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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081016
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】基板搬送装置及び基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194651
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新藤 健弘
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA15
5F131BA19
5F131BA37
5F131BB03
5F131BB22
5F131DB02
5F131DB72
5F131DB76
5F131DC18
5F131HA09
5F131HA12
5F131KA23
5F131KA47
5F131KA54
5F131KA72
5F131KB38
5F131KB58
(57)【要約】
【課題】搬送精度を向上する基板搬送装置及び基板搬送方法を提供する。
【解決手段】搬送室に設けられ、コイル及びホール素子を有するタイル形状ユニットと、永久磁石を有し、前記タイル形状ユニット上を移動して基板を搬送する搬送ユニットと、前記ホール素子の温度を検出する温度センサと、前記ホール素子の温度及び前記ホール素子の検出値に基づいて前記搬送ユニットの位置を推定する制御部と、を備える、基板搬送装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送室に設けられ、コイル及びホール素子を有するタイル形状ユニットと、
永久磁石を有し、前記タイル形状ユニット上を移動して基板を搬送する搬送ユニットと、
前記ホール素子の温度を検出する温度センサと、
前記ホール素子の温度及び前記ホール素子の検出値に基づいて前記搬送ユニットの位置を推定する制御部と、を備える、
基板搬送装置。
【請求項2】
前記搬送室は、前記搬送ユニットの位置合わせを行う精度要求領域を有し、
前記温度センサは、前記精度要求領域の前記ホール素子の温度を検出する、
請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記温度センサの検出値に基づいて前記タイル形状ユニットの温度分布を推定し、
推定した前記温度分布に基づいて、前記ホール素子の温度を推定する、
請求項1または請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記コイルの通電量及び前記温度センサの検出値に基づいて前記タイル形状ユニットの温度分布を推定し、
推定した前記温度分布に基づいて、前記ホール素子の温度を推定する、
請求項1または請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
温度センサは、前記タイル形状ユニット内に設けられた熱電対である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
搬送室に設けられ、コイル及びホール素子を有するタイル形状ユニットと、
永久磁石を有し、前記タイル形状ユニット上を移動して基板を搬送する搬送ユニットと、
前記ホール素子の検出値に基づいて前記搬送ユニットの位置を推定する制御部と、を備え、
前記搬送室は、前記搬送ユニットの位置合わせを行う精度要求領域を有し、
前記精度要求領域の前記搬送ユニットの位置を検出する位置センサを備える、
基板搬送装置。
【請求項7】
前記位置センサは、レーザ変位計である、
請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
搬送室に設けられ、コイル及びホール素子を有するタイル形状ユニットと、永久磁石を有し、前記タイル形状ユニット上を移動して基板を搬送する搬送ユニットと、前記ホール素子の温度を検出する温度センサと、を備える、基板搬送装置の基板搬送方法であって、
前記ホール素子の温度及び前記ホール素子の検出値に基づいて前記搬送ユニットの位置を推定し、前記搬送ユニットを位置合わせする、
基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送室内に設けられた平面モータ上で磁気浮上し、基板を搬送する搬送ユニットを備える基板搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-86986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、搬送精度を向上する基板搬送装置及び基板搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、搬送室に設けられ、コイル及びホール素子を有するタイル形状ユニットと、永久磁石を有し、前記タイル形状ユニット上を移動して基板を搬送する搬送ユニットと、前記ホール素子の温度を検出する温度センサと、前記ホール素子の温度及び前記ホール素子の検出値に基づいて前記搬送ユニットの位置を推定する制御部と、を備える、基板搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、搬送精度を向上する基板搬送装置及び基板搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る基板処理システムの一例の構成を示す平面図。
図2】一実施形態に係る搬送ユニットの一例を示す斜視図。
図3】基板搬送装置の駆動原理を説明する斜視図。
図4】温度センサの配置を示す平面図の一例。
図5】精度要求領域におけるタイル内の温度センサの配置を説明する平面図の一例。
図6】制御部の機能ブロック図の一例。
図7】載置台に基板を載置する際の搬送ユニットの位置合わせを説明する平面図の一例。
図8】載置台に基板を載置する際の搬送ユニットの位置合わせを説明する平面図の他の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
<基板処理システム100>
一実施形態に係る基板処理システム100の全体構成の一例について、図1を用いて説明する。図1は、一実施形態に係る基板処理システム100の一例の構成を示す平面図である。
【0010】
図1に示す基板処理システム100は、クラスタ構造(マルチチャンバタイプ)のシステムである。基板処理システム100は、複数の処理室110と、真空搬送室120と、ロードロック室130と、大気搬送室140と、ロードポート150と、制御部160と、を備えている。なお、図1において、真空搬送室120の長手方向をX方向とし、真空搬送室120の短手方向(幅方向)をY方向とし、真空搬送室120の高さ方向をZ方向として説明する。
【0011】
処理室110は、所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にて半導体ウェハ(以下、「基板W」ともいう。)に所望の処理(エッチング処理、成膜処理、クリーニング処理、アッシング処理等)を施す。処理室110は、真空搬送室120に隣接して配置される。処理室110と真空搬送室120とは、ゲートバルブ112の開閉により連通する。処理室110は、基板Wを載置する載置台111を有する。なお、処理室110における処理のための各部の動作は、制御部160によって制御される。
【0012】
真空搬送室120は、ゲートバルブ112,132を介して、複数の室(処理室110、ロードロック室130)と連結され、所定の真空雰囲気に減圧されている。また、真空搬送室120の内部には、基板Wを搬送する基板搬送装置125が設けられている。基板搬送装置125は、真空搬送室120に配置される平面モータ10と、平面モータ10上を移動可能な複数の搬送ユニット30(30A,30B)と、を有する。搬送ユニット30は、平面モータ10上を移動可能なムーバー31と、基板Wを保持することが可能に構成されたアーム32と、を有する。基板搬送装置125は、ゲートバルブ112の開閉に応じて、処理室110と真空搬送室120との間で基板Wの搬入及び搬出を行う。また、基板搬送装置125は、ゲートバルブ132の開閉に応じて、ロードロック室130と真空搬送室120との間で基板Wの搬入及び搬出を行う。なお、基板搬送装置125の動作、ゲートバルブ112,132の開閉は、制御部160によって制御される。なお、基板搬送装置125(平面モータ10、搬送ユニット30)については、図2から図4を用いて後述する。
【0013】
また、真空搬送室120内には、搬送ユニット30の移動に際して、高い位置合わせ精度を求められる精度要求領域200(図1において、二点鎖線で示す。)を有している。例えば、搬送ユニット30が処理室110の載置台111に基板Wを受け渡す及び/又は載置台111から基板Wを受け取る際の搬送ユニット30の位置は、高い位置合わせ精度を求められる精度要求領域200となる。搬送ユニット30がロードロック室130の載置台131に基板Wを受け渡す及び/又は載置台111から基板Wを受け取る際の搬送ユニット30の位置を、精度要求領域200としてもよい。
【0014】
一方、真空搬送室120内において、精度要求領域200と他の精度要求領域200とを接続する搬送領域210(真空搬送室120内において精度要求領域200以外の領域)は、精度要求領域200ほどの搬送ユニット30の位置合わせ精度は求められない領域である。
【0015】
ロードロック室130は、真空搬送室120と大気搬送室140との間に設けられている。ロードロック室130は、基板Wを載置する載置台131を有する。ロードロック室130は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。ロードロック室130と真空雰囲気の真空搬送室120とは、ゲートバルブ132の開閉により連通する。ロードロック室130と大気雰囲気の大気搬送室140とは、ドアバルブ133の開閉により連通する。なお、ロードロック室130内の真空雰囲気または大気雰囲気の切り替えは、制御部160によって制御される。
【0016】
大気搬送室140は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室140の内部には、基板Wを搬送する搬送装置(図示せず)が設けられている。搬送装置(図示せず)は、ドアバルブ133の開閉に応じて、ロードロック室130と大気搬送室140との間で基板Wの搬入及び搬出を行う。なお、搬送装置(図示せず)の動作、ドアバルブ133の開閉は、制御部160によって制御される。
【0017】
また、大気搬送室140の壁面には、ロードポート150が設けられている。ロードポート150は、基板Wが収容されたキャリア(図示せず)又は空のキャリアが取り付けられる。キャリアとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。
【0018】
搬送装置(図示せず)は、ロードポート150に取り付けられたキャリアに収容された基板Wを取り出して、ロードロック室130の載置台131に載置することができる。また、搬送装置(図示せず)は、ロードロック室130の載置台131に載置された基板Wを取り出して、ロードポート150に取り付けられたキャリアに収容することができる。
【0019】
制御部160は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)を有する。制御部160は、HDDに限らずSSD(Solid State Drive)等の他の記憶領域を有してもよい。HDD、RAM等の記憶領域には、プロセスの手順、プロセスの条件、搬送条件が設定されたレシピが格納されている。
【0020】
CPUは、レシピに従って各処理室110における基板Wの処理を制御し、基板Wの搬送を制御する。HDDやRAMには、各処理室110における基板Wの処理や基板Wの搬送を実行するためのプログラムが記憶されてもよい。プログラムは、記憶媒体に格納して提供されてもよいし、ネットワークを通じて外部装置から提供されてもよい。
【0021】
次に、基板処理システム100の動作の一例について説明する。ここでは、基板処理システム100の動作の一例として、ロードポート150に取り付けられたキャリアに収容された基板Wを処理室110で処理を施し、ロードポート150に取り付けられた空のキャリアに収容する動作に沿って説明する。なお、動作の開始時点において、ゲートバルブ112,132、ドアバルブ133は閉じており、ロードロック室130内は大気雰囲気となっている。
【0022】
制御部160は、ドアバルブ133を開ける。制御部160は、大気搬送室140内の搬送装置を制御して、ロードポート150のキャリアから基板Wを取り出し、ロードロック室130の載置台131に載置する。基板Wがロードロック室130の載置台131に載置され、搬送装置がロードロック室130から退避すると、制御部160は、ドアバルブ133を閉じる。
【0023】
制御部160は、ロードロック室130の排気装置(図示せず)を制御して室内の空気を排気し、ロードロック室130を大気雰囲気から真空雰囲気へと切り替える。
【0024】
次に、ロードロック室130の載置台131に載置された基板Wを、処理室110に搬送して、載置台111に載置する。具体的には、制御部160は、ゲートバルブ132を開ける。制御部160は、後述する基板搬送装置125を制御して、予め設定された受渡位置までアーム32をロードロック室130に挿入し、ロードロック室130の載置台131に載置された基板Wを保持して、真空搬送室120へと搬送する。アーム32がロードロック室130から退避すると、制御部160は、ゲートバルブ132を閉じる。
【0025】
制御部160は、搬送先の処理室110のゲートバルブ112を開ける。制御部160は、基板搬送装置125を制御して、予め設定された受渡位置までアーム32を処理室110に挿入し、保持している基板Wを処理室110の載置台111に載置する。アーム32が処理室110から退避すると、制御部160は、ゲートバルブ112を閉じる。
【0026】
制御部160は、処理室110を制御して、基板Wに所望の処理を施す。
【0027】
基板Wの処理が終了すると、処理室110の載置台111に載置された基板Wを、ロードロック室130に搬送して、載置台131に載置する。具体的には、制御部160は、ゲートバルブ112を開ける。制御部160は、基板搬送装置125を制御して、予め設定された受渡位置までアーム32を処理室110に挿入し、処理室110の載置台111に載置された基板Wを保持して、真空搬送室120へと搬送する。アーム32が処理室110から退避すると、制御部160は、ゲートバルブ112を閉じる。
【0028】
制御部160は、ゲートバルブ132を開ける。制御部160は、基板搬送装置125を制御して、予め設定された受渡位置までアーム32をロードロック室130に挿入し、保持している基板Wをロードロック室130の載置台131に載置する。アーム32がロードロック室130から退避すると、制御部160は、ゲートバルブ132を閉じる。
【0029】
制御部160は、ロードロック室130のガス供給装置(図示せず)を制御して室内に例えば清浄空気を供給し、ロードロック室130を真空雰囲気から大気雰囲気へと切り替える。
【0030】
制御部160は、ドアバルブ133を開ける。制御部160は、搬送装置(図示せず)を制御して、ロードロック室130の載置台131に載置された基板Wを取り出し、ロードポート150のキャリアに収容する。基板Wがロードロック室130の載置台131から取り出され、搬送装置(図示せず)がロードロック室130から退避すると、制御部160は、ドアバルブ133を閉じる。
【0031】
なお、基板処理システム100において、基板搬送装置125は、ロードロック室130の載置台131に載置された基板Wを処理室110の載置台111に搬送し、処理済の基板Wを処理室110の載置台111からロードロック室130の載置台131に搬送する構成を例に説明したが、これに限られるものではない。基板搬送装置125は、一の処理室110の載置台111に載置された基板Wを他の処理室110の載置台111に搬送する構成であってもよい。
【0032】
<基板搬送装置125>
次に、基板搬送装置125について、更に説明する。基板搬送装置125は、真空搬送室120に配置される平面モータ10と、平面モータ10上を移動可能な搬送ユニット30と、を有する。なお、後述する図4に示すように、平面モータ10は、複数のタイル形状ユニット11(図3参照)が真空搬送室120内に配列されて形成される。
【0033】
図2は、一実施形態に係る搬送ユニット30の一例を示す斜視図である。搬送ユニット30は、ムーバー31と、アーム32とを有する。ムーバー31は、平面モータ10上を磁気浮上して移動することが可能に構成されている。アーム32は、一端側がムーバー31に固定され、他端側に基板Wを保持することが可能に構成されている。また、搬送ユニット30は、真空搬送室120内に複数台設けられていてもよい。
【0034】
平面モータ10のタイル形状ユニット11及び搬送ユニット30のムーバー31について、図3を用いて更に説明する。図3は、基板搬送装置125の駆動原理を説明する斜視図である。
【0035】
平面モータ10のタイル形状ユニット11には、非磁性体金属または樹脂で形成される筐体14内に複数のコイル15が配列されている。コイル15は、電流が供給されることにより、磁場を発生する。制御部160(図1参照)は、各コイル15に通電する電流値を個別に制御可能に構成されている。
【0036】
ムーバー31は、複数の永久磁石35が配列されている。コイル15が生成する磁場によって、ムーバー31は、タイル形状ユニット11上で磁気浮上することができる。また、コイル15が生成する磁場によって、ムーバー31は、タイル形状ユニット11上を移動することができ、複数のタイル形状ユニット11で形成される平面モータ10上を移動することができる。
【0037】
この様な構成により、制御部160(図1参照)は、平面モータ10(タイル形状ユニット11)の各コイル15の電流値を制御することで、搬送ユニット30(ムーバー31)の位置(水平方向(X軸方向、Y軸方向)の位置、高さ方向(Z軸方向)の位置(浮上量))及び向き(X軸回りの傾き、Y軸回りの傾き、Z軸回りの傾き)を制御することができるように構成されている。
【0038】
また、タイル形状ユニット11には、筐体14内に複数のホール素子(位置検出センサ)16が設けられている。ホール素子16は、磁気センサの一例であって、ムーバー31の位置及び向きを検出するためのセンサである。即ち、ホール素子16は、ムーバー31の永久磁石35が形成する磁束密度に応じた検出値(ホール電圧)を検出する。ホール素子16の検出値は、制御部160(図1参照)に入力される。制御部160は、複数のホール素子16の検出値に基づいて各ホール素子16の位置(磁束計測位置)における磁束密度を算出し、算出した複数の磁束計測位置における磁束密度に基づいてムーバー31の位置及び向きを推定する。
【0039】
ここで、タイル形状ユニット11の筐体14内には、複数のコイル15及びホール素子16が設けられている。また、搬送ユニット30を平面モータ10上で浮上及び移動させる際、搬送ユニット30の位置に対応したコイル15に通電される。コイル15に通電した際、コイル15が発熱し、コイル15の熱がホール素子16に伝熱する。また、コイル15の熱は、隣接するタイル形状ユニット11内のホール素子16にも伝熱する。このため、ホール素子16に温度差が生じることがある。
【0040】
ホール素子16は、温度が上昇すると感度が低下する。このため、複数のホール素子16の間において温度差が生じると、複数のホール素子16の間に感度の差が生じる。これにより、ホール素子16で検出した磁束密度に基づいて推定したムーバー31の位置及び向きが、実際のムーバー31の位置及び向きとズレるおそれがある。これにより、搬送ユニット30の位置合わせ精度が低下するおそれがある。
【0041】
ここで、本実施例の平面モータ10は、タイル形状ユニット11の筐体14内に温度センサ17が設けられている。温度センサ17は、例えば熱電対を用いることができる。温度センサ17の検出値は、制御部160(図1参照)に入力される。
【0042】
次に、温度センサ17(17A,17B)の配置について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、温度センサ17の配置を示す平面図の一例である。
【0043】
本実施例の平面モータ10は、複数のタイル形状ユニット11が配列されて形成される。平面モータ10上には、精度要求領域200が設けられている。平面モータ10の精度要求領域200には、温度センサ17Aが設けられている。
【0044】
図5は、精度要求領域200におけるタイル形状ユニット11内の温度センサ17Aの配置を説明する平面図の一例である。
【0045】
図5(a)に示すように、温度センサ17Aは、各ホール素子16に個別に設けられていてもよい。これにより、精度要求領域200における各ホール素子16の温度を精度よく検出することができる。
【0046】
また、図5(b)に示すように、温度センサ17Aは、タイル形状ユニット11内に複数のホール素子16が設けられていてもよい。例えば、矩形状のタイル形状ユニット11において、角部及び中央部に温度センサ17Aが設けられていてもよい。これにより、温度センサ17Aで検出した温度に基づいて、精度要求領域200におけるタイル形状ユニット11内の温度分布を推定し、精度要求領域200における各ホール素子16の温度を推定することができる。また、温度センサ17Aの数を低減して、タイル形状ユニット11のコストを低減することができる。
【0047】
図4に戻り、平面モータ10には、平面モータ10全体の温度分布を計測するための温度センサ17Bが設けられている。例えば、複数のタイル形状ユニット11が配列され矩形状に形成された平面モータ10において、外周の辺に沿って複数の温度センサ17Bが設けられ、平面モータ10の中央側に温度センサ17Bが設けられていてもよい。これにより、温度センサ17Bで検出した温度に基づいて、平面モータ10内の温度分布を推定し、精度要求領域200における各ホール素子16の温度を推定することができる。
【0048】
次に、搬送ユニット30の位置を推定する制御部160について図6を用いて説明する。図6は、制御部160の機能ブロック図の一例である。制御部160は、温度取得部161と、ホール素子温度推定部162と、磁束密度算出部163と、位置推定部164と、を有する。なお、制御部160の記憶部には、温度センサ17(17A,17B)の位置(温度計測位置)と、ホール素子16の位置(磁束計測位置)と、が記憶されている。
【0049】
温度取得部161は、温度センサ17の検出値が入力され、温度センサ17で検出した各温度計測位置の温度を取得する。
【0050】
ホール素子温度推定部162は、温度取得部161が取得した各温度計測位置の温度に基づいて、各ホール素子16の温度を推定する。例えば、精度要求領域200内のホール素子16の温度を推定する場合、ホール素子温度推定部162は、温度センサ17Aで検出した各温度計測位置の温度に基づいて、精度要求領域200内のタイル形状ユニット11の温度分布を推定し、推定したタイル形状ユニット11の温度分布に基づいて、各ホール素子16の温度を推定する。また、搬送領域210(図1参照)内のホール素子16の温度を推定する場合、ホール素子温度推定部162は、温度センサ17Bで検出した各温度計測位置の温度に基づいて、平面モータ10の温度分布を推定し、推定した平面モータ10の温度分布に基づいて、各ホール素子16の温度を推定する。
【0051】
磁束密度算出部163は、ホール素子温度推定部162で推定した各ホール素子16の温度及びホール素子16の検出値(ホール電圧)が入力され、ホール素子16で検出した各磁束計測位置の磁束密度を算出する。ここで、磁束密度算出部163は、ホール素子温度推定部162で推定したホール素子16の温度と、ホール素子16の温度特性と、に基づいて、ホール素子16の検出値を補償する。これにより、磁束密度算出部163は、ホール素子16の温度特性が補償された各磁束計測位置の磁束密度を算出する。
【0052】
位置推定部164は、磁束密度算出部163で算出された磁束密度に基づいて、搬送ユニット30(永久磁石35)の位置及び向きを推定する。
【0053】
図7は、載置台111に基板Wを載置する際の搬送ユニット30の位置合わせを説明する平面図の一例である。
【0054】
精度要求領域200には、温度センサ17A(図4,5参照)が設けられている。これにより、精度要求領域200において、搬送ユニット30の位置合わせを行う際、ホール素子16の温度で補正して、精度よく搬送ユニット30の位置を検出することができる。これにより、搬送ユニット30の位置合わせ精度を向上させることができる。また、基板Wを載置台111に精度よく載置することができる。
【0055】
なお、ホール素子16の温度を検出する温度センサ17として、タイル形状ユニット11内に設けられた熱電対を例に説明したが、これに限られるものではない。ホール素子16の温度を検出する温度センサ17として、例えば、真空搬送室120内の天井に設けられ精度要求領域200内のタイル形状ユニット11を撮像するサーモカメラを用いてもよい。ホール素子温度推定部162は、サーモカメラで撮像したタイル形状ユニット11の温度分布に基づいて、各ホール素子16の温度を推定する。
【0056】
また、ホール素子温度推定部162は、各コイル15の通電量に基づいて各コイル15の発熱量を推定してもよい。そして、ホール素子温度推定部162は、推定した各コイル15の発熱量と、温度センサ17で検出した各温度計測位置での温度に基づいて、タイル形状ユニット11(平面モータ10)の温度分布を推定し、推定したタイル形状ユニット11(平面モータ10)の温度分布に基づいて、各ホール素子16の温度を推定してもよい。これにより、コイル15の発熱量を考慮してタイル形状ユニット11(平面モータ10)の温度分布を推定することができるので、各ホール素子16の温度をより精度よく推定することができる。よって、搬送ユニット30の位置及び向きを更に精度よく推定することができる。
【0057】
次に、精度要求領域200における位置合わせ精度を向上する他の構成について、図8を用いて説明する。図8は、載置台111に基板Wを載置する際の搬送ユニット30の位置合わせを説明する平面図の他の一例である。
【0058】
精度要求領域200内の搬送ユニット30の位置を検出する位置検出センサ18が設けられている。位置検出センサ18は、例えば、真空搬送室120の側壁に設けられたレーザ変位計である。位置検出センサ18は、真空搬送室120のゲートバルブ112が配置される側壁に設けられた2つの位置検出センサ18Aと、真空搬送室120の他の側壁に設けられた2つの位置検出センサ18Bと、を有し、搬送ユニット30(ムーバー31)の位置及び向きを検出する。これにより、搬送ユニット30の位置合わせ精度を向上させることができる。また、基板Wを載置台111に精度よく載置することができる。
【0059】
なお、精度要求領域200内の搬送ユニット30の位置を検出する位置検出センサ18として、真空搬送室120の側壁に設けられたレーザ変位計を例に説明したが、これに限られるものではない。精度要求領域200内の搬送ユニット30の位置を検出する位置検出センサ18として、例えば、真空搬送室120の天井に設けられ精度要求領域200内の搬送ユニット30を撮像する撮像装置(例えば、CCDカメラ)を用いてもよい。
【0060】
以上、基板処理システム100について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 平面モータ
11 タイル形状ユニット
15 コイル
16 ホール素子
17 温度センサ
18 位置検出センサ
30,30A~30C 搬送ユニット
31 ムーバー
32 アーム
35 永久磁石
100 基板処理システム
110 処理室
120 真空搬送室(搬送室)
130 ロードロック室
140 大気搬送室
150 ロードポート
160 制御部
200 精度要求領域
210 搬送領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8