(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081701
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】画像処理システム、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 15/04 20110101AFI20230606BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20230606BHJP
【FI】
G06T15/04
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195629
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】盧 承鐸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健夫
(72)【発明者】
【氏名】一角 佳成
(72)【発明者】
【氏名】雪下 陽一
【テーマコード(参考)】
5B050
5B080
【Fターム(参考)】
5B050BA13
5B050CA07
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA13
5B050EA18
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA09
5B050GA08
5B080AA13
5B080AA19
5B080BA02
5B080DA06
5B080FA09
5B080GA22
(57)【要約】
【課題】2次元のベース画像に含まれる対象画像の立体形状に対応した形状のコントロールグリッドを自動で作成する画像処理システムを提供する。
【解決手段】2次元のベース画像に含まれる立体物の対象画像にテクスチャをマッピングするためのコントロールグリッドをユーザーが操作することで、前記対象画像にマッピングされたテクスチャを変形させる画像処理システムであって、前記対象画像に対応する3Dモデルを平面に投影したXY画像のデータと、前記3Dモデルを平面展開したUV画像のデータとを記憶するメモリと、前記UV画像に設定された初期グリッドに基づいて、前記コントロールグリッドを作成する編集部と、を備える画像処理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元のベース画像に含まれる立体物の対象画像にテクスチャをマッピングするためのコントロールグリッドをユーザーが操作することで、前記対象画像にマッピングされたテクスチャを変形させる画像処理システムにおいて、
前記対象画像に対応する3Dモデルを一方向から見たXY画像と、前記XY画像を平面展開したUV画像に関する情報を含む画像データとを記憶するメモリと、
前記UV画像に設定された初期グリッドに基づいて、前記コントロールグリッドを作成する編集部と、を備え、
前記XY画像は、複数のXYメッシュによって構成され、
前記UV画像は、前記複数のXYメッシュのそれぞれに対応する複数のUVメッシュによって構成され、
前記初期グリッドは、複数の第一メッシュと、各第一メッシュを変形させる複数の第一制御点とを備え、
前記コントロールグリッドは、前記複数の第一メッシュのそれぞれに対応する複数の第二メッシュと、前記複数の第一制御点のそれぞれに対応する複数の第二制御点とを備え、
前記編集部は、
前記第一制御点の位置情報、前記XYメッシュの位置情報、及び前記UVメッシュの位置情報に基づいて、前記第二制御点の位置を決める決定部と、
前記決定部の決定に基づいて前記コントロールグリッドを作成する第一作成部と、を備える、
画像処理システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記第二制御点の位置を変数とする目的関数が最小となる前記第二制御点の集合を求め、
前記目的関数は、点Xの位置と点xkとの差の二乗であり、
前記点Xは、前記UV画像上の点ukを前記第二制御点に基づいて前記XY画像上に移動させた点であり、
前記点xkは、前記XY画像上における前記点ukに対応する点である、請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記複数の第二制御点が規則的に並ぶように正則化を行う、請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記メモリは、立体物の平面画像と、前記立体物の3Dモデルを一方向から見た第一画像と、前記第一画像を平面展開した第二画像と、の対応関係を学習した学習モデルを記憶しており、
前記第一画像は、複数のメッシュによって構成されており、
前記第二画像は、前記複数のメッシュのそれぞれに対応する複数の別のメッシュによって構成されており、
前記編集部は、前記学習モデルを参照し、前記ベース画像の前記対象画像の輪郭形状の情報に基づいて前記XY画像と前記UV画像とを作成する第二作成部を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項5】
コンピュータに、
テクスチャマッピングされる対象画像に対応する3Dモデルを一方向から見たXY画像と、前記XY画像を平面展開したUV画像に関する情報を含む画像データをメモリから読み出す第一処理と、
前記UV画像に設定された初期グリッドに基づいて、前記対象画像にテクスチャをマッピングするためのコントロールグリッドを作成する第二処理と、を実行させ、
前記XY画像は、複数のXYメッシュによって構成され、
前記UV画像は、前記複数のXYメッシュのそれぞれに対応する複数のUVメッシュによって構成され、
前記初期グリッドは、複数の第一メッシュと、各第一メッシュを変形させる複数の第一制御点とを備え、
前記コントロールグリッドは、前記複数の第一メッシュのそれぞれに対応する複数の第二メッシュと、前記複数の第一制御点のそれぞれに対応する複数の第二制御点とを備え、
前記第二処理は、前記コンピュータに、前記第一制御点の位置情報、前記XYメッシュの位置情報、及び前記UVメッシュの位置情報に基づいて、前記第二制御点の位置を決定させ、前記決定に基づいて前記コントロールグリッドを作成させる、
画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理システムの一つとして、特許文献1のマッピング装置が挙げられる。このマッピング装置では、2次元のベース画像に含まれる立体物の対象画像にテクスチャがマッピングされる。
図7は、ニットセーターの画像にテクスチャをマッピングする手順の一例を示す。
図7の左図に示されるニットウェアの袖にテクスチャをマッピングするには、右図に示されるようにユーザーが対象画像である袖の画像にコントロールグリッドを設定する。コントロールグリッドは、対象画像にマッピングされるテクスチャを変形させるためのものである。テクスチャの変形にはFFD(Free-Form Deformation)の技術が用いられる。コントロールグリッドは、複数のメッシュの集合体である。各メッシュの頂点は制御点と呼ばれる。ユーザーが制御点を動かすことで、コントロールグリッドに含まれる複数のメッシュが変形する。メッシュの変形に伴ってテクスチャも変形する。
【0003】
コントロールグリッドの形状に応じて変形されたテクスチャは、対象画像の輪郭線の内側にマッピングされる。ユーザーは、対象画像の立体形状に沿ったテクスチャとなるように対象画像の立体形状を想像しながら複数の制御点の位置を調整する。一度、コントロールグリッドの形状が決定されれば、ユーザーはテクスチャの種類を変更するだけで、テクスチャに応じたニットセーターの見た目を確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、初期に設定されるコントロールグリッドは単純な形状を備えるため、コントロールグリッドの形状が対象画像の立体形状に対応した形状となっていないことが多い。その場合、ユーザーがコントロールグリッドを操作して、対象画像にマッピングされたテクスチャが対象画像の立体形状に適した見た目となるようにテクスチャを変形させる。この操作は非常に煩雑である。対象画像の立体形状が複雑になると、コントロールグリッドの調整とテクスチャが立体形状に沿っているかの確認とを再三繰り返す必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の一つは、2次元のベース画像に含まれる対象画像の立体形状に対応した形状のコントロールグリッドを自動で作成する画像処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>本発明の一態様に係る画像処理システムは、
2次元のベース画像に含まれる立体物の対象画像にテクスチャをマッピングするためのコントロールグリッドをユーザーが操作することで、前記対象画像にマッピングされたテクスチャを変形させる画像処理システムであって、
前記対象画像に対応する3Dモデルを一方向から見たXY画像と、前記XY画像を平面展開したUV画像に関する情報を含む画像データとを記憶するメモリと、
前記UV画像に設定された初期グリッドに基づいて、前記コントロールグリッドを作成する編集部と、を備え、
前記XY画像は、複数のXYメッシュによって構成され、
前記UV画像は、前記複数のXYメッシュのそれぞれに対応する複数のUVメッシュによって構成され、
前記初期グリッドは、複数の第一メッシュと、各第一メッシュを変形させる複数の第一制御点とを備え、
前記コントロールグリッドは、前記複数の第一メッシュのそれぞれに対応する複数の第二メッシュと、前記複数の第一制御点のそれぞれに対応する複数の第二制御点とを備え、
前記編集部は、
前記第一制御点の位置情報、前記XYメッシュの位置情報、及び前記UVメッシュの位置情報に基づいて、前記第二制御点の位置を決める決定部と、
前記決定部の決定に基づいて前記コントロールグリッドを作成する第一作成部と、を備える。
【0008】
<2>上記画像処理システムの一例では、
前記決定部は、前記第二制御点の位置を変数とする目的関数が最小となる前記第二制御点の集合を求め、
前記目的関数は、点Xの位置と点xkとの差の二乗であり、
前記点Xは、前記UV画像上の点ukを前記第二制御点に基づいて前記XY画像上に移動させた点であり、
前記点xkは、前記XY画像上における前記点ukに対応する点である。
【0009】
<3>上記形態<2>の画像処理システムの一例では、
前記決定部は、前記複数の第二制御点が規則的に並ぶように正則化を行う。
【0010】
<4>上記画像処理システムの一例では、
前記メモリは、立体物の平面画像と、前記立体物の3Dモデルを一方向から見た第一画像と、前記第一画像を平面展開した第二画像と、の対応関係を学習した学習モデルを記憶しており、
前記第一画像は、複数のメッシュによって構成されており、
前記第二画像は、前記複数のメッシュのそれぞれに対応する複数の別のメッシュによって構成されており、
前記編集部は、前記学習モデルを参照し、前記ベース画像の前記対象画像の輪郭形状の情報に基づいて前記XY画像と前記UV画像とを作成する第二作成部を備える。
【0011】
<5>本発明の一態様に係る画像処理プログラムは、
コンピュータに、
テクスチャマッピングされる対象画像に対応する3Dモデルを一方向から見たXY画像と、前記XY画像を平面展開したUV画像に関する情報を含む画像データをメモリから読み出す第一処理と、
前記UV画像に設定された初期グリッドに基づいて、前記対象画像にテクスチャをマッピングするためのコントロールグリッドを作成する第二処理と、を実行させ、
前記XY画像は、複数のXYメッシュによって構成され、
前記UV画像は、前記複数のXYメッシュのそれぞれに対応する複数のUVメッシュによって構成され、
前記初期グリッドは、複数の第一メッシュと、各第一メッシュを変形させる複数の第一制御点とを備え、
前記コントロールグリッドは、前記複数の第一メッシュのそれぞれに対応する複数の第二メッシュと、前記複数の第一制御点のそれぞれに対応する複数の第二制御点とを備え、
前記第二処理は、前記コンピュータに、前記第一制御点の位置情報、前記XYメッシュの位置情報、及び前記UVメッシュの位置情報に基づいて、前記第二制御点の位置を決定させ、前記決定に基づいて前記コントロールグリッドを作成させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る画像処理システムは、2次元のベース画像に示される対象画像の立体形状に対応した形状のコントロールグリッドを自動で作成する。従って、ユーザーによるコントロールグリッドの操作の手間が大幅に低減される。また、対象画像の立体形状が複雑であっても、その立体形状に沿ったテクスチャが得られ易い。
【0013】
上記形態<2>の構成では、対象画像の立体形状に対応した形状のコントロールグリッドが作成され易い。
【0014】
上記形態<3>の構成では、より一層、対象画像の立体形状に対応した形状のコントロールグリッドが作成され易い。
【0015】
上記形態<4>の構成では、画像処理システムに2次元のベース画像のデータが入力されるだけで、ベース画像に示される対象画像に応じたXY画像とUV画像のデータが作成される。即ち、ユーザーがXY画像とUV画像のデータを用意する必要がない。
【0016】
本発明の一態様に係る画像処理プログラムは、画像処理システムに対象画像の立体形状に適合したコントロールグリッドを作成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1の画像処理システムを示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、XY画像とUV画像の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、初期グリッドとコントロールグリッドの一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、FFDと逆FFDの概念を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、教師データの一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の画像処理システムを用いたテクスチャマッピングの手順を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、従来の画像処理システムによるテクスチャマッピングの手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を図に基づいて説明する。
【0019】
<実施形態1>
本例では、画像処理システムの一例として、マッピング画像をユーザーに提示する画像処理システムを説明する。マッピング画像は、2次元のベース画像に含まれる立体物の対象画像にテクスチャをマッピングした画像である。画像処理システム1は、ユーザーによるマッピング画像の編集を可能にするように構成されている。
図1に示される本例の画像処理システム1は、入力部2とメモリ3と編集部4と表示部5とを備える。画像処理システム1の各構成は、有線又は無線などによって互いに接続されている。
図1に示される構成はあくまで一例であって、構成の一部が省略されていても良いし、別の構成が付加されていても良い。
【0020】
≪入力部≫
本例の入力部2は、立体形状を有する対象画像を所定の方向から見た2次元のベース画像のデータなどを編集部4又はメモリ3に入力する際に利用される。入力部2は、各種の入力インターフェースを含む。2次元画像のデータは、USBメモリなどのメディアを介して入力されても良いし、無線ネットワーク又は有線ネットワークを介して入力されても良い。
【0021】
入力部2は、ユーザーがマッピング画像を編集するためのデバイスを備える。デバイスとしては、例えば、キーボード、マウス、スキャナ、又はデジタイザ等を備えることが挙げられる。
【0022】
≪メモリ≫
メモリ3は、ハードディスク又はソリッドステートドライブなどの記憶媒体である。メモリ3は、コンピューターに存在していても良いし、ネットワーク上に存在しても良い。本例のメモリ3には、画像データ31と学習モデル32とが記憶されている。学習モデル32は必須ではない。メモリ3には、本例の画像処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムが記憶されていても良い。画像処理プログラムは、ネットワーク上に存在しても良い。
【0023】
画像データ31は、ベース画像のデータと、XY画像のデータと、UV画像のデータとを含む。ベース画像のデータは、立体物が表示される2次元画像のデータである。ベース画像のデータは、ラスターデータであっても良いし、ベクターデータであっても良い。ベース画像が写真の場合、ベース画像中の対象画像の輪郭や皺が抽出される。ベース画像の対象画像には、まだテクスチャがマッピングされていない。
【0024】
XY画像61とUV画像65に関するデータの説明に先立ち、XY画像61とUV画像65の一例を
図2に基づいて説明する。
図2における対象画像はニットウェアの袖の画像である。
図2にはXY画像61とUV画像65とが並んで表示されている。XY画像61は、袖に対応する3Dモデルを一方向から見た画像である。XY画像61の輪郭線は、ベース画像における対象画像の輪郭線にほぼ一致する。ここで、本例の画像処理システム1は袖の3Dモデルを保有しているわけではない。XY画像61はあくまで2次元の画像である。3Dモデルは複数のポリゴンからなっている。従って、3Dモデルを一方向から見たXY画像61は、複数のポリゴンを平面に投影した複数のXYメッシュ61mによって構成されている。
図2に示されるXYメッシュ61mは誇張して示されており、実際のXYメッシュ61mは非常に小さい。本例の個々のXYメッシュ61mは略三角形であるが、XYメッシュ61mの形状は特に限定されない。
【0025】
UV画像65は、XY画像61を平面展開した画像である。XY画像61の袖は折り曲げられており、袖のいたるところに皺がある。この袖を皺がない状態でまっすぐに伸ばした画像がUV画像65である。XY画像61において皺によって隠れる部分、即ちベース画像における袖のうち、皺で隠れる部分にはテクスチャがマッピングされない。従って、UV画像65には、皺で隠れる部分は存在しない。UV画像65は複数のUVメッシュ65mによって構成されている。各UVメッシュ65mは、XY画像61のXYメッシュ61mに対応している。
図2におけるUVメッシュ65mは誇張して示されている。
【0026】
画像データ31に含まれるXY画像61とUV画像65に関する情報としては、以下のものが挙げられる。XY画像61に関する情報として、XY画像61を構成する複数のXYメッシュ61mの数に関する情報と、各XYメッシュ61mの位置に関する情報とが挙げられる。UV画像65に関する情報として、UV画像65を構成する複数のUVメッシュ65mの数に関する情報と、各UVメッシュ65mの位置に関する情報とが挙げられる。画像データ31には更に、XYメッシュ61mの各頂点と、UVメッシュ65mの各頂点とを対応させる変形情報が含まれる。変形情報は、例えばUVメッシュ65mの各頂点の位置座標を、XYメッシュ61mの各頂点の位置座標に移動させる関数Mである。関数Mは、例えば回転に関する関数、スケールの変更に関する関数、及びスキューに関する関数を含む。ここで、
図2では、説明の便宜上、XY画像61とUV画像65が図示されているが、これらの画像61,65は必ずしも視覚的にユーザーに提示される必要はない。この場合、XY画像61とUV画像65は実際の画像ではなく、コンピュータで内部処理をするための概念である。つまり、本例の画像処理システム1は、XY画像61とUV画像65を作成可能なメッシュの数や位置の情報を有していれば良い。
【0027】
学習モデル32については、後述する編集部4の学習部44によって作成される。学習モデル32の詳細については後述する。
【0028】
≪表示部≫
表示部5は、編集部4から出力された出力画像を表示する。出力画像には、入力部2から入力された2次元のベース画像、テクスチャ画像、及びコントロールグリッドなどが含まれる。表示部5は例えば液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイなどである。表示部5はタッチパネルでも良い。タッチパネルからなる表示部5は入力部2の一部を兼ねる。
【0029】
≪編集部≫
編集部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが画像処理プログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。編集部4の一部又は全部は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。画像処理プログラムは、予め画像処理システム1のメモリ3に記憶されていても良いし、本例の画像処理システム1とは別の場所にあるメモリに記憶されていても良い。
【0030】
本例の編集部4は、決定部40と第一作成部41と第二作成部42と画像作成部43と学習部44とを備える。本例の画像処理システム1は、UV画像65(
図2)に設定された初期グリッドに基づいて、ベース画像の対象画像6(
図3)にテクスチャをマッピングするためのコントロールグリッド8を作成する機能を有する。このコントロールグリッド8の作成に関わる構成が決定部40と第一作成部41である。コントロールグリッド8に基づいてベース画像の対象画像6にテクスチャをマッピングする構成が画像作成部43である。本例の画像処理システム1は更に、ベース画像に含まれる対象画像6に基づいてXY画像61とUV画像65とを作成する機能を有する。この機能に関わる構成が第二作成部42と学習部44である。まずは、コントロールグリッド8の作成に関わる決定部40と第一作成部41とを説明する。
【0031】
[決定部]
決定部40は、
図3に示されるように、UV画像65に設定される初期グリッド7に基づいてベース画像の対象画像6にコントロールグリッド8を設定する。
図3では、初期グリッド7とコントロールグリッド8とが並んで示されている。初期グリッド7は、複数の第一メッシュ7mと、各第一メッシュ70を変形させる複数の第一制御点7cとを備える。第一メッシュ7mは、UVメッシュ65m(
図2)よりも大きい。第一メッシュ7mの形状は矩形であるが、特に限定されない。第一制御点7cは、各第一メッシュ7mの頂点(黒点参照)に設定される。初期グリッド7は、ユーザーが入力部2を介して設定しても良いし、編集部4が自動で設定しても良い。第一制御点7cの数、即ち第一メッシュ7mの数はユーザーによって変更可能である。初期グリッド7は、UV画像65を内包するように設定される。
【0032】
コントロールグリッド8は、複数の第二メッシュ8mと、各第二メッシュ8mを変形させる複数の第二制御点8cとを備える。コントロールグリッド8は初期グリッド7に基づいて作成される。従って、各第二メッシュ8mは第一メッシュ7mに対応しており、各第二制御点8cは第一制御点7cに対応している。
【0033】
コントロールグリッド8に含まれる第二制御点8cは、逆FFDによって求められる。逆FFDでは、画像の変形結果から制御点の位置を求める。逆FFDを理解するために、まずFFDを
図4を参照し簡単に説明する。FFDでは、スマイルマークの画像9を内包するコントロールグリッド90が設定される。この状態から、上側の三つの制御点91が上方に移動されると、移動された制御点91の位置に基づいて画像9を構成する各部の位置が移動する。その結果、縦方向に延びた画像92が得られる。
【0034】
一方、逆FFDでは、変形前の画像9と変形後の画像92とが存在する状態から、変形後の画像92に対応する制御点91の位置を決定する。具体的には、画像9における点ukと画像92における点xkとが対応している場合を考える。仮想の第二制御点の位置に基づいて点ukが点Xに移動する。この点Xの位置と点xkの位置とのずれが最小となる仮想の制御点が、最適な制御点91と考えられる。
【0035】
本例の決定部40は、上述した逆FFDの考え方に基づいて、
図3に示されるコントロールグリッド8の各第二制御点8cの位置を決める。最適な第二制御点8cは、以下の数式(1)によって求められる。数式(1)は、第二制御点8cの位置を変数とする目的関数が最小となる第二制御点8cの集合を求める式である。数式(1)のカッコ内の第一項は目的関数、第二項は、第二制御点8cの決定に制約をかける正則化項である。
【0036】
【0037】
数式(1)における『P』は第二制御点8cの位置である。目的関数における『xk』はXY画像61におけるXYメッシュ61mの頂点の位置、『uk』はUV画像65におけるUVメッシュ65mの頂点の位置である。『X(uk,P)』は、点ukを第二制御点8cに基づいてXY画像61上に移動させた位置を示す。『X(uk,P)』は、以下の数式(2)に示されるマトリックスによって表される。『W』は一つの第二メッシュ8mを取り囲む4つの第二制御点8cの重心である。
【0038】
【0039】
数式(1)のカッコ内の第2項は正則化項である。本例の正則化項は、第二制御点8cが規則正しく並ぶように制約をかけるものである。制約化項の『λ』は重み(weight)である。『Lij(P)』は以下の数式(3)に示されるマトリックスによって表される。正則化項によって付与される制約は、簡単に説明すると、ある第二制御点8cが、その第二制御点8cを左右に挟む二つの第二制御点8cの中央で、かつその第二制御点8cを上下に挟む二つの第二制御点8cの中央にある、という制約である。初期グリッド7のうち、UV画像65が存在しない領域、又はUV画像65の面積が非常に小さい領域において、UVメッシュ65mの頂点の位置から第二制御点8cを求めることは困難である。正則化は、このような領域の第一制御点7cに対応する第二制御点8cの位置を適切に求めることに有効である。
【0040】
【0041】
[第一作成部]
第一作成部41は、決定部40によって決定された最適な第二制御点8cの集合に基づいて、
図3に示されるコントロールグリッド8のデータを作成する。コントロールグリッド8のデータは、第二メッシュ8mの数と位置に関する情報、及び第二制御点8cの位置に関する情報を含む。
【0042】
[画像作成部]
画像作成部43は、第一作成部41によって作成されたコントロールグリッド8のデータに基づいて、対象画像6にコントロールグリッド8を重ねた画像を出力画像として生成する。また、画像作成部43は、コントロールグリッド8の形状に合わせてFFDの手法に基づいてテクスチャを変形する。変形されたテクスチャは、対象画像6に重ねられる。ここで、XY画像61とUV画像65のデータはもっぱらコントロールグリッド8の作成に利用され、テクスチャの変形には利用されない。
【0043】
[第二作成部]
第二作成部42は、ベース画像に基づいてXY画像61とUV画像65とを作成する。第二作成部42は必須ではない。XY画像61のデータとUV画像65のデータは、例えば以下の非特許文献の技術に基づいて作成され得る。
・非特許文献1…Hashimoto, et al.,“Neurally-Guided Texturing for Garment Line Drawings”,SA’20 Technical Communications,December 4-13,2020,Virtual Event, Republic of Korea
【0044】
非特許文献の技術を簡単に説明すると、機械学習によって編集部4に学習モデル32を取得させる技術であって、その学習モデル32に基づいて編集部4にXY画像61とUV画像65のデータを作成させる技術である。
【0045】
第二作成部42は、メモリ3に記憶される学習モデル32を参照し、ベース画像に含まれる対象画像6の輪郭形状の情報から、対象画像6に対応するXY画像61を作成する。更に、第二作成部42は、学習モデル32を参照し、XY画像61に対応するUV画像65を作成する。
【0046】
[学習部]
学習部44は、学習モデル32を構築する。学習モデル32の構築するための教師データは、例えば
図5に示される平面画像10と第一画像11と第二画像12である。平面画像10は立体物を一方向から見た画像である。第一画像11は、立体物の3Dモデルを一方向から見た画像である。第一画像11は、3Dモデルのポリゴンを平面に投影した複数のメッシュ11mによって構成されている。第二画像12は、第一画像11を平面展開した画像である。第二画像12は、各メッシュ11mに対応するメッシュ12mによって構成されている。
図5では、メッシュ11m,12mの一部のみが示されている。学習部44は、平面画像10と第一画像11と第二画像12との対応関係をデータとして取得し、学習モデル32として蓄積する。学習モデル32は、平面画像10を入力変数、第一画像11を出力変数とする学習モデルと、第一画像11を入力変数、第二画像12を出力変数とする学習モデルとで構成されている。
【0047】
ここで、画像処理システム1が第二作成部42を備える場合であっても、学習部44は必須ではない。例えば、本例の画像処理システム1とは別のシステムによって学習モデル32が作成された場合、その学習モデル32がメモリ3に記憶されていれば、学習部44は必要ない。
【0048】
≪実施形態1の構成の効果≫
実施形態1に示される画像処理システム1によれば、2次元のベース画像に含まれる対象画像6の立体形状に対応したコントロールグリッド8が自動で作成される。従って、ユーザーによるコントロールグリッド8の操作の手間が大幅に低減される。この点を、
図6に基づいて説明する。
【0049】
図6は、本例の画像処理システム1を用いたテクスチャの調整手順を説明する図である。
図6(A)には、ベース画像の対象画像6が示されている。
図6に示される対象画像6はスカートである。本例の画像処理システム1は、
図6(B)に示すように、ベース画像のデータに基づいて、ベース画像中の対象画像6にコントロールグリッド8を設定する。コントロールグリッド8は、対象画像6の立体形状におおむね沿った形状になっている。また、コントロールグリッド8に基づいて対象画像6に合成されたテクスチャのチェック柄も、対象画像6の立体形状におおむね沿った形状となっている。
【0050】
ユーザーは、表示部5に表示されるチェック柄を参照しながら、
図6(C)に示されるようにコントロールグリッド8を変形させる。ユーザーは、満足のいく結果が得られたらコントロールグリッド8の編集を終了する。ユーザーは、コントロールグリッド8を非表示に切り替える。その結果、
図6(D)に示されるように、対象画像6にテクスチャがマッピングされたマッピング画像が得られる。
【0051】
≪画像処理システムの用途≫
画像処理システム1の用途は、ニットウェアの柄の確認に限定されるわけではない。画像処理システム1は、例えば、インテリアの宣材写真におけるインテリアの柄を変更することに利用することができる。その他、画像処理システム1は、漫画のスクリーントーンの作成に利用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 画像処理システム
2 入力部
3 メモリ
31 画像データ、32 学習モデル
4 編集部
40 決定部、41 第一作成部、42 第二作成部、43 画像作成部、44 学習部
5 表示部
6 対象画像
61 XY画像、61m XYメッシュ、65 UV画像、65m UVメッシュ
7 初期グリッド
7c 第一制御点、7m 第一メッシュ
8 コントロールグリッド
8c 第二制御点、8m 第二メッシュ
9,92 画像、90 コントロールグリッド、91 制御点
10 平面画像
11 第一画像、11m メッシュ、12 第二画像、12m メッシュ