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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081528
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】医療用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/008 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
A61B1/008 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195299
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋 辰也
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161DD03
4C161HH33
4C161HH34
4C161HH36
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】簡素かつコンパクトな構成で操作性および利便性に優れた医療用デバイスを提供する。
【解決手段】操作機構は、長尺部材に連結された把持可能なケースと、ケースに対して回動可能に配置された回動操作板を有する操作部材と、長尺部材の近位端側で回動操作板と操作線材との間に介在し、回動操作板の回動に応じて操作線材を軸線方向に互いに逆方向に移動させるとともに、少なくとも片方の操作線材に張力を発生させる操作伝達部材と、ケースに対して相対的に固定された位置に設けられており、回動操作板の外周面に摺動可能に接触するとともに回動操作板を回動可能に保持する操作板接触壁部41、42とを含んで構成されている。操作板接触壁部41、42は、操作伝達部材を介して少なくとも片方の操作線材の張力を受けた回動操作板の外周面に摩擦接触して回動操作板の回動を制限するストッパ面41a、41b、42a、42bを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能な被操作部が遠位端側に配置された長尺部材と、
前記長尺部材の近位端側に連結された操作機構と、
前記長尺部材に取り付けられて前記被操作部と前記操作機構の間に操作伝達可能に介在する第1および第2の操作線材と、を備えた医療用デバイスであって、
前記操作機構は、
前記長尺部材に連結された把持可能なケースと、
前記ケースに対して回動可能に配置された回動操作板を有する操作部材と、
前記長尺部材の近位端側で前記回動操作板と前記第1および第2の操作線材との間に介在し、前記回動操作板の回動に応じて前記第1および第2の操作線材を軸線方向に互いに逆方向に移動させるとともに、少なくとも片方の操作線材に張力を発生させる操作伝達部材と、
前記ケースに対して相対的に固定された位置に設けられており、前記回動操作板の外周面に摺動可能に接触するとともに前記回動操作板を回動可能に保持する操作板接触壁部と、を含んで構成されており、
前記操作板接触壁部が、前記操作伝達部材を介して前記少なくとも片方の操作線材の張力を受けた前記回動操作板の外周面に摩擦接触して前記回動操作板の回動を制限するストッパ面を有することを特徴とする医療用デバイス。
【請求項2】
前記操作部材が、前記回動操作板の回動中心に対して径方向両側に突出して設けられた一対のハンドルを有しており、
前記操作部材の回動操作時に、前記第1および第2の操作線材のうち前記近位端部を近位側に引き込み操作する側の前記ハンドルを該引き込み方向に操作することで、前記回動操作板の回動制限状態を解除可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記ハンドルの前記引き込み方向への操作を解除したとき、前記第1および第2の操作線材のうち前記近位端部を近位側に引き込み操作した側で、前記回動操作板の外周面に前記ストッパ面が摩擦接触することで、前記回動操作板の回動が制限されることを特徴とする請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記操作板接触壁部の前記ストッパ面が、前記少なくとも片方の操作線材の張力を受けた前記回動操作板によって加圧される位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記回動操作板の回動中心を通る回動軸を含み前記第1および第2の操作線材の軸線方向に展延する面に対して対称な位置に、一対の前記ストッパ面が配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記回動操作板の外周面および前記操作板接触壁部の前記ストッパ面が、前記回動操作板の回動軸に平行な回転周面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記回動操作板の外周面の板厚方向の幅が、同方向における前記ストッパ面の壁面幅と同等であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記回動操作板の外周面および前記ストッパ面の少なくとも一方の摩擦係数が高くなるよう加工されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記操作部材が、前記回動操作板の板面に設けられたリブ状または溝状の回動カムを有するとともに、
前記操作伝達部材が、前記ケースに対して前記第1および第2の操作線材の軸線方向に移動可能であるとともに前記回動操作板の回動中心を挟んで両側に離間して配置され、前記回動カムに係合する第1および第2のフォロワ部材を含んで構成されており、
前記回動操作板の回動に応じて前記回動カムに係合する前記第1および第2のフォロワ部材が互いに逆方向に移動して、前記第1および第2の操作線材を軸線方向に互いに逆方向に移動させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記回動操作板の外周面と前記ストッパ面との間に所定値以上のクリアランスが形成される寸法に設定されており、前記操作部材の操作により前記回動操作板を前記ケース内への引き込み方向に移動させることで、前記回動操作板の外周面が前記ストッパ面に摩擦接触する状態が解除されて前記回動操作板が回動可能となるよう構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に挿入される長尺部材を備え、その遠位端に設けられた被操作部の偏向操作を行うことが可能な医療用デバイスに関し、特に、体内に挿入される長尺部材を備えた内視鏡やカテーテル等の医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低侵襲的な医療手技において、体内に挿入して体内管腔を通過させるために好適な長尺部材を備えた内視鏡やカテーテル等の医療用デバイスが用いられている。長尺部材は概して細径の可撓性部材からなり、長尺部材を体外から体内管腔内に挿入してその遠位端を体内の所望の部位に到達させることで、種々の治療や検査等を行うことができるように構成されている。
【0003】
従来、長尺部材の遠位端に屈曲可能な被操作部が設けられており、体外側における術者の操作により体内に挿入された被操作部を偏向させることを可能にする技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、ハンドルをコンパクト化し、回転板の回転軸からハンドルの基端までの長さを2~11cmとすることにより、ハンドルの基端部を手のひらに押し当てて固定し、カテーテルシャフトの先端部の偏向操作を片手で可能として、操作性を向上させた食道温度測定用カテーテルが記載されている。
【0005】
特許文献2には、把持部分と、把持部分に対してニュートラルな位置から側方に双方向に移動可能なアクチュエータと、アクチュエータを移動された任意の位置に保持するための十分かつ予め定められた力を発生させる単一の作動状態を有すると共に、他の作動状態を有さない自動係止機構と、を備える、カテーテル用カテーテルハンドルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-68744号公報
【特許文献2】特許第5944331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、ハンドル本体をコンパクト化することでハンドルの軽量化を実現しており、カテーテルの先端可撓部分の位置を固定した後、ハンドルを患者の体上に載置したときにハンドルを動きにくくしている。しかしながら、体内での先端可撓部分に力が掛かった場合や予期せぬ接触によるハンドル操作が行われた場合等においては、先端可撓部分の方向が簡単に変化してしまうという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の技術は、カテーテルの遠位端を偏向させるアクチュエータを操作者により設定された位置に保持する自動係止機構を備えたものである。特許文献2に記載の自動係止機構は、ワッシャ、ブッシング、ねじ等を備えて操作ワイヤに所定の張力が生じるようにねじが締め付けられているとともに、さらにベルビルワッシャやスプリング等の緊張部材を備えた構成であり、複数の部品を複雑に組み合わせる必要があるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡素かつコンパクトな構成で操作性および利便性に優れた医療用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る医療用デバイスは、屈曲可能な被操作部が遠位端側に配置された長尺部材と、
前記長尺部材の近位端側に連結された操作機構と、
前記長尺部材に取り付けられて前記被操作部と前記操作機構の間に操作伝達可能に介在する第1および第2の操作線材と、を備えた医療用デバイスであって、
前記操作機構は、
前記長尺部材に連結された把持可能なケースと、
前記ケースに対して回動可能に配置された回動操作板を有する操作部材と、
前記長尺部材の近位端側で前記回動操作板と前記第1および第2の操作線材との間に介在し、前記回動操作板の回動に応じて前記第1および第2の操作線材を軸線方向に互いに逆方向に移動させるとともに、少なくとも片方の操作線材に張力を発生させる操作伝達部材と、
前記ケースに対して相対的に固定された位置に設けられており、前記回動操作板の外周面に摺動可能に接触するとともに前記回動操作板を回動可能に保持する操作板接触壁部と、を含んで構成されており、
前記操作板接触壁部が、前記操作伝達部材を介して前記少なくとも片方の操作線材の張力を受けた前記回動操作板の外周面に摩擦接触して前記回動操作板の回動を制限するストッパ面を有することを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、回動操作板の回転運動を第1および第2の操作線材の進退運動に変換することが可能な構成において、回動操作板の外周面に摩擦接触するストッパ面によって、回動操作板および第1および第2の操作線材の位置を維持することができ、簡素かつコンパクトな構成で操作性および利便性に優れた医療用デバイスを提供することができる。特に、本発明に係る医療用デバイスは、内視鏡やカテーテル等を構成する長尺部材の遠位端側に配置された被操作部を所望の偏向方向に屈曲させて被操作部の偏向方向を固定する際の操作性に優れている。
【0012】
本発明に係る医療用デバイスは、前記操作部材が、前記回動操作板の回動中心に対して径方向両側に突出して設けられた一対のハンドルを有しており、
前記操作部材の回動操作時に、前記第1および第2の操作線材のうち前記近位端部を近位側に引き込み操作する側の前記ハンドルを該引き込み方向に操作することで、前記回動操作板の回動制限状態を解除可能にしてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、操作部材のハンドルを片手操作することで、回動操作板および第1および第2の操作線材の位置が維持された状態を解除して操作を再開することが容易となる。
【0014】
本発明に係る医療用デバイスは、前記ハンドルの前記引き込み方向への操作を解除したとき、前記第1および第2の操作線材のうち前記近位端部を近位側に引き込み操作した側で、前記回動操作板の外周面に前記ストッパ面が摩擦接触することで、前記回動操作板の回動が制限されてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、片手操作するハンドルの引き込み方向への操作を解除した場合に、その時点での操作位置を確実に維持することができる。
【0016】
本発明に係る医療用デバイスは、前記操作板接触壁部の前記ストッパ面が、前記少なくとも片方の操作線材の張力を受けた前記回動操作板によって加圧される位置に配置されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、片手操作するハンドルの引き込み方向への操作を解除した場合に、少なくとも片方の操作線材の張力により回動操作板がストッパ面に向かって加圧されて、回動操作板の外周面にストッパ面が摩擦接触し、その時点での操作位置を確実に維持することができる。
【0018】
本発明に係る医療用デバイスは、前記回動操作板の回動中心を通る回動軸を含み前記第1および第2の操作線材の軸線方向に展延する面に対して対称な位置に、一対の前記ストッパ面が配置されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、回動操作板に対して対称な位置に一対のストッパ面が設けられており、第1および第2の操作線材の少なくとも一方の張力を受けて回動操作板が一方および他方の回動方向のいずれに回動しようとしても、一対のストッパ面によりその回動を制限して操作位置を確実に維持することができる。
【0020】
本発明に係る医療用デバイスは、前記回動操作板の外周面および前記操作板接触壁部の前記ストッパ面が、前記回動操作板の回動軸に平行な回転周面に対して傾斜していてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、回動操作板の外周面とストッパ面との接触面を傾斜させることで接触面における力の向きおよび接触面積を有効に制御でき、回動操作板の外周面に対するストッパ面の摩擦抵抗を大きくしてストッパ効果を高めることができる。
【0022】
本発明に係る医療用デバイスは、前記回動操作板の外周面の板厚方向の幅が、同方向における前記ストッパ面の壁面幅と同等であってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、回動操作板の外周面とストッパ面との接触面積を大きくすることで回動操作板の外周面とストッパ面との摩擦抵抗を大きくすることができ、ストッパ効果を高めることができる。
【0024】
本発明に係る医療用デバイスは、前記回動操作板の外周面および前記ストッパ面の少なくとも一方の摩擦係数が高くなるよう加工されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、回動操作板の外周面およびストッパ面の少なくとも一方の摩擦係数を大きくすることで回動操作板の外周面とストッパ面との摩擦抵抗を大きくでき、ストッパ効果を高めることができる。
【0026】
本発明に係る医療用デバイスは、前記操作部材が、前記回動操作板の板面に設けられたリブ状または溝状の回動カムを有するとともに、
前記操作伝達部材が、前記ケースに対して前記第1および第2の操作線材の軸線方向に移動可能であるとともに前記回動操作板の回動中心を挟んで両側に離間して配置され、前記回動カムに係合する第1および第2のフォロワ部材を含んで構成されており、
前記回動操作板の回動に応じて前記回動カムに係合する前記第1および第2のフォロワ部材が互いに逆方向に移動して、前記第1および第2の操作線材を軸線方向に互いに逆方向に移動させてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、簡素かつコンパクトな構成で回動操作板の回転運動を第1および第2のフォロワ部材および第1および第2の操作線材の進退運動に変換することができるとともに、第1および第2の操作線材を軸線方向に操作するために両操作線材を大きく湾曲させたり折り返したりする必要がなく、操作性および利便性に優れた医療用デバイスを提供することができる。
【0028】
本発明に係る医療用デバイスは、前記回動操作板の外周面と前記ストッパ面との間に所定値以上のクリアランスが形成される寸法に設定されており、前記操作部材の操作により前記回動操作板を前記ケース内への引き込み方向に移動させることで、前記回動操作板の外周面が前記ストッパ面に摩擦接触する状態が解除されて前記回動操作板が回動可能となるよう構成されていてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、回動操作板の外周面がストッパ面に摩擦接触した状態からハンドル操作により回動操作板の位置を引き込み方向にずらすことによって、当該摩擦接触する状態を解除することができるとともに、ハンドル操作を止めることで回動操作板の外周面にストッパ面が再び摩擦接触してその位置を固定した状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る医療用デバイスの一例である内視鏡を示す概略構成図である。
図2】本発明に係る医療用デバイスにおいて、長尺部材の被操作部の屈折動作を示す図であり、(a)は被操作部が屈曲せずに真っ直ぐ伸びた状態を示す図、(b)は被操作部が面内一方向に屈曲した状態を示す図、(c)は被操作部が面内一方向に最も屈曲した状態を示す図、(d)は被操作部が面内他方向に屈曲した状態を示す図、(e)は被操作部が面内他方向に最も屈曲した状態を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を上方から見た斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を下方から見た斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を上方から見た分解斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を下方から見た分解斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を下方から見た一部分解斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態において、操作機構の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、操作ノブのハンドルが左右対称な位置にある初期状態を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態において、操作機構の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、操作ノブを一方向に回動させている状態を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態において、操作機構の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、操作ノブを一方向に回動させた後の状態を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態において、操作機構の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、操作ノブを他方向に回動させている状態を示す図である。
図12】本発明の第1実施形態において、操作機構の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、操作ノブを他方向に回動させた後の状態を示す図である。
図13】本発明の第2実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を上方から見た斜視図である。
図14】本発明の第2実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を下方から見た斜視図である。
図15】本発明の第2実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を上方から見た分解斜視図である。
図16】本発明の第2実施形態において、操作機構のケース内に含まれる操作系構成要素を下方から見た分解斜視図である。
図17図13に示す円板部材およびフォロワ部材を模式的に図示した部分透過図である。
図18図17のA-A部分断面図である。
図19】本発明の第2実施形態において、操作機構の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、(a)は操作ノブのハンドルが左右対称な位置にある初期状態、(b)は操作ノブを一方向に回動させた状態、(c)は操作ノブを他方向に回動させた状態を示す図である。
図20】本発明に係るストッパ面に関する派生例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本明細書では、本発明に係る医療用デバイスの使用者である術者を基準として、患者の体内側を遠位側とし、術者の手元側を近位側とする。本明細書において参照する図面は、実際の寸法に対して必ずしも正確な縮尺を有するものではなく、本発明に係る構成を模式的に示すために一部を誇張または簡略化したものである。
【0032】
本発明に係る医療用デバイスは、長尺部材を備えた内視鏡やカテーテル等であり、長尺部材の遠位端側に配置された被操作部を術者が偏向可能に操作できるように構成されたものである。以下、本明細書では、長尺部材として内腔を有する管状部材を備えたシングルユース(単回使用)の内視鏡に対して本発明を適用した構成を一例に挙げて説明するが、本発明は本明細書で説明する構成に限定されるものではない。
【0033】
(内視鏡の構成例)
図1は、本実施形態における医療用デバイスの一例である内視鏡1を示す概略構成図である。図1には、内視鏡1の概略構成が図示されている。図1に示す内視鏡1は、内視鏡1のシャフトを構成する長尺の管状部材2と、術者が操作を行うための操作機構3とを備えている。内視鏡1の使用時には、管状部材2の遠位端2cに配置された画像センサからのビデオ信号を受信してモニタに画像出力を行うイメージングシステムを備えたコントローラ、体液等の吸引を行う吸引ポンプ、生理食塩水や薬液等の灌流水の送水および吸引を行う灌流水制御ポンプ等の各種機器を操作機構3に接続することが可能であるが、図1では図示省略している。本発明は、これらの各種機器と操作機構3との接続態様について特に限定するものではない。
【0034】
管状部材2は、長尺形状を有する細径の可撓性を有する管からなり、体外から体内管腔内に挿入される内視鏡1のシャフトを構成する部材である。術者が体内の治療や検査等を行う際には、管状部材2を体外から体内管腔内へ挿入して、管状部材2の遠位端2cを体内の所望の部位に到達させることができるようになっている。
【0035】
管状部材2は、その延在方向に沿って1つまたは複数の内腔(ルーメンまたはチャネル)が形成された管状構造を有している。例えば、管状部材2の遠位端2cに画像センサや光出力部等が配置されるとともに、管状部材2の内腔には、画像センサからのビデオ信号を伝送する配線や光出力部へ光を伝送する光ファイバ等が挿通され、操作機構3に接続された各種機器により動作制御できるようになっている。さらに、管状部材2の内腔に、鉗子やスネア等の内視鏡用処置具を挿通させたり、灌流水、体液、造影剤等の流体を流通させたりすることができるようになっていてもよい。
【0036】
管状部材2の遠位端側には、術者が操作機構3を用いて屈曲操作可能な可動部である被操作部2aが設けられている。なお、本明細書における屈曲とは、弓なりに曲がる湾曲を含む意味を有する。
【0037】
管状部材2の内部には、2本の操作線材4a、4bが挿通されている。2本の操作線材4a、4bは、被操作部2aと操作機構3との間に操作伝達可能に介在する部材である。2本の操作線材4a、4bは軸線方向に剛性を有しており、近位端から遠位端まで力を伝達するプッシャビリティを有している。後述する図2(a)~(e)に示すように、2本の操作線材4a、4bの遠位端側は、被操作部2aの一部または全体にわたって、管状部材2の断面径方向に対向する位置(すなわち、管状部材2の断面において、管状部材2の中心軸を挟んで反対側となる位置)に固定されている。また、後述する図4または図14に示すように、2本の操作線材4a、4bの近位端側は、それぞれ操作機構3内に配置されたフォロワ部材35、36の線材連結部35d、36dに連結されている。
【0038】
このように2本の操作線材4a、4bが操作機構3と管状部材2の遠位端側との間に配置されていることで、2本の操作線材4a、4bは、フォロワ部材35、36の摺動に連動してそれぞれの軸線方向に移動可能となっており、対向する2本の操作線材4a、4bの軸線方向を含む面内において、被操作部2aを所望の方向に偏向させることができるようになっている。なお、2本の操作線材4a、4bの屈曲を被操作部2aの屈曲に効率的に反映させるために、2本の操作線材4a、4bは、管状部材2の中心軸から離れた管状部材2の周面近傍に配置されることが好ましい。また、本実施形態では、2本の操作線材4a、4bが管状部材2の内部(内腔)に挿通されることによって取り付けられているが、操作線材4a、4bを取り付ける方法はこれに限定されるものではなく、例えば、操作線材4a、4bを管状部材2に沿うようにその外側に配置して、操作線材4a、4bの遠位端側と管状部材2の遠位端側とを固定することによって取り付けてもよい。
【0039】
管状部材2は、体内の治療や検査等に適した寸法に設定されることが好ましく、特に限定されないが、例えば断面径方向の寸法が2~20mm程度、軸方向の寸法が20~200cm程度とすることができる。また、被操作部2aの範囲は、体内の治療または検査の対象部位に応じて適宜設定可能であり、特に限定されないが、例えば管状部材2の遠位端2cから2~10cm程度の範囲とすることができる。
【0040】
管状部材2の材質は、管状部材2に可撓性を持たせる材質であるとともに人体に害の無い材質であることが好ましく、特に限定されないが、例えばポリウレタンまたはポリエチレン、ポリプロピレン等の生体適合性を有する高分子材料であってもよい。また、被操作部2aと中間部2b(被操作部2aよりも近位側の管状部材2)とは同様の材質であってもよい。
【0041】
管状部材2の遠位端側に配置された被操作部2aは、管状部材2の中間部2bと比較して高い可撓性を有することが好ましい。管状部材2の中間部2bは体内管腔に合わせて柔軟に変形できることが好ましく、一方、被操作部2aは、術者による操作により柔軟に偏向できることが好ましい。特に、操作機構3を用いて術者が操作を行った場合には、管状部材2の中間部2bは連動して屈曲することはなく、管状部材2の遠位端側に配置された被操作部2aのみが連動して偏向可能であることが好ましい。
【0042】
管状部材2の近位端側には操作機構3が連結されている。操作機構3は、術者が体内の治療や検査等を行う際に体外に配置され、術者が手で把持可能なケース(筐体)3aを備えて構成されている。本実施形態においては、術者が片手でケース3aを把持しながら操作機構3に設けられた操作ノブ31を操作できるようになっている。
【0043】
ケース3aは、術者が把持可能な形状および寸法を有している。ケース3aの材質は特に限定されないが、軽量かつ丈夫な材質であることが好ましく、例えば、PET等の高分子材料であってもよい。
【0044】
上述したように、操作機構3は、図示省略した各種機器と接続できるようになっており、各種ポート(例えば、鉗子チャンネルポート、吸引ポート、送水ポート等)やケーブルコネクタ等を備えている。図1には、一例として、鉗子チャネルポート3bおよび灌流水の送水および吸引を同時に行うためのY字型アダプタ3c、ユニバーサルケーブル3dおよびイメージングシステムを備えたコントローラに接続可能なケーブルコネクタ3eが図示されている。操作機構3の各種ポートやコネクタ等は、操作機構3に連結された管状部材2の内腔に連通しており、管状部材2の遠位端2cを体内に配置して適切な処置を適宜行うことができるようになっているが、本発明は、これらの構成を特に限定するものではない。
【0045】
(被操作部2aの屈曲動作)
図2(a)~(e)を参照しながら、管状部材2の遠位端側に設けられた被操作部2aの屈曲動作について説明する。図2(a)~(e)は、図1に示す内視鏡1において、管状部材2の遠位端側を拡大した部分拡大図である。図2(a)は被操作部2aが屈曲せずに真っ直ぐに伸びた状態を示す図、図2(b)は被操作部2aが面内一方向に屈曲した状態を示す図、図2(c)は被操作部2aが面内一方向に最も屈曲した状態を示す図、図2(d)は被操作部2aが面内他方向に屈曲した状態を示す図、図2(e)は被操作部2aが面内他方向に最も屈曲した状態を示す図である。
【0046】
管状部材2の内部には2本の操作線材4a、4bが挿通されており、2本の操作線材4a、4bの一部または全体が管状部材2の被操作部2aに固定されている。図2(a)~(e)では、2本の操作線材4a、4bは管状部材2の断面径方向に対向する位置に固定されており、対向する2本の操作線材4a、4bの軸線方向を含む面が紙面と一致するように図示されている。
【0047】
一方の操作線材4aが遠位側へ押し出されて他方の操作線材4bが近位側へ引き込まれると、被操作部2aは、操作線材4bが配置されている側(図2(b)の下側)に屈曲して、管状部材2の遠位端2cの向き(図2(b)に示す角度α)が変わるようになっている。管状部材2の遠位端2cの向きは、一例として図2(c)に示すように、角度αが最大275°となるまで屈曲できるようになっている。
【0048】
反対に、一方の操作線材4aが近位側へ引き込まれて他方の操作線材4bが遠位側へ押し出されると、被操作部2aは、操作線材4aが配置されている側(図2(d)の上側)に屈曲して、管状部材2の遠位端2cの向き(図2(d)に示す角度β)が変わるようになっている。管状部材2の遠位端2cの向きは、一例として図2(e)に示すように、角度βが最大275°となるまで屈曲できるようになっている。
【0049】
(第1実施形態)
図3図7を参照しながら、本発明の第1実施形態における操作機構3の構成について説明する。図3は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を上方から見た斜視図であり、図4は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を下方から見た斜視図である。操作機構3のケース3a内には、図3および図4に示す組立状態で操作系構成要素が配置される。また、図5は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を上方から見た分解斜視図であり、図6は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を下方から見た分解斜視図である。さらに、図7は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を下方から見た一部分解斜視図である。図示明瞭化のため、図4においてのみ2本の操作線材4a、4bの近位端側が図示されており、図7においてのみ2本の中間線材50a、50bが図示されている。
【0050】
以下の説明では、便宜上、図3図7において操作ノブ31が配置される側を上方とし、基部37が配置される側を下方とするが、術者は当該上方および下方を意識することなく操作を行うことができる。
【0051】
第1実施形態における操作機構3は、操作ノブ31、回動支持部材33、円板部材34、一対のフォロワ部材35、36、基部37をケース3a内に備えて構成されている。
【0052】
操作ノブ31は、一対のハンドル31a、31b、支持部材31cにより構成されている。支持部材31cの両端には、一対のハンドル31a、31bが互いに対向するように連結または一体化して設けられている。一対のハンドル31a、31bは、支持部材31cの両端において、支持部材31cの延在方向に対して両側方に突出し、円板部材34の周方向に沿った形状を有している。
【0053】
支持部材31cの中央部下面側は、回動支持部材33の回動貫通孔33fを通じて、円板部材34の上面中央部34dに連結されている。支持部材31cと円板部材34との連結方法は特に限定されるものではなく、例えば、支持部材31cと円板部材34とを接着剤で接着してもよく、支持部材31cと円板部材34とが係合固定されるようにしてもよい。支持部材31cは円板部材34の中心(回動中心)を通るように連結されており、支持部材31cおよび円板部材34は、回動支持部材33に対して一体化して回動可能となるように構成されている。
【0054】
回動支持部材33はケース3aに固定して設けられており、側方を取り囲む4つの側壁部33a、33b、33c、33dと、4つの側壁部33a、33b、33c、33dの上面側に伸展する平板部33eとが連結または一体化した構成を有している。平板部33eの遠位側には、平板部33eの上面と下面とを貫通する略円状の回動貫通孔33fが設けられている。
【0055】
円板部材34は円板状に成形されている。上述したように、円板部材34の上面中央部34dは、回動支持部材33の回動貫通孔33fを通じて、支持部材31cの中央部下面側に連結されている。
【0056】
円板部材34は、回動支持部材33の下面側から回動貫通孔33fに挿入された状態で、支持部材31cの中央部下面側に連結されている。円板部材34は、回動貫通孔33fの内側に配置され、支持部材31cおよび円板部材34は、回動支持部材33に対して一体となって回動可能となっている。なお、円板部材34が回動貫通孔33fの内側に常に位置するように、操作ノブ31および円板部材34は、回動軸方向における移動が規制されることが好ましい。
【0057】
このように構成されていることで、操作ノブ31および円板部材34は、回動支持部材33に対して一体となって回動可能となっている。回動支持部材33はケース3aに対して固定されていることから、操作ノブ31および円板部材34は、回動支持部材33およびケース3aに対して回動可能となっている。円板部材34は、本発明の操作部材に対応しており、本発明の回動操作板を含んだ構成となっている。
【0058】
円板部材34の下面には、中間線材50a、50bの一端を固定するための中間線材固定部34eが設けられている。一例として、中間線材固定部34eは、円板部材34の中心を通る直線状であり、円板部材34の下面から下方に向けて突出したリブ状に形成されている。
【0059】
回動支持部材33の下方において、上述のように遠位側には円板部材34が配置されている一方、近位側には、互いに同一形状を有する一対のフォロワ部材35、36が配置されている。フォロワ部材35は、直方体形状の摺動部材35a、摺動部材35aの下面に設けられた線材連結部35dを備えて構成されている。同様に、フォロワ部材36は、直方体形状の摺動部材36a、摺動部材36aの下面に設けられた線材連結部36dを備えて構成されている。
【0060】
図7に示すように、中間線材固定部34eには、例えば固定具51a、51bを用いて中間線材50a、50bの一端が固定されており、摺動部材35a、36aには、例えば固定具52a、52bを用いて2本の中間線材50a、50bのそれぞれの他端が連結されている。2本の中間線材50a、50bは軸線方向に剛性を有しており、近位端から遠位端まで力を伝達するプッシャビリティを有している。円板部材34の回動により中間線材固定部34eが回動すると、中間線材固定部34eにより中間線材50a、50bが進退し、それに伴ってフォロワ部材35、36が進退するようになっている。後述するようにフォロワ部材35、36には操作線材4a、4bが連結されており、フォロワ部材35、36が互いに反対方向に移動することで、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aの偏向が可能なようになっている。中間線材50a、50bおよびフォロワ部材35、36は、本発明の操作伝達部材に対応している。
【0061】
摺動部材35aの下面に設けられた線材連結部35dは、下方に向けて突出するように設けられている。線材連結部35dは、任意の連結方法で操作線材4aの近位端側と連結されている。同様に、摺動部材36aの下面に設けられた線材連結部36dは、下方に向けて突出するように設けられている。線材連結部36dは、任意の連結方法で操作線材4bの近位端側と連結されている。
【0062】
基部37は、底板部37cと、当該底板部37cの幅方向(短手方向)両端部において長手方向に沿って上方に立設された一対の支持壁部37a、37bとにより概略構成されている。本実施形態では、基部37の支持壁部37a、37bの長手方向の寸法(基部37の長手方向の外寸)が、回動支持部材33の側壁部33a、33bの内側面間の寸法(回動支持部材33の長手方向の内寸)と同等であるとともに、基部37の支持壁部37a、37bの外側面間の寸法(基部37の幅方向の外寸)が、回動支持部材33の側壁部33c、33dの内側面間の寸法(回動支持部材33の幅方向の内寸)と同等であり、回動支持部材33の下方内側に基部37が嵌合固定されるようになっている。
【0063】
底板部37cには、上面と下面とを貫通する一対の摺動孔37d1、37e1が設けられている。摺動孔37d1、37e1の上面側には、摺動孔37d1、37e1の周囲に長手方向に沿って摺動面37d2、37e2が設けられている。摺動孔37d1、37e1の幅方向の寸法は、摺動部材35a、36aの幅方向の寸法よりも小さくなっており、摺動部材35a、36aが摺動孔37d1、37e1を通過しないようになっている。摺動部材35a、36aは、摺動方向(基部37の長手方向)に摺動可能となるように摺動面37d2、37e2上に載置される。このとき、摺動部材35a、36aの下面側に設けられた線材連結部35d、36dは、それぞれ摺動孔37d1、37e1を通じて基部37の下面側に露出するようになっている。
【0064】
図4に示すように、基部37の下面側に露出するフォロワ部材35、36の線材連結部35d、36dには、それぞれ操作線材4a、4bの近位端側が連結されている。本実施形態では、基部37の下面の遠位側に線材挿通溝37hが設けられており、操作線材4a、4bは、線材挿通溝37hを通って管状部材2内に挿通され、管状部材2の遠位端側へ延びている。摺動部材35a、36aの摺動方向への移動に伴って、摺動部材35a、36aにそれぞれ連結された操作線材4a、4bの近位端側が進退して操作線材4a、4bが軸線方向に移動し、これにより、管状部材2の遠位端側に設けられた被操作部2aが偏向できるようになっている。
【0065】
図5に示すように、基部37の支持壁部37a、37bのそれぞれの内側には、円板部材34の外周面に対向する位置に操作板接触壁部41、42が設けられている。操作板接触壁部41、42は、それぞれ円板部材34の外周面に沿った形状となるように形成された2つのストッパ面41a、41bおよびストッパ面42a、42bを有している。ストッパ面41a、41b、42a、42bは、円板部材34の外周面が摩擦接触して円板部材34の回動を制限することができるようになっている。ストッパ面41a、41b、42a、42bは、操作線材4a、4bの張力を受けた円板部材34によって加圧される位置に配置されていればよく、一例として、遠位側のストッパ面41a、42aのみを設けた構成であってもよい。また、左右対称な位置(すなわち、円板部材34の回動中心を通る回動軸と、第1および第2の操作線材の軸線方向とを含む面に対称な位置)にストッパ面41a、41b、42a、42bを配置することで、円板部材34の一方および他方のいずれの方向に回動した場合であっても、その回動を確実に規制することができるようになる。
【0066】
また、円板部材34の外周面とストッパ面41a、41b、42a、42bとの間は、所定値以上のクリアランスが形成される寸法に設定されている。このクリアランスの存在で、円板部材34をケース3a内への引き込み方向にわずかながら移動させることができるようになっている。回動操作の際には、術者は操作ノブ31を操作して円板部材34をわずかに移動させ、円板部材34の外周面をストッパ面41a、41b、42a、42bから離隔させることで、円板部材34を回動可能状態とすることができる。
【0067】
一方、術者が回動操作を止めて操作ノブ31から手を離した場合には、操作線材4a、4bの張力を受けたフォロワ部材35、36が円板部材34を遠位側へ押し込んで、円板部材34の外周面とストッパ面41a、41b、42a、42b(特に遠位側に位置するストッパ面41a、42a)とが摩擦接触する。その結果、円板部材34の回転運動が規制され、被操作部2aの屈曲状態を固定および維持できるようになっている。
【0068】
また、円板部材34の外周面およびストッパ面41a、41b、42a、42bの少なくとも一方の摩擦係数が高くなるよう加工されていてもよい。例えば、円板部材34の外周面およびストッパ面41a、41b、42a、42bのいずれか一方または両方に粗面加工が施されていてもよく、粘着質の物質が貼付されていてもよい。また、円板部材34の外周面を歯型状としてもよい。これにより、円板部材34の外周面およびストッパ面41a、41b、42a、42bとの摩擦抵抗を大きくでき、ストッパ効果を高めることができる。
【0069】
以下、図8~12を参照しながら、回転運動を進退運動に変換する動作、ならびに、ストッパ面41a、41bによる円板部材34の回動規制について具体的に説明する。図8図12は、図3図7に示す操作機構3の構成を下方から模式的に図示した部分透過図である。図8は、操作ノブ31のハンドル31a、31bが左右対称な位置にある初期状態を模式的に示す図である。図9は、操作ノブ31を一方向に回動させている状態を模式的に示す図である。図10は、術者が一方向への回動操作を止めてハンドル31a、31bから手を離した状態を模式的に示す図である。図11は、操作ノブ31を他方向に回動させている状態を模式的に示す図である。図12は、術者が他方向への回動操作を止めてハンドル31a、31bから手を離した状態を模式的に示す図である。なお、図示省略しているが、フォロワ部材35、36に連結された2本の操作線材4a、4bは図面下側に延びている。
【0070】
術者が操作を行わずにハンドル31a、31bから手を離している場合、操作線材4a、4bの張力によってフォロワ部材35、36には遠位側へ引っ張られる力が作用している。この場合、フォロワ部材35、36から円板部材34に対しては、中間線材50a、50bを介して円板部材34を遠位側へ押し込む力が働く。この力により、円板部材34の外周面は遠位側に位置するストッパ面41a、42aに押し込まれて摩擦接触し、円板部材34の回動が規制される。
【0071】
術者がハンドル31a、31bを近位側にわずかに引き込んだ場合には、円板部材34の外周面がストッパ面41a、42aから離隔して円板部材34の回動規制が解け、円板部材34が容易に回動できる状態となる。この状態で、術者はハンドル31a、31bを用いて円板部材34を回動させることで、被操作部2aの偏向操作を行うことができるようになる。
【0072】
図8に示すように、操作ノブ31のハンドル31a、31bが左右対称な位置にある場合には、一対のフォロワ部材35、36も左右対称な位置に配置される。このとき、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(a)に示すように、屈曲せずに真っ直ぐに伸びた状態となっている。
【0073】
図9に示すように、術者がハンドル31a、31bを近位側へわずかに引き込みながら一方向に回動させると、円板部材34も連動して同一方向に回動する(例えば、図9の矢印方向R1)。より詳細には、図9の右下の拡大図に示すように、円板部材34の外周面はストッパ面41a、41b、42a、42bから離隔して、円板部材34が容易に回動できる状態となっている。
【0074】
円板部材34の回動は中間線材50a、50bを介してフォロワ部材35、36に伝達し、フォロワ部材35が一方向に移動し(例えば、図9の矢印方向L11)、フォロワ部材36が逆方向に移動する(図9の矢印方向L12)。そして、フォロワ部材35、36に連結されている操作線材4a、4bも連動して軸線方向に移動し、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(b)に示す方向に屈曲した状態となる。
【0075】
術者が図9に示す位置までハンドル31a、31bを操作した後にハンドル31a、31bから手を離すと、図10に示すように、操作線材4a、4bの張力によって円板部材34の外周面はストッパ面41a、42aに押し込まれて、円板部材34の回動が規制される。より詳細には、図10の右下の拡大図に示すように、円板部材34の外周面はストッパ面41a、41bと摩擦接触した状態となり、円板部材34の回動が規制される。その結果、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(b)に示す方向に屈曲した状態で固定される。
【0076】
術者がハンドル31a、31bを反対方向に回動させた場合も同様である。図11に示すように、術者がハンドル31a、31bを近位側へわずかに引き込みながら他方向に回動させると、円板部材34も連動して同一方向に回動する(例えば、図11の矢印方向R2)。円板部材34の回動は中間線材50a、50bを介してフォロワ部材35、36に伝達し、フォロワ部材35が一方向に移動し(例えば、図11の矢印方向L21)、フォロワ部材36が逆方向に移動する(図11の矢印方向L22)。そして、フォロワ部材35、36に連結されている操作線材4a、4bも連動して軸線方向に移動し、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(d)に示す方向に屈曲した状態となる。
【0077】
術者が図11に示す位置までハンドル31a、31bを操作した後にハンドル31a、31bから手を離すと、図12に示すように、操作線材4a、4bの張力によって円板部材34の外周面はストッパ面41a、42aに押し込まれて、円板部材34の回動が規制される。その結果、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(d)に示す方向に屈曲した状態で固定される。
【0078】
このように、本実施形態では、術者がハンドル31a、31bの操作を解除した場合には、円板部材34がストッパ面41a、41b、42a、42b(特に遠位側のストッパ面41a、42a)と摩擦接触して円板部材34の回動が規制されるようになっている。これにより、術者がハンドル31a、31bの操作を解除した時点での操作位置を確実に保持できるようになる。また、術者がハンドル31a、31bをわずかに移動させてストッパ面41a、41b、42a、42bから円板部材34を離隔させると、円板部材34の回動規制が解除されるようになっている。この状態において、術者はハンドル31a、31bを操作して円板部材34を回動させ、被操作部2aを所望の方向に容易に屈曲させることができるようになる。
【0079】
また、本発明に係る操作機構3では、2本の操作線材4a、4bのうちの近位側に引き込み操作する側のハンドル31a、31bを該引き込み方向に操作することで、円板部材34の回動制限状態を解除可能にすることができる。
【0080】
具体的には、操作線材4aを引き込んで被操作部2aを屈曲させる場合には、図9に示すように、操作線材4aが接続された側(フォロワ部材35側)のハンドル31aを引き込むように操作することで、円板部材34を近位側へ移動させて回動規制を解除しながら、所望の方向に被操作部2aを偏向させることができる。
【0081】
一方、操作線材4bを引き込んで被操作部2aを屈曲させる場合には、図11に示すように、操作線材4bが接続された側(フォロワ部材36側)のハンドル31bを引き込むように操作することで、円板部材34を近位側へ移動させて回動規制を解除しながら、所望の方向に被操作部2aを偏向させることができる。また、ハンドル31a、31bの操作を止めるだけで操作位置が固定され、被操作部2aが所望の屈曲状態のまま維持される。
【0082】
このように、本発明に係る操作機構3では、被操作部2aの屈曲操作と屈曲状態の維持を、ハンドル31a、31bの片手操作で行うことができ、極めて操作性に優れたものとなっている。
【0083】
(第2実施形態)
図13図16を参照しながら、本発明の第2実施形態における操作機構3の構成について説明する。図13は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を上方から見た斜視図であり、図14は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を下方から見た斜視図である。操作機構3のケース3a内には、図13および図14に示す組立状態で操作系構成要素が配置される。また、図15は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を上方から見た分解斜視図であり、図16は、図1に示す操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素を下方から見た分解斜視図である。図示明瞭化のため、図14においてのみ2本の操作線材4a、4bの近位側が図示されている。なお、図3図7に示す操作系構成要素と実質的に同一の構成要素については同一の参照符号を付すとともに、以下では説明を省略または簡略化することがある。
【0084】
第2実施形態における操作機構3は、操作ノブ31、回動支持部材33、円板部材34z、一対のフォロワ部材35z、36z、基部37zをケース3a内に備えて構成されている。
【0085】
操作ノブ31および回動支持部材33は、上述した第1実施形態と実質的に同一のものを用いることができる。
【0086】
円板部材34zは円板状に成形されている。上述した第1実施形態における円板部材34と同様に、円板部材34zの上面中央部34dは、回動支持部材33の回動貫通孔33fを通じて、支持部材31cの中央部下面側に連結されている。円板部材34zは、回動貫通孔33fの内側に配置され、支持部材31cおよび円板部材34zは、回動支持部材33に対して一体となって回動可能となっている。なお、円板部材34zが回動貫通孔33fの内側に常に位置するように、操作ノブ31および円板部材34zは、回動軸方向における移動が規制されることが好ましい。
【0087】
このように構成されていることで、操作ノブ31および円板部材34zは、回動支持部材33に対して一体となって回動可能となっている。回動支持部材33はケース3aに対して固定されていることから、操作ノブ31および円板部材34zは、回動支持部材33およびケース3aに対して回動可能となっている。円板部材34zは、本発明の操作部材に対応しており、本発明の回動操作板を含んだ構成となっている。
【0088】
円板部材34zの下面には、回動カム34zeが設けられている。一例として、回動カム34zeは、円板部材34zの下面から下方に向けて突出したリブ状に形成されている。図13図16に図示されている構成では、直線状の回動カム34zeが設けられているが、これに限定されるものではなく、操作ノブ31の回転運動をフォロワ部材35z、36zの進退運動に変換する形状であればよい。また、回動カム34zeは溝状であってもよく、回動カム34zeの個数も特に限定されるものではない。
【0089】
円板部材34zの下方には、互いに同一形状を有する一対のフォロワ部材35z、36zが配置されている。フォロワ部材35zは、直方体形状の摺動部材35a、摺動部材35aの上面に設けられた2つのピン35zb、35zc、摺動部材35aの下面に設けられた線材連結部35dを備えて構成されている。同様に、フォロワ部材36zは、直方体形状の摺動部材36a、摺動部材36aの上面に設けられた2つのピン36zb、36zc、摺動部材36aの下面に設けられた線材連結部36dを備えて構成されている。
【0090】
摺動部材35aの上面に設けられた2つのピン35zb、35zcは、上方に向けて突出しており、フォロワ部材35zの摺動方向である摺動部材35aの長手方向に離隔して配置されている。摺動部材36aの上面に設けられた2つのピン36zb、36zcも同様に、フォロワ部材36zの摺動方向である摺動部材36aの長手方向に離隔して配置されている。そして、2つのピン35zb、35zcの間および2つのピン36zb、36zcの間に回動カム34zeが配置されることで、後述するカムフォロワ構造が実現される。回動カム34ze、フォロワ部材35z、36zは、本発明の操作伝達部材に対応している。
【0091】
摺動部材35aの下面に設けられた線材連結部35dは、下方に向けて突出するように設けられている。線材連結部35dは、任意の連結方法で操作線材4aの近位側と連結されている。同様に、摺動部材36aの下面に設けられた線材連結部36dは、下方に向けて突出するように設けられている。線材連結部36dは、任意の連結方法で操作線材4bの近位側と連結されている。本実施形態では、線材連結部35dは、摺動部材35aを挟んで2つのピン35zb、35zcのほぼ反対側の位置(ほぼ真裏の位置)に設けられており、線材連結部36dは、摺動部材36aを挟んで2つのピン36zb、36zcのほぼ反対側の位置(ほぼ真裏の位置)に設けられている。ただし、この位置に限定されるものではなく、2つのピン35zb、35zcの配置位置を、線材連結部35dにおける操作線材4aとの連結位置よりも幅方向外側にずらし、同様に、2つのピン36zb、36zcの配置位置を、線材連結部36dにおける操作線材4bとの連結位置よりも幅方向外側にずらしてもよい。
【0092】
基部37zは、底板部37cと、当該底板部37cの幅方向(短手方向)両端部において長手方向に沿って上方に立設された一対の支持壁部37a、37bとにより概略構成されている。本実施形態では、基部37zの支持壁部37a、37bの長手方向の寸法(基部37zの長手方向の外寸)が、回動支持部材33の側壁部33a、33bの内側面間の寸法(回動支持部材33の長手方向の内寸)と同等であるとともに、基部37zの支持壁部37a、37bの外側面間の寸法(基部37zの幅方向の外寸)が、回動支持部材33の側壁部33c、33dの内側面間の寸法(回動支持部材33の幅方向の内寸)と同等であり、回動支持部材33の下方内側に基部37zが嵌合固定されるようになっている。
【0093】
底板部37cには、上面と下面とを貫通する一対の摺動孔37d1、37e1が設けられている。摺動孔37d1、37e1の上面側には、摺動孔37d1、37e1の周囲に長手方向に沿って摺動面37d2、37e2が設けられている。摺動孔37d1、37e1の幅方向の寸法は、摺動部材35a、36aの幅方向の寸法よりも小さくなっており、摺動部材35a、36aが摺動孔37d1、37e1を通過しないようになっている。摺動部材35a、36aは、摺動方向(基部37zの長手方向)に摺動可能となるように摺動面37d2、37e2上に載置される。このとき、摺動部材35a、36aの下面側に設けられた線材連結部35d、36dは、それぞれ摺動孔37d1、37e1を通じて基部37zの下面側に露出するようになっている。
【0094】
図14に示すように、基部37zの下面側に露出するフォロワ部材35z、36zの線材連結部35d、36dには、それぞれ操作線材4a、4bの近位側が連結されている。本実施形態では、基部37zの下面の遠位側に線材挿通孔37f、37gが設けられており、操作線材4a、4bは、それぞれ線材挿通孔37f、37gを通って管状部材2内に挿通され、管状部材2の遠位端側へ延びている。摺動部材35a、36aの摺動方向への移動に伴って、摺動部材35a、36aにそれぞれ連結された操作線材4a、4bの近位側が進退して操作線材4a、4bが軸線方向に移動し、これにより、管状部材2の遠位端側に設けられた被操作部2aが偏向できるようになっている。ただし、線材挿通孔37f、37gに代えて、上述した第1実施形態のように操作線材4a、4bが挿通可能な線材挿通溝37hを設けるようにしてもよい。
【0095】
図15に示すように、基部37zの支持壁部37a、37bのそれぞれの内側には、円板部材34zの外周面に対向する位置に操作板接触壁部41、42が設けられている。操作板接触壁部41、42は、それぞれ円板部材34zの外周面に沿った形状となるように形成された2つのストッパ面41a、41bおよびストッパ面42a、42bを有している。ストッパ面41a、41b、42a、42bは、円板部材34zの外周面が摩擦接触して円板部材34zの回動を制限することができるようになっている。なお、遠位側のストッパ面41a、42aのみを設けた構成であってもよい。
【0096】
回動操作の際には、術者は操作ノブ31を操作して円板部材34zをわずかに移動させて、円板部材34zの外周面をストッパ面41a、41b、42a、42bから離隔させることで、円板部材34zを回動可能な状態とする。一方、術者が回動操作を止めて操作ノブ31から手を離した場合には、操作線材4a、4bの張力を受けたフォロワ部材35z、36zが円板部材34zを遠位側へ押し込んで、円板部材34zの外周面とストッパ面41a、41b、42a、42b(特に遠位側に位置するストッパ面41a、42a)とが摩擦接触する。その結果、円板部材34zの回転運動が規制され、被操作部2aの屈曲状態を固定および維持できるようになっている。
【0097】
以下、図17および図18を参照しながら、円板部材34zの回動カム34zeと、フォロワ部材35z、36zのピン35zb、35zc、36zb、36zcとの配置位置について説明する。図17は、図13に示す円板部材34zおよびフォロワ部材35z、36zを模式的に図示した部分透過図である。図17では、回動カム34zeおよびピン35zb、35zc、36zb、36zcのみが実線で示されており、その他の部分については点線で示されている。また、図18図17のA-A部分断面図であり、回動カム34zeおよびピン35zb、35zc、36zb、36zcの配置位置を説明するための図である。
【0098】
組立状態では、図17および図18に示すように、フォロワ部材35zの2つのピン35zb、35zcの間およびフォロワ部材36zの2つのピン36zb、36zcの間に、リブ状の回動カム34zeが配置されたカムフォロワ構造が実現される。フォロワ部材35z、36zは、円板部材34zの回動中心を挟んで両側に離間して配置された状態で、回動カム34zeに係合するようになっている。円板部材34zが回動した場合には、フォロワ部材35zにおいては2つのピン35zb、35zcのうちのいずれかの側面に回動カム34zeの側面が当接し、フォロワ部材36zにおいては2つのピン36zb、36zcのうちのいずれかの側面に回動カム34zeの側面が当接する。円板部材34zがさらに回動した場合には、回動カム34zeは当接したピンを駆動して、フォロワ部材35z、36zを摺動方向へ進退移動させることができるようになっている。
【0099】
図19(a)~(c)を参照しながら、回転運動を進退運動に変換する動作について説明する。図19(a)~(c)は、図13図16に示す操作機構3の構成を上方から模式的に図示した部分透過図であり、(a)は操作ノブ31のハンドル31a、31bが左右対称な位置にある初期状態、(b)は操作ノブ31を一方向に回動させた状態、(c)は操作ノブ31を他方向に回動させた状態をそれぞれ模式的に示す図である。なお、図示明瞭化のため、円板部材34zおよびフォロワ部材35z、36zに関して、回動カム34zeおよびピン35zb、35zc、36zb、36zcのみを実線で表している。
【0100】
図19(a)に示すように、操作ノブ31のハンドル31a、31bが左右対称な位置にある場合には、一対のフォロワ部材35z、36zも左右対称な位置に配置される。このとき、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(a)に示すように、屈曲せずに真っ直ぐに伸びた状態となっている。
【0101】
図19(b)に示すように、術者が操作ノブ31のハンドル31a、31bを一方向に回動させると、円板部材34zも連動して同一方向に回動する(例えば、図19(b)の矢印方向R3)。当該回動に伴って、リブ状の回動カム34zeがフォロワ部材35zのピン35zbの側面およびフォロワ部材36zのピン36zcの側面に当接する。円板部材34zがさらに回動を続けると、ピン35zbは回動カム34zeにより押し動かされてフォロワ部材35zが一方向に移動し(例えば、図19(b)の矢印方向L31)、一方、ピン36zcは回動カム34zeにより押し動かされてフォロワ部材36zが逆方向に移動する(図19(b)の矢印方向L32)。そして、フォロワ部材35z、36zに連結されている操作線材4a、4bも連動して軸線方向に移動し、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(b)に示す方向に屈曲した状態となる。
【0102】
術者がハンドル31a、31bを反対方向に回動させた場合も同様である。図19(c)に示すように、術者が操作ノブ31のハンドル31a、31bを他方向に回動させると、円板部材34zも連動して同一方向に回動する(例えば、図19(c)の矢印方向R4)。当該回動に伴って、リブ状の回動カム34zeがフォロワ部材35zのピン35zcの側面およびフォロワ部材36zのピン36zbの側面に当接する。円板部材34zがさらに回動を続けると、ピン35zcは回動カム34zeにより押し動かされてフォロワ部材35zが一方向に移動し(例えば、図19(c)の矢印方向L41)、一方、ピン36zbは回動カム34zeにより押し動かされてフォロワ部材36zが逆方向に移動する(図19(c)の矢印方向L42)。そして、フォロワ部材35z、36zに連結されている操作線材4a、4bも連動して軸線方向に移動し、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aは、図2(d)に示す方向に屈曲した状態となる。
【0103】
このように本実施形態では、円板部材34zの回転運動が、回動カム34zeおよびピン35zb、35zc、36zb、36zcを介して、フォロワ部材35z、36zの進退運動に変換され、フォロワ部材35z、36zが互いに反対方向に移動するようになっている。フォロワ部材35z、36zが進退運動を行った場合には、フォロワ部材35z、36zに連結されている操作線材4a、4bも連動して軸線方向に進退運動を行い、その結果、管状部材2の遠位端側に配置されている被操作部2aの偏向が可能なようになっている。
【0104】
本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様、円板部材34zがストッパ面41a、41b、42a、42bと摩擦接触して、円板部材34zの回動が規制されるようになっている。すなわち、術者がハンドル31a、31bの操作を解除した場合には、円板部材34zがストッパ面41a、41b、42a、42b(特に遠位側のストッパ面41a、42a)と摩擦接触して円板部材34zの回動が規制されるようになっている。これにより、術者がハンドル31a、31bの操作を解除した時点での操作位置を確実に保持できるようになる。
【0105】
また、術者がハンドル31a、31bをわずかに移動させてストッパ面41a、41b、42a、42bから円板部材34zを離隔させると、円板部材34zの回動規制が解除されるようになっている。この状態において、術者はハンドル31a、31bを操作して円板部材34zを回動させ、被操作部2aを所望の方向に容易に屈曲させることができるようになる。
【0106】
(派生例)
以下、ストッパ面41a、41b、42a、42bの派生例について説明する。図20は、本発明に係るストッパ面41a、41b、42a、42bの派生例を示す斜視図である。図20には、第2実施形態における構成に基づいた派生例が示されているが、本派生例は、上述した第1および第2実施形態のいずれに対しても適用することができる。
【0107】
図20には、操作機構3のケース3a内に含まれる操作系構成要素の組立状態として、操作ノブ31、円板部材34z、一対のフォロワ部材35z、36z、基部37zが図示されている。なお、回動支持部材33については図示省略している。また、図20の右下には、操作板接触壁部42のストッパ面42a近傍の拡大図が図示されている。
【0108】
図20に示すように、ストッパ面42aは、円板部材34zの回動軸に平行な回転周面に対して傾斜するように形成されてもよい。例えば、円板部材34zの外周面は下方に向かって径が小さくなるテーパ状に形成されており、ストッパ面42aと回転周面との角度(図20に示す角度θ)がゼロより大きい値となるようにしてもよい。また、ストッパ面42aの傾斜に合わせて、円板部材34zの外周面も同様にテーパ状に形成してもよい。
【0109】
このように、上述した第1および第2実施形態において、円板部材34、34zの外周面とストッパ面42a(および図20には不図示のストッパ面41a、41b、42b)との接触面を傾斜させることで、接触面における力の向きおよび接触面積を有効に制御でき、円板部材34、34zの外周面に対するストッパ面41a、41b、42a、42bの摩擦抵抗を大きくしてストッパ効果を高めることができるようになる。
【0110】
また、円板部材34、34zの外周面の板厚方向の幅が、同方向におけるストッパ面41a、41b、42a、42bの壁面幅と同等となるようにして、接触面積がなるべく大きくなるようにしてもよい。
【0111】
以下、本発明に係る作用について説明する。
【0112】
本発明に係る医療用デバイス(内視鏡1やカテーテル等)は、屈曲可能な被操作部2aが遠位端側に配置された長尺部材(管状部材2)と、長尺部材の近位端側に連結された操作機構3と、長尺部材に取り付けられて被操作部2aと操作機構3の間に操作伝達可能に介在する操作線材4a、4bと、を備えている。操作機構3は、長尺部材に連結された把持可能なケース3aと、ケース3aに対して回動可能に配置された回動操作板を有する操作部材(円板部材34、34z)と、長尺部材の近位端側で回動操作板と操作線材4a、4bとの間に介在し、回動操作板の回動に応じて操作線材4a、4bを軸線方向に互いに逆方向に移動させるとともに、少なくとも片方の操作線材4a、4bに張力を発生させる操作伝達部材(回動カム34ze、フォロワ部材35、36、35z、36z、中間線材50a、50b)と、ケース3aに対して相対的に固定された位置に設けられており、回動操作板の外周面に摺動可能に接触するとともに回動操作板を回動可能に保持する操作板接触壁部41、42と、を含んで構成されている。そして、操作板接触壁部41、42が、操作伝達部材(回動カム34ze、フォロワ部材35、36、35z、36z、中間線材50a、50b)を介して少なくとも片方の操作線材4a、4bの張力を受けた回動操作板の外周面に摩擦接触して回動操作板の回動を制限するストッパ面41a、41b、42a、42bを有している。
【0113】
上記の構成によれば、回動操作板の回転運動を操作線材4a、4bの進退運動に変換することが可能な構成において、回動操作板の外周面に摩擦接触するストッパ面41a、41b、42a、42bによって、回動操作板および操作線材4a、4bの位置を維持することができ、簡素かつコンパクトな構成で操作性および利便性に優れた医療用デバイス1を提供することができる。特に、本発明に係る医療用デバイス1は、内視鏡やカテーテル等を構成する長尺部材の遠位端側に配置された被操作部を所望の偏向方向に屈曲させて被操作部の偏向方向を固定する際の操作性に優れている。
【0114】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0115】
1 内視鏡(医療用デバイス)
2 管状部材(長尺部材)
2a 被操作部
2b 中間部
2c 遠位端
3 操作機構
3a ケース
3b 鉗子チャネルポート
3c Y字型アダプタ
3d ユニバーサルケーブル
3e ケーブルコネクタ
4a、4b 操作線材
31 操作ノブ
31a、31b ハンドル
31c 支持部材
33 回動支持部材
33a、33b、33c、33d 側壁部
33e 平板部
33f 回動貫通孔
34、34z 円板部材(操作部材)
34d 上面中央部
34e 中間線材固定部
34ze 回動カム
35、36、35z、36z フォロワ部材
35a、36a 摺動部材
35b、35c、35zb、35zc、36b、36c、36zb、36zc ピン
35d、36d 線材連結部
37、37z 基部
37a、37b 支持壁部
37c 底板部
37d1、37e1 摺動孔
37d2、37e2 摺動面
37f、37g 線材挿通孔
37h 線材挿通溝
41、42 操作板接触壁部
41a、41b、42a、42b ストッパ面
50a、50b 中間線材
51a、51b、52a、52b 固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図15
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図20