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特開2023-81317調味料、食品、野菜類の調理方法及び野菜類の苦味抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081317
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】調味料、食品、野菜類の調理方法及び野菜類の苦味抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230602BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20230602BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230602BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230602BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20230602BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20230602BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/60 A
A23L5/00 H
A23L19/00 Z
A23L19/00 A
A23L5/00 K
A23L23/00
A23L29/219
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187381
(22)【出願日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021194482
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥下 歩
(72)【発明者】
【氏名】庄司 祐子
【テーマコード(参考)】
4B016
4B025
4B035
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG05
4B016LK01
4B016LK06
4B016LK09
4B016LK11
4B016LK12
4B016LK15
4B016LK16
4B016LK20
4B016LP05
4B025LD03
4B025LG02
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4B025LG14
4B025LG18
4B025LG27
4B025LG28
4B025LG29
4B025LG44
4B025LG53
4B025LG54
4B025LG60
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP03
4B025LP10
4B035LC01
4B035LE20
4B035LG12
4B035LG21
4B035LG23
4B035LG25
4B035LG27
4B035LG31
4B035LG32
4B035LG35
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4B035LG43
4B035LK01
4B035LK04
4B035LP01
4B035LP21
4B036LH37
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4B047LE02
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4B047LG03
4B047LG10
4B047LG11
4B047LG26
4B047LG27
4B047LG30
4B047LG41
4B047LG50
4B047LG65
4B047LG66
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】栄養素を維持しつつ、野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制することができる調味料、食品、野菜類の調味方法及び野菜類の苦味抑制方法を提供する。
【解決手段】α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%、及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有し、必要に応じて更に調味成分を含有する調味料を、苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、10~1000質量部の範囲で添加して調理する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦味成分を含む野菜類の調理に用いられる調味料であって、
α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉:合計で0.125~2質量%と、
油脂:2~20質量%と、
増粘剤:1~15質量%と
を含有する調味料。
【請求項2】
B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01~80Pa・sである請求項1に記載の調味料。
【請求項3】
前記増粘剤は小麦粉又はタピオカ由来の加工澱粉である請求項1に記載の調味料。
【請求項4】
前記増粘剤として強力粉を2~15質量%含有する請求項3に記載の調味料。
【請求項5】
更に、調味成分を含む請求項1に記載の調味料。
【請求項6】
前記調味成分としてオイスターソース及びマヨネーズを含み、前記油脂が前記マヨネーズに含まれる油である請求項5に記載の調味料。
【請求項7】
苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、請求項1~6のいずれか1項に記載の調味料が10~1000質量部添加された食品。
【請求項8】
前記野菜がピーマンである請求項7に記載の食品。
【請求項9】
α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を用いて、苦味成分を含む野菜類を調理する野菜類の調理方法。
【請求項10】
加熱前、加熱中又は加熱後の前記野菜類100質量部に対して、前記調味料を10~1000質量部添加する請求項9に記載の野菜類の調理方法。
【請求項11】
苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を、10~1000質量部添加する野菜類の苦味抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苦味成分を有する野菜類の調理に用いられる調味料、該調味料を用いて調理された食品、苦味成分を有する野菜類を調理する方法及び苦味成分を有する野菜類の苦味を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子供が嫌いな野菜類の代表として、ピーマンなどの苦味を呈する野菜類が挙げられる。その一方で、このような苦味を呈する野菜類には豊富な栄養素が含まれているため、子供達に食べさせたいという要望も多い。従来、野菜類の苦味を抑制する方法としては、例えば、ドレッシングを使用する方法(非特許文献1参照)、トレハロースを用いる方法(非特許文献2参照)、タラゴンの粉砕物や抽出物を用いる方法(特許文献1参照)などが提案されている。
【0003】
また、子供達が野菜類を嫌う理由には、苦味の他に、野菜特有の渋味や青臭さもある。このような野菜類の渋味や青臭さを抑制する方法としては、例えば、調味成分と、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉と、増粘剤とを含有する調味料を用いて、野菜類を加熱調理する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-139575号公報
【特許文献2】特開2020-174664号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】堀江秀樹、「ドレッシングの使用がキク科野菜の苦味を緩和する」、日本調理化学会誌、2011年、Vol.44、No.6、p.407~410
【非特許文献2】茶園博人、「新規酵素法によるトレハロースの生産とその利用」、応用糖質化学、1997年、第44巻、第1号、p.115-120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の苦味抑制方法には、以下に示す課題がある。先ず、非特許文献1に記載のドレッシングを用いる方法は、適用できる調理法や料理のジャンルが限られるため、適用範囲が狭いという問題がある。また、非特許文献2に記載の方法は、調理品にトレハロース特有の甘味が付与され、特許文献1に記載の方法は、調理品にハーブ類であるタラゴン特有の香りが調理品に付与されるため、調理品や素材の風味のバランスが崩れやすいという問題がある。一方、特許文献2に記載の調味料は、加熱調理により生じる野菜臭(蒸れ臭や青臭さ)は抑制できるが、野菜類の苦味や渋味までは抑制することができない。
【0007】
そこで、本発明は、栄養素を維持しつつ、野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制することができる調味料、食品、野菜類の調味方法及び野菜類の苦味抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉、油脂及び増粘剤を一定の割合で配合することにより加熱調理、特に炒め調理時に生じる野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制できることを見いだし、本発明に至った。
即ち、本発明に係る調味料は、苦味成分を含む野菜類の調理に用いられる調味料であって、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉:合計で0.125~2質量%と、油脂:2~20質量%と、増粘剤:1~15質量%を含有するものである。
本発明の調味料は、例えばB型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01~80Pa・sである。
また、前記増粘剤は、例えば小麦粉又はタピオカ由来の加工澱粉である。そして、前記増粘剤として強力粉を用いる場合、その配合量は2~15質量%とすることができる。
本発明の調味料は、前述した各成分に加えて、更に調味成分を含んでいてもよい。その場合、前記調味成分としてオイスターソース及びマヨネーズを含み、前記油脂が前記マヨネーズに含まれる油でもよい。
【0009】
本発明に係る食品は、苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、前述した調味料を10~1000質量部添加したものである。
この食品では、前記野菜としてピーマンを用いることができる。
【0010】
本発明に係る野菜類の調理方法は、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を用いて、苦味成分を含む野菜類を調理する。
この調理方法では、例えば加熱前、加熱中又は加熱後の前記野菜類100質量部に対して、前記調味料を10~1000質量部添加することができる。
【0011】
本発明に係る野菜類の苦味抑制方法は、苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を、10~1000質量部添加する。
【0012】
なお、本発明における「苦味成分」は、苦味に寄与する成分をいい、単独で苦味を呈する成分だけでなく、他の成分と共存することで苦味が感じられる成分も含む。また、本発明における「増粘剤」は、液体成分の粘度を上昇させる効果があるものであればよく、一般に増粘剤として使用されている加工澱粉や多糖類の他に、小麦粉や片栗粉なども含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、苦味成分を含む野菜類について、栄養素を維持しつつ、苦味、渋味及び青臭さを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る調味料について説明する。本実施形態の調味料は、苦味成分を含む野菜類の調理に用いられるものであり、少なくともα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%含有し、必要に応じて調味成分が配合される。なお、各成分の含有率は、調味料全質量に対する値である。また、本実施形態の調味料は、液状、ペースト状及び粉体のいずれでもよい。
【0016】
[α化米粉・α化澱粉]
α化処理が施された米粉(以下、「α化米粉」という。)及びα化処理が施された米粉由来の澱粉(以下、「米粉由来のα化澱粉」という。)は、本実施形態の調味料の必須成分であり、野菜臭を低減すると共に、ピラジンなどの苦味に寄与する香気成分を減少又は抑制する作用があり、油脂及び増粘剤と併用することで、野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制する効果が得られる。
【0017】
ただし、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の総含有量が、調味料全質量あたり0.125質量%未満の場合、野菜臭を抑制する効果が十分に得られず、2質量%を超えると粘度が高くなりすぎて調味料としての適性に欠けたものとなる。よって、本実施形態の調味料におけるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の含有量は、合計で0.125~2質量%とする。
【0018】
α化米粉は、例えば原料米の精白米、未熟米、玄米、破砕精米及び白糠などを、蒸煮、焙炒又は炒煎などによって加熱して変性させるか、膨化処理(パフ化)を施すことによってα化した後、粉砕することにより製造することができる。また、米粉由来のα化澱粉は、α化された米粉から澱粉質のみを精製したもの又は米粉由来の澱粉をα化処理したものであり、例えば原料米の澱粉質に水を加えて加熱糊化し、その状態で乾燥することにより製造することができる。
【0019】
なお、本実施形態の調味料に配合されるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、前述した方法で製造されたものに限らず、原料米が粉砕などのように摩擦熱が生じる加工工程を経て、結果としてα化された米粉などを用いてもよい。また、本実施形態の調味料に用いられるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の原料となる米は、うるち米、もち米及びインディカ米などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、黒米や赤米などの古代米など種々の米を用いることができる。
【0020】
本実施形態の調味料にα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の両方を配合する場合、これらの混合比は、特に限定されるものではないが、米粉由来のα化澱粉よりも野菜臭及び苦味の抑制効果が高いα化米粉を多く含むことが好ましく、α化米粉の中でも特に効果が高い膨化処理(パフ化)されたα化米粉を用いることが好ましい。また、本実施形態の調味料を製造する際は、予めα化処理が施された米粉や米粉由来の澱粉を配合してもよいが、α化されていない米粉や米粉由来の澱粉を配合し、調味料の製造過程で高温での加熱処理などを行うことで調味料中の米粉や米粉由来の澱粉をα化してもよい。
【0021】
本実施形態の調味料に配合されるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉のα化度は、野菜臭及び苦味の抑制効果向上の観点から21.6%以上であることが好ましく、より好ましくは31.1%以上である。なお、ここでいうα化度は、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉全体の平均値である。
【0022】
米粉及び米粉由来の澱粉のα化度は、例えば、処理温度や処理時間の調整、pHや攪拌・摩砕などの処理条件の調整、塩類、水分、極性の高い有機物、界面活性剤、脂質、糖類及び親水性高分子などの添加の有無や添加量の調整、湿熱処理にするといった処理方法の変更などのように、α化に影響する要因を1又は2以上変更又は適用することにより、目的とする値にすることができる。また、α化度の低い原料とα化度の高い原料を混合することでも、α化度の調整が可能である。
【0023】
一方、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の粒子径は、特に限定されるものではなく、調理品(食品)の種類などに応じて適宜設定することができるが、メディアン径で14~500μm程度のものが好適である。α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の粒子径をこの範囲にすることにより、他の成分との混合性が向上すると共に、調理に用いた場合に食品にざらつきなどが発生せず、良好な口あたりや食感を得ることができる。
【0024】
[油脂]
油脂も、本実施形態の調味料の必須成分であり、ポリフェノール類などの渋味成分を野菜類から溶出させて苦味をマスキングする作用があり、α化米粉や米粉由来のα化澱粉及び増粘剤と併用することで、野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制することができる。ただし、油脂含有量が、調味料全質量あたり2質量%未満の場合、野菜類の渋味を十分に抑制することができず、20質量%を超えると、小麦粉などの増粘剤が固化し、調理に用いられる調味料としての適性が著しく低下する。よって、本実施形態の調味料における油脂含有量は、2~20質量%とする。
【0025】
本実施形態の調味料に配合される油脂としては、例えばサラダ油、オリーブオイル、ごま油などの植物性油脂、チキンオイルやポークオイルなどの動物性油脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、例えばマヨネーズなどのように油脂を含む市販の調味料を用いることもできる。その場合、市販の調味料に含まれる油脂の量が前述した範囲になるよう配合量を調整すればよい。また、本実施形態の調味料に配合される油脂は、1種類でもよいが、2種類以上の油脂を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
[増粘剤]
増粘剤は、本実施形態の調味料の必須成分であり、調理時に調味料で野菜類をコーティングして、調味料中に含まれるα化米粉や米粉由来のα化澱粉及び油脂を野菜類に付着しやすくする作用があり、α化米粉及び油脂と併用することで、野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制する効果が得られる。ここでいう「増粘剤」は、液体成分の粘度を上昇させる効果があるものであればよく、一般に増粘剤として使用されている加工澱粉や多糖類の他に、小麦粉や片栗粉なども含む。また、本実施形態の調味料に配合される増粘剤は、1種類でもよいが、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
ただし、増粘剤含有量が調味料全質量あたり1質量%未満の場合、苦味、渋味及び青臭さの抑制効果が不十分となり、15質量%を超えると、調味料の粘度が高くなり、調理に用いられる調味料としての適性が著しく低下する。よって、本実施形態の調味料における増粘剤含有量は、1~15質量%とする。
【0028】
本実施形態の調味料に用いられる増粘剤は、野菜類に対するコーティング性能の向上の観点から、小麦粉又はタピオカ由来の加工澱粉が好ましく、小麦粉の中でも特にタンパク質量が多い強力粉が好ましい。また、増粘剤に強力粉を用いる場合、野菜類の苦味、渋味及び青臭さ抑制効果向上の観点から、その含有量は調味料全質量あたり2~15質量%であることが好ましい。また、加工澱粉の種類は、特に限定されるものではないが、野菜類に対するコーティング性能の向上の観点から、タピオカ由来のリン酸架橋澱粉が好ましい。更に、前述した添加効果と調味料としたときの粘度から、タピオカ由来のリン酸架橋澱粉と強力粉を併用することがより好ましい。
【0029】
[調味成分]
調味成分は、必要に応じて配合される任意成分であり、食品の味や風味、外観などを向上させる目的で添加される。調味成分の具体例としては、砂糖、液糖、ブドウ糖、三温糖及び水あめなどの糖類、醤油、塩、味噌類、醸造酢、香辛料、酵母エキス、畜肉系、魚介系又は野菜系のエキスや調味料、みりん、日本酒、ワイン及びエタノールなどの酒類調味料、柚子やカボスなどの柑橘類、ネギやニンニクなどの香味野菜やその加工品、澱粉類などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、調理品に応じて各種調味成分を配合することができる。例えば、ピーマンを含む炒め物を調理する場合、油脂兼調味成分としてマヨネーズを所定量添加し、調味成分として適量のオイスターソースを添加することで、ピーマンの苦味が抑制された野菜炒めを得ることができる。この調理品では、マヨネーズに含まれる油が油脂として作用する。
【0030】
[その他の成分]
本実施形態の調味料が液状又はペースト状の場合、濃度や粘度を調整するために、調味成分由来の水とは別に、水が添加されていてもよい。また、本実施形態の調味料には、具材として、豚肉や牛肉などの肉類、魚介類、海藻類、野菜類、きのこ類、果実及びそれらの加工品などが配合されていてもよく、これらの具材と調味液とを含む液状調味料とすることもできる。具材入り液状調味料の場合、例えばα化米粉と、油脂と、増粘剤を含む調味液に、加熱された又は非加熱の具材を添加することで製造することができる。
【0031】
[粘度]
本実施形態の調味料が液状である場合、B型粘度計により測定した25℃における粘度が0.01~80Pa・sであることが好ましい。この範囲であれば、調味料と野菜類とを容易に混ぜ合わせることができる。なお、ここでいう「粘度」は、18メッシュの篩いを通過させることにより液状調味料から固形分を取り除いて得られる液体成分(調味液)について、その粘度に応じて6~60rpmの範囲の任意の回転数でローターを30秒間回転させて測定した値である。
【0032】
[使用方法]
次に、本実施形態の調味料の使用方法、即ち、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を用いて野菜類の苦味を抑制する方法について説明する。本実施形態の調味料によって苦味などが抑制される野菜類は、ピリジン類やポリフェノール類などの苦味に寄与する成分を含んでいるものであればよく、特にピーマンが好適である。また、本実施形態の調味料により抑制可能な苦味に寄与する成分としては、クエルシトリン、2-イソブチル3-メトキシピラジン、ククルビタシン類、モモルデシン、リモノイド、イソチオシアネート、ミョウガジアールなどが挙げられる。
【0033】
本実施形態の調味料は、苦味成分を含む野菜100質量部に対して、10~1000質量部添加される。苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、調味料の添加量が10質量部未満の場合、野菜類の苦味を十分に抑制することができず、調味料の添加量が1000質量部を超えると、調味料の量が過剰となり、調理品の香味バランス崩れたり、食感や外観が損なわれたりする虞がある。なお、本実施形態の調味料の添加方法は、特に限定されるものではなく、加熱された野菜類に混ぜ合わせてもよく、また、野菜類と共に加熱調理してもよい。また、本実施形態の調味料は、そのまま使用することができるが、水や湯などで所定濃度に希釈して使用してもよい。その際は、液体成分の粘度が前述した範囲になるようにすることが好ましい。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態の調味料は、α化米粉と、油脂と、増粘剤が特定の割合で配合されているため、栄養素を維持しつつ、野菜類を加熱した際に生じる苦味、渋味及び青臭さを抑制することができる。また、本実施形態の調味料の必須成分であるα化米粉、油脂及び増粘剤は、野菜類の香味や食感を阻害しないため、本実施形態の調味料は、様々な料理(食品)に利用することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る食品について説明する。本実施形態の食品は、苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、前述した第1の実施形態の調味料が10~1000質量部添加されたものである。本実施形態の食品に用いられる野菜類は、苦味成分を含むものであればよく、ピーマン、ゴーヤ、キャベツ、レタス、オクラ及びミョウガなどが挙げられる。また、本実施形態の食品には、肉類、魚介類、海藻類及び豆腐などの野菜類以外の具材、苦味成分を有しない野菜類、ご飯及びうどんなどが含まれていてもよい。
【0036】
[調理方法]
次に、本実施形態の食品の製造方法、即ち、前述した第1の実施形態の調味料を用いて野菜類を調理する方法について説明する。本実施形態の食品は、前述したα化米粉を0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を用いて、苦味成分を含む野菜類を調理することにより得られる。その際の調理方法は、特に限定されず、ゆでる、煮る、蒸す、炊く、焼く、揚げる、炒めるなどいずれの方法でもよい。
【0037】
また、本実施形態の野菜類の調理方法では、加熱前、加熱中又は加熱後の野菜類100質量部に対して、前述した調味料を10~1000質量部添加する。これにより、栄養素を維持しつつ、加熱により生じる野菜類の苦味、渋味及び青臭さを抑制することができる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態の食品は、α化米粉と、油脂と、増粘剤が特定の割合で配合された調味料を用いて調理されたものであるため、栄養素を維持しつつ、野菜類を加熱した際に生じる苦味、渋味及び青臭さを抑制されており、子供でも抵抗なく食することが可能となる。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
【0040】
<第1実施例>
先ず、本発明の第1実施例として、調味料の必須成分について検討を行った。具体的には、下記表1に示す組成で調製したNo.1~12の各調味料を用いてピーマンの炒め物を調理し、苦味などの抑制効果について評価した。なお、下記表1に示す「α化米粉A」はうるち米を原料としα化度が約80%α化米粉、「α化米粉B」はうるち米を原料としα化度が94.42%のα化米粉、「α化米粉C」はα化米粉Bにうるち米の米粉(α化度15.3%)を混合してα化度を54.86%にしたものである。また、「米粉」はうるち米をα化せずに粉砕した米粉(α化度15.3%)である。
【0041】
【表1】
【0042】
〔評価方法〕
先ず、乱切りにしたピーマンを中火で約5分間炒めた後、No.1~12の各調味料をピーマンの全質量の半量(50質量%)添加し、よく混ぜ合わせて評価用サンプル(ピーマンの炒め物)を作製した。次に、各評価用サンプルについて、3名の分析型官能評価パネルにより官能評価を実施した。
【0043】
「苦味」、「渋味」及び「青臭さ」の強度は、ピーマンを食塩水で炒めたNo.1(比較例)のサンプルを基準とし、以下に示す4段階で評価した。
4点:強く感じる(比較例1と同等以上)
3点:感じる
2点:わずかに感じる
1点:ほとんど感じない
【0044】
そして、3名の評価パネルによる評価の合計点に基づき、「苦味」、「渋味」、「青臭さ」の各項目について以下の基準で評価した。
3~4点:◎(優)
5~6点:○(良)
7~9点:△(可)
10点以上:×(不可)
【0045】
総合評価は、各項目の評価が◎又は○であったものをA、1つ以上△があったものをB、1つでも×があったものをCとし、A又はBを合格とした。以上の評価結果を下記表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
上記表2に示すように、本発明の比較例であり、α化米粉、米粉由来のα化澱粉、油脂及び増粘剤のいずれも配合していないNo.1の調味料を用いたサンプルと、増粘剤を配合せず、α化米粉及び油脂のみを配合したNo.4の調味料を用いたサンプルは、苦味、渋味及び青臭さのいずれも強く感じられた。一方、本発明の比較例であり、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉のいずれも配合せず、油脂及び増粘剤のみを配合したNo.2の調味料を用いたサンプルは、渋味は抑制でき、苦味もわずかに感じられる程度であったが、青臭さが強く感じられた。
【0048】
本発明の比較例であり、油脂を配合せず、α化米粉及び増粘剤のみを配合したNo.3の調味料を用いたサンプルは、青臭さは抑制でき、苦味もわずかに感じられる程度であったが、渋味が強く感じられた。また、本発明の比較例であり、α化米粉の代わりにα化していない米粉を用いたNo.8の調味料のサンプルは、苦味及び渋味はNo.1より低減していたが、ピーマンの青臭さが強く感じられた。更に、タピオカ由来のα化澱粉を用いたNo.10の調味料のサンプル、ワキシコーン由来のα化澱粉を用いたNo.11の調味料のサンプルは、渋味はわずかに感じられる程度であったが、苦味及びピーマンの青臭さが強く感じられた。
【0049】
これに対して、本発明の実施例であり、本発明の範囲でα化米粉、油脂及び増粘剤を配合したNo.5~7,9,12の調味料を用いたサンプルは、苦味、渋味及び青臭さのいずれも感じられなかった。なお、No.5の調味料について、B型粘度計により、ローターNo.3、回転数6rpmの条件で、25℃における粘度を測定したところ、6.7Pa・sであった。
【0050】
<第2実施例>
次に、本発明の第2実施例として、α化米粉の配合量について検討を行った。具体的には、α化米粉A(うるち米を原料としα化度が約80%α化米粉)の配合量を変えた実施例及び比較例の各調味料を用いて、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果について評価した。各調味料の組成を下記表3に、評価結果を下記表4に示す。なお、表3,4には、比較のため表1,2に示すNo.1,2,5の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
上記表4に示すように、本発明の実施例であり、α化米粉の含有量が、調味料全質量あたり0.125~2質量%で、油脂及び増粘剤の含有量も本発明の範囲内であるNo.5,22~26の調味料を用いたサンプルは、比較例であるNo.1,2の調味料を用いたサンプルよりも苦味、渋味及び青臭さが低減していた。特に、α化米粉の含有量が0.5質量%以上であるNo.5,24~26の調味料を用いたサンプルでは、苦味、渋味及び青臭さのいずれも感じられず、苦味などの抑制効果が高かった。
【0054】
一方、α化米粉の含有量が調味料全質量あたり0.1質量%である比較例のNo.21の調味料を用いたサンプルは、渋味は抑制できたが、苦味が感じられ、青臭さが強く感じられた。また、α化米粉の含有量が調味料全質量あたり2質量%を超えている比較例のNo.27の調味料は、評価ができないほど高粘度となり、調味料としての適性に欠けたものであった。
【0055】
<第3実施例>
次に、本発明の第3実施例として、油脂の配合量について検討を行った。具体的には、サラダ油の配合量を変えた実施例及び比較例の各調味料を用いて、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果について評価した。各調味料の組成を下記表5に、評価結果を下記表6に示す。なお、表5,6には、比較のため表1,2に示すNo.1,3,5の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
上記表6に示すように、本発明の比較例であり、サラダ油の含有量が2質量%未満であるNo.31の調味料を用いたサンプルは、青臭さは抑制できたが、苦味が感じられ、渋味は強く感じられた。また、サラダ油の含有量が調味料全質量あたり20質量%を超えている比較例のNo.37の調味料は、評価ができないほど高粘度となり、調味料としての適性に欠けたものであった。
【0059】
これに対して、本発明の実施例であり、サラダ油の含有量が調味料全質量あたり2~20質量%で、α化米粉及び増粘剤の含有量も本発明の範囲内であるNo.5,32~36の調味料を用いたサンプルは、比較例であるNo.1,3,31の調味料を用いたサンプルよりも苦味、渋味及び青臭さが低減していた。特に、サラダ油の含有量が6.5質量%以上であるNo.5,34~36の調味料を用いたサンプルでは、苦味、渋味及び青臭さのいずれも感じられず、苦味などの抑制効果が高かった。
【0060】
<第4実施例>
次に、本発明の第4実施例として、増粘剤の配合量について検討を行った。具体的には、増粘剤として強力粉、タピオカ由来の加工澱粉A(アセチル化リン酸架橋澱粉)、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナンを用い、その配合量を変えて実施例及び比較例の調味料を調製し、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で苦味などの抑制効果について評価した。
【0061】
各調味料の組成を下記表7に、評価結果を下記表8に示す。なお、表7,8には、比較のため表1,2に示すNo.1,4,5の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。また、No.43の調味料について、B型粘度計により、ローターNo.4、回転数6rpmの条件で、25℃における粘度を測定したところ、25.7Pa・sであった。
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
上記表8に示すように、本発明の実施例であり、増粘剤の含有量が調味料全質量あたり1~15質量%で、α化米粉及び増粘剤の含有量も本発明の範囲内であるNo.5,41~44,46~48,51~53の調味料を用いたサンプルは、比較例であるNo.1,4の調味料を用いたサンプルよりも苦味、渋味及び青臭さが低減していた。特に、増粘剤として強力粉を用いた調味料は、青臭さの抑制効果が高かった。
【0065】
一方、増粘剤の含有量が調味料全質量あたり1質量%未満のNo.49,50の調味料は、苦味、渋味及び青臭さが強く感じられた。また、増粘剤含有量が15質量%を超えるNo.45の調味料は、評価ができないほど高粘度となり、調味料としての適性に欠けたものであった。
【0066】
<第5実施例>
次に、本発明の第5実施例として、調味料に配合する油脂の種類について検討を行った。具体的には、油脂の配合量を固定し、種類を変えて調製した各調味料を用いて、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果について評価した。各調味料の組成を下記表9に、評価結果を下記表10に示す。なお、表9,10には、比較のため表1,2に示すNo.1,5の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。また、下記表9,10に示すNo.55~57の調味料は本発明の範囲内の実施例である。
【0067】
【表9】
【0068】
【表10】
【0069】
上記表10に示すように、サラダ油以外の油脂を用いたNo.55~57の調味料は、No.5の調味料と同様に、苦味、渋味及び青臭さのいずれも感じられず、苦味などの抑制効果が高かった。
【0070】
<第6実施例>
次に、本発明の第6実施例として、調味料に配合する増粘剤の種類について検討を行った。具体的には、増粘剤の配合量を固定し、種類を変えて調製した各調味料を用いて、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果について評価した。各調味料の組成を下記表11に、評価結果を下記表12に示す。なお、表11,12には、比較のため表1,2に示すNo.1,5及び上記表7,8に示すNo.46の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。
【0071】
また、下記表11に示す「加工澱粉A」はタピオカ由来のアセチル化リン酸架橋澱粉であり、「加工澱粉B」は馬鈴薯由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、「加工澱粉C」はワキシコーン由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であり、「架橋澱粉D」はワキシコーン由来のアセチル化アジピン酸架橋澱粉である。
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
上記表11,12に示すNo.46,61~65の調味料は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。上記表12に示すように、増粘剤として中力粉を用いたNo.61の調味料、薄力粉を用いたNo.62の調味料及び加工澱粉A~Dを用いたNo.46,63~65の調味料は、苦味、渋味及び青臭さを低減する効果が確認された。特に、増粘剤に強力粉を用いたNo.5の調味料と、加工澱粉C,Dを用いたNo.64,65の調味料が、苦味、渋味及び青臭さの抑制効果が高かった。
【0075】
<第7実施例>
次に、本発明の第7実施例として、油脂としてマヨネーズ(油脂含有量76.6質量%)を使用した場合について、サラダ油との併用及び調味成分の添加について検討した。調味成分にはオイスターソースを用いた。各調味料は、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果を評価した。各調味料の組成を下記表13に、評価結果を下記表14に示す。なお、表13,14には、比較のため表1,2に示すNo.1,5の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。また、下記表13,14に示すNo.5,71~74の調味料は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0076】
【表13】
【0077】
【表14】
【0078】
上記表14では、No.5の調味液の評価結果と、No.71~74の調味液の評価結果が同等となっているが、油脂としてマヨネーズを添加したNo.71~74の調味料は、No.5の調味料よりも苦味、渋味及び青臭さの抑制効果が高く、マヨネーズに加えて、調味成分としてオイスターソースを添加したNo.72の調味料は、更に苦味などの抑制効果が向上していた。
【0079】
<第8実施例>
次に、本発明の第8実施例として、調味料の粘度の影響について検討した。具体的には、粘度が異なる調味料を用いて、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果について評価した。各調味料の組成及び粘度を下記表15に、評価結果を下記表16に示す。なお、表15,16には、比較のため表7,8に示すNo.41,42,43,44の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。
【0080】
【表15】
【0081】
【表16】
【0082】
上記表15,16に示す各調味料は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。上記表16に示すように、No.5,41~44,81,82の調味料では、苦味、渋味及び青臭さを低減する効果が確認された。
【0083】
<第9実施例>
次に、本発明の第9実施例として、調味料の組成について検討した。具体的には、下記表17に示す組成の調味料について、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果について評価した。その結果を下記表18に示す。なお、表17,18には、比較のため表1,2に示すNo.1,5の調味料の組成及び評価結果を併せて示す。
【0084】
【表17】
【0085】
【表18】
【0086】
上記表18に示すように、本発明の実施例であるNo.5,91,92の各調味料は、いずれも苦味、渋味及び青臭さを低減する効果が確認された。
【0087】
<第10実施例>
次に、本発明の第10実施例として、野菜類の調理方法について検討を行った。前述した第1実施例では炒めたピーマンに調味料を添加して混ぜ合わせたものを評価したが、本実施例では、調味料を添加して混ぜ合わせた後で炒め調理を行った。具体的には、乱切りにしたピーマンを中火で約5分間炒めた後、No.1の調味料をピーマンの全質量の半量(50質量%)添加し、よく混ぜ合わせ、更に中火で約1分間炒めた。
【0088】
そして、得られた調理品(ピーマンの炒め物)を前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果を評価した。評価結果を下記表19に示す。なお、表19には、比較のため第1実施例の方法で作製した調理品の評価結果を併せて示す
【表19】
【0089】
上記表19に示すように、調味料添加後に炒め調理を行った場合も苦味、渋味及び青臭さが感じられず、炒め調理を行わなかった場合と同等の苦味抑制効果が得られた。
【0090】
<第11実施例>
次に、本発明の第11実施例として、ピーマン以外の野菜類について検討を行った。具体的には、ゴーヤを薄切りにし、中火で5分間炒めた後、食塩4g、α化米粉0.5g、サラダ油6.5g、強力粉6.5g、水82.5gを配合した調味料をゴーヤの質量の半量添加し、よく混ぜ合わせて評価用サンプルとした。本実施例では、比較のため、前述した調味料に代えて、食塩4gに水を96g加えた食塩水を用い、同様の方法で比較用サンプルを作製した。
【0091】
これら評価用サンプルと比較用サンプルを、前述した第1実施例と同様の方法及び基準で、苦味などの抑制効果を評価した。その結果、食塩水で調理した比較用サンプルは、全項目で評点の合計が12点(×)であり、苦味、渋味及び青臭さの全てについてピーマンよりも強く感じられた。これに対して、本発明の範囲内で調製された調味料を用いて調理した評価用サンプルは、苦味の評点の合計は3点(◎)であり、本発明の調味料はゴーヤの苦味も抑制できることが確認された。また、渋味及び青臭さは共に評点の合計が6点(○)であり、後味に渋味と青臭さが残るが、いずれも比較用サンプルに比べ著しく低下していた。
【0092】
以上の結果から、本発明によれば、苦味成分を含む野菜類について、栄養素を維持しつつ、苦味、渋味及び青臭さを抑制することができることが確認された。
【0093】
なお、本発明は、以下の構成を採ることもできる。
〔1〕
苦味成分を含む野菜類の調理に用いられる調味料であって、
α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉:合計で0.125~2質量%と、
油脂:2~20質量%と、
増粘剤:1~15質量%と
を含有する調味料。
〔2〕
B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01~80Pa・sである〔1〕に記載の調味料。
〔3〕
前記増粘剤は小麦粉又はタピオカ由来の加工澱粉である〔1〕又は〔2〕に記載の調味料。
〔4〕
前記増粘剤として強力粉を2~15質量%含有する〔3〕に記載の調味料。
〔5〕
更に、調味成分を含む〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の調味料。
〔6〕
前記調味成分としてオイスターソース及びマヨネーズを含み、前記油脂が前記マヨネーズに含まれる油である〔5〕に記載の調味料。
〔7〕
苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の調味料が10~1000質量部添加された食品。
〔8〕
前記野菜がピーマンである〔7〕に記載の食品。
〔9〕
α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を用いて、苦味成分を含む野菜類を調理する野菜類の調理方法。
〔10〕
加熱前、加熱中又は加熱後の前記野菜類100質量部に対して、前記調味料を10~1000質量部添加する〔9〕に記載の野菜類の調理方法。
〔11〕
苦味成分を含む野菜類100質量部に対して、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で0.125~2質量%、油脂を2~20質量%及び増粘剤を1~15質量%を少なくとも含有する調味料を、10~1000質量部添加する野菜類の苦味抑制方法。