(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008185
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230112BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/00 335
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111546
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 仁
【テーマコード(参考)】
2H033
3K058
【Fターム(参考)】
2H033AA15
2H033BA11
2H033BA25
2H033BA27
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA43
3K058AA88
3K058BA18
3K058DA25
(57)【要約】
【課題】被加熱体のしわの発生を抑制することを課題とする。
【解決手段】基材30と複数に分割されて配列された抵抗発熱体31とを有するヒータ22と、定着ベルト20と、定着ベルト20を加圧する加圧ローラ21と、を備えた加熱装置であって、配列方向Xにおいて、ヒータ22の加熱領域の中央位置C0の側から端部側へ向けて加圧ローラ21の外径が増加する量を加圧ローラ21の外径増加量とすると、加圧ローラ21は、配列方向Xにおいて、抵抗発熱体31同士の分割領域の中央位置B0よりもヒータ22の加熱領域の中央側であって、抵抗発熱体31同士の分割領域に対応する位置を含む領域である外径増加量大領域J2と、外径増加量大領域J2よりもヒータ22の加熱領域の中央側の領域である外径増加量小領域J1とを有し、外径増加量大領域J2は、外径増加量小領域J1よりも外径増加量が大きいことを特徴とする。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、および、複数に分割されて配列された抵抗発熱体を有する加熱体と、
回転部材と、
前記回転部材を加圧する加圧部材と、を備えた加熱装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱体の加熱領域の中央位置の側から端部側へ向けて前記加圧部材の外径が増加する量を前記加圧部材の外径増加量とすると、
前記加圧部材は、前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置よりも前記加熱体の加熱領域の中央側へ10mm~30mmの範囲の少なくとも一部を含む外径増加量大領域と、前記加熱領域の中央位置から前記加熱領域の端部側へ20mmの範囲に設けられた外径増加量小領域とを有し、
前記外径増加量大領域は、前記外径増加量小領域よりも前記外径増加量が大きいことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記加圧部材は、前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置から前記加熱体の加熱領域の中央位置の側へ10mm以上の位置に変曲点を有し、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記変曲点を境にして、前記変曲点よりも前記加熱体の加熱領域の端部側の領域が外径増加量大領域、前記加熱体の加熱領域の中央位置側の領域が外径増加量小領域である請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
前記変曲点は、前記抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置から前記加熱体の加熱領域の中央側へ10mm~30mmの範囲に設けられる請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
基材、および、複数に分割されて配列された抵抗発熱体を有する加熱体と、
回転部材と、
前記回転部材を加圧する加圧部材と、を備えた加熱装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱体の加熱領域の中央位置の側から端部側へ向けて前記加圧部材の外径が増加する量を前記加圧部材の外径増加量とすると、
前記加圧部材は、前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置よりも前記加熱体の加熱領域の中央側であって、前記抵抗発熱体同士の分割領域に対応する位置を含む領域である外径増加量大領域と、前記外径増加量大領域よりも前記加熱体の加熱領域の中央側の領域である外径増加量小領域とを有し、
前記外径増加量大領域は、前記外径増加量小領域よりも前記外径増加量が大きいことを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置よりも前記加熱体の加熱領域の端部側に他の変曲点を有し、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記他の変曲点を境にして、前記加熱体の加熱領域の端部側の領域は、前記加熱体の加熱領域の中央側の領域よりもその外径増加量が小さくなる請求項1から4いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記加熱体を保持する保持部材を有し、
前記保持部材の前記加圧部材側の面は、前記複数の抵抗発熱体の配列方向の中央側が端部側よりも前記加圧部材側へ突出する請求項1から5いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
金属材からなり、前記加熱体に接触する高熱伝導部材が設けられていない請求項1から6いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記回転部材は、その基材が樹脂材により形成される請求項1から7いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記複数の抵抗発熱体の配列方向は前記加熱体の長手方向であり、
前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた面に沿う方向であって、前記長手方向に交差する方向を長手交差方向とすると、
前記加熱部材は、前記長手方向に複数の前記抵抗発熱体が配列された列を前記長手交差方向に複数有し、
前記長手方向の前記抵抗発熱体同士の分割領域と、当該抵抗発熱体と前記長手交差方向の列が異なる前記抵抗発熱体同士の分割領域とが、前記長手方向においてその位置が重なる請求項1から8いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記抵抗発熱体は、線状部の折り返しにより構成され、当該線状部の折り返し角度が鋭角である請求項1から9いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記加熱体は、前記回転部材に直に接触する請求項1から10いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記加熱部材の厚みが1.1mm以下である請求項1から11いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記基材の熱伝導率が100W/m・K以下である請求項1から12いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項14】
記録媒体上のトナー画像を熱により定着させる定着装置である請求項1から13いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項15】
請求項1から14いずれか1項に記載の加熱装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙(被加熱体)上のトナー画像を熱により定着させる定着装置(加熱装置)には、基材上に抵抗発熱体を備えた面状の加熱体と、回転部材としての定着ベルトと、定着ベルトを加圧する加圧部材としての加圧ローラが設けられる。
【0003】
例えば特許文献1(特開2020-86277号公報)では、ヒータ(加熱体)が、その長手方向に複数分割されて配列された複数の抵抗発熱体を有する。このような定着装置では、抵抗発熱体同士の分割領域に対応する位置でヒータによる発熱量が小さくなり、定着ベルトや加圧ローラの温度も小さくなる。
【0004】
定着装置では、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成された定着ニップを用紙(被加熱体)が通過する際に、紙しわが発生する。そして、加圧ローラの外径を、その軸方向の中央側から端部側へ向かって増加させることで、定着ニップを通過する用紙に対して、その幅方向の端部側へ向かう方向の力を加え、紙しわの発生を抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被加熱体のしわの発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、基材、および、複数に分割されて配列された抵抗発熱体を有する加熱体と、回転部材と、前記回転部材を加圧する加圧部材と、を備えた加熱装置であって、前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱体の加熱領域の中央位置の側から端部側へ向けて前記加圧部材の外径が増加する量を前記加圧部材の外径増加量とすると、前記加圧部材は、前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置よりも前記加熱体の加熱領域の中央側へ10mm~30mmの範囲の少なくとも一部を含む外径増加量大領域と、前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱領域の中央位置から前記加熱領域の端部側へ20mmの範囲に設けられた外径増加量小領域とを有し、前記外径増加量大領域は、前記外径増加量小領域よりも前記外径増加量が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
被加熱体のしわの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】
図3と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
【
図6】
図3、
図5と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
【
図7】抵抗発熱体同士の分割領域を示す平面図である。
【
図8】定着ベルトおよび加圧ローラの配列方向の温度分布を示す図である。
【
図10】
図8と異なる形状の抵抗発熱体同士の分割領域を示す図である。
【
図12】実施形態と異なる加圧ローラの平面図である。
【
図13】加圧ローラの熱膨張前と熱膨張後の外径の配列方向の外径プロファイルを示す図である。
【
図14】第1実施形態の加圧ローラの平面図である。
【
図15】
図14の加圧ローラの熱膨張前と熱膨張後の配列方向の外径プロファイルを示す図である。
【
図16】第2実施形態の加圧ローラの熱膨張前と熱膨張後の配列方向の外径プロファイルを示す図である。
【
図17】第3実施形態の加圧ローラの熱膨張前と熱膨張後の配列方向の外径プロファイルを示す図である。
【
図18】短手方向に複数の抵抗発熱体が配置されたヒータの分割領域を示す図である。
【
図19】
図6のヒータの折り返し角度を示す図である。
【
図20】凸部を有するヒータホルダを示す図である。
【
図21】さらに異なる構成のヒータを示す平面図である。
【
図22】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図23】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図24】
図1と異なる画像形成装置の概略構成図である。
【
図25】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図27】ヒータおよびヒータホルダの斜視図である。
【
図28】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
【
図29】サーミスタとサーモスタットの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、本発明の一実施形態に係る加熱装置として、画像形成装置に設けられた定着装置を説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。これらの色の現像剤は、カラー画像の色分解成分に対応する。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電装置3と、現像装置4と、クリーニング装置5とを備える 。帯電装置3は感光体2の表面を帯電する。現像装置4は、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する。クリーニング装置5は感光体2の表面をクリーニングする。
【0012】
また、画像形成装置100は、露光装置6と、給紙装置7と、転写装置8と、定着装置9と、排紙装置10とを備える。露光装置6は、各感光体2の表面を露光し、その表面に静電潜像を形成する。給紙装置7は、記録媒体としての用紙Pを用紙搬送路14に供給する。転写装置8は各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する。定着装置9は用紙Pに転写されたトナー画像を用紙P表面に定着させる。排紙装置10は用紙Pを装置外に排出する。各作像ユニット1、感光体2、帯電装置3、露光装置6、転写装置8などは、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0013】
転写装置8は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。中間転写ベルト11は複数のローラによって張架される。一次転写ローラ12は各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する。二次転写ローラ13は中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0014】
また、用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0015】
次に、
図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0016】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0017】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って回転し、一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達する。そしてトナー画像は、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送される。トナー画像は、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0018】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0019】
続いて、定着装置の構成について説明する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、回転部材あるいは定着部材としての定着ベルト20と、対向回転部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、加熱体としてのヒータ22と、保持部材としてのヒータホルダ23と、支持部材としてのステー24と、温度検知部材としてのサーミスタ25と、サーモスタット等を備えている。定着ベルト20は無端状のベルトからなる。加圧ローラ21は定着ベルト20の外周面に接触して、定着ベルト20との間に定着ニップNを形成する。ヒータ22は定着ベルト20を加熱する。ヒータホルダ23はヒータ22を保持する。ステー24はヒータホルダ23を支持する。サーミスタ25は基材30の裏面の温度を検知する。
図2の紙面に直交する方向は定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24等の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向と呼ぶ。なお、この長手方向は搬送される用紙の幅方向、定着ベルト20のベルト幅方向、そして、加圧ローラ21の軸方向でもある。
【0021】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド製の筒状基体(基材)を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0022】
加圧ローラ21は、中実の鉄製芯金21aと、弾性層21bと、離型層21cとで構成されている。鉄製芯金21aは例えば外径が25mmで形成される。弾性層21bは芯金21aの表面に形成される。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。離型層21cは弾性層21bの外側に形成される。離型層21cは、加圧ローラ21の離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層により形成するのが望ましい。
【0023】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が
図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0024】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って設けられた面状の加熱体である。ヒータ22は、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(定着ニップN側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータホルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の高い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0025】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23およびヒータ22が支持されることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめることができる。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが安定的に形成される。本実施形態では、ヒータホルダ23の熱伝導率は基材30よりも小さく設けられる。
【0026】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制される。これにより、ヒータ22が効率的に定着ベルト20を加熱できる。
【0027】
また、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。ガイド部26は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側(
図2におけるヒータ22の下側)と下流側(
図2におけるヒータ22の上側)とにそれぞれ設けられている。また、上流側と下流側のガイド部26は、ヒータ22の長手方向に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部26は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面260を有する。
【0028】
ヒータホルダ23は長手方向に複数の開口部23aを有する。開口部23aはヒータホルダ23の厚み方向に貫通した開口部である。この開口部23aに、サーミスタ25や後述するサーモスタットが設けられる。これらのサーミスタ25やサーモスタットは、バネ29により加圧されて基材30の裏面に押し当てられている。
【0029】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイド部26のベルト対向面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定かつ円滑に回転する。また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。定着ベルト20はヒータ22に加熱される被加熱部材である。また、用紙Pは定着ニップNにおいて加熱される被加熱体である。
【0030】
【0031】
図3に示すように、板状の基材30の表面には、複数(4つ)の抵抗発熱体31と、導電体としての給電線33A、33Bと、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bとが設けられる。ただし、抵抗発熱体31の数は本実施形態に限らない。
【0032】
本実施形態では、ヒータ22に設けられた抵抗発熱体31が、長手方向に複数に分割されて配列されている。各抵抗発熱体31は並列に接続されている。このように 本実施形態では、ヒータ22等の長手方向(
図2の紙面に直交する方向)は、複数の抵抗発熱体31の配列方向Xでもある。以下、この複数の抵抗発熱体31の配列方向を単に配列方向とも呼ぶ。また、配列方向に交差する方向(本実施形態では垂直な方向)で、基材30の厚み方向と異なる方向である
図3の上下方向Yを複数の抵抗発熱体31の配列方向に交差する方向、あるいは、単に配列交差方向とも呼ぶ。本実施形態では、配列方向は長手方向と同じ方向であり、配列交差方向は長手交差方向とも呼ぶ。配列交差方向Yは、基材30の抵抗発熱体31を設けた面に沿う方向であり、ヒータ22の短手方向、あるいは、定着装置9に通紙される用紙の搬送方向でもある。
【0033】
複数の抵抗発熱体31によって、配列方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。各抵抗発熱体31は、基材30の配列方向一方側端部(
図3の左端)に設けられた一対の電極部34A、34Bに対して、給電線33A,33Bを介して電気的に並列に接続されている。給電線33A,33Bは、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大きすぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなる。このため、配列方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、上記隙間は5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0034】
ヒータ22において配列方向の抵抗発熱体31が配置された領域が、ヒータ22の主として加熱を行う領域であり、以下、この領域をヒータ22の加熱領域Cとする。加熱領域Cは、抵抗発熱体31同士の隙間も含んだ領域である(
図5参照)。また、
図3の直線C0は加熱領域Cの中央位置を示している。
【0035】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇(ヒータ出力が低下)する特徴がある。
【0036】
抵抗発熱体31がPTC特性を有すること、および、配列方向に分割された発熱部35の構成により、小サイズ用紙を通紙時の定着ベルト20の過昇温を防止できる。つまり、発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇し、その抵抗値が上昇すると、反対に出力(発熱量)が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されていることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、抵抗発熱体は、ヒータ22の配列交差方向に複数列に配置されていてもよい。
【0037】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成できる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極部34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。給電線33は、抵抗発熱体31よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。
【0038】
基材30の材料としては、耐熱性および絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、配列交差方向の幅8mm、配列方向の幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。基材30の金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。基材30をステンレス板により構成することで、熱応力による割れを抑制できる。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0039】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁、保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0040】
図4は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0041】
図4に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するための電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部34A,34Bとを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。各抵抗発熱体31への供給電力量は、サーミスタ25の検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。
【0042】
本実施形態では、サーミスタ25が、最小通紙幅内であるヒータ22の配列方向中央領域と、ヒータ22の配列方向一端部側とに、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の配列方向一端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25およびサーモスタット27は、基材30の裏面に接触してその温度を検知する。
【0043】
本実施形態では、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bが配列方向の同じ側に設けられるが、それぞれ異なる側に設けられていてもよい。また抵抗発熱体31は、本実施形態の形状に限らない。例えば
図5に示すように、抵抗発熱体31は長方形状であってもよいし、
図6に示すように、抵抗発熱体31が線状部の折り返しにより構成されていてもよい。
図6では一例として、線状部によって略平行四辺形状の抵抗発熱体31が形成されている。また
図5に示すように、ブロック状の抵抗発熱体31の部分から給電線33の側に伸びる部分(配列交差方向に伸びる部分)は、抵抗発熱体31の一部であってもよいし、給電線33と同じ材料により構成されていてもよい。
【0044】
ところで、
図7に示すように、抵抗発熱体31を長手方向に複数分割して配列することにより、前述したようにヒータ22や定着ベルト20の非通紙領域における過昇温を抑制できる。しかし一方で、
図7の拡大図に示す抵抗発熱体31同士の分割領域Bでは、抵抗発熱体31が占める範囲その他の加熱領域よりも小さくなり、ヒータ22の発熱量が小さくなる。なお、抵抗発熱体31の分割領域Bとは、ヒータ22の主たる発熱部分である抵抗発熱体31が配列方向に分割された部分全体を含む配列方向領域を意味する。また
図7の直線B0は、分割領域Bの中央位置を示している。
【0045】
図8は、ヒータ22によって加熱された定着ベルト20と加圧ローラ21の配列方向の温度分布を示した図である。横軸に配列方向X、縦軸に温度Tを示し、図の実線が定着ベルト20の温度、一点鎖線が加圧ローラ21の温度を示している。
【0046】
図8に示すように、配列方向の分割領域Bに対応する位置、および、その周辺では、定着ベルト20や加圧ローラ21の温度が小さくなっており、配列方向の温度ムラが生じている。
【0047】
また、
図9に示すように、
図5に示した長方形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、分割領域Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。
図10に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、分割領域Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。さらに、
図11に示すように、
図6に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、分割領域Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。ただし、
図7や
図10、
図11のように、隣り合う抵抗発熱体31同士を配列方向にオーバーラップさせることで、分割領域Bのその他の部分に対する温度落ち込みを抑制できる。
【0048】
次に、
図12に示す本実施形態と異なる形状の加圧ローラ21を用いて、上記加圧ローラ21の温度ムラによって生じる課題について説明する。
【0049】
図12に示す加圧ローラ21は、加熱領域の中央位置C0を境にして、その外径が端部側(中央位置C0に対して加熱領域の両端部側)へ向けて徐々に増加する逆クラウン形状をなしている。以下、加圧ローラ21の配列方向端部の外径と加圧ローラ21の加熱領域の中央位置C0の位置での外径との差Lを、クラウン量Lと呼ぶ。また、加圧ローラ21の中央位置C0の側を加圧ローラ21の「内側」、中央位置C0に対して加圧ローラ21の端部側を加圧ローラ21の「外側」と呼ぶ。
【0050】
加圧ローラ21がこのような形状をなすことで、幅方向の外側へ向かうほど、加圧ローラ21の外径が大きくなって用紙Pに与える力を大きくすることができる。これにより、定着ニップを通過する用紙Pに対して幅方向(配列方向)の外側の力を加えることができ、定着ニップを搬送される用紙にしわが発生することを抑制できる。
【0051】
しかし、上記のように加圧ローラ21に配列方向の温度ムラが生じる場合には、加圧ローラ21の熱膨張量が配列方向に異なることにより、上記の紙しわ抑制の効果が適切に得られなくなる。以下、この加圧ローラ21の熱膨張量と紙しわ抑制の効果との関係について説明する。
【0052】
図13は、熱膨張による加圧ローラ21の配列方向の外径プロファイルを示した図である。図の横軸が配列方向、図の縦軸が加圧ローラ21の外径を示している。図の下側に示す直線D1が熱膨張前(冷間状態)の加圧ローラ21の配列方向の外径プロファイル、別の言い方をすると、配列方向に連続して外径の大きさをプロットした図である。また、図の上側に示す曲線D2が熱膨張後の加圧ローラ21の外径プロファイル、一点鎖線D3が仮に配列方向の各位置で均等な量だけ熱膨張した場合の加圧ローラ21の外径プロファイルを示している。これは、後述する
図15の加圧ローラ21などでも同様である。なお、
図13および後述する
図15などでは、便宜上、加圧ローラ21の外径増加量を誇張して表示している。
【0053】
また、加圧ローラ21の外径増加量とは、加熱領域C(
図3参照)の中央位置C0から加熱領域Cのいずれかの端部側へ向けて、加圧ローラ21の外径が増加する量とする。外径増加量は、配列方向の一定区間の外径の差分として求めることができる。また、各線D1~D3の配列方向の各位置における傾きを、その位置における外径増加量の絶対値とすることもできる。
【0054】
図13に示すように、配列方向において、分割領域の中央位置B0およびその周辺で加圧ローラ21の温度が小さい(
図8参照)ことにより、この範囲において 加圧ローラ21の熱膨張量も小さくなる。つまり、
図13の実線D2と一点鎖線D3との値の差が大きくなる。これにより、実線D2に示すように、加圧ローラ21の外径が外側へ向かって徐々に大きくなる形状とならず、加圧ローラ21が分割領域の中央位置B0付近で凹状となってしまう。
【0055】
そして、上記加圧ローラ21の熱膨張量の偏差により、加圧ローラ21が配列方向の各位置において用紙Pに加える力にも偏りが生じる。この偏りにより、定着ニップNを搬送される用紙Pに紙しわが発生してしまう。特に、
図13に示す極大点Eにおいて用紙Pに与える力の偏りが大きくなり、紙しわが発生しやすくなる。
【0056】
極大点Eは、
図13において、実線D2の傾きが反転する位置(外側へ向かって外径が増加する傾きから外径が減少する傾きに変わる位置)である。つまり、
図13の実線D1の加圧ローラ21のように、外側へ向かうに従って用紙Pに加える力が大きくなっていく構成では、用紙Pに対して引き伸ばし方向(配列方向の外側へ向かう方向)の力を均一に加えることができる。これに対して、
図13の実線D2の加圧ローラ21では、外側の分割領域の中央位置B0よりも内側の範囲では、その他の範囲とは逆に、外側へ向かうほど加圧ローラ21の外径が小さくなっている。つまり、外側へ向かうに従って用紙Pに加える力が減少する。従って、極大点Eよりも内側では用紙Pに対して外側の方向(用紙Pを引き伸ばす方向)の力が加わり、極大点Eよりも外側では用紙Pに対して内側の方向(用紙Pを縮める方向)の力が加わる。従って、極大点E、で相反する二つの方向(引き伸ばし方向と縮める方向)の力が用紙Pに加わり、紙しわが発生する。
【0057】
次に、本実施形態の加圧ローラ21について説明する。
図14に示すように、本実施形態の加圧ローラ21は、配列方向の内側に外径増加量小領域J1と、配列方向の外側に外径増加量大領域J2とを有する。外径増加量小領域J1は外径増加量大領域J2よりもその外径増加量が相対的に大きい。また、外径増加量小領域J1と外径増加量大領域J2との外径増加量は配列方向に一定である。つまり加圧ローラ21は、配列方向の途中に設けられた変曲点21dを境にして、配列方向外側の外径増加量が配列方向内側の外径増加量よりも大きくなっている。
【0058】
本実施形態では、極大点Eに相当する位置よりも内側に変曲点21dが設けられる。つまり、
図12のように外径増加量が一定となる加圧ローラ21の場合に、外径増加量が反転する位置に相当する位置よりも内側に変曲点21dが設けられる。
【0059】
前述のように、分割領域の中央位置B0よりも配列方向の内側の領域では、熱膨張により加圧ローラ21の外径増加量がマイナスに反転する。これに対して本実施形態では、上記のように、分割領域の中央位置B0よりも内側の領域(具体的には、分割領域の中央位置B0よりも内側で領域J1の外側の領域)の外径増加量を、それよりも内側の領域(具体的には、領域J1)の外径増加量に対して相対的に大きくする。このように、あらかじめ加圧ローラ21の熱膨張量の偏差を考慮して分割領域の中央位置B0よりも内側の領域における外径増加量を大きく設定しておくことで、分割領域の中央位置B0の内側における外径増加量の落ち込みを抑制でき、紙しわの発生を抑制できる。具体的には、
図15に示すように、変曲点21d~分割領域の中央位置B0の範囲において、曲線D2と直線D3との差を小さくできる。これにより、用紙Pに対して作用する内側の方向の力が減少し、紙しわの発生を抑制できる。
【0060】
少なくとも、加圧ローラ21において、抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置B0よりも内側の領域であって、分割領域内の一部の領域の外径増加量を、この領域よりも内側の領域の外径増加量に対して相対的に大きくすることで、紙しわの発生を抑制できる。なお、ここで言う抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置B0は、ヒータ22に設けられた分割領域の中央位置B0のうち、加熱領域の中央位置C0とは異なる位置に設けられた分割領域の中央位置B0であり、外側の二つの分割領域の中央位置B0である。
【0061】
あるいは、抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置B0よりも内側に10~30mmの範囲の少なくとも一部の領域の外径増加量を、加熱領域の中央位置C0から外側へ20mmの領域の外径増加量に対して相対的に大きくすることで、紙しわの発生を抑制できる。
【0062】
また、変曲点21dは、抵抗発熱体同士の分割領域の中央位置B0から内側30mmの位置よりも外側の位置に設けられることが好ましい。変曲点21dを内側に配置しすぎると、外径増加量大領域J2の範囲が広くなってクラウン量Lが大きくなりすぎてしまう。従って、用紙Pに加える力が過大になって定着ニップN通過時の用紙Pの挙動が不安定になってしまう。これにより、用紙P表面のトナー画像が他の部材に接触して異常画像の原因となってしまう。しかし、変曲点21dを上記配置とすることで、用紙Pに加える力を抑制できる。
【0063】
変曲点21dの位置は
図15の配置に限らない。ただし、変曲点21dは極大点Eに相当する位置、あるいは、それよりも内側に設けられることが好ましい。例えば
図16に示す実施形態では、変曲点21dが、
図15よりも外側であって、極大点E(
図12参照)に相当する位置に設けられる。これにより、上記のように紙しわ抑制の効果を得るとともに、外径増加量大領域の範囲を小さくしてクラウン量を小さくできる。
【0064】
また
図17に示す加圧ローラ21は、外径増加量大領域J2の外側に、第2の外径増加量小領域J3を有する。つまり、加圧ローラ21は、内側の変曲点21d1とは別に他の変曲点21d2を有し、他の変曲点21d2よりも外側に第2の外径増加量小領域J3を有する。本実施形態の加圧ローラ21は、最も内側の外径増加量小領域J1よりも外側の外径増加量大領域J2で外径増加量が一度大きくなった後、それよりも外側の第2の外径増加量小領域J3で再び外径増加量が小さくなる。
【0065】
図15や
図16のように、変曲点21dよりも外側の領域を全て外径増加量大領域J2とすると、紙しわの発生を抑制できる一方で、クラウン量Lが大きくなってしまう。そこで本実施形態では、特に外径増加量を大きくする必要がある領域、つまり、分割領域の中央位置B0より内側の領域のみを外径増加量大領域J2とし、それよりも外側の領域を第2の外径増加量小領域J3とする。これにより、紙しわの発生を抑制するとともに、クラウン量Lを極力小さくできる。ただし、分割領域の中央位置B0より外側の少なくとも一部の領域を外径増加量小領域J3とすることで、クラウン量Lを小さくできる。
【0066】
またこれらの加圧ローラ21の構成は、本実施形態のように定着ベルト20の基体がポリイミドなどの樹脂材により形成される構成の定着装置に適用するのが好適である。つまり、定着ベルト20の熱伝導率が小さいと配列方向に熱伝導がしにくくなる。従って、抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおける温度落ち込みによって定着ベルト20や加圧ローラ21に配列方向の温度ムラが生じやすい。従って、加圧ローラ21の熱膨張量の偏差も生じやすいため、本実施形態の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。
【0067】
またこれらの加圧ローラ21の構成は、ヒータ22の基材30の熱伝導率が小さい定着装置に適用するのが好適である。つまり、基材30の熱伝導率が小さいと配列方向に熱伝導がしにくくなる。従って、抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおける温度落ち込みによって加圧ローラ21に配列方向の温度ムラが生じやすい。従って、加圧ローラ21の熱膨張量の偏差も生じやすいため、本実施形態の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。具体的には、基材30の熱伝導率が100W/m・K以下の構成の定着装置に対して、本実施形態の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。
【0068】
次に、上記の熱伝導率の算出方法について説明する。熱伝導率を算出する際には、まず、対象の物体の熱拡散率を測定し、この熱拡散率を用いて熱伝導率を算出する。
【0069】
熱拡散率の計測は、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u、株式会社アイフェイズ性)を用いた。
【0070】
上記熱拡散率を熱伝導率に換算するためには、密度と比熱容量の値が必要である。 密度の計測には、乾式自動密度計(商品名:Accupyc 1330、株式会社島津製作所製)を用いた。 また、比熱容量の計は、示差走査型熱量測定装置(商品名:商品名:DSC-60 株式会社島津製作所製)を用い、比熱容量が既知の基準物質としてサファイアを用いて測定した。本実施例では比熱容量測定を5回行い、50℃における平均値を用いた。密度および比熱容量をそれぞれρ、Cとすると、上記熱拡散率測定で得られた熱拡散率αとから、熱伝導率λは、以下の数1式により得ることができる。
【0071】
【0072】
また本実施形態のように、金属材などの熱伝導率の高い部材によって形成される均熱板(高熱伝導部材)が設けられていない構成においても、加圧ローラ21に配列方向の温度ムラが生じやすい。従って、このような構成の定着装置に対して本実施形態の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。また、ヒータ22が、この均熱板や摺動シート等、他の部材を介して定着ベルト20の内面に接触する構成と比較すると、ヒータ22が直に定着ベルト20に接触する構成では、定着ベルト20や加圧ローラ21の配列方向の温度むらが生じやすい。従って、このような構成の定着装置に対して本実施形態の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。
【0073】
また本実施形態のヒータ22はその厚みが1.0mmで設けられる。厚みの小さいヒータ22、具体的には、その厚みが1.1mm以下のヒータ22では、ヒータ22の熱容量が小さく、ヒータ22に配列方向の温度ムラが生じやすい。つまり、定着ベルト20や加圧ローラ21に配列方向の温度ムラが生じやすい。従って、加圧ローラ21の熱膨張量の偏差も生じやすいため、本実施形態の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。
【0074】
また
図18に示すヒータ22は、短手方向に複数の抵抗発熱体31が設けられている。具体的には、ヒータ22は、複数の抵抗発熱体31Aによって構成される第1の列と、複数の抵抗発熱体31Bによって構成される第2の列とを短手方向に有する。第1の列および第2の列は、抵抗発熱体31が長手方向に複数設けられる列のことである。本実施形態のヒータ22の場合、ヒータ22の配列方向とは、ヒータ22の長手方向を指し、配列交差方向はヒータ22の短手方向を指す。
【0075】
そして、第1の列を構成する抵抗発熱体31A同士の分割領域B1と、第2の列を構成する抵抗発熱体31B同士の分割領域B2とが、長手方向にその位置が重なっている。このような構成のヒータ22では、抵抗発熱体同士の分割領域に対応する位置で加圧ローラ21の温度が特に落ち込みやすい。従って、紙しわ抑制のために上記の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。
【0076】
また
図6に示すヒータ22のように、抵抗発熱体31を線状部の折り返しによって構成する場合、折り返し部の折り返し角度が鋭角である場合には分割領域における温度落ち込みが大きくなる。つまり、
図19に示すように、折り返し部の一部の折り返し角度αが鋭角である場合、鋭角部分で温度落ち込みが生じやすい。従って、紙しわ抑制のために上記の加圧ローラ21の構成を適用することが好適である。
【0077】
上記のように、加圧ローラ21の外径を外側へ向かって大きくしていく構成では、クラウン量L(
図12参照)が大きくなることで、加圧ローラ21がその内側で定着ベルト20に接触しにくくなるおそれがある。
【0078】
そこで本実施形態では、
図20に示すように、ヒータホルダ23のヒータ22側の面23b(ヒータ22を保持する凹部の底面)が、配列方向の中央側で端部側よりも加圧ローラ21側へ突出している。これにより、定着ベルト20を配列方向中央側で凸状にし、加圧ローラ21の中央部分に当接させることができる。なお、面23bは加圧ローラ21と定着ベルト20とが圧接していない状態で組み立て時の状態において、中央側が凸状をなしている。
【0079】
また、
図21に示すように、本実施形態のヒータ22では、抵抗発熱体31が、基材30の配列方向に渡って3つ設けられる。3つの抵抗発熱体31のうちの1つは、基材30の配列方向中央に配置された第1発熱部としての中央発熱部35Aを構成し、残りの2つは、中央発熱部35Aの配列方向両側に配置された第2発熱部としての端部発熱部35Bを構成する。中央発熱部35Aと端部発熱部35Bとは、互いに独立して発熱制御可能に構成されている。
【0080】
図21において、複数の電極部34を、左から順に、第1電極部34A、第2電極部34B、第3電極部34C、第4電極部34Dとすると、第2電極部34Bおよび第4電極部34Dに電圧を印加した場合、中央発熱部35Aのみが発熱する。また、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bに電圧を印加した場合は、
図21の左側の端部発熱部35Bのみが発熱し、第2電極部34Bと第3電極部34Cに電圧を印加した場合は、
図21の右側の端部発熱部35Bのみが発熱する。
【0081】
また、第1電極部34Aと第3電極部34Cとを外部で並列に接続し同時に電圧を印加できるようにしておけば、これらの電極部34A,34Cと第2電極部34Bとに電圧を印加することで、両方の端部発熱部35Bを同時に発熱させることが可能である。なお、
図21中の矢印は、各発熱部35A,35Bの配列方向に流れる電流の方向を示す。
【0082】
通紙する用紙の幅が、中央発熱部35Aの幅L1以下である場合は、中央発熱部35Aのみ発熱させ、また、通紙する用紙の幅が、中央発熱部35Aの幅L1よりも大きい幅である場合は、中央発熱部35Aに加えて各端部発熱部35Bをそれぞれ発熱させることで、通紙領域の大きさに応じて発熱領域の大きさを変更することができる。さらに、中央発熱部35Aの幅L1を、小サイズの用紙幅(例えば、A4紙幅:215mm)に合わせ、一方の端部発熱部35Bから他方の端部発熱部35Bまでを含む発熱領域の幅L2を、大サイズの用紙幅(例えば、A3紙幅:301mm)に合わせることで、これらの用紙を通紙する際は、非通紙領域における過度な温度上昇が生じにくくなるので(発熱部35A,35B上の非通紙領域がほとんど生じないので)、印刷生産性を高めることができる。
【0083】
以上のヒータ22においても、抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおいて、定着ベルト20や加圧ローラ21の温度落ち込みが生じる。従って、前述した加圧ローラ21の構成を適用することにより、紙しわの発生を抑制できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0085】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、
図22、
図23に示すような定着装置にも適用可能である。以下、
図22、
図23に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0086】
まず、
図22に示す定着装置9は、定着ベルト 20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ44が配置されている。押圧ローラ44は、回転部材としての定着ベルト20に対向して回転する対向回転部材である。この押圧ローラ44とヒータ22とが定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、ステー24によって支持されている。ニップ形成部材45と加圧ローラ21とによって、定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0087】
次に、
図23に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ44が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図22に示す定着装置9と同じ構成である。
【0088】
以上の
図22、
図23の定着装置においても、ヒータ22の抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおいてヒータ22の発熱量が小さくなり、加圧ローラ21の熱膨張量が小さくなる点は同様である。従って、前述した実施形態と同様の加圧ローラ21を設けることにより、紙しわの発生を抑制できる。
【0089】
本発明に係る画像形成装置は、
図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0090】
例えば
図24に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段50と、一対のタイミングローラ15等からなる用紙搬送部と、給紙装置7と、定着装置9と、排紙装置10と、読取部51と、を備える。給紙装置7は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0091】
読取部51は原稿Qの画像を読み取る。読取部51は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置7は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ15は搬送路上の用紙Pを画像形成手段50へ搬送する。
【0092】
画像形成手段50は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段50は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。定着装置9は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置10へ搬送される。排紙装置10は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0093】
次に、本実施形態の定着装置9について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0094】
図25に示すように、定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、サーミスタ25等を備える。
【0095】
定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。定着ニップNのニップ幅は10mm、定着装置9の線速は240mm/sである。
【0096】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0097】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと離型層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0098】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の配列交差方向の幅Y1は13mmである。
【0099】
図26に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線33と、電極部34A~34Cとを備える。本実施形態においても、
図26の拡大図に示すように、複数の抵抗発熱体31が配列方向に分割された分割領域Bが形成される(ただし、
図26では拡大図の範囲のみで分割領域Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に分割領域が設けられる)。抵抗発熱体31により、三つの発熱部35A、35B1、35B2が構成される。電極部34A,34Bに通電することにより、発熱部35B1,35B2が発熱する。電極部34A,34Cに通電することにより、発熱部35Aが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Aを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0100】
図27に示すように、ヒータホルダ23は、その凹部23cにヒータ22を保持する。凹部23cは、ヒータホルダ23のヒータ22側に設けられる。凹部23cは、ヒータ22のその他の面よりもステー24側に凹となった基材30に略平行な面23c1と、ヒータホルダ23の配列方向両側(一方側でもよい)でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23c2と、配列交差方向両側でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23c3とにより構成される。ヒータホルダ23はガイド部26を有する。ヒータホルダ23はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0101】
図28に示すように、コネクタ70は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子等を備える。
【0102】
コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ70を介して発熱部35と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部35へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部34は、コネクタ70との接続を確保するため、少なくとも一部が絶縁層に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0103】
フランジ53は、定着ベルト20の配列方向の両側に設けられ、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。フランジ53は定着装置9の筐体に固定される。フランジ53はステー24の両端に挿入される(
図28のフランジ53からの矢印方向参照)。
【0104】
コネクタ70のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの配列交差方向である(
図28のコネクタ70からの矢印方向参照)。コネクタ70のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ70とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ70は、配列方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0105】
図29に示すように、定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーミスタ25が設けられる。サーミスタ25により検知された定着ベルト20の配列方向中央側と端部側のそれぞれの温度に基づいて、ヒータ22を制御する。なお、これらのサーミスタ25のうちいずれか一方は、前述の実施形態と同様、ヒータ22の抵抗発熱体同士の分割領域に対応する位置に設けられる。
【0106】
定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーモスタット27が設けられる。サーモスタット27により検知された定着ベルト20の温度が定められた閾値を超えた場合には、ヒータ22への通電を停止する。
【0107】
定着ベルト20の配列方向両端には、定着ベルト20の各端部を保持するフランジ53が設けられる。フランジ53はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0108】
図30に示すように、フランジ53にはスライド溝53aが設けられる。スライド溝53aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。スライド溝53aには定着装置9の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝53a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動できる。
【0109】
以上の定着装置9においても、抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおいて、定着ベルト20や加圧ローラ21の温度落ち込みが生じる。従って、前述した加圧ローラ21の構成を適用することにより、紙しわの発生を抑制できる。
【0110】
記録媒体あるいは被加熱体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0111】
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。このような装置にも本発明を適用することで、被加熱体のしわの発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(回転部材)
21 加圧ローラ(加圧部材)
21d 変曲点
22 ヒータ(加熱体)
23 ヒータホルダ(保持部材)
30 基材
31 抵抗発熱体
B 分割領域
B0 分割領域の中央位置
C 加熱領域
C0 加熱領域の中央位置
E 極大点
J1 外径増加量小領域
J2 外径増加量大領域
P 用紙(記録媒体あるいは被加熱体)
X 複数の抵抗発熱体の配列方向
Y 配列交差方向(長手交差方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】