(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083107
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20230608BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230608BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 N
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197273
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亨
(72)【発明者】
【氏名】太田 淳
(72)【発明者】
【氏名】大竹 文人
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030DA06
4K030EA06
4K030FA03
4K030GA02
4K030KA22
4K030KA23
4K030KA41
5F045AA08
5F045BB15
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5F131EB81
5F131EB87
5F131JA14
5F131JA16
5F131KA10
5F131KA55
(57)【要約】
【課題】基板マスク部から発生するパーティクルを抑制する。
【解決手段】プラズマ処理装置1であって、チャンバ2と、チャンバの上部に配置されて反応室2aを形成する電極部5と、電極部に接続されてプラズマを形成する高周波電圧を印加する高周波電源9と、チャンバの下部に電極部に対向して配置されて基板10を載置して昇降可能な基板ヒータ部15と、基板ヒータ部を昇降駆動する昇降駆動部16Aと、基板および基板ヒータ部の外周部を電極部に対して覆う基板マスク部31と、チャンバに周設されて基板ヒータ部が下降した際に基板マスク部を支持するマスク支持部33と、基板マスク部を加熱するマスク加熱部40と、マスク加熱部の制御をおこなう制御部30と、を有し、基板ヒータ部が下降して、マスク支持部によって支持された基板マスク部が基板ヒータ部から離間した際に、マスク加熱部によって基板マスク部を加熱可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの上部に配置されて反応室を形成する電極部と、
前記電極部に接続されてプラズマを形成する高周波電圧を印加する高周波電源と、
前記チャンバの下部に前記電極部に対向して配置され、基板を載置して昇降可能な基板ヒータ部と、
前記基板ヒータ部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記基板および前記基板ヒータ部の外周部を前記電極部に対して覆う基板マスク部と、
前記チャンバに周設されて前記基板ヒータ部が下降した際に前記基板マスク部を支持するマスク支持部と、
前記基板マスク部を加熱するマスク加熱部と、
前記マスク加熱部の制御をおこなう制御部と、
を有し、
前記基板ヒータ部が下降して、前記マスク支持部によって支持された前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間した際に、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱可能である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部の外周に沿って前記マスク支持部に配置されたヒータである
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記マスク支持部には、前記チャンバの壁部に近接する基部に熱絶縁部が配置される
ことを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部が接触する前記マスク支持部の先端部に埋設されたヒータである
ことを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記マスク支持部の先端部が、平面視して前記基板ヒータ部の外周よりも径方向外側に位置する
ことを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部の外周に沿って前記基板マスク部に配置されたヒータである
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記マスク加熱部の前記ヒータが、前記基板マスク部の全周に延在して配置される
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記マスク加熱部の前記ヒータが、前記基板マスク部の内周に近接する位置に周設される
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記ヒータが、前記基板マスク部の外周と同心状に複数本として配置される
ことを特徴とする請求項7記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記マスク加熱部の前記ヒータに通電する接点が、前記基板マスク部の下面と、前記マスク支持部の上面とに配置される
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記接点が、前記基板マスク部の下面から下方に突出する
ことを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記接点が、前記マスク支持部の上面から上方に突出する
ことを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記基板マスク部の外周が、平面視して前記マスク支持部の先端部よりも径方向外側に位置する
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記基板マスク部の温度を検出する温度検出部を有する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記温度検出部が、前記基板マスク部の下面温度を検出する
ことを特徴とする請求項14記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか記載のプラズマ処理装置においてプラズマ処理をおこなうプラズマ処理方法であって、
前記基板マスク部が前記基板ヒータ部に載置されている場合には、前記基板ヒータ部によって前記基板マスク部を加熱し、
前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間している場合には、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱する
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置、プラズマ処理方法に関し、特に、CVD成膜等に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマを用いて原料ガスを分解し、例えば、基板の被成膜面に薄膜を形成するプラズマ処理装置が知られている。このプラズマ処理装置においては、例えば、特許文献1~4に示すように、チャンバと、電極フランジと、チャンバおよび電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとによって、処理室が構成されている。処理室は、成膜空間(反応室)を有する。
【0003】
処理室内には、電極部となるシャワープレートと、基板が載置される基板ヒータ(基板支持部)とが設けられている。チャンバは、接地電位に接続されている。これによって基板ヒータは、アノード電極として機能する。
基板周縁部および基板の載置されていない基板ヒータに対する不必要な成膜を遮るために、枠状の基板マスク部が設けられる。基板マスク部は、成膜時に基板周端部を抑えて保持する。基板マスク部は、基板端面および裏面に膜が回り込んでしまうことを抑制する。同時に、基板マスク部は、プラズマを基板とシャワープレートとの間に閉じ込める。
【0004】
基板マスク部は、成膜時に基板ヒータと基板とに接しており、熱源である基板ヒータにより基板と同程度に加熱されている。
基板マスク部は、基板周縁部において、シャワープレート側に位置するため、基板の搬送時には、ヒータから離間する必要がある。この際、基板マスク部の温度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-002136号公報
【特許文献2】特開2006-089793号公報
【特許文献3】特開2007-081404号公報
【特許文献4】特開2006-274316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チャンバ内で発生するパーティクルが、成膜特性、収率に影響を与えてしまうという問題があった。
成膜時のパーティクルとして大きな要因の一つは基板マスク部上に着膜された膜が、基板搬送時に基板上に落ちるということがわかっている。
このように、基板マスク部から発生するパーティクルが、成膜特性、収率に影響を与えてしまうという問題があった。
【0007】
基板マスク部上のパーティクルは、基板搬入時に基板マスク温度が著しく低下する。その際に、基板マスク部上に成膜された膜が基板マスク部との熱膨張率の違いにより応力を受けて、基板マスク部から剥離する。これが基板マスク部から発生するパーティクルの主な原因であることを、本願発明者らは突き止めた。
そのため、基板マスク部からのパーティクルを抑制するために、基板マスク部の温度を、いかに変化を抑えた状態に維持して、成膜を繰り返すことを可能とできるかが大きな課題であることがわかった。
【0008】
また、プリデポ時に基板マスク上に成膜された膜が、基板マスクから発生するパーティクルの主な原因であることを、本願発明者らは突き止めた。
したがって、プリデポ時に成膜された膜が、成膜完了時までに基板マスクから剥離してしまうことを防止することで、パーティクルによる膜特性の低下を回避できるということを、本願発明者らは見出した。
なお、プリデポとは、基板を搬入して成膜するデポ工程より前に、基板を基板ヒータに載置せずにプラズマを形成し、チャンバ内を成膜状態とする工程を意味する。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.基板マスク部から発生するパーティクルを削減すること。
2.基板マスク部における温度変化を抑制すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプラズマ処理装置は、
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの上部に配置されて反応室を形成する電極部と、
前記電極部に接続されてプラズマを形成する高周波電圧を印加する高周波電源と、
前記チャンバの下部に前記電極部に対向して配置され、基板を載置して昇降可能な基板ヒータ部と、
前記基板ヒータ部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記基板および前記基板ヒータ部の外周部を前記電極部に対して覆う基板マスク部と、
前記チャンバに周設されて前記基板ヒータ部が下降した際に前記基板マスク部を支持するマスク支持部と、
前記基板マスク部を加熱するマスク加熱部と、
前記マスク加熱部の制御をおこなう制御部と、
を有し、
前記基板ヒータ部が下降して、前記マスク支持部によって支持された前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間した際に、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱可能である
ことにより上記課題を解決した。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部の外周に沿って前記マスク支持部に配置されたヒータである
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク支持部には、前記チャンバの壁部に近接する基部に熱絶縁部が配置される
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部が接触する前記マスク支持部の先端部に埋設されたヒータである
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク支持部の先端部が、平面視して前記基板ヒータ部の外周よりも径方向外側に位置する
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部の外周に沿って前記基板マスク部に配置されたヒータである
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部の前記ヒータが、前記基板マスク部の全周に延在して配置される
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部の前記ヒータが、前記基板マスク部の内周に近接する位置に周設される(マスク支持部に接触しない位置、基板もしくは)
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記ヒータが、前記基板マスク部の外周と同心状に複数本として配置される
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部の前記ヒータに通電する接点が、前記基板マスク部の下面と、前記マスク支持部の上面とに配置される
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記接点が、前記基板マスク部の下面から下方に突出する
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記接点が、前記マスク支持部の上面から上方に突出する
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記基板マスク部の外周が、平面視して前記マスク支持部の先端部よりも径方向外側に位置する
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記基板マスク部の温度を検出する温度検出部を有する
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記温度検出部が、前記基板マスク部の下面温度を検出する
ことができる。
本発明のプラズマ処理方法は、
上記のいずれか記載のプラズマ処理装置においてプラズマ処理をおこなうプラズマ処理方法であって、
前記基板マスク部が前記基板ヒータ部に載置されている場合には、前記基板ヒータ部によって前記基板マスク部を加熱し、
前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間している場合には、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱する
ことができる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの上部に配置されて反応室を形成する電極部と、
前記電極部に接続されてプラズマを形成する高周波電圧を印加する高周波電源と、
前記チャンバの下部に前記電極部に対向して配置され、基板を載置して昇降可能な基板ヒータ部と、
前記基板ヒータ部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記基板および前記基板ヒータ部の外周部を前記電極部に対して覆う基板マスク部と、
前記チャンバに周設されて前記基板ヒータ部が下降した際に前記基板マスク部を支持するマスク支持部と、
前記基板マスク部を加熱するマスク加熱部と、
前記マスク加熱部の制御をおこなう制御部と、
を有し、
前記基板ヒータ部が下降して、前記マスク支持部によって支持された前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間した際に、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱可能である。
これにより、基板ヒータ部が上昇して、前記基板マスク部が前記基板ヒータ部に載置されている場合には、前記基板ヒータ部によって前記基板マスク部を加熱するか、基板マスク部がプラズマによって加熱している場合には、基板マスク部と基板ヒータ部とが同じ温度となるとともに、基板ヒータ部が下降して、前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間している場合には、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱することで、基板マスク部が、基板ヒータ部によって加熱された状態とほぼ同じ温度を維持して、基板マスク部の温度が低下することを抑制することができる。これにより、プリデポ等で基板マスク部に成膜された膜が温度差によって剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部の外周に沿って前記マスク支持部に配置されたヒータである。
これにより、マスク加熱部がマスク支持部の温度を上昇させて、基板ヒータ部が下降して、前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間している場合には、前記マスク支持部によって前記基板マスク部を加熱することで、基板マスク部が、基板ヒータ部によって加熱された状態とほぼ同じ温度を維持して、基板マスク部の温度が低下することを抑制することができる。これにより、プリデポ等で基板マスク部に成膜された膜が温度差によって剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
【0013】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク支持部には、前記チャンバの壁部に近接する基部に熱絶縁部が配置される。
これにより、マスク加熱部がマスク支持部の温度を上昇させる際に、マスク支持部の基部からチャンバ壁部へと熱が流れて、マスク支持部の温度上昇が不十分になることを防止できる。マスク加熱部によるマスク支持部の加熱を効率よくおこなうことができる。基板マスク部の温度が低下することを抑制することができる。これにより、プリデポ等で基板マスク部に成膜された膜が温度差によって剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
【0014】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部が接触する前記マスク支持部の先端部に埋設されたヒータである。
これにより、マスク支持部の先端部を加温して、マスク支持部の先端部に接触する基板マスク部を効率よく加熱することができる。基板マスク部の温度が低下することを抑制することができる。これにより、プリデポ等で基板マスク部に成膜された膜が温度差によって剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
【0015】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク支持部の先端部が、平面視して前記基板ヒータ部の外周よりも径方向外側に位置する。
これにより、チャンバ径方向で内側となるマスク支持部の先端部が、基板ヒータ部の外周と接触しない状態を維持することができる。マスク支持部の先端部と基板ヒータ部の外周との間から、成膜部から基板ヒータ部よりも下方にむけて流れるガス流を維持することができる。これにより、基板ヒータ部と電極部との間とされる成膜部(プラズマ形成空間)からのガス排気を可能として、プラズマCVD処理を可能とすることができる。
同時に、基板ヒータ部が下降した際に、基板ヒータ部の外周よりも径方向外側に突出した状態で載置されている基板マスク部を、基板ヒータ部の径方向外側位置でマスク支持部の先端部に載置して、基板マスク部から基板ヒータ部を離間させることができる。
【0016】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部が、前記基板マスク部の外周に沿って前記基板マスク部に配置されたヒータである。
これにより、チャンバ周方向における全領域、つまりチャンバ全周で基板マスクを加熱して、基板マスクの温度が週報王の全域で低下しないように維持することができる。これにより、局所的に発生した温度差によって、基板マスク部に成膜された膜が剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
これにより、マスク加熱部が基板マスク部の温度を上昇させて、基板ヒータ部が下降して、前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間している場合には、前記マスク支持部によって前記基板マスク部を加熱することで、基板マスク部が、基板ヒータ部によって加熱された状態とほぼ同じ温度を維持して、基板マスク部の温度が低下することを抑制することができる。これにより、プリデポ等で基板マスク部に成膜された膜が温度差によって剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
また、マスク加熱部が基板マスク部を直接加熱して基板マスク部の温度を上昇させることができるので、加熱する領域を基板マスク部とすることができ、基板マスク部に対する迅速な加熱および加熱に必要なエネルギの適正化をおこなうことが可能となる。基板マスク部における温度低下発生に迅速に対応して加熱を開始できるとともに、直接加熱による効率的な熱流れ発生により、基板マスク部における温度低下の発生を防止して、パーティクル発生を低減することができる。
【0017】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部の前記ヒータが、前記基板マスク部の全周に延在して配置される。
これにより、チャンバ周方向における全領域、つまりチャンバ全周で基板マスクを加熱して、基板マスクの温度が週方向の全域で低下しないように維持することができる。また、チャンバ内の他の部品の配置に影響されることなく、基板マスク部の加熱を可能とし、基板マスク部での全域で温度低下の発生を防止することができる。
これにより、局所的に発生した温度差によって、基板マスク部に成膜された膜が剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
【0018】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部の前記ヒータが、前記基板マスク部の内周に近接する位置に周設される。
これにより、基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間した際に、外周に比べて温度低下の著しい内周に近接する基板マスク部の部分を積極的に加熱することが容易となる。ここで、最も加熱量の大きい熱源である基板ヒータ部に接して、基板マスク部の中では温度が高くなっているため、基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間した際に、基板マスク部の外周に比べて内周は温度低下が著しくなる。したがって、基板マスク部の内周を積極的に加熱することで、局所的に温度差が発生することを防止して、基板マスク部に成膜された膜の剥離によるパーティクル発生を防止することができる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
また、マスク加熱部のヒータがマスク支持部の先端が接触しない位置に配置される、つまり、マスク加熱部のヒータがマスク支持部の先端よりもチャンバの径方向内側となる位置に配置されることで、マスク支持部に支持された際に、マスク支持部の温度とは関係なく、基板マス部クの内周に近接する部分を積極的に加熱することが容易となる。
したがって、基板に近い基板マスク部の温度が低下することを抑制することができる。これにより、プリデポ等で基板マスク部に成膜された膜が温度差によって剥離して、パーティクルとなることを防止できる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
【0019】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記ヒータが、前記基板マスク部の外周と同心状に複数本として配置される。
これにより、基板マスク部の外周から内周までの径方向で温度分布が異なる場合や、基板マスク部の熱容量が大きい場合にも対応して、所定の温度まで加熱し提示することができる。したがって、チャンバ内におけるパーティクル発生量を抑制して、成膜特性に影響を与えることを防止できる。
なお、同心状のヒータは、それぞれ独立に制御することが可能であり、これにより、好ましい基板マスク部の温度状態を維持することが可能となる。
【0020】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記マスク加熱部の前記ヒータに通電する接点が、前記基板マスク部の下面と、前記マスク支持部の上面とに配置される。
これにより、基板ヒータ部が下降して、基板マスク部がマスク支持部に載置された際に、基板マスク部下面の接点とマスク支持部上面の接点とが互いに接触して、基板マスク部の前記ヒータに通電することが可能となる。
したがって、基板ヒータ部が下降して、基板マスク部がマスク支持部に載置されるとともに、基板マスク部が基板ヒータ部から離間する動作に連動して、マスク加熱部の前記ヒータに通電することができる。
また、基板ヒータ部が上昇して、基板マスク部がマスク支持部から離間するとともに、基板マスク部が基板ヒータ部に設置される動作に連動して、マスク加熱部の前記ヒータへの通電を遮断することができる。
【0021】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記接点が、前記基板マスク部の下面から下方に突出する。
これにより、基板マスク部がマスク支持部に載置された際に、基板マスク部下面の接点とマスク支持部上面の接点とが確実に互いに接触して、基板マスク部の前記ヒータに通電することが可能となる。
【0022】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記接点が、前記マスク支持部の上面から上方に突出する。
これにより、基板マスク部がマスク支持部に載置された際に、基板マスク部下面の接点とマスク支持部上面の接点とが確実に互いに接触して、基板マスク部の前記ヒータに通電することが可能となる。
【0023】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記基板マスク部の外周が、平面視して前記マスク支持部の先端部よりも径方向外側に位置する。
これにより、基板ヒータ部が下降して、基板マスク部がマスク支持部に載置された際に、基板マスク部がマスク支持部に載置されて、マスク支持部上面と同じ位置に基板マスク部下面が位置するように、基板マスク部の高さをマスク支持部によって規制することができ、その状態よりも基板マスク部が下降しないように維持することができる。
【0024】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記基板マスク部の温度を検出する温度検出部を有する。
これにより、基板マスク部の温度が変動した場合に検出して、その結果をマスク加熱部の前記ヒータへの制御へとフィードバックすることができる。
これにより、基板マスク部の温度変動を所定の範囲に維持して、温度設定を正確におこなうことが可能となる。
ここで、温度検出部としては、基板マスク部の表面温度を測定するために、チャンバ外に配置された放射温度計と、この放射温度計から基板マスク部を視認可能とするようにチャンバを貫通する検出孔と、検出孔のチャンバ内を密閉するとともに検出孔を透過可能な透光密閉部材と、と有することができる。
【0025】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記温度検出部が、前記基板マスク部の下面温度を検出する。
これにより、基板マスク部が基板ヒータ部に載置された際に、加熱源である基板ヒータ部に接触する基板マスク部下面は、最も温度変化が激しくなる。この基板マスク部の下面温度を検出することで、基板マスク部の温度変化を正確に検出して、素早いフィードバックをおこなうことで、さらに基板マスク部の温度変化範囲を小さくすることが可能となる。
これにより、パーティクル発生をさらに抑制することが可能となる。
ここで、基板マスク部の下面温度素測定するために、温度検出部としては、基板マスク部の下面温度を測定するために、チャンバ外に配置された放射温度計と、この放射温度計から基板マスク部の下面を視認可能とするようにチャンバを貫通する検出孔と、検出孔のチャンバ内を密閉するとともに検出孔を透過可能な透光密閉部材と、と有することができる。なお、基板ヒータ部を貫通する検出孔を設けることもできる。
【0026】
本発明のプラズマ処理方法は、
上記のいずれか記載のプラズマ処理装置においてプラズマ処理をおこなうプラズマ処理方法であって、
前記基板マスク部が前記基板ヒータ部に載置されている場合には、前記基板ヒータ部によって前記基板マスク部を加熱し、
前記基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間している場合には、前記マスク加熱部によって前記基板マスク部を加熱する。
これにより、加熱源である基板ヒータ部から離間して、温度が低下する基板マスク部を、マスク加熱部のヒータによって、加熱して温度低下が発生することを防止できる。
マスク加熱部のヒータは、基板マスク部が前記基板ヒータ部から離間してマスク支持部から離間したタイミングでONとすることができる。また、基板マスク部が前記基板ヒータ部に載置されてマスク支持部から離間したタイミングでOFFとすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基板マスク部の温度変動を抑制して、パーティクルの発生を防止することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を示す概略縦断面図である。
【
図2】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図3】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態における基板マスク部が下降した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図4】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
【
図5】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図6】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図7】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図8】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図9】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図10】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図11】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図12】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図13】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図14】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図15】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図16】本発明に係るプラズマ処理方法の第1実施形態を示す工程断面図である。
【
図17】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図18】本発明に係るプラズマ処理装置の第3実施形態における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図19】本発明に係るプラズマ処理装置の第3実施形態における基板マスク部を示す模式平面図である。
【
図20】本発明に係るプラズマ処理装置の第3実施形態における基板マスク部が下降した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図21】本発明に係るプラズマ処理装置の第4実施形態における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図22】本発明に係るプラズマ処理装置の第5実施形態における基板マスク部を示す模式平面図である。
【
図23】本発明に係るプラズマ処理装置の第5実施形態における基板マスク部の他の例を示す模式平面図である。
【
図24】本発明に係るプラズマ処理装置の第6実施形態における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
【
図25】本発明に係る実施例を説明するグラフである。
【
図26】本発明に係る実施例を説明するグラフである。
【
図27】本発明に係る実施例を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置を示す模式断面図であり、図において、符号1は、プラズマ処理装置である。
また、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、適宜、各構成要素の寸法および比率を実際のものとは異ならせた場合がある。
【0030】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマCVD法を用いた成膜装置である。
プラズマ処理装置1は、
図1に示すように、反応室である成膜空間2aを有する処理室101を含む。
処理室101は、真空チャンバ(チャンバ)2と、電極フランジ4と、真空チャンバ(チャンバ)2および電極フランジ4に挟持された絶縁フランジ81とから構成されている。
【0031】
真空チャンバ2は、底部(内底面)11と、底部(内底面)11の周縁から立設された側壁(壁部)24とを有する。
真空チャンバ2は、アルミニウム、アルミニウム合金で形成される。
【0032】
真空チャンバ2の底部(内底面)11には、開口部が形成されている。この開口部には支柱16が挿通され、支柱16は真空チャンバ2の下部に配置されている。
支柱16の先端は、真空チャンバ2内に位置する。支柱16の先端には、板状のサセプタ(基板ヒータ部)15が接続されている。
底部(内底面)11と側壁(壁部)24とは、アルミニウム、アルミニウム合金で形成される。
【0033】
支柱16は、真空チャンバ2の外部に設けられた昇降駆動部(昇降機構)16Aに接続されている。支柱16は、昇降駆動部(昇降機構)16Aによって、上下方向に移動可能である。つまり、支柱16の先端に接続されているサセプタ15は、上下方向に昇降可能に構成されている。
【0034】
真空チャンバ2の外部においては、支柱16の外周を覆うようにベローズ(不図示)が設けられている。ベローズにより、支柱16が上下動した際に、成膜空間2aの密閉が維持される。
【0035】
真空チャンバ2には、サセプタ15よりも底部11に近接する位置に、排気管27が接続されている。排気管27の先端には、真空ポンプ28が設けられている。真空ポンプ28は、真空チャンバ2内が真空状態となるように減圧する。
【0036】
真空チャンバ2の上部には、絶縁フランジ81を介して電極フランジ4が取り付けられている。
真空チャンバ2において、壁部24その上端には、段差部、および、高周波電極支持部23が設けられている。段差部および高周波電極支持部23は、それぞれ導電材で構成されている。
段差部および高周波電極支持部23は、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成される。
【0037】
高周波電極支持部23は、壁部24の上端に載置される。高周波電極支持部23は、チャンバ2の径方向内側に突出するように周設されている。つまり、高周波電極支持部23の内径寸法は、チャンバ2の壁部24の内径寸法に比べて小さくなる。
高周波電極支持部23の上端には、シールドカバー13の下端が載置されている。
【0038】
高周波電極支持部23の径方向内側には、絶縁フランジ81が接している。
絶縁フランジ81は壁部24よりも小さい径方向寸法を有する。絶縁フランジ81の径方向断面は、略Z字状に形成される。すなわち、絶縁フランジ81は、高周波電極支持部23の径方向内側に接するとともに、壁部24に平行に延在する枠部81bを有する。
【0039】
絶縁フランジ81における枠部81bの上端には、径方向外側に向けて突出する上絶縁フランジ部81cが設けられる。絶縁フランジ81における枠部81bの下端には、径方向内側に向けて突出する下絶縁フランジ部81aが設けられる。
上絶縁フランジ部81cは、高周波電極支持部23の上端に接して、絶縁フランジ81を支持可能とする。
【0040】
下絶縁フランジ部81aおよび枠部81bの径方向内側には、電極部としての電極フランジ4の下端およびシャワープレート5が接している。
なお、下絶縁フランジ部81aの径方向内側輪郭は、電極フランジ4およびシャワープレート5が成膜空間2aに露出する範囲を制限している。下絶縁フランジ部81aは、電極絶縁カバーとして機能する。
【0041】
電極フランジ4は、上板4aと周壁4cとを有する。
電極フランジ4は、周壁4cの開口部が基板10の鉛直方向において下方に位置するように配置されている。
【0042】
周壁4cの下端によって形成される開口部には、シャワープレート5が取り付けられている。上板4aとシャワープレート5とは上下方向に離間して、互いに略平行に配置される。これにより、電極フランジ4とシャワープレート5との間に空間14が形成される。
【0043】
電極フランジ4の上板4aは、シャワープレート5に対向している。上板4aには、ガス導入口4bが設けられている。
また、処理室101の外部に設けられたプロセスガス供給部21とガス導入口4bとの間には、ガス導入管7が設けられている。
【0044】
ガス導入管7の一端は、ガス導入口4bに接続される。ガス導入管7の他端は、プロセスガス供給部21に接続されている。
ガス導入管7は、後述するシールドカバー13を貫通している。ガス導入管7を通じて、プロセスガス供給部21から空間14にプロセスガスが供給される。
【0045】
空間14は、プロセスガスが導入されるガス導入空間として機能する。
シャワープレート5には、複数のガス噴出口6が形成されている。
空間14内に導入されたプロセスガスは、ガス噴出口6から真空チャンバ2内の成膜空間2aに噴出される。
【0046】
電極フランジ4とシャワープレート5は、それぞれ導電材で構成されている。
電極フランジ4の周囲には、電極フランジ4を覆うようにシールドカバー13が設けられている。
シールドカバー13は、電極フランジ4と非接触である。シールドカバー13は、真空チャンバ2に電気的に接続するように配置されている。
【0047】
電極フランジ4には、真空チャンバ2の外部に設けられた高周波電源9(高周波電源)がマッチングボックス12を介して接続されている。
マッチングボックス12は、シールドカバー13に取り付けられている。
電極フランジ4およびシャワープレート5は、カソード電極として構成されている。
真空チャンバ2は、シールドカバー13を介して接地されている。
【0048】
サセプタ(基板ヒータ部)15は、表面が平坦に形成された板状の部材である。サセプタ15の上面15aには、基板10が載置される。サセプタ15は、載置された基板10の法線方向が、支柱16の軸線と平行となるように形成される。
サセプタ15は、接地電極、つまりアノード電極として機能する。このため、サセプタ15は、導電性を有する金属等で形成されている。例えば、サセプタ15は、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成されている。
【0049】
サセプタ15は、アルミニウム、アルミニウム合金の表面にアルマイト処理したものとされる。
基板10がサセプタ15上に配置されると、基板10とシャワープレート5とは互いに近接して平行に位置される。
サセプタ15に基板10が配置された状態で、ガス噴出口6からプロセスガスを噴出させると、プロセスガスは基板10の処理面10a上の空間に供給される。
【0050】
サセプタ15は、ヒータを内蔵している。サセプタ15は、載置した基板10をヒータによって加熱および温度調節可能とされる。
サセプタ15の内部にはヒータ線19が設けられている。ヒータ線19によってサセプタ15および基板10の温度が所定の温度に調整される。
【0051】
ヒータ線19は、サセプタ15の鉛直方向から見たサセプタ15の略中央部の裏面から下方に向けて突出されている。
ヒータ線19は、サセプタ15の略中央部および支柱16に形成された貫通孔の内部に挿通されて、真空チャンバ2の外部へと導かれている。
【0052】
ヒータ線19は、真空チャンバ2の外部において、電源を備えた制御部30に接続される。
ヒータ線は、電源である制御部30から供給される電力に応じて、サセプタ15および基板10の温度を調節する。
【0053】
サセプタ15の上面15aには、基板10の径方向外側に隣接する位置に、基板マスク部31が周設される。
基板マスク部31は、基板10の全周に設けられる。基板マスク部31の厚さ寸法は、基板10の厚さ寸法よりも大きくされる。つまり、基板マスク部31の高さは、基板10の処理面10aよりも上向きに突出することができる。
【0054】
または、基板マスク部31は、基板10の処理面10aの周縁部を覆うことができる。
あるいは、基板マスク部31は、基板10の外側位置でサセプタ15に接していてもよい。
【0055】
真空チャンバ2の側壁24には、基板10を搬出又は搬入するために用いられる搬出入部26(搬出入口)が形成されている。
真空チャンバ2の側壁24における外側面には、搬出入部26を開閉するドアバルブ26aが設けられている。ドアバルブ26aは、例えば、上下方向にスライド可能である。
【0056】
ドアバルブ26aが下方(真空チャンバ2の底部11に向けた方向)にスライド移動したときは、搬出入部26が開口され、基板10を搬出又は搬入することができる。
一方、ドアバルブ26aが上方(電極フランジ4に向けた方向)にスライド移動したときは、搬出入部26が閉口され、基板10の処理(成膜処理)を行うことができる。
搬出入部26(搬出入口)の外方には、搬送手段としてのロボットハンド20が設けられている。
【0057】
サセプタ15には、基板10裏面の周縁部に接する位置に、複数の支持ピン17が設けられる。サセプタ15には、支持ピン17が貫通する貫通孔18が形成される。支持ピン17の上端部17aは拡径されている。貫通孔18はサセプタ15の上面15aに開口する部分が拡径されている。支持ピン17の上端部17aが貫通孔18の拡径部により支持されることで、支持ピン17が上昇したサセプタ15に支持される。サセプタ15が下降した際、支持ピン17の下端は底部11に当接する。下端が底部11に当接した支持ピン17の高さは、搬出入部26に対応する高さとされる。支持ピン17は、搬出入部26を介して基板10を真空チャンバ2に搬入および搬出する際に、下降したサセプタ15に変わって基板10を載置する。支持ピン17に載置された基板10は、上昇するサセプタ15によってシャワープレート5に近接する高さである処理位置まで上昇される。この際、基板10は、サセプタ15に載置される。
【0058】
サセプタ15の径方向外側には、マスク支持部33が周設される。マスク支持部33の先端部が、平面視してサセプタ(基板ヒータ部)15の外周よりも径方向外側に位置する。
マスク支持部33の先端部は、平面視して、基板マスク部31の外周よりも径方向内側に位置する。
【0059】
図2は、本実施形態における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
図3は、本実施形態における基板マスク部が下降した状態を示す模式拡大断面図である。
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、
図2,
図3に示すように、真空チャンバ2の径方向において、基板マスク部31の内周31a、サセプタ(基板ヒータ部)15の外周15c、マスク支持部33の先端部33a、マスク支持部33の基端部33bの順に同心状に配置されている。
【0060】
基板マスク部31は、外周31bの厚みに比べて、内周31aの厚みが小さくなる。基板マスク部31の上面(表面)31cには、内周31aに向けて傾斜する傾斜部31eが形成されている。基板マスク部31は、傾斜部31eよりも外周31bに近接する外側部31fが均一の厚さに形成されている。
【0061】
基板マスク部31の下面31dは、面一とされているが、サセプタ15に接触するように基板10に対応して内周31aに近接する位置に凹部が設けられていてもよい。
【0062】
なお、基板マスク部31においては、熱容量を大きくして温度変動を抑制するために、外側部31fの厚さ寸法が大きい方が好ましい。また、基板マスク部31においては、内周31aにおける厚さ寸法が大きすぎると、成膜特性に悪影響を与えるため好ましくない。
また、傾斜部31eの径方向寸法T31eは、成膜特性に悪影響を与えない範囲とされる。傾斜部31eの傾斜角度が大きすぎると成膜特性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0063】
マスク支持部33は、その基端部33bが側壁(壁部)24に接続固定されている。マスク支持部33は、その内部にマスク加熱部40としてのヒータ41が配置される。ヒータ41は、例えば、シースヒータとされる。ヒータ41は、マスク支持部33に対して絶縁されている。
【0064】
マスク支持部33は、真空チャンバ2の周方向のほぼ全長に延在する。
マスク支持部33の先端部33aは、周方向のほぼ全長で、サセプタ15の外周15cとの径方向距離が等しくなるように配置される。
【0065】
マスク支持部33は、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成されている。
ヒータ41は、マスク支持部33の周方向のほぼ全長に延在する。ヒータ41は、マスク支持部33の先端部33aによって形成される内周に沿って配置される。ヒータ41は、マスク支持部33の先端部33aと基端部33bとの間に延在する。
【0066】
ヒータ41の幅寸法、つまり、ヒータ41の径方向寸法は、マスク支持部33の先端部33aと基端部33bとの間の寸法、つまり、マスク支持部33の径方向寸法よりも小さく設定される。
ヒータ41は、側壁(壁部)24を貫通する配線41aを介して制御部30に接続されている。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41は、制御部30によって、加熱状態を制御可能である。
【0067】
マスク支持部33は、基端部33bと側壁(壁部)24との間に、熱絶縁部43が配置されている。
熱絶縁部43は、セラミックス等の熱絶縁部材からなり、たとえば、アルミナ、イットリア、ジルコニアなどで形成されている。熱絶縁部43は、ヒータ41でマスク支持部33が加熱された際に、マスク支持部33から側壁(壁部)24へと熱が流れることを防止する。熱絶縁部43は、マスク支持部33の温度低下を防止する。
【0068】
マスク支持部33は、搬出入部26(搬出入口)よりも上側、つまり、シャワープレート5に近接する高さに配置される。
したがって、サセプタ15が下降した際に、基板マスク部31がマスク支持部33上に載置される。
この際、基板マスク部31は、マスク支持部33に接触して、基板マスク部31は、マスク支持部33から加熱されることができる。
【0069】
また、基板マスク部31の上面31cは、プラズマ処理時に、サセプタ15の上面15aよりもシャワープレート5に近接する高さに配置される。
したがって、プラズマ処理時には、基板マスク部31がマスク支持部33より上方位置に離間する。プラズマ処理時には、基板マスク部31がマスク支持部33に接触していない。このとき、基板マスク部31は、サセプタ15上に載置される。
【0070】
基板マスク部31の外周31bは、側壁(壁部)24よりも径方向内側に位置する。したがって、シャワープレート5に近接する成膜空間2aから、基板マスク部31の外周31bより外側、マスク支持部33の上方、マスク支持部33の先端部33aとサセプタ15の外周15cとの間は、連通しており、ガス流が妨げられることがない。これにより、シャワープレート5に近接する成膜空間2aから、ガスを排気管27へと排気することができる。
【0071】
本実施形態におけるプラズマ処理装置1は、
図2,
図3に示すように、基板マスク部31の温度を検出する温度検出部50を有する。
【0072】
本実施形態における温度検出部50としては、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
温度検出部50は、放射温度計51と、検出孔52と、透光密閉部材53と、を有する。
【0073】
放射温度計51は、真空チャンバ2の外方に配置される。放射温度計51は制御部30に接続される。放射温度計51は制御部30に測定結果を出力する。
なお、図において、放射温度計51は、検出孔52内部に示されているが、この配置に限定されない。
【0074】
検出孔52は、放射温度計51から基板マスク部31を視認可能とするように真空チャンバ2の側壁(壁部)24を貫通する。検出孔52は、プラズマ処理位置とされた基板マスク部31の表面31cよりも上方、すなわち、シャワープレート5に近接して形成される。検出孔52は、真空チャンバ2の径方向外側から内側に向けて側壁(壁部)24を貫通する。
【0075】
検出孔52は、真空チャンバ2の径方向外側から内側に向けて下降するように傾斜する。
検出孔52は、基板マスク部31の表面31cを、プラズマ処理位置とされた状態、および、マスク支持部33に載置された状態を、いずれも放射温度計51が検出可能な形状とされる。
【0076】
透光密閉部材53は、検出孔52における真空チャンバ2の内側開口を密閉する。透光密閉部材53は、検出孔52を介して透過可能な透明部材からなる。透光密閉部材53は、プラズマに対する温度耐性、真空強度等の特性を有することが好ましい。
温度検出部50は、基板マスク部31の複数箇所で温度測定を可能なように、複数設けられることもできる。
【0077】
本実施形態におけるプラズマ処理装置1では、
図2に示すように、サセプタ15が上昇して、プラズマ処理位置とされた状態において、マスク加熱部40によってマスク支持部33は加熱しない。
ここで、ヒータ線19によってサセプタ15および基板10の温度が所定の温度に加熱されている。このとき、基板マスク部31は、サセプタ15に載置されており、基板マスク部31がサセプタ15に接触している。このため、基板マスク部31は、サセプタ15とほぼ同じ温度に加熱される。
【0078】
これに対して、プラズマ処理装置1では、
図3に示すように、マスク支持部33に載置された状態において、マスク加熱部40によってマスク支持部33が加熱される。このとき、基板マスク部31は、マスク支持部33に載置されている。基板マスク部31は、マスク支持部33に接触している。基板マスク部31は、マスク支持部33に加熱される。
【0079】
したがって、マスク支持部33に載置された状態において、マスク支持部33に加熱される基板マスク部31の温度を、プラズマ処理位置とされた状態において、サセプタ15によって加熱された基板マスク部31とほぼ同じ温度に設定する。
【0080】
これにより、マスク支持部33に載置された状態と、プラズマ処理位置とされた状態とにおいて、基板マスク部31をほぼ同じ温度に維持することができる。したがって、基板マスク部31における温度変化を抑制することができる。
【0081】
次に、プラズマ処理装置1を用いて基板10の処理面10aに成膜等のプラズマ処理をおこなうプラズマ処理方法について説明する。
【0082】
図4は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示すフローチャートである。
本実施形態におけるプラズマ処理方法は、
図4に示すように、前工程S00、プリデポ工程S01、基板マスク加熱工程S02、ハンドイン工程S11、ハンドダウン工程S12、ハンドアウト工程S13、サセプタ上昇工程S21、プラズマ処理工程S22、除電放電工程S23、サセプタ下降工程S24、ハンドイン工程S31、ハンドアップ工程S32、ハンドアウト工程S33、後工程S40を有する。
【0083】
本実施形態におけるプラズマ処理方法は、
図1~
図3に示すプラズマ処理装置1によっておこなわれる。
本実施形態におけるプラズマ処理方法は、まず、
図4に示す前工程S00として、真空チャンバ2内の雰囲気、温度条件等を所定の状態に設定する。
まず、ドアバルブ26aを閉じ、真空ポンプ28を用いて真空チャンバ2内を減圧する。
このとき、サセプタ15上には基板10は載置されていない。サセプタ15のヒータ線19には通電されていない。
また、基板マスク部31は、マスク支持部33上に載置されている。マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41は通電されていない。
【0084】
次に、
図4に示すプリデポ工程S01として、昇降駆動部16Aが起動し、支柱16を上昇する。上方へ押し上げられたサセプタ15上には載置された基板マスク部31も上方へ移動する。サセプタ15および基板マスク部31はプラズマ処理位置とされる。このとき、適切に成膜を行うために必要な間隔になるようにシャワープレート5と基板10との間隔が所望の値に決定され、この間隔が維持される。
【0085】
プリデポ工程S01においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。基板マスク部31は、加熱されたサセプタ15に接触しているため、サセプタ15とほぼ同じ温度に加熱されている。
また、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41は通電されていない。
【0086】
この状態で、プロセスガス供給部21からガス導入管7およびガス導入口4bを介して空間14にプロセスガスが導入される。そして、シャワープレート5のガス噴出口6から成膜空間2a内にプロセスガスが噴出される。
【0087】
プリデポ工程S01は、成膜1枚目の処理における空間14他の雰囲気を2枚目以降の状態と同様にするために、シャワープレート5やサセプタ15表面に成膜処理をおこなうための工程である。
次に、高周波電源9を起動して電極フランジ4に高周波電力を印加する。
すると、電極フランジ4の表面からシャワープレート5の表面を伝って高周波電流が流れ、シャワープレート5とサセプタ15との間に放電が生じる。そして、シャワープレート5とサセプタ15の上面15aとの間にプラズマPが発生する。
【0088】
こうして発生したプラズマP内でプロセスガスが分解され、プラズマ状態のプロセスガスが得られ、サセプタ15の上面15aで気相成長反応が生じ、薄膜が成膜される。このとき、基板マスク部31の上面31cで気相成長反応が生じ、薄膜が成膜される。
【0089】
所定時間が経過した後、高周波電源9からの電極フランジ4への高周波電力印加およびプロセスガスの導入を停止し、プリデポ工程S01を終了する。
【0090】
次に、
図4に示す基板マスク加熱工程S02として、真空チャンバ2内を真空に維持するとともに、ドアバルブ26aを閉塞した状態を維持する。同時に、基板マスク加熱工程S02においては、昇降駆動部16Aが起動し、支柱16を下降する。下方へ押し下げられたサセプタ15とともに、基板マスク部31も下方へ移動する。基板マスク部31は、マスク支持部33に当接して下降が停止する。
基板マスク部31は、マスク支持部33に載置された状態となる。サセプタ15は、さらに下降する。サセプタ15は、基板10の搬入が可能となる搬出入部26よりも下方の位置で停止する。
【0091】
図5は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
基板マスク加熱工程S02においては、真空チャンバ2内を真空に維持するとともに、ドアバルブ26aを閉塞した状態を維持する。基板マスク加熱工程S02においては、
図5に示すように、サセプタ15の上面15aから、支持ピン17の上端17aが上方に突出している。
【0092】
基板マスク加熱工程S02においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電される。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
【0093】
基板マスク加熱工程S02においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プリデポ工程S01における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0094】
これにより、基板マスク加熱工程S02においては、プリデポ工程S01において基板マスク部31に形成された膜と、基板マスク部31との間に温度差を生じることがない。したがって、基板マスク部31から発塵して、パーティクルが発生することがない。
【0095】
なお、基板マスク加熱工程S02と同時に、あるいは、基板マスク加熱工程S02の終了後に、真空チャンバ2にクリーニングガスを供給して、クリーニング工程をおこなうこともできる。クリーニングガスとしては、例えば、塩素ガス、BCl3ガス、NF3ガス,F2ガス,CF4ガス,C2F6ガス,C3F8ガス等を挙げることができる。
【0096】
次に、
図4に示すハンドイン工程S11として、真空チャンバ2内が真空に維持された状態で、ドアバルブ26aを開き、真空チャンバ2の搬出入部26を介して、真空チャンバ2の外部から成膜空間2aに向けて基板10が搬入される。
図6は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0097】
ハンドイン工程S11においては、
図6に示すように、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
この状態で、搬送手段としてのロボットハンド20が、
図6に示すように、搬出入部26(搬出入口)の外方から、基板10を載置して真空チャンバ2内に進入する。
【0098】
ハンドイン工程S11においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電される。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
ハンドイン工程S11においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。
【0099】
ハンドイン工程S11においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プリデポ工程S01における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0100】
ハンドイン工程S11においては、加熱されたサセプタ15に対して、例えば室温程度の冷えた基板10およびロボットハンド20が進入する。これにより、高温のサセプタ15からの基板マスク部31への放射熱が遮られる。
【0101】
マスク加熱部40がない場合には、この冷たい基板10およびロボットハンド20によってサセプタ15からの放射熱が遮られることで、基板マスク部31の温度が急速に低下していた。この際、熱膨張率の違いから、プリデポ工程S01で付着していた膜が基板マスク部31から剥離して、進入してきた基板10に落下して、成膜特性を悪化させる場合があった。
【0102】
これに対して、本実施形態のハンドイン工程S11においては、冷たい基板10の進入時に、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
【0103】
次に、
図4に示すハンドダウン工程S12として、基板10を支持ピン17に載置する。
図7は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
ハンドダウン工程S12においては、
図7に示すように、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
この状態で、搬送手段としてのロボットハンド20が下降して、
図7に示すように、基板10を支持ピン17の上端17aに載置する。さらに、ロボットハンド20が下降して、ロボットハンド20は、基板10から離間する。
【0104】
ハンドダウン工程S12においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電される。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
ハンドダウン工程S12においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。
【0105】
ハンドダウン工程S12においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プリデポ工程S01における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0106】
ハンドダウン工程S12においては、加熱されたサセプタ15に対して、例えば室温程度とされる常温の冷えた基板10およびロボットハンド20が被さっている。これにより、高温のサセプタ15からの基板マスク部31への放射熱が遮られる。また、基板10はサセプタ15に接触していないため、高温のサセプタ15から接触加熱されていない。
【0107】
マスク加熱部40がない場合には、この冷たい基板10およびロボットハンド20によってサセプタ15からの放射熱が遮られることで、基板マスク部31の温度が低下していた。この際、熱膨張率の違いから、プリデポ工程S01で付着していた膜が基板マスク部31から剥離して、成膜前の基板10に落下して、成膜特性を悪化させる場合があった。
【0108】
これに対して、本実施形態のハンドダウン工程S12においては、サセプタ15に接触しておらず基板10が冷たい間においても、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
【0109】
次に、
図4に示すハンドアウト工程S13として、ロボットハンド20を真空チャンバ2の外部に退出させる。
図8は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0110】
ハンドアウト工程S13においては、
図8に示すように、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
【0111】
ハンドアウト工程S13においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電される。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
ハンドアウト工程S13においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。
【0112】
ハンドアウト工程S13においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プリデポ工程S01における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0113】
ハンドアウト工程S13においては、加熱されたサセプタ15に対して、例えば室温程度とされる常温の冷えた基板10が被さっている。これにより、高温のサセプタ15からの基板マスク部31への放射熱が遮られる。また、基板10はサセプタ15に接触していないため、高温のサセプタ15から接触加熱されていない。
【0114】
マスク加熱部40がない場合には、この冷たい基板10によってサセプタ15からの放射熱が遮られることで、基板マスク部31の温度が低下していた。この際、熱膨張率の違いから、プリデポ工程S01で付着していた膜が基板マスク部31から剥離して、成膜前の基板10に落下して、成膜特性を悪化させる場合があった。
【0115】
これに対して、本実施形態のハンドアウト工程S13においては、サセプタ15に接触しておらず基板10が冷たい間においても、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
ハンドアウト工程S13の終了後に、真空チャンバ2内が真空に維持された状態で、ドアバルブ26aを閉じる。
【0116】
次に、
図4に示すサセプタ上昇工程S21として、サセプタ15を真空チャンバ2の上方に向けて上昇させる。
図9は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
図10は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0117】
サセプタ上昇工程S21においては、昇降駆動部16Aが起動し、支柱16を上昇する。上方へ押し上げられたサセプタ15の上面15aは、
図9に示すように、支持ピン17の上端17aに載置された基板10に接触する。
サセプタ15の上面15aに接触した基板10は、高温のサセプタ15によって加熱が開始される。
この状態では、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
【0118】
サセプタ上昇工程S21においては、昇降駆動部16Aに駆動されて、支柱16がさらに上昇する。さらに上方へ押し上げられたサセプタ15によって、支持ピン17の上端17aが貫通孔18内に収納され、基板10がサセプタ15によって支持される。
【0119】
さらに上方へ押し上げられたサセプタ15およびサセプタに載置された基板10は、基板マスク部31に接触する。
そして、サセプタ15および基板10は、基板マスク部31とともに上方へ移動する。このとき、マスク支持部33から基板マスク部31が離間する。基板マスク部31は、サセプタ15および基板10に載置される。
【0120】
サセプタ上昇工程S21において、マスク支持部33と基板マスク部31とが離間して、基板マスク部31がサセプタ15に接触した時点で、マスク加熱部40によるマスク支持部33の加熱を停止する。
高温のサセプタ15に接触した基板マスク部31は、サセプタ15によって加熱される。したがって、マスク支持部33から離間しても、基板マスク部31の温度は低下しない。また、マスク加熱部40によるマスク支持部33の加熱を停止しても、基板マスク部31の温度は低下しない。
【0121】
サセプタ上昇工程S21においては、さらに昇降駆動部16Aに駆動されて、支柱16がさらに上昇する。上方へ押し上げられたサセプタ15、基板10、基板マスク部31は、
図10に示すように、プラズマ処理位置で停止する。このとき、適切に成膜を行うために必要な間隔になるようにシャワープレート5と基板10との間隔が所望の値に決定され、この間隔が維持される。
基板マスク部31は、サセプタ15および基板10に載置された状態を維持する。基板マスク部31は、サセプタ15によって加熱された状態を維持する。
【0122】
次に、
図4に示すプラズマ処理工程S22として、チャンバ2の内部でプラズマを形成する。
図11は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0123】
プラズマ処理工程S22においては、プロセスガス供給部21からガス導入管7およびガス導入口4bを介して空間14にプロセスガスが導入される。そして、シャワープレート5のガス噴出口6から成膜空間2a内にプロセスガスが噴出される。
【0124】
次に、高周波電源9を起動して電極フランジ4に高周波電力を印加する。
すると、電極フランジ4の表面からシャワープレート5の表面を伝って高周波電流が流れ、シャワープレート5とサセプタ15との間に放電が生じる。そして、シャワープレート5と基板10の処理面10aとの間には、
図11に示すように、プラズマPが発生する。
【0125】
こうして発生したプラズマP内でプロセスガスが分解され、プラズマ状態のプロセスガスが得られ、基板10の処理面10aで気相成長反応が生じ、薄膜が処理面10a上に成膜される。
所定の処理時間が経過した後、プラズマ処理工程S22を終了する。例えば、好ましい膜厚まで成膜が完了した際に、プラズマ処理工程S22を終了することができる。
【0126】
なお、プラズマ処理工程S22においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定してもよい。また、基板マスク部31の表面31c温度を測定しないこともできる。
【0127】
次に、
図4に示す除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24として、チャンバ2の内部でプラズマを形成した状態で、基板10の除電をおこなう。
図12は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
図13は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0128】
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、
図12に示すように、プラズマ処理工程S22に引き続き、プラズマPが発生した状態を維持する。
この状態で、昇降駆動部16Aによって駆動された支柱16が下降する。下方へ押し下げられたサセプタ15、基板10は、プラズマ処理位置から下降する。
さらに下方へ押し下られたサセプタ15にしたがって、基板マスク部31がマスク支持部33に接触する。
【0129】
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24において、マスク支持部33と基板マスク部31とが接触して、基板マスク部31とサセプタ15とが離間した時点で、マスク加熱部40によるマスク支持部33の加熱を開始する。なお、ヒータ41への通電は、マスク支持部33と基板マスク部31との接触前からONとして、マスク支持部33の加熱を開始しておくことが望ましい。
この状態では、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
【0130】
サセプタ15およびサセプタに載置された基板10は、基板マスク部31から離間した後、昇降駆動部16Aに駆動されて、さらに下方へ押し下げられる。
【0131】
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、昇降駆動部16Aに駆動されて、支柱16がさらに下降する。さらに下方へ押し下げられたサセプタ15によって、
図12に示すように、支持ピン17の下端が底部11に接触する。基板10は、支持ピン17の上端17aに載置される。基板10は、サセプタ15から離間する。
サセプタ15から離間したときから、基板10への加熱が弱くなり、温度が下がり始める。
【0132】
基板10がサセプタ15から離間した後も、サセプタ15は、昇降駆動部16Aに駆動されて、さらに下方へ押し下げられる。
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、サセプタ15は、
図13に示すように、基板10の搬入が可能となる搬出入部26よりも下方の位置で停止する。このとき、サセプタ15の上面15aから、支持ピン17の上端17aが上方に突出している。基板10は、サセプタ15から離間している。
このサセプタ15の高さ状態において、プラズマPを所定時間維持して、基板10の除電をおこなう。
【0133】
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電された状態とする。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、載置されたサセプタ15、または、載置されたマスク支持部33によって加熱される。
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、サセプタ15の内部においてヒータ線19の通電が維持される。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。
【0134】
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プラズマ処理工程S22における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0135】
除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、加熱されたサセプタ15に対して、サセプタ15から離間して温度が低下し始めた基板10が被さっている。これにより、高温のサセプタ15からの基板マスク部31への放射熱が遮られる。また、基板10はサセプタ15に接触していないため、高温のサセプタ15から接触加熱されていない。
【0136】
マスク加熱部40がない場合には、温度の低下した基板10によってサセプタ15からの放射熱が遮られることで、基板マスク部31の温度が低下していた。この際、熱膨張率の違いから、プラズマ処理工程S22で付着していた膜が基板マスク部31から剥離して、成膜後の基板10に落下して、膜特性を悪化させる場合があった。
【0137】
これに対して、本実施形態の除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24においては、サセプタ15に接触しておらず基板10が冷却している間においても、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
【0138】
基板10の除電が完了した時点で、除電放電工程S23およびサセプタ下降工程S24を終了する。
また、プロセスガス供給部21からガス導入管7およびガス導入口4bを介して空間14へのプロセスガスの導入を停止する。
同様に、高周波電源9からの電極フランジ4への高周波電力の印加を停止する。
これにより、プラズマPの形成を終了する。
【0139】
次に、
図4に示すハンドイン工程S31として、真空チャンバ2内が真空に維持された状態で、ドアバルブ26aを開き、真空チャンバ2の搬出入部26を介して、成膜空間2aから真空チャンバ2の外部に向けて基板10の搬出を開始する。
図14は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0140】
ハンドイン工程S31においては、
図14に示すように、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
この状態で、搬送手段としてのロボットハンド20が、
図14に示すように、搬出入部26(搬出入口)の外方から、真空チャンバ2内の基板10とサセプタ15との間に進入する。
【0141】
ハンドイン工程S31においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41への通電が維持される。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱された状態を維持する。
ハンドイン工程S31においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。
【0142】
ハンドイン工程S31においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プラズマ処理工程S22における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0143】
ハンドイン工程S31においては、加熱されたサセプタ15と、このサセプタ15よりも温度が低下した基板10とに対して、例えば室温程度の冷えたロボットハンド20が進入する。これにより、高温のサセプタ15および、多少温度が低下した基板10からの基板マスク部31への放射熱が遮られる。
【0144】
マスク加熱部40がない場合には、冷たいロボットハンド20によってサセプタ15からの放射熱が遮られることで、基板マスク部31の温度が急速に低下していた。この際、熱膨張率の違いから、プラズマ処理工程S22で付着していた膜が基板マスク部31から剥離して、成膜後の基板10に落下して、膜特性を悪化させる場合があった。
【0145】
これに対して、本実施形態のハンドイン工程S31においては、冷たいロボットハンド20の進入時に、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
【0146】
なお、ハンドイン工程S31においては、温度が低下しているとはいえ、基板10はまだ室温まで冷却されていない。このため、ハンドイン工程S11に比べて、ハンドイン工程S31において、ヒータ41の加熱によって補う基板マスク部31の温度低下分は小さくなる。
【0147】
次に、
図4に示すハンドアップ工程S32として、基板10をロボットハンド20により持ち上げる。
図15は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
ハンドアップ工程S32においては、
図15に示すように、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
この状態で、搬送手段としてのロボットハンド20が上昇して、
図15に示すように、支持ピン17の上端17aに載置されていた基板10を受け取る。さらに、ロボットハンド20が上昇して、ロボットハンド20は、基板10を支持する。
【0148】
ハンドアップ工程S32においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電された状態を維持する。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
ハンドダウン工程S12においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。
【0149】
ハンドアップ工程S32においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プラズマ処理工程S22における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0150】
ハンドアップ工程S32においては、加熱されたサセプタ15に対して、ハンドイン工程S31よりもさらに冷却された基板10および冷たいロボットハンド20が被さっている。これにより、高温のサセプタ15からの基板マスク部31への放射熱が遮られる。また、基板10はサセプタ15に接触していないため、高温のサセプタ15から接触加熱されていない。
【0151】
マスク加熱部40がない場合には、この低温の基板10およびロボットハンド20によってサセプタ15からの放射熱が遮られることで、基板マスク部31の温度が低下していた。この際、熱膨張率の違いから、プラズマ処理工程S22で付着していた膜が基板マスク部31から剥離して、成膜後の基板10に落下して、成膜特性を悪化させる場合があった。
【0152】
これに対して、本実施形態のハンドアップ工程S32においては、サセプタ15に接触しておらず基板10が冷却している間においても、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
【0153】
次に、
図4に示すハンドアウト工程S33として、基板10を載置したロボットハンド20を真空チャンバ2の外部に退出させて、基板10を搬出する。
図16は、本実施形態におけるプラズマ処理方法を示す工程図である。
【0154】
ハンドアウト工程S33においては、
図16に示すように、基板マスク部31はマスク支持部33に載置されている。
【0155】
ハンドアウト工程S33においては、マスク支持部33において、マスク加熱部40となるヒータ41が通電された状態を維持する。ヒータ41は、制御部30から電力を供給されて加熱される。ヒータ41による加熱は、熱絶縁部43によってマスク支持部33と側壁(壁部)24との間が断熱されているため、効率的におこなわれる。
基板マスク部31は、マスク支持部33によって加熱される。
ハンドアウト工程S13においては、サセプタ15の内部のヒータ線19が通電されている。ヒータ線19によってサセプタ15の温度が所定の温度になるよう加熱される。なお、後工程でプラズマ処理を続けておこなわない場合には、ヒータ線19への通電を終了してもよい。
【0156】
ハンドアウト工程S33においては、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定する。
制御部30は、温度検出部50の出力に基づいて、ヒータ41の加熱状態を制御する。具体的には、プラズマ処理工程S22における基板マスク部31の表面31c温度とほぼ同じ温度を維持するようにヒータ41の加熱状態を制御する。
【0157】
ハンドアウト工程S33においては、基板マスク部31に対して加熱されたサセプタ15を遮るものがない。これにより、高温のサセプタ15からの基板マスク部31への放射熱が遮られていない。
【0158】
本実施形態のハンドアウト工程S33において、基板10が真空チャンバ2内にある間は、サセプタ15に接触しておらず基板10が冷却されていても、温度検出部50の放射温度計51によって、基板マスク部31の表面31c温度を測定し、温度低下分をヒータ41の加熱によって補うことができる。したがって、基板マスク部31の温度が低下しないように維持することができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
ハンドアウト工程S33の終了後に、真空チャンバ2内が真空に維持された状態で、ドアバルブ26aを閉じる。
【0159】
なお、ハンドアウト工程S33の終了後に、後工程S40として、真空チャンバ2にクリーニングガスを供給して、クリーニング工程をおこなうこともできる。クリーニングガスとしては、例えば、塩素ガス、BCl3ガス、NF3ガス,F2ガス,CF4ガス,C2F6ガス,C3F8ガス等を挙げることができる。
さらに、後工程S40として、真空チャンバ2内部の温度安定化を目的としてガスフロー処理やプラズマ放電処理等といった工程を行うことができる。
【0160】
後工程S40の終了後に、続けて他の基板10にプラズマ処理をおこなう場合には、前工程S00、プリデポ工程S01、基板マスク加熱工程S02のいずれかに戻ることができる。
【0161】
本実施形態のプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法によれば、基板マスク部31の温度を低下させることなく、プラズマ処理をおこなうことができる。これにより、パーティクルの発生を防止することができる。
【0162】
特に、マスク加熱部40がない場合において、最も基板マスク部31の温度が低下する基板10の搬入工程全般において、基板マスク部31の温度をほぼ一定に維持することが可能となる。
【0163】
しかも、基板マスク部31がマスク支持部33に接触している間、つまり、基板マスク部31が、加熱源であるサセプタ15に接触していない間は、基板マスク部31の温度をほぼ一定に維持することができる。
【0164】
これにより、基板マスク部31と、基板マスク部31表面に付着した膜とが熱膨張率の違いから剥離して、パーティクルとなることを防止することができる。
したがって、部品点数が少なく簡単な構成で、成膜効率を向上して、収率を向上し、膜特性を向上することが可能となる。
【0165】
さらに、本実施形態においては、基板マスク部31の温度が低下することで生じる、他のチャンバ構成部品との熱伸びの違いに起因した部品歪みが原因となる搬送トラブルの低減化という効果を奏することができる。
【0166】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図17は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、温度検出部に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0167】
本実施形態における温度検出部50としては、基板マスク部31の下面31dの温度を測定可能とする。
温度検出部50は、放射温度計55と、検出孔56,56aと、透光密閉部材57と、を有する。
【0168】
放射温度計55は、真空チャンバ2の底部(内底面)11の外方に配置される。すなわち、放射温度計55は、真空チャンバ2の底部(内底面)11の下方に配置される。放射温度計55は、放射温度計51と同様に制御部30に接続される。放射温度計55は、放射温度計51と同様に制御部30に測定結果を出力する。
なお、図において、放射温度計55は、検出孔56内部に示されているが、この配置に限定されない。
【0169】
検出孔56は、放射温度計55から基板マスク部31の下面31dを視認可能とするように真空チャンバ2の底部(内底面)11を貫通する。検出孔56は、プラズマ処理位置とされた基板マスク部31の下面31dよりも下方、すなわち、底部(内底面)11の下方位置に形成される。検出孔56は、真空チャンバ2において、鉛直方向に向けて底部(内底面)11を貫通する。
【0170】
検出孔56aは、放射温度計55から基板マスク部31の下面31dを視認可能とするようにサセプタ15を貫通する。検出孔56aは、プラズマ処理位置とされた基板マスク部31の下面31dよりも下方、すなわち、底部(内底面)11に近接する位置に形成される。検出孔56aは、サセプタ15において、鉛直方向に向けてサセプタの厚み方向に貫通する。
【0171】
検出孔56と検出孔56aとは、軸線方向が一致している。つまり、検出孔56と検出孔56aとは、放射温度計55から基板マスク部31の下面31dを視認可能とするように、底部(内底面)11とサセプタ15とを連続して貫通するように形成されている。
【0172】
検出孔56と検出孔56aとは、基板マスク部31の下面31dを、プラズマ処理位置とされた状態、および、マスク支持部33に載置された状態において、いずれも放射温度計55が検出可能な形状とされる。
【0173】
透光密閉部材57は、検出孔56における真空チャンバ2の内側開口を密閉する。透光密閉部材57は、検出孔56を介して透過可能な透明部材からなる。透光密閉部材57は、プラズマに対する温度耐性、真空強度等の特性を有することが好ましい。
温度検出部50は、基板マスク部31の複数箇所で下面31dの温度測定を可能なように、複数設けられることもできる。
【0174】
本実施形態におけるプラズマ処理装置1では、
図17に示すように、基板マスク部31の表面31cの温度に比べて、変動が激しい基板マスク部31の下面31dの温度を測定することができる。
パーティクルの原因となる膜は、基板マスク部31の表面31cに形成されているため、基板マスク部31の表面31cの温度制御をおこなうことにより、膜の剥離防止をおこなうことができる。
【0175】
ここで、真空チャンバ2の覗き窓となる検出孔56から基板マスク部31の温度を放射温度計55で測定することで、より一層、正確な温度制御が可能となる。またこの時基板マスク部31の温度を測定する箇所は基板マスク部31の下面31dが望ましい。
これは成膜面側である上面31cには膜が付着してしまい、放射率が膜厚によって変化してしまうために、成膜を重ねるごとに温度測定の制度が低くなるためである。基板マスク部の温度制御を容易に可能とすることができる。
【0176】
これに加えて、基板マスク部31の下面31dは、加熱源であるマスク支持部33あるいはサセプタ15に接触するため、基板マスク部31の下面31dの温度を測定することで、より速く、またより正確に基板マスク部31の温度変化を捉えることが可能となる。すなわち、基板マスク部31の下面31d温度を測定すると、より正確に基板マスク部31の温度変化に対応することが可能となる。
【0177】
さらに、本実施形態においては、基板マスク部31の下面31dの温度を制御することで、サセプタ15との温度差を抑制することが可能となる。これにより、基板マスク部31が高温のサセプタ15の上に接触した際の熱伸びに起因した、基板マスク部31とサセプタ15との擦れによるパーティクルの発生を抑制することが容易になるという効果を奏することができる。
【0178】
なお、本実施形態においては、温度検出部50として放射温度計51と放射温度計55とを配置したが、放射温度計55のみである構成も可能である。
【0179】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図18は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
図19は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部を示す模式平面図である。
図20は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部が下降した状態を示す模式拡大断面図である。
本実施形態において、上述した第1および第2実施形態と異なるのは、マスク加熱部に関する点であり、これ以外の上述した第1および第2実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0180】
本実施形態におけるマスク加熱部40は、
図18~
図20に示すように、基板マスク部31に埋め込まれたヒータ42,44を有する。また、本実施形態におけるマスク加熱部40は、マスク支持部33の内部には埋め込まれたヒータは有していない。
【0181】
ヒータ42,44は、線状のシースヒータとされる。ヒータ42,44は、基板マスク部31に対して絶縁されている。
ヒータ42,44は、
図19に示すように、基板マスク部31の周方向のほぼ全長に延在する。ヒータ42,44は、いずれも基板マスク部31の内周31aに沿って配置される。ヒータ42,44は、基板マスク部31の内周31aと外周31bとの間に周設される。
【0182】
ヒータ42,44は、
図18,
図20に示すように、いずれも基板マスク部31の内部で、厚さ方向の略中央に設けられる。
ヒータ42とヒータ44とは、基板マスク部31の厚さ方向において、ほぼ同じ位置に設けることができる。
【0183】
あるいは、基板マスク部31の厚さ方向において、ヒータ42,44の設けられる位置は、他の配置とすることもできる。例えば、ヒータ42,44は、基板マスク部31の厚さ方向において、上面31cに近接する位置に設けることができる。あるいは、ヒータ42,44は、基板マスク部31の厚さ方向において、下面31dに近接する位置に設けることができる。
ヒータ42とヒータ44とは、基板マスク部31の厚さ方向において、互いに異なる位置に設けることもできる。
【0184】
ヒータ42とヒータ44とは、
図19に示すように、基板マスク部31を平面視して、同心状に異なる径寸法を有する。
ヒータ42は、ヒータ44よりも基板マスク部31の内周31aに近接する位置に内周31aに沿って配置される。
【0185】
ヒータ42は、基板マスク部31の全周で、内周31aから等距離に離間する配置とされてもよい。
ヒータ42は、基板マスク部31の径方向において、傾斜部31eに近接する位置に配置される。例えば、ヒータ42は、基板マスク部31の径方向において、傾斜部31eの外周31bに近接する境界に沿って配置される。
【0186】
ここで、基板マスク部31において、温度低下を避けるためには、その厚さ寸法が大きい方が、熱容量が大きくなるため好ましい。しかし、基板マスク部31では、基板10への成膜特性を考慮して、内周31aに近接する部分では、厚さ寸法が小さくなるように設定されている。
【0187】
厚さが小さくなった部分における基板マスク部31の熱容量減少に対応するため、ヒータ42は、なるべく内周31aに近接している位置に配置されることが好ましい。したがって、基板マスク部31において、均一の厚さである外側部31fが充分な厚みを有している場合には、ヒータ42が平面視して傾斜部31eに一致する位置に設けられることもできる。
【0188】
なお、基板マスク部31においては、熱容量を大きくして温度変動を抑制するために、外側部31fの厚さ寸法が大きい方が好ましい。また、基板マスク部31においては、内周31aにおける厚さ寸法が大きすぎると、成膜特性に悪影響を与えるため好ましくない。
また、傾斜部31eの径方向寸法は、成膜特性に悪影響を与えない範囲とされる。傾斜部31eの傾斜角度が大きすぎると成膜特性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0189】
さらに、ヒータ42の太さは、ヒータ42の長さ当たりに必要な発熱量と、基板マスク部31の周方向の全長における長さと、基板マスク部31にヒータ42を埋め込む際に必要な厚さ寸法(肉厚)との兼ね合いで決定される。
【0190】
これらの条件を勘案して、基板マスク部31の径方向における、ヒータ42の配置が決定される。
【0191】
ヒータ44は、ヒータ42よりも基板マスク部31の外周31bに近接する位置に、外周31bに沿って配置される。
【0192】
ヒータ44は、基板マスク部31の全周で、外周31bから等距離に離間する配置とされてもよい。
ヒータ44は、基板マスク部31の径方向において、基板マスク部31の外周31bと傾斜部31eの外縁との中間位置付近に配置される。例えば、ヒータ44は、基板マスク部31の径方向において、基板マスク部31がマスク支持部33に載置された際に、平面視してマスク支持部33に重なる範囲となる外側部31fに配置される。
【0193】
ここで、基板マスク部31において、温度低下を避けるためには、その厚さ寸法が大きい方が、熱容量が大きくなるため好ましい。しかし、基板マスク部31では、基板10への成膜特性を考慮して、内周31aに近接する部分では、厚さ寸法が小さくなるように設定されている。
【0194】
したがって、基板マスク部31において、均一の厚さである外側部31fが充分な厚みを有している場合には、ヒータ42が傾斜部31eを加熱する位置に設けられるとともに、ヒータ44が外側部31fを加熱する位置に設けられることもできる。
【0195】
また、基板マスク部31においては、外側部31fがマスク支持部33に接触するため、このマスク支持部33にヒータが設けられていない場合には、基板マスク部31の温度低下を防止するために、ヒータ44は、マスク支持部33も加熱可能な能力を有することが好ましい。
基板マスク部31において、厚さの大きな外側部31fの熱容量に対応するため、ヒータ44は、内周31aに近接しているヒータ42に比べて、大きな発熱量とされることが好ましい。
【0196】
さらに、ヒータ44の太さは、ヒータ44の長さ当たりに必要な発熱量と、基板マスク部31の周方向の全長における長さと、基板マスク部31にヒータ44を埋め込む際に必要な厚さ寸法(肉厚)との兼ね合いで決定される。
【0197】
これらの条件を勘案して、基板マスク部31の径方向における、ヒータ44の配置が決定される。
【0198】
ヒータ42とヒータ44とは、
図18,
図20に示すように、それぞれが制御部30に接続されている。
【0199】
ヒータ42は、
図18,
図20に示すように、配線42a、接点42b、接点42c、配線42dを介して制御部30に接続されている。配線42a、接点42b、接点42c、配線42dは、いずれも導体から形成されている。
配線42aは、ヒータ42と接点42bとを接続している。配線42aは、基板マスク部31を貫いている。
【0200】
接点42bは、
図19に示すように、ヒータ42の両端部となる位置にそれぞれ設けられる。
接点42bは、基板マスク部31の下面31dに形成される。接点42bは、基板マスク部31の下面31dよりも下方に突出して形成される。
接点42cは、マスク支持部33の上面33cに形成される。接点42cは、マスク支持部33の上面33cよりも上方に突出して形成される。
配線42dは、接点42cに接続される。接点42cは、マスク支持部33および側壁(壁部)24を貫通する配線42dを介して、制御部30に接続されている。
【0201】
接点42bと接点42cとは、
図18~
図20に示すように、平面視して互いに重なる位置に設けられる。
接点42bと接点42cとは、
図20に示すように、基板マスク部31がマスク支持部33に載置された際に、互いに接触する。また、接点42bと接点42cとは、
図18に示すように、基板マスク部31がマスク支持部33から離間した際に、互いに接触しない。
つまり、接点42bと接点42cとは、
図18,
図20に示すように、サセプタ15の上昇下降に連動して、接触・離間される。
なお、ヒータ42の両端部となる2箇所の接点42bは、サセプタ15の上昇下降に連動して、対応する接点42cに対して同時に接触・離間される。
【0202】
ヒータ44は、
図18,
図20に示すように、配線44a、接点44b、接点44c、配線44dを介して制御部30に接続されている。配線44a、接点44b、接点44c、配線44dは、いずれも導体から形成されている。
配線44aは、ヒータ44と接点44bとを接続している。配線44aは、基板マスク部31を貫いている。
【0203】
接点44bは、
図19に示すように、ヒータ44の両端部となる位置にそれぞれ設けられる。
接点44bは、基板マスク部31の下面31dに形成される。接点44bは、基板マスク部31の下面31dよりも下方に突出して形成される。
接点44cは、マスク支持部33の上面33cに形成される。接点44cは、マスク支持部33の上面33cよりも上方に突出して形成される。
配線44dは、接点44cに接続される。接点44cは、マスク支持部33および側壁(壁部)24を貫通する配線44dを介して、制御部30に接続されている。
【0204】
接点44bと接点44cとは、
図18~
図20に示すように、平面視して互いに重なる位置に設けられる。
接点44bと接点44cとは、
図20に示すように、基板マスク部31がマスク支持部33に載置された際に、互いに接触する。また、接点44bと接点44cとは、
図18に示すように、基板マスク部31がマスク支持部33から離間した際に、互いに接触しない。
つまり、接点44bと接点44cとは、
図18,
図20に示すように、サセプタ15の上昇下降に連動して、接触・離間される。
なお、ヒータ44の両端部となる2箇所の接点44bは、サセプタ15の上昇下降に連動して、対応する接点44cに対して同時に接触・離間される。
【0205】
接点42bと接点44bとは、
図19に示すように、平面視して互いに異なる位置に設けられる。
また、2箇所の接点42bと接点42cとの組、および、2箇所の接点44bと接点44cとの組は、
図18,
図20に示すように、いずれも、同時に接触・離間される。
【0206】
次に、プラズマ処理装置1を用いて基板10の処理面10aに成膜等のプラズマ処理をおこなうプラズマ処理方法について説明する。
【0207】
本実施形態におけるプラズマ処理方法は、
図4に示した第1実施形態と同様に、基板マスク加熱工程S02、ハンドイン工程S11、ハンドダウン工程S12、ハンドアウト工程S13、および、除電放電工程S23、サセプタ下降工程S24、ハンドイン工程S31、ハンドアップ工程S32、ハンドアウト工程S33、において、マスク加熱部40を加熱状態とする。
【0208】
ここで、本実施形態におけるプラズマ処理方法は、マスク加熱部40の加熱切り替えが、サセプタ15の上昇下降動作と連動する。
すなわち、サセプタ15が下降して、基板マスク部31をマスク支持部33に載置すると、
図20に示すように、接点42bと接点42c、および、接点44bと接点44c、がそれぞれ接触して、ヒータ42およびヒータ44に電源である制御部30から通電されたON状態となる。
また、サセプタ15が上昇して、基板マスク部31がマスク支持部33から離間すると、
図18に示すように、接点42bと接点42c、および、接点44bと接点44c、がそれぞれ切断して、ヒータ42およびヒータ44に電源である制御部30からの通電が解除されたOFF状態となる。
【0209】
このように、本実施形態におけるプラズマ処理方法は、マスク加熱部40のスイッチングをサセプタ15の動作のみでおこなうことが可能となる。
【0210】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができるとともに、さらに、基板マスク部31に設置したヒータ42,44により、基板マスク部31の温度を直接制御することができ、かつ基板マスク部31の温度上昇を素早く実施することができる。これにより、基板マスク部31の温度低下をより一層防止することが可能になるという効果を奏することができる。
【0211】
また、本実施形態においては、サセプタ15の上下動にともなって、接点42bと接点42c、および、接点44bと接点44c、がそれぞれ接触・切断動作を確実におこなうためには、基板マスク部31がサセプタ15の上面15aと平行な状態を維持することが必要である。
したがって、基板マスク部31に対して、水平な姿勢を維持したまま上下動作を規制する上下動作規制レール等を有することもできる。
【0212】
また、本実施形態においては、マスク加熱部40として、2本のヒータ42およびヒータ44を基板マスク部31に配置したが、ヒータの本数は2本に限定されない。基板マスク部31の幅寸法(径方向寸法)に対応して、ヒータを1本、あるいは、ヒータを3本以上の複数本とすることができる。
この場合、複数本のヒータは、異なる径方向配置寸法で、いずれも同心状に形成されることができる。
【0213】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図21は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部が上昇した状態を示す模式拡大断面図である。
本実施形態において、上述した第1~第3実施形態と異なるのは、マスク加熱部に関する点であり、これ以外の上述した第1~第3実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0214】
本実施形態におけるマスク加熱部40は、
図21に示すように、第2および第2実施形態におけるマスク支持部33に埋め込まれたヒータ41と、第3実施形態における基板マスク部31に埋め込まれた2本のヒータのうち、内周31aに近接するヒータ42とを備えている。
【0215】
また、接点42bは、基板マスク部31の下面31dに設けられた凹部42fの内部に配置される。
同時に、接点42cは、マスク支持部33の上面33cから突出する高さ寸法が、第3実施形態における接点42cに比べて、大きくなるように形成されている。
【0216】
ここで、接点42cがマスク支持部33の上面33cから追加して突出する高さ寸法は、凹部42fにおける下面31dからの深さ寸法と等しくなるように設定されている。
【0217】
これにより、基板マスク部31がマスク支持部33に載置された際に、基板マスク部31の下面31dがマスク支持部33の上面33cに大きな面積で接触し、基板マスク部31がマスク支持部33のヒータ41によって充分加熱されることができる。
同時に、基板マスク部31がマスク支持部33に載置された際に、接点42bと接点42cとが確実に接触して、ヒータ42に通電することができる。
【0218】
本実施形態におけるプラズマ処理方法は、
図4に示した第1実施形態と同様に、基板マスク加熱工程S02、ハンドイン工程S11、ハンドダウン工程S12、ハンドアウト工程S13、および、除電放電工程S23、サセプタ下降工程S24、ハンドイン工程S31、ハンドアップ工程S32、ハンドアウト工程S33、において、マスク加熱部40を加熱状態とする。
【0219】
本実施形態においては、熱源であるサセプタ15に接触して、急速に加熱されるとともに、サセプタ15から離間した際に急速に冷却される内周31aに近接する基板マスク部31が内部に埋め込まれたヒータ42によって加熱される。
同時に、内周31aと比較して厚いため、熱容量の大きな外側部31fはマスク支持部33のヒータ41によって加熱する。
これにより、基板マスク部31の内部に1本だけヒータ42を設けて、第3実施形態に比べて構造を簡単にすることができる。同時に、温度変動の激しい部分では、直接基板マスク部31を加熱することで、温度変動を緩和することができる。
【0220】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0221】
本実施形態においては、凹部42fを基板マスク部31の下面31dに設けたが、マスク支持部33の上面33cに凹部42fを形成することができる。
この場合、接点42bが基板マスク部31の下面31dから突出する高さ寸法を、第3実施形態における接点42bに比べて、大きくなるように形成することができる。
【0222】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図22は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部を示す模式平面図である。
本実施形態において、上述した第3実施形態と異なるのは、マスク加熱部に関する点であり、これ以外の上述した第3実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0223】
本実施形態におけるマスク加熱部40は、
図22に示すように、基板マスク部31の周方向に分割されたヒータ42,44から構成されている。また、分割された部分には、それぞれ接点42b,44bが設けられて、分割されたヒータごとに、供給電力を制御して、発熱量を個別に制御することができる。
具体的には、矩形とされる基板マスク部31の4辺において、それぞれ辺の中心付近でヒータ42は分割される。
【0224】
本実施形態においては、4分割されたヒータごとに電力供給が可能なように分割された部分の両端には、それぞれ接点42b,44bが設けられる。なお、各辺の接点42b,44bでは、
図18~
図20に示した第3実施形態の接点と同様に連通・接続して、供給電力の切断・供給、つまり、ON、OFFを切り替えることができる。
【0225】
これにより、真空チャンバ2内の状況によって、他の部分に比べて、より大きく温度が低下した部分では、供給電力を大きくして発熱量を大きくし、基板マスク部31に対する加熱量を大きくすることができる。
また比較的他の部分に比べて、より温度低下していない部分では、供給電力を小さくして発熱量を減らし、基板マスク部31に対する加熱量を抑えることができる。
【0226】
本実施形態におけるマスク加熱部40においては、発熱量を個別領域ごとに制御して、より細かく基板マスク部31の温度変動抑制することができる。
【0227】
なお、本実施形態におけるマスク加熱部40においては、基板マスク部31の4辺における中央位置においてヒータ42,44を分割したが、この構成に限定されず、他の構成とすることが可能である。
例えば、矩形の基板マスク部31の角部を結ぶ対角線に対して、線対称となるようにヒータ42,44を分割は位置することができる。この場合、分割領域は2つとなり、それぞれの温度制御が独立におこなわれる。
【0228】
あるいは、矩形の基板マスク部31のそれぞれの角部において、ヒータ42,44を分割して、矩形各辺に対応する4つの領域で、それぞれの温度制御を独立におこなうことができる。
【0229】
図23は、本実施形態のプラズマ処理装置における他の例の基板マスク部を示す模式平面図である。
さらに、矩形の基板マスク部31のそれぞれの辺において、一辺の長さよりも小さいヒータ42,44に分割して、矩形各辺における各領域で、それぞれの温度制御を独立におこなうことができる。この例では、各辺が2箇所に分割されている。
【0230】
本実施形態におけるマスク加熱部40は、
図23に示すように、基板マスク部31の周方向に複数分割されたヒータ42,44から構成されている。また、分割された部分には、それぞれ接点42b,44bが設けられて、分割されたヒータごとに、供給電力を制御して、発熱量を個別に制御することができる。
【0231】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができるとともに、さらに、基板10を搬送するためのドアバルブ26a等が設置されていること等によって、真空チャンバ2における内部部品の非対称性等から基板マスク部31に発生する温度の非対称性の抑制をすることが可能になる。これにより、温度低下が比較的大きい箇所からのパーティクルの発生を抑制することが可能になるという効果を奏することができる。
【0232】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図24は、本実施形態のプラズマ処理装置における基板マスク部が下降した状態を示す模式拡大断面図である。
本実施形態において、上述した第3実施形態と異なるのは、マスク加熱部に関する点であり、これ以外の上述した第3実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0233】
本実施形態においては、
図24に示すように、基板マスク部31においてヒータ42が一本のみ配置されている。また、ヒータ42に対応して、接点42bが基板マスク部31の下面31dに設けられ、また、接点42cがマスク支持部33の上面33cに設けられる。なお、ヒータ42が一本とされることにより、たとえば、基板マスク部31の幅寸法、つまり、径方向寸法が小さい構成に適用することができる。
【0234】
本実施形態におけるプラズマ処理方法は、
図4に示した第1実施形態と同様に、基板マスク加熱工程S02、ハンドイン工程S11、ハンドダウン工程S12、ハンドアウト工程S13、および、除電放電工程S23、サセプタ下降工程S24、ハンドイン工程S31、ハンドアップ工程S32、ハンドアウト工程S33、において、マスク加熱部40を加熱状態とする。
【0235】
このように、本実施形態におけるプラズマ処理方法は、マスク加熱部40のスイッチングをサセプタ15の動作のみでおこなうことが可能となる。
【0236】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができるとともに、さらに、基板マスク部31内に2本のヒータ42,44を設置することができない程度に、処理する基板10の大きさが小さい装置等に適応することが可能になるという効果を奏することができる。
【実施例0237】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0238】
ここで、本発明にかかるプラズマ処理装置における基板搬入時における温度変化確認試験をおこなった。
【0239】
<実験例1>
まず、マスク加熱部を設けない従来のプラズマ処理装置において、基板を搬入して、その際の基板マスク部における温度低下を測定した。
その結果を
図25、
図26に示す。
【0240】
図25においては、基板投入時刻を矢印で示している。
基板マスク部は、アルミニウムから形成される。
基板搬入前におけるサセプタの温度は、250℃とした。
図25に示す結果から、基板を搬入した瞬間から、基板マスク部における温度が低下していることがわかる。
また、
図26に示す結果から、基板搬入時におけるサセプタ温度が高くなることによっても、基板マスク部の温度低下がより大きくなることがわかる。
【0241】
ここで、プリデポ工程S01における成膜、あるいは、プラズマ処理工程S22における成膜組成としてSiNとした場合、SiN,の熱膨張率は以下のようになっている。また、基板マスク部となるアルミニウム、アルミナの熱膨張率は以下のようになっている。
【0242】
SiN;3.27×10-6[/K]
アルミナ;7.2×10-6[/K]
アルミニウム;26.3×10-6[/K]
【0243】
このように、基板搬入時に、アルミニウムからなる基板マスク部の温度が低下した場合、アルミニウムとSiNとの線膨張係数の差が大きいため、一定以上の温度低下によって、SiNが剥離してしまう。
【0244】
これに対し、本発明のようにマスク加熱部40を設けたプラズマ処理装置において、基板を搬入して、その際の基板マスク部における温度低下を測定した。
その結果を
図27に示す。
この結果から、基板マスク部を加熱したことで、基板マスク部の温度低下がなくなっていることがわかる。
【0245】
結果として基板マスクの温度変化を小さくすることで基板マスクに着膜された膜との間の熱膨張差から発生する膜剥離を抑制することでパーティクルを劇的に抑えることが可能になる。
本発明の活用例として、CVD装置のみならず、スパッタ成膜装置の防着板からの膜剥離制御、並びにエッチング装置の基板マスクへの着膜制御等を挙げることができる。