(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081091
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】オゾン供給システム、基板処理装置およびオゾン供給方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20230602BHJP
C01B 13/11 20060101ALI20230602BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C23C16/448
C01B13/11 K
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194791
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小森 栄一
【テーマコード(参考)】
4G042
4K030
5H307
【Fターム(参考)】
4G042CA01
4G042CB23
4G042CC11
4G042CE04
4K030AA03
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA10
4K030BA42
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030FA10
4K030GA02
4K030HA15
4K030HA16
4K030JA05
4K030JA09
4K030KA39
4K030KA41
5H307AA01
5H307BB01
5H307CC03
5H307DD02
5H307EE02
5H307ES02
5H307FF12
5H307GG03
(57)【要約】
【課題】オゾン発生器におけるオゾンの生成を安定化させることができる技術を提供する。
【解決手段】オゾン供給システムは、ガスを供給する供給経路と、前記供給経路に設けられ、前記供給経路の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器と、を有する。前記供給経路は、前記オゾン発生器よりも下流側で複数の分岐経路に分岐している。前記複数の分岐経路のうち少なくとも1つは、前記オゾン含有ガスを使用する処理部に接続される処理用分岐経路である。前記複数の分岐経路のうちの残りは、前記オゾン含有ガスを排出する廃棄部に接続される廃棄用分岐経路である。前記廃棄用分岐経路は、前記オゾン含有ガスの流量を調整する廃棄用流量調整部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給する供給経路と、
前記供給経路に設けられ、前記供給経路の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器と、を有し、
前記供給経路は、前記オゾン発生器よりも下流側で複数の分岐経路に分岐しており、
前記複数の分岐経路のうち少なくとも1つは、前記オゾン含有ガスを使用する処理部に接続される処理用分岐経路であり、
前記複数の分岐経路のうちの残りは、前記オゾン含有ガスを排出する廃棄部に接続される廃棄用分岐経路であり、
前記廃棄用分岐経路は、前記オゾン含有ガスの流量を調整する廃棄用流量調整部を備える、
オゾン供給システム。
【請求項2】
前記オゾン発生器と前記複数の分岐経路の分岐点との間の前記供給経路に圧力センサを備えるとともに、
前記圧力センサが検出した圧力値に基づき、前記廃棄用流量調整部による前記オゾン含有ガスの流量の調整を制御する制御部を有する、
請求項1に記載のオゾン供給システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記圧力センサの前記圧力値が目標圧力で一定となるように、前記廃棄用流量調整部を制御する、
請求項2に記載のオゾン供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標圧力よりも前記圧力値が低い場合に前記廃棄用流量調整部を制御して前記オゾン含有ガスの流量を少なくする一方で、前記目標圧力よりも前記圧力値が高い場合に前記廃棄用流量調整部を制御して前記オゾン含有ガスの流量を多くする、
請求項3に記載のオゾン供給システム。
【請求項5】
前記供給経路は、
複数の前記処理部に各々接続される複数の前記処理用分岐経路と、
複数の前記処理用分岐経路の各々に設けられ、複数の前記処理部に供給する前記オゾン含有ガスの流量を調整する処理用流量調整部と、を有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のオゾン供給システム。
【請求項6】
複数の前記処理用流量調整部は、前記オゾン含有ガスの流量を相互に同一に調整する、
請求項5に記載のオゾン供給システム。
【請求項7】
前記廃棄用流量調整部は、マスフローコントローラである、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のオゾン供給システム。
【請求項8】
前記廃棄用流量調整部は、前記廃棄用分岐経路の流路の開度を調整する流量調整バルブである、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のオゾン供給システム。
【請求項9】
基板を処理する処理容器と、オゾンを含むオゾン含有ガスを前記処理容器の内部に供給するオゾン供給システムと、を備える基板処理装置であって、
前記オゾン供給システムは、
ガスを供給する供給経路と、
前記供給経路に設けられ、前記供給経路の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器と、を有し、
前記供給経路は、前記オゾン発生器よりも下流側で複数の分岐経路に分岐しており、
前記複数の分岐経路のうち少なくとも1つは、前記処理容器に接続される処理用分岐経路であり、
前記複数の分岐経路のうちの残りは、前記オゾン含有ガスを排出する廃棄部に接続される廃棄用分岐経路であり、
前記廃棄用分岐経路は、前記オゾン含有ガスの流量を調整する廃棄用流量調整部を備える、
基板処理装置。
【請求項10】
ガスを供給する供給経路と、
前記供給経路に設けられ、前記供給経路の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器と、を有するオゾン供給システムのオゾン供給方法であって、
前記供給経路は、前記オゾン発生器よりも下流側で複数の分岐経路に分岐しており、
前記複数の分岐経路のうち少なくとも1つである処理用分岐経路を介して、前記オゾン含有ガスを処理部に供給する工程と、
前記複数の分岐経路のうちの残りである廃棄用分岐経路を介して前記オゾン含有ガスを排出するとともに、排出時に廃棄用流量調整部により前記オゾン含有ガスの流量を調整する工程と、を有する、
オゾン供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オゾン供給システム、基板処理装置およびオゾン供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、処理容器内で基板の酸化やエッチング等を行う際に、処理ガスとしてオゾン(O3)を使用することがある。この場合、処理容器にはオゾン供給システムが接続される。オゾン供給システムは、酸素(O2)に対して放電を行うことでオゾンを生成するオゾン発生器を備える。
【0003】
また近年は、製造コストやフットプリント削減を図るために、1つのオゾン発生器から複数の処理容器にオゾンを供給するオゾン供給システムが開発されている。例えば、特許文献1には、1つのオゾン発生器から複数の処理容器に供給する際に、原料ガスの流量の変動に応じてオゾン発生器の放電出力を変更することで、オゾンの供給の安定化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、オゾン発生器におけるオゾンの生成を安定化させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ガスを供給する供給経路と、前記供給経路に設けられ、前記供給経路の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器と、を有し、前記供給経路は、前記オゾン発生器よりも下流側で複数の分岐経路に分岐しており、前記複数の分岐経路のうち少なくとも1つは、前記オゾン含有ガスを使用する処理部に接続される処理用分岐経路であり、前記複数の分岐経路のうちの残りは、前記オゾン含有ガスを排出する廃棄部に接続される廃棄用分岐経路であり、前記廃棄用分岐経路は、前記オゾン含有ガスの流量を調整する廃棄用流量調整部を備える、オゾン供給システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、オゾン発生器におけるオゾンの生成を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るオゾン供給システムを示す概略説明図である。
【
図2】オゾン供給システムが設けられた基板処理装置を示す概略断面図である。
【
図3】オゾン供給システムの制御部の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)は、本実施形態に係るオゾン供給システムの動作を示す説明図である。
図4(B)は、参考例に係るオゾン供給システムの動作を示す説明図である。
【
図5】オゾン供給システムのオゾン供給方法を示すフローチャートである。
【
図6】変形例に係るオゾン供給システムを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〔オゾン供給システムの構成〕
図1に示すように、一実施形態に係るオゾン供給システム100は、基板処理装置1に設置され、供給対象である処理容器10にオゾン(O
3)を含むオゾン含有ガスを供給する。また、本実施形態に係るオゾン供給システム100は、基板処理装置1の複数(
図1では2つ)の処理容器10にオゾン含有ガスを供給可能に構成される。以下の説明では、基板処理装置1の2つの処理容器10について、第1処理容器10A、第2処理容器10Bともいう。
【0011】
オゾン供給システム100は、各処理容器10に対してオゾン含有ガスを供給する供給経路110を有する。供給経路110は、例えば、耐腐食性を有するコーティング等が施された複数の配管を接続することにより構成される。供給経路110は、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bの各々にオゾン含有ガスを供給するために分岐している。具体的には、供給経路110は、1つの共通経路111と、この共通経路111の下流端(分岐点S)において分岐した分岐経路112(第1処理用分岐経路113、第2処理用分岐経路114、廃棄用分岐経路115)と、を備える。
【0012】
第1処理用分岐経路113は、第1処理容器10Aに接続され、第1処理容器10Aにオゾン含有ガスを供給する。第2処理用分岐経路114は、第2処理容器10Bに接続され、第2処理容器10Bにオゾン含有ガスを供給する。廃棄用分岐経路115は、排出ガスを処理するための廃棄部200に接続され、オゾン含有ガスを廃棄する。このように、オゾン供給システム100は、オゾン含有ガスの供給対象である処理容器10の数よりも1つ多い分岐経路112を有しており、これによりオゾン含有ガスを供給する際の安定化を実現する。
【0013】
具体的には、オゾン供給システム100は、共通経路111の上流側から下流側に向かって順に、酸素供給源120と、上流側流量調整器121と、オゾン発生器122と、圧力センサ123と、流量調整バルブ124と、遮断用バルブ125と、を備える。供給経路110は、共通経路111の遮断用バルブ125よりも下流側の分岐点Sにおいて3つの分岐経路112に分岐している。また、オゾン供給システム100は、当該システムの構成を制御する制御部160を有する。
【0014】
オゾン供給システム100の酸素供給源120は、下流側の共通経路111に酸素(O2)ガスを供給する。酸素供給源120は、特に限定されず、酸素ガスを貯留可能な高圧タンク、またはエアを取り込んで圧送するコンプレッサ、ポンプ等を適用し得る。酸素供給源120よりも下流側のオゾン発生器122は、窒素ガスを含有した酸素ガスが供給されることで、酸素分子の解離効率を高めてオゾンの濃度を増加させることができる。
【0015】
上流側流量調整器121は、例えば、マスフローコントローラ(MFC)を適用することができる(以下、上流側MFC121という)。上流側MFC121は、制御部160からの目標流量の指令に基づき、オゾン発生器122に供給する酸素ガスの流量を調整する。オゾン供給システム100は、上流側MFC121により酸素ガスの流量を調整することで、1次側からオゾン発生器122にかける圧力を制御できる。
【0016】
オゾン発生器122は、上流側から供給された酸素ガスに対して放電を行うことで、オゾンを発生させる放電式の装置である。例えば、オゾン発生器122は、平行平板状もしくは同軸円筒状に配置された一対の電極の間に放電領域を形成している。そして、オゾン発生器122は、放電領域に酸素ガスを流しつつ、一対の電極の間に交流高電圧を印加することで、酸素ガス中に放電を起こさせてオゾンを発生させる。このオゾン発生器122は、酸素ガスを流通しながら電圧印加を続けることで、濃度が略一定のオゾンを継続的に生成できる。そして、オゾン発生器122は、発生したオゾン含有ガスを2次側(下流側)の共通経路111に送出する。
【0017】
圧力センサ123は、共通経路111においてオゾン発生器122よりも下流側に設けられ、共通経路111を流通するオゾン含有ガスの圧力を検出する。この圧力センサ123は、制御部160に接続されており、検出した圧力値を制御部160に送信する。オゾン発生器122の下流側近傍位置に設けられる圧力センサ123は、オゾン発生器122内の圧力を近似的に検出できる。
【0018】
流量調整バルブ124は、共通経路111内の流路を開放および遮断するとともに、制御部160の制御下に開度を調整することで、オゾン発生器122から2次側に流出されるオゾン含有ガスの量を調整する。また、遮断用バルブ125は、オゾン発生器122内の圧力が所定以下に低下した場合やトラブル発生等の緊急時に、共通経路111の流路を閉塞することで、オゾン含有ガスの供給を遮断する。
【0019】
そして、分岐経路112の第1処理用分岐経路113は、第1流量調整部である第1処理用MFC130と、第1開閉バルブ131と、を備える。同様に、分岐経路112の第2処理用分岐経路114は、第2流量調整部である第2処理用MFC140と、第2開閉バルブ141と、を備える。また、分岐経路112の廃棄用分岐経路115は、廃棄用流量調整部である廃棄用MFC150と、第3開閉バルブ151と、を備える。
【0020】
第1処理用MFC130、第2処理用MFC140および廃棄用MFC150は、制御部160からの目標流量の指令に基づき、それぞれの分岐経路112におけるオゾン含有ガスの流量を調整する。すなわち、第1処理用MFC130は、オゾン含有ガスの流量を目標流量に維持することで、要求された供給量のオゾン含有ガスを第1処理容器10Aに供給する。第2処理用MFC140は、オゾン含有ガスの流量を目標流量に維持することで、要求された供給量のオゾン含有ガスを第2処理容器10Bに供給する。例えば、オゾン供給システム100は、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bの処理時に、第1処理用MFC130の目標流量と、第2処理用MFC140の目標流量とを同じ値に設定することが好ましい。これにより、オゾン供給システム100は、第1処理用分岐経路113および第2処理用分岐経路114の各々に、オゾン含有ガスを均等的に分散させることができる。
【0021】
廃棄用MFC150は、制御部160が指令する廃棄流量(目標流量)に基づき、廃棄部200に排出するオゾン含有ガスの流量を調整する。本実施形態に係るオゾン供給システム100の制御部160は、廃棄部200に排出するオゾン含有ガスの流量を、圧力センサ123の圧力値に基づいて調整する。この制御については後に詳述する。
【0022】
また、第1開閉バルブ131、第2開閉バルブ141および第3開閉バルブ151は、各分岐経路112の流路を開閉することで、オゾン含有ガスの供給および供給遮断を切り替える。例えば、オゾン供給システム100は、各処理容器10に対するオゾン含有ガスの供給開始時に、第1開閉バルブ131、第2開閉バルブ141および第3開閉バルブ151を同時に開放して、オゾン含有ガスを流通させる。なお、各バルブの開閉タイミングは相互に異なってもよく、一例として、オゾン含有ガスの供給開始時に、先に第3開閉バルブ151を開放した後に、第1開閉バルブ131および第2開閉バルブ141を開放してもよい。
【0023】
制御部160は、上流側MFC121、オゾン発生器122、第1処理用MFC130、第2処理用MFC140、廃棄用MFC150、第1~第3開閉バルブ131、141、151等を制御してオゾン含有ガスの供給を行う。制御部160は、1以上のプロセッサ161、メモリ162、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサ161は、CPU、GPU、ASIC、FPGAもしくは複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ162は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、制御部160の記憶部を形成している。
【0024】
〔基板処理装置1の構成〕
次に、上記のオゾン供給システム100を備える基板処理装置1の一例について説明する。
図2に示すように、オゾン含有ガスを使用する基板処理装置1としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)により、基板Wの表面に酸化膜を形成する成膜装置があげられる。また、本実施形態に係る基板処理装置1は、2つの処理容器10(第1処理容器10A、第2処理容器10B)を有することで、2枚の基板Wを同時に、または並行して処理可能な、いわゆる2枚葉の成膜装置とすることができる。
【0025】
成膜処理がなされる基板Wとしては、シリコンウエハまたは化合物半導体ウエハなどの半導体基板等があげられる。また、酸化膜としては、高誘電膜(High-k膜)であるHfO2膜、ZrO2膜、La2O3膜、Y2O3膜等があげられる。本実施形態では、HfO2膜をシリコンウエハに成膜する装置を例にして説明する。
【0026】
具体的には、基板処理装置1は、各処理容器10に設置または接続される構成として、サセプタ20と、シャワーヘッド30と、排気部40と、ガス供給部50と、を備える。さらに、基板処理装置1は、各構成を制御して成膜処理を行う制御装置90を有する。
【0027】
各処理容器10は、アルミニウム等の金属により構成され、基板Wに対して成膜処理を行う処理空間10sを内部に有する。各処理容器10は、収容する基板Wの平面形状に応じて略円筒状に形成されている。また、各処理容器10は、基板Wを搬入出するための搬入出口11と、搬入出口11を開閉するゲートバルブ12と、を備える。
【0028】
さらに、処理容器10は、円環状の排出用ダクト13を上部に備える。排出用ダクト13は、内周面の周方向に沿って処理空間10sに連通するスリット13aを有するとともに、外周面の所定の位置に排出口13bを有する。
【0029】
サセプタ20は、ニッケル等により構成され、各処理容器10内で支持部材23により支持されている。サセプタ20は、基板Wに対応した平面形状(正円状)に形成されており、基板Wを水平に支持する。また、サセプタ20は、当該サセプタ20の載置面(上面)に載置した基板Wを加熱するためのヒータ21を内部に有する。サセプタ20の載置面は、ヒータ21により、例えば300~450℃に温度制御される。また、サセプタ20は、基板Wの載置面の外周領域およびサセプタ20の側面を覆うように、アルミナ等のセラミックスからなるカバー部材22を備える。
【0030】
サセプタ20を支持する支持部材23は、サセプタ20の底面中央から処理容器10の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器10の下方に延び、その下端が上下移動機構24に接続されている。サセプタ20は、支持部材23を介して上下移動機構24により昇降する。具体的には、上下移動機構24は、基板Wを成膜処理する処理位置と、処理位置の下方で基板Wの搬送を可能とする搬送位置との間でサセプタ20を変位させる。また、処理容器10よりも鉛直方向下側には、サセプタ20の昇降動作にともなって伸縮するベローズ25と、ベローズ25の下端を閉じる鍔部26と、が設けられている。
【0031】
各処理容器10は、基板昇降部27を底壁に備える。基板昇降部27は、昇降板27aと、昇降板27aから上方に突出する複数(例えば、3本)の支持ピン27bと、昇降板27aを昇降させるピン上下移動機構27cと、を含む。基板昇降部27は、処理容器10への基板Wの搬入時に、基板搬送機構(不図示)により搬送された基板Wに対して、各支持ピン27bを上昇することで基板Wを受け取り、その後に各支持ピン27bを下降することで処理位置のサセプタ20に基板Wを載置する。逆に、基板昇降部27は、処理容器10からの基板Wの搬出時に、各支持ピン27bを上昇することで処理位置のサセプタ20から基板Wを浮上させて、進入した基板搬送機構に基板Wを受け渡す。
【0032】
シャワーヘッド30は、例えば、アルミニウムにより形成され、各処理容器10の鉛直方向上側においてサセプタ20に対向するように設けられている。シャワーヘッド30は、本体部31と、シャワープレート32と、を有する。
【0033】
本体部31は、略円筒状に形成され、鉛直方向下側の中央にガス拡散空間33となる凹部34を有する。本体部31の外縁部の上側には、径方向外側に突出して排出用ダクト13に係合するフランジ31aが設けられている。フランジ31aと排出用ダクト13の間は、シール材15により気密にシールされている。また、本体部31は、上部中央に鉛直方向上側に向かって突出するガス導入部35を備える。ガス導入部35は、ガス拡散空間33につながる下部ガス流路35aと、下部ガス流路35aにつながる2つの上部ガス流路35b、35cと、を有する。
【0034】
シャワープレート32は、本体部31の鉛直方向下側において凹部34を覆うように取り付けられる。凹部34とシャワープレート32とによりガス拡散空間33が規定される。シャワープレート32は、ガス拡散空間33からガスを吐出する複数のガス吐出孔32aを有する。
【0035】
排気部40は、各処理容器10の排出用ダクト13の排出口13bに接続される排出経路41を備える。排出経路41は、第1処理容器10A内および第2処理容器10B内の気体を排出するために、上流側において2つに分岐している。排出経路41の分岐部分の各々には、各処理容器10内の圧力を調整するための圧力制御バルブ(APC)42が設けられている。また、排出経路41の合流部分には、真空ポンプ43および排出ガスを処理する廃棄部200が設けられている。基板処理装置1は、成膜処理において、真空ポンプ43を動作して、各処理容器10内の気体を吸引する。これにより、各処理容器10内の気体は、排出用ダクト13から排出経路41を通って廃棄部200に排出される。
【0036】
ガス供給部50は、原料ガスを供給する原料ガス供給システム51と、上記したオゾン供給システム100と、を含む。
【0037】
原料ガス供給システム51は、上部ガス流路35bに接続される原料ガス供給経路52を備える。また、原料ガス供給システム51は、第1処理容器10Aと第2処理容器10Bとに原料ガスを供給するために、原料ガス供給経路52を分岐させている。つまり、原料ガス供給経路52は、共通経路53と、共通経路53から第1処理容器10Aまで延在する第1処理用分岐経路54と、共通経路53から第2処理容器10Bまで延在する第2処理用分岐経路55と、を有する。
【0038】
原料ガス供給システム51は、共通経路111の上流側に原料ガス源56を備える。原料ガス源56が供給する原料ガスは、成膜処理において金属を含む膜を成膜できるものであれば特に限定されず、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。HfO2膜を成膜する場合を例にとると、例えば、テトラキスジメチルアミノハフニウム(Hf[N(CH3)2]4:TDMAH)やトリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウムのような有機ハフニウム化合物や、塩化ハフニウム(HfCl4)等を用いることができる。
【0039】
また、第1処理用分岐経路54および第2処理用分岐経路55の各々には、上流側から下流に向かって順に、マスフローコントローラ等の流量制御器57A、57Bと、開閉バルブ58A、58Bと、が設けられている。基板処理装置1は、制御装置90により第1処理用分岐経路54の流量制御器57Aおよび開閉バルブ58Aを制御することで、原料ガスの流通および流通停止を切り替えるとともに、第1処理容器10Aに供給する原料ガスの流量を調整する。同様に、基板処理装置1は、制御装置90により第2処理用分岐経路55の流量制御器57Bおよび開閉バルブ58Bを制御することで、原料ガスの流通および流通停止を切り替えるとともに、第2処理容器10Bに供給する原料ガスの流量を調整する。なお、ガス供給部50は、例えば窒素(N2)ガス等のパージガスを供給するパージガス経路(不図示)を原料ガス供給経路52に接続してもよい。パージガスは、成膜処理時のカウンターフローとして利用できる。
【0040】
そして上記したように、オゾン供給システム100は、第1処理用分岐経路113、第2処理用分岐経路114および廃棄用分岐経路115を備えている。オゾン供給システム100は、第1処理用分岐経路113を介して第1処理容器10Aにオゾン含有ガスを供給するとともに、第2処理用分岐経路114を介して第2処理容器10Bにオゾン含有ガスを供給する。また、オゾン供給システム100の廃棄用分岐経路115は、基板処理装置1の排出経路41(真空ポンプ43よりも上流側)に接続されている。これにより、基板処理装置1は、廃棄用分岐経路115にオゾン含有ガスを流通させることで、各処理容器10を介さずに共通の廃棄部200にオゾン含有ガスを直接排出できる。
【0041】
制御装置90は、上記のサセプタ20、排気部40、原料ガス供給システム51等を制御して処理容器10内で成膜処理を行う。制御装置90は、図示しない1以上のプロセッサ、メモリ、入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサは、CPU、GPU、ASIC、FPGAもしくは複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリは、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、制御装置90の記憶部を形成している。メモリには、成膜処理を制御するためのプログラムや成膜処理で実行されるレシピが記憶されている。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラムやレシピを読み出して制御を行う。
【0042】
また、制御装置90は、成膜処理時の適宜のタイミングで、オゾン供給システム100の制御部160に、オゾン含有ガスを第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bに供給するために、供給指令、供給終了指令等を出力する。供給指令には、例えば、供給開始の指令情報の他に、オゾン含有ガスの目標流量が含まれる。これにより、制御部160は、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bに、目標流量に応じたオゾン含有ガスを供給するように各構成を制御する。なお、本実施形態では、オゾン供給システム100の制御部160と、基板処理装置1の制御装置90とが、別に設けられているが、これに限定されず、制御装置90が制御部160の機能(オゾン含有ガスの供給を制御する機能)を備えてもよい。
【0043】
〔オゾン供給システム100の制御部160〕
オゾン供給システム100の制御部160は、メモリ162に記憶されたプログラムをプロセッサ161が読み出して実行することで、
図3に示すようにオゾン含有ガスを供給するための機能ブロックを内部に構築する。具体的には、制御部160の内部には、圧力取得部170、オゾン生成制御部171、処理側供給制御部172、廃棄側制御部173が形成される。
【0044】
圧力取得部170は、供給経路110に設置された圧力センサ123の圧力値を定常的に取得して、メモリ162に一時的に記憶するとともに、オゾン生成制御部171および廃棄側制御部173等に圧力値を出力する。
【0045】
オゾン生成制御部171は、上流側MFC121、オゾン発生器122、流量調整バルブ124等を制御して、酸素ガスをオゾン発生器122に供給し、オゾン発生器122内においてオゾン含有ガスを生成する。また、オゾン生成制御部171は、オゾン含有ガスの生成において、圧力センサ123の圧力値に基づき上流側MFC121および流量調整バルブ124を制御して、オゾン発生器122で生成するオゾン含有ガスの濃度の安定化を図る。
【0046】
処理側供給制御部172は、制御装置90から取得した目標流量に基づき、第1処理用MFC130、第2処理用MFC140、第1開閉バルブ131および第2開閉バルブ141を制御する。これにより、処理側供給制御部172は、各処理容器10に対するオゾン含有ガスの供給および供給停止、その供給量(流量)を調整する。本実施形態において、処理側供給制御部172は、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bに対してオゾン含有ガスを同時に供給するとともに、同じ供給量のオゾンカスを供給する。ただし、オゾン供給システム100は、第1処理容器10Aに対するオゾン含有ガスの供給と、第2処理容器10Bに対するオゾン含有ガスの供給と、を異なるタイミングで実施してもよい。例えば、オゾン供給システム100は、第2処理容器10Bのオゾン含有ガスの供給停止状態で、第1処理容器10Aにオゾン含有ガスを供給してもよい。
【0047】
廃棄側制御部173は、廃棄用分岐経路115を流通させるオゾン含有ガスの流量を制御する。この廃棄側制御部173の内部には、廃棄流量算出部174と、廃棄用分岐経路制御部175とが形成される。廃棄流量算出部174は、圧力取得部170が取得した圧力センサ123の圧力値に基づき、廃棄用MFC150を制御するためのオゾン含有ガスの流量を算出する。例えば、廃棄流量算出部174は、圧力値とオゾン含有ガスの流量とを対応付けたマップ情報MIまたは関数を予めメモリ162に記憶しており、圧力値を受信するとメモリ162のマップ情報MIを参照して、圧力値に応じた流量を抽出する。
【0048】
廃棄用分岐経路制御部175は、廃棄流量算出部174が算出したオゾン含有ガスの流量に基づき、廃棄用MFC150および第3開閉バルブ151を制御して、廃棄部200に対するオゾン含有ガスの排出および排出停止と、廃棄流量とを制御する。すなわち、オゾン供給システム100は、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bにオゾン含有ガスを供給する際に、廃棄部200に排出させるオゾン含有ガスの流量を調整する。以下、廃棄用分岐経路115において、オゾン含有ガスの流量を制御することの意義について説明する。
【0049】
図4(A)および(B)に示すように、共通経路111の上流側MFC121、第1処理用分岐経路113の第1処理用MFC130および第2処理用分岐経路114の第2処理用MFC140は、それぞれ流通するガスの流量を調整する。ただし、各MFCは、一般的に目標値に対して±1%程度の範囲で流量の誤差が発生する。例えば、
図4(B)に示す廃棄用分岐経路115がない参考例に係るオゾン供給システム100'において、上流側MFC121で-1%の誤差が生じ、第1処理用MFC130および第2処理用MFC140の各々で+1%の誤差の誤差が生じたとする。この場合、オゾン発生器122では、オゾン発生器122に流入する酸素ガスの流量が少ない一方で、オゾン発生器122から送出されるオゾン含有ガスの流量が大きくなる。そのため、オゾン発生器122内の圧力が低下することになる。
【0050】
誤差によってオゾン発生器122の圧力低下が大きくなると、オゾン供給システム100'は、上流側MFC121や流量調整バルブ124により酸素ガスの供給量やオゾン含有ガスの送出量を変える制御を行う。これにより、オゾンの濃度が不安定になる。特に、複数の処理容器10にオゾン含有ガスを供給する場合には、1つの処理容器10にオゾン含有ガスを供給する場合と比べて、複数倍の誤差が生じる可能性があり、オゾン発生器122内の圧力変動が大きくなり易い。場合によっては、オゾン含有ガスの生成に異常が生じていると判断して、システムを停止する可能性もある。
【0051】
本実施形態に係るオゾン供給システム100は、
図4(A)に示すように、供給経路110に廃棄用分岐経路115を備える。すなわち、オゾン供給システム100は、オゾン発生器122のオゾン含有ガスの上澄み分を廃棄用分岐経路115に流通させることで、廃棄用分岐経路115を介してオゾン含有ガスの一部を廃棄している。これにより、他の経路の流量変化による圧力変動を、廃棄用分岐経路115の流量変化によって補うことができる。
【0052】
具体的には、制御部160は、上流側MFC121、第1処理用MFC130および第2処理用MFC140の誤差分を吸収するように、廃棄用MFC150のオゾン含有ガスの流量を調整する。これにより、オゾン供給システム100は、上流側MFC121や流量調整バルブ124による調整を行うことなく、圧力センサ123の圧力値を目標圧力で一定となるように制御できる。
【0053】
廃棄用MFC150の廃棄流量は、第1処理用MFC130の流量および第2処理用MFC140の流量よりも小さく設定されてもよく、または第1処理用MFC130の流量および第2処理用MFC140の流量と同じに設定されてもよい。廃棄流量が小さければ、処理容器10を流れないオゾン含有ガスの量を少なくできる。ただし、廃棄流量は、上流側MFC121の誤差、第1処理用MFC130の誤差および第2処理用MFC140の誤差を全て含む量よりも大きな値に設定される。一例として、上流側MFC121の誤差が±30ccm、第1処理用MFC130の誤差が±10ccm、第2処理用MFC140の誤差が±10ccmの場合、廃棄用MFC150の廃棄流量は、50ccmよりも大きな値に設定されるとよい。
【0054】
例えば、上流側MFC121で酸素ガスの流量が減り、第1処理用MFC130および第2処理用MFC140の各々でオゾン含有ガスの流量が増えた場合、オゾン発生器122内の圧力が目標圧力よりも低下することになる。そのため、制御部160は、圧力センサ123の圧力値に基づき、廃棄用分岐経路115に流通するオゾン含有ガスが少なくなるように廃棄用MFC150を制御する。これにより、廃棄用分岐経路115に流通するオゾン含有ガスの流量が減って、オゾン発生器122内の圧力が上昇する。つまり、オゾン供給システム100は、第1処理用分岐経路113の流量および第2処理用分岐経路114の流量を調整せずに、オゾン発生器122内の圧力を目標圧力に戻すことができる。
【0055】
逆に、上流側MFC121で酸素ガスの流量が増え、第1処理用MFC130および第2処理用MFC140の各々でオゾン含有ガスの流量が減った場合、オゾン発生器122内の圧力が目標圧力よりも上昇することになる。そのため、制御部160は、圧力センサ123の圧力値に基づき、廃棄用分岐経路115に流通するオゾン含有ガスが多くなるように廃棄用MFC150を制御する。これにより、廃棄用分岐経路115に流通するオゾン含有ガスの流量が増えて、オゾン発生器122側の圧力が低下する。つまり、オゾン供給システム100は、第1処理用分岐経路113の流量および第2処理用分岐経路114の流量を調整せずに、オゾン発生器122内の圧力を目標圧力に戻すことができる。
【0056】
〔オゾン供給方法〕
本実施形態に係るオゾン供給システム100および基板処理装置1は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、オゾン供給システム100の動作(オゾン供給方法)について説明する。
【0057】
オゾン供給システム100の制御部160は、基板処理装置1の基板処理の実施時に、制御装置90から供給指令を受信する(ステップS1)。これにより、制御部160は、オゾン含有ガスの生成を開始する。まず、オゾン生成制御部171は、上流側MFC121、オゾン発生器122、流量調整バルブ124等を制御して、オゾン発生器122に酸素ガスを供給し、オゾン発生器122内において放電を行うことでオゾンを生成する(ステップS2)。
【0058】
そして、処理側供給制御部172は、各処理容器10に対してオゾン含有ガスの供給を開始する(ステップS3)。具体的には、処理側供給制御部172は、供給指令に含まれる目標流量となるように、第1処理用MFC130および第2処理用MFC140を動作させる。これにより、オゾン発生器122が生成したオゾン含有ガスが、第1処理用分岐経路113を介して第1処理容器10Aに供給されるとともに、第2処理用分岐経路114を介して第2処理容器10Bに供給される。
【0059】
さらに、各処理容器10へのオゾン含有ガスの供給にともなって、廃棄側制御部173は、廃棄用分岐経路115から廃棄部200に対するオゾン含有ガスの流通を開始する(ステップS4)。すなわち、廃棄側制御部173は、第3開閉バルブ151を開放するとともに、廃棄用MFC150を動作させることで、廃棄用分岐経路115にオゾン含有ガスを流通させる。
【0060】
2次側へのオゾン含有ガスの送出時に、制御部160の圧力取得部170は、圧力センサ123によりオゾン発生器122から供給されるオゾン含有ガスの圧力値を検出し、この圧力値を継続的に取得する(ステップS5)。
【0061】
またオゾン含有ガスの供給開始後、処理側供給制御部172は、第1処理用MFC130の流量および第2処理用MFC140の流量を同じ量に調整して、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bにオゾン含有ガスを継続的に供給する(ステップS6)。
【0062】
一方、廃棄側制御部173は、各処理容器10にオゾン含有ガスを供給している間、圧力取得部170が取得している圧力センサ123の圧力値に基づき、廃棄用MFC150を制御して廃棄用分岐経路115の流量を調整する(ステップS7)。詳細には、廃棄流量算出部174は、圧力センサ123の圧力値に基づき廃棄用分岐経路115のオゾン含有ガスの流量を算出する。また、廃棄用分岐経路制御部175は、廃棄流量算出部174が算出した廃棄流量に応じて、廃棄用MFC150に流量調整の指令を送信する。これにより、廃棄用MFC150は、廃棄用分岐経路115から廃棄部200に排出するオゾン含有ガスの流量を調整する。
【0063】
そして、制御部160は、制御装置90の供給停止指令や予め定められた処理期間等に基づき、オゾン含有ガスの供給を終了するか否かを判定する(ステップS8)。オゾン含有ガスの供給を続ける場合(ステップS8:NO)、ステップS6に戻り、以下同様の処理を繰り返す。一方、オゾン含有ガスの供給終了を判定した場合(ステップS8:YES)、制御部160は、終了処理を行ってオゾン含有ガスの供給を停止する。例えば、終了処理において、制御部160は、酸素ガスの供給停止、オゾン発生器122の停止、各分岐経路112の遮断等を行う。
【0064】
以上のように、オゾン供給システム100は、廃棄部200につながる廃棄用分岐経路115にオゾン含有ガスを排出することで、オゾン発生器122内の圧力を一定とすることができる。これにより、オゾン供給システム100は、オゾン発生器122内において濃度が一定のオゾン含有ガスを安定的に生成できるようになり、また生成したオゾン含有ガスを各処理容器10に良好に供給することができる。
【0065】
また一例として、オゾン供給システム100は、第2処理容器10Bへのオゾン含有ガスの供給を停止した場合でも、第2処理容器10Bへ流すオゾン含有ガスを廃棄用分岐経路115に回すことができる。このため、第1処理容器10Aに対しては、オゾン含有ガスの流量を変えずに済む。よって、例えばトラブル等の発生時でも、基板処理装置1は、第1処理容器10Aおよび第2処理容器10Bで処理している基板Wを両方とも無駄にすることを回避できる。
【0066】
なお、オゾン供給システム100は、上記の構成に限定されず、種々の変形例を採り得る。例えば、オゾン供給システム100がオゾン含有ガスを供給する供給対象は、2つに限定されず、3以上であってもよいことは勿論である。
【0067】
逆に、複数の処理容器10にオゾン含有ガスを供給することに限定されず、オゾン供給システム100は、1つの処理容器10に対してオゾン含有ガスを供給する構成でもよい。この場合でも、オゾン供給システム100は、2つの分岐経路112を有し、一方の分岐経路112が1つの処理容器10に接続され、他方の分岐経路112が廃棄部200に接続される構成をとり得る。あるいは、オゾン供給システム100は、3以上の分岐経路112を有し、1つの分岐経路112が廃棄部200に接続され、他の複数の分岐経路112が1つの処理容器10に接続される構成でもよい。
【0068】
また例えば、
図6に示すように、オゾン供給システム100は、廃棄用流量調整部として廃棄用MFC150(マスフローコントローラ)の代わりに、廃棄用分岐経路115内の流路の開度を調整可能な廃棄用流量調整バルブ152を備えてもよい。廃棄用流量調整バルブ152は、廃棄用分岐経路115を流通するオゾン含有ガスの流量を容易に調整することができる。要するに、オゾン供給システム100は、廃棄用流量調整部として廃棄用分岐経路115を流通するオゾン含有ガスの流量を調整可能な種々の構成を採用してよい。
【0069】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0070】
本開示の第1の態様に係るオゾン供給システム100は、ガスを供給する供給経路110と、供給経路110に設けられ、供給経路110の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器122と、を有し、供給経路110は、オゾン発生器122よりも下流側で複数の分岐経路112に分岐しており、複数の分岐経路112のうち少なくとも1つは、オゾン含有ガスを使用する処理部(処理容器10)に接続される処理用分岐経路(第1処理用分岐経路113、第2処理用分岐経路114)であり、複数の分岐経路112のうちの残りは、オゾン含有ガスを排出する廃棄部200に接続される廃棄用分岐経路115であり、廃棄用分岐経路115は、オゾン含有ガスの流量を調整する廃棄用流量調整部(廃棄用MFC150、廃棄用流量調整バルブ152)を備える。
【0071】
上記によれば、オゾン供給システム100は、オゾン発生器122から送出した一部のオゾン含有ガスを廃棄用分岐経路115に流すので、オゾン発生器122および供給経路110の圧力の変動分を廃棄用分岐経路115の流量変化で補うことができる。すなわち、オゾン供給システム100は、廃棄用MFC150や廃棄用流量調整バルブ152により廃棄用分岐経路115のオゾン含有ガスの流量を調整することで、複数の分岐経路112よりも上流側のオゾン発生器122内の圧力を安定化できる。これにより、オゾン発生器122は、オゾンを安定して生成することが可能となる。
【0072】
また、オゾン発生器122と複数の分岐経路112の分岐点Sとの間の供給経路110に圧力センサ123を備えるとともに、圧力センサ123が検出した圧力値に基づき、廃棄用流量調整部(廃棄用MFC150、廃棄用流量調整バルブ152)によるオゾン含有ガスの流量の調整を制御する制御部160を有する。これにより、オゾン供給システム100は、圧力センサ123の圧力値に基づき、適切な流量のオゾン含有ガスを廃棄用分岐経路115から排出することができる。
【0073】
また、制御部160は、圧力センサ123の圧力値が目標圧力で一定となるように、廃棄用流量調整部(廃棄用MFC150、廃棄用流量調整バルブ152)を制御する。これにより、オゾン供給システム100は、オゾン発生器122内の圧力が一定となり、生成するオゾンの濃度等を安定化することが可能となる。
【0074】
また、制御部160は、目標圧力よりも圧力値が低い場合に廃棄用流量調整部(廃棄用MFC150、廃棄用流量調整バルブ152)を制御してオゾン含有ガスの流量を少なくする一方で、目標圧力よりも圧力値が高い場合に廃棄用流量調整部を制御してオゾン含有ガスの流量を多くする。これにより、オゾン供給システム100は、オゾン発生器122内の圧力を簡単かつ精度よく一定にすることができる。
【0075】
また、供給経路110は、複数の処理部(第1処理容器10A、第2処理容器10B)に各々接続される複数の処理用分岐経路(第1処理用分岐経路113、第2処理用分岐経路114)と、複数の処理用分岐経路の各々に設けられ、複数の処理部に供給するオゾン含有ガスの流量を調整する処理用流量調整部(第1処理用MFC130、第2処理用MFC140)と、を有する。このようにオゾン含有ガスを複数の処理部に供給することで、オゾン供給システム100は、製造コストやフットプリント削減を促進することが可能となる。また、この構成でも、廃棄用分岐経路115および廃棄用流量調整部によって、オゾン発生器122におけるオゾン含有ガスの生成を安定化できる。
【0076】
また、複数の処理用流量調整部(第1処理用MFC130、第2処理用MFC140)は、オゾン含有ガスの流量を相互に同一に調整する。これにより、オゾン供給システム100は、複数の処理部(第1処理容器10A、第2処理容器10B)の各々に供給されたオゾン含有ガスにより、同じ処理を安定して実施させることができる。
【0077】
また、廃棄用流量調整部は、マスフローコントローラ(廃棄用MFC150)である。これにより、オゾン供給システム100は、廃棄用分岐経路115を流通するオゾン含有ガスの流量を精度よく調整することが可能となる。
【0078】
また、廃棄用流量調整部は、廃棄用分岐経路115の流路の開度を調整する流量調整バルブ(廃棄用流量調整バルブ152)である。この場合でも、オゾン供給システム100は、廃棄用分岐経路115を流通するオゾン含有ガスの流量を簡単に調整できる。
【0079】
また、本開示の第2の態様は、基板Wを処理する処理容器10と、オゾンを含むオゾン含有ガスを処理容器10の内部に供給するオゾン供給システム100と、を備える基板処理装置1であって、オゾン供給システム100は、ガスを供給する供給経路110と、供給経路110に設けられ、供給経路110の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器122と、を有し、供給経路110は、オゾン発生器122よりも下流側で複数の分岐経路112に分岐しており、複数の分岐経路112のうち少なくとも1つは、処理容器10に接続される処理用分岐経路(第1処理用分岐経路113、第2処理用分岐経路114)であり、複数の分岐経路112のうちの残りは、オゾン含有ガスを排出する廃棄部200に接続される廃棄用分岐経路115であり、廃棄用分岐経路115は、オゾン含有ガスの流量を調整する廃棄用流量調整部(廃棄用MFC150、廃棄用流量調整バルブ152)を備える。
【0080】
また、本開示の第3の態様は、ガスを供給する供給経路110と、供給経路110に設けられ、供給経路110の上流側から供給した酸素ガスを用いてオゾンを生成し、当該オゾンを含むオゾン含有ガスを下流側に送出するオゾン発生器122と、を有するオゾン供給システム100のオゾン供給方法であって、供給経路110は、オゾン発生器122よりも下流側で複数の分岐経路112に分岐しており、複数の分岐経路112のうち少なくとも1つである処理用分岐経路(第1処理用分岐経路113、第2処理用分岐経路114)を介して、オゾン含有ガスを処理部(処理容器10)に供給する工程と、複数の分岐経路112のうちの残りである廃棄用分岐経路115を介してオゾン含有ガスを排出するとともに、排出時に廃棄用流量調整部(廃棄用MFC150、廃棄用流量調整バルブ152)によりオゾン含有ガスの流量を調整する工程と、を有する。
【0081】
第2の態様および第3の態様でも、オゾン発生器122におけるオゾンの生成を安定化させることができる。
【0082】
今回開示された実施形態に係るオゾン供給システム100、基板処理装置1およびオゾン供給方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0083】
本開示の基板処理装置1は、ALDに限定されず、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。また、オゾン供給システム100は、オゾン含有ガスを使用する種々の装置に適用可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
100 オゾン供給システム
110 供給経路
112 分岐経路
113 第1処理用分岐経路
114 第2処理用分岐経路
115 廃棄用分岐経路
122 オゾン発生器
150 廃棄用MFC
152 廃棄用流量調整バルブ