IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

特開2023-83016基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システム
<>
  • 特開-基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083016
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システム
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/00 20060101AFI20230608BHJP
   C10G 31/09 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C10L1/00
C10G31/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197096
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 賢司
【テーマコード(参考)】
4H013
4H129
【Fターム(参考)】
4H013AA03
4H013AA05
4H129AA02
4H129CA17
4H129DA10
4H129NA01
4H129NA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得る、基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システムを提供すること。
【解決手段】廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を複数の貯蔵タンクのいずれか一の貯蔵タンクに分配し、貯蔵する原料油貯蔵工程、並びに工程(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする工程及び工程(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする工程から選択される少なくとも一の工程を有する基油調製工程を有する基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を複数の貯蔵タンクのいずれか一の貯蔵タンクに分配し、貯蔵する原料油貯蔵工程、及び
以下の工程(1)及び工程(2)から選択される少なくとも一の工程を有する基油調製工程;
工程(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする工程
工程(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする工程
を有する基油の製造方法。
【請求項2】
前記原料油の性状が、硫黄分及び総発熱量から選ばれる少なくとも一の性状である請求項1に記載の基油の製造方法。
【請求項3】
さらに、前記原料油を精製処理する請求項1又は2に記載の基油の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記貯蔵タンクに貯蔵した原料油を精製処理する請求項1~3のいずれか1項に記載の基油の製造方法。
【請求項5】
前記精製処理が、濾過処理、脱塩処理、脱水処理、脱硫処理、低灰分化処理、スラッジ低減処理及び分留処理から選ばれる少なくとも一の処理である、請求項3又は4に記載の基油の製造方法。
【請求項6】
さらに、廃油を処理して再生油とする処理工程を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の基油の製造方法。
【請求項7】
前記基油調製工程において、添加剤を混合して基油とする請求項1~6のいずれか1項に記載の基油の製造方法。
【請求項8】
前記基油が、潤滑油用基油、肥料用基油、石鹸用基油又は塗料用基油に用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の基油の製造方法。
【請求項9】
前記基油が、直火使用工業炉の燃料油、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油から選ばれる燃料油に用いられる請求項1~7のいずれか1項に記載の基油の製造方法。
【請求項10】
前記基油が、船舶燃料油に用いられる請求項1~7のいずれか1項に記載の基油の製造方法。
【請求項11】
廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を分配し、貯蔵する複数の貯蔵タンクを有する原料油貯蔵設備と、
以下の設備(1)及び設備(2)から選択される少なくとも一の設備を有する基油調製設備;
設備(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする設備
設備(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする設備
と、を備える基油の製造装置。
【請求項12】
さらに、前記原料油を精製処理する精製設備を備える請求項11に記載の基油の製造装置。
【請求項13】
さらに、前記貯蔵タンクに貯蔵した原料油を精製処理する精製設備を備える請求項11又は12に記載の基油の製造装置。
【請求項14】
さらに、廃油を処理して再生油とする処理設備を備える請求項11~13のいずれか1項に記載の基油の製造装置。
【請求項15】
廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油を受け入れる、原料油受入設備、
前記原料油の性状に基づき、前記原料油を分配し、貯蔵する複数の貯蔵タンクを有する原料油貯蔵設備と、
以下の設備(1)及び設備(2)から選択される少なくとも一の設備を有する基油調製設備;
設備(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする設備
設備(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする設備
と、を備える基油製造装置、及び
前記基油調製設備から供給された基油を出荷する出荷設備、
を備える、基油の製造及び物流の複合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、我が国は大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動により成長を遂げてきたが、膨大な量の廃棄物が廃棄されており、最終処分場の用地のひっ迫、また廃棄物による環境への影響に対する懸念が年々高まっている。廃棄物としては、広く印刷情報用紙、段ボール、新聞紙等の紙類、石膏ボード、繊維板等の各種建材、ガラスビン、ペットボトル、衣料まで様々である。そして、循環型経済システムの構築を目的とし、各種の廃棄物、リサイクル関連法の制定とともに、廃棄物のリサイクルが進められている。
【0003】
廃棄物として、潤滑油、廃プラ油、食用油等の油類(「廃油」とも称される。)も挙げられる。これらの廃油は、これまでその大半は燃焼して廃棄されてきた。例えば、特許文献1では、船舶、機械等から排出される廃油を、無酸素状態としながら熱分解点以上の温度に加熱して処理する方法が開示されている。
また、廃油を有効活用する方法として、特許文献2では、廃油から不純物を除去した清浄油と、再生油とを混合して再生燃料油とする廃油処理再資源化システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-261437号公報
【特許文献2】特開2004-137360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃油、廃油を再生した再生重油等の再生油の種類は様々であり、またこれらをリサイクルして基油に使用する際に所望される性状も様々である。これらの廃油、再生油の利用先は、廃棄物による環境への影響を低減することを考慮すれば、多ければ多いほど望ましい。これらの廃油、再生油の利用先としては、例えば潤滑油用基油、肥料用基油(廃油肥料用等)、石鹸用基油(リサイクル石鹸用等)、塗料用基油(廃油性塗料用等)、また直火使用工業炉の燃料油、ボイラー燃料油及びディーゼル燃料油等の各種燃料油等の各種基油が考えられる。
【0006】
廃油及び再生油を再生重油として使用する場合、JIS K2170:2013に規定される再生重油の性状を満足する必要がある。当該再生重油の性状として、引火点、50℃動粘度、流動点、灰分、硫黄分、塩素分、水分及び総発熱量が規定されており、引火点は70℃以上、50℃動粘度は50mm/s以下、流動点は-10℃以下、及び総発熱量は41.8MJ/kg以上であり、A重油及びC重油と同程度の性状を有している。そのため、再生重油の有望な供給先として、A重油及びC重油の供給先であり、かつ大量の消費が見込める、直火使用工業炉の燃料油、ボイラー燃料油及びディーゼル燃料油等の燃料油が検討されている。
【0007】
ところで、再生重油の有望な供給先について、上記燃料油の一つとして、船舶燃料油も考えられる。再生重油を船舶燃料油に適用する場合、次のように検討することができる。
再生重油の性状として、硫黄分濃度は0.6質量%以下であることが規定されている。船舶燃料については近年、環境汚染防止が世界的な重要課題となっていることから、国際海事機構(IMO)は、大気汚染防止対策の一環として、2020年から全ての船舶に対して燃料油中の硫黄分濃度を3.5質量%から0.5質量%以下とするよう、規制を強化している。
硫黄分濃度について、再生重油の基準値として船舶燃料に対する規制値を若干超えるものの、再生重油は通常基準値に余裕をもった処理が行われるものであるし、仮に規制値を超えたものであっても、軽微な脱硫処理で済むことが予想される。また、A重油及びC重油は船舶燃料油として使用されてきたことを考慮しても、再生重油は、船舶燃料油としての利用は十分に可能である。
【0008】
他方、再生重油の性状として、水分の含有量は1.0質量%以下(再生重油1種)又は5.0質量%以下(再生重油2種)、また灰分の含有量は1.0質量%以下であり、A重油及びC重油に比べて多いため、水分の除去、灰分の除去といった処理が必要になる場合が想定される。
【0009】
また、再生重油は、上記のように性状についての規定が存在するが、廃油及びこれを再生した再生油の性状については、どこから排出される廃油であるか、またどこから排出される廃油を再生したものかによって、大きく性状は異なるため、一概にはいえない。そして、そのような廃油及び再生油をリサイクルするには、異なる性状に応じた処理が必要になる場合がある。
【0010】
特許文献1に開示される方法は、焼却処分であるため、廃棄物のリサイクルはできず、環境負荷を増大するものである。
また、特許文献2に開示される廃油処理再資源化システムは、濾過による不純物の除去により廃油を清浄油とし、再生油等と混合することで、廃油を再資源化するというものである。しかし、複数種の廃油を受け入れることは想定されておらず、一のシステムにおいて様々な廃油及び再生油に対応することはできない。また、濾過による不純物の除去だけでは、様々な用途に応じた性状に合致する基油を製造することはできない。そのため、特許文献2に開示される技術では、効率的に、再生重油だけでなく、広く廃油及び再生油に対応し、かつ様々な用途にリサイクルすることは極めて困難である。よって、従来技術では、単なるリサイクルに留まることなく、需要に応じたリサイクルに対応する要望に十分に対応できているとはいえない状況であった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得る、基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システムを提供する。
1.廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を複数の貯蔵タンクのいずれか一の貯蔵タンクに分配し、貯蔵する原料油貯蔵工程、及び
以下の工程(1)及び工程(2)から選択される少なくとも一の工程を有する基油調製工程;
工程(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする工程
工程(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする工程
を有する基油の製造方法。
2.廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を分配し、貯蔵する複数の貯蔵タンクを有する原料油貯蔵設備と、
以下の設備(1)及び設備(2)から選択される少なくとも一の設備を有する基油調製設備;
設備(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする設備
設備(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする設備
と、を備える基油の製造装置。
3.廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油を受け入れる、原料油受入設備、
前記原料油の性状に基づき、前記原料油を分配し、貯蔵する複数の貯蔵タンクを有する原料油貯蔵設備と、
以下の設備(1)及び設備(2)から選択される少なくとも一の設備を有する基油調製設備;
設備(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする設備
設備(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする設備
と、を備える基油製造装置、及び
前記基油調製設備から供給された基油を出荷する出荷設備、
を備える、基油の製造及び物流の複合システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得る、基油の製造方法、基油の製造装置、並びにこれを備える基油の製造及び物流複合システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の基油の製造方法、基油の製造装置、並びに製造及び物流複合システムを説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、発明の効果を阻害しない範囲において任意に変更して実施し得るものである。
【0016】
[基油の製造方法]
本発明における実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る基油の製造方法は、
廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を複数の貯蔵タンクのいずれか一の貯蔵タンクに分配し、貯蔵する原料油貯蔵工程、及び
以下の工程(1)及び工程(2)から選択される少なくとも一の工程を有する基油調製工程;
工程(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする工程
工程(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする工程
を有する、というものである。
【0017】
廃油及び再生油(以下、これらをあわせて「原料油」とも称する。)を、その性状に基づいて分配及び貯蔵することで、効率的に様々な原料油の供給に対応することが可能となる。さらに、分配及び貯蔵した原料油を必要に応じて混合して調製することで、様々な基油の需要に対応することができる。そして、原料油はその性状に基づいて分配及び貯蔵されているため、所望される基油の性状に調整しやすい。かくして、本実施形態の基油の製造方法は、効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得るものとなる。
以下、本実施形態の基油の製造方法について、図1のフロー図も参照しながら、原料油貯蔵工程から、その詳細について説明する。
【0018】
〔原料油貯蔵工程〕
原料油貯蔵工程は、廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を複数の貯蔵タンクのいずれか一の貯蔵タンクに分配し、貯蔵する工程である。
【0019】
(原料油)
原料油となる廃油及び再生油としては、既述のように様々な種類のものを制限なく受け入れることが可能である。
廃油としては、例えば家庭、レストラン、食品加工工場等から排出される食用油;使用済みの変速機用潤滑油、内燃機(各種エンジン、タービン)用潤滑油、外燃機(各種ボイラ)用潤滑油、金属加工用潤滑油(金属切削油、プレス油、焼入油等を含む。)、その他各種工業用潤滑油等の使用済み潤滑油;変圧器、回路遮断器、蓄電器等の電気機器の絶縁及び冷却に用いられる絶縁油;金属材料の洗浄及び脱脂等に用いられる洗浄油;排気プラスチックを油化して得られる廃プラ油、等が代表的に挙げられる。
【0020】
再生油としては、上記廃油を濾過処理、脱塩処理、脱水処理、脱硫処理、低灰分化処理、スラッジ低減処理及び分留処理等の精製処理をしたものが挙げられる。代表的には、廃油を必要に応じてこれらの精製処理をした、JIS K2170:2013に規定される再生重油、またバイオ再生重油(JIS K2171:2013)等が挙げられる。なお、本実施形態の製造方法で受け入れ得る再生油はこれらの再生重油に限られず、廃油を何らかの処理をしたものであれば、特に制限はない。
【0021】
(原料油の性状)
原料油の性状は、所望の基油に要求される性状とすればよい。よって、本実施形態の基油の製造方法は、様々な基油の需要に対応することができる。
原料油の性状としては、代表的には、引火点、50℃動粘度、流動点、灰分、硫黄分、塩素分、水分、総発熱量、さらには15℃密度、CCAI(Calculated Carbon Aromaticity Index)、曇り点、残留炭素分、飽和分含有量、オレフィン分含有量、芳香族分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量等の性状が挙げられる。本実施形態の製造方法においては、これらの性状から少なくとも一種の性状を、原料油の性状として採用し、当該性状に応じて分配し、貯蔵すればよい。
【0022】
原料油の性状は、例えば所望の基油に要求される性状を採用することができる。そうすることで、所望の基油を調製しやすくなるからである。
例えば、所望の基油が潤滑油用基油である場合は、潤滑油用基油として一般的に要求される、引火点、50℃動粘度、流動点等の少なくとも一種の性状を原料油の性状として、当該性状により分配するとよい。また所望の基油が船舶燃料である場合は、船舶燃料として法的又は一般的に要求される、硫黄分、総発熱量、CCAI(Calculated Carbon Aromaticity Index)等の少なくとも一種の性状を原料油の性状として、当該性状により分配するとよい。
【0023】
(分配し、貯蔵する)
本実施形態の製造方法において、原料油は上記原料油の性状に基づき、複数の貯蔵タンクのいずれか一の貯蔵タンクに分配し、貯蔵する。原料油の性状に基づき分配し、貯蔵することにより、貯蔵タンク内の原料油の性状を容易に把握することができ、所望の基油に要求される性状に応じて、どの貯蔵タンク内の原料油を用いればよいかを容易に判断することができる。
【0024】
分配し、貯蔵する方法については、原料油の性状に基づき行われれば特に制限はない。
例えば、所望の基油が船舶燃料である場合、船舶燃料として法的又は一般的に要求される性状としては、既述のように、硫黄分、総発熱量、CCAI(Calculated Carbon Aromaticity Index)等が挙げられ、硫黄分及び総発熱量から選ばれる少なくとも一の性状とすることが好ましい。この場合、原料油の性状を、特に法的に規定されている硫黄分とし、原料油の硫黄分を、例えば(a1)0.3質量%以下、(b1)0.3質量%超0.5質量%以下、(c1)0.5質量%超0.8質量%以下及び(d1)0.8質量%超と分類し、上記分類条件(a1)~(d1)に対応する各々貯蔵タンクA~Dに、上記分類条件に属する原料油を分配して貯蔵することができる。
【0025】
また、上記の所望の基油が船舶燃料である場合、原料油の性状として、二つの性状、例えば硫黄分及び総発熱量に基づき分配、貯蔵することもできる。この場合、原料の硫黄分を上記(a1)~(d1)の分類条件に分類し、総発熱量を例えば(a2)42.0(MJ/kg)以上、(b2)41.8(MJ/kg)以上42.0(MJ/kg)未満、(c2)41.5(MJ/kg)以上41.8(MJ/kg)未満及び(d2)41.5(MJ/kg)未満と分類する。そして、原料油の性状として最も重要な性状(ここでは、硫黄分とする。)の一の分類条件ごとに貯蔵タンクを設けて、総発熱量については当該一の分類条件に対して少なくとも二つの分類条件を組み合わせて分類すると、貯蔵タンクの数を減らしつつ、適切に分類しやすくなるので、効率的である。
【0026】
上記分類について、一の原料油の性状について、少なくとも2つ以上の分類条件を設定すればよく、効率的に分配し、貯蔵すること、また基油の要求される性状への調整のしやすさ等を考慮すると、好ましくは3つ以上であり、上限として好ましくは6つ以下、より好ましくは5つ以下であり、特に好ましくは4つである。
【0027】
上記分類条件(a1)~(d1)について、硫黄分の法的規制値は既述のように0.5質量%以下となるところ、分類条件(b1)で0.5質量%以下としていることから、分類条件(a1)及び(b1)に属する原料油は法的規制値を満足する原料油であり、分類条件(c1)及び(d1)に属する原料油は法的規制値を満足する原料油ではないことが把握できる。
このように、複数ある分類条件の一の分類条件で法的規制値の数値を用いた条件とすることで、法的規制値を満足する原料油か否かを判断しやすくなる。なお、法的規制値が設定されてない性状で分類する場合は、例えば所望の基油に要求される性状の要求値に代えて分類するとよい。
【0028】
分類条件が2つである場合、法的規制値又は要求値の閾値以上(ここで「以上」は優れていることを意味する。)の分類条件は1つとし、閾値以下(ここで「以下」は劣ることを意味する。)の分類条件は1つとするとよい。また分類条件を4つ以上の偶数個で設定する場合、上記閾値以上の分類条件の個数は分類条件の個数の半分±1個の間とするとよい。例えば、上記分類条件(a1)~(d1)の場合は、分類条件の個数4個の半分の2個が閾値以上の分類条件となっている。このように設定すると、閾値以上及び以下に属する原料油の配合のバリエーションが多くなるため、所望の基油が要求される性状に調整しやすくなる。
また、分類条件が3つである場合、法的規制値又は要求値の閾値以上の分類条件を1又は2つとするとよく、分類条件を5以上の奇数個で設定する場合、上記閾値以上の分類条件の個数は分類条件の個数±1の半分の間とするとよい(例えば、分類条件の個数が5の場合は2~4つとなる。)。
【0029】
上記分類について、より具体的には、上記硫黄分の分類条件(a1)~(d1)及び総発熱量の分類条件(a2)~(d2)を原料油の性状として採用する場合、例えば分類条件(a1)と(a2)又は(b2)とを満たす原料油Aを貯蔵する貯蔵タンクA、分類条件(b1)と(a2)又は(b2)とを満たす原料油Bを貯蔵する貯蔵タンクB、分類条件(c1)と(b2)又は(c2)とを満たす原料油Cを貯蔵する貯蔵タンクC、及び分類条件(d1)と(c2)又は(d2)とを満たす原料油Dを貯蔵する貯蔵タンクDを設けると、貯蔵タンクの数を減らしつつ、適切に原料油を分配することができる。ここで、貯蔵タンクAに分類条件(a1)と(a2)~(c2)とを満たす原料油のように、総発熱量について三つの分類条件に属する原料油を貯蔵するようにしてもよい。
また、上記の例は硫黄分濃度及び総発熱量の分類条件の個数を各々4個としたものであるが、例えば硫黄分濃度の分類条件の個数を4個とし、総発熱量の分類条件の個数を3個として、これらの分類条件を組み合わせてもよい。
【0030】
貯蔵タンクの設置数は、分類条件の個数と同数とすればよく、例えば上記原料油Bの量が多い場合は原料油Bを貯蔵するための貯蔵タンクを増設してもよい。また、上記分類条件に属しない原料油を受け入れる場合は、それに応じて貯蔵タンクを追加して対応することが可能である。
【0031】
原料油の性状は、受け入れ時に性状の情報が分かっていれば当該情報の性状とすればよく、また受け入れ時に性状の情報が不明な場合は、臨時的に受入タンクに受け入れて、受け入れた原料油を分析すればよい。そして、原料油を、分析した原料油の性状に基づき、適切な貯留タンクに分配し、貯留すればよい。
【0032】
(複数の貯蔵タンク)
本実施形態の製造方法では、複数の貯蔵タンクが用いられる(図1には、4つの貯蔵タンクA~Dが示されている。)。複数の貯蔵タンクを用いることで、様々な廃油及び再生油である原料油を、単に受け入れるだけでなく、その性状に基づき、同程度の性状を有する原料油に分配することができるため、原料油を必要に応じて混合して調製することで、様々な基油の需要に容易に対応することができる。
【0033】
貯蔵タンクとしては原料油用のタンクとして用いられるものであれば特に制限なく、汎用品を採用することができる。ただし、原料油を分配し、貯蔵した原料油を基油の調製に用いることを考慮すると、少なくとも受け入れ用のノズル、また排出用のノズルが備えられたタンクであることが好ましい。また、必要に応じてレベル計、固化防止用のヒータ、断熱材等が設けられたものを用いてもよい。
貯蔵タンクの数、大きさ等は、受け入れる原料油の量、原料油の性状に応じた分類条件の個数等に応じて、決定すればよい。
【0034】
また、原料油の種類(性状)によっては、原料油の性状に応じて設けられた既設の貯蔵タンクのいずれにも分類できない原料油を受け入れる場合が生じることがある。このような場合は、必要に応じて貯蔵タンクを追加してもよいし、また受け入れる原料油の性状を変更して、既設の貯蔵タンクで対応してもよい。
【0035】
(処理工程)
本実施形態の製造方法は、さらに廃油を処理して再生油とする処理工程を有してもよい。図1には、処理工程について、廃油が処理工程を経て再生油として貯蔵タンクに分配、貯蔵されることが示されている。
【0036】
本実施形態の製造方法においては、既述のように廃油、これを処理した再生油を受け入れることができるが、廃油を受け入れる場合、例えば食用油には、肉、魚及び野菜くず、揚げかす等の固形物が残存していることがある。原料油を、このような固形物が残存したまま貯蔵タンクに分配、貯蔵すると、配管内及びタンク内に堆積し、配管の閉塞、原料油の品質悪化を招く可能性がある。また、例えば使用済み潤滑油には、金属片等の固形物が残存しており、上記食用油と同様の問題が生じる場合がある。よって、原料油として特に廃油を受け入れる場合には、処理工程を有することが好ましい。
【0037】
処理工程においては、既述のように廃油には固形物が残存していることが多いため、少なくとも濾過処理を行うことが好ましい。また、廃油について、後述する精製処理を行ってもよい。処理工程を経た廃油は、図1にも示されるように、再生油として扱われる。
【0038】
(精製処理)
本実施形態の製造方法において、原料油を精製処理してもよい。原料油の精製処理は、図1に示されるように、貯蔵タンクに貯蔵する前に行ってもよいし、また貯蔵した後、すなわち貯蔵タンク内に貯蔵される原料油に行ってもよい。また、図1に示されるように、原料油が廃油の場合、既述のように処理工程を経た後、精製処理を行ってもよい。
【0039】
精製処理は、原料油の性状、また所望の基油に要求される性状に応じて、適宜行えばよく、例えば濾過処理、脱塩処理、脱水処理、脱硫処理、低灰分化処理、スラッジ低減処理、分留処理等が代表的に挙げられる。これらの各種処理は、従来から行われている常法に基づき行えばよい。
本実施形態においては、これらの処理を単独で行ってもよいし、複数の処理を組み合わせて行ってもよい。
【0040】
既述のように、原料油として典型的に再生重油を受け入れた場合であって、基油を船舶燃料として用いる場合、再生重油のJIS規格品は、水分の含有量は1.0質量%以下(再生重油1種)又は5.0質量%以下(再生重油2種)、また灰分の含有量は1.0質量%以下であり、現在船舶燃料として汎用されるA重油、C重油と比べて多い場合がある。よって、受け入れた再生重油の水分及び灰分の含有量がA重油、C重油と比べて多い場合は、脱水処理、低灰分化処理を行うことが好ましい。なお、受け入れた再生重油の水分及び灰分の含有量がA重油、C重油と同等である場合は、脱水処理、低灰分化処理を行う必要がないことはいうまでもない。
【0041】
再生重油の規格品の硫黄分濃度は0.6質量%以下であることが規定されている。もし、硫黄分濃度が0.5質量%を超える場合は、受け入れた再生重油の硫黄分濃度を0.5質量%以下とするため、脱硫処理を行ってもよい。
また、他の貯蔵タンクに、硫黄分濃度の小さい原料油が貯蔵されている場合、当該硫黄分濃度の小さい原料油と、硫黄分濃度の大きい原料油とを混合して用いれば、基油としての硫黄分濃度は0.5質量%以下とできる場合もある。よって、このような場合は、脱硫処理が必ずしも必要ではないため、貯蔵タンクに貯蔵される他の原料油の状況をみながら、脱硫処理の要否を判断すればよい。このように、本実施形態の基油の製造方法によれば、全ての原料油を精製処理する必要がないため、工業的に優位である。
【0042】
また、例えば金属加工用潤滑油(金属切削油、プレス油、焼入油等を含む。)は一般的に加工性の向上を目的として塩素化パラフィン等の塩素系極圧剤を添加剤として使用するので、使用済みの金属加工用潤滑油には、塩素が含まれていることが知られている。そのため、これを燃料油として使用する場合、不適切に燃焼するとダイオキシンの発生要因となり、また塩酸の生成により炉の損傷を引き起こす場合がある。よって、原料油として使用済みの金属加工用潤滑油を用いる場合、性状の分析の結果、塩素分が多い場合には、精製処理の中でも特に脱塩処理を行うとよい。
【0043】
図1では、複数の貯蔵タンクのうち、一部の貯蔵タンクC及びDに貯蔵される原料油のみが精製処理を経る態様が示されているが、本実施形態の製造方法においては、このような態様に限らず、全ての貯蔵タンクに貯蔵される原料油が精製処理を経るようになっていてもよい。
【0044】
〔基油調製工程〕
本実施形態の基油の製造方法は、基油調製工程を有する。基油調製工程は、具体的には、以下の工程(1)及び工程(2)から選択される少なくとも一の工程を有する工程である。
工程(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする工程
工程(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする工程
【0045】
工程(1)は、前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする工程である。工程(1)は、貯留タンクに分配された原料油を、そのまま基油として用いられる場合に採用される工程である。図1においては、例えば貯蔵タンクA及びBから排出される原料油は、そのまま基油として供給することができることが示されている。
【0046】
工程(2)は、前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする工程である。工程(2)は、貯留タンクに分配された原料油を、そのまま基油として用いることができない場合に採用される工程である。図1においては、例えば貯蔵タンクA、B及びCから排出される原料油が、混合できることが示されている。
例えば、基油として船舶燃料を調製する場合であって、原料油として、上記分類条件(a1)と(a2)又は(b2)とを満たす原料油Aが貯蔵タンクAに貯蔵され、また分類条件(b1)と(a2)又は(b2)とを満たす原料油Bが貯蔵タンクBに貯蔵されている場合を想定する。
これらの貯蔵タンクに貯蔵される原料油A及びBは、いずれも硫黄分濃度は0.5質量%以下であることから、単独で基油として使用することができる。よって、工程(1)により、貯留タンクに分配された原料油を、そのまま基油として用いられる場合に採用される工程により、基油を製造することができる。また、要請される量に応じて、貯蔵タンクA及びBに貯蔵される原料油A及びBを混合して基油を製造してもよく、この場合は図1に示される混合を経て基油として供給される。
【0047】
また、例えば基油として船舶燃料を調製する場合であって、原料油として、上記分類条件(a1)と(a2)又は(b2)とを満たす原料油Aが貯蔵タンクAに貯蔵され、また分類条件(c1)と(b2)又は(c2)とを満たす原料油Cを貯蔵する貯蔵タンクCに貯蔵されている場合を想定する。
これらの貯蔵タンクに貯蔵される原料油A及びCのうち、原料油Aは、硫黄分濃度が0.3質量%以下であるため単独で使用できるが、原料油Cは、硫黄分濃度が0.5質量%超であるため単独では使用できない。原料油Cを使用する場合、原料油Aと混合して使用する必要がある。例えば原料油Aの硫黄分含有量が0.2質量%であり、原料油Cの硫黄分含有量が0.6質量%である場合、原料油Aの使用量を原料油A及びCの合計量に対して25%以上となるように混合することで、得られる基油の硫黄分含有量を0.5質量%以下とすることができる。この場合、図1のフロー図において、貯蔵タンクAに貯蔵される原料油Aと、貯蔵タンクCに貯蔵される原料油Cと、を混合し、基油を製造することとなる。
【0048】
以上のように、貯蔵タンクに貯蔵される原料油の性状、原料油の量、所望の基油に要求される性状等を総合的に考慮の上、どの貯蔵タンクに貯蔵される原料油を、どの程度の量で配合するといったことを決定できる。そのため、本実施形態の基油の製造方法によれば、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応することが、容易である。
【0049】
(混合)
工程(2)の場合は、少なくとも二種の原料油を混合する。原料油の混合は、例えば撹拌翼を備える混合槽を用いて行えばよい。図1のフロー図では、貯蔵タンクA~Cに貯蔵される原料油を一の混合槽で混合することが想定されているが、混合槽は一つに限らず、例えば貯蔵タンクA~Cに貯蔵される原料油を混合する混合槽に加えて、さらに貯蔵タンクA及びDに貯蔵される原料油を混合する混合槽、貯蔵タンクB及びDに貯蔵される原料油を混合する混合槽等、複数の混合槽を設けてもよい。
【0050】
混合槽には、貯蔵タンクから原料油を送液するための配管用のノズルが、貯蔵タンクごとに複数設けられているとよい。また、貯蔵タンクの数量分のノズルを有する必要はなく、どの貯蔵タンクに貯蔵される原料油を使用するかを決定してから、当該貯蔵タンクから混合槽への配管を接続しながら対応することもできる。
また、混合槽には、貯蔵タンクから基油を排出するための配管用のノズルが設けられているとよい。
【0051】
混合槽には、必要に応じてレベル計、固化防止等のためのヒータ、断熱材、後述する添加剤を供給するためのノズル等が設けられたものを用いてもよい。
また、少なくとも二種の原料油の流量を管理するため、貯蔵タンクから混合槽への配管には、流量計及び流量を調節する調節弁が設けられていてもよい。
【0052】
(添加剤の混合)
本実施形態の基油の製造方法は、基油調製工程において、添加剤を混合してもよい。
添加剤としては、所望の基油に応じて適宜選択して使用すればよく、例えば酸化防止剤、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、防カビ剤、粘度指数向上剤、極圧剤、摩擦低減剤、油性剤、金属不活性化剤、消泡剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0053】
船舶燃料等の燃料油とする場合は、船舶燃料等の燃料油に一般的に用いられる添加剤、例えば上記の中でも、酸化防止剤、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、防カビ剤等の各種添加剤、また軽油引取税の観点よりクマリン等を添加剤として用いてもよい。
また、基油を潤滑油として用いる場合は、各種潤滑油に一般的に用いられる添加剤、例えば上記の中でも酸化防止剤、潤滑性向上剤、清浄剤、スラッジ分散剤、粘度指数向上剤、極圧剤、摩擦低減剤、油性剤、金属不活性化剤、消泡剤等の各種添加剤を用いるとよい。
【0054】
本実施形態の基油の製造方法において、添加剤を用いる場合は、上記(1)及び(2)の調製工程に共通して、上記の混合槽に添加剤を供給し、原料油と混合して基油とすればよい。図1のフロー図では、貯蔵タンクA~Cに貯蔵される原料油が、添加剤と混合し得るようになっている。
【0055】
(基油)
本実施形態の基油の製造方法により得られる基油は、どのような用途に用いられる基油にも対応することができる。例えば、潤滑油用基油、肥料用基油(廃油肥料用等)、石鹸用基油(リサイクル石鹸用等)、塗料用基油(廃油性塗料用等)、また直火使用工業炉の燃料油(主にアルミ再生、石灰生成、鉄鋼、製紙等の分野(工場)で用いられる。)、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油等の各種燃料油等の各種基油が挙げられる。
【0056】
本実施形態の基油の製造方法の、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得るという特長、特に所望の基油が要求される性状に対応しやすいこと、また、多量の需要が見込めること等を考慮すると、基油としては、直火使用工業炉の燃料油、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油等の各種燃料油、中でも船舶燃料油が好ましい。
【0057】
[基油の製造装置]
本実施形態の基油の製造装置は、
廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油の性状に基づき、前記原料油を分配し、貯蔵する複数の貯蔵タンクを有する原料油貯蔵設備と、
以下の設備(1)及び設備(2)から選択される少なくとも一の設備を有する基油調製設備;
設備(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする設備
設備(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする設備
と、を備える、というものである。
【0058】
本実施形態の基油の製造装置を用いると、上記の本実施形態の基油の製造方法を実施しやすい。そのため、本実施形態の基油の製造装置によれば、効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応して、基油を製造することができる。
【0059】
本実施形態の基油の製造装置を構成する原料油貯蔵設備、基油調製設備における、原料油、貯蔵タンクへの分配及び貯蔵、基油の調製に関する内容は、上記本実施形態の基油の製造方法で説明した内容と同じである。また貯蔵タンク、混合槽に関する内容、さらに原料油を受け入れる際に臨時的に用いる受入タンクを有してもよいことも同様である。
【0060】
原料油貯蔵設備は、主に原料油を貯蔵する複数の貯蔵タンク、及びタンクローリ等の車両、タンカー等の船舶より受け入れた原料油を複数の貯蔵タンクに分配するための配管により構成される。また、既述のように、原料油を受け入れる際に臨時的に用いる受け入れタンクを有してもよい。
【0061】
原料油貯蔵設備は、原料油(主に廃油)を処理して再生油とする処理設備を有してもよい。処理設備としては、既述のように濾過処理を行う濾過設備が好ましく挙げられる。
【0062】
また、原料油貯蔵設備は、さらに原料油を精製処理する精製設備を備えることが好ましい。精製設備としては、例えば濾過処理、脱塩処理、脱水処理、脱硫処理、低灰分化処理、スラッジ低減処理、分留処理等の各種精製処理を行い得る精製設備が挙げられる。精製処理を行う精製設備は、図1に示されるように、貯蔵タンクの上流に設けられていてもよいし、また貯蔵タンクの下流に設けられ、貯蔵タンクに貯蔵した原料油を精製処理するものであってもよい。
【0063】
原料油として典型的に再生重油を受け入れた場合であって、基油を船舶燃料として用いる場合、既述のように脱水処理、低灰分化処理を行うことが好ましいことから、脱水処理設備及び低灰分化処理設備を備えることが好ましい。
また、原料油として使用済みの潤滑油、特に金属加工用潤滑油(金属切削油、プレス油、焼入油等を含む。)を用いる場合、既述のように脱塩処理を行うことが好ましいことから、脱塩処理設備を備えることが好ましい。
【0064】
例えば、臨時的に受入タンクに受け入れた原料油を貯蔵タンクに送液する、貯蔵タンクから混合槽に送液する、また貯蔵タンクから基油として送液する際に、必要に応じて圧送するため、ポンプが設けられていてもよい。
【0065】
貯蔵タンクから排出される原料油のラインに流量計、当該流量計による流量調節弁等、貯蔵タンク、受入タンク、混合槽にはレベル計等の各種計器が設けられていてもよい。
また、貯蔵タンク、受入タンク、混合槽、また配管には、原料油の固化防止等の目的で、ヒータ、断熱材等が設けられていてもよい。
【0066】
(用途)
本実施形態の基油の製造装置は、既述のように効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応して、基油を製造することができる。
よって、本実施形態の基油の製造装置は、どのような用途に用いられる基油の製造にも対応することができる。例えば、潤滑油用基油、肥料用基油(廃油肥料用等)、石鹸用基油(リサイクル石鹸用等)、塗料用基油(廃油性塗料用等)、また直火使用工業炉の燃料油(主にアルミ再生、石灰生成、鉄鋼、製紙等の分野(工場)で用いられる。)、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油等の各種燃料油等の各種基油が挙げられる。
【0067】
本実施形態の基油の製造装置の、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得るという特長、特に所望の基油が要求される性状に対応しやすいこと、また、多量の需要が見込めること等を考慮すると、直火使用工業炉の燃料油、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油等の各種燃料油、中でも船舶燃料油の製造装置として用いることが好ましい。
【0068】
[基油の製造及び物流の複合システム]
本実施形態の基油の製造及び物流の複合システムは、
廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油を受け入れる、原料油受入設備、
前記原料油の性状に基づき、前記原料油を分配し、貯蔵する複数の貯蔵タンクを有する原料油貯蔵設備と、
以下の設備(1)及び設備(2)から選択される少なくとも一の設備を有する基油調製設備;
設備(1)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油を他の原料油と混合せずに基油とする設備
設備(2)前記複数の貯蔵タンクに分配された前記原料油の少なくとも二種を混合して基油とする設備
と、を備える基油製造装置、及び
前記基油調製設備から供給された基油を出荷する出荷設備、
を備える、というものである。
【0069】
本実施形態の基油の製造及び物流の複合システムは、原料油貯蔵設備及び基油調製設備を有していることから、上記の本実施形態の基油の製造装置を備える複合システムであるといえる。よって、本実施形態の基油の製造及び物流の複合システムは、上記の本実施形態の基油の製造方法を実施しやすいため、効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応して、基油を製造すること、さらには基油を出荷することができる。
【0070】
(原料油貯蔵設備及び基油調製設備)
本実施形態の基油の製造及び物流の複合システムにおける、原料油貯蔵設備及び基油調製設備については、上記の本実施形態の基油の製造装置で説明したものと同じである。
【0071】
(原料油受入設備)
原料油受入設備は、廃油及び再生油から選択される少なくとも一種の原料油を受け入れる設備である。
原料油受入設備は、原料油を運搬してきたタンカー、タンクローリ等の運搬手段から貯蔵タンク、また必要に応じて設けられる受入タンクに送液するための原料油受入手段として、配管、ノズル等を有する。また、受け入れた原料油の量を管理するため、流量計を有していてもよく、必要に応じて貯蔵タンク又は受入タンクに、また受入タンクから貯蔵タンクに送液するためのポンプを有していてもよい。
【0072】
(出荷設備)
出荷設備は、基油調製設備から供給された基油を出荷する設備である。出荷設備は、基油を出荷するため、すなわち基油をタンカー、タンクローリ等の運搬手段に移動するための基油出荷手段として、配管、接続ノズル等を有する。
【0073】
出荷設備は、出荷前に臨時的に基油を貯蔵するための製品タンクを有してもよい。製品タンクを有することで、作業時間の調整が行える。
貯蔵タンクから製品タンクに、また貯蔵タン及び、製品タンクからタンカー、タンクローリ等の運搬手段に基油を送液するため、ポンプが設けられていてもよい。また、製品出荷量の管理のため、流量計が設けられていてもよい。
【0074】
(用途)
本実施形態の基油の製造及び物流複合システムは、既述のように効率的に、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応して、基油を製造することができ、さらには基油を出荷することができる。
よって、本実施形態の基油の製造及び物流複合システムは、どのような用途に用いられる基油の製造及び物流にも対応することができる。例えば、潤滑油用基油、肥料用基油(廃油肥料用等)、石鹸用基油(リサイクル石鹸用等)、塗料用基油(廃油性塗料用等)、また直火使用工業炉の燃料油(主にアルミ再生、石灰生成、鉄鋼、製紙等の分野(工場)で用いられる。)、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油等の各種燃料油等の各種基油が挙げられる。
【0075】
本実施形態の基油の製造及び物流複合システムの、様々な廃油及び再生油の供給に対応し、かつ様々な基油の需要に対応し得るという特長、特に所望の基油が要求される性状に対応しやすいこと、また、多量の需要が見込めること等を考慮すると、直火使用工業炉の燃料油、ボイラー燃料油、ディーゼル燃料油及び船舶燃料油等の各種燃料油、中でも船舶燃料油の製造及び物流複合システムとして用いることが好ましい。
図1