(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081529
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】編み込みステント、編み込みステント製造用治具および編み込みステントの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20230606BHJP
【FI】
A61F2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195300
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 裕希
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA54
4C267BB03
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB15
4C267CC20
4C267CC22
4C267CC23
4C267CC24
4C267FF05
4C267HH04
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】耐キンク性、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントおよびその製造方法、編み込みステント製造用治具を提供する。
【解決手段】本発明に係る編み込みステントは、金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、網目状表面において、第1の寸法を有する第1の辺と第1の寸法以上である第2の寸法を有する第2の辺とにより構成された第1の平行四辺形P1と、第2の辺と第2の寸法以上でありかつ第1の寸法とは異なる第3の寸法を有する第3の辺とにより構成された第2の平行四辺形P2とが周方向に交互に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、
前記網目状表面において、第1の寸法を有する第1の辺と前記第1の寸法以上である第2の寸法を有する第2の辺とにより構成された第1の平行四辺形と、前記第2の辺と前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法を有する第3の辺とにより構成された第2の平行四辺形とが周方向に交互に配置されていることを特徴とする編み込みステント。
【請求項2】
前記線材同士が接触する線材接触点を周方向に辿ることで特定されるジグザグ状の線材路は、前記第1の寸法の線材、前記第2の寸法の線材、前記第3の寸法の線材により構成されており、
前記ジグザグ状の線材路において、1つ置きに前記第2の寸法の線材が配置されており、前記第2の寸法の線材の間に前記第1の寸法の線材と前記第3の寸法の線材とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の編み込みステント。
【請求項3】
前記網目状表面を平面に展開した状態において、
周方向に対して第1の角度を有する第1の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、前記第2の寸法の間隔、または前記第2の寸法の2倍の間隔で配置されており、
前記第1の方向とは周方向を挟んで反対側の方向でありかつ周方向に対して第2の角度を有する第2の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、前記第1の寸法の間隔、前記第3の寸法の間隔、または前記第1の寸法と前記第3の寸法との和の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の編み込みステント。
【請求項4】
金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、
前記線材同士が接触する線材接触点を周方向に辿ることで特定されるジグザグ状の線材路は、第1の寸法の線材、前記第1の寸法以上である第2の寸法の線材、前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法の線材により構成されており、
前記ジグザグ状の線材路において、1つ置きに前記第2の寸法の線材が配置されており、前記第2の寸法の線材の間に前記第1の寸法の線材と前記第3の寸法の線材とが交互に配置されていることを特徴とする編み込みステント。
【請求項5】
金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、
前記網目状表面を平面に展開した状態において、
周方向に対して第1の角度を有する第1の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、第1の寸法以上である第2の寸法の間隔、または前記第2の寸法の2倍の間隔で配置されており、
前記第1の方向とは周方向を挟んで反対側の方向でありかつ周方向に対して第2の角度を有する第2の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、前記第1の寸法の間隔、前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法の間隔、または前記第1の寸法と前記第3の寸法との和の間隔で配置されていることを特徴とする編み込みステント。
【請求項6】
前記第1の寸法、前記第2の寸法、前記第3の寸法がすべて異なることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の編み込みステント。
【請求項7】
筒状構造の軸方向端部の一方または両方、あるいは軸方向中央部にX線不透過マーカーが配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の編み込みステント。
【請求項8】
1本の線材により編み込まれており、前記1本の線材の両端がスリーブにより接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の編み込みステント。
【請求項9】
金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントの製造に用いられる編み込みステント製造用治具であって、
側面に複数の掛合ピンが設けられた円柱部材により構成されており、
前記円柱部材の側面を平面に展開した状態において、
周方向に対して第1の角度を有する第1の方向に沿って、前記掛合ピンが、第1の寸法以上である第2の寸法の間隔、または前記第2の寸法の2倍の間隔で配置されており、
前記第1の方向とは周方向を挟んで反対側の方向でありかつ周方向に対して第2の角度を有する第2の方向に沿って、前記掛合ピンが、前記第1の寸法の間隔、前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法の間隔、または前記第1の寸法と前記第3の寸法との和の間隔で配置されていることを特徴とする編み込みステント製造用治具。
【請求項10】
金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントの製造方法であって、
請求項9に記載の編み込みステント製造用治具における特定の開始位置から前記第1の方向または前記第2の方向に沿って前記線材を移動させつつ、前記掛合ピンにおいて前記線材同士が係合するように屈曲させることを特徴とする編み込みステントの製造方法。
【請求項11】
1本の線材を用いて編み込むとともに、前記1本の線材の両端をスリーブにより接続して前記編み込みステントを製造することを特徴とする請求項10に記載の編み込みステントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の消化器系器官等の狭窄部位または閉塞部位に留置して、消化器系器官の開存を確保するために用いられる編み込みステント、編み込みステント製造用治具および編み込みステントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の胆管、食道、十二指腸、小腸、大腸等の消化器系器官内の管腔に、例えば癌細胞等により狭窄部位または閉塞部位が生じた場合、ステントをその狭窄部位または閉塞部位に挿入して留置し、狭窄の改善、管腔の確保あるいは管腔の径の維持等を図ることが医療現場において行われている。
【0003】
ステントとしては種々の形態のものが使用されているが、金属製で網目状表面を有する筒状の自己拡張型ステントが一般的である。そのようなステントとしては、製造方法に起因する主なものとして、金属製の線材(フィラメント)を編み込んで網目状に形成した編み込みタイプのステント(編み込みステント)と、円管状素材をレーザーカットすることにより多数の屈曲部を有する線材を網目状に形成したレーザーカットタイプのステントとを挙げることができる。編み込みタイプのステントおよびレーザーカットタイプのステントはそれぞれ異なる特徴を有しているが、例えば編み込みタイプのステントは、その他の製造方法により製造されたステントに比べて耐久性に優れていることが知られている。
【0004】
従来、編み込みタイプのステントに関連して、様々な構成および製造方法が知られている。例えば下記の特許文献1には、菱形形状のセル構造を有する第1ステントに対して、同じく菱形形状のセル構造を有する第2ステントを、そのピッチが軸方向にずれる(オフセット)ように重畳させて二重構造とすることで、ワイヤーが係合するフックが垂直、水平方向の同一線上に集中することなく分散された編み込みタイプのステントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のステントは、すべてのセルが菱形形状となっているステントと比較して、ワイヤーが係合するフックを分散させており、その結果、ステントの耐キンク性、およびリリース性が向上されている。しかしながら、特許文献1に記載のステントは、菱形形状のセル構造を有する第1ステントおよび第2ステントを互いに軸方向にずらして重畳させており、軸方向および周方向の両方向に菱形形状のセルが配列した構成となるため、必ずしも係合するフックの分散率に優れたステントが実現されているわけではない。
【0007】
また、特許文献1に記載のステントは、第1ステントを製造した後に、第1ステントワイヤーに対して第2ステントワイヤーを上向交差および下向交差を繰り返しながら互いに交差的に絡み合わせて第2ステントを重畳させており、第1ステントワイヤーと第2ステントワイヤーとがフックにより係合していない構成となっている。このため、ステント全体においてフックの個数を多くすることができず、第1ステントワイヤーおよび第2ステントワイヤーの一方に加わる力が、第1ステントワイヤーおよび第2ステントワイヤーの他方に伝達されにくく、ステント全体の構造として拡張性および柔軟性に劣ったものとなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、耐キンク性、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステント、編み込みステント製造用治具および編み込みステントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る編み込みステントは、金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、
前記網目状表面において、第1の寸法を有する第1の辺と前記第1の寸法以上である第2の寸法を有する第2の辺とにより構成された第1の平行四辺形と、前記第2の辺と前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法を有する第3の辺とにより構成された第2の平行四辺形とが周方向に交互に配置されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、線材同士が係合する係合点の位置を軸方向の同一位置に重ならないように分散させることができるので、線材の密度が分散されて折れ曲がりにくくなり、耐キンク性に優れた編み込みステントを実現することができる。また、ステント留置時にデリバリーシステムから体内に放出する際に、係合点により生じる抵抗を低減させることができ、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0011】
本発明に係る編み込みステントは、上記の構成において、前記線材同士が接触する線材接触点を周方向に辿ることで特定されるジグザグ状の線材路は、前記第1の寸法の線材、前記第2の寸法の線材、前記第3の寸法の線材により構成されており、
前記ジグザグ状の線材路において、1つ置きに前記第2の寸法の線材が配置されており、前記第2の寸法の線材の間に前記第1の寸法の線材と前記第3の寸法の線材とが交互に配置されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、線材同士が係合する係合点の位置を軸方向の同一位置に重ならないように分散させることができるので、線材の密度が分散されて折れ曲がりにくくなり、耐キンク性に優れた編み込みステントを実現することができる。また、ステント留置時にデリバリーシステムから体内に放出する際に、係合点により生じる抵抗を低減させることができ、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0013】
本発明に係る編み込みステントは、上記の構成において、前記網目状表面を平面に展開した状態において、
周方向に対して第1の角度を有する第1の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、前記第2の寸法の間隔、または前記第2の寸法の2倍の間隔で配置されており、
前記第1の方向とは周方向を挟んで反対側の方向でありかつ周方向に対して第2の角度を有する第2の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、前記第1の寸法の間隔、前記第3の寸法の間隔、または前記第1の寸法と前記第3の寸法との和の間隔で配置されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、線材同士が係合する係合点の位置を軸方向の同一位置に重ならないように分散させることができるので、線材の密度が分散されて折れ曲がりにくくなり、耐キンク性に優れた編み込みステントを実現することができる。また、ステント留置時にデリバリーシステムから体内に放出する際に、係合点により生じる抵抗を低減させることができ、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る編み込みステントは、金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、
前記線材同士が接触する線材接触点を周方向に辿ることで特定されるジグザグ状の線材路は、第1の寸法の線材、前記第1の寸法以上である第2の寸法の線材、前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法の線材により構成されており、
前記ジグザグ状の線材路において、1つ置きに前記第2の寸法の線材が配置されており、前記第2の寸法の線材の間に前記第1の寸法の線材と前記第3の寸法の線材とが交互に配置されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、線材同士が係合する係合点の位置を軸方向の同一位置に重ならないように分散させることができるので、線材の密度が分散されて折れ曲がりにくくなり、耐キンク性に優れた編み込みステントを実現することができる。また、ステント留置時にデリバリーシステムから体内に放出する際に、係合点により生じる抵抗を低減させることができ、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る編み込みステントは、金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントであって、
前記網目状表面を平面に展開した状態において、
周方向に対して第1の角度を有する第1の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、第1の寸法以上である第2の寸法の間隔、または前記第2の寸法の2倍の間隔で配置されており、
前記第1の方向とは周方向を挟んで反対側の方向でありかつ周方向に対して第2の角度を有する第2の方向に沿って、前記線材同士が係合する係合点が、前記第1の寸法の間隔、前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法の間隔、または前記第1の寸法と前記第3の寸法との和の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、線材同士が係合する係合点の位置を軸方向の同一位置に重ならないように分散させることができるので、線材の密度が分散されて折れ曲がりにくくなり、耐キンク性に優れた編み込みステントを実現することができる。また、ステント留置時にデリバリーシステムから体内に放出する際に、係合点により生じる抵抗を低減させることができ、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0019】
本発明に係る編み込みステントは、上記の構成において、前記第1の寸法、前記第2の寸法、前記第3の寸法がすべて異なっていてもよい。
【0020】
この構成によれば、より確実に、係合点が軸方向の同一位置に重なった状態とならずに係合点の位置を分散させることができ、耐キンク性、リリース性、拡張性および柔軟性により優れた編み込みステントを実現することができる。
【0021】
本発明に係る編み込みステントは、上記の構成において、筒状構造の軸方向端部の一方または両方、あるいは軸方向中央部にX線不透過マーカーが配置されていてもよい。
【0022】
この構成によれば、編み込みステントを体内に留置した際、X線造影下でX線不透過マーカーの位置を確認することによって、編み込みステントの留置位置を確認することができる。
【0023】
本発明に係る編み込みステントは、上記の構成において、1本の線材により編み込まれており、前記1本の線材の両端がスリーブにより接続されていてもよい。
【0024】
この構成によれば、スリーブにより両端が接続された継ぎ目のない1本の線材で編み込みステントが構成されるので、拡張性および柔軟性、さらには耐久性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0025】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る編み込みステント製造用治具は、金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントの製造に用いられる編み込みステント製造用治具であって、
側面に複数の掛合ピンが設けられた円柱部材により構成されており、
前記円柱部材の側面を平面に展開した状態において、
周方向に対して第1の角度を有する第1の方向に沿って、前記掛合ピンが、第1の寸法以上である第2の寸法の間隔、または前記第2の寸法の2倍の間隔で配置されており、
前記第1の方向とは周方向を挟んで反対側の方向でありかつ周方向に対して第2の角度を有する第2の方向に沿って、前記掛合ピンが、前記第1の寸法の間隔、前記第2の寸法以上でありかつ前記第1の寸法とは異なる第3の寸法の間隔、または前記第1の寸法と前記第3の寸法との和の間隔で配置されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、線材同士が係合する係合点の位置を軸方向の同一位置に重ならないように分散させることができるので、線材の密度が分散されて折れ曲がりにくくなり、耐キンク性に優れた編み込みステントを実現することができる。また、ステント留置時にデリバリーシステムから体内に放出する際に、係合点により生じる抵抗を低減させることができ、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを実現することができる。
【0027】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る編み込みステントの製造方法は、金属製の線材を屈曲および係合させて網目状表面を有する筒状に編み込まれた編み込みステントの製造方法であって、
上記の編み込みステント製造用治具における特定の開始位置から前記第1の方向または前記第2の方向に沿って前記線材を移動させつつ、前記掛合ピンにおいて前記線材同士が係合するように屈曲させることを特徴とする。
【0028】
この方法によれば、耐キンク性、リリース性、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステントを製造することができる。
【0029】
本発明に係る編み込みステントの製造方法は、上記の方法において、1本の線材を用いて編み込むとともに、前記1本の線材の両端をスリーブにより接続して前記編み込みステントを製造してもよい。
【0030】
この方法によれば、スリーブにより両端が接続された継ぎ目のない1本の線材を編み込むことで、拡張性および柔軟性、さらには耐久性に優れた編み込みステントを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態における編み込みステントの模式的な正面図である。
【
図2】
図1に示す編み込みステントの展開図である。
【
図4】
図2に示す編み込みステントにおける係合点、交差点および折返点の位置を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態における編み込みステントが備える第1および第2の特徴を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態における編み込みステントが備える第3の特徴を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態における編み込みステントが備える第4の特徴を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施形態における編み込みステントが備える第5の特徴を説明するための図である。
【
図9】本発明の実施形態における編み込みステントが備える第6の特徴を説明するための図である。
【
図10】本発明の実施形態における編み込みステントが備える第7の特徴を説明するための図である。
【
図11】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具の斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具の展開図である。
【
図13】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具を用いた編み込みステントの製造方法の第1工程を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具を用いた編み込みステントの製造方法の第2工程を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具を用いた編み込みステントの製造方法の第3工程を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具を用いた編み込みステントの製造方法の第4工程を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具を用いた編み込みステントの製造方法の第5工程を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態における編み込みステント製造用治具を用いた編み込みステントの製造方法の第6工程を示す図である。
【
図19】本発明の実施形態における編み込みステントを収容したステントデリバリー装置の遠位端近傍の部分拡大図である。
【
図20】
図2に示す領域Rの部分拡大図であり、本発明の実施形態における編み込みステントが縮径した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態における編み込みステント、編み込みステント製造用治具および編み込みステントの製造方法について説明する。
【0033】
本発明の実施形態における編み込みステントは、径方向に圧縮力を加えると弾性によって径方向に収縮し、その圧縮力が解除されると径方向に拡張する自己拡張型のステントである。本発明の実施形態における編み込みステントは、胆管、食道、十二指腸、小腸、大腸等の消化器系器官内腔に留置され、消化器系器官に生じた狭窄を解消する目的で使用される。
【0034】
本実施形態における編み込みステントについて説明する。
【0035】
図1は、本実施形態における編み込みステント1の模式的な正面図である。
図2は、
図1に示す編み込みステント1の展開図である。
図1および
図2は編み込みステント1が拡張した状態を示している。また、
図2に示す展開図は、筒状の編み込みステント1を軸方向に切り開いて平面化した状態を示している。
【0036】
図1に示すように、編み込みステント1は筒状(例えば円筒状)の外形を有している。
図1に示す編み込みステント1はその軸芯が紙面上に配置されている。図示明瞭化を目的として、
図1では、紙面手前側に位置する編み込みステント1の構成要素を実線で示し、紙面奥側に位置する編み込みステント1の構成要素を点線で示している。本明細書では、筒状の外形を有する編み込みステント1の軸芯に沿った方向を軸方向と記載し、編み込みステント1の断面円の径方向および円周方向をそれぞれ径方向および周方向と記載する。
【0037】
本実施形態における編み込みステント1は、その骨格を構成する筒状のフレーム部10を有している。フレーム部10は、線材11を屈曲(湾曲を含む)および係合させて網目状(ネット状またはメッシュ状とも呼ばれる)に編み込まれた表面を有するように形成されている。編み込みステント1の展開図である
図2に示すように、フレーム部10の網目状表面には、線材11により囲まれた間隙であるセルが多数形成されている。
【0038】
網目状に編み込まれているフレーム部10の中央部は、線材11が互いに係合する係合点(フックとも呼ばれる)と、線材11が係合せずに横断する交差点とを有している。
図3を参照しながら後述するように、係合点と交差点とは線材11同士の重なり方が異なっている。なお、係合点および交差点は線材11同士が接触するという共通の特徴を有しており、本明細書で使用されている用語「線材接触点」は、係合点および交差点の両方を含んでいる。また、フレーム部10の端部20、30は、それぞれ軸方向外側に向かって突き出すように線材11が折り返された折返点を有している。
【0039】
本実施形態における編み込みステント1では、フレーム部10の網目状表面を構成する各セルは平行四辺形の形状を有している。各セルがなす平行四辺形は、1つの線材接触点を共有するように周方向または軸方向に隣接して配置されている。換言すると、周方向に隣接する平行四辺形は、1つの線材接触点において互いに周方向に向かい合う対頂角をそれぞれの平行四辺形の内角として含むように配置されている。同様に、軸方向に隣接する平行四辺形は、1つの線材接触点において互いに軸方向に向かい合う対頂角をそれぞれの平行四辺形の内角として含むように配置されている。後述するように、本実施形態におけるフレーム部10は、各セルがなす平行四辺形の寸法および配列に特徴を有している。
【0040】
また、フレーム部10の網目状表面は、線材11を周方向または軸方向に辿った場合に線材接触点で進行方向を変更することで特定されるジグザグ形状の線材路を有している。後述するように、本実施形態におけるフレーム部10は、ジグザグ形状の線材路を構成する線材片の寸法および配列に特徴を有している。
【0041】
編み込みステント1のフレーム部10を構成する線材11の線径は、0.05~1mm程度であり、0.1~0.5mmであることが好ましい。また、編み込みステント1の拡張時の外形寸法は、編み込みステント1が留置される消化器系器官内腔の大きさによって異なるが、例えば、外径が2~40mm程度、長さが5~200mm程度である。編み込みステント1は、ステントデリバリー装置等により体内の留置位置まで搬送される際には、拡張時の数分の1程度に径方向に収縮される。
【0042】
編み込みステント1のフレーム部10を構成する線材11の材料としては、例えば、ニッケルチタン(Ni-Ti)合金、ステンレス鋼、タンタル、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属が挙げられる。特に、超弾性合金であるニッケルチタン合金を材料として用いることが好ましい。
【0043】
フレーム部10の骨格となる網目状の構造は、例えば1本の線材11を編み込んで形成することができる。
図1に示すフレーム部10は、1本の線材11を編み込んで形成されており、1本の線材11の両端(先端および基端)同士をスリーブ12によりフレーム部10の端部20、30近傍で接続して無端状になっている。
【0044】
スリーブ12は、その両端のそれぞれに線材11の両端(先端および基端)を挿入することが可能な小さな管状部材である。スリーブ12の両端のそれぞれからスリーブ12の管腔内に線材11の先端および基端を挿入してスリーブ12の側面を押し潰すことで、線材11の先端および基端をスリーブ12に対して固定して線材11を繋げることができるようになっている。スリーブ12の配置位置は特に限定されないが、例えばフレーム部10の端部20、30付近に配置することで、フレーム部10の拡張及び収縮動作を妨げないようにすることができる。
【0045】
スリーブ12の材料としては、線材11の端部同士を固定して接続できるものであれば特に限定されず、ステンレス等の金属や樹脂成型物等を用いることができる。また、後述するX線不透過マーカー21、31に使用されるX線造影性材料を用いてスリーブ12を構成してもよく、これにより、X線造影等によりスリーブ12の位置を確認することで、編み込みステント1の体内での留置位置を確認できるようにしてもよい。
【0046】
なお、線材11の端部同士の接続には、線材11の端部同士を簡単かつ確実に接続することが可能なスリーブ12を用いることが好適であるが、これに限定されるものではなく、例えば溶接、接着または結束により線材11の端部同士を接続してもよい。また、本実施形態では、フレーム部10の形成に継ぎ目のない1本の線材11を用いているが、複数本の線材11の端部同士をスリーブ12等で接続して長尺の線材11を形成したものを用いてもよい。
【0047】
図1および
図2に示すように、フレーム部10には、X線不透過マーカー21、31が設けられている。X線不透過マーカー21、31の配置位置や個数は特に限定されないが、例えば、筒状構造のフレーム部10の軸方向端部の一方または両方、あるいは軸方向中央部に配置されてもよい。本実施形態における編み込みステント1では、フレーム部10の端部20、30から軸方向外側に突出するように、かつ、端部20、30のそれぞれにおいて周方向の反対位置(180°離れた位置)に対向するようにX線不透過マーカー21、31が2個ずつ配置されている。
【0048】
X線不透過マーカー21、31は、例えば略円盤状の形状を有しており、フレーム部10の端部20、30に接続されたアイレットに嵌め込まれている。X線造影等によりX線不透過マーカー21、31の位置を確認することで、編み込みステント1の体内での留置位置を確認することができる。
【0049】
X線不透過マーカー21、31に使用されるX線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナイリジウム合金、白金、銀、ステンレス等が挙げられる。また、X線不透過マーカー21、31は、X線造影性材料の粉末を含有する樹脂成形物によって構成されていてもよい。X線不透過マーカー21、31に用いられるX線造影性材料の粉末としては、硫酸バリウム粉末、次炭酸ビスマス粉末、タングステン粉末及び上述した金属の粉末等を使用することができる。
【0050】
本実施形態における編み込みステント1は、フレーム部10の周面に被膜を有しないベアステントであるが、フレーム部10の周面に被膜を設けたカバードステントであってもよい。
【0051】
図3は、
図2に示す領域Rの部分拡大図である。
図3に示すように、網目状に編み込まれたフレーム部10は、線材11が互いに係合する係合点と、線材11が係合せずに横断する交差点とを有している。
【0052】
図3左上に係合点近傍の拡大図を示す。係合点では、線材11の一部である線材片11aおよび線材片11bが互いに絡まって係合している。より詳細には、線材片11aおよび線材片11bはそれぞれ異なる方向から上下に重なるように係合点に向かって進入し、係合点において上下の重なりが反転するように絡まった後、線材片11aは係合点から線材片11bの進入方向に向かって進行し、線材片11bは係合点から線材片11aの進入方向に向かって進行している。
【0053】
図3右上に交差点近傍の拡大図を示す。交差点では、線材11の一部である線材片11cおよび線材片11dが互いに絡まることなく横断している。より詳細には、線材片11cおよび線材片11dはそれぞれ異なる方向から上下に重なるように交差点に向かって進入して絡まらずに交差した後、線材片11cは交差点から線材片11cの進入方向に沿ってそのまま進行し、線材片11dは交差点から線材片11dの進入方向に沿ってそのまま進行している。
【0054】
線材11同士が互いに係合する係合点では、線材11同士が係合しない交差点に比べて、線材11間において力が効率的に伝達される。したがって、交差点の個数に対する係合点の個数の比率が大きいほど、拡張性および柔軟性に優れた編み込みステント1を実現することができる。また、交差点の個数に対する係合点の個数の比率が大きいほど編み込みステント1の強度も向上し、耐久性に優れた編み込みステント1を実現することができる。
【0055】
図4は、
図2に示す編み込みステント1における係合点、交差点および折返点の位置を示す図である。
図4は、
図2に示す展開図に対応した図であり、フレーム部10の係合点の位置が黒塗りの丸で、フレーム部10の交差点の位置が白塗りの丸で、フレーム部10の折返点の位置が白塗りの四角形でそれぞれ表されている。
【0056】
図4に示すように、係合点および交差点の位置は、X方向の軸(X軸)、Y方向の軸(Y軸)からなる斜交座標系により表すことができる。X方向およびY方向は、
図4に示すように、周方向の一方向(
図4の右方向)に対して角度θxおよび角度θyだけそれぞれ傾いた方向である。X方向は、周方向の一方向を挟んでY方向とは反対側の方向を向いている。角度θxおよび角度θyは0°より大きく90°より小さい範囲内の任意の角度であり、それぞれ独立して設定することができる。また、角度θxと角度θyとの和は90°であってもよく、すなわちX軸およびY軸からなる斜交座標系は直交座標系であってもよい。
【0057】
図4に示すように、係合点、交差点および折返点はすべて、X軸上の位置X1~X20とY軸上の位置Y1~Y20との交点に位置しており、係合点、交差点および折返点はX軸およびY軸の特定位置に一直線に並ぶように配置されている。
【0058】
図4は筒状のフレーム部10を切り開いた展開図に対応しており、左端の境界線BLおよび右端の境界線BRは、フレーム部10の周面上では同一の線である。したがって、境界線BLおよび境界線BR上に位置する座標である(X7,Y1)および(X1,Y7)、(X9,Y3)および(X3,Y9)、(X11,Y5)および(X5,Y11)、(X13,Y7)および(X7,Y13)、(X15,Y9)および(X9,Y15)、(X17,Y11)および(X11,Y17)、(X19,Y13)および(X13,Y19)はそれぞれ同一の座標を表している。また、X方向の位置Xnを表す線および位置Xn+6を表す線は一直線上に位置している(nは整数:例えば位置X1および位置X7、位置X2および位置X8等)。同様に、Y方向の位置Ymを表す線および位置Ym+6を表す線は一直線上に位置している(mは整数:例えば位置Y1および位置Y7、位置Y2および位置Y8等)。
【0059】
図4に示すように、筒状のフレーム部10は、135個の係合点、24個の交差点および12個の折返点を含んでいる。このように、係合点の個数を交差点の個数に対して大幅に多くすることで、拡張性および柔軟性に優れるとともに耐久性にも優れた編み込みステント1を実現することができる。
【0060】
また、X方向に隣接する位置Xnと位置Xn+1との間におけるY方向の距離は距離L1または距離L3であり、距離L1および距離L3とが交互に配置されている。具体的には、nが奇数の場合におけるY方向の距離(例えば、位置X1と位置X2との距離、位置X3と位置X4との距離等)は距離L1であり、nが偶数の場合におけるY方向の距離(例えば、位置X2と位置X3との距離、位置X4と位置X5との距離等)は距離L3である。一方、Y方向に隣接する位置Ymと位置Ym+1との間におけるX方向の距離はすべて距離L2である。
【0061】
距離L1~L3は、距離L2が距離L1以上であり、距離L3が距離L2以上であり、かつ、距離L1と距離L3が異なるという関係(L1≦L2≦L3、ただしL1≠L3)を有している。距離L1と距離L2が同一(L1=L2<L3)であってもよく、あるいは、距離L2と距離L3が同一(L1<L2=L3)であってもよいが、距離L1~L3はすべて異なっている(L1<L2<L3)ことが好ましい。本実施形態における編み込みステント1では、好適な一例として、距離L1、距離L2、距離L3の比を3:4:5としており、距離L1~L3はすべて異なっている。なお、本明細書において「2つの距離が互いに異なる」とは、線材11の線径WDを基準として2つの距離の差がWD以上であることを意味している。
【0062】
距離L1~L3が上記の関係にあることから、フレーム部10の網目状表面を構成する各セルの形状は、第1の平行四辺形P1および第2の平行四辺形P2の2種類のパターンのうちのいずれかとなる。第1の平行四辺形P1は、
図4に示すように、距離L1に等しい寸法L1を有する第1の辺と、距離L2に等しい寸法L2を有する第2の辺とにより構成された平行四辺形である。また、第2の平行四辺形P2は、
図4に示すように、距離L2に等しい寸法L2を有する第2の辺と、距離L3に等しい寸法L3を有する第3の辺とにより構成された平行四辺形である。
【0063】
なお、距離L1と距離L2とが同一(L1=L2<L3)の場合には、第1の平行四辺形P1はすべての辺が同一の寸法L1(=L2)の菱形となるが、第2の平行四辺形P2は2辺の寸法が異なるため菱形とはならない。また、距離L2と距離L3とが同一(L1<L2=L3)の場合には、第2の平行四辺形P2はすべての辺が同一の寸法L2(=L3)の菱形となるが、第1の平行四辺形P1は2辺の寸法が異なるため菱形とはならない。すなわち、各セルの形状を定める2種類のパターンの平行四辺形のうちの少なくとも1種類または2種類すべては、菱形ではない平行四辺形を含んでいる。本実施形態における編み込みステント1では、好適な一例として、第1の平行四辺形P1の平行な2組の対辺のそれぞれの寸法比はL1:L2=3:4に設定されており、第2の平行四辺形P2の平行な2組の対辺のそれぞれの寸法比はL2:L3=4:5に設定されている。
【0064】
以下、
図5~
図10を参照しながら、本実施形態における編み込みステント1が備える特徴について詳細に説明する。
図5~
図10は、本実施形態における編み込みステント1が備える特徴を説明するための図である。
図5~
図10には、
図4に示す領域Rが示されている。
【0065】
本実施形態における編み込みステント1は、網目状表面において、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが周方向に交互に配置されている(第1の特徴)。例えば
図5に示す矢印AR1(周方向)に沿って隣接した平行四辺形を辿ると、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが交互に繰り返し現れる構成となっている。なお、周方向のいずれの配列においても、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが交互に配置された構成となっている。
【0066】
本実施形態における編み込みステント1は、軸方向においても同様の構成となっている。本実施形態における編み込みステント1は、網目状表面において、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが軸方向に交互に配置されている(第2の特徴)。例えば
図5に示す矢印AR2(軸方向)に沿って隣接した平行四辺形を辿ると、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが交互に繰り返し現れる構成となっている。なお、軸方向のいずれの配列においても、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが交互に配置された構成となっている。
【0067】
本実施形態における編み込みステント1は、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とがX方向に交互に配置されている(第3の特徴)。例えば
図6に示す矢印AR3(X方向)に沿って隣接した平行四辺形を辿ると、第1の平行四辺形P1と第2の平行四辺形P2とが交互に繰り返し現れる構成となっている。なお、X方向のいずれの配列においても、第1の平行四辺形P1の形状と第2の平行四辺形P2とが交互に配置された構成となっている。
【0068】
本実施形態における編み込みステント1は、第1の平行四辺形P1がY方向に配置された配列パターンと、第2の平行四辺形P2がY方向に配置された配列パターンとが、X方向に交互に配置されている(第4の特徴)。例えば
図7に示す矢印AR4(Y方向)に沿って隣接した平行四辺形を辿ると、第1の平行四辺形P1のみが配置されており、
図7に示す矢印AR5(Y方向)に沿って隣接した平行四辺形を辿ると、第2の平行四辺形P2のみが配置されている。上記の第1の平行四辺形P1の配列パターンおよび第2の平行四辺形P2の配列パターンは、X方向において交互に繰り返し現れる構成となっている。
【0069】
また、上述したように、フレーム部10の網目状表面は、線材11を周方向または軸方向に辿った場合に特定されるジグザグ形状の線材路を有している。周方向におけるジグザグ形状の線材路は、線材11を周方向に辿った際に、例えば線材11がX方向から線材接触点に進入した場合にはY方向に向きを変えて進行し、線材11がY方向から線材接触点に進入した場合にはX方向に向きを変えて進行することで特定される。また、軸方向におけるジグザグ形状の線材路は、線材11を軸方向に辿った際に、例えば線材11がX方向から線材接触点に進入した場合にはY方向の逆方向(-Y方向)に向きを変えて進行し、線材11がY方向の逆方向(-Y方向)から線材接触点に進入した場合にはX方向に向きを変えて進行することで特定される。
【0070】
本実施形態における編み込みステント1は、線材11を周方向に辿ることで特定されるジグザグ状の線材路が、第1の寸法L1の線材11、第2の寸法L2の線材11、第3の寸法L3の線材11により構成されており、周方向のジグザグ状の線材路において、1つ置きに第2の寸法L2の線材11が配置されており、第2の寸法L2の線材11の間に第1の寸法L1の線材11と第3の寸法L3の線材11とが交互に配置されている(第5の特徴)。例えば
図8における周方向のジグザグ形状の線材路Z1(太線により強調)は、線材片の寸法が「L1、L2、L3、L2」のパターンを繰り返す構成となっている。なお、周方向のジグザグ状の線材路のいずれにおいても、上記の「L1、L2、L3、L2」のパターンを繰り返す構成となっている。
【0071】
本実施形態における編み込みステント1は、軸方向においても同様の構成となっている。本実施形態における編み込みステント1は、線材11を軸方向に辿ることで特定されるジグザグ状の線材路が、第1の寸法L1の線材11、第2の寸法L2の線材11、第3の寸法L3の線材11により構成されており、軸方向のジグザグ状の線材路において、1つ置きに第2の寸法L2の線材11が配置されており、第2の寸法L2の線材11の間に第1の寸法L1の線材11と第3の寸法L3の線材11とが交互に配置されている(第6の特徴)。例えば
図9における軸方向のジグザグ形状の線材路Z2(太線により強調)は、線材片の寸法が「L1、L2、L3、L2」のパターンを繰り返す構成となっている。なお、軸方向のジグザグ状の線材路のいずれにおいても、上記の「L1、L2、L3、L2」のパターンを繰り返す構成となっている。
【0072】
本実施形態における編み込みステント1は、網目状表面を平面に展開した状態において、線材11同士が屈曲および係合する係合点が、Y方向に沿って第2の寸法L2の間隔、第2の寸法L2の2倍の間隔のいずれかの間隔で配置されており、X方向に沿って第1の寸法L1の間隔、第3の寸法L3の間隔、または第1の寸法と第3の寸法との和の間隔で配置されている(第7の特徴)。
【0073】
例えば
図10に示す矢印AR6(X方向)に沿って線材11を辿ると、係合点間の寸法は第1の寸法L1、第3の寸法L3のいずれかとなっている。より詳細には、矢印AR6(X方向)に沿って、係合点間の寸法は第1の寸法L1と第3の寸法L3とが交互に現れる構成となっている。また、矢印AR7(X方向)に沿って線材11を辿ると、係合点間の寸法は第1の寸法L1、第3の寸法L3、第1の寸法L1と第3の寸法L3との和(L1+L3)のいずれかとなっている。より詳細には、矢印AR7(X方向)に沿って、係合点間の寸法は「L1、L1+L3、L3、L1+L3」のパターンを繰り返す構成となっており、2個の係合点が連続して配置された後に1個の交差点が配置されるパターンが繰り返される。上記の矢印AR6に沿った配列パターンおよび矢印AR7に沿った配列パターンは、Y方向において交互に繰り返し現れる構成となっている。
【0074】
一方、
図10に示す矢印AR8(Y方向)に沿って線材11を辿ると、係合点間の寸法は第2の寸法L2、第2の寸法の2倍(2×L2)のいずれかとなっている。より詳細には、例えば矢印AR8(X方向)に沿って、係合点間の寸法は「L2、L2、L2、L2、2×L2」のパターンを繰り返す構成となっており、5個の係合点が連続して配置された後に1個の交差点が配置されるパターンが繰り返される。
【0075】
また、交差点の位置に着目した場合、本実施形態における編み込みステント1は、交差点がX方向に第1の寸法L1または第3の寸法L3の間隔だけ離隔し、かつ、Y方向に第2の寸法L2の2倍(2×L2)の間隔だけ離隔した位置に分散して配置されている。
【0076】
以下、本実施形態における編み込みステント1を製造する際に用いることが可能な編み込みステント製造用治具100について説明する。
図11は、本実施形態における編み込みステント製造用治具100の斜視図である。
【0077】
図11に示すように、編み込みステント製造用治具100は、円柱部材110と、当該円柱部材110の側面(円周面)に設けられた複数の掛合ピン120とにより構成されている。編み込みステント製造用治具100は、編み込みステント1のフレーム部10を製造する際に使用されるものであり、複数の掛合ピン120に線材11を引っ掛けながら線材11を円柱部材110の円周面に巻き付けることで、所望の網目状表面を有する編み込みステント1を製造することができる。
【0078】
円柱部材110は、例えば金属製の細長いパイプにより構成されている。円柱部材110の断面は略円形であり、編み込みステント1の内径と同程度の外径を有している。また、円柱部材110の軸方向の寸法は編み込みステント1の軸方向の寸法よりも長くなっている。
【0079】
円柱部材110の円周面には、円柱部材110の円周面から垂直に突出するように複数の掛合ピン120が設けられている。掛合ピン120は、例えば、線材11の線径より細い太さまたは同程度の太さを有する細長い円筒部材である。円柱部材110の円周面から突出する掛合ピン120の突出長は特に限定されないが、編み込みステント1の製造時に線材11が掛合ピン120から外れないようにするために、線材11の線径より長いことが好ましい。また、掛合ピン120は、円柱部材110に対して着脱可能であってもよい。これにより、線材11を複数の掛合ピン120に引っ掛けながら円柱部材110に巻き付けた後に掛合ピン120を円柱部材110から取り外すことができ、網目状に編み込まれた線材11を編み込みステント製造用治具100から容易に抜去することができる。
【0080】
図12は、本実施形態における編み込みステント製造用治具100の展開図である。
図2に示す展開図は、筒状の編み込みステント製造用治具100を軸方向に切り開いて平面化した状態を示している。
【0081】
編み込みステント製造用治具100は、編み込みステント1の係合点に対応する位置(例えば上記の第7の特徴により特定される位置)および折返点に対応した位置に掛合ピン120を有している。例えば
図12に示すように、複数の掛合ピン120は、円柱部材110の円周面において、
図4に示す編み込みステント1の係合点(
図4の黒塗りの丸)および折返点(
図4の白塗りの四角形)に対応する位置に設けられている。
【0082】
図12に示す編み込みステント製造用治具100を用いて編み込みステント1を製造する方法について説明する。本実施形態における編み込みステント1の製造方法では、1本の線材11を編み込みステント製造用治具100に巻き付けながら移動することで、網目状表面を有するフレーム部10を製造することができる。
【0083】
まず、編み込みステント1のフレーム部10を構成する線材11および編み込みステント製造用治具100を準備する。線材11は、フレーム部10の網目状表面を構成することが可能な十分な長さのものであることが好ましい。編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付けはどの位置から開始してもよいが、ここでは、
図4に示す座標(X2,Y5)および座標(X3,Y5)の間を開始点S1とする。開始点S1は、最終的に製造される編み込みステント1におけるスリーブ12の設置位置に対応している。以下、線材11の先端から十分な長さを確保した線材11の中間部(あるいは線材11の基端)を開始点S1に配置し、開始点S1からX方向に向かって線材11の巻き付けを開始する場合について説明する。
【0084】
編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付ける際には、基本的に下記の第1~第3の方針に基づく作業を行えばよい。
【0085】
第1の方針として、線材11をX方向またはY方向のいずれかの方向に進めながら、編み込みステント製造用治具100に巻き付けるようにする。
【0086】
第2の方針として、線材11をX方向またはY方向に進めて掛合ピン120に到達した場合には、掛合ピン120に巻き付けるように屈曲させて方向転換を行うようにする。すなわち、線材11がX方向から掛合ピン120に到達した場合には、線材11を掛合ピン120に巻き付けてその進行方向をY方向に変更する。また線材11がY方向から掛合ピン120に到達した場合には、線材11を掛合ピン120に巻き付けてその進行方向をX方向に変更する。
【0087】
第3の方針として、すでに線材11が巻き付けられている掛合ピン120において線材11の方向転換を行う際には、
図3の左上図に示すように、すでに巻き付けられている線材11との間で上下を反転させながら線材11同士を係合させるようにする。
【0088】
図13~
図18に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第1~第6工程を示す。ここでは、説明のために当該巻き付け作業を第1~第6工程に分割しているが、これらの第1~第6工程は連続して行われ得る。
【0089】
図13~
図18は、
図12と同様、編み込みステント製造用治具100の展開図である。複数の掛合ピン120は、
図4に示す編み込みステント1の係合点(
図4の黒塗りの丸)および折返点(
図4の白塗りの四角形)に対応する位置に設けられている。以下では、必要に応じて
図4のX座標およびY座標を参照しながら、複数の掛合ピン120の位置および線材11の位置について説明する。
【0090】
図13に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第1工程を示す。
図13には、上記の第1~第3の方針に従って、線材11を開始点S1から経由点S2まで巻き付けた状態が示されている。
図13では、図示明瞭化を目的として、開始点S1から経由点S2までの線材11が太線で強調されている。開始点S1は、
図4の座標(X2,Y5)および座標(X3,Y5)の間に位置している。経由点S2は、
図4の座標(X4,Y6)および座標(X4,Y7)の間に位置している。
【0091】
図14に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第2工程を示す。
図14には、上記の第1~第3の方針に従って、線材11を経由点S2から経由点S3まで巻き付けた状態が示されている。
図14では、図示明瞭化を目的として、経由点S2から経由点S3までの線材11が太線で強調されている。経由点S2は、
図4の座標(X4,Y6)および座標(X4,Y7)の間に位置している。経由点S3は、
図4の座標(X10,Y6)および座標(X10,Y7)の間に位置している。
【0092】
図15に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第3工程を示す。
図15には、上記の第1~第3の方針に従って、線材11を経由点S3から経由点S4まで巻き付けた状態が示されている。
図15では、図示明瞭化を目的として、経由点S3から経由点S4までの線材11が太線で強調されている。経由点S3は、
図4の座標(X10,Y6)および座標(X10,Y7)の間に位置している。経由点S4は、
図4の座標(X15,Y12)および座標(X16,Y12)の間に位置している。
【0093】
図16に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第4工程を示す。
図16には、上記の第1~第3の方針に従って、線材11を経由点S4から経由点S5まで巻き付けた状態が示されている。
図16では、図示明瞭化を目的として、経由点S4から経由点S5までの線材11が太線で強調されている。経由点S4は、
図4の座標(X15,Y12)および座標(X16,Y12)の間に位置している。経由点S5は、
図4の座標(X17,Y17)および座標(X18,Y17)の間に位置している。
【0094】
上記の第1~第4の工程で、フレーム部10の一方の端部20近傍(開始点S1)から巻き付け作業を開始した線材11は、フレーム部10の他方の端部30近傍(経由点S5)まで到達する。
【0095】
図17に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第5工程を示す。
図17には、上記の第1~第3の方針に従って、線材11を経由点S5から経由点S6まで巻き付けた状態が示されている。
図17では、図示明瞭化を目的として、経由点S5から経由点S6までの線材11が太線で強調されている。経由点S5は、
図4の座標(X17,Y17)および座標(X18,Y17)の間に位置している。経由点S6は、
図4の座標(X11,Y11)および座標(X12,Y11)の間に位置している。
【0096】
図18に、編み込みステント製造用治具100への線材11の巻き付け作業の第6工程を示す。
図18には、上記の第1~第3の方針に従って、線材11を経由点S6から終了点S7まで巻き付けた状態が示されている。
図18では、図示明瞭化を目的として、経由点S6から終了点S7までの線材11が太線で強調されている。経由点S6は、
図4の座標(X11,Y11)および座標(X12,Y11)の間に位置している。終了点S7は、
図4の座標(X2,Y5)および座標(X3,Y5)の間に位置している。
【0097】
上記の第5~第6の工程で、線材11は、フレーム部10の他方の端部30近傍(経由点S5)からフレーム部10の一方の端部20近傍(終了点S7)まで戻る。
【0098】
上記の第1~第7工程の一連の巻き付け作業によれば、編み込みステント製造用治具100の円周面に沿って1本の線材11を編み込んでフレーム部10を製造することができる。また、1本の線材11は、開始点S1から出発して開始点S1の近傍の終了点S7まで戻るので、スリーブ12等を用いて開始点S1および終了点S7のそれぞれに位置する線材11の先端および基端を接続することで、線材11を無端状にすることができる。
【0099】
編み込みステント製造用治具100の円周面で網目状に編み込まれた線材11を編み込みステント製造用治具100から抜去して、X線不透過マーカー21、31を取り付けることで、本実施形態における編み込みステント1が完成する。
【0100】
編み込みステント1を体内の所望部位に留置する際には、ステントデリバリー装置200を使用することができる。具体的には、ステントデリバリー装置200の先端部に編み込みステント1を収容して体内に挿入し、ステントデリバリー装置200から編み込みステント1を放出(リリース)することで、編み込みステント1は形状記憶された拡張状態に自己拡張して体内の所望部位に留置される。
【0101】
図19は、編み込みステント1を収容したステントデリバリー装置200の遠位端近傍の部分拡大図である。ステントデリバリー装置200は、医療従事者が操作する操作部を備えているが、ここでは図示省略する。
【0102】
図19に示すように、ステントデリバリー装置200は、その遠位端にインナーシャフト201、先端チップ202、アウターシース203を有している。なお、
図19に示すステントデリバリー装置200は一例にすぎず、本実施形態における編み込みステント1は、公知である任意のステントデリバリー装置を用いて体内に留置することができる。ステントデリバリー装置200は、編み込みステント1を留置する際に狭窄部位または閉塞部位を拡張するためのバルーン等を先端部に備えた構成であってもよい。
【0103】
インナーシャフト201は、その遠位端近傍に、他の部分より外径より小さい小径部を有している。小径部は編み込みステント1の収容空間としての役割を有しており、編み込みステント1は縮径した状態でこの収容空間に収容される。また、インナーシャフト201の先端には先端チップ202が設けられており、インナーシャフト201および先端チップ202の内部には、ガイドワイヤを挿通させるためのルーメン(図示省略)が形成されている。
【0104】
アウターシース203は、不図示の操作部を操作することで、インナーシャフト201に対して軸方向に相対移動可能なように構成されている。インナーシャフト201は、アウターシース203の内部に挿通されている。編み込みステント1を体内の留置部位に運ぶ際、アウターシース203の遠位端は先端チップ202近傍に配置される。ステントデリバリー装置200の収容空間内に収容された編み込みステント1は、径方向に拡張しようとする自己拡張力を有しているが、アウターシース203に覆われて拡張できず、縮径した状態が維持される。編み込みステント1を体内の留置部位に放出(リリース)する際には、不図示の操作部を操作してアウターシース203をインナーシャフト201に対して近位側に引き込んで編み込みステント1を外部に露出させる。これにより、編み込みステント1は自己拡張力により拡張して留置部位に放出される。
【0105】
編み込みステント1の係合点では線材11同士が絡まるように係合している。そのため、係合点以外の箇所(例えば交差点)と比較して、係合点においてはわずかに盛り上がった凸部が形成される。係合点が形成する凸部が軸方向の同一位置で周方向に並ぶと、アウターシース203に対する抵抗が大きくなり、ステントは迅速かつ滑らかに拡張せず、円滑にステントを放出できなくなるおそれがあり、また、アウターシース203を損傷させるおそれもある。さらに、係合点が形成する凸部が軸方向の同一位置で周方向に並ぶと、アウターシース203に対する力の掛かり方が不均一となり、ステントに捩れ、折れ、潰れ等のキンクが発生するおそれがある。特にすべてのセルが菱形となっている従来の編み込みステントでは、係合点が軸方向の同一位置で周方向に並んでしまい、その結果、耐キンク性、リリース性、拡張性および柔軟性に劣ったものとなるため改善が求められていた。なお、係合点の個数を少なくすることで凸部の個数を少なくすることはできるが、係合点の個数が少ないと線材11間において力が効率的に伝達されないため、十分な拡張性および柔軟性が得られないおそれがある。
【0106】
これに対して、本実施形態における編み込みステント1は、網目状表面により形成される各セルが2種類のパターンの平行四辺形で構成されており、2種類のパターンの平行四辺形のうちの少なくとも1種類または2種類すべてが菱形ではない平行四辺形を含んでいる。この構成により、係合点の数を少なくすることなく、軸方向における係合点の位置が軸方向の同一位置に集中しないように係合点を分散させることができる。
【0107】
図20に、本実施形態における編み込みステント1が縮径した状態を示す。
図20は
図2に示す領域Rの部分拡大図である。
図4には、編み込みステント1が拡張した状態が示されているのに対し、
図20には、編み込みステント1が縮径した状態が示されている。
【0108】
本実施形態における編み込みステント1は、第1の寸法L1、第2の寸法L2、第3の寸法L3の3種類の寸法を用いて各セルの平行四辺形を形成している。すべてのセルが菱形(L1=L2=L3)となっている従来の編み込みステントでは、係合点が軸方向の同一位置で周方向に並ぶのに対して、本実施形態における編み込みステント1では、少なくとも第1の寸法L1と第3の寸法L3とが異なっており(L1≠L3)、係合点が軸方向の同一位置に集中せずに分散される。また、
図20に示すように、第1の寸法L1、第2の寸法L2、第3の寸法L3がすべて異なる場合(L1:L2:L3=3:4:5)には、周方向に隣接する係合点がすべて軸方向にずれるので、係合点の分散率がより高くなる。
【0109】
このように、軸方向における係合点の位置を分散させることで、特にステントデリバリー装置200に収容された収縮状態において、ステントデリバリー装置200のアウターシース203に対する編み込みステント1の抵抗を低減させる効果を有している。
【0110】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0111】
1 編み込みステント
10 フレーム部
11 線材
11a、11b、11c、11d 線材片
12 スリーブ
20、30 端部
21、31 X線不透過マーカー
100 編み込みステント製造用治具
110 円柱部材
120 掛合ピン
200 ステントデリバリー装置
201 インナーシャフト
202 先端チップ
203 アウターシース