(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081566
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】蒸留塔の運転方法及び蒸留システム
(51)【国際特許分類】
C10G 7/00 20060101AFI20230606BHJP
C10G 7/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C10G7/00
C10G7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195370
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池永 賢司
(72)【発明者】
【氏名】桐沢 敦
(72)【発明者】
【氏名】木澤 大二郎
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA03
4H129CA10
4H129EA02
4H129NA23
(57)【要約】
【課題】多様な運転への対応と省エネルギーを両立し得る、蒸留塔の運転方法を提供する。
【解決手段】2つ以上の留分を留出する蒸留塔において、前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給する、蒸留塔の運転方法及び蒸留システムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の留分を留出する蒸留塔において、
前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給する、
蒸留塔の運転方法。
【請求項2】
前記一の留分よりも重い留分の留出量を減らす請求項1に記載の蒸留塔の運転方法。
【請求項3】
前記留分に相当する留分を供給し、前記一の留分の留出量を増加させる請求項1又は2に記載の蒸留塔の運転方法。
【請求項4】
前記蒸留塔が、減圧蒸留塔(VAC)である請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸留塔の運転方法。
【請求項5】
前記一の留分が、減圧軽油留分(VGO)である請求項1~4のいずれか1項に記載の蒸留塔の運転方法。
【請求項6】
前記重い留分が、減圧残油留分(VR)である請求項2~5のいずれか1項に記載の蒸留塔の運転方法。
【請求項7】
2つ以上の留分を留出する蒸留塔を備える蒸留システムであって、
前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給するラインを有する蒸留システム。
【請求項8】
前記蒸留塔が、減圧蒸留塔(VAC)である請求項7に記載の蒸留システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留塔の運転方法及び蒸留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製油所では市場の需給バランスの変化に応じて、特定の留分が余剰又は不足する事態が生じることがあり、多様な運転に対応することが必要となる。例えば、前記特定の留分を含む複数の留分を留出する蒸留塔において、前記特定の留分が余剰する場合、余剰分を含めた特定の留分を従来通りの用途(製品)に使用することで対応することが検討される(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、分解系基油の生産増加に伴い、製品中の前記分解系基油の混合比率が増加しても、前記製品に要求されている着火性、燃焼性等の各種性状を満たせるようにすることが検討されている。
【0003】
また、留分の余剰分に対応する方法としては、余剰分の供給先の調整、あるいは反応塔、蒸留塔等の各種の塔における稼働率の調整等により余剰分を低減させる、といった方法もある。しかし、例えば蒸留塔の運転には、所望の蒸留が適正にかつ安定的に行われるために、通常最小稼働率が定められている。特定の留分の余剰が顕著になると、これを解消するために、蒸留塔の稼働率を下げることとなり、前記蒸留塔の最小稼働率に近づく、あるいはより低い稼働率での運転が必要となることがある。そのため、稼働率の調整だけでは需給バランスの変化に対応できなくなる場合が予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、環境問題に対する意識の高まりは増すばかりであり、その一つとして国際海事機関(IMO)による規制強化が挙げられる。本規制強化は、大気汚染防止対策の一環として、2020年から全ての船舶に対して燃料油中の硫黄分濃度を3.5質量%から0.5質量%以下と大幅に低減するものである。そのため、2020年にむけて、特に船舶用重油の需給バランスが大きくかわり、硫黄含有量が比較的多い留分、とりわけ減圧蒸留塔(VAC)から留出される減圧残油留分(VR)を主に含む減圧残重油留分(VC)等の重油留分の余剰が予想されている。減圧残重油留分(VC)は、主に減圧蒸留塔(VAC)から留出する留分であるため、減圧残油留分(VR)を主に含む減圧残重油留分(VC)が余剰する場合は、減圧残油留分(VR)を留出する減圧蒸留塔(VAC)をより低い稼働率で運転することが必要となる。しかし、既述のように、最小稼働率を確保する観点から、稼働率の低減による対応だけでは限度があり、対応しきれない場合が想定される。
【0006】
また、製油所では需給バランスの変化に応じた多様な運転に対応するだけでなく、省エネルギーも求められている。すなわち、製油所における運転は、需給バランスの変化に応じた多様な運転への対応と、省エネルギーとを両立することが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、多様な運転への対応と省エネルギーを両立し得る、蒸留塔の運転方法及び蒸留システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の構成を有する蒸留塔の運転方法及び蒸留システムを提供するものである。
【0009】
1.2つ以上の留分を留出する蒸留塔において、
前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給する、
蒸留塔の運転方法。
2.前記一の留分よりも重い留分の留出量を減らす上記1に記載の蒸留塔の運転方法。
3.前記留分に相当する留分を供給し、前記一の留分の留出量を増加させる上記1又は2に記載の蒸留塔の運転方法。
4.前記蒸留塔が、減圧蒸留塔(VAC)である上記1~3のいずれか1に記載の蒸留塔の運転方法。
5.前記一の留分が、減圧軽油留分(VGO)である上記1~4のいずれか1に記載の蒸留塔の運転方法。
6.前記重い留分が、減圧残油留分(VR)である上記2~5のいずれか1に記載の蒸留塔の運転方法。
7.2つ以上の留分を留出する蒸留塔を備える蒸留システムであって、
前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給するラインを有する蒸留システム。
8.前記蒸留塔が、減圧蒸留塔(VAC)である上記7に記載の蒸留システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多様な運転への対応と省エネルギーを両立し得る、蒸留塔の運転方法及び蒸留システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の蒸留塔の運転方法に係る概略工程図である。
【
図2】本発明の蒸留塔の運転方法に係る概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔蒸留塔の運転方法〕
本発明における実施形態(以後、単に本実施形態と称する場合がある。)に係る蒸留塔の運転方法は、2つ以上の留分を留出する蒸留塔において、前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給する、ことを特徴とするものである。
需給バランスの変化により、上記一の留分以外の他の留分の留出量が過多となることに対し、蒸留塔の稼働率を低減することで対応しようとすると、蒸留塔における適正な蒸留が確保できる稼働率(「最小稼働率」とも称される。)を下回っても対応できない場合が生じる。このような状況に対応すべく、本実施形態によれば、上記一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を蒸留塔に供給することで、前記蒸留塔の見かけの稼働率を向上させて最小稼働率を保持し、安定した蒸留塔の稼動を確保した上で、他の留分の留出量が過多になることに対応することが可能となった。また、一の留分等を供給するだけで対応することが可能となるため、余分なエネルギーの消費を抑制することができ、また安定した蒸留塔の稼動を確保し、過剰なエネルギーの消費を抑制することができるため、結果として省エネルギーが可能となる。
【0013】
本実施形態の運転方法は、供給過多となる留分(上記「他の留分」)が上記一の留分よりも重い留分である場合に、有効である。より重い留分の留出には、軽い留分に比べて、より多くのエネルギーを消費するため、上記のような場合に本実施形態の運転方法を適用すると、エネルギー消費量を低減することができるからである。すなわち、本実施形態の運転方法においては、省エネルギーの向上の観点から、一の留分よりも重い留分の留出量を減らすことが好ましい。
【0014】
例えば、減圧蒸留塔(VAC)を例にとって説明する。減圧蒸留塔(VAC)は、主に常圧蒸留塔(TOP)から留出される常圧残渣留分(RC)から、主に減圧軽油留分(VGO)と、前記減圧軽油留分(VGO)より重い留分となる減圧残油留分(VR)を留出する蒸留塔である。需給バランスの変化により減圧残油留分(VR)が供給過多となった場合、蒸留塔の稼働率を低減することで対応できれば稼働率の低減により対応すればよいが、最小稼働率を下回るような場合には、減圧軽油留分(VGO)を一の留分として減圧蒸留塔(VAC)に供給することで、蒸留塔の稼働率を低下させることなく、他の留分となる減圧残油留分(VR)の留出量を低減させることが可能となる。
本実施形態においては、一の留分とともに、他の留分を蒸留塔に供給してもよいが、他の留分が一の留分よりも重い留分である場合は、省エネルギーの観点から、一の留分のみを供給することが好ましい。
【0015】
本実施形態においては、一の留分だけでなく、一の留分に相当する留分を蒸留塔に供給してもよい。ここで「一の留分に相当する留分」とは、その50容量%留出温度が一の留分の50容量%留出温度に対して±20℃以下の範囲にあるもの(又は「その15℃密度が一の留分の15℃密度に対して±10%以下の範囲にあるもの」)をいう。また、「他の留分が一の留分よりも重い留分」とは、「他の留分の50容量%留出温度が一の留分の50容量%留出温度に対して20℃より高い温度である」(又は「他の留分の15℃密度が一の留分の15℃密度に対して10%超大きい密度である」)ことを意味する。
本明細書において、50容量%留出温度は、留分が常圧残渣留分(RC)、減圧軽油留分(VGO)、減圧残油留分(VR)の場合はASTM D1160に準拠する減圧蒸留方法により測定される温度であり、分解軽油留分(LCO)の場合はASTM D86に準拠した蒸留方法により測定される温度である。(本明細書において、15℃密度は、JIS K2259-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準じて測定される値である。)
【0016】
一の留分に相当する留分を蒸留塔に供給する態様は、例えば、蒸留塔から3種以上の留分が留出される場合であって、一の留分と前記一の留分に相当する留分が留出される場合に、前記一の留分に相当する留分を供給する態様、あるいは他の蒸留塔等から留出された留分を一の留分に相当する留分として、本実施形態に係る蒸留塔に供給する態様が想定される。
このように、本実施形態においては、蒸留塔に供給される留分は、前記蒸留塔から留出される留分に限らず、他の蒸留塔等から留出された留分を用いることができる。いずれにしても、蒸留塔の見かけの稼働率を向上させて最小稼働率を保持し、安定した蒸留塔の稼動を確保した上で、他の留分の留出量の供給過多に対応することが可能となる等の需給バランスの変化等による多様な運転への対応が可能となり、また省エネルギーも可能となるからである。
【0017】
本実施形態においては、蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分、すなわち一の留分を単独で又は複数種を組み合わせて蒸留塔に供給してもよいし、一の留分に相当する留分を単独で又は複数種を組み合わせて蒸留塔に供給してもよいし、一の留分と一の留分に相当する留分とを組み合わせて蒸留塔に供給してもよい。
複数種を組み合わせて蒸留塔に供給する場合、複数種の留分を組み合わせた混合物が位置の留分に相当する留分となっていれば、その内の一種の留分が一の留分に相当する留分でなくてもよい。
【0018】
また、本実施形態の方法における、一の留分に相当する留分を供給する態様としては、例えば、常圧蒸留塔(TOP)で直留軽油留分(LGO)が不足した場合、前記直留軽油留分(LGO)と性状が近い(すなわち直留軽油(LGO)相当の)流動接触分解装置(FCC/RFCC)から留出される分解軽油留分(LCO)を常圧蒸留塔(TOP)に供給することで、直留軽油留分(LGO)の留出量を増加させるという態様が挙げられる。また、本実施形態の方法によれば、必要な留分のみを供給することができるので、余分なエネルギーの消費を抑制することができ、省エネルギーも可能となる。
【0019】
本実施形態の蒸留塔の運転方法は、多様な運転への対応と省エネルギーを両立し得るという効果を有効に活用する観点から、蒸留塔が減圧蒸留塔(VAC)であり、一の留分が減圧軽油留分(VGO)であることが好ましい。また、この場合、前記一の留分よりも重い留分が減圧残油留分(VR)であることが好ましい。既述のように、国際海事機関(IMO)による規制強化が進むと、重油留分の余剰が予想されており、減圧残重油留分(VC)の生成量を低減するため、これに主に含まれる減圧残油留分(VR)の留出量の低減が必要となる状況が予想されている。このような状況下、本実施形態の運転方法によれば、減圧蒸留塔(VAC)において、一の留分を減圧軽油留分(VGO)として、これより重い留分となる減圧残油留分(VR)の留出量を低減させることは容易に可能となる。
【0020】
一の留分を蒸留塔に供給する方法について、例えば、減圧蒸留塔(VAC)を例にとり、減圧軽油留分(VGO)を一の留分として供給する態様について、
図1及び2を用いて説明する。
図1には、減圧軽油留分(VGO)を減圧残油留分(VR)とともに供給できるようなライン(図中、破線部)を新設する方法が示されている。
図1に示される態様では、常圧蒸留塔(TOP)から留出される常圧残渣留分(RC)を減圧残重油留分タンク(VCタンク)に供給する際に用いられる既設のラインの一部が用いられている。この場合、例えば常圧残渣留分(RC)を減圧残重油留分タンク(VCタンク)に供給する際に用いられる既設のラインを使用せず、減圧軽油留分(VGO)と減圧残油留分(VR)とを合流させた後、常圧残渣留分(RC)を減圧蒸留塔(VAC)に供給するライン(常圧残渣留分(RC)の減圧蒸留塔(VAC)への分岐後のライン)に接続するラインを新設してもよい。
【0021】
また、
図2には、減圧軽油留分(VGO)を単独で減圧蒸留塔(VAC)にリサイクルするように供給するライン(図中、破線部)を新設する方法が示されている。
図2に示される態様において、例えば減圧残油留分(VR)を減圧蒸留塔(VAC)に供給することが必要となった場合には、
図1について説明したように、常圧残渣留分(RC)を減圧残重油留分タンク(VCタンク)に供給する際に用いられる既設のラインを使用してもよいし、減圧蒸留塔(VAC)に供給するラインを新設する等により対応してもよい。
本実施形態の運転方法において、上記の一の留分を蒸留塔に供給する方法は、あくまで一例を示すものであり、これらに限られるものではなく、状況に応じて、都合のよい方法を採用すればよい。
【0022】
蒸留塔が減圧蒸留塔(VAC)である場合、運転条件としては減圧蒸留塔(VAC)に供給される留分の性状、また留出される留分の所望の性状に応じてかわり得るため一概にはいえないが、蒸留塔の供給温度としては通常360~410℃、好ましくは370~400℃、さらに好ましくは375~390℃であり、蒸留塔の塔頂圧力としては通常2.5~4.0kPa、好ましくは3.0~3.5kPaである。
【0023】
〔蒸留塔〕
本実施形態の蒸留塔は、2つ以上の留分を留出する蒸留塔であって、前記蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を前記蒸留塔に供給するラインを有する、ことを特徴とするものである。
【0024】
蒸留塔としては、2つ以上の留分を留出する蒸留塔として常用されているものであれば、特に制限なく使用することができ、多段式蒸留塔が好ましく採用される。例えば、塔内に気液接触のための複数の棚段、充填層を有する蒸留塔が挙げられる。
棚段に用いられるトレイとしては、バルブトレイ、泡鐘トレイ、多孔板トレイ等が挙げられる。また充填層に用いられる充填物としては、ラシヒリング、ポールリング等のリング型充填物、ベルサドル、インターロックサドル等どのサドル型充填物、マクマホンパッキング、キャノンパッキング、テラレット等の各種パッキング等が挙げられる。
【0025】
蒸留塔から留出される留分については、上記蒸留塔の運転方法で説明したとおりである。よって、蒸留塔としては、典型的には減圧軽油留分(VGO)及び減圧残油留分(VR)を留出する減圧蒸留塔(VAC)が挙げられる。
【0026】
蒸留塔から留出される少なくとも一の留分及び/又は前記一の留分に相当する留分を蒸留塔に供給するライン(以下、単に「蒸留塔に供給するライン」と称することがある。)についても、上記蒸留塔の運転方法で説明したとおりである。具体的には、例えば
図1及び2について説明したように、これらの
図1及び2において蒸留塔から留出される留分を、蒸留塔に供給する(戻す)ラインが、蒸留塔に供給するラインに該当する。例えば、
図1においては、
(i)減圧蒸留塔(VAC)から留出する減圧軽油留分(VGO)のラインから分岐して、減圧蒸留塔(VAC)から留出する減圧残油留分(VR)のラインに合流するまでのライン(図中、破線部)、
(ii)減圧蒸留塔(VAC)から留出する減圧残油留分(VR)のラインから、上記(i)の減圧軽油留分(VGO)のラインと常圧残渣留分(RC)のラインとの合流点までのライン、及び
(iii)減圧軽油留分(VGO)のライン及び減圧残油留分(VR)のラインの合流点から減圧蒸留塔(VAC)までのライン
が、「蒸留塔に供給するライン」に該当する。
【0027】
また、
図2においては、
(iv)減圧蒸留塔(VAC)から留出する減圧軽油留分(VGO)のラインから分岐して、減圧蒸留塔(VAC)にリサイクルするように供給するライン(図中、破線部)、
また減圧残油留分(VR)も減圧蒸留塔(VAC)に供給する場合は、さらに、
(v)減圧蒸留塔(VAC)から留出する減圧残油留分(VR)のラインから、上記(i)の減圧軽油留分(VGO)のラインと常圧残渣留分(RC)のラインとの合流点までのライン、及び
(vi)上記(v)の合流点から減圧蒸留塔(VAC)までのライン
が、「蒸留塔に供給するライン」に該当する。
【0028】
本実施形態の蒸留塔においては、「蒸留塔に供給するライン」は、例えば
図1の(i)、
図2の(iv)のように新設されたラインでもよいし、また
図1の(ii)及び(iii)、
図2の(v)及び(vi)のような既設のラインであってもよい。
【0029】
各留分のラインには、流量計、流量調節弁等の計器が設けられていてもよい。流量調節弁を設けることで、状況に応じた運転が可能となる。
また、蒸留塔を形成する材料及び蒸留塔に供給するラインの材料は、上記の蒸留塔に供給される留分、留出される留分及び運転条件に応じて適宜決定すればよい。
【実施例0030】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0031】
(実施例1)
図1において、破線部で示される減圧軽油留分(VGO)のラインを新設し、減圧蒸留塔(VAC)の運転を、以下の運転条件により行った。
常圧蒸留塔(TOP)から留出される常圧残渣留分(RC)の内、減圧蒸留塔(VAC)への供給量を795kL/Dとし、減圧蒸留塔(VAC)から留出される一の留分である減圧軽油留分(VGO)の前記減圧蒸留塔(VAC)への供給量を337kL/Dとし、減圧蒸留塔(VAC)から留出される、上記一の留分より重い留分である減圧残油留分(VR)の前記減圧蒸留塔(VAC)への供給量を298kL/Dとし、前記減圧蒸留塔(VAC)への合計供給量を1430kL/D(稼働率:37.5%)としたところ、前記減圧蒸留塔(VAC)から製品として留出される減圧残油留分(VR)の留出量は374kL/Dとなった。
【0032】
減圧蒸留塔(VAC)運転条件
蒸留塔供給温度:376.0℃
蒸留塔塔頂圧力:3.2kPa
その他:常圧残渣留分(RC)を処理した際に得られる各留分の割合は減圧軽油留分(VGO)が53体積%、減圧残油留分(VR)が47体積%である。
常圧残渣留分(RC)性状;
50容量%留出温度:536℃、15℃密度:0.961g/cm3、硫黄分:3.42質量%
減圧軽油留分(VGO)性状;
50容量%留出温度:445℃、15℃密度:0.918g/cm3、硫黄分:2.33質量%
減圧残油留分(VR)性状;
50容量%留出温度:659℃、15℃密度:1.029g/cm3、硫黄分:4.86質量%
【0033】
(比較例1)
実施例1におけるラインを新設する前の装置を用い、減圧蒸留塔(VAC)への常圧残渣留分(RC)の流量を1430kL/D(稼働率37.5%)として実施例1と同様に運転したところ、前記減圧蒸留塔(VAC)から留出される減圧残油留分(VR)の留出量は672kL/Dとなった。
【0034】
上記結果から、本実施形態の蒸留塔の運転方法によれば、減圧蒸留塔(VAC)の稼働率を最小稼働率以下としなくても、減圧残油留分(VR)の留出量を672kL/Dから374kL/Dへと、44%低減することが可能となることが確認された。