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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082223
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】測定データの補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
G01B21/20 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063676
(22)【出願日】2023-04-10
(62)【分割の表示】P 2019060510の分割
【原出願日】2019-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】福原 義也
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 理
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和也
(57)【要約】
【課題】形状測定機の計測結果の確からしさを評価し、計測精度を高めると共に、形状測定機で得られた測定データを精度よく補正できるようにする。
【解決手段】ゲージ10gは、基準体11gと、ゲージ本体13gとを有する。基準体11gは、互いに位置が異なり、座標系を定めることができる複数の基準部20を有する。ゲージ本体13gは、基準体11gに接続されている。ゲージ本体13gは、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲面部C1g,C2g,C3g,C4gもしくは平面部を含み、複数の曲面部もしくは平面部のそれぞれが、複数の曲面部もしくは平面部のうちの他の曲面部もしくは平面部に連続してつながっている自由曲面Fbgを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲージを製造するゲージ製造工程と、
前記ゲージ製造工程で製造された前記ゲージに関するゲージ証明データを取得する証明取得工程と、
形状測定機を用いて、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲面部を含み、複数の前記曲面部のそれぞれが、複数の前記曲面部のうちの他の曲面部に連続してつながっている自由曲面を有する測定対象の形状を測定して、対象測定データを取得する対象測定工程と、
前記ゲージ証明データと前記対象測定データとの比較結果に応じて、前記対象測定データを補正する補正データを求める補正データ算出工程と、
前記補正データを用いて、前記対象測定データを補正する補正工程と、
を実行し、
前記ゲージ製造工程では、
前記測定対象から、前記自由曲面に含まれる少なくとも一部の自由曲線を含む評価領域を定める評価領域特定工程と、
前記評価領域から前記自由曲線に含まれる複数の曲線部を抽出する要素抽出工程と、
前記要素抽出工程で抽出した複数の前記曲線部に関する設計データを取得する設計データ取得工程と、
互いに位置が異なり、座標系を定めることができる複数の基準部を有する基準体を数学的に定義する基準部定義工程と、
前記設計データ取得工程で取得した複数の前記曲線部毎の前記設計データを用いて、複数の前記曲線部を含む前記自由曲線を、前記基準部で定まる前記座標系中に、数学的に定義する自由曲面定義工程と、
前記基準部を有する基準体と、前記自由曲線を含み、前記基準体に接続されているゲージ本体と、を製造する製造工程と、
を実行し、
前記自由曲面定義工程では、前記自由曲面の形状を示す関数を二次微分可能な関数にし、
前記製造工程では、数学的に定義された前記基準部のデータに従って、前記基準部を有する前記基準体を製造すると共に、数学的に定義された前記自由曲線のデータに従って、前記ゲージ本体を製造し、
前記証明取得工程で取得する前記ゲージ証明データは、前記ゲージ中で、前記測定対象の前記評価領域に対応する評価対応領域の形状を証明するデータであり、
前記対象測定工程で取得する前記対象測定データは、前記形状測定機を用いて、前記測定対象の前記評価領域の形状を測定して得られたデータである、
測定データの補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の測定データの補正方法において、
前記基準部定義工程で定義する前記基準部は、第一基準平面と、前記第一基準平面に対して垂直な第二基準平面と、前記第一基準平面及び前記第二基準平面に対して垂直な第三基準平面と、を有する、
測定データの補正方法。
【請求項3】
請求項1に記載の測定データの補正方法において、
前記基準部定義工程で定義する前記基準部は、互いの中心が一の仮想平面を規定する三以上の球面部を有する、
測定データの補正方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の測定データの補正方法において、
複数の前記曲面部は、曲率半径が一定で且つ該曲率半径が第一曲率半径の第一曲面部と、曲率半径が一定で且つ該曲率半径が前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の第二曲面部と、を有し、
前記自由曲面は、前記第一曲面部と前記第二曲面部の間に存在する接続曲面部を含み、
前記接続曲面部は、前記第一曲面部の縁に接続されている第一接続部と、前記第二曲面部の縁に接続されている第二接続部と、を有し、
前記自由曲面定義工程では、前記第一接続部の曲率半径を前記第一曲率半径にし、前記第二接続部の曲率半径を前記第二曲率半径にし、前記接続曲面部の曲率半径を、前記第一接続部から前記第二接続部にかけて連続的に変化させる、若しくは無限大にする、
測定データの補正方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の測定データの補正方法において、
前記評価領域に含まれる複数の前記曲線部のそれぞれに対する許容製造誤差を定める製造誤差設定工程をさらに実行し、
前記製造工程では、前記ゲージにおける複数の前記曲線部を、それぞれの前記曲線部に対する前記許容製造誤差範囲内に製造する、
測定データの補正方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の測定データの補正方法において、
前記製造工程では、数学的に定義された前記自由曲線のデータと、数学的に定義された前記基準部のデータとを、三次元形状物を形成する三次元形状製造装置に入力し、前記三次元形状製造装置を動作させて前記ゲージを製造する、
測定データの補正方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の測定データの補正方法において、
前記補正データ算出工程は、
前記対象測定データ中の複数の前記曲面部毎の曲率半径のうちで最大曲率半径及び最小曲率半径を含む範囲内における曲率半径と、前記対象測定データを補正する補正データとの関係を示す補正関数を定める補正関数設定工程と、
前記対象測定データ中の複数の前記曲面部毎の曲率半径を前記補正関数に代入して、前記対象測定データ中の複数の前記曲面部毎の前記補正データを求める補正データ演算工程と、
を含む、
測定データの補正方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の測定データの補正方法において、
前記補正データ算出工程は、
前記対象測定データ中の複数の前記曲面部毎の曲率中心座標のうちで最大座標値及び最小座標値を含む範囲内における曲率中心座標と、前記対象測定データを補正する補正データとの関係を示す補正関数を定める補正関数設定工程と、
前記対象測定データ中の複数の前記曲面部毎の曲率中心座標を前記補正関数に代入して、前記対象測定データ中の複数の前記曲面部毎の前記補正データを求める補正データ演算工程と、
を含む、
測定データの補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定データの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元形状物の形状を測定する際には、形状測定機が用いられる。この形状測定機による測定精度を高めるため、以下の特許文献1には、キャリブレーションゲージを用いて、形状測定機の測定誤差等を求める方法や形状測定機の測定データを補正する方法等が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されているキャリブレーションゲージは、平面を有するブロックと、この平面から凹んでいる凹状の第一半球面と、この平面から突出している凸状の第二半球面と、を有する。第一半球面と第二半球面との間には、平面が介在している。第一半球面と第二半球面とは、互い同じ曲率半径の曲面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-349411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のキャリブレーションゲージを用いて、形状測定機の精度評価の実施や、この形状測定機で得られた測定データを補正することは可能である。
【0006】
しかしながら、製造業等の分野では、自由曲面を含む三次元形状物の形状を測定する場合の形状測定機の計測結果の確からしさを評価し、計測精度を高めたい、という要望がある。さらに、製造業等の分野では、形状測定機で得られた測定データを精度よく補正したい、という要望もある。
【0007】
そこで、本発明は、形状測定機の計測結果の確からしさを評価し、計測精度を高めることができると共に、形状測定機で得られた測定データを精度よく補正することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の測定データの補正方法は、
ゲージを製造するゲージ製造工程と、前記ゲージ製造工程で製造された前記ゲージに関するゲージ証明データを取得する証明取得工程と、形状測定機を用いて、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲面部を含み、複数の前記曲面部のそれぞれが、複数の前記曲面部のうちの他の曲面部に連続してつながっている自由曲面を有する測定対象の形状を測定して、対象測定データを取得する対象測定工程と、前記ゲージ証明データと前記対象測定データとの比較結果に応じて、前記対象測定データを補正する補正データを求める補正データ算出工程と、前記補正データを用いて、前記対象測定データを補正する補正工程と、を実行する。前記ゲージ製造工程では、前記測定対象から、前記自由曲面に含まれる少なくとも一部の自由曲線を含む評価領域を定める評価領域特定工程と、前記評価領域から前記自由曲線に含まれる複数の曲線部を抽出する要素抽出工程と、前記要素抽出工程で抽出した複数の前記曲線部に関する設計データを取得する設計データ取得工程と、互いに位置が異なり、座標系を定めることができる複数の基準部を有する基準体を数学的に定義する基準部定義工程と、前記設計データ取得工程で取得した複数の前記曲線部毎の前記設計データを用いて、複数の前記曲線部を含む前記自由曲線を、前記基準部で定まる前記座標系中に、数学的に定義する自由曲面定義工程と、前記基準部を有する基準体と、前記自由曲線を含み、前記基準体に接続されているゲージ本体と、を製造する製造工程と、を実行する。前記自由曲面定義工程では、前記自由曲面の形状を示す関数を二次微分可能な関数にする。前記製造工程では、数学的に定義された前記基準部のデータに従って、前記基準部を有する前記基準体を製造すると共に、数学的に定義された前記自由曲線のデータに従って、前記ゲージ本体を製造する。前記証明取得工程で取得する前記ゲージ証明データは、前記ゲージ中で、前記測定対象の前記評価領域に対応する評価対応領域の形状を証明するデータである。前記対象測定工程で取得する前記対象測定データは、前記形状測定機を用いて、前記測定対象の前記評価領域の形状を測定して得られたデータである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、形状測定機の計測結果の確からしさを評価し、計測精度を高めることができると共に、形状測定機で得られた測定データを精度よく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る一実施形態における測定対象としての動翼の斜視図である。
図2図1及び図4におけるII-II線断面図である。
図3図1及び図4におけるIII-III線断面図である。
図4】本発明に係る一実施形態におけるゲージの斜視図である。
図5】本発明に係る一実施形態におけるゲージの製造方法を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る一実施形態における形状測定機の精度評価方法を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る一実施形態におけるゲージの証明データを示す説明図である。
図8】本発明に係る一実施形態における座標上に展開した証明データを示す説明図である。
図9】本発明に係る一実施形態における形状測定機の斜視図である。
図10】本発明に係る一実施形態におけるゲージの測定データの一部を示す説明図である。
図11】本発明に係る一実施形態におけるゲージの測定データと証明データとの比較結果を示す説明図である。
図12】本発明に係る一実施形態における測定データの校正(補正)方法を示すフローチャートである。
図13】本発明に係る一実施形態における補正関数を示す説明図である。
図14】本発明に係る一実施形態の変形例における第一補正関数を示す説明図である。
図15】本発明に係る一実施形態の変形例における第二補正関数を示す説明図である。
図16】本発明に係る一実施形態における第一変形例のゲージの斜視図である。
図17】本発明に係る一実施形態における第二変形例のゲージの斜視図である。
図18】本発明に係る一実施形態における第三変形例のゲージの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るゲージ、これを用いた測定データの校正(補正)方法等の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
「測定対象」
測定対象の実施形態について、図1図3を用いて説明する。
【0013】
本実施形態の測定対象は、図1に示すように、タービンの動翼10である。動翼10は、回転軸線Arを中心に回転するロータ軸に取り付けられる。ここで、便宜上、回転軸線Arが延びている方向をY方向、回転軸線Arに対する径方向をZ方向、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向とする。
【0014】
動翼10は、プラットフォーム11と、ロータ軸にはめ込まれる翼根12と、翼型を成す翼体13と、を有する。プラットフォーム11の(+)Z側を向く面は、作動流体であるガスに接するガスパス面11pを成す。翼体13は、プラットフォーム11のガスパス面11pから、(+)Z側に延びている。翼根12は、プラットフォーム11で(-)Z側を向く面から、(-)Z側に延びている。
【0015】
翼体13は、前縁14と、後縁15と、負圧面16と、正圧面17と、チップ面18と、を有する。前縁14と後縁15とは、負圧面16及び正圧面17で接続されている。負圧面16は、前縁14と後縁15とを結ぶキャンバーラインを基準にして、(-)X側に配置され、(-)X側を向く面で、基本的に凸面である。正圧面17は、キャンバーラインを基準にして、(+)X側に配置され、(+)X側を向く面で、基本的に凹面である。チップ面18は、(+)Z側を向き、正圧面17の(+)Z側の縁と負圧面16の(+)Z側の縁とを接続する。
【0016】
図2は、図1中のII-II線断面図である。すなわち、図2は、Z方向に垂直な仮想平面Pz(図1参照)での翼体13の断面図である。翼体13は、この断面中に、第一曲面部C1、第一接続曲面部B1、第二曲面部C2、第二接続曲面部B2、第三曲面部C3、第三接続曲面部B3、第四曲面部C4、第四接続曲面部B4を有する。第一曲面部C1は、正圧面17中の前縁14側の部分から、前縁14を経て、負圧面16中の前縁14側の部分までの範囲内の部分である。この第一曲面部C1の曲率半径は、r1である。第三曲面部C3は、負圧面16中で後縁15側の部分から、後縁15を経て、正圧面17の後縁15側の部分までの範囲内の部分である。この第三曲面部C3の曲率半径は、r3である。
【0017】
負圧面16中で第一曲面部C1の後縁15側の縁には、第一接続曲面部B1が接続されている。負圧面16中で第一接続曲面部B1の後縁15側の縁には、第二曲面部C2が接続されている。第二曲面部C2の曲率半径は、r2である。負圧面16中で第二曲面部C2の後縁15側の縁には、第二接続曲面部B2が接続されている。負圧面16中で第二接続曲面部B2の後縁15側の縁には、第三曲面部C3が接続されている。この第三曲面部C3の曲率半径は、r3である。第一接続曲面部B1は、第一曲面部C1の縁に接続されている前縁側接続部(第一接続部)B1fと、第二曲面部C2の縁に接続されている後縁側接続部(第二接続部)B1bと、を有する。前縁側接続部B1fの曲率半径は、第一曲面部C1の曲率半径r1と同じである。後縁側接続部B1bの曲率半径は、第二曲面部C2の曲率半径r2と同じである。第一接続曲面部B1の曲率半径は、前縁側接続部B1fから後縁側接続部B1bにかけて、滑らかに連続的に変化する。第二接続曲面部B2は、第二曲面部C2の縁に接続されている前縁側接続部(第一接続部)B2fと、第三曲面部C3の縁に接続されている後縁側接続部(第二接続部)B2bと、を有する。前縁側接続部B2fの曲率半径は、第二曲面部C2の曲率半径r2と同じである。後縁側接続部B2bの曲率半径は、第三曲面部C3の曲率半径r3と同じである。第二接続曲面部B2の曲率半径は、前縁側接続部B2fから後縁側接続部B2bにかけて、滑らかに連続的に変化する。なお、以上において、二つの接続部が滑らかに接続されていれば、二つの接続部間は直線であってよい。このため、以上の各曲面部は、曲率半径が無限大である平面部であってもよい。また、曲率半径が滑らかに連続的に変化するとは、例えば、曲率半径の二次微分係数が連続的に変化するような場合である。
【0018】
正圧面17中で第三曲面部C3の前縁14側の縁には、第三接続曲面部B3が接続されている。正圧面17中で第三接続曲面部B3の前縁14側の縁には、第四曲面部C4が接続されている。この第四曲面部C4の曲率半径は、r4である。正圧面17中で第四曲面部C4の前縁14側の縁には、第四接続曲面部B4が接続されている。正圧面17中で第四接続曲面部B4の前縁14側の縁には、第一曲面部C1が接続されている。第三接続曲面部B3は、第三曲面部C3の縁に接続されている後縁側接続部(第二接続部)B3bと、第四曲面部C4の縁に接続されている前縁側接続部(第一接続部)B3fと、を有する。後縁側接続部B3bの曲率半径は、第三曲面部C3の曲率半径r3と同じである。前縁側接続部B3fの曲率半径は、第四曲面部C4の曲率半径r4と同じである。第三接続曲面部B3の曲率半径は、後縁側接続部B3bから前縁側接続部B3fにかけて、滑らかに連続的に変化する。第四接続曲面部B4は、第四曲面部C4の縁に接続されている後縁側接続部(第二接続部)B4bと、第一曲面部C1の縁に接続されている前縁側接続部(第一接続部)B4fと、を有する。後縁側接続部B4bの曲率半径は、第四曲面部C4の曲率半径r4と同じである。前縁側接続部B4fの曲率半径は、第一曲面部C1の曲率半径r1と同じである。第四接続曲面部B4の曲率半径は、後縁側接続部B4bから前縁側接続部B4fにかけて、滑らかに連続的に変化する。なお、以上において、二つの接続部が滑らかに接続されていれば、二つの接続部間は直線であってよい。このため、以上の各曲面部は、曲率半径が無限大である平面部であってもよい。また、曲率半径が滑らかに連続的に変化するとは、例えば、曲率半径の二次微分係数が連続的に変化するような場合である。
【0019】
ここで、各曲面部C1,C2,C3,C4の曲率半径の大小関係は、以下の通りである。
r2>r4>r1>r3、叉は、r2>r4>r3>r1
【0020】
また、第一曲面部C1の曲率半径r1、第二曲面部C2の曲率半径r2、及び第三曲面部C3の曲率半径r3は、いずれも、外側半径である。一方、第四曲面部C4の曲率半径r4は、内側半径である。よって、第一曲面部C1、第二曲面部C2、及び第三曲面部C3は、凸曲面であり、第四曲面部C4は、凹曲面である。
【0021】
翼体13は、以上で説明した第一曲面部C1、第一接続曲面部B1、第二曲面部C2、第二接続曲面部B2、第三曲面部C3、第三接続曲面部B3、第四曲面部C4、第四接続曲面部B4で構成される翼形自由曲面Fbを有する。
【0022】
この翼形自由曲面Fbは、一次微分係数が連続している。すなわち、この翼形自由曲面Fbの形状を示す関数は、一次微分可能な関数である。なお、この翼形自由曲面Fbは、二次微分係数も連続していることが好ましい。すなわち、この翼形自由曲面Fbの形状を示す関数は、二次微分可能な関数であることが好ましい。
【0023】
図3は、図1中のIII-III線断面図である。すなわち、図3は、Y方向に垂直な仮想平面Py(図1参照)での翼体13の断面図である。翼体13は、この断面中に、負圧側自由曲面Fsと、正圧側自由曲面Fpとを有する。
【0024】
負圧側自由曲面Fsは、第五曲面部C5、第五接続曲面部B5、第六曲面部C6を有する。第五曲面部C5の(-)Z側の縁は、プラットフォーム11のガスパス面11pに接続されている。第五曲面部C5の(+)Z側の縁には、第五接続曲面部B5が接続されている。第五接続曲面部B5の(+)Z側の縁には、第六曲面部C6が接続されている。第六曲面部C6の(+)Z側の縁には、チップ面18が接続されている。第五曲面部C5の曲率半径は、r5である。なお、第五曲面部C5を形成する部分は、フィレットと呼ばれる場合がある。第六曲面部C6の曲率半径は、r6である。第五接続曲面部B5は、第五曲面部C5の縁に接続されている基部側接続部(第一接続部)B5bと、第六曲面部C6の縁に接続されているチップ側接続部(第二接続部)B5tと、を有する。基部側接続部B5bの曲率半径は、第五曲面部C5の曲率半径r5と同じである。チップ側接続部B5tの曲率半径は、第六曲面部C6の曲率半径r6と同じである。第五接続曲面部B5の曲率半径は、基部側接続部B5bからチップ側接続部B5tにかけて、滑らかに連続的に変化する。なお、以上において、二つの接続部が滑らかに接続されていれば、二つの接続部間は直線であってよい。このため、以上の各曲面部は、曲率半径が無限大である平面部であってもよい。また、曲率半径が滑らかに連続的に変化するとは、例えば、曲率半径の二次微分係数が連続的に変化するような場合である。
【0025】
第五曲面部C5の曲率半径r5は、内側半径あり、第六曲面部C6C6gの曲率半径r6は、外側半径である。よって、第五曲面部C5は、凹曲面であり、第六曲面部C6は凸曲面である。
【0026】
正圧側自由曲面Fpは、第七曲面部C7、第七接続曲面部B7、第八曲面部C8を有する。第七曲面部C7の(-)Z側の縁は、プラットフォーム11のガスパス面11pに接続されている。第七曲面部C7の(+)Z側の縁には、第七接続曲面部B7が接続されている。第七接続曲面部B7の(+)Z側の縁には、第八曲面部C8が接続されている。第八曲面部C8の(+)Z側の縁には、チップ面18が接続されている。第七曲面部C7の曲率半径は、r7である。なお、第七曲面部C7を形成する部分は、フィレットと呼ばれる場合がある。第八曲面部C8の曲率半径は、r8である。第七接続曲面部B7は、第七曲面部C7の縁に接続されている基側接続部(第一接続部)B7bと、第八曲面部C8の縁に接続されているチップ側接続部(第二接続部)B7tと、を有する。基側接続部B7bの曲率半径は、第七曲面部C7の曲率半径r7と同じである。チップ側接続部B7tの曲率半径は、第八曲面部C8の曲率半径r8と同じである。第七接続曲面部B7の曲率半径は、基側接続部B7bからチップ側接続部B7tにかけて、滑らかに連続的に変化する。なお、以上において、二つの接続部が滑らかに接続されていれば、二つの接続部間は直線であってよい。このため、以上の各曲面部は、曲率半径が無限大である平面部であってもよい。また、曲率半径が滑らかに連続的に変化するとは、例えば、曲率半径の二次微分係数が連続的に変化するような場合である。
【0027】
第七曲面部C7の曲率半径r7及び第八曲面部C8の曲率半径r8は、いずれも内側半径である。よって、第七曲面部C7及び第八曲面部C8は、いずれも凹曲面である。
【0028】
以上で説明した正圧側自由曲面Fp及び負圧側自由曲面Fsは、いずれも、一次微分的に連続している。すなわち、正圧側自由曲面Fp及び負圧側自由曲面Fsの形状を示す関数は、いずれも、一次微分可能な関数である。なお、正圧側自由曲面Fp及び負圧側自由曲面Fsは、いずれも、二次微分的にも連続していることが好ましい。すなわち、正圧側自由曲面Fp及び負圧側自由曲面Fsの形状を示す関数は、いずれも、二次微分可能な関数であることが好ましい。
【0029】
「ゲージ」
ゲージの実施形態について、図2図5を用いて説明する。
【0030】
本実施形態のゲージは、自由曲面を有する測定対象の形状を測定する際に使用する形状測定機の精度評価を行うためのゲージである。さらに、このゲージは、形状測定機を用いて測定対象の形状を測定して得た測定データを校正するためのゲージでもある。このため、このゲージは、測定機の精度評価ゲージであり、測定データの校正ゲージでもある。
【0031】
また、本実施形態のゲージは、測定対象である動翼10の形状及びサイズに合わせたゲージである。このため、図4に示すように、本実施形態のゲージ10gは、動翼10中で自由曲面を有する翼体13の形状を模したゲージ本体13gを有する。このゲージ10gは、さらに、ゲージ本体13gに接続されている基準体11gを有する。
【0032】
翼体13の形状を模したゲージ本体13gは、翼体13と同様、前縁14gと、後縁15gと、正圧面17gと、負圧面16gと、チップ面18gと、を有する。
【0033】
基準体11gは、互いに位置が異なる複数の基準部20を有する。基準部20は、ゲージ本体13gの各部を測定する際の座標系を特定するための部分である。基準体11gは、基準部20として、第一基準平面21、第二基準平面22、及び第三基準平面23を有する。ここで、互いに垂直な三方向をそれぞれ、X方向、Y方向、Z方向とする。第一基準平面21は、X方向に垂直な平面である。第二基準平面22は、Y方向に垂直な平面である。第三基準平面23は、Z方向に垂直な平面である。第一基準平面21と第二基準平面22と第三基準平面23との交差点は、座標系の原点Oを成す。第一基準平面21と第二基準平面22とが交差する箇所に形成される辺は、座標系のZ軸を成す。第二基準平面22と第三基準平面23とが交差する箇所に形成される辺は、座標系のX軸を成す。第三基準平面23と第一基準平面21とが交差する箇所に形成される辺は、座標系のY軸を成す。
【0034】
第三基準平面23上には、ゲージ本体13gが設けられている。
【0035】
ゲージ本体13gは、各基準部で定められる座標系内で、Z方向に垂直な仮想平面Pzgでのゲージ本体13gの断面中に、翼体13と同様、図2に示すように、第一曲面部C1g、第一接続曲面部B1g、第二曲面部C2g、第二接続曲面部B2g、第三曲面部C3g、第三接続曲面部B3g、第四曲面部C4g、第四接続曲面部B4gを有する。これら、第一曲面部C1g、第一接続曲面部B1g、第二曲面部C2g、第二接続曲面部B2g、第三曲面部C3g、第三接続曲面部B3g、第四曲面部C4g、第四接続曲面部B4gにより、ゲージ本体13gの翼形自由曲面Fbgが構成される。
【0036】
ゲージ本体13gは、各基準部で定められる座標系内で、Y方向に垂直な仮想平面Pygでのゲージ本体13gの断面中に、翼体13と同様、図3に示すように、第五曲面部C5g、第五接続曲面部B5g、第六曲面部C6g、第七曲面部C7g、第七接続曲面部B7g、第八曲面部C8gを有する。ゲージ本体13gの第五曲面部C5g、第五接続曲面部B5g、第六曲面部C6gにより、ゲージ本体13gの負圧側自由曲面Fsgが構成される。また、ゲージ本体13gの第七曲面部C7g、第七接続曲面部B7g、第八曲面部C8gにより、ゲージ本体13gの正圧側自由曲面Fpgが構成される。
【0037】
ゲージ本体13gは、第三基準平面23上に設けられている。
【0038】
次に、ゲージ10gの製造手順について、図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0039】
まず、測定対象である動翼10の1以上の評価領域を定める(S1:評価領域特定工程)。ここでは、図1に示すように、Z方向に垂直な複数の仮想平面での翼体13の断面の縁、及びY方向に垂直な複数の仮想平面での翼体13の断面の縁を、それぞれ、評価領域Az,Ayとする。Z方向に垂直な複数の仮想平面の一つは、図1中の仮想平面Pzである。この仮想平面Pzでの翼体13の断面の縁は、前述の評価領域Azの一つである。この仮想平面Pzでの翼体13の断面の縁線は、前述の翼形自由曲面Fb中で、仮想平面Pzと翼体13との交線である翼型自由曲線である。また、Y方向に垂直な複数の仮想平面の一つは、図1中の仮想平面Pyである。この仮想平面Pyでの翼体13の断面の縁は、前述の評価領域Ayの一つである。この仮想平面Pyでの翼体13の断面の縁線の一部は、前述の負圧側自由曲面Fs中で、仮想平面Pyと翼体13の交線である負圧側自由曲線である。さらに、この仮想平面Pyでの翼体13の断面の縁線の他の一部は、前述の正圧側自由曲面Fp中で、仮想平面Pyと翼体13との交線である正圧側自由曲線である。
【0040】
次に、各評価領域Az,Ayにおける各自由曲線を構成する要素を抽出する(S2:要素抽出工程)。この要素抽出工程(S2)では、例えば、仮想平面Pzでの翼体13の断面の縁である評価領域Azから、第一曲面部C1、第二曲面部C2、第三曲面部C3、及び第四曲面部C4を抽出する。また、この要素抽出工程(S2)では、例えば、仮想平面Pyでの翼体13の断面の縁である評価領域Ayから、第五曲面部C5、第六曲面部C6、第七曲面部C7、及び第八曲面部C8を抽出する。なお、評価領域Azが曲率半径一定の曲面部を有していない場合、叉は、評価対象としたい部位が曲率半径一定の曲面部ではない場合、その部位を一つ又は複数の曲面部で近似するものとする。
【0041】
次に、要素抽出工程(S2)で抽出した要素に関する動翼10の設計データを取得する(S3:設計データ取得工程)。この設計データ取得工程(S3)では、例えば、評価領域Az中の、第一曲面部C1、第二曲面部C2、第三曲面部C3、及び第四曲面部C4に関するそれぞれの曲率半径及び曲率中心の座標を取得する。また、この設計データ取得工程(S3)では、例えば、評価領域Ay中の、第五曲面部C5、第六曲面部C6、第七曲面部C7、及び第八曲面部C8に関するそれぞれの曲率半径及び曲率中心の座標を取得する。
【0042】
次に、各評価領域Az,Ayに含まれる複数の要素に対する許容製造誤差を定める(S4:製造誤差設定工程)。この許容製造誤差は、これから製造するゲージ10gに対する許容製造誤差である。この製造誤差設定工程(S4)では、例えば、設計データ取得工程(S3)で取得した、評価領域Az中の、第一曲面部C1、第二曲面部C2、第三曲面部C3、及び第四曲面部C4に関するそれぞれの曲率半径及び曲率中心の座標に対する許容製造誤差を定める。また、この製造誤差設定工程(S4)では、例えば、設計データ取得工程(S3)で取得した、評価領域Ay中の、第五曲面部C5、第六曲面部C6、第七曲面部C7、及び第八曲面部C8に関するそれぞれの曲率半径及び曲率中心座標に対する許容製造誤差を定める。これらの許容製造誤差は、設計資料などから性能や製造上の問題を考慮して定めてもよい。
【0043】
次に、ゲージ10gが有する基準部20を数学的に定義する(S5:基準部定義工程)。具体的に、この基準部定義工程(S5)では、基準部20としての、第一基準平面21、第二基準平面22、及び第三基準平面23を数学的に定義する。ここで、定義対象を数学的に定義するとは、定義対象の形状を数値データ化する、又は定義対象の形状等を数式で表すことである。
【0044】
次に、動翼10の評価領域Azに対応するゲージ10gの評価対応領域Azgが有する翼形自由曲面Fbgを数学的に定義すると共に、動翼10の評価領域Ayに対応するゲージ10gの評価対応領域Aygが有する、正圧側自由曲面Fpg及び負圧側自由曲面Fsgを数学的に定義する(S6:自由曲面定義工程)。
【0045】
図4に示すように、Z方向に垂直な複数の仮想平面Pzgでのゲージ本体13gの断面の縁は、前述した翼体13の評価領域Azに対応する評価対応領域Azgである。この仮想平面Pzgでのゲージ本体13gの断面の縁線は、前述の翼形自由曲面Fbg中で、仮想平面Pzgとゲージ本体13gとの交線である翼型自由曲線である。また、Y方向に垂直な仮想平面Pygでのゲージ本体13gの断面の縁は、前述した翼体13の評価領域Ayに対応する評価対応領域Aygである。この仮想平面Pygでのゲージ本体13gの断面の縁線の一部は、前述の負圧側自由曲面Fsg中で、仮想平面Pygとゲージ本体13gの交線である負圧側自由曲線である。さらに、この仮想平面Pygでのゲージ本体13gの断面の縁線の他の一部は、前述の正圧側自由曲面Fpg中で、仮想平面Pygとゲージ本体13gとの交線である正圧側自由曲線である。
【0046】
自由曲面定義工程(S6)では、例えば、動翼10の評価領域Az中の、第一曲面部C1、第二曲面部C2、第三曲面部C3、及び第四曲面部C4に関するそれぞれの曲率半径の設定データを、そのまま、ゲージ10gの評価対応領域Azg中の、第一曲面部C1g、第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面部C4gの曲率半径とする。また、動翼10の評価領域Az中の、第一曲面部C1、第二曲面部C2、第三曲面部C3、及び第四曲面部C4に関するそれぞれの曲率中心座標の設定データを、基準部20で定義される座標系に変換して、ゲージ10gの評価対応領域Azg中の、第一曲面部C1g、第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面部C4gの曲率中心座標とする。さらに、評価対応領域Azg中の第一接続曲面部B1g、第二接続曲面部B2g、第三接続曲面部B3g、及び第四接続曲面部B4gに関するそれぞれの曲率半径も定義する。例えば、第一接続曲面部B1gに関しては、この第一接続曲面部B1g中の前縁側接続部B1fgの曲率半径を、第一曲面部C1gの曲率半径r1と同じにする。また、この第一接続曲面部B1g中の後縁側接続部B1bgの曲率半径を、第二曲面部C2gの曲率半径r2と同じにする。そして、この第一接続曲面部B1gの曲率半径を、前縁側接続部(第一接続部)B1fgから後縁側接続部(第二接続部)B1bgにかけて、滑らかに連続的に変化させる。以上で、ゲージ10gの評価対応領域Azgにおける翼形自由曲面Fbgが数学的に定義される。
【0047】
さらに、この自由曲面定義工程(S6)では、例えば、動翼10の評価領域Ay中の、第五曲面部C5、第六曲面部C6、第七曲面部C7、及び第八曲面部C8の曲率半径の設計データを、そのまま、ゲージ10gの評価対応領域Ayg中の、第五曲面部C5g、第六曲面部C6g、第七曲面部C7g、及び第八曲面部C8gの曲率半径とする。また、動翼10の評価領域Ay中の、第五曲面部C5、第六曲面部C6、第七曲面部C7、及び第八曲面部C8に関するそれぞれの曲率中心座標の設計データを、基準部20で定義される座標系に変換して、ゲージ10gの評価対応領域Ayg中の、第五曲面部C5g、第六曲面部C6g、第七曲面部C7g、及び第八曲面部C8gの曲率中心座標とする。さらに、評価対応領域Ayg中の第五接続曲面部B5g、及び第七接続曲面部B7gに関するそれぞれの曲率半径も定義する。例えば、第五接続曲面部B5gに関しては、この第五接続曲面部B5g中の基側接続部(第一接続部)B5bgの曲率半径を、第五曲面部C5gの曲率半径r5と同じにする。また、この第五接続曲面部B5g中のチップ側接続部(第二接続部)B5tgを第六曲面部C6gの曲率半径r6と同じにする。そして、この第五接続曲面部B5gの曲率半径を、基側接続部B5bgからチップ側接続部B5tgにかけて、滑らかに連続的に変化させる。以上で、ゲージ10gの評価対応領域Aygにおける正圧側自由曲面Fpg及び負圧側自由曲面Fsgが数学的に定義される。
【0048】
次に、基準部20を有する基準体11gと、この基準体11gに接続されているゲージ本体13gとを製造する(S7:製造工程)。この製造工程(S7)では、製造するゲージ10g中の各要素が、製造誤差設定工程(S4)で定めた許容製造誤差内に収め得る三次元形状製造装置を用いて、製造する。三次元形状製造装置としては、例えば、マシニングセンタ、3Dプリンタ等がある。三次元形状製造装置は、装置本体と、装置本体の動作を制御する制御装置と、を有する。この製造工程(S7)では、数学的に定義された各自由曲面(自由曲線)のデータと、数学的に定義された各基準部20のデータとを、制御装置に入力する。そして、この制御装置からの指示で装置本体を動作させて、ゲージ10gを製造する。
【0049】
以上のように製造されたゲージ10gのゲージ本体13gは、図4に示すように、自由曲面を含む測定対象を模した形状及びサイズになる。特に、ゲージ本体13g中で、評価領域特定工程(S4)で定めた測定対象中の複数の評価領域Az,Ayに対応する評価対応領域Azg,Aygの形状及びサイズは、測定対象の設計データで定められた、測定対象中の複数の評価領域Az,Ayの形状及びサイズに実質的に同一、若しくは許容製造誤差の範囲内での形状及びサイズとなる。
【0050】
以上のように製造されたゲージ10gの翼形自由曲面Fbg、負圧側自由曲面Fsg及び正圧側自由曲面Fpgは、一次微分的に連続している。すなわち、ゲージ10gの翼形自由曲面Fbg、正圧側自由曲面Fpg及び負圧側自由曲面Fsgの形状を示す関数は、一次微分可能な関数である。なお、ゲージ10gの翼形自由曲面Fbg、正圧側自由曲面Fpg及び負圧側自由曲面Fsgは、二次微分的にも連続していることが好ましい。すなわち、ゲージ10gの翼形自由曲面Fbg、正圧側自由曲面Fpg及び負圧側自由曲面Fsgの形状を示す関数は、二次微分可能な関数であることが好ましい。
【0051】
以上で説明したゲージ10gの製造方法では、許容製造誤差設定工程(S4)の後で且つ自由曲面定義工程(S6)の前に、基準部定義工程(S5)を実行している。しかしながら、基準部定義工程(S5)は、自由曲面定義工程(S6)の前であれば、どの段階で行ってもよく、例えば、評価領域特定工程(S1)の前に実行してもよい。また、その形状と寸法も、JIS B 07443-3に記載された類似性の要求事項を満たすものであればよい。
【0052】
ゲージ本体13gは、測定対象の翼体13を模した形状である。しかしながら、ゲージ本体13gは、翼体13の各部を完全に模した形状である必要はなく、少なくとも、ゲージ本体13g中で評価対応領域の形状が、測定対象の評価領域Az、Ayの形状を模した形状であればよい。
【0053】
「形状測定機の精度評価方法」
形状測定機の精度評価方法の実施形態について、図6図11を用いて説明する。
【0054】
本実施形態の精度評価方法では、図6のフローチャートに示すように、まず、図5のフローチャートに示すS1~S7を含むゲージ製造工程(S10)を実行する。
【0055】
次に、ゲージ製造工程(S10)で製造されたゲージ10gの形状証明を、校正事業者等に依頼して、この校正事業者等からゲージ10gの形状を証明する証明書を取得する(S11)。この証明書には、ゲージ10gの形状を証明する証明データの他、証明を行った際の各種条件が記載されている。各種条件としては、ゲージ10gの形状測定に用いた測定機の種類、この測定機の管理状況、測定機で形状が行われている際のゲージ10gの温度等がある。
【0056】
証明データには、ゲージ10gにおける複数の評価対応領域の形状等を示すためのデータが含まれる。具体的には、ゲージ10gの各基準平面21,22,23で定義される座標系で、Z方向に垂直な仮想平面でゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータ、つまり評価対応領域のデータが含まれる。例えば、図7に示すように、Z座標値が10mmの仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータ、Z座標値が30mmの仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータ、Z座標値が50mmの仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータが含まれる。各仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータには、図7及び図8に示すように、このゲージ本体13gの断面の縁に含まれる、第一曲面部C1g、第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面部C4gの曲率中心座標(X,Y)のデータが含まれている。さらに、各仮想平面でゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータには、第一曲面部C1g、第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面部C4gの曲率半径のデータが含まれる。
【0057】
なお、図7中で、Z座標値が10mmの仮想平面である第一仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第一曲面部C1gに関する証明データをC1gc1とし、Z座標値が30mmの仮想平面である第二仮想平面のゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第一曲面部C1gに関する証明データをC1gc2とし、Z座標値が50mmの仮想平面である第三仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第一曲面部C1gに関する証明データをC1gc3としている。同様に、第一仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面C4gに関する証明データをC2gc1,C3gc1,C4gc1としている。また、第二仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面C4gに関する証明データをC2gc2,C3gc2,C4gc2としている。さらに、第三仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面C4gに関する証明データをC2gc3,C3gc3,C4gc3としている。
【0058】
さらに、各仮想平面でゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すためのデータには、複数の仮想平面毎の第一曲面部C1gに関するデータの拡張不確かさ、複数の仮想平面毎の第二曲面部C2gに関するデータの拡張不確かさ、複数の仮想平面毎の第三曲面部C3gに関するデータの拡張不確かさ、複数の仮想平面毎の第四曲面部C4gに関するデータの拡張不確かさが含まれている。なお、拡張不確かさは、例えば、包含係数k=2を合成標準不確かさに乗じた値である。具体的に、第一曲面部C1gに関しては、複数の仮想平面毎の曲率中心座標のX座標値に関する拡張不確かさUx、複数の仮想平面毎の曲率中心座標のY座標値に関する拡張不確かさUy、複数の仮想平面毎の曲率半径に関する拡張不確かさUrが含まれる。
【0059】
次に、形状測定機を用いて、ゲージ10gにおける複数の評価対応領域の形状等を示す測定データを取得する(S12:ゲージ測定工程)。
【0060】
図9に示すように、このゲージ測定工程(S12)で用いる形状測定機50は、例えば、ベース51と、X方向移動機構52xと、Y方向移動機構52yと、Z方向移動機構52zと、プローブ56と、プローブ56を回転させるプローブ回転機構57と、を有する接触式の測定機である。プローブ回転機構57は、Z移動体55zの下端に設けられている。プローブ回転機構57には、プローブ56が取り付けられる。プローブ56の端部には、球体56aが設けられている。この形状測定機50は、球体56aを測定対象の表面に接触させつつ、プローブ56を移動させ、移動中の球体56aの軌跡データから測定対象の形状に関する測定データを得る。
【0061】
この形状測定機50を用いて、測定対象であるゲージ10gにおける複数の評価対応領域の形状を測定する際、形状測定機50の原点をゲージ10gの各基準平面で定まる座標系の原点Oにする。この結果、この形状測定機50で得られた測定データは、ゲージ10gの各基準平面で定まる座標系で示される。また、この測定の際、複数のスキャンスピードでプローブ56を移動させて、複数のスキャンスピード毎に測定データを得ることが好ましい。
【0062】
例えば、Z座標値が50mmの第三仮想平面でゲージ本体13gの断面の縁の形状等を示すための測定データには、図10に示すように、ゲージ本体13gの第三仮想平面での断面の縁に含まれる、第一曲面部C1g、第二曲面部C2g、第三曲面部C3g、及び第四曲面部C4gの曲率中心座標及び曲率半径の測定データC1gm3,C2gm3,C3gm3,C4gm3が含まれる。
【0063】
次に、ゲージ10gの証明データとゲージ10gの測定データとを比較し、この比較結果に応じて、形状測定機50の精度を評価する(S13:評価工程)。この評価工程(S13)では、測定データと証明データとの差を求め、これを比較結果とする。例えば、図11に示すように、Z座標値が50mmの第三仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第一曲面部C1gの測定データC1gm3と、この第一曲面部C1gの証明データC1gc3との差を求める。具体的に、このゲージ本体13gの第三仮想平面での断面の縁に含まれる第一曲面部C1gのX座標値に関する測定データと証明データの差、この第一曲面部C1gのY座標値に関する測定データと証明データの差、この第一曲面部C1gの曲率半径に関する測定データと証明データの差を求める。同様に、第三仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第二曲面部C2gの測定データC2gm3と、この第二曲面部C2gの証明データC2gc3との差を求める。第三仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第三曲面部C3gの測定データC3gm3と、この第三曲面部C3gの証明データC3gc3との差を求める。第三仮想平面でのゲージ本体13gの断面の縁に含まれる第四曲面部C4gの測定データC4gm3と、この第四曲面部C4gの証明データC4gc3との差を求める。
【0064】
なお、ゲージ測定工程(S12)で、複数のスキャンスピード毎に測定データを得た場合には、複数のスキャンスピード毎の測定データのうち、証明データとの差が最小になる測定データを採用し、この測定データと証明データとの差を比較結果とする。また、証明データとの差が最小になる測定データを得た際のスキャンスピードを、形状測定機50で測定対象である翼の形状を測定する際のプローブ56のスキャンスピードに設定する。
【0065】
この評価工程(S13)では、次に、測定データと証明データとの差が予め定められた許容値を超えるか否か判断する。そして、測定データと証明データとの差が例えば許容値を超える場合には、この形状測定機50の測定精度が低いと判断し、測定データと証明データとの差が例えば許容値以下である場合には、この形状測定機50の測定精度が高いと判断する。形状測定機50の測定精度が低いと判断した場合には、例えば、この形状測定機50の製造メーカーに、この形状測定機50の校正又は修理等を依頼する。
【0066】
許容値としては、例えば、曲率中心のX座標値及びY座標値の測定データと証明データと差に関する座標許容値がある。複数の曲面部毎の曲率中心のX座標値及びY座標値に関する測定データと証明データと差のうち、いずれかが許容値を超えていれば、ここでは形状測定機50の測定精度が低いと判断する。また、許容値としては、曲率半径の測定データと証明データとの差に関する半径許容値がある。この半径許容値は、曲率半径の証明データに応じて設定してもよい。複数の曲面部毎の曲率半径に関する測定データと証明データと差のうち、いずれかが、証明データの曲率半径に応じた許容値を超えていれば、ここでは形状測定機50の測定精度が低いと判断する。
【0067】
本実施形態のゲージ10gは、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲面部を有するので、複数の曲面部毎のゲージ証明データとゲージ測定データとを比較することで、形状測定機50の精度に関する評価精度を高めることができる。
【0068】
また、このゲージ10gが有する複数の曲面部のそれぞれは、複数の曲面部のうちの他の曲面部に滑らかに連続してつながっている。このため、ゲージ10gの形状を示すゲージ測定データを取得する場合、形状測定機50で、このゲージ10gの表面をスキャンする際のスキャンスピードを一定にすることができる。よって、形状測定機50の制御が容易になる。さらに、前述したように、証明データとの差が最小になるゲージ測定データを得た際の一定のスキャンスピードを、この形状測定機50で測定対象の形状を測定する際のスキャンスピードにすることで、不連続な部位でスキャンスピードを低下させるなどの複雑な操作が不要になり、対象測定データの精度を高めることができる。
【0069】
「形状測定機による測定データの校正(補正)方法」
形状測定機による測定データの校正(補正)方法の実施形態について、図12図15を用いて説明する。
【0070】
本実施形態の形状測定機による測定データの校正(補正)方法では、図12のフローチャートに示すように、図5のフローチャートを用いて説明した形状測定機50の精度評価方法における、ゲージ製造工程(S10)及び証明取得工程(S11)を実行する。
【0071】
この実施形態では、証明取得工程(S11)の後に、形状測定機を用いて、測定対象の評価領域の形状を測定して、評価領域の形状を示す対象測定データを取得する(S14:対象測定工程)。この対象測定工程(S14)で用いる形状測定機は、ゲージ測定工程(S12)で用いた形状測定機50と異なる測定機であってもよい。但し、前述した評価方法で、測定精度が高いと評価された形状測定機50を対象測定工程(S14)でも用いることが好ましい。
【0072】
次に、ゲージ10gの証明データと対象測定データとを比較結果に応じて、対象測定データを補正する補正データを求める(S15:補正データ算出工程)。この補正データ算出工程(S15)では、まず、対象測定データを補正する補正データと曲率半径との関係を示す補正関数を定める(S15a:補正関数設定工程)。この補正関数設定工程(S15a)では、図13に示すように、対象測定データが示す曲率半径rmをx軸とし、この曲率半径rmとゲージ10gに関する証明データが示す曲率半径rcとの差(rm-rc)をy軸とする座標系を準備する。次に、この座標系中に、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の、曲率半径rmと差(rm-rc)とで定まる点をプロットする。座標系中にプロットした複数の点毎のx座標値及びy座標値から、x座標値とy座標値との関係を近似する補正関数を定める。
【0073】
ここでは、この補正関数は、図13に示すように、以下の一次関数である。
y=0.2869x-5.6142
【0074】
また、以上の補正データ算出工程(S15)における補正関数設定工程(S15a)では、対象測定データを補正する補正データと曲率中心座標との関係を示す補正関数を定めてもよい。この補正関数設定工程(S15a)では、二つの座標系を準備する。二つの座標系のうち第一座標系として、図14に示すように、対象測定データが示す曲率中心x座標xmをx軸とし、この曲率中心x座標xmとゲージ10gに関する証明データが示す曲率中心x座標xcとの差(xm-xc)をy軸とする座標系を準備する。二つの座標系のうち第二座標系として、図15に示すように、対象測定データが示す曲率中心y座標ymをx軸とし、この曲率中心y座標ymとゲージ10gに関する証明データが示す曲率中心y座標ycとの差(ym-yc)をy軸とする座標系を準備する。次に、第一座標系中に、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の、曲率中心x座標xmと差(xm-xc)とで定まる点をプロットする。第一座標系中にプロットした複数の点毎のx座標値及びy座標値から、x座標値とy座標値との関係を近似する第一補正関数を定める。さらに、第二座標系中に、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の、曲率中心y座標ymと差(ym-yc)とで定まる点をプロットする。第二座標系中にプロットした複数の点毎のx座標値及びy座標値から、x座標値とy座標値との関係を近似する第二補正関数を定める。
【0075】
ここでは、第一補正関数は、図14に示すように、以下の一次関数である。
y=0.0017x-0.8804
【0076】
また、第二補正関数も、図15に示すように、以下の一次関数である。
y=-0.0134x-0.0143
【0077】
補正データ算出工程(S15)では、補正関数設定工程(S15a)後に、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の、対象測定データが示す曲率半径を前述の補正関数のxに代入して、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の補正データyを求める(S15b:補正データ演算工程)。以上で補正データ算出工程(S15)が終了する。なお、補正関数設定工程(S15a)において、補正データと曲率中心座標との関係を示す第一及び第二補正関数を定めた場合には、補正データ演算工程(S15b)で、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の、対象測定データが示す曲率中心x座標を前述の第一補正関数のxに代入して、評価対象に含まれる複数の曲面部毎のx座標に関数する補正データyを求める。さらに、評価対象に含まれる複数の曲面部毎の、対象測定データが示す曲率中心y座標を前述の第二補正関数のxに代入して、評価対象に含まれる複数の曲面部毎のy座標に関数する補正データyを求める。
【0078】
補正データ算出工程(S15)が終了すると、この補正データ算出工程(S15)で求めた補正データを用いて、対象測定データが示す曲率半径、及び/又、対象測定データが示す曲率中心座標を補正する。具体的には、対象測定データが示す曲率半径から補正データを減算し、及び/又対象データが示す曲率中心座標から補正データを減算し、この減算結果を校正された対象測定データとする。
【0079】
以上で、対象測定データの校正(補正)が終了する。
【0080】
本実施形態のゲージ10gは、互いに異なる曲率半径及び/又は曲率中心座標を有する複数の曲面部を有するので、複数の曲面部毎のゲージ証明データと対象測定データとを比較することで、対象測定データの補正に好ましい補正データを得ることができる。よって、このゲージ10gを用いることで、対象測定データを精度よく補正することができる。
【0081】
以上の補正関数設定工程(S15a)で定める補正関数は、一次関数である。しかしながら、この補正関数は、多次元関数等、他の関数であってもよい。また、以上の補正関数設定工程(S15a)を、人が実行してもよいが、補正関数設定工程(S15a)を実行するためのプログラムが組み込まれているコンピュータが実行してもよい。
【0082】
「ゲージの変形例」
以上の実施形態のゲージ10gは、ゲージ本体13gのチップ面18g側とは反対側の端に基準体11gが設けられている。しかしながら、図16に示すように、ゲージ本体13gのチップ面18に基準体11gaが設けられていてもよい。また、図17に示すように、ゲージ本体13gのZ方向における中間部に基準体11gbが設けられていてもよい。
【0083】
以上の実施形態のゲージ10gの基準体11gは、基準部20として、互いに垂直な第一基準平面21、第二基準平面22及び第三基準平面23を有する。しかしながら、図18に示すように、基準体11gcは、ベース25と、基準部として、ベース25上に固定され、互いの中心が一の仮想平面Pcを規定する三以上の球面部26と、を有してもよい。この基準体11gcのベース25は、直方体形状を成している。このベース25上の一の平面25p上には、ゲージ本体13gが設けられている。この一の平面25p上には、さらに、四つの球面部26が設けられている。四つの球面部26の中心は、前述したように、一つの仮想平面Pcを規定する。さらに、この仮想平面Pc内に描かれる長方形の頂点に、各球面部26の中心が位置する。四つの球面部26の中心のうち、第一球面部26aの中心は、ゲージ本体13gの各部を測定する際の座標系の原点Oを成す。第一球面部26aの中心と第二球面部26bの中心とを結ぶ仮想線は、この座標系のX軸を成す。第一球面部26aの中心と第三球面部26cの中心とを結ぶ仮想線は、この座標系のY軸を成す。第一球面部26aの中心を通り、X軸及びY軸に垂直な仮想線は、この座標系のZ軸を成す。よって、四つの球面部26の中心が規定している仮想平面Pcは、この座標系のXY平面になる。
【0084】
なお、この変形例の基準体11gcは、四つの球面部26を有するが、球面部26の数は三つでもよい。また、この変形例の基準体11gcにおける第一球面部26aと第二球面部26bとを結ぶ仮想線に対して、この基準体11gcにおける第一球面部26aと第三球面部26cとを結ぶ仮想線は、垂直である。しかしながら、第一球面部26aと第二球面部26bとを結ぶ仮想線に対して、第一球面部26aと第三球面部26cとを結ぶ仮想線は、垂直でなくてもよい。この場合、第一球面部26aと第二球面部26bとを結ぶ仮想線をX軸にし、仮想平面Pc中でこのX軸に垂直な仮想線をY軸にする。また、各球面部は、真球であることが望ましいが、座標系を規定することができる形状であれば、真球でなくてもよい。また、複数の基準部は、座標系を定めることができれば、以上で例示した形状等に限られない。
【0085】
「その他の変形例」
以上の実施形態の測定対象は、タービンの動翼10である。しかしながら、自由曲面を有する物体であれば、いかなる物体を測定対象にしてもよい。この場合、ゲージ本体は、この測定対象に対応した形状及びサイズになる。
【0086】
また、測定対象は、互いに平行な複数の仮想平面による各断面の形状及びサイズが同一の物体であってもよい。言い換えると、測定対象は、柱状を成し、この柱の底面及び天面の外縁形状が互いに同一の自由曲線であってもよい。このような測定対象としては、例えば、平板形カムがある。
【0087】
以上の実施形態の形状測定機50は、接触式の測定機である。しかしながら、形状測定機は、非接触式の測定機であってもよい。非接触式の測定機としては、例えば、レーザの光を測定対象に照射し、この測定対象からの反射光に応じて、測定対象の形状を測定するレーザ形状測定機等がある。
【符号の説明】
【0088】
10:動翼
Ar;回転軸線
11:プラットフォーム
11p;ガスパス面
12:翼根
13:翼体(測定対象)
14:前縁
15:後縁
16:負圧面
17:正圧面
18:チップ面
Fb:翼形自由曲面
C1:第一曲面部
B1:第一接続曲面部
B1f,B2f,B3f,B4f:前縁側接続部(第一接続部)
B1b,B2b,B3b,B4b:後縁側接続部(第二接続部)
C2:第二曲面部
B2:第二接続曲面部
C3:第三曲面部
B3:第三接続曲面部
C4:第四曲面部
B4:第四接続曲面部
Fs:負圧側自由曲面
C5:第五曲面部
B5:第五接続曲面部
B5b,B7b:基側接続部(第一接続部)
B5t,B7t:チップ側接続部(第二接続部)
C6:第六曲面部
Fp:正圧側自由曲面
C7:第七曲面部
B7:第七接続曲面部
C8:第八曲面部
Pz:Z方向に垂直な仮想平面
Py:Y方向に垂直な仮想平面
Az,Ay:評価領域
10g:ゲージ
11g,11ga,11gb,11gc:基準体
13g:ゲージ本体
14g:前縁
15g:後縁
16g:負圧面
17g:正圧面
18g:チップ面
Fbg:翼形自由曲面
C1g:第一曲面部
B1g:第一接続曲面部
B1fg:前縁側接続部(第一接続部)
B1bg:後縁側接続部(第二接続部)
C2g:第二曲面部
B2g:第二接続曲面部
C3g:第三曲面部
B3g:第三接続曲面部
C4g:第四曲面部
B4g:第四接続曲面部
Fsg:負圧側自由曲面
C5g:第五曲面部
B5g:第五接続曲面部
B5bg:基側接続部(第一接続部)
B5tg:チップ側接続部(第二接続部)
C6g:第六曲面部
Fpg:正圧側自由曲面
C7g:第七曲面部
B7g:第七接続曲面部
C8g:第八曲面部
Pzg:Z方向に垂直な仮想平面
Pyg:Y方向に垂直な仮想平面
Azg,Ayg:評価対応領域
20:基準部
21;第一基準平面(基準体)
22;第二基準平面(基準体)
23;第三基準平面(基準体)
25:ベース
26:球面部
26a:第一球面部
26b:第二球面部
26c:第三球面部
Pc:仮想平面
50:形状測定機
51:ベース
52x:X方向移動機構
52y:Y方向移動機構
52z:Z方向移動機構
56:プローブ
56a:球体
57:プローブ回転機構
図1
図2
図3
図4
図5
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