(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082889
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230608BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230608BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
H01L21/302 103
C23C16/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196876
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】大友 洋
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084CC08
2G084CC33
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH06
2G084HH08
2G084HH15
2G084HH20
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH24
2G084HH52
4K030EA04
4K030GA02
4K030KA18
4K030KA20
4K030KA30
4K030KA39
4K030KA41
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB28
5F004BD04
5F004CB06
5F004CB07
(57)【要約】
【課題】プラズマ生成時に生成される下部電極に向かうイオンのエネルギーを好適に調節する技術を提供する。
【解決手段】一つの例示的実施形態においてプラズマ処理装置が提供される。高周波電源は上部電極に電気的に接続され上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するように構成される。第1の計測器は上部電極の電位波形を測定するように構成される。第2の計測器は下部電極の電位波形を測定するように構成される。検出器は第1の計測器によって測定された第1の電位波形から第2の計測器によって測定された第2の電位を差し引いて得られる電圧波形を検出する。インピーダンス調節装置は下部電極のインピーダンスを調節するように構成される。制御装置は検出器によって検出された電圧波形に基づいて下部電極のインピーダンスを調節するようにインピーダンス調節装置を制御するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれる下部電極と、
前記チャンバ内に設けられ前記下部電極に対向するように配置された上部電極と、
前記上部電極及び前記下部電極の間に処理ガスを供給するように構成されたガス供給部と、
前記上部電極に電気的に接続され該上部電極に高周波電圧を印加することによって前記処理ガスのプラズマを生成するように構成された高周波電源と、
前記上部電極の電位波形を測定するように構成された第1の計測器と、
前記下部電極の電位波形を測定するように構成された第2の計測器と、
前記第1の計測器によって測定された第1の電位波形から前記第2の計測器によって測定された第2の電位を差し引いて得られる電圧波形を検出するように構成された検出器と、
前記下部電極のインピーダンスを調節するように構成されたインピーダンス調節装置と、
前記検出器によって検出された前記電圧波形に基づいて前記下部電極のインピーダンスを調節するように前記インピーダンス調節装置を制御するように構成された制御装置と、
を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電圧波形のうち正電位側のピーク値を低減するように前記下部電極のインピーダンスを調節するように前記インピーダンス調節装置を制御する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記インピーダンス調節装置は、キャパシタ及びインダクタを有し、
前記キャパシタのキャパシタンス及び前記インダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、前記制御装置による制御を受け、
前記キャパシタ及び前記インダクタは、電気的に直列に接続され、
前記キャパシタは、前記下部電極に電気的に接続され、
前記インダクタは、前記キャパシタを介して前記下部電極に電気的に接続されている、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記インピーダンス調節装置は、第1のキャパシタ、第2のキャパシタ、及びインダクタを有し、
前記第1のキャパシタの第1のキャパシタンス、前記第2のキャパシタの第2のキャパシタンス、及び前記インダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、前記制御装置による制御を受け、
前記第1のキャパシタ及び前記インダクタは、電気的に直列に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記下部電極に電気的に接続され、
前記インダクタは、前記第1のキャパシタを介して前記下部電極に電気的に接続され、
前記第2のキャパシタ及び前記インダクタは、前記第1のキャパシタを介して前記下部電極に、電気的に並列に接続されている、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記インピーダンス調節装置は、前記下部電極に対して電気的に並列に接続された複数の電気回路を有し、
前記複数の電気回路のそれぞれは、キャパシタ及びインダクタを含み、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記キャパシタのキャパシタンス及び前記インダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、前記制御装置による制御を受け、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記キャパシタ及び前記インダクタは、電気的に直列に接続され、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記キャパシタは、前記下部電極に電気的に接続され、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記インダクタは、前記キャパシタを介して前記下部電極に電気的に接続されている、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記インピーダンス調節装置は、前記下部電極に対して電気的に並列に接続された複数の電気回路を有し、
前記複数の電気回路のそれぞれは、第1のキャパシタ、第2のキャパシタ、及びインダクタを有し、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記第1のキャパシタのキャパシタンス、前記第2のキャパシタのキャパシタンス、及び前記インダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、前記制御装置による制御を受け、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記第1のキャパシタ及び前記インダクタは、電気的に直列に接続され、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記第1のキャパシタは、前記下部電極に電気的に接続され、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記インダクタは、前記第1のキャパシタを介して前記下部電極に電気的に接続され、
前記複数の電気回路のそれぞれにおいて、前記第2のキャパシタ及び前記インダクタは、前記第1のキャパシタを介して前記下部電極に、電気的に並列に接続されている、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記複数の電気回路のそれぞれは、互いに異なるキャパシタンスの前記キャパシタ、及び、互いに異なるインダクタンスの前記インダクタを有する、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記複数の電気回路のそれぞれは、互いに異なるキャパシタンスの前記第1のキャパシタ、互いに異なるキャパシタンスの前記第2のキャパシタ、及び、互いに異なるインダクタンスの前記インダクタを有する、
請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理が、基板処理の一種として行われている。プラズマ処理において、基板は、高周波によってチャンバ内で生成されたプラズマからの化学種により処理される。プラズマ中の化学種は、イオン及びラジカルを含む。ステージ上の基板は、高周波によって与えられるイオンエネルギーによって損傷を受け得る。イオンエネルギーは、下部電極(下部電極を有するステージ)のインピーダンスの値に応じて増減し得る。特許文献1には、高周波電源と高周波電源の負荷側とインピーダンスを整合させて高周波電源への反射波を抑制するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ生成時に生成される下部電極に向かうイオンのエネルギーを好適に調節する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと上部電極とガス供給部と高周波電源と第1の計測器と第2の計測器と検出器とインピーダンス調節装置と制御装置とを備える。下部電極は、チャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれ得る。上部電極は、チャンバ内に設けられ下部電極に対向するように配置され得る。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するように構成され得る。高周波電源は、上部電極に電気的に接続され上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するように構成され得る。第1の計測器は、上部電極の電位波形を測定するように構成され得る。第2の計測器は、下部電極の電位波形を測定するように構成され得る。検出器は、第1の計測器によって測定された第1の電位波形から第2の計測器によって測定された第2の電位を差し引いて得られる電圧波形を検出し得る。インピーダンス調節装置は、下部電極のインピーダンスを調節するように構成され得る。制御装置は、検出器によって検出された電圧波形に基づいて下部電極のインピーダンスを調節するようにインピーダンス調節装置を制御するように構成され得る。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマ生成時に生成される下部電極に向かうイオンのエネルギーを好適に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す図である。
【
図2】一例のインピーダンス調節装置の構成を示す図である。
【
図3】一例のインピーダンス調節装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと上部電極とガス供給部と高周波電源と第1の計測器と第2の計測器と検出器とインピーダンス調節装置と制御装置とを備える。下部電極は、チャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれ得る。上部電極は、チャンバ内に設けられ下部電極に対向するように配置され得る。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するように構成され得る。高周波電源は、上部電極に電気的に接続され上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するように構成され得る。第1の計測器は、上部電極の電位波形を測定するように構成され得る。第2の計測器は、下部電極の電位波形を測定するように構成され得る。検出器は、第1の計測器によって測定された第1の電位波形から第2の計測器によって測定された第2の電位を差し引いて得られる電圧波形を検出するように構成され得る。インピーダンス調節装置は、下部電極のインピーダンスを調節するように構成され得る。制御装置は、検出器によって検出された電圧波形に基づいて下部電極のインピーダンスを調節するようにインピーダンス調節装置を制御するように構成され得る。
【0010】
したがって、上部電極の第1の電位波形から下部電極の第2の電位波形を差し引いて得られる電圧波形に応じて下部電極のインピーダンスが調節され、よって、プラズマ生成時に生成される下部電極に向かうイオンのエネルギーが調節され得る。イオンにエネルギーを提供する下部電極上のシース電圧が高い相関性をもって上部電極及び下部電極の間の電圧に応じて増減するので、下部電極に流れる電流に基づいて下部電極のインピーダンスを調節する場合よりもイオンのエネルギーの最適化が可能となる。特に、より低い下部電極上のシース電圧の調節が可能となるので、より低いエネルギー領域におけるイオンのエネルギーの調節が、高い精度で行える。また、上部電極及び下部電極の電極間の電圧波形が用いられるので、それぞれの電極に複数の電源が接続されたプラズマ処理装置にも、上記構成が適用可能となる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、制御装置は、電圧波形のうち正電位側のピーク値を低減するように下部電極のインピーダンスを調節するようにインピーダンス調節装置を制御し得る。
【0012】
一つの例示的実施形態において、インピーダンス調節装置は、キャパシタ及びインダクタを有し得る。キャパシタのキャパシタンス及びインダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置による制御を受け得る。キャパシタ及びインダクタは、電気的に直列に接続され得る。キャパシタは、下部電極に電気的に接続され得る。インダクタは、キャパシタを介して下部電極に電気的に接続され得る。
【0013】
一つの例示的実施形態において、インピーダンス調節装置は、第1のキャパシタ、第2のキャパシタ、及びインダクタを有し得る。第1のキャパシタの第1のキャパシタンス、第2のキャパシタの第2のキャパシタンス、及びインダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置による制御を受け得る。第1のキャパシタ及びインダクタは、電気的に直列に接続され得る。第1のキャパシタは、下部電極に電気的に接続され得る。インダクタは、第1のキャパシタを介して下部電極に電気的に接続され得る。第2のキャパシタ及びインダクタは、第1のキャパシタを介して下部電極に、電気的に並列に接続され得る。
【0014】
一つの例示的実施形態において、インピーダンス調節装置は、下部電極に対して電気的に並列に接続された複数の電気回路を有し得る。複数の電気回路のそれぞれは、キャパシタ及びインダクタを含み得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、キャパシタのキャパシタンス及びインダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置による制御を受け得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、キャパシタ及びインダクタは、電気的に直列に接続され得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、キャパシタは、下部電極に電気的に接続され得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、インダクタは、キャパシタを介して下部電極に電気的に接続され得る。
【0015】
一つの例示的実施形態において、インピーダンス調節装置は、下部電極に対して電気的に並列に接続された複数の電気回路を有し得る。複数の電気回路のそれぞれは、第1のキャパシタ、第2のキャパシタ、及びインダクタを有し得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、第1のキャパシタのキャパシタンス、第2のキャパシタのキャパシタンス、及びインダクタのインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置による制御を受け得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、第1のキャパシタ及びインダクタは、電気的に直列に接続され得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、第1のキャパシタは、下部電極に電気的に接続され得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、インダクタは、第1のキャパシタを介して下部電極に電気的に接続され得る。複数の電気回路のそれぞれにおいて、第2のキャパシタ及びインダクタは、第1のキャパシタを介して下部電極に、電気的に並列に接続され得る。
【0016】
一つの例示的実施形態において、複数の電気回路のそれぞれは、互いに異なるキャパシタンスのキャパシタ、及び、互いに異なるインダクタンスのインダクタを有し得る。
【0017】
一つの例示的実施形態において、複数の電気回路のそれぞれは、互いに異なるキャパシタンスの第1のキャパシタ、互いに異なるキャパシタンスの第2のキャパシタ、及び、互いに異なるインダクタンスのインダクタを有し得る。
【0018】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間を提供している。チャンバ10は、チャンバ本体12を含み得る。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。チャンバ10の内部空間は、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、アルミニウムといった金属から形成されている。チャンバ本体12は、電気的に接地されている。なお、チャンバ本体12の側壁は、基板Wが搬送される際にそこを通過する通路を提供していてもよい。また、この通路を開閉するために、ゲートバルブがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられていてもよい。
【0019】
プラズマ処理装置1は、基板支持部14を更に備えている。基板支持部14は、チャンバ10の内部に設置されている。基板支持部14は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板支持部14は、本体を有している。基板支持部14の本体は、例えば窒化アルミニウムから形成されており、円盤形状を有し得る。基板支持部14は、支持部材16によって支持されていてもよい。支持部材16は、チャンバ10の底部から上方に延在している。基板支持部14は、下部電極18を含んでいる。基板支持部14は、チャンバ10(チャンバ本体12)内に設けられ基板Wが載置されるように構成され得る。下部電極18は、基板支持部14に含まれており、基板支持部14の本体の中に埋め込まれている。
【0020】
プラズマ処理装置1は、上部電極20を更に備えている。上部電極20は、チャンバ10内に設けられ、基板支持部14の上方に設けられている。上部電極20は、下部電極18に対向するように配置されている。上部電極20は、チャンバ10の天部を構成している。上部電極20は、チャンバ本体12と電気的に分離されている。一実施形態において、上部電極20は、絶縁部材21を介してチャンバ本体12の上部に固定されている。
【0021】
一実施形態において、上部電極20は、シャワーヘッドとして構成されている。上部電極20は、その内部においてガス拡散空間20dを提供している。また、上部電極20は、複数のガス孔20hを更に提供している。複数のガス孔20hは、ガス拡散空間20dから下方に延びており、チャンバ10の内部空間に向けて開口している。即ち、複数のガス孔20hは、ガス拡散空間20dとチャンバ10の内部空間を接続している。
【0022】
プラズマ処理装置1は、ガス供給部22を更に備えている。ガス供給部22は、チャンバ10内にガスを供給するように構成されている。ガス供給部22は、上部電極20及び下部電極18の間に処理ガスを供給するように構成されている。ガス供給部22は、配管23を介してガス拡散空間20dに接続されている。ガス供給部22は、一つ以上のガスソース、一つ以上の流量制御器、及び一つ以上の開閉バルブを有していてもよい。一つ以上のガスソースの各々は、対応の流量制御器及び対応の開閉バルブを介して、配管23に接続される。
【0023】
一実施形態において、ガス供給部22は、成膜ガスを供給してもよい。即ち、プラズマ処理装置1は、成膜装置であってもよい。成膜ガスを用いて基板W上に形成される膜は、絶縁膜であってもよい。別の実施形態において、ガス供給部22は、エッチングガスを供給してもよい。即ち、プラズマ処理装置1は、プラズマエッチング装置であってもよい。
【0024】
プラズマ処理装置1は、排気装置24を更に備えている。排気装置24は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプ又はドライポンプのような真空ポンプを含んでいる。排気装置24は、チャンバ本体12の側壁に設けられた排気口12eから排気管を介してチャンバ10の内部空間に接続されている。
【0025】
プラズマ処理装置1は、高周波電源26を更に備えている。高周波電源26は、上部電極20に整合器28を介して電気的に接続されている。高周波電源26は、整合器28を含んでいる構成であってもよい。高周波電源26は、上部電極20に高周波電圧を印加することによって、ガス供給部22から上部電極20及び下部電極18の間に供給される処理ガスのプラズマを生成するように構成されている。一実施形態において、高周波電源26は、高周波電力を発生する。高周波電力の周波数は、任意の周波数であってもよい。高周波電力の周波数は、13.56MHz以下であってもよい。高周波電力の周波数は、2MHz以下であってもよい。高周波電力の周波数は、20kHz以上であってもよい。
【0026】
高周波電源26は、整合器28を介して、上部電極20に接続されている。高周波電源26からの高周波電力は、整合器28を介して上部電極20に供給される。整合器28は、高周波電源26の負荷のインピーダンスを、高周波電源26の出力インピーダンスに整合させる整合回路を有している。
【0027】
別の実施形態において、高周波電源26は、直流電圧のパルスを周期的に上部電極20に印加するように構成されていてもよい。高周波電源26からの直流電圧のパルスが上部電極20に印加される周期を規定する周波数は、例えば10kHz以上、10MHz以下である。なお、高周波電源26が直流電圧のパルスを周期的に上部電極20に印加するように構成されている場合には、プラズマ処理装置1は整合器28を備えていなくてもよい。
【0028】
プラズマ処理装置1は、リング電極30を更に備えている。リング電極30は、環形状を有する。リング電極30は、周方向に沿って配列された複数の電極に分割されていてもよい。リング電極30は、基板支持部14の外周を囲むように、基板支持部14の周囲に設けられている。リング電極30と基板支持部14の外周との間には間隙が設けられているが、当該間隔は設けられていなくてもよい。リング電極30は、電気的に接地されている。
【0029】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、ガス供給部32を更に備えている。ガス供給部32は、リング電極30と基板支持部14との間の間隙を通って上方にパージガスが流れるようにパージガスを供給する。ガス供給部32は、ガス導入ポート12pを介してチャンバ10内にパージガスを供給する。図示された例では、ガス導入ポート12pは、基板支持部14の下方においてチャンバ本体12の壁に設けられている。ガス供給部32によって供給されるパージガスは、不活性ガスであってもよく、例えば希ガスであってもよい。
【0030】
プラズマ処理装置1において基板Wに対するプラズマ処理が行われる際には、処理ガスが、ガス供給部22からチャンバ10内に供給される。そして、高周波電源26からの高周波電力又は直流電圧のパルスが上部電極20に与えられる。その結果、プラズマが、チャンバ10内で処理ガスから生成される。基板支持部14上の基板Wは、生成されたプラズマからの化学種によって処理される。例えば、プラズマからの化学種は、基板W上に膜を形成する。或いは、プラズマからの化学種は、基板Wをエッチングする。
【0031】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、計測器V1、計測器V2、検出器VM、及びインピーダンス調節装置IAを更に備えている。計測器V1は、上部電極20の電位波形を測定するように構成されている。計測器V2は、下部電極18の電位波形を測定するように構成されている。検出器VMは、計測器V1によって測定された第1の電位波形から計測器V2によって測定された第2の電位を差し引いて得られる電圧波形を検出するように構成されている。インピーダンス調節装置IAは、下部電極18のインピーダンスを調節するように構成されている。
【0032】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、制御装置CNTを更に備えている。制御装置CNTは、検出器VMによって検出された電圧波形に基づいて下部電極18のインピーダンスを調節するようにインピーダンス調節装置IAを制御するように構成されている。制御装置CNTは、検出器VMによって検出された電圧波形のうち正電位側のピーク値を低減するように下部電極18のインピーダンスを調節するようにインピーダンス調節装置IAを制御する。
【0033】
インピーダンス調節装置IAの構成を、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0034】
図2には、一例に係るインピーダンス調節装置IAの構成が示されている。
図2に示すインピーダンス調節装置IAは、電気回路LC1を有する。電気回路LC1は、キャパシタC1及びインダクタL1を有する。キャパシタC1のキャパシタンス及びインダクタL1のインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置CNTによる制御を受け得る。キャパシタC1及びインダクタL1は、電気的に直列に接続されている。キャパシタC1は、下部電極18に電気的に接続されている。インダクタL1は、キャパシタC1を介して下部電極18に電気的に接続されている。
【0035】
図2に示すインピーダンス調節装置IAによれば、キャパシタC1及びインダクタL1が電気的に直列接続された電気回路LC1によって、共振現象によってプラズマを生成する励起周波数付近とDC成分とにおいて基板支持部14を高インピーダンスにできる。電気回路LC1は、LC直列共振回路であるため共振時は低インピーダンスになるが、基板支持部14の寄生容量が電気回路LC1に電気的に並列接続されることになるために、基板支持部14に高インピーダンスが実現される。
【0036】
図3には、一例に係るインピーダンス調節装置IAの構成が示されている。
図3に示すインピーダンス調節装置IAは、電気回路LC2を有する。電気回路LC2は、キャパシタC21、キャパシタC22、及びインダクタL2を有する。キャパシタC21の第1のキャパシタンス、キャパシタC22の第2のキャパシタンス、及びインダクタL2のインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置CNTによる制御を受け得る。キャパシタC21及びインダクタL2は、電気的に直列に接続されている。キャパシタC21及びキャパシタC22は、電気的に直列に接続されている。キャパシタC21、下部電極18に電気的に接続されている。インダクタL2は、キャパシタC21介して下部電極18に電気的に接続されている。キャパシタC22及びインダクタL2は、キャパシタC21を介して下部電極18に、電気的に並列に接続されている。
【0037】
図3に示すインピーダンス調節装置IAによれば、キャパシタC22及びインダクタL2が電気的に並列接続された電気回路LC2によって、DC成分と励起周波数付近とにおいて基板支持部14を高インピーダンスにできる。電気回路LC2のキャパシタC21はDC成分をカットするために設けられている。インピーダンス調節装置IAのLC回路としてLC並列共振回路(インダクタL2及びキャパシタC22のみの回路)を設ける場合がある。この場合、共振現象によってプラズマを生成する励起周波数付近では基板支持部14を高インピーダンスにできるが、DC成分では基板支持部14は低インピーダンスとなる。そこで、電気回路LC2のようにキャパシタC21をLC並列共振回路(インダクタL2及びキャパシタC22のみの回路)の前段に設けることによって、DC成分においても基板支持部14を高インピーダンスにすることができる。
【0038】
インピーダンス調節装置IAは、高周波の重畳又は電源周波数の重畳に対応するために
図2に示す電気回路LC1を複数有し得る。この場合、インピーダンス調節装置IAは、下部電極18に対して電気的に並列に接続された複数の電気回路LC1を有する。複数の電気回路LC1のそれぞれは、キャパシタC1及びインダクタL1を含む。複数の電気回路LC1のそれぞれにおいて、キャパシタC1のキャパシタンス及びインダクタL1のインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置CNTによる制御を受け得る。複数の電気回路LC1のそれぞれにおいて、キャパシタC1及びインダクタL1は、電気的に直列に接続されている。複数の電気回路LC1のそれぞれにおいて、キャパシタC1は、下部電極18に電気的に接続されている。複数の電気回路LC1のそれぞれにおいて、インダクタL1は、キャパシタC1を介して下部電極18に電気的に接続されている。複数の電気回路LC1のそれぞれは、互いに異なるキャパシタンスのキャパシタC1、及び、互いに異なるインダクタンスのインダクタL1を有し得る。
【0039】
例えばインピーダンス調節装置IAが互いに電気的に並列接続された二つの電気回路LC1を有する場合には、二つの周波数で基板支持部14を高インピーダンスにし得る。例えばインピーダンス調節装置IAが互いに電気的に並列接続された三つの電気回路LC1を有する場合には、三つの周波数で基板支持部14を高インピーダンスにし得る。インピーダンス調節装置IAが互いに電気的に並列接続された電気回路LC1を更に多く有する場合には、更に多くの周波数で基板支持部14を高インピーダンスにし得る。
【0040】
インピーダンス調節装置IAは、高周波の重畳又は電源周波数の重畳に対応するために
図3に示す電気回路LC2を複数有し得る。この場合、インピーダンス調節装置IAは、下部電極18に対して電気的に並列に接続された複数の電気回路LC2を有する。複数の電気回路LC2のそれぞれは、キャパシタC21、キャパシタC22、及びインダクタL2を有する。複数の電気回路LC2のそれぞれにおいて、キャパシタC21キャパシタンス、キャパシタC22キャパシタンス、及びインダクタL2のインダクタンスのうち少なくとも一つは、可変であり、制御装置CNTによる制御を受け得る。複数の電気回路LC2のそれぞれにおいて、キャパシタC21及びインダクタL2は、電気的に直列に接続されている。複数の電気回路LC2において、キャパシタC21及びキャパシタC22は、電気的に直列に接続されている。複数の電気回路LC2のそれぞれにおいて、キャパシタC21は、下部電極18に電気的に接続されている。複数の電気回路LC2のそれぞれにおいて、インダクタL2は、キャパシタC21を介して下部電極18に電気的に接続されている。複数の電気回路LC2のそれぞれにおいて、キャパシタC22及びインダクタL2は、キャパシタC21を介して下部電極18に、電気的に並列に接続されている。複数の電気回路LC2のそれぞれは、互いに異なるキャパシタンスのキャパシタC21、互いに異なるキャパシタンスのキャパシタC22、及び、互いに異なるインダクタンスのインダクタL2を有し得る。
【0041】
例えばインピーダンス調節装置IAが互いに電気的に並列接続された二つの電気回路LC2を有する場合には、二つの周波数で基板支持部14を高インピーダンスにし得る。例えばインピーダンス調節装置IAが互いに電気的に並列接続された三つの電気回路LC2を有する場合には、三つの周波数で基板支持部14を高インピーダンスにし得る。インピーダンス調節装置IAが互いに電気的に並列接続された電気回路LC2を更に多く有する場合には、更に多くの周波数で基板支持部14を高インピーダンスにし得る。
【0042】
以上のように、インピーダンス調節装置IAについて、
図2、
図3のそれぞれに示すLC回路(電気回路LC1、電気回路LC2)を用いることで、共振現象によってプラズマを生成する励起周波数付近における基板支持部14のインピーダンスを調整できる。一般的に下部電極18を含む基板支持部14を高インピーダンスにするとプラズマが上部電極20やチャンバ本体12の側壁に集中するため、基板支持部14に向かうイオンのエネルギーを低く調整することができる。この時、下部電極18を電気的に開放状態にすることで下部電極18のインピーダンスを無限大にできるが、下部電極18を含む基板支持部14に発生した寄生容量によって基板支持部14が電気的にGNDに結合されてしまう。この場合、基板支持部14に向かうイオンのエネルギーを低く調整するという望んだ効果を得ることができないことがある。このため、LC回路(電気回路LC1、電気回路LC2)の一部を可変できるようにすることで、基板支持部14の寄生容量を含めた効果的な基板支持部14のインピーダンス調整を成し得る。また、
図3に示す電気回路LC2の場合、基板支持部14の寄生容量に電気的に並列になるようにキャパシタC21をLC回路と下部電極18との間に設置することで、DCバイアスをカットすることができる。なお、インピーダンス調節装置IAの構成は、
図2、
図3のそれぞれに示す構成に限られず、同様の効果を奏し得る構成であればインピーダンス調節装置IAは他の構成であってもよい。
【0043】
上記した構成を有するプラズマ処理装置1によれば、上部電極20の第1の電位波形から下部電極18の第2の電位波形を差し引いて得られる電圧波形に応じて下部電極18のインピーダンスが調節される。これにより、プラズマ生成時に生成される下部電極18に向かうイオンのエネルギーが調節され得る。イオンにエネルギーを提供する下部電極18上のシース電圧が高い相関性をもって上部電極20及び下部電極18の間の電圧に応じて増減する。よって、下部電極18に流れる電流に基づいて下部電極18のインピーダンスを調節する場合よりもイオンのエネルギーの最適化が可能となる。特に、より低い下部電極18上のシース電圧の調節が可能となるので、より低いエネルギー領域におけるイオンのエネルギーの調節が、高い精度で行える。また、上部電極20及び下部電極18の電極間の電圧波形が用いられるので、それぞれの電極に複数の電源が接続されたプラズマ処理装置にも、上記構成が適用可能となる。
【0044】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0045】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0046】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、12…チャンバ本体、12e…排気口、12p…ガス導入ポート、14…基板支持部、16…支持部材、18…下部電極、20…上部電極、20d…ガス拡散空間、20h…ガス孔、21…絶縁部材、22…ガス供給部、23…配管、24…排気装置、26…高周波電源、28…整合器、30…リング電極、32…ガス供給部、C1…キャパシタ、C21…キャパシタ、C22…キャパシタ、CNT…制御装置、IA…インピーダンス調節装置、L1…インダクタ、L2…インダクタ、LC1…電気回路、LC2…電気回路、V1…計測器、V2…計測器、VM…検出器、W…基板。