(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080942
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】ドラムウォッシャー用固定治具
(51)【国際特許分類】
C22B 1/00 20060101AFI20230602BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C22B1/00 101
C22B23/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194523
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 涼太
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA05
4K001CA09
4K001DB03
4K001DB14
4K001DB23
4K001DB24
4K001GB12
(57)【要約】
【課題】低コストでかつ簡易な構成を有し、容易にドラムウォッシャーの固定及び固定解除ができるドラムウォッシャー用固定治具を提供する。
【解決手段】ドラムウォッシャー100を補修時に回転を防止するために固定するドラムウォッシャー用固定治具10であって、少なくとも、ドラムウォッシャーの可動部に隣接して設置可能な形状を有する中空の土台部11と、土台部11内に一部分が収納され、土台部11の両端部に回転軸21を取り付けることで、土台部11の両端から回動して上方に傾斜状に立ち上がる一対の支持部材12と、支持部材12を所定の角度で固定する角度固定手段13を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムウォッシャーを補修時に回転を防止するために固定するドラムウォッシャー用固定治具であって、
少なくとも、
ドラムウォッシャーの可動部に隣接して設置可能な形状を有する中空の土台部と、
前記土台部内に一部分が収納され、前記土台部の両端部に回転軸を取り付けることで、前記土台部の両端から回動して上方に傾斜状に立ち上がる一対の支持部材と、
前記支持部材を所定の角度で固定する角度固定手段を有することを特徴とするドラムウォッシャー用固定治具。
【請求項2】
前記所定の角度は、固定時に前記ドラムウォッシャーの回転用ハンドルの持ち手と、地面とのなす角度であることを特徴とする請求項1に記載のドラムウォッシャー用固定治具。
【請求項3】
台座を上から挟み込んで固定する固定部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドラムウォッシャー用固定治具。
【請求項4】
前記ドラムウォッシャーは、湿式製錬プラントにおけるニッケル原料鉱石の篩別に使用されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載のドラムウォッシャー用固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低品位ニッケル鉱を利用するHPALプラントにおいて、洗浄および篩別装置として使用されるドラムウォッシャーの補修時に使用するドラムウォッシャー用固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法として、硫酸を用いた高圧加圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach)が注目されている。この方法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬方法とは異なり、還元および乾燥工程等の乾式工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利となる。また、ニッケル品位を50質量%程度まで向上させたニッケルを含む硫化物(以下、「ニッケル硫化物」ともいう)を得ることが出来るという利点も有している。
【0003】
低品位ニッケル鉱を利用するHPALプラントにおいては、原料であるニッケル原料鉱石が鉱山から運搬、供給される。この中には大粒径鉱石が含まれており、ポンプ等で流送する際に障害となる。また、大粒径鉱石のニッケル品位は低く、浸出もこの鉱石の表面のみとなるため、浸出率が低く除去する必要がある。その為、HPALプラント向けにニッケル原料鉱石を調製するニッケル原料調製工程では大粒径鉱石を除去するため、洗浄、および篩別装置が設置されている。
【0004】
洗浄および篩別装置としては、大粒径鉱石を除去するドラムとトロンメルから構成されるドラムウォッシャーが使用される。なお、ドラムウォッシャーは廃棄物の洗浄にも広く用いられている。トロンメルは、横向き(軸芯が水平または水平に近い傾斜状態)に設置される円錐台筒形又は円筒形の篩網を備え、この篩網を軸芯まわりに回転駆動することにより、篩網に投入された分級対象物の分級処理(種々の大きさの分級対象物をその大きさによって分ける処理)を行う装置である。このようなトロンメルの用途の一つとして、ニッケル酸化鉱石の分級処理を行うものがある。
【0005】
例えば、特許文献1では、ニッケル原料鉱石を調製するのに解砕や分級する際の効率が大幅に低下することを防止するため、トロンメルの内面のトロンメル回転軸に対する垂直断面の同一円周上に、所定の要件を満足する突起物が提案されている。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたトロンメルをHPALプラントで使用した場合に、ドラムから排出または回転により鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石が持ち上げられ、回転の途中で落下する大粒径鉱石の衝撃により、トロンメルのスクリーンが磨耗、または破損し、操業中の補修が必要となる。
【0007】
ドラムウォッシャー内部での補修時は、溶接等の作業性を考慮して、断面方向から見て下側の位置に在る部品の補修を実施するが、作業の進捗に合わせて都度ドラムウォッシャーを回転させ、ドラム停止位置を順次変えながら補修を進めていく。ドラムウォッシャー内部の損耗した部品を交換する過程で、部品を取り外していくとドラムの重量が偏り、ドラムウォッシャー本体が自然に回転してしまう恐れがある。そのため、安全策として、位置合わせの都度ドラムの固定解除および再固定を繰り返す必要がある。
【0008】
ドラムの固定には、従来、駆動系に付属するブレーキ装置を使う方法や、タイヤと受けローラ(サポーティングローラ)に木製の矢(くさび)を打ち込んで固定する方法が良く行われている。しかしながら、ブレーキ装置が無い場合、ブレーキ装置を追加設置するには多額の費用が掛かり、また設置後はメンテナンス費用が掛かってしまうという問題がある。また、木製の矢を打ち込んで固定する場合、強く打ち込み過ぎて矢がタイヤと受けローラ間に噛み込み過ぎると、矢を外すのが困難になる場合がある。その際は大ハンマーで打撃して矢を外すことになり、挟まれ等の安全上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、低コストでかつ簡易な構成を有し、容易にドラムウォッシャーの固定及び固定解除ができるドラムウォッシャー用固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、ドラムウォッシャーを補修時に回転を防止するために固定するドラムウォッシャー用固定治具であって、少なくとも、ドラムウォッシャーの可動部に隣接して設置可能な形状を有する中空の土台部と、土台部内に一部分が収納され、土台部の両端部に回転軸を取り付けることで、土台部の両端から回動して上方に傾斜状に立ち上がる一対の支持部材と、支持部材を所定の角度で固定する角度固定手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様によれば、一対の支持部材を回動させて傾斜状に立ち上がらせ、ドラムウォッシャーのハンドル部分を回らないように固定することにより、低コストでかつ簡易な構成を有し、容易にドラムウォッシャーの固定及び固定解除ができるドラムウォッシャー用固定治具とすることができる。
【0013】
このとき、本発明の一態様では、所定の角度は、固定時にドラムウォッシャーの回転用ハンドルの持ち手と、地面とのなす角度であるとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、ドラムウォッシャーの回転用ハンドルに対して、固定治具の支持部材を隙間なく当接させることができるため、より強固にドラムウォッシャーを固定することができる。
【0015】
また、本発明の一態様では、台座を上から挟み込んで固定する固定部をさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
固定部を備えることで、地面以外の台座上に固定治具を確実に固定することができるようになる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記ドラムウォッシャーは、湿式製錬プラントにおいてニッケル原料鉱石を篩別するのに使用されてもよい。
【0018】
本発明の一態様にかかるドラムウォッシャー用固定治具は、HPALプラントで使用するニッケル原料鉱石を篩別するドラムウォッシャーに好ましく適用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低コストでかつ簡易な構成を有し、容易にドラムウォッシャーの固定及び固定解除ができるドラムウォッシャー用固定治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法の工程図である。
【
図2】
図2は、ドラムウォッシャーの概略説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具を示した斜視図である。
【
図4】
図4(A)~(E)は、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具を用いてドラムウォッシャーを固定する過程を示した概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具を用いてドラムウォッシャーを固定した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0022】
[1.概要]
本発明の一実施形態にかかるドラムウォッシャー用固定治具は、主にニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、ニッケル原料鉱石を篩別するドラムウォッシャーの補修時にドラムが回転しないよう固定する際に使用される。その構成部材や組み立てについては明細書の後半の[2.ドラムウォッシャー用固定治具]で説明するが、その適用対象であるドラムウォッシャーやドラムウォッシャーの用途について明細書の前半でまず説明する。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、例えば高圧酸浸出法(HPAL法)を用いて、ニッケル酸化鉱石からニッケルを浸出させて回収する製錬プロセスである。なお、本発明の一実施形態にかかるドラムウォッシャー用固定治具は、必ずしもニッケル酸化鉱の湿式製錬方法におけるドラムウォッシャーの固定のみに限定されるわけではなく、また、ドラムウォッシャー以外にも、ハンドルを回転させることにより装置本体を回転させることができる装置であればその固定に適用することが可能である。
【0023】
図1は、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法の工程図である。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、
図1に示すように、ニッケル酸化鉱石をスラリー化する鉱石スラリー化工程S1と、鉱石スラリーに含まれる水分を除去して鉱石成分を濃縮する鉱石スラリー濃縮工程S2と、製造された鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S3と、得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣(浸出残渣)を分離してニッケルと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程S4と、浸出液に石灰石を中和剤として添加することで浸出液のpHを調整して不純物元素を含む中和澱物を分離しニッケルを含む中和終液を得る中和工程S5と、中和終液に硫化剤を添加することでニッケルを含む硫化物(ニッケル硫化物)を生成させる硫化工程S6とを有する。
【0024】
さらに、この湿式製錬方法では、固液分離工程S4にて分離された浸出残渣や硫化工程S6にて排出された貧液を回収して無害化する最終中和工程S7を有する。この最終中和工程S7は、石灰石を中和剤として用いた第1段階の中和処理(第1の最終中和工程)と、消石灰を中和剤として用いた第2段階の中和処理(第2の最終中和工程)とからなる段階的な中和処理を行う。このような2段階の中和処理を施すことによって、中和処理残渣が生成され、テーリングダムに貯留される(テーリング残渣)。
【0025】
HPALプラントにおいて、鉱石スラリー化工程S1でニッケル原料鉱石から鉱石スラリーを得る過程で、大粒径鉱石を除去するのに、洗浄装置が設置されている。洗浄装置は、上述した浸出工程S3において鉱石を酸浸出に供するための、ニッケル原料鉱石を選別する機能を有するものである。この洗浄装置は、ドラムウォッシャー(ドラム型洗浄機)と篩別機とから構成されるものである。ドラムウォッシャーは、ニッケル原料鉱石を水で洗浄することにより、鉱石スラリー内のニッケル品位を高める機能を有する。
【0026】
図2は、ドラムウォッシャーの概略説明図である。ドラムウォッシャー100は、
図2に示すように、ドラム110とトロンメル120とを備え、ドラム110のトロンメル120との連結側には、回収羽根111が設けられている。ドラム110は、ニッケル酸化鉱石を解砕し、レパルプし(液に解きほぐし)て鉱石スラリーSとする機能を有する。回収羽根111は、鉱石スラリーSに含まれる鉱石をドラム110内から掻き揚げる機能を有する。トロンメル120は、鉱石スラリーSに含まれる鉱石を篩別する機能を有する。
【0027】
ドラムウォッシャー100では、ドラム110の入口側(上流側)に設けられた投入口(不図示)から水およびニッケル酸化鉱石を供給し、ドラム110内において大粒径鉱石から必要なニッケル原料鉱石を水でスラリー状にして、大型分級装置であるトロンメル120に送り、このトロンメル120のスクリーンで鉱石スラリーSに含まれる粒径25mm以上の鉱石を除去する。さらに、トロンメル120のスクリーンの下に配置された篩別機により、スクリーンを通過した鉱石スラリーSに含まれる粒径1.4mm以上の鉱石を除去する。
【0028】
そのため、ドラム110より出口側(下流側)には、鉱石スラリーSと大粒径鉱石を篩い分けするために、トロンメル120という大型分級装置が設置されている。このトロンメル120のスクリーンは、円錐台筒状または円筒状からなり、トロンメル120は、ドラム110と連結されることでドラム110と一緒に回転しつつ装入物を篩別することができる構成となっている。
【0029】
ドラム110から送り出される鉱石スラリーSは、ドラム110の連結部付近に設置された堰(不図示)からオーバーフローし、トロンメル120に移送される。ここで、回収羽根111をドラム110に設けたことにより、ドラム110の底部から鉱石が掻き揚げられるので、ドラム110からトロンメル120へ鉱石スラリーに含まれる鉱石が滞りなく移送される。その結果、鉱石含有率が安定した鉱石スラリーが得られるうえ、ドラム110内に大粒径鉱石が滞留されにくくなることから、ドラム110自体の磨耗も抑制でき、ドラム110の駆動に要するエネルギーも軽減される。
【0030】
しかしながら、鉱石スラリーSに含まれる大粒径鉱石が回収羽根111によってトロンメル120に移送された場合、この大粒径鉱石がトロンメル120のスクリーンへ落下する動きとなって衝撃が非常に大きく、短期間でスクリーンの磨耗や損傷が顕著となる。したがって、ドラム110内部の耐摩耗ライナーや、回収羽根111(リフター)及び、トロンメル120のスクリーンについては、定期的な補修が必要となる。
【0031】
上述したように、ドラムウォッシャー100内部での補修時は、安全策として、位置合わせの都度ドラム110の固定、固定解除および再固定を繰り返す必要がある。ドラムウォッシャー100は、一般にモーター駆動によりドラム110を回転させているが、人による操作も可能とするために減速機軸に取り付け可能な回転用ハンドル(手回し用ハンドル)を備えている。
【0032】
そこで、本発明者は、ドラムウォッシャーの回転用ハンドルを固定することができる固定治具を開発することで、既知の方法よりも容易かつ経済的にドラムウォッシャーの固定及び固定解除ができることに着目し、本発明を完成した。
【0033】
[2.ドラムウォッシャー用固定治具]
次に、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具について図面を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具を示した斜視図である。本発明の一態様は、ドラムウォッシャー100を補修時に回転を防止するために固定するドラムウォッシャー用固定治具10であって、少なくとも、ドラムウォッシャーの可動部に隣接して設置可能な形状を有する中空の土台部11と、土台部11内に一部分が収納され、土台部11の両端部に回転軸21を取り付けることで、土台部11の両端から回動して上方に傾斜状に立ち上がる一対の支持部材12と、支持部材12を所定の角度で固定する角度固定手段13を有する。以下、各構成要素について説明する。
【0034】
土台部11は、ドラムウォッシャー用固定治具10をドラムウォッシャー100の可動部に隣接して設置可能な形状を有する。土台部11は、例えば、
図3に示すような、上部が開口し、内部に空間を有する中空の筐体とすることができる。ドラムウォッシャー用固定治具10の固定箇所は、例えば、ドラムウォッシャー100に設置された回転用ハンドル50の下方とする。土台部11には、適宜、人が持ち上げて運搬するための持ち手22や、後述する固定部23などを設けておいてもよい。
【0035】
支持部材12は、土台部11内に一部分が収納され、土台部11の両端部に回転軸21を取り付けることで、土台部11の両端から回動して上方に傾斜状に立ち上がる部材である。支持部材12は、
図3に示すように、土台部11の両端付近にそれぞれ設けられるため一対(2個)の部材12A,12Bとなる。なお、支持部材12は、土台部11内に完全に収納されている必要はなく、
図3に示すように、一部が土台部11の上面から出ているような状態でも構わない。
【0036】
回転軸21は、支持部材12を回動させて上方に傾斜状に立ち上がらせる際に回転の軸となる部材である。回転軸21は、一例として、
図3に示すように、土台部11の端部と支持部材12の端部にボルト穴を設けておいて、ボルトとナットで締結することで支持部材12を回動可能としてもよい。もちろん、ボルトとナットの例のみに限定されるわけではなく、例えば支持部材12に突起部(回転軸)を設けておき土台部11にL字溝を切って突起部を直角にはめ込むようにする等、支持部材12が土台部11に対して回動可能な構成であれば特に限定はされない。
【0037】
角度固定手段13は、支持部材12を所定の角度で固定する。例えば、
図3や
図4に示すように、一端側が土台部11に固定され、他端側をボルト等で支持部材12に固定する部材とすることにより、支持部材12と土台部11とを連結して固定することができる。例えば、角度固定手段13の長さや、土台部11や支持部材12との固定位置を可変とすることによって、支持部材12を傾斜状に立ち上げて固定する際の角度を調整できるような構成となっていることが好ましい。具体的に、支持部材12または角度固定手段13にボルト用の穴を複数設けることにより、固定位置を可変とすることができるが、これに限定されない。角度固定手段13(13A,13B)も、支持部材12(12A,12B)と同数(一対)備えられていることが好ましい。
【0038】
また、本発明の一態様では、ドラムウォッシャー用固定治具10は、固定部23をさらに備えるようにしてもよい。固定部23は、土台部11の下面に設けられ、例えば、地面の上に設置する場合には、ゴムなどでできた滑り止め用の部材を取り付けてもよいし、台座上に載置する場合には、
図3に示すように、脚状の部材を載置する台座の幅と同じ間隔で形成して、台座を上から挟み込んで固定してもよい。
図3では台座を上から挟むために固定部23が下向きに突き出しているが、台座を横から挟み込んで固定する場合は固定部23は横向きに突き出してもよい。これらのような固定部23を設けることで、ドラムウォッシャー100を固定する際に、ドラムウォッシャー用固定治具10が動かないように、確実に固定することができる。
【0039】
本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具10を構成する各部材の材料は特に限定はされないが、一例として、形鋼を利用することができる。例えば、
図3に示すように、溝形鋼や山形鋼を適宜組みあわせた構成とすることができるため、低コストでかつ簡易な構成とすることができる。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具10の具体的な固定方法について説明する。
図4(A)~(E)は、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具を用いてドラムウォッシャーを固定する過程を示した概略図である。
【0041】
上述したように、ドラムウォッシャー100を構成するドラム110は、減速機軸40に取り付け可能な回転用ハンドル50(手回し用ハンドル)を備えている。そのため、まず、この回転用ハンドル50(手回し用ハンドル)を使用し、ドラムウォッシャーを固定するための位置合わせを行う(
図4(A))。このとき、回転用ハンドル50の持ち手51と、地面とのなす角度θが45°となるように調整しておくことが好ましい。
【0042】
次に、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具10を設置する。設置する位置は、回転用ハンドル50の下方であり、支持部材12を立ち上げた際に、回転用ハンドル50の持ち手部分51が支持部材12に当接する位置となる必要がある。すなわち、回転用ハンドル50の持ち手部分51が地面となす角度(θ)と、支持部材12が地面となす角度が同じになるように固定することが望ましい。ドラムウォッシャー用固定治具10は地面に設置してもよいが、高さが足りない場合には、
図4(B)に示すようなカバー台座45を設置して高さを調節してもよい。また、この時ドラムウォッシャー用固定治具10が動かないように、ドラムウォッシャー用固定治具10の土台部11の下面に固定部23を備えておくことが好ましい。
【0043】
次に、ドラムウォッシャー用固定治具10の一方の支持部材12Aを回動させて傾斜状に立ち上げ、支持部材12Aをドラムウォッシャー100に備えられた回転用ハンドル50の持ち手部分51に当接させる(
図4(C))。そして、支持部材12Aが回転用ハンドル50の持ち手部分51に当接した状態で角度固定手段13Aを用いて支持部材12Aを傾斜した状態で固定する(
図4(D))。
図4(D)では、角度固定手段13Aを立ち上げ、端部を支持部材12Aにボルト締めすることにより固定している。最後に、他方側の支持部材12Bについても同様に傾斜状に立ち上げて回転用ハンドル50の持ち手部分51に当接させ、角度固定手段13Bにより固定する(
図4(E))。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具を用いてドラムウォッシャーを固定した状態を示した斜視図である。
図5に示すように、ドラムウォッシャー用固定治具10の両端部から傾斜状に立ち上がった支持部材12A,12Bにより、回転用ハンドル50は、右回り、左回りの両方の回転方向に対して規制されるため、ドラムウォッシャー100が回転しないように固定することができる。
【0045】
なお、ドラムウォッシャー100の固定を解除する際には、上述した
図4(A)~(E)の手順を逆に行えばよい。すなわち、支持部材12と角度固定手段13とを連結しているボルトを緩めて外し、支持部材12を回動させて土台部11内に収納することにより、回転用ハンドル50の持ち手部分51の固定を解除することができる。このように、本発明の一実施形態に係るドラムウォッシャー用固定治具10を用いれば、低コストでかつ簡易な構成により、容易にドラムウォッシャーの固定及び固定解除ができる。
【0046】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0047】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ドラムウォッシャー用固定治具の構成も本発明の一実施形態及び実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ドラムウォッシャー用固定治具、11 土台部、12(12A,12B) 支持部材、13(13A,13B) 角度固定手段、21 回転軸、22 持ち手、23 固定部、40 減速機軸、45 カバー台座、50 回転用ハンドル、51 持ち手、100 ドラムウォッシャー、110 ドラム、111 回収羽根(リフター)、120 トロンメル、S 鉱石スラリー、θ 回転用ハンドルの持ち手と地面とのなす角度