(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081599
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】プロスタグランジンE2産生抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20230606BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230606BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20230606BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230606BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230606BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230606BHJP
A61K 36/16 20060101ALI20230606BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20230606BHJP
A61K 36/88 20060101ALI20230606BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230606BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20230606BHJP
A61K 8/9771 20170101ALI20230606BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20230606BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P43/00
A61P17/00
A61P29/00
A61K31/197
A61K38/39
A61K31/122
A61K31/05
A61K36/16
A61K36/73
A61K36/88
A61K8/36
A61K8/35
A61K8/9771
A61K8/9794
A61K8/9789
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195440
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】小方 美幸
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC621
4C083AC622
4C083AD092
4C083AD202
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD431
4C083AD432
4C083AD532
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD31
4C083DD33
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA40
4C084MA17
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4C088AB02
4C088AB51
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4C088BA08
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4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB11
4C206AA01
4C206AA02
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4C206CB25
4C206DA21
4C206FA45
4C206KA01
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4C206MA04
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA55
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】 安全性の高い天然物由来の成分の中からプロスタグランジンE
2産生抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とするプロスタグランジンE
2産生抑制剤を提供する。
【解決手段】 プロスタグランジンE
2産生抑制剤の有効成分として、下記式(I)で表される化合物と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびγ-アミノ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上と、を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物と、
アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびγ-アミノ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上と
を有効成分とすることを特徴とするプロスタグランジンE
2産生抑制剤。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジンE2産生抑制剤に関し、特に天然物由来の成分を有効成分とするプロスタグランジンE2産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、アトピー性皮膚炎、その他肌荒れを伴う各種皮膚炎症性疾患などの原因及び発症機構は、多種多様である。その原因として、プロスタグランジンE2(PGE2)の産生量の増加によるものなどが知られている。
【0003】
炎症は、発赤、浮腫、発熱、痛み、痒み、機能障害等の症状を示す複雑な反応である。例えば、皮膚においては、紫外線が曝露されたり、刺激性物質と接触したりすると、皮膚内で炎症性サイトカイン等が生成され、皮膚炎症が引き起こされる。その結果、皮膚組織がダメージを受け、肌荒れ、発赤、浮腫、色素沈着等の諸症状が生じるようになる。
【0004】
炎症性サイトカインの一つとして、プロスタグランジンE2(PGE2)が挙げられる。PGE2は、皮膚においては例えば角化細胞(ケラチノサイト)等で産生され、皮膚炎症を誘発する原因となる。このため、皮膚炎症を治療または予防する方法として、角化細胞でのPGE2の産生を抑制することが考えられる。角化細胞に対しPGE2産生抑制作用を有する成分として、ペンタエリスリトール等が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安全性の高い天然物由来の成分の中からプロスタグランジンE2産生抑制作用を有するものを見出し、それを有効成分とするプロスタグランジンE2産生抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るプロスタグランジンE2産生抑制剤は、下記式(I)で表される化合物と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびγ-アミノ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上と、を有効成分とすることを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記式(I)で表される化合物と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびγ-アミノ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上と、を有効成分とすることにより、作用効果に優れ、かつ安全性の高いプロスタグランジンE2産生抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るプロスタグランジンE2(PGE2)産生抑制剤は、下記式(I)で表される化合物と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびγ-アミノ酪酸からなる群より選択される1種または2種以上と、を有効成分とするものである。
【0011】
【0012】
〔化合物(I)〕
上記式(I)で表される化合物は、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸(3-(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)propionic Acid)とも呼ばれるケイ皮酸誘導体である。以下、本明細書において、上記式(I)で表される化合物を化合物(I)ということがある。
【0013】
化合物(I)は、例えば、化合物(I)を含有する植物抽出物から単離・精製することにより得ることができる。この場合、このような化合物(I)を含有する植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。化合物(I)を含有する植物としては、例えば、米、大麦、小麦、大豆、小豆、とうもろこし等が挙げられる。
【0014】
化合物(I)は、例えば、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロペン酸(3-(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)propenoic Acid)もしくはその誘導体、またはこれらを含有する組成物(例えば、植物の破砕物または抽出物等)を、フェノール酸還元酵素を有する微生物により醗酵させ、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロペン酸を化合物(I)に変換した後、得られた醗酵物を抽出・単離・精製等することでも得ることができる。3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロペン酸を含有する組成物としては、例えば、コーヒー、コムギ、トウモロコシ、トマト、マテ、ヨモギ、ゴボウ等の植物の破砕物及び抽出物などが挙げられる。また、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロペン酸は木本植物及び草本植物におけるリグニンの構成成分であるため、リグニンまたはこれを含有する組成物を醗酵原料として利用してもよい。一方、フェノール酸還元酵素を有する微生物としては、例えば、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus amylovorus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus gallinarum、Enterococus faecalis等の乳酸菌などが挙げられる。
【0015】
上記植物または醗酵物などから化合物(I)を抽出・単離・精製する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出処理は、抽出原料としての上記植物または醗酵物を適宜乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供すればよい。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0016】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0017】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0018】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3~4の低級脂肪族ケトン等が挙げられる。
【0019】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は任意であり、適宜調整することができる。例えば、水と親水性有機溶媒との混合液を抽出溶媒として使用する場合には、任意の比率、すなわち0:100超、100:0未満(容量比,以下同様に表記)の間で混和して用いることができ、適宜調整することができる。
例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、当該混合液における低級脂肪族アルコールの割合(容量%)を10%以上とすることができ、さらには30%以上とすることができ、あるいは上記混合液における低級脂肪族アルコールの割合(容量%)を90%以下、さらには80%以下とすることができる。また、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、当該混合液における多価アルコールの割合(容量%)を20%以上、あるいは90%以下とすることができ、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、当該混合液における低級脂肪族ケトンの割合(容量%)を10%以上、あるいは80%以下とすることができる。
【0020】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0021】
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物または当該抽出液の乾燥物から化合物(I)を単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を展開溶媒に溶解し、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、化合物(I)を含む画分を回収する方法等が挙げられる。この場合、展開溶媒は使用する固定相に応じて適宜選択すればよい。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られた化合物(I)を含む画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液-液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0022】
本実施形態においては、単離した化合物(I)に替えて、化合物(I)を含有する組成物を用いてもよい。ここで、本実施形態における「化合物(I)を含有する組成物」には、化合物(I)を含有する植物を抽出原料として得られる抽出物、化合物(I)を含有する醗酵物、及び当該醗酵物を抽出原料として得られる抽出物が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態において化合物(I)を含有する組成物を用いる場合は、組成物中に化合物(I)が0.1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。当該組成物中の化合物(I)の含有量は、液体クロマトグラフィー等で測定することができる。
なお、本明細書における用語「化合物(I)」は、特に断らない限り、単離した化合物(I)だけでなく、化合物(I)を含有する組成物を包含する概念である。
【0023】
〔パイナップル抽出物,ビワ抽出物,イチョウ抽出物〕
本実施形態において、パイナップル抽出物、ビワ抽出物およびイチョウ抽出物を製造するために使用する抽出原料は、パイナップル(学名:Ananas comosus (L.) Merr.又はAnanas sativus Schult)、ビワ(学名:Eriobotrya japonica Lindley)およびイチョウ(学名:Ginkgo biloba L.)である。
【0024】
ここで、本実施形態において「抽出物」には、上記植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0025】
パイナップル(Ananas comosus (L.) Merr.又はAnanas sativus Schult)は、熱帯アメリカ原産のパイナップル科アナナス属に属する多年生の植物である。パイナップルは、タイ、フィリピン、ブラジルなどの熱帯から亜熱帯で広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るパイナップルの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部、地下茎部等の地下部、又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部であり、さらに好ましくは、当該果実部を圧搾したのちの残渣である。
【0026】
ビワ(Eriobotrya japonica Lindley)は、バラ科ビワ属に属する常緑高木であり、中国南西部原産であり、長崎、千葉、鹿児島等で栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、幹部、枝部、花部、果実部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0027】
イチョウ(Ginkgo biloba L.)は、北海道、本州、四国、九州等に自生するイチョウ科の落葉高木であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るイチョウの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、花部、種子部、果実部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0028】
上記植物から抽出物を製造する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができ、例えば、前述した化合物(I)の製造において植物抽出物を製造するのと同様の方法を例示することができる。すなわち、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粉砕し、抽出溶媒による抽出に供すればよい。また、脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。抽出溶媒、抽出処理、抽出後の操作などは、化合物(I)において説明したとおりである。
【0029】
〔アスタキサンチン〕
本実施形態で用いるアスタキサンチンは、狭義の化合物としてのアスタキサンチン(3,3’-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4’-ジオン)に加えて、そのエステル等の誘導体を包含する概念である。本明細書では、の少なくとも一方を包含する。本発明では特に断らない限り、これらを総称して「アスタキサンチン」とする。
【0030】
本実施形態で用いるアスタキサンチンは、例えば、アスタキサンチンを含有する天然物を抽出することにより得ることができる。かかる天然物としては、ヘマトコッカス藻等の藻類、オキアミ等の甲殻類、フクジュソウ等の植物、ファフィア酵母等の微生物などが挙げられ、またこれらの培養物を用いてもよい。上記天然物からアスタキサンチンを抽出する方法も特に限定されず、常法に従って得ることができる。さらに、アスタキサンチンは、上記天然物から抽出したものを適宜精製あるいは単離してもよい。
【0031】
本実施形態においては、単離したアスタキサンチンに替えて、アスタキサンチンを含有する組成物を用いることができる。ここで、本実施形態における「アスタキサンチンを含有する組成物」には、アスタキサンチンを含有する天然物を抽出原料として得られる抽出物が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態においてアスタキサンチンを含有する組成物を用いる場合は、組成物中にアスタキサンチンを1質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上含有することがさらに好ましく、10質量%以上含有することが特に好ましい。
なお、本明細書における用語「アスタキサンチン」は、特に断らない限り、単離したアスタキサンチンだけでなく、アスタキサンチンを含有する組成物を包含する概念である。
【0032】
アスタキサンチンとしては、市販品を用いることもできる。市販品のアスタキサンチンとしては、例えば、「アスタリールオイル50F」(ヘマトコッカス藻由来,富士化学工業社製)、「アスタリールパウダー20F」(ヘマトコッカス藻由来,富士化学工業社製)、「Astazine」(ヘマトコッカス藻由来,BGG Japan社製)などが挙げられる。
【0033】
〔コラーゲンペプチド〕
本実施形態において用いるコラーゲンペプチドは、コラーゲンを、酵素、または酸もしくはアルカリで分解し低分子化したものをいう。原料となるコラーゲンの由来は特に限定されず、例えば、タラ、サケ、ヒラメ、サケ、イワシ、マグロ、サメ等の水棲動物;ウシ、ブタ、鳥等の陸棲動物のいずれであってもよい。
コラーゲンペプチドの調製方法は、常法によることができ、例えば、上記動物の組織を粉砕し、熱水等によりコラーゲンを抽出したのち、酸もしくはアルカリによる加水分解、またはトリプシン、トリプシンのようなタンパク質加水分解酵素で処理し、さらに適宜塩析・透析等の精製を行うことにより、調製することができる。
【0034】
コラーゲンペプチドの重量平均分子量は、例えば、500~50000であることが好ましく、1000~20000であることがより好ましく、1000~10000であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー法により測定した値である。
【0035】
コラーゲンペプチドとしては、市販品を用いることもできる。市販品のコラーゲンペプチドとしては、例えば、「ニッピペプタイドFCP-EX」(魚類由来,重量平均分子量3000~5000,ニッピ社製)、「ニッピペプタイドCQT-F01」(魚類由来,重量平均分子量5000,ニッピ社製)、「ニッピペプタイドPS-1」(豚由来,重量平均分子量5000,ニッピ社製)、「イクオスHDL-50DR」(魚類由来,重量平均分子量5000,新田ゼラチン社製)、「水溶性コラーゲンペプチドSS」(豚由来,重量平均分子量6600,協和発酵バイオ社製)などが挙げられる。
【0036】
〔ヒドロキシチロソール〕
本実施形態で用いるヒドロキシチロソールは、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エタノールとも称されるポリフェノールの一種である。
【0037】
本実施形態で用いるヒドロキシチロソールは、例えば、ヒドロキシチロソールを含有する天然物を抽出することにより得ることができる。かかる天然物としては、例えば植物が挙げられ、好ましくはオリーブ(学名:Olea europaea)が挙げられ、さらに好ましくはオリーブの果実、葉が挙げられる。上記天然物からヒドロキシチロソールを抽出する方法は特に限定されず、常法に従って得ることができる。さらに、ヒドロキシチロソールは、上記天然物から抽出したものを適宜精製あるいは単離してもよい。
【0038】
本実施形態においては、単離したヒドロキシチロソールに替えて、ヒドロキシチロソールを含有する組成物を用いることができる。ここで、本実施形態における「ヒドロキシチロソールを含有する組成物」には、ヒドロキシチロソールを含有する天然物を抽出原料として得られる抽出物が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態においてヒドロキシトロソールを含有する組成物を用いる場合は、組成物中にヒドロキシチロソールを1質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上含有することがさらに好ましく、10質量%以上含有することが特に好ましい。
なお、本明細書における用語「ヒドロキシチロソール」は、特に断らない限り、単離したヒドロキシチロソールだけでなく、ヒドロキシチロソールを含有する組成物を包含する概念である。
【0039】
ヒドロキシチロソールとしては、市販品を用いることもできる。市販品のヒドロキシチロソールとしては、例えば、「オラリス」(エーザイフード・ケミカル社製)、「Olivex HT6」(サンブライト社製)、「オリーブ葉エキス」(バイオアクティブズジャパン社製)などが挙げられる。
【0040】
〔γ-アミノ酪酸〕
本実施形態において用いるγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid,GABA)は、例えば、GABAを含有する植物を抽出し、精製することにより製造することができ、グルタミン酸(またはその塩)を含有する組成物(例えば、植物の破砕物または抽出物)を、グルタミン酸デカルボキシラーゼを有する微生物により発酵させ、グルタミン酸をGABAに変換した後、得られた発酵物を抽出・単離・精製することにより製造することもできる。さらには、自然界に存在するグルタミン酸デカルボキシラーゼを用い、グルタミン酸(またはその塩)を原料として酵素変換したもの、発酵食品中の微生物を単離し、培養液中でグルタミン酸(またはその塩)を変換したものであってもよい。
【0041】
GABAあるいはグルタミン酸を含有する植物としては、大麦、米、大豆、カボチャ、ナス、トマト、キュウリ等が挙げられる。また、グルタミン酸デカルボキシラーゼを有する微生物としては、乳酸菌、酵母、納豆菌等が挙げられる。
これらの中でも、大麦を乳酸菌により発酵させたものが好ましい。大麦としては、大麦を麹および酵母を用いてアルコール発酵させ蒸留した残渣(いわゆる大麦の焼酎発酵残渣)を用いることが好ましい。
【0042】
上記植物または発酵物などからGABAを抽出・単離・精製する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができ、例えば、前述した化合物(I)の製造と同様の方法を例示することができる。すなわち、抽出原料を適宜乾燥した後、そのまま又は粉砕し、抽出溶媒による抽出に供したのち、目的物としてのGABAを単離・精製すればよい。また、脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。抽出溶媒、抽出処理、抽出後の操作、単離・精製方法などは、化合物(I)において説明したとおりである。
【0043】
本実施形態においては、単離したGABAに替えて、GABAを含有する組成物を用いてもよい。ここで、本実施形態における「GABAを含有する組成物」には、GABAを含有する植物を抽出原料として得られる抽出物、GABAを含有する醗酵物、及び当該醗酵物を抽出原料として得られる抽出物が含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物が含まれる。
本実施形態においてGABAを含有する組成物を用いる場合は、組成物中にGABAを1質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。
なお、本明細書における用語「γ-アミノ酪酸」あるいは「GABA」は、特に断らない限り、単離したGABAだけでなく、GABAを含有する組成物を包含する概念である。
【0044】
なお、GABAとしては、市販品を用いることもできる。市販品のGABAとしては、例えば、「大麦乳酸発酵液ギャバ」(三和酒類社製)、「GABA協和」(協和発酵バイオ社製)、「ファーマギャバ」(ファーマフーズ社製)、「純γ-アミノ酪酸(GABA)」(山口化研社製)等を例示することができる。
【0045】
〔PGE2産生抑制剤〕
以上のようにして得られた、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、を組み合わせて用いることにより、優れたPGE2産生抑制作用を発揮するため、PGE2産生抑制剤の有効成分として用いることができる。
本実施形態のPGE2産生抑制剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
【0046】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とアスタキサンチンとの含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.001~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.01~1:100である。なお、有効成分としてアスタキサンチンを含有する組成物を用いる場合は、上記含有量比はアスタキサンチンの質量に換算した値である。
【0047】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とパイナップル抽出物との含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.01~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.1~1:100である。
【0048】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とビワ抽出物との含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.01~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.1~1:100である。
【0049】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とコラーゲンペプチドとの含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.01~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.1~1:100である。
【0050】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とヒドロキシチロソールとの含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.001~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.01~1:100である。
【0051】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とイチョウ抽出物との含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.01~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.1~1:100である。なお、有効成分として化合物(I)を含有する組成物を用いる場合は、上記含有量比は化合物(I)の質量に換算した値であり、他の成分との含有量比も同様である。
【0052】
本実施形態に係るPGE2産生抑制剤において、化合物(I)とGABAとの含有量比(質量比)は、その活性に応じて適宜調整することができるが、好適な含有量比は、1:0.01~1:1000であり、特に好適な含有量比は、1:0.1~1:100である。なお、有効成分としてGABAを含有する組成物を用いる場合は、上記含有量比はGABAの質量に換算した値である。
【0053】
本実施形態のPGE2産生抑制剤は、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、のみからなるものでもよいし、これらを製剤化したものでもよい。
【0054】
本実施形態のPGE2産生抑制剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。PGE2産生抑制剤は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料、頭髪化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0055】
本実施形態のPGE2産生抑制剤を製剤化した場合、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、のそれぞれの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0056】
なお、本実施形態のPGE2産生抑制剤は、必要に応じて、PGE2産生抑制作用を有する他の天然抽出物等を、さらに配合して有効成分として用いることができる。
【0057】
本実施形態のPGE2産生抑制剤の患者に対する投与方法としては、経口投与、経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防又は治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態のPGE2産生抑制剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0058】
本実施形態のPGE2産生抑制剤は、有効成分である、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、が有するPGE2産生抑制作用を通じて、刺激性物質の接触による接触性皮膚炎(かぶれ);乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患を予防、治療または改善することができる。また、本実施形態のPGE2産生抑制剤は、そのPGE2産生抑制作用を通じて、紫外線曝露による発赤、紅斑、色素沈着等の皮膚炎症を予防、治療または改善することができる。ただし、本実施形態のPGE2産生抑制剤は、これらの用途以外にもPGE2産生抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0059】
また、本実施形態のPGE2産生抑制剤は、PGE2産生抑制作用において優れた作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0060】
〔PGE2産生抑制用皮膚外用剤〕
化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上とは、組み合わせて用いることで、PGE2産生抑制作用において優れた作用を有しているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。この場合、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、をそのまま配合してもよいし、これらを製剤化したPGE2産生抑制剤を配合してもよい。これにより、PGE2産生抑制用途に好適な皮膚外用剤とすることができる。
【0061】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される医薬品、医薬部外品、化粧料等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0062】
皮膚外用剤における上記有効成分の配合量は、皮膚外用剤の種類に応じて適宜調整することができるが、例えば、化合物(I)の好適な配合率(化合物(I)の質量換算)は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
アスタキサンチンの好適な配合率(アスタキサンチンの質量換算)は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
パイナップル抽出物の好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
ビワ抽出物の好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
コラーゲンペプチドの好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
ヒドロキシチロソールの好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
イチョウ抽出物の好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
GABAの好適な配合率(GABAの質量換算)は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
【0063】
〔PGE2産生抑制用経口組成物〕
化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上とを、組み合わせて用いることで、PGE2産生抑制作用において優れた作用を有しているため、経口組成物に配合するのに好適である。この場合、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、をそのまま配合してもよいし、これらを製剤化したPGE2産生抑制剤を配合してもよい。
【0064】
ここで、経口組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「経口組成物」は、経口的に摂取される一般食品、飼料、健康食品、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示飲食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。本実施形態に係る経口組成物は、当該経口組成物またはその包装に、化合物(I)が有する好ましい作用を表示することのできる経口組成物であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品,栄養機能食品)、医薬部外品または医薬品であることが特に好ましい。
【0065】
化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上とを経口組成物に配合する場合、あるいはこれらの有効成分を製剤化したPGE2産生抑制剤を経口組成物に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができる。
【0066】
添加対象となる経口組成物の一般的な摂取量を考慮すると、各成分の成人1日あたりの摂取量は、化合物(I)で約1~1000mg(化合物(I)の質量換算)とするのが好ましく、アスタキサンチンで約1~1000mg(アスタキサンチンの質量換算)とするのが好ましく、パイナップル抽出物で約1~1000mgとするのが好ましく、ビワ抽出物で約1~1000mgとするのが好ましく、コラーゲンペプチドで約1~1000mgとするのが好ましく、ヒドロキシチロソールで約1~1000mgとするのが好ましく、イチョウ抽出物で約1~1000mgとするのが好ましく、GABAで約1~1000mg(GABAの質量換算)とするのが好ましい。
【0067】
なお、添加対象経口組成物が顆粒状、錠剤状またはカプセル状の経口組成物の場合、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、の合計添加量は、添加対象経口組成物に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0068】
本実施形態の経口組成物は、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、またはGABAとの活性を妨げないような任意の経口組成物に配合したものであってもよいし、化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、またはGABAとを主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0069】
本実施形態の経口組成物を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の経口組成物にすることができる。
【0070】
化合物(I)と、アスタキサンチン、パイナップル抽出物、ビワ抽出物、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソール、イチョウ抽出物、およびGABAからなる群より選択される1種または2種以上と、を配合し得る経口組成物は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられ、これらの経口組成物に化合物(I)を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0071】
なお、本実施形態のPGE2産生抑制剤、PGE2産生抑制用皮膚外用剤、およびPGE2産生抑制用経口組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
【実施例0072】
以下、試験例等を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、被験試料は以下を用いた。
【0073】
【0074】
〔試験例1〕マクロファージにおけるPGE2産生抑制作用試験
以上の試料1~8について、以下のようにしてPGE2産生抑制作用を試験した。
【0075】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの濃度になるように10%FBS含有DMEMで希釈した後、96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、18時間培養した。
【0076】
培養終了後、既に存在するシクロオキシゲナーゼ(COX)-1および少量発現しているCOX-2をアセチル化し失活させるため、培地を500μmol/Lアスピリン含有培地に交換し4時間培養した。細胞をPBS(-)で3回洗浄し、終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有DMEMで溶解した被験試料((試料1~8,試料最終濃度は下記表2~8を参照。ただし,試料3,4,7は抽出物濃度、試料8はGABA換算値である。)を各wellに100μL添加した後、終濃度1μg/mLで10%FBS含有DMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS,E.coli 0111;B4,DIFCO社製)を100μL添加し、16時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有DMEMを用いて同様に培養した。
【0077】
培養終了後、各wellの培養上清中のプロスタグランジンE2(PGE2)量をPGE2 EIA Kit(Cayman Chemical社製)を用いて定量した。得られた結果から、下記式によりPGE2 産生抑制率(%)を算出した。
【0078】
PGE2産生抑制率(%)={1-(A-C)/(B-C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加・LPS刺激でのPGE2量
B:被験試料無添加・LPS刺激でのPGE2量
C:被験試料無添加・LPS無刺激でのPGE2量
結果を表2~8に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
表2~8に示すように、化合物(I)(試料1)と、アスタキサンチン(試料2)、パイナップル果実部抽出物(試料3)、ビワ葉部抽出物(試料4)、コラーゲンペプチド(試料5)、ヒドロキシチロソール(試料6)、イチョウ葉部抽出物(試料7)、またはGABA(試料8)とをそれぞれ組み合わせることで、単独使用に比べてPGE2 産生抑制作用が顕著に向上することが確認された。
【0087】
〔配合例1〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
化合物(I) 0.10g
イチョウ抽出物 0.10g
アスタキサンチン 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3-ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルリチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0088】
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
化合物(I) 0.10g
パイナップル抽出物 0.10g
GABA 0.10g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3-ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0089】
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
化合物(I) 0.01g
ビワ抽出物 0.01g
コラーゲンペプチド 0.01g
ヒドロキシチロソール 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3-ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0090】
〔配合例4〕
常法により、以下の組成を有する経口液状製剤を製造した。
<1アンプル(1本100mL)中の組成>
化合物(I) 0.3質量%
イチョウ抽出物 0.3質量%
アスタキサンチン 0.1質量%
GABA 0.1質量%
ソルビット 12.0質量%
安息香酸ナトリウム 0.1質量%
香料 1.0質量%
硫酸カルシウム 0.5質量%
精製水 残部(100質量%)
【0091】
〔配合例5〕
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
化合物(I) 2.0mg
パイナップル抽出物 2.0mg
ビワ抽出物 2.0mg
コラーゲンペプチド 2.0mg
ヒドロキシチロソール 2.0mg
ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
カゼインホスホペプチド 16.7mg
ビタミンC 33.4mg
マルチトール 136.8mg
コラーゲン 12.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg