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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008288
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230112BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111722
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】長谷 岳誠
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA45
2H033BA25
2H033BA29
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB39
2H033BE03
2H033BE08
2H033CA22
2H033CA36
2H270MC44
2H270MC55
2H270MC65
2H270MD02
2H270MD10
2H270MD12
2H270MD17
2H270PA51
2H270PA83
2H270SA09
2H270SB20
2H270SC14
(57)【要約】
【課題】ラミネート処理を改善することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱加圧によりシート上に画像を定着する定着装置80を備えた画像形成装置において、画像形成モードとラミネートモードとを備え、ラミネートモードにおける定着装置80でのシート搬送速度は、画像形成モードにおけるシート搬送速度よりも低速である。低速の程度は、好ましくは50%以下である。さらに好ましくは30%以下である。定着装置よりもシート搬送方向下流側に冷却加圧ローラ91,92を設けることが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱加圧によりシート上に画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置において、
画像形成モードとラミネートモードとを備え、
ラミネートモードにおける定着装置でのシート搬送速度は、画像形成モードにおけるシート搬送速度よりも低速であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記低速の程度は50%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記低速の程度は30%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一に記載の画像形成装置において、
ラミネートモードにおける定着装置の搬送速度は、ラミネートモードにおける、シート先端が定着装置に到達するまでの期間、および、シートの後端が定着装置を抜けた後の期間の少なくとも一部の期間のシート搬送部材の搬送速度よりも低速であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記低速の程度は50%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一に記載の画像形成装置において、
シート搬送方向で定着装置より上流側と下流側のシート搬送部材の少なくとも一部のシート搬送部材については、駆動源からの駆動伝達系に駆動伝達接断切替手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記定着装置で搬送されているシートが対向している箇所の前記シート搬送部材については前記定着装置で搬送されているシートが対向している期間、前記駆動伝達接断切替手段によって駆動伝達を遮断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一に記載の画像形成装置において、
定着装置よりもシート搬送方向下流側に冷却加圧ローラを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記冷却加圧ローラは両方とも弾性層を備えたローラの対であり、軸間距離は前記画像形成モードとラミネートモードとで同じであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の画像形成装置において、
前記冷却加圧ローラは少なくとも一方が弾性層を備えたローラの対であり、普通紙を挟持するときのニップ幅が1mm以下であり、表裏にラミネートフィルムを備えたシートを挟持するときのニップ幅が1mm以上かつ3mm以下の範囲内であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記冷却加圧ローラは表層が離型層であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記定着装置を通過したシートを排出する少なくとも二箇所の排紙箇所が設定されており、前記ラミネートモードでは比較的定着装置からの搬送経路が長い方の排紙箇所に排出することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱加圧によりシート上に画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置が知られている。例えば特許文献1は、係る画像形成装置であって、印刷モード(画像形成モード)とラミネートモードとを備え、ラミネートモードでは、定着装置の加熱加圧によりラミネート処理を行うものを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来が画像形成装置ではラミネート処理に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、加熱加圧によりシート上に画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置において、画像形成モードとラミネートモードとを備え、ラミネートモードにおける定着装置でのシート搬送速度は、画像形成モードにおけるシート搬送速度よりも低速であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ラミネート処理を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例としてのプリンタの概略構成図。
図2】定着装置の概略構成図。
図3】紙搬送に関する駆動伝達系の概略構成図
図4】同種の胴内排紙方式の装置の一例を示すもの。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明を電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置の一例としてのプリンタの概略構成図である。このプリンタ100は、給紙装置60と、レジストローラ対4と、像担持体としての感光体ドラム20と、一次転写装置12、二次転写ローラ5を備えた二次転写装置と、定着装置80等を有している。イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナー像を感光体ドラム20に形成する4色のタンデム方式の画像形成装置である。
【0008】
給紙装置60は、記録材としての用紙Sが積載状態で収容される給紙トレイと、給紙トレイに収容された用紙Sを最上のものから順に1枚ずつ分離して送り出す給紙ローラ3等を有している。給紙ローラ3によって送り出された用紙Sはレジストローラ対4で一旦停止され、姿勢ずれを矯正された後、感光体ドラム20、中間転写ベルト10の回転に同期するタイミングで、すなわち、感光体ドラム20、中間転写ベルト10上に形成されたトナー像の先端と、用紙Sの搬送方向先端部の所定位置とが一致するタイミングでレジストローラ対4により中間転写ベルト10と二次転写ローラ5とからなる二次転写ニップへ送られる。二次転写ローラ5が当接する中間転写ベルト10の裏面には支持ローラ11が配置されている。
【0009】
各色の感光体ドラム20の周りには、矢印で示す回転方向順に、帯電装置としての帯電ローラ30と、露光装置8と、現像ローラを備えた現像装置40と、一次転写装置12と、クリーニングブレードを備えたクリーニング装置50等が配置されている。帯電ローラ30と現像装置40の間において、ミラーを介して感光体ドラム20上の露光部に露光光Lbが照射され、走査されるようになっている。
【0010】
中間転写ベルト10の上方には、各色トナーを収容するトナーボトル9(Y,C,M,K)が複写機100本体に対して着脱可能に配置されている。各色のトナーボトル9に収容されたトナーは、各色の現像装置40に供給される。
【0011】
感光体ドラム20が回転を始めると、感光体ドラム20の表面が帯電ローラ30により均一に帯電され、画像情報に基づいて露光光Lbが露光部に照射、走査されて作成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像は感光体ドラム20の回転により現像装置40へ移動し、ここでトナーが供給されて可視像化され、トナー像が形成される。感光体ドラム20上に形成されたトナー像は、一次転写装置12による転写バイアス印加により中間転写ベルト10に転写され、所定のタイミングで二次転写ニップに進入してきた用紙S上に二次転写ローラ5による転写バイアス印加により転写される。
【0012】
トナー像を担持した用紙Sは定着装置80へ向けて搬送され、定着装置80で定着された後、排紙ローラ対7で排紙トレイ上へ排出され、スタックされる。転写部位で転写されずに感光体ドラム20、中間転写ベルト10上に残った残留トナーは、回転に伴ってクリーニング装置50、70に至り、このクリーニング装置50、70を通過する間にクリーニングブレードにより掻き落とされて清掃される。その後、感光体ドラム20上の残留電位が除電装置により除去され、次の作像工程に備えられる。
【0013】
図2は定着装置80の概略構成図である。定着装置80は定着スリーブ81と加圧ローラ82を有し、熱源83(図2の例ではハロゲンヒータ)により定着スリーブ81が内周側から輻射熱で直接加熱される。図2の定着スリーブ81内には、定着スリーブ81を介して対向する加圧ローラ82とニップを形成するニップ形成部材84を備える。このニップ形成部材84は、定着スリーブ81内面と直接的に、もしくは摺動シートを介して間接的に摺動するようになっている。
【0014】
図2ではニップ部の形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であってもよい。ニップの形状は凹形状の方が、記録紙先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される点で有利である。
【0015】
定着スリーブ81はニッケルやSUSなどの金属スリーブやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端スリーブ(もしくはフィルム)とする。スリーブの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。スリーブの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、省エネ性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにスリーブ表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にゆず肌状の光沢ムラ(ゆず肌画像)が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されゆず肌画像が改善する。
【0016】
定着装置80は、定着スリーブ81の内部に、ニップ部を支持するための支持部材85(ステー)を備える。支持部材85は、加圧ローラ82により圧力を受けるニップ形成部材84の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。圧力を支持部材85で支持することでトナーを溶融定着させるに必要な定着ニップでの面圧を得ることができる。
【0017】
この支持部材85は鉄ないしはステンレスを曲げ加工等を実施することで形成され、厚みが2~4mm程度の鉄板やSUS板を用いるため熱容量が大きい。また、この支持部材85は両端部で保持部材に保持固定され位置決めされている。そこで、定着装置80は熱源83と支持部材85の間に反射部材86を備えている。この反射部材86は、熱源83からの輻射熱などにより支持部材85が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材86を備える代わりに支持部材85表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることが可能となる。
【0018】
加圧ローラ82は芯金に弾性ゴム層があり、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。加圧ローラ82は、後述するように画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ82はスプリングなどにより定着スリーブ81側に押し付けられており、弾性ゴム層が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ82は中空のローラであってもよく、加圧ローラ82にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。弾性ゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ82内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着スリーブの熱が奪われにくくなるので、より好ましい。
【0019】
定着スリーブ81は加圧ローラ82により連れ回り回転する。具体的には、加圧ローラ82が駆動源により回転し、ニップ部Nの摩擦力でスリーブに駆動力が伝達されることにより定着スリーブ81が連れ回りで回転する。定着スリーブ81はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部以外では両端部で保持部材(フランジ)にガイドされ、走行する。上記のような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
【0020】
[用紙Sのカール]
高温高湿環境下に長時間放置された紙は吸湿して含水率が高くなり、特に再生紙は吸湿性が高く、含水率が高くなりやすい。そのような紙が定着スリーブ81と加圧ローラ82の温度差が高い状態で定着装置80を通過した場合、紙の表裏温度差が生じ、温度が高い側(定着スリーブ側)から低い側(加圧ローラ側)へ水分が移動し、加圧ローラ側からの水分蒸発により紙が収縮し、印刷面と反対側にカール(バックカール)する。
【0021】
バックカールを矯正するためには、バックカールとなる前に紙に対して逆方向の曲げを付与すればよい。カール矯正装置90は、定着装置80よりも搬送方向下流側に位置し、加圧ローラ82と同じ駆動源から駆動力が伝達されて回転する。画像面側ローラ91は、非画像面側ローラ92からの摩擦力により従動回転する。画像面側ローラ91と、非画像面側ローラ92に挟まれたニップ部を紙が通過し、ガイド板93により曲げられてカール矯正される。
【0022】
本実施形態ではカール矯正装置90を冷却加圧ローラ91、92として使用する。定着後には搬送ローラやカール矯正装置であるデカーラなどのローラがあるが、それを冷却加圧ローラに置き換えるのである。冷却加圧ローラは軸方向に均一に弾性層を備えるローラである。線速を定着と比べてやや増速させて引っ張ることで、フィルムの波打ちを低減させる。
【0023】
カール矯正装置の場合は一対のローラのうち片方がハードローラとする場合があるが、本実施形態ではどちらも弾性層を備える弾性ローラとする。また軸間距離は固定とし、画像形成モードである通常印刷における普通紙を印刷する場合には面圧が小さく、ラミネートモードのように表裏をラミネートフィルムで挟まれ、全体として厚くなった記録媒体が通紙される場合には面圧が高く、ニップ幅も広がるように構成されている。厚いフィルムが通過するときだけ圧が大きくかかり、ラミネートフィルムを十分加圧できる。加えて、普通紙を印刷する場合と比べローラの弾性層がニップ部で半径方向により圧縮されて周方向に伸ばされるため、ニップ部での線速が普通紙を印刷する場合よりも線速が増速する。
【0024】
[ラミネート処理工程]
給紙装置60は、記録媒体の収容部として給紙カセットを備えている。用紙に印字する場合には、給紙装置60の給紙カセットには多枚数のカット紙状の記録媒体が収容されている。これに対して、ラミネート処理を実行する場合には、給紙カセットには、ユーザによってパウチ式ラミネートフィルムに印刷済みの紙を挟んだ状態で収容されている。
【0025】
パウチ式ラミネートフィルムとは、2枚のフィルムの4辺のうちの1辺が接着されているか、1枚のフィルムを折って2枚にし、2枚のフィルムの間に印刷物を挟む構成のものを指す。接着された1辺または折った辺が給紙方向下流側になるように給紙カセットに収容される。
【0026】
また、画像形成装置には、給紙カセットとは別に手差しトレイ61が装着されている(図1参照)。これに対して、ラミネート処理を実行する場合には、手差しトレイ61にラミネートフィルムをセットしてもよい。
【0027】
[紙搬送のための駆動伝達系]
本実施形態では、画像形成モードとラミネートモードとを備え、ラミネートモードにおける定着装置でのシート搬送速度は、画像形成モードにおけるシート搬送速度よりも低速である。ラミネート時の低線搬送の方法として、駆動モータを定格の範囲よりも低回転速度で駆動した場合、回転速度変動が生じる場合がある。よって低線速で駆動するためには減速機を用いることが一般的である。一方、減速機を用いた場合、通常印刷での回転速度で駆動するためには、高速回転が可能な高価なモータを用いる必要がありコストアップにつながる。特に定着・転写以外の搬送用の搬送モータは印刷時間を短縮するため、定着や転写のプロセス線速よりも増速しているため、ラミネートモードでの低線速化のために減速機を用いると、高価なモータを用いる必要がある。これに対し、定着ローラ、転写ローラの最高速度(画像形成モードにおける最高速度)はそれほど高速ではないため、それほど高価なモータを用いずに減速機を用いて低速から通常速度まで対応可能である。
【0028】
図3は本実施形態における紙搬送に関する駆動伝達系の概略構成図である。給紙ローラ3は、駆動伝達接断切替手段であるクラッチ3aを介して駆動モータ3bにより駆動される。用紙Sに搬送力を付与する場合には、クラッチ3aを接続し、駆動モータ3bが回転することにより用紙Sを搬送することができる。クラッチ3aを離間[切断]した場合には、駆動力は用紙Sに伝わらず、他の駆動源による搬送力で用紙Sは搬送される。レジストローラ対4、排紙ローラ対7も同様の構成である。
【0029】
二次転写ローラ5は、減速機5aを介して、駆動モータ5bにより駆動される。定着装置80は、減速機80aを介して、駆動モータ80bにより駆動される。減速機を搭載することにより、ラミネート時の低線速にも対応可能となる。これらの駆動モータとしては、次のようなモータを用いる。通常のモータは所定の範囲よりも低速で回転させると、回転ムラや停止精度において問題がある。本実施形態では10mm/secまで可能なような大きな減速比でも回転ムラや停止精度の問題がなく、高速印刷も可能なパワーのあるモータを使う。線速の変更は駆動モータ80bの回転速度変更によって行う。クラッチやモータは制御部300により制御され、制御部300にはラミネートモードの選択指示などを行うための操作パネル310が接続されている。
【0030】
本実施形態では、ラミネートモードにおいて、転写にラミネートフィルムが到達するまでは通常線速で搬送し、転写ローラ、定着ローラ、冷却加圧ローラに挟持されている間は搬送ローラの駆動力をクラッチでオフし、転写ローラ、定着ローラ、冷却加圧ローラの駆動力で搬送される。冷却加圧ローラを抜けた後は、再び搬送ローラの駆動力をクラッチでオンし、通常線速で搬送される。転写を接離できる場合には、ラミネート時は離間してもよい。
【0031】
具体例は次のとおりである。ラミネートフィルム[表裏をラミネートフィルムにはさまれた記録媒体]が通紙される場合は、給紙ローラ3、レジストローラ対4は低速印刷線速75mm/secで回転し、ラミネートフィルムを搬送する。ラミネートフィルムの先端が二次転写ローラ5に到達すると、クラッチ3a、4aが離間し、ラミネートフィルムへの搬送力は伝わらなくなる。二次転写ローラ5、定着装置80、冷却加圧ローラ91,92は、線速30mm/sec、または20mm/secで回転し、ラミネートフィルムを搬送しながら接着する。ラミネートフィルムの後端が冷却加圧ローラ91、92を通過すると、排紙ローラ対7のクラッチ7aが接続され、排紙ローラ対7は低速印刷線速75mm/secで回転し、ラミネートフィルムを排紙する。
【0032】
給紙ローラ3、レジストローラ対4、排紙ローラ対7は、給紙されてから排紙されるまでの時間を短縮するため、作像部である二次転写ローラ5、定着装置80よりも線速度を大きくする。ラミネート時においては低速印刷線速よりも50%以下、望ましくは30%がよい。通常印刷時の定着、転写以外の搬送線速と、ラミネート線速では10倍以上の差となる。駆動モータの定格は8倍程度の線速にしか対応できない。それ以上の高線速側ではトルクが不足し、低線速側ではモータの回転速度が安定しない。
【0033】
よって、ラミネート品質に影響のある定着装置80のみを遅くするか、もしくは二次転写ローラ5も増速する必要が無いため、定着装置80と同期した低線速に対応可能であり、定着装置80と転写装置の線速を遅くすることで、ラミネート品質を向上させることが可能となる。
【0034】
[検証実験]
株式会社リコー製複合機MP C5504(商品名)を改造し、ラミネート品質評価を実施した。この複合機はいわゆる胴内排紙方式であり、胴内に上下二箇所の排紙口を備え、上方の排紙口から排紙される用紙を受ける胴内中間トレイ[インナー1ビントレイ]が配置されている。図4は同種の胴内排紙方式の装置の一例を示すものである。
【0035】
この構成例は図1のプリンタと異なり、プリンタ本体上にスキャナ200を上部に備えている。このスキャナ200の下面とプリンタ本体の上面との間に排紙用の空間210を形成している。この空間210を上下に仕切るように水平な胴内中間トレイ220が設けられている。この胴内中間トレイ220より下方に排紙ローラ対7からの排紙口が形成され、上方には排紙ローラ対17からの排紙口が形成されている。そして、定着装置80から何れの排紙ローラ対に向けて搬送するかを切り替える切替爪230が設けられている。上段の排紙ローラ対17に向かう途中に冷却加圧ローラ91,92からなるカール矯正装置90が設けられ、ガイド板93も設けられている。
【0036】
図示の例ではカセット60a、60bが上下二段設けられている。また手差しトレイ61を開いた状態を示し、手差しトレイ61にセットされた用紙の給紙ローラ62を図示している。その他の構成は図1のプリンタと同様のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のタンデム構造であり、対応する部材には同じ符号を付している。
【0037】
ラミネートフィルムは、アイリスオーヤマ製ラミネートフィルム100μmを使用し、中紙はリコー製マイペーパ(商品名)紙に全面ベタ画像を印刷したものを使用し、以下の3項目の評価を実施した。
【0038】
・接着性
◎:十分な強度で接着しており、糊の溶融ムラも無い
〇:十分な強度で接着しているが、糊の溶融ムラがある
△:接着しているが、強度が十分ではない
×:部分的に接着しているだけで、容易に剥がれる
【0039】
・波打ち
◎:波打ちが全く無い
〇:部分的に小さな波打ちがある
△:全体的に小さな波打ちがある
×:全体的に大きな波打ちがある
【0040】
・カール
◎:カール量5mm未満
〇:カール量5mm以上、10mm未満
△:カール量10mm以上、20mm未満
×:カール量20mm以上
カール量はカールした用紙を水平な面に置きカール紙の最も高い箇所の高さを測定した。
【0041】
実施例1乃至4,比較例1乃至3の実施条件は表1に記載のとおりである。
【表1】
【0042】
[実施例1]
表1の実施例1についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。低速印刷線速75mm/secに対し、ラミネート線速は50%以下の30mm/secにすることでラミネートフィルムの接着性を向上させた。冷却加圧ローラによって加圧し、引張り力を付与することで、定着装置80通過後に熱収縮による波打ちを低減するとともに、ラミネートフィルムを冷却することにより変形を抑えることができた。また、通常の胴内トレイ(胴内中間トレイ220の下方のトレイ)に排出するのではなく、胴内中間トレイ220(インナー1ビントレイ)に排出することで、搬送経路が緩やかになり、カールも抑制することができた。
【0043】
[実施例2]
表1の実施例2についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。ラミネート線速は30%以下の20mm/secにすることで、ラミネートフィルムの接着性を更に向上させた。また、更に低線速にすることで冷却時間が延長され、波打ち、カール品質も改善した。
【0044】
[実施例3]
表1の実施例3についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。冷却加圧ローラの軸間距離は変動であるため、ラミネート時のニップ幅が0.5mmとなり、波打ちが悪化した。
【0045】
[実施例4]
表1の実施例4についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。排出先が通常の胴内トレイであるため、カールが悪化した。
【0046】
[比較例1]
表1の比較例1についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。低速印刷線速75mm/secに対し、ラミネート線速も75mm/secであったため、接着性、波打ち、カールは全て×であった。
【0047】
[比較例2]
表1の比較例2についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。低速印刷線速75mm/secに対し、ラミネート線速は50%以上40mm/secであったため、接着性、波打ち、カールは全て△であった。
【0048】
[比較例3]
表1の実施例3についての実施条件に記載の条件でラミネート処理を行った。冷却加圧ローラ91,92を備えていないため、波打ちは×であった。
【0049】
以上、本実施形態の画像形成装置は、記録媒体上に形成されたトナー像を定着させる定着装置を有し、定着装置は、定着回転体と、該定着回転体と接触してニップを形成する加圧回転体を有し、ラミネートフィルムを通紙する線速度は、複数ある通常印刷モードのうちの最低速度の印刷モードに比べて、50%以下の線速度とし、定着装置の搬送方向下流において、軸方向全面に圧力がかかる冷却加圧ローラを備える。よって、通常印刷とは異なる低速モードでラミネートすることにより、十分に加熱して糊を溶融させることができる。ラミネート時の線速を通常印刷よりも50%以下にすることにより、ラミネートフィルムの接着性を向上させることができる。従来は、通常印刷の線速は高速のため、この線速のまま、ラミネート処理を行うと、ラミネートフィルムに十分に熱が伝わらず定着できなかった。
【0050】
また、冷却加圧ローラにより定着通過後の波打ちを低減することが可能となる。従来は定着後に冷却加圧ローラが無いため、加熱後の収縮により波打ちが生じやすい。冷却時間が短いことも波打ちを生じやすくする。そして、冷却時間が短いことは、フィルムにキズやカールを発生させやすくする。
【0051】
これに対し、冷却加圧ローラがあると、加圧状態で収縮するので、いわば拘束状態での収縮であり波打ちが生じにくい。拘束されない状態で加熱後収縮だとフリーな状態での収縮のため波打ちが生じやすいのである。加熱後の冷却時間を十分に確保することができる。
【0052】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、態様毎に次の特有の効果を奏する。
(態様1)
加熱加圧によりシート上に画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置において、画像形成モードとラミネートモードとを備え、ラミネートモードにおける定着装置でのシート搬送速度は、画像形成モードにおけるシート搬送速度よりも低速である。画像形成モードで例えば用紙の厚さなど紙種に応じて複数のシート搬送速度で切替可能である画像形成装置では、画像形成モードでもっとも遅いシート搬送速度よりも、ラミネートモードでの定着装置でのシート搬送速度の方が遅くなるようにする。このようにラミネートモードでの定着速度を遅くすることにより、画像形成モードにおける定着装置でのシート搬送速度を用いる場合よりも、ラミネートフィルムに対する加圧・加熱を良好に行える。よって、ラミネートフィルムの接着性を向上させ、ラミネート処理を改善することができる。画像形成モードにおけるシート搬送速度と同等であれば搬送速度が速すぎてラミネートフィルムに十分に熱が伝わらず十分な接着強度が得られなかったのである。
【0053】
(態様2)
態様1に記載の画像形成装置において、前記低速の程度は50%以下が好ましい。
(態様3)
態様2に記載の画像形成装置において、前記低速の程度は30%以下であることが一層好ましい。低速であるほど、ラミネートフィルムの接着性をより向上させることができる。
【0054】
(態様4)
態様1乃至3の何れか一に記載の画像形成装置において、ラミネートモードにおける定着装置の搬送速度は、ラミネートモードにおける、シート先端が定着装置に到達するまでの期間、および、シートの後端が定着装置を抜けた後の期間の少なくとも一部の期間のシート搬送部材の搬送速度よりも低速である。つまり、ラミネートフィルムを通紙する場合、定着装置(転写装置も用紙挟持状態であれば、定着装置及び転写装置)の線速度は、これら以外の搬送ローラなどの搬送部材の線速度に比べて低速である。
(態様5)
態様4に記載の画像形成装置において、前記低速の程度は50%以下である。
この態様4や5によれば、ラミネートモードにおける、シート先端が定着装置に到達するまでの期間、および、シートの後端が定着装置を抜けた後の期間の少なくとも一部の期間は、ラミネートモードにおける定着装置の搬送速度よりも高速であり、処理スピードをその分速くできる。
【0055】
(態様6)
態様1乃至5の何れか一に記載の画像形成装置において、シート搬送方向で定着装置より上流側と下流側のシート搬送部材の少なくとも一部のシート搬送部材については、駆動源からの駆動伝達系に駆動伝達接断切替手段を設けた。
(態様7)
態様6に記載の画像形成装置において、前記定着装置で搬送されているシートが対向している箇所の前記シート搬送部材については前記定着装置で搬送されているシートが対向している期間、前記駆動伝達接断切替手段によって駆動伝達を遮断する。
これら、態様6や7によれば、定着装置で搬送されているシートが対向している箇所の前記シート搬送部材については前記定着装置で搬送されているシートが対向している期間、前記駆動伝達接断切替手段によって駆動伝達を遮断し、シートを定着装置によって搬送させることができる。例えば、転写ローラ、定着ローラ、冷却加圧ローラに挟持されている間は転写ローラ、定着ローラ、冷却加圧ローラの駆動力のみで搬送されることで、ラミネートフィルムを問題無く搬送することが可能となる。よって、駆動伝達接断切替手段を設けるシート搬送部材のモータとしては廉価なモータを使用できる。
【0056】
(態様8)
態様1乃至7の何れか一に記載の画像形成装置において、定着装置よりもシート搬送方向下流側に冷却加圧ローラを設けた。
(態様9)
態様8に記載の画像形成装置において、前記冷却加圧ローラは両方とも弾性層を備えたローラの対であり、軸間距離は前記画像形成モードとラミネートモードとで同じである。
(態様10)
態様8又は9に記載の画像形成装置において、
前記冷却加圧ローラは少なくとも一方が弾性層を備えたローラの対であり、普通紙を挟持するときのニップ幅が1mm以下であり、表裏にラミネートフィルムを備えたシートを挟持するときのニップ幅が1mm以上かつ3mm以下の範囲内である。
(態様11)
態様8乃至10の何れか一に記載の画像形成装置において、前記冷却加圧ローラは表層が離型層である。
これら態様8乃至11によれば、波打ちやフィルムへのキズやカールの発生を抑制できる。これは次の理由による。ローラの軸間距離は印刷モード、記録媒体種類によらず一定であり、記録媒体の厚さに応じて圧力が変わる。通常線速の普通紙を印刷する場合には面圧が小さくなり、駆動モータのトルクが上昇することはない。一方ラミネート時は大きな面圧となることでラミネートフィルムの波打ちを低減することができる。また、冷却加圧ローラの線速を定着と比べてやや増速させて引っ張ることで、フィルムの波打ちをより低減させる。厚いフィルムが通過するときだけ弾性層が変形して線速が増速する。特に、態様11によれば、画像面のトナー付着を低減させることができる。
【0057】
(態様12)
態様1乃至11の何れか一に記載の画像形成装置において、前記定着装置を通過したシートを排出する少なくとも二箇所の排紙箇所が設定されており、前記ラミネートモードでは比較的定着装置からの搬送経路が長い方の排紙箇所に排出する。これによれば、ラミネートフィルムのカールを低減させることができる。
【符号の説明】
【0058】
3 :給紙ローラ
3a :クラッチ
3b :駆動モータ
4 :レジストローラ対
4a :クラッチ
5 :二次転写ローラ
5a :減速機
5b :駆動モータ
7 :排紙ローラ対
7a :クラッチ
8 :露光装置
9 :トナーボトル
10 :中間転写ベルト
11 :支持ローラ
12 :一次転写装置
17 :排紙ローラ対
20 :感光体ドラム
30 :帯電ローラ
40 :現像装置
50 :クリーニング装置
60 :給紙装置
60a :カセット
60b :カセット
61 :手差しトレイ
62 :給紙ローラ
70 :クリーニング装置
80 :定着装置
80a :減速機
80b :駆動モータ
81 :定着スリーブ
82 :加圧ローラ
83 :熱源
84 :ニップ形成部材
85 :支持部材
86 :反射部材
90 :カール矯正装置
91 :画像面側ローラ
92 :非画像面側ローラ
93 :ガイド板
100 :プリンタ
200 :スキャナ
210 :空間
220 :胴内中間トレイ
230 :切替爪
300 :制御部
310 :操作パネル
Lb :露光光
N :ニップ部
S :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2016-161744号公報
図1
図2
図3
図4