックス(Power-Law index)
せん断粘度測定は、粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックス社製(Rheometrics社製) Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS800など。)を用い、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、測定試料の厚み:約2.0mm、角周波数:0.1rad/sec~100rad/sec、測定点:ω一桁当たり5点の条件で行われる。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3%~10%の範囲で適宜選択する。測定試料は、150℃の熱プレス機により2MPaの圧力で5分間プレスした後、30℃の冷却プレス機により5分間冷却して、厚さ2mmにプレス成形することにより調製される。
【0070】
<エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法>
エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。オレフィン重合触媒としては、例えば、活性化助触媒成分(以下、成分(I)とも記す)を微粒子状担体に担持させてなる成分(H)と、メタロセン系錯体と、電子供与性化合物と、を接触させて形成されるもの、または、前記成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物と、を接触させて形成されるもの等が挙げられる。具体的には、オレフィン重合触媒としては、前記成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物とを接触させてなる触媒成分の存在下、少量のオレフィンを重合(以下、予備重合と称する。)して得られる予備重合触媒成分を含むことが好ましい。
【0071】
成分(I)としては、亜鉛化合物等が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、ジエチル亜鉛とフッ素化フェノールと水とを接触させることにより得られる化合物等が挙げられる。
【0072】
微粒子状担体としては、50%体積平均粒子径が10μm~500μmである多孔質の物質を用いることができる。50%体積平均粒子径は、光散乱式レーザー回折法により測定される。微粒子状担体としては、例えば、無機物質、有機ポリマー等が挙げられる。無機物質としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土および粘土鉱物等が挙げられる。有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。微粒子状担体は、無機物質からなる微粒子状担体が好ましい。微粒子状担体の細孔容量は、特に限定されず、例えば、0.3ml/g以上10ml/g以下であってもよい。微粒子状担体の比表面積は、特に限定されず、例えば、10m2/g以上1000m2/g以下であってもよい。細孔容量と比表面積は、ガス吸着法により求めることができる。また、細孔容量は、ガス脱着量をBJH法で、比表面積は、ガス吸着量をBET法で解析することにより求めることができる。
【0073】
メタロセン系錯体とは、シクロペンタジエン形アニオン骨格を含む配位子を有する遷移金属化合物である。メタロセン系錯体としては、下記一般式で表される遷移金属化合物、または、そのμ-オキソタイプの遷移金属化合物二量体が好ましい。
L2
aM2X1
b
(式中、M2は周期律表第3~11族もしくはランタノイド系列の遷移金属原子である。L2はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基であり、複数のL2は互いに直接連結されているか、または、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。X1はハロゲン原子、炭化水素基(但し、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を除く)、または、炭化水素オキシ基である。aは2、bは2を表す。)
【0074】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等が挙げられ、好ましくは、トリイソブチルアルミニウム、または、トリノルマルオクチルアルミニウムであり、より好ましくは、トリイソブチルアルミニウムである。
【0075】
電子供与性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリイソブチルアミン、トリノルマルオクチルアミン等が挙げられ、好ましくはトリエチルアミンである。
【0076】
エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法としては、スラリー重合、気相重合法等が挙げられ、好ましくは、連続気相重合法である。スラリー重合法に用いられる溶媒としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒等が挙げられる。連続気相重合法に用いられる気相重合反応装置としては、例えば、流動層型反応槽を有する装置等が挙げられ、好ましくは拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置であり、反応槽内に撹拌翼が設置されていてもよい。
【0077】
オレフィン重合触媒が予備重合触媒成分を含む場合、エチレン-α-オレフィン共重合体の粒子の形成を行う連続重合反応槽に、オレフィン重合触媒(予備重合触媒成分)を供給する方法としては、例えば、アルゴン等の不活性ガス、窒素、水素またはエチレンを用いて水分のない状態でオレフィン重合触媒を供給する方法、または、オレフィン重合触媒を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が挙げられる。
【0078】
エチレン-α-オレフィン共重合体の気相重合の重合温度としては、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体が溶融する温度未満であり、好ましくは0℃以上150℃以下であり、より好ましくは30℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上87℃以下である。エチレン-α-オレフィン共重合体の溶融流動性を調節するために、水素を添加してもよい。水素は、エチレン100mol%に対して、0.01mol%以上1.1mol%以下となるように制御することが好ましい。気相重合中のエチレンに対する水素の比率は、重合中に発生する水素の量および重合中に添加する水素の量によって制御することができる。重合反応槽の混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。オレフィン重合触媒が予備重合触媒成分を含む場合、該オレフィン重合触媒は、有機アルミニウム化合物等の助触媒成分を含んでもよい。
【0079】
本実施形態に係るフィルムは、上記のポリプロピレンとポリエチレンとを溶融混練して製膜することで製造することができる。例えば、本実施形態に係るフィルムは、インフレーションフィルム成形機を用いたインフレーション製膜法(空冷法、水冷法)、Tダイを用いたキャスト製膜法等を用いて製造することができ、空冷インフレーション製膜法を用いて製造することが好ましい。空冷インフレーション製膜法の製膜温度は、190℃以上230℃以下であることが好ましく、ブロー比は1.2以上4.0以下であることが好ましい。また、本実施形態に係るフィルムは、一軸延伸処理や二軸延伸処理等の延伸処理を加えられたものであってもよい。
【0080】
本実施形態に係るフィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤を含んでいてもよい。さらに、本実施形態に係るフィルムは、添加剤として、例えば、酸化防止剤、中和剤、耐候剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等を含んでいてもよい。
【0081】
本実施形態に係るフィルムは、他のシート材と積層して、多層フィルムを形成することができる。該多層フィルムでは、本実施形態に係るフィルムが最外面に位置することが好ましい。この場合、本実施形態に係るフィルムは、多層フィルムのシーラント層として用いることができる。つまり、本実施形態に係るフィルムは、シーラントフィルムとして用いることができる。多層フィルムを構成する他のシート材としては、例えば、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等で形成されたシート材が挙げられる。
【0082】
多層フィルムを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、本実施形態に係るフィルムと、他のシート材とを貼り合わせるラミネーション法が挙げられる。ラミネーション法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法等が挙げられる。
【0083】
本実施形態に係るフィルムをシーラント層として備える多層フィルムは、食品、飲料、調味料、乳等、乳製品、医薬品、半導体製品等電子部品、ペットフード、ペットケア用品、洗剤、トイレタリー用品等を包装する際に用いられる包装フィルム(例えば、包装パウチを形成するフィルム)として用いることができる。
【0084】
なお、本発明に係るフィルム、および、フィルムの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記以外の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、上記の1つの実施形態に係る構成や方法等を上記の他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい。
【実施例0085】
以下、実施例、および、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[測定方法]
実施例および比較例での各項目の数値値は、次の方法に従って求めた。
【0087】
<元素分析>
Zn:試料を硫酸水溶液(濃度1M)に入れた後、超音波を照射して金属成分を抽出した。得られた溶液を、ICP発光分析法により定量した。
F:酸素を充填させたフラスコ中で試料を燃焼させ、生じた燃焼ガスを水酸化ナトリウム水溶液(10%)に吸収させた。得られた水溶液をイオン電極法により定量した。
【0088】
<ポリエチレンのメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)>
JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0089】
<ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)>
JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0090】
<密度(単位:kg/m3)>
密度は、JIS K7112-1980のうち、A法(水中置換法)に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った。
【0091】
<Mw/Mn>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを算出し、MwをMnで除した値を分子量分布(Mw/Mn)とした。
・GPC装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー社製)
・GPCカラム:TSKgelGMH6-HT(東ソー社製)×3本
・測定温度:140℃
・溶媒および移動相:0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
・移動相流速:1.0ml/分
・注入量:300μl
・検出器:示差屈折
・分子量標準物質:標準ポリスチレン
・データ取り込み間隔:2.5秒
【0092】
<極限粘度([η]、単位:dl/g)>
テトラリン溶媒に重合体を溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて135℃にて測定した。
【0093】
<プロピレン系重合体の溶融張力(単位:mN)>
東洋精機社製溶融張力測定機を用いて、プロピレン系重合体組成物のメルトテンションを下記の条件で測定した。
内径9.55mmのシリンダに、長さ8.00mm、内径2.10mmのオリフィスを取り付けた。その後、シリンダにプロピレン系重合体組成物を充填し、ピストンを挿入して190℃で5分間予熱して、プロピレン系重合体組成物を十分に融解させた。その後、5.7mm/分の速度でピストンを降下させ、0.32g/分でオリフィスから溶融して押出されるプロピレン系重合体組成物を15.7m/分で引き取り、プロピレン系重合体組成物にはたらく張力(mN)を張力検知器で測定し、メルトテンションとした。
【0094】
[フィルムの物性評価方法]
実施例および比較例のフィルムの物性は、次の方法に従って評価した。
【0095】
<赤外ATR法によって求められるフィルムのポリプロピレンのピーク強度に対する、ポリエチレンのピーク強度の比(ATR(PE/PP)と称する)(単位:―)>
フーリエ変換赤外分光光度計を用い、減衰全反射法(ATR法)でフィルムのATR(PE/PP)を測定した。測定条件は以下の通りとした。
・装置:日本分光社製 フーリエ変換赤外分光光度計 FT/IR-6200
・ATRユニット:PIKE社製 MIRacle 1回反射ATR
・赤外入射角:45度
・プリズム:ゲルマニウム
・測定領域:700cm-1~4000cm-1
ATR(PE/PP)は下記の式から算出した。760cm-1をベースラインとした際の730cm-1におけるピーク高さをポリエチレンに由来する吸光度(ABS(PE))として算出した。1030cm-1をベースラインとした際の997cm-1におけるピーク高さをポリプロピレンに由来する吸光度(ABS(PP))として算出した。
ATR(PE/PP) = ABS(PE)/ABS(PP)
【0096】
<赤外二色比より算出したポリプロピレンの配向度(単位:―)>
フーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定した。測定条件は以下の通りとした。
・装置:日本分光社製 フーリエ変換赤外分光光度計 FT/IR-6200測定領域:800cm-1~4000cm-1
赤外二色比(D)より、ポリプロピレンの配向度(F)を下記の式から算出した。偏光板がフィルムのMD方向に平行な場合の吸光度をA∥とし、垂直な場合をA⊥とし、DはA∥/A⊥で定義する。吸光度は950cm-1と1030cm-1をベースラインとした時の997cm-1におけるピーク高さを用いて算出した。
F=(D-1)/(D+2)
【0097】
<130℃までに要した融解熱量(ΔH)(単位:J/g)>
示差走査熱量計を用いて、測定した。測定条件は以下の通りとした。
・装置:TA Instruments社製 DSC Q100
・測定開始温度:0℃
・測定終了温度:230℃
・昇温速度:5℃/分
・サンプル質量:5mg
・20℃と200℃でベースラインをとり、20℃~130℃までの融解熱量を算出した。
【0098】
<ヒートシール強度HSS(単位:N/15mm)>
各実施例および各比較例で得られたラミネートフィルムのシール面同士を重ね合わせ、下記シール条件により、ヒートシーラー(テスター産業社製)を用いてTD方向にヒートシールを行った。
・上部シールバー設定温度:180℃、200℃
・下部シールバー設定温度:40℃
・シール時間:1秒
・シール圧力:0.1MPa
・シール巾:10mm
【0099】
得られたサンプルを23℃で24時間以上静置した後、シール幅方向に直交する方向の幅が15mmの試験片を切り出し、10mm×15mmのシール部を有する試験片を得た。切り出された試験片のシール部を、引張試験機を用いて200mm/分の速度で180°剥離することにより、幅15mmあたりのヒートシール強度を測定した。得られたヒートシール強度の最大値を採用した。
【0100】
<エチレン-α-オレフィン共重合体(1)>
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、下記製造例に従って製造した。
【0101】
<製造例1>
・成分(H)の製造
特開2009-79180号公報に記載された実施例1(1)および(2)の成分(A)の調製と同様の方法で、成分(H)を製造した。元素分析の結果、Zn=11質量%、F=6.4質量%であった。
【0102】
・予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積9000Lの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン4.15m3を添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド6.0molを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、製造した成分(H)60.4kgをオートクレーブに添加した。その後、オートクレーブを30℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン5kg、水素(常温常圧)5Lを添加し、続いてトリイソブチルアルミニウムをn-ヘキサンで20wt%に希釈したヘキサン溶液35.1Lを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ60kg/hrと30L/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ159kg/hrと0.54m3/hrでオートクレーブに供給した。合計15.4時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素などをパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り41.1gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.21dl/gであった。その後、得られた予備重合触媒成分を、窒素雰囲気下で、目開き162μmの網を備えた東洋ハイテック株式会社製ハイボルダー内に投入し、微粉の除去を実施することによって、微小な予備重合触媒成分を除去した予備重合触媒成分を得た。
【0103】
・エチレン-α-オレフィン共重合体1-1(LLDPE1-1)の製造
得られた予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-1と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃;重合圧力を2MPa;エチレン100mol%に対する、水素量の平均比を0.33%;エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ブテンのモル比を1.33%、1-ヘキセンのモル比を0.53%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム(LLDPE1-1のパウダー質量に対するトリイソブチルアルミニウムのモル比0.44mol/t)、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比10.2%)、および、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比24%)を連続的に供給した。流動床の総パウダー質量は52.9tを一定に維持した。平均重合時間6.6hrであった。LLDPE1-1のパウダーを、連続式流動床気相重合装置とホッパーとを連結する移送配管を介して、ホッパーに移送した。当該ホッパーに、流量250m3/hrの窒素と流量6L/hrの水を混合して65℃に加熱した混合ガスを投入することで、LLDPE1-1のパウダーに水を接触させた。ホッパー内での水との接触時間は1.3時間であった。水接触後のLLDPE1-1のパウダーを別のホッパーに移送配管を通して移送し、該ホッパーに窒素を流通することでLLDPE1-1のパウダーの乾燥を行った。乾燥したLLDPE1-1のパウダーを、押出機(株式会社神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200℃~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-1のペレットを得た。得られたLLDPE1-1のペレットの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0104】
<製造例2>
・予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積210Lの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン41Lを投入した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド60.9mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に上記製造例1で得られた成分(H)0.60kgを投入し、オートクレーブを31℃まで降温して系内が安定した後、エチレンを0.1kg、水素を0.1L(常温常圧体積)投入し、続いてトリイソブチルアルミニウム240mmolを投入して重合を開始した。エチレンと水素をそれぞれ0.5kg/Hrと1.1L(常温常圧体積)/Hrで連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ2.7kg/Hrと8.2L(常温常圧体積)/Hrで連続供給することによって合計10.0時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素などをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り39.6gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.17dl/gであった。
【0105】
・エチレン-α-オレフィン共重合体1-2(LLDPE1-2)の製造
上記予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-2と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する水素量の平均を0.21%、エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ブテンのモル比を1.36%、1-ヘキセンのモル比を0.59%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、およびトリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比3%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.8hrであった。LLDPE1-2のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200℃~230℃の条件で造粒してLLDPE1-2のペレットを得た。得られたLLDPE1-2のペレットの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0106】
<製造例3>
・予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積210Lの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン41Lを添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド60.9mmolを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、オートクレーブに上記製造例1で得られた成分(H)0.60kgを添加した。その後、オートクレーブを31℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン0.1kg、水素(常温常圧)0.1L添加し、続いてトリイソブチルアルミニウム240mmolを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ0.5kg/hrと1.1L/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ2.7kg/hrと8.2L/hrでオートクレーブに供給した。合計10.0時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素などをパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り39.6gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.17dl/gであった。
【0107】
・エチレン-α-オレフィン共重合体1-3(LLDPE1-3)の製造
得られた予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-3と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する水素量の平均を0.56%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を1.09%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比30%)、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比12%)を連続的に供給した。流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.4hrであった。得られたLLDPE1-3のパウダーを、連続式流動床気相重合装置とホッパーとを連結する移送配管を介して、ホッパーに移送した。当該ホッパーに、常温のメタノールを投入することで、LLDPE1-3のパウダーにメタノールを接触させた。ホッパー内での水との接触時間は1時間であった。メタノール接触後のLLDPE1-3のパウダーを別のホッパーに移送配管を通して移送し、該ホッパーに窒素を流通することでLLDPE1-3のパウダーの乾燥を行った。乾燥したLLDPE1-3のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200℃~230℃の条件で造粒してLLDPE1-3のペレットを得た。得られた該LLDPE1-3のペレットの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0108】
<プロピレン系重合体(PP-1)>
プロピレン系重合体(PP-1)として、ノーブレンS131(住友化学株式会社製、融点が130℃、温度230℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが1.5g/10分)を使用した。
【0109】
<高溶融張力プロピレン系重合体(HMS-PP)>
高溶融張力プロピレン系重合体(HMS-PP)は下記のものを使用した。
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程で、極限粘度が7.18dl/gであるプロピレン単独重合体(HMS-PP-1)を製造し、第二工程で、極限粘度が0.85dl/gであるプロピレン単独重合体(HMS-PP-2)を製造して、プロピレン系多段重合体を得た。得られたプロピレン系多段重合体は、第一工程で製造されたプロピレン単独重合体(HMS-PP-1)の含有量が19質量%、第二工程で製造されたプロピレン単独重合体(HMS-PP-2)の含有量が81質量%であった。このプロピレン系多段重合体100質量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.050質量部、イルガノックス1010(BASF社製)0.2質量部、イルガフォス168(BASF社製)0.025質量部を混合した後、溶融混練して、高溶融張力プロピレン系重合体(HMS-PP)を得た。高溶融張力プロピレン系重合体(HMS-PP)の温度230℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは8.9g/10分であり、溶融張力は2.62gであった。
【0110】
<高密度ポリエチレン(HDPE)>
高密度ポリエチレン(HDPE)としては、G2500(京葉ポリエチレン株式会社製、温度190℃および荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが5.0g/10分、密度962.0kg/m3)を使用した。
【0111】
<エチレン-α-オレフィン共重合体(2)>
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は下記のものを使用した。
・エチレン-α-オレフィン共重合体2-1(LLDPE2-1):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン エクセレンFX FX307(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR3.1g/10分、密度889.1kg/m3、Mw/Mn1.8)
・エチレン-α-オレフィン共重合体2-2(LLDPE2-2):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE FV401(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR3.8g/10分、密度904.0kg/m3、Mw/Mn2.0)
・エチレン-α-オレフィン共重合体2-3(LLDPE2-3):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン エクセレンFX FX402(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR8.0g/10分、密度880.0kg/m3、Mw/Mn1.9)
【0112】
<実施例1>
[インフレーションフィルム成形]
PP-1、LLDPE1-1を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をプラコー社製インフレーションフィルム成形機(プラコー社EXU型の単軸押出機、ダイス(ダイ径125mmφ、リップギャップ2.0mm)、シングルスリットでアイリス付エアリング)を用い、加工温度190℃、押出量10kg/hr、ブロー比1.5の加工条件で、厚み50μmのインフレーションフィルムを成形した。得られたインフレーションフィルムの物性(ATR(PE/PP)、PP配向度、熱融解量(ΔH))を表2に示す。
【0113】
[ラミネートフィルム成形]
康井精機(株)製コーターを用い、脂肪族エステル系コート剤(主剤=三井武田ケミカル(株)「タケラック A-310」、硬化剤=三井武田ケミカル(株)「タケネート A-3」、酢酸エチルをそれぞれ12対1対32の質量比で配合し十分に混合したもの)をポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、商品名「E5102」、厚さ12μm、幅250mm)に塗布し、上記インフレーションフィルムのコロナ処理面と圧着させた後、40℃のオーブンにて48時間加熱し、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの物性(ヒートシール強度(HSS))を表2に示す。
【0114】
<実施例2>
[インフレーションフィルム成形]
PP-1、LLDPE1-2を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をプラコー社製インフレーションフィルム成形機(プラコー社EXU型の単軸押出機、ダイス(ダイ径125mmφ、リップギャップ2.0mm)、シングルスリットでアイリス付エアリング)を用い、加工温度210℃、押出量10kg/hr、ブロー比1.5の加工条件で、厚み50μmのインフレーションフィルムを成形した。得られたインフレーションフィルムの物性(ATR(PE/PP)、PP配向度、熱融解量(ΔH))を表2に示す。
【0115】
[ラミネートフィルム成形]
康井精機(株)製コーターを用い、脂肪族エステル系コート剤(主剤=三井武田ケミカル(株)「タケラック A-310」、硬化剤=三井武田ケミカル(株)「タケネート A-3」、酢酸エチルをそれぞれ12対1対32の質量比で配合し十分に混合したもの)を二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ(株)製、商品名「エンブレム(登録商標) ON-15」、厚さ15μm、幅250mm)に塗布し、上記インフレーションフィルムのコロナ処理面と圧着させた後、40℃のオーブンにて48時間加熱し、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの物性(ヒートシール強度(HSS))を表2に示す。
【0116】
<実施例3>
PP-1、LLDPE1-3を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0117】
<実施例4>
PP-1、LLDPE1-1を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0118】
<比較例1>
PP-1を用いて、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0119】
<比較例2>
PP-1、HMS-PPを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0120】
<比較例3>
PP-1、HDPEを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0121】
<比較例4>
PP-1、LLDPE2-1を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0122】
<比較例5>
PP-1、LLDPE2-1を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0123】
<比較例6>
PP-1、LLDPE2-2を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0124】
<比較例7>
PP-1、LLDPE2-3を表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例2と同様にしてインフレーションフィルムとラミネートフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムとラミネートフィルムの物性を表2に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
<まとめ>
上記表2の結果より、各実施例のフィルムは、各比較例よりもHSSが高く、かつ、「HSS(2)(200℃)-HSS(1)(180℃)」が小さいことが認められる。つまり、本発明に係るフィルムのように、要件(1)~(4)を満たすことで、ヒートシールにより、比較的高い剥離強度のシール部を形成することができると共に、剥離強度の安定性に優れたシール部を形成することができる。