IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081613
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195463
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】國岡 聡志
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056EB03
2C056EB11
2C056EB36
2C056EC03
2C056EC23
2C056EC35
2C056FB04
2C056FB07
2C056JB15
(57)【要約】
【課題】対象物への液体吐出処理において処理時間のロスが少ない液体吐出装置を提供する。
【解決手段】
対象物に液体を吐出するヘッドと、前記対象物に対して前記ヘッドを所定の走査方向に走査する走査手段と、前記ヘッドに対してメンテナンス処理を行うメンテナンス手段と、前記対象物に対して行う液体吐出処理での前記走査方向の範囲情報に基づいて、前記走査方向における前記メンテナンス手段の位置を変更する制御手段と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に液体を吐出するヘッドと、
前記対象物に対して前記ヘッドを所定の走査方向に走査する走査手段と、
前記ヘッドに対してメンテナンス処理を行うメンテナンス手段と、
前記対象物に対して行う液体吐出処理での前記走査方向の範囲情報に基づいて、前記走査方向における前記メンテナンス手段の位置を変更する制御手段と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記液体を吐出するノズルを設けたノズル面を有し、前記メンテナンス手段は、前記ノズル面を洗浄する洗浄装置であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記メンテナンス手段を、前記ヘッドに対して前記走査方向の上流側と下流側とに備え、そのうちの少なくとも一方の前記メンテナンス手段の位置を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材を含むクリーニング機構部とを一体に備えた吐出ユニットとすることで、必要なときにノズル面を随時クリーニングできるようにした吐出ユニットを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、クリーニング機構部の搭載により吐出ユニットの構成が複雑になる。また、クリーニング機構部の搭載により吐出ユニットの重量が増すため、吐出ユニットの往復動のための駆動部に掛かる負荷が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、対象物に液体を吐出するヘッドと、前記対象物に対して前記ヘッドを所定の走査方向に走査する走査手段と、前記ヘッドに対してメンテナンス処理を行うメンテナンス手段と、前記対象物に対して行う液体吐出処理での前記走査方向の範囲情報に基づいて、前記走査方向における前記メンテナンス手段の位置を変更する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、対象物への液体吐出処理において処理時間のロスが少ない液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の背面側からの全体斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の正面側からの全体斜視図。
図3】キャリッジの全体斜視図。
図4】実施形態に係る印刷装置のハードウエア構成の一例を示す説明図。
図5】実施形態に係るキャリッジの動作の説明図。
図6】実施形態に係るキャリッジの動作の説明図。
図7】第2洗浄装置の位置変更制御のフローチャート。
図8】別の実施形態に係るキャリッジの動作の説明図。
図9】別の実施形態における第2洗浄装置の位置変更制御のフローチャート。
図10】変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<液体吐出装置の概略>
はじめに図1および図2を用いて液体吐出装置の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の背面側からの全体斜視図、図2は正面側からの全体斜視図である。本実施形態に例示した液体吐出装置は、トラックの車体側面などに画像を形成する印刷装置である。
【0009】
印刷装置1000は、トラックの車体側面などの対象物100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0010】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なように、X軸レール101を保持する。X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。
【0011】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向へ動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向へ動かすX方向駆動部72とを備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向へ動かすY方向駆動部82と、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向へ動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0012】
上記構成の印刷装置1000は、X軸レール101が一定間隔でY方向負側へ下降する毎に、キャリッジ1がX軸レール101上を左右(X方向負側および正側)に往復動作する。キャリッジ1の往復移動に伴い、ヘッド保持体70に設けたヘッドは対象物100を走査しながら液体の一例であるインクを吐出し、対象物100に対して液体吐出処理の一例である画像形成を行う。
【0013】
ここで、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。なお、図において対象物100の表面形状は平面としているが、対象物100の表面形状は、鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、または多少の凹凸を有する面であってもよい。
【0014】
X軸レール101の両端部、つまりキャリッジ1に対して走査方向上流側と走査方向下流側には、ヘッドが対象物100を走査する毎にヘッドのインク吐出ノズルを設けたノズル面を洗浄するための第1洗浄装置105および第2洗浄装置106を備えている。なお、第1洗浄装置105および第2洗浄装置106は、メンテナンス手段としての一例であり、メンテナンス手段の機能は洗浄に限るものではない。例えば、ヘッドの空吐出動作で発生した液体を受け取る空吐出受けの機能など、ヘッドの吐出性能を維持する上で必要となる他の機能を搭載するものであってもよい。ここで、X軸レール101およびX方向駆動部72は「走査手段」の一例である。
【0015】
<キャリッジの構成>
次に図3を用いてキャリッジの構成を説明する。図3は、図1および図2に示した印刷装置のキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1を対象物100側から見たものである。
【0016】
キャリッジ1はヘッド保持体70を備えている。また、キャリッジ1は、図1に示した第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向(正側および負側)へ移動可能である。ヘッド保持体70は、図1に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向(正側および負側)へ移動可能である。また、ヘッド保持体70はヘッド300を取り付けるためのヘッド固定板70aを備えている。本実施形態では、8つのノズル302を有するヘッドを、ヘッド固定板70aに6個取り付けた構成を例示しており、6個のヘッド300a~300fを積層状に並べて設けている。なお、以下の説明においてヘッド300a~300fを総称する場合は「ヘッド300」と記す。
【0017】
ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、各ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、印刷装置1000が、単色を用いる塗装装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0018】
ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル列が水平面(X-Z面)と交差し、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾けた状態でヘッド固定板70aに固定する。この状態でノズル302は、鉛直方向と交差する方向(Z方向正側)にインクを吐出する。
【0019】
<ハードウエア構成>
次に、図4を用いて、印刷装置1000のハードウエア構成を説明する。図4は、実施形態に係る印刷装置のハードウエア構成の一例を示す説明図である。なお、図4に示すハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。
【0020】
印刷装置1000は、コントローラ901、ヘッド駆動制御部902等を備える。また、コントローラ901には、コンピュータ903を接続している。コンピュータ903は、カラープロファイルやユーザの設定に応じて画像処理を行うRIP(Routing Information Protocol)部9031、対象物100に形成する画像の画像データを走査(キャリッジ1のX軸方向の移動)毎の画像データに分解するレンダリング部9032等を備える。また、コンピュータ903には、対象物100に形成する画像の画像データおよび座標データの設定や、画像形成モードの選択、画像形成(印刷)範囲の設定等を行う入力装置9033を接続している。入力装置9033は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなり、ユーザからの入力を受け付ける。
【0021】
コントローラ901は、システム制御部9011、データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014、キャリッジ制御部9015およびメンテナンス制御部9016等を備える。システム制御部9011は、コンピュータ903から画像データや指令を受信し、印刷装置1000の全体動作を制御する。データ格納部9012は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等のメモリを備え、コンピュータ903から受信した画像データ、印刷範囲データ等を格納する。メモリ制御部9013は、データ格納部9012を制御する。
【0022】
印刷装置1000は、例えばX軸レール101に沿って設置したリニアエンコーダを備える。このリニアエンコーダの各スリットを光学的に検出するエンコーダセンサ109を、例えばキャリッジ1や洗浄装置105、106等、X軸レール101上で移動可能な部材に設置することで、当該部材のX軸上での位置情報を取得できるようにしている。吐出周期信号生成部9014は、キャリッジ1におけるエンコーダセンサ109の出力信号と、コンピュータ903から受信した画像データの解像度を示す情報とから、インクの吐出周期信号を生成する。
【0023】
キャリッジ制御部9015は、エンコーダセンサ109の出力信号に基づきキャリッジ1の位置情報を算出して、X方向駆動部72、Y方向駆動部82、第1のZ方向駆動部92および第2のZ方向駆動部93の駆動を制御する。メンテナンス制御部9016は、第2洗浄装置106におけるエンコーダセンサ109の出力信号に基づき、第2洗浄装置106の位置情報を算出するとともに、第1洗浄装置105および第2洗浄装置106の動作制御を行う。
【0024】
以上のようにコントローラ901は、システム制御部9011、データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014、キャリッジ制御部9015およびメンテナンス制御部9016等を備えている。コントローラ901は、演算処理装置および記憶装置を有し、記憶装置内に事前に記録されているプログラムを演算処理装置が実行することで、これら各機能部を実現する。ここで、コントローラ901は「制御手段」の一例である。
【0025】
ヘッド駆動制御部902は、コントローラ901の吐出周期信号生成部9014からの吐出周期信号を受信し、吐出周期信号に基づきヘッド300からのインク吐出動作を制御する。なお、RIP部9031およびレンダリング部9032は、コンピュータ903に設けるのではなく、コントローラ901のシステム制御部9011に設ける構成としてもよい。また、本実施形態では、キャリッジ1および第2洗浄装置106等の位置を検出するセンサとしてエンコーダセンサを例示したが、センサはこれに限るものではない。エンコーダセンサ以外に例えばプッシュセンサ等のメカニカルセンサでもよいし、レーザー光などを用いた光学式センサであってもよい。
【0026】
<実施形態の動作>
次に、図5および図6を用いて、印刷装置1000におけるキャリッジ1の動作の一例を説明する。図5は、実施形態に係るキャリッジの動作の説明図であり、対象物100のX方向のほぼ全域に印刷範囲100aを設定している場合である。
【0027】
この場合、X軸レール101は、キャリッジ1が印刷範囲100a内の印刷開始位置P1と対向する位置となるようにY方向正側へ上昇する。印刷を開始すると、キャリッジ1は印刷開始位置P1からX方向正側へX軸レール101上を移動し、キャリッジ1に搭載したヘッド300が吐出するインクによって印刷範囲100aに所望の画像を形成する。キャリッジ1のX方向正側への1回目の走査が終了したならば、キャリッジ1はさらにX方向正側へ移動し、第2洗浄装置106と対向した位置で停止する。このとき第2洗浄装置106は、ヘッド300のノズル面に対して洗浄処理を実施する。
【0028】
洗浄処理が完了すると、X軸レール101はY方向負側へ一定間隔だけ移動(改行)する。これによってX軸レール101上に設けたキャリッジ1、第1洗浄装置105および第2洗浄装置106もY方向負側へ一定間隔だけ移動する。
【0029】
その後、キャリッジ1は、X軸レール101上をX方向負側へ移動し、ヘッド300が吐出するインクによって印刷範囲100aに所望の画像を形成する。キャリッジ1のX方向負側への2回目の走査が終了したならば、キャリッジ1はさらにX方向負側へ移動し、第1洗浄装置105と対向した位置で停止する。このとき第1洗浄装置105は、ヘッド300のノズル面に対して洗浄処理を実施する。
【0030】
洗浄処理が完了すると、X軸レール101はY方向負側へ一定間隔だけ移動する。これによってX軸レール101上に設けたキャリッジ1、第1洗浄装置105および第2洗浄装置106はさらにY方向負側へ一定間隔だけ移動する。以上の動作を繰り返しながら、矢印で示したような移動軌跡にてキャリッジ1は印刷終了まで移動する。なお、上記の実施形態では、洗浄処理の完了後にX軸レール101の下降動作を行う構成としたが、順序を逆にしてもよい。つまり、キャリッジ1の走査が終了したならばX軸レール101をY方向負側へ一定間隔だけ移動し、次の走査の開始前に洗浄処理を実施するようにしてもよい。
【0031】
上記のように印刷範囲100aの全体に印刷(画像形成)を実施する場合、キャリッジ1は、第1洗浄装置105および第2洗浄装置106から近い位置で走査が終了する。従って、走査終了後のキャリッジ1はすぐに第1洗浄装置105および第2洗浄装置106と対向する位置に到達し、洗浄処理へ移行することができる。そのため、印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができる。また、キャリッジ1と第1洗浄装置105および第2洗浄装置106とは別体で構成しているため、キャリッジ1の構成を簡素化できる。さらに、別体とすることでキャリッジ1の軽量化を図ることができ、キャリッジ1の駆動部に掛かる負荷を軽減することが可能になる。
【0032】
図6は、実施形態に係るキャリッジの動作の説明図であり、対象物100のX方向のおおよそ半分の領域に印刷範囲100bを設定している場合である。
【0033】
この場合も印刷動作としては図5の場合と同様、キャリッジ1は印刷範囲100b内の印刷開始位置P1をスタートし、矢印で示したような移動軌跡にてキャリッジ1は印刷終了まで移動する。
【0034】
しかし、走査毎に実施するヘッド300の洗浄処理においては、キャリッジ1が印刷範囲100bの左端部(X方向正側端部)に到達しているにもかかわらず、図6(a)のようにキャリッジ1を第2洗浄装置106まで動かさなくてはならなくなる。その結果、対象物100のX方向のおおよそ半分の領域に印刷範囲100bを設定した場合であっても、印字時間としては対象物100のX方向のほぼ全域に印刷範囲100aを設定した場合と同等の時間がかかってしまう。
【0035】
そこで、図6(b)のように、第2洗浄装置106のX方向(キャリッジ1の走査方向)における位置を変更可能にしている。第2洗浄装置106の位置の変更制御は、対象物100に対して実施する画像形成処理での走査方向の範囲情報に基づいてコントローラ901が行う。このように印刷範囲に合わせて第2洗浄装置106を印刷前に移動しておく。これにより、対象物100のX方向のおおよそ半分の領域に印刷範囲100bを設定している場合も、キャリッジ1は第1洗浄装置105および第2洗浄装置106から近い位置で走査が終了する。従って、走査終了後のキャリッジ1はすぐに第1洗浄装置105および第2洗浄装置106と対向する位置に到達し、洗浄処理へ移行することができる。その結果、印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができるようになる。
【0036】
<第2洗浄装置の位置制御>
次に、図7を用いて、第2洗浄装置106の位置変更制御の一例を説明する。図7は、第2洗浄装置の位置変更制御のフローチャートであり、印刷範囲の設定から印刷開始までの処理を説明する。
【0037】
まず、ユーザーは、対象物100に対する印刷範囲を入力装置9033により入力し、印刷範囲を設定する(ステップS1)。印刷範囲は、例えば印刷開始位置および印刷終了位置を示す座標情報であり、印刷範囲の情報はデータ格納部9012に格納する。そして、印刷開始位置および印刷終了位置を示す座標情報のうちのX座標から、画像形成処理での走査方向(X方向)の範囲情報を得ることができる。
【0038】
印刷範囲の設定が完了すると、第2洗浄装置106がX軸レール101上を移動する(ステップS2)。ここではメンテナンス制御部9016が、データ格納部9012に格納した印刷範囲の情報から第2洗浄装置106の移動先の位置を求め、当該移動先の位置に向けてメンテナンス制御部9016は第2洗浄装置106をX軸レール101上で動かす。
【0039】
第2洗浄装置106の移動が完了したならば、次にキャリッジ1の試し走査に移行する(ステップS3)。試し走査では、インクを吐出しない状態でキャリッジ1を印刷時の移動軌跡で動かす。
【0040】
そして、試し走査で移動するキャリッジ1に対して第2洗浄装置106が適切な位置にあるかを判断する(ステップS4)。適切な位置にあるかの判断は、ユーザーによる目視確認でもよいし、自動で検出するようにしてもよい。
【0041】
ユーザーによる目視確認の場合は、印刷範囲内においてX方向正側への走査が完了して一時停止したときのキャリッジ1と、第2洗浄装置106との位置関係を確認する。ここでキャリッジ1と第2洗浄装置106とが所定の距離内にある場合は、適切(YES)と判断する。キャリッジ1と第2洗浄装置106とが所定の距離内にない(離れている)場合は、不適切(NO)と判断する。
【0042】
また、適切な位置にあるかの判断を自動検出で行う場合は、例えば上述のエンコーダセンサ109の出力を用いる。つまり、キャリッジ1の位置を示すエンコーダ出力値と、第2洗浄装置106の位置を示すエンコーダ出力値とを比較し、この比較結果が所定の値内にある場合は適切(YES)と判断し、所定の値内にない場合は不適切(NO)と判断する。そして、コントローラ901は、自動検出による判断結果をコンピュータ903等に設けた表示部に表示し、ユーザーに結果を報知する。
【0043】
ステップS4の判断結果が「不適切(NO)」であった場合は、再度、印刷範囲の設定(ステップS1)を実施する。また、ステップS4の判断結果が「適切(YES)」であった場合は、キャリッジ1は所定のホームポジションに戻り、印刷開始までホームポジションで待機する(ステップS5)。
【0044】
次に、ユーザーが入力装置9033より印刷開始を指示する(ステップS6)。ステップS6で印刷開始の指示があると、コンピュータ903は印刷開始指示をコントローラ901に送信し、コントローラ901は印刷動作を開始する(ステップS7)。
【0045】
上述のように、本実施形態は、対象物100にインクを吐出するヘッド300と、対象物100に対してヘッド300を所定の走査方向(X方向正側およびX方向負側)に走査するX軸レール101およびX方向駆動部72を備える。また、ヘッド300に対して洗浄処理を行う洗浄装置106と、対象物100に対して行う画像形成処理でのX方向の範囲情報に基づいて、X方向における洗浄装置106の位置を変更するコントローラ901とを備える。
【0046】
また上述のように、ヘッド300は、インクを吐出するノズル302を設けたノズル面302aを有し、洗浄装置106は、ノズル面302aを洗浄する。
【0047】
これらにより、走査終了後のキャリッジ1はすぐに洗浄装置106と対向する位置に到達し、洗浄処理へ移行することができる。その結果、印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができる。
【0048】
<別の実施形態の動作>
次に、図8を用いて、印刷装置1000における別の実施形態でのキャリッジ1の動作の一例を説明する。図8は、別の実施形態に係るキャリッジの動作の説明図であり、対象物100に対して印刷範囲100cを設定している場合である。
【0049】
印刷範囲100cは、図示のように上半分は対象物100のX方向のほぼ全域が印刷範囲となっているが、下半分は対象物100のX方向のおおよそ半分の領域が印刷範囲となっており、印刷範囲が途中から変化している。
【0050】
この実施形態の場合、図8(a)のように上半分のX方向の範囲が広い領域に合わせて第2洗浄装置106の位置を設定してしまうと、下半分のX方向の範囲が狭い領域の印刷動作では、図6(a)の場合と同様に印刷時間のロスが大きくなる場合がある。
【0051】
そこで、この実施形態では、広い領域から狭い領域への切り替わりに伴い、第2洗浄装置106をX方向負側へ動かし、狭い領域に対して第2洗浄装置106が適切な位置となるように再設定することを可能にしている。以下、この実施形態での第2洗浄装置106の位置変更制御の一例を説明する。
【0052】
<別の実施形態での第2洗浄装置の位置制御>
図9は、図8の実施形態における第2洗浄装置の位置変更制御のフローチャートであり、印刷範囲の設定から印刷開始までの処理を説明する。
【0053】
ステップS1(印刷範囲設定)からステップS7(印刷開始)までの流れは図7と同様である。まず、ユーザーは、対象物100に対する印刷範囲を入力装置9033により入力し、印刷範囲を設定する(ステップS1)。本実施形態の場合、印刷範囲は、例えば印刷開始位置、印刷終了位置および領域が切り替わる位置を示す座標情報であり、印刷範囲の情報はデータ格納部9012に格納する。そして、印刷開始位置、印刷終了位置および領域が切り替わる位置を示す座標情報のうちのX座標により、印刷範囲の各領域における画像形成処理での走査方向(X方向)の範囲情報を得ることができる。
【0054】
印刷範囲の設定が完了すると、第2洗浄装置106がX軸レール101上を移動する(ステップS2)。ここではメンテナンス制御部9016が、データ格納部9012に格納した印刷範囲の情報から第2洗浄装置106の移動先の位置を求め、当該移動先の位置に向けてメンテナンス制御部9016は第2洗浄装置106をX軸レール101上で動かす。
【0055】
第2洗浄装置106の移動が完了したならば、次にキャリッジ1の試し走査に移行する(ステップS3)。試し走査では、インクを吐出しない状態でキャリッジ1を印刷時の移動軌跡で動かす。そして、試し走査で移動するキャリッジ1に対して第2洗浄装置106が適切な位置にあるかを判断する(ステップS4)。適切な位置にあるかの判断は、上述のようにユーザーによる目視確認でもよいし、自動検出でもよい。
【0056】
ステップS4の判断結果が「不適切(NO)」の場合は、再度、印刷範囲の設定(ステップS1)を実施する。また、ステップS4の判断結果が「適切(YES)」の場合は、キャリッジ1は所定のホームポジションに戻り、印刷開始までホームポジションで待機する(ステップS5)。次に、ユーザーが入力装置9033より印刷開始を指示する(ステップS6)。ステップS6で印刷開始の指示があると、コンピュータ903は印刷開始指示をコントローラ901に送信し、コントローラ901は印刷動作を開始する(ステップS7)。
【0057】
印刷を開始したならば、キャリッジ1の走査に合わせて、印刷範囲のX方向の領域に変更がないかを判断する(ステップS8)。例えば、ステップS1で設定した印刷範囲の情報が、領域が切り替わる位置を示す座標情報を含んでいる場合は、ステップS8を行うようにする。そして、キャリッジ1によるX方向正側への1回の走査が完了する毎に、システム制御部9011は、キャリッジ1の現在位置を示す座標情報と、データ格納部9012に格納した印刷範囲を示す座標情報とを比較する。
【0058】
ステップS8の判断結果が「領域変更なし(YES)」の場合は、そのまま印刷を継続する。また、ステップS8の判断結果が「領域変更あり(NO)」の場合は、印刷を一時停止にする(ステップS9)。一時停止の状態になると、Y方向駆動部82はX軸レール101を現状の位置(高さ)に保持し、キャリッジ1は所定のホームポジション(例えばX軸レール101上のX方向負側の端部)に一旦戻る。
【0059】
その後、ステップS2(第2洗浄装置移動)に移行し、第2洗浄装置106は、狭い領域に印刷を行うキャリッジ1に対して適切な位置をなすように、X軸レール101上をX方向負側へ移動する。以降は、上述のステップS3~S5を再度実行し、印刷開始の指示(ステップS6)があったならば、コントローラ901は印刷動作を開始(再開)する(ステップS7)。上記の構成により、途中から領域が切り替わる印刷範囲の場合であっても、印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができる。
【0060】
<変形例>
図10は、変形例を示した説明図であり、対象物100に対して印刷範囲100dを設定している場合である。印刷範囲100dは、図8の場合と逆であり、上半分は対象物100のX方向のおおよそ半分の領域が印刷範囲となっており、下半分は対象物100のX方向のほぼ全域が印刷範囲となっている。しかも印刷範囲100dは、X方向正側において印刷範囲の頭を揃えている(図において左揃えとなっている)。
【0061】
本変形例の場合、図10(b)のように下半分の広い領域に合わせて第1洗浄装置105と第2洗浄装置106の位置を設定してしまうと、上半分の狭い領域の印刷動作では、図6(a)の場合と同様に印刷時間のロスが大きくなる場合がある。
【0062】
そこで、本変形例では、第1洗浄装置105の位置を変更可能にしている。そして、印刷範囲100dの狭い領域に対する印刷(図10(a))から広い領域に対する印刷(図10(b))への切り替わりに伴い、第1洗浄装置105をX方向負側へ動かし、第1洗浄装置105が適切な位置となるように再設定することを可能にしている。本変形例においても、途中から領域が切り替わる印刷範囲に対して印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができる。
【0063】
上述のように、本実施形態は、ヘッド300に対して走査方向の上流側に第1洗浄装置105を設け、下流側に第2洗浄装置106を設けている。そして、そのうちの少なくとも一方の洗浄装置の位置を変更にしている。これにより、途中から領域が切り替わる印刷範囲に対しても印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができる。
【0064】
<補足>
本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0065】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0066】
[第1態様]
第1態様は、対象物に液体を吐出するヘッドと、前記対象物に対して前記ヘッドを所定の走査方向(例えばX方向正側およびX方向負側)に走査する走査手段(例えばX軸レール101、X方向駆動部72)と、前記ヘッドに対してメンテナンス処理(例えば洗浄処理)を行うメンテナンス手段(例えば第1洗浄装置105、第2洗浄装置106)と、前記対象物に対して行う液体吐出処理での前記走査方向の範囲情報に基づいて、前記走査方向における前記メンテナンス手段の位置を変更する制御手段(例えばコントローラ901)と、を備えることを特徴とするものである。
【0067】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記ヘッドは、前記液体を吐出するノズルを設けたノズル面を有し、前記メンテナンス手段(例えば第1洗浄装置105、第2洗浄装置106)は、前記ノズル面を洗浄する洗浄装置であることを特徴とするものである。
【0068】
第1態様および第2態様によれば、対象物への液体吐出処理において処理時間のロスが少ない液体吐出装置を提供することができる。
【0069】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記メンテナンス手段(例えば第1洗浄装置105、第2洗浄装置106)を、前記ヘッドに対して前記走査方向の上流側と下流側とに備え、そのうちの少なくとも一方の前記メンテナンス手段の位置を変更することを特徴とするものである。
【0070】
第3態様によれば、途中から領域が切り替わる印刷範囲に対しても印刷時間のロスが少なく、適切な動作で印刷を完了することができる。
【符号の説明】
【0071】
1000 印刷装置
1 キャリッジ
300 ヘッド
101 X軸レール
105 第1洗浄装置
106 第2洗浄装置
100 対象物
100a、100b、100c、100d 印刷範囲
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2020-168786号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10