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  • 特開-ポリイミド系樹脂の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083146
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ポリイミド系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197338
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517366688
【氏名又は名称】ザイマージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】横藤田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】石渡 康司
(72)【発明者】
【氏名】森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】カースズリス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】チャチャラ,ガウラヴ
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ポリアク,ルーカス
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA01
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA54
4J043TA21
4J043TA22
4J043TA25
4J043TA47
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA041
4J043UA042
4J043UA081
4J043UA082
4J043UA132
4J043UA142
4J043UA262
4J043UA761
4J043UB012
4J043UB022
4J043UB062
4J043UB122
4J043UB152
4J043UB302
4J043UB402
4J043XA11
4J043XA16
4J043XA17
4J043XB02
4J043XB20
4J043YA01
4J043ZB11
4J043ZB21
(57)【要約】
【課題】分子量制御性に優れたポリイミド系樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)原料と、脂肪族ジアミンとを反応させる工程を含むポリイミド系樹脂の製造方法であって、6FDA原料を液体クロマトグラフィーで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積と、不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、前記工程における6FDA原料の仕込み量を算出する、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)原料と、脂肪族ジアミンとを反応させる工程を含むポリイミド系樹脂の製造方法であって、6FDA原料を液体クロマトグラフィーで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積と、不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、前記工程における6FDA原料の仕込み量を算出する、方法。
【請求項2】
前記不純物由来のピークは、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲に検出されるピークである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不純物由来のピーク面積は、6FDA原料の総ピーク面積を基準にして0.01%以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記6FDA原料の仕込み比は、脂肪族ジアミンに対して、1.0020~1.0070である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記6FDA原料の初期の仕込み比は、脂肪族ジアミンに対して、1.0020~1.0070である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族ジアミンは非環式脂肪族ジアミンである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリイミド系樹脂は、イミド化率が99%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリイミド系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が150,000以上である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ポリイミド系樹脂は、式(1):
【化1】
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有し、式(1)で表される構成単位は、Xとして、2価の脂肪族基を含み、Yとして、式(2):
【化2】
[式(2)中、*は結合手を表す]
で表される構造を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル表示装置の材料等に使用されるポリイミド系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド系樹脂を含む光学フィルムは、液晶や有機EL等の表示装置、タッチセンサ、スピーカー、半導体など、種々の用途に用いられている。例えば、タッチセンサ基板材料としては、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAともいう)由来の構成単位と脂肪族ジアミン由来の構成単位とを有するポリイミド系樹脂などが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2019/156717号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
6FDA原料と脂肪族ジアミンとを反応させる工程を含むポリイミド系樹脂の製造方法において、分子量を調整する手段の1つは、6FDAとジアミンとの仕込み比を調整することであり、ターゲット分子量を得るための仕込み比が既知であれば、通常、6FDA原料の純度を求め、これを仕込み純度として6FDA原料の仕込み量を算出する。しかし、本発明者の検討によれば、特に6FDA由来の構成単位を含むポリイミド系樹脂は、6FDA原料の純度を仕込み純度として仕込み量を算出しても、得られるポリイミド系樹脂の分子量のバラツキが大きく、分子量制御が困難であることがわかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、分子量制御性に優れたポリイミド系樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、6FDA原料と脂肪族ジアミンとを反応させる工程において、6FDA原料を液体クロマトグラフィーで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積と、不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、6FDA原料の仕込み量を算出すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の好適な態様が含まれる。
【0007】
[1]4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)原料と、脂肪族ジアミンとを反応させる工程を含むポリイミド系樹脂の製造方法であって、6FDA原料を液体クロマトグラフィーで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積と、不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、前記工程における6FDA原料の仕込み量を算出する、方法。
[2]前記不純物由来のピークは、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲に検出されるピークである、[1]に記載の方法。
[3]前記不純物由来のピーク面積は、6FDA原料の総ピーク面積を基準にして0.01%以上である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記6FDA原料の仕込み比は、脂肪族ジアミンに対して、1.0020~1.0070である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記6FDA原料の初期の仕込み比は、脂肪族ジアミンに対して、1.0020~1.0070である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記脂肪族ジアミンは非環式脂肪族ジアミンである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記ポリイミド系樹脂は、イミド化率が99%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記ポリイミド系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が150,000以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記ポリイミド系樹脂は、式(1):
【化1】
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有し、式(1)で表される構成単位は、Xとして、2価の脂肪族基を含み、Yとして、式(2):
【化2】
[式(2)中、*は結合手を表す]
で表される構造を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂の分子量制御性に優れている。そのため、フレキシブル表示装置の材料等に使用されるポリイミド系樹脂の製造方法として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】合成例1で使用した6FDAの液体クロマトグラフィー(LC)の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリイミド系樹脂の製造方法]
本発明のポリイミド系樹脂の製造方法は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)原料と、脂肪族ジアミンとを反応させる工程(工程(A)ともいう)を含み、6FDA原料を液体クロマトグラフィー(LC)で測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積と、不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、工程(A)における6FDA原料の仕込み量を算出する方法である。
【0011】
本発明者は、6FDA原料の仕込み量に着目して検討を進めたところ、理由は定かではないが、6FDA原料をLCで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積だけでなく、不純物由来のピーク面積を含めて仕込み量を算出すると、驚くべきことに、得られるポリイミド系樹脂の分子量のバラツキを抑制でき、分子量制御性を向上できることを見出した。
【0012】
<6FDA原料及び不純物>
6FDA原料は、主に4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAともいう)を含む原料を意味し、不純物が含まれていてよい。6FDAは下記式;
【化3】
で表される。
【0013】
不純物は6FDA以外の成分であり、その例としては、溶媒等の揮発性成分;不揮発性成分などが挙げられる。不揮発性成分は、沸点240℃以上の成分を意味する。なお、本明細書において、分子量制御性とは、製造されるポリイミド系樹脂の分子量のバラツキを抑制できる特性を意味し、例えばポリイミド系樹脂を複数回製造し、得られたポリイミド系樹脂の分子量の標準偏差を求めることにより評価できる。本明細書において、LCで検出される不純物を「LC不純物」ということがあり、LCで求められる6FDA原料の純度を「6FDA原料のLC純度」ということがある。また、本明細書において、「仕込み量」は「使用量」ということもできる。すなわち、「仕込み量」を「使用量」に置き換えてもよい。
【0014】
本発明の好適な実施態様における6FDA原料の仕込み量の具体的な計算方法を以下に説明する。
まず、従来は、6FDA原料中の仕込み量を算出する際には、6FDA原料の純度(%)を求め、これを仕込み純度として、工程(A)の仕込み比に応じた仕込み量を算出してきた。より詳細には、例えばLCを用いて6FDA原料のLC純度を測定し、後述するLC測定条件で観測され得ない揮発性成分の含有率は、GC(ガスクロマトグラフィー)やカールフィッシャー法等を用いて測定し、以下の式(X)により、仕込み純度を求める。
(仕込み純度)=〔1-揮発性成分含有率〕×〔6FDA原料のLC純度(%)〕 (X)
【0015】
このように従来は、6FDA原料のLC純度を基に、すなわち、6FDA原料をLCで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積に基づいて、工程(A)における6FDA原料の仕込み量を算出してきた。
【0016】
これに対して、本発明は、6FDA原料のLC純度に加え、LCで検出される不純物の含有率も含めて、すなわち、6FDA由来のピーク面積と不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、工程(A)における6FDA原料の仕込み量を算出するため、以下の式(Y)により、仕込み純度を求めることを特徴とする。
(仕込み純度)=〔1-揮発性成分含有率〕×〔6FDA原料のLC純度(%)+LC不純物含有率(%)〕 (Y)
【0017】
このように本発明では、好ましくは式(Y)により算出される仕込み純度に基づいて仕込み量を算出することで、理由は定かではないが、得られるポリイミド系樹脂の分子量のバラツキを有効に抑制し、分子量制御性(又は重合制御性)を向上できる。なお、本明細書において、揮発性成分含有率を考慮した後の6FDA原料の純度、すなわち、〔1-揮発性成分含有率〕×〔6FDA原料のLC純度(%)〕は、補正後の6FDA原料の純度又は単に6FDA原料の純度ということがあり、揮発性成分含有率を考慮した後の不純物含有率、すなわち、〔1-揮発性成分含有率〕×〔LC不純物含有率(%)〕は、補正後の不純物含有率ということがある。
【0018】
6FDA原料のLC純度、すなわち、LCで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積は、6FDA原料の総ピーク面積を基準にして、好ましくは95.0%以上、より好ましくは97.0%以上、さらに好ましくは99.0%以上、さらにより好ましくは99.2%以上、特に好ましくは99.5%以上である。LCで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積が上記の下限以上であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。LCで測定した際に検出される6FDA由来のピーク面積の上限は100%以下である。なお、補正後の6FDA原料の純度は、上記6FDA原料のLC純度の範囲から選択することもできる。
【0019】
6FDA原料には主に6FDAが含まれるため、LC測定において最もピーク面積が大きいピークが、通常LCで測定した際に検出される6FDA由来のピークであり、例えば、LC測定における保持時間が、好ましくは17.5~19.0(分)の範囲に観測されるピークであってよい。
【0020】
ポリイミド系樹脂の製造において、6FDA原料にLC不純物が含まれている場合、複数回同じ方法で製造しても、分子量のバラツキが生じやすい。しかし、本発明の製造方法では、6FDA原料にLC不純物が含まれていても分子量のバラツキを有効に制御できるため、本発明の分子量制御に関する効果を有効に発現できる観点からは、6FDA原料にLC不純物が含まれていることが好ましい。
【0021】
LC不純物含有率、すなわち、LCで測定した際に検出される不純物由来のピーク面積は、6FDA原料の総ピーク面積を基準にして、好ましくは0%以上、より好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.05%以上、さらにより好ましくは0.10%以上、特に好ましくは0.15%以上であり、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらにより好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下、特により好ましくは0.3%以下である。前記不純物由来のピーク面積が上記の上限以下であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすく、また上記の下限以上であると、本発明の分子量制御に関する効果を有効に発現しやすい。なお、補正後の不純物含有率は、上記LC不純物含有率の範囲から選択することもできる。
【0022】
本発明の好適な実施態様では、本発明の製造方法で仕込み量の算出に含めるLC不純物のピーク、すなわち、LCで測定した際に検出される不純物由来のピークは、保持時間が15.0~25.0(分)の範囲に観測されるピークであることが好ましい。
【0023】
本発明者は、LC不純物の中でも、後述の相対保持時間が好ましくは0.8~1.3の範囲の不純物に由来するピーク面積を仕込み量の算出に含めると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性をより向上できることを見出した。理由は定かではないが、相対保持時間が0.8~1.3の範囲内であるLC不純物がポリイミド系樹脂の重合に寄与するからだと推定される。本発明の好適な実施態様において、仕込み量の算出に含めるLC不純物由来のピーク、すなわち、前記LCで測定した際に検出される不純物由来のピークは、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.9以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.2以下である。前記LC不純物由来のピークの相対保持時間が上記の範囲内であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。なお、上述のLC測定、GC測定及びカールフィッシャー法による測定は、それぞれ液体クロマトグラフ装置、ガスクロマトグラフ装置及び水分測定装置等を用いて実施でき、例えば実施例に記載の方法により行うことができる。
【0024】
<脂肪族ジアミン>
脂肪族ジアミンとは、脂肪族基を有するジアミンを表し、その構造の一部にその他の置換基を含んでいてもよいが、芳香環は有しないものである。脂肪族ジアミンとしては、例えば非環式脂肪族ジアミン、環式脂肪族ジアミン等が挙げられ、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性等を高めやすい観点から、非環式脂肪族ジアミンが好ましい。非環式脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン(1,4-DABということがある)、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキンサン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、2-メチル-1,2-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン等の炭素数2~10の直鎖状又は分岐鎖状ジアミノアルカン、及びこれらのジアミンに含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したジアミン等が挙げられる。環式脂肪族ジアミンとしては、例えば1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びこれらのジアミンに含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性、溶媒への溶解性等を高めやすい観点から、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、2-メチル-1,2-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン等の炭素数2~10のジアミノアルカンが好ましく、炭素数2~6のジアミノアルカンがより好ましく、1,4-ジアミノブタンがさらに好ましい。これらの脂肪族ジアミンは単独又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、本明細書において、光学特性とは、位相差、透明性及び紫外線カット性を含む光学的な特性を意味する。位相差は特に特記しない限り、厚み位相差と面内位相差との両方を含む。
【0025】
<工程(A)>
工程(A)は、前記6FDA原料と前記脂肪族ジアミンとを反応させる工程である。工程(A)では、前記6FDA原料と前記脂肪族ジアミンとを反応させてポリアミック酸を得るステップと該ポリアミック酸をイミド化するステップとを含んでいてもよく、両方のステップを同時に行ってもよい。
【0026】
工程(A)において、6FDA原料の仕込み比(モル比)は、脂肪族ジアミンに対して、好ましくは1.0020以上、より好ましくは1.0025以上、さらに好ましくは1.0030以上、さらにより好ましくは1.0035以上であり、好ましくは1.0070以下、より好ましくは1.0060以下、さらに好ましくは1.0055以下、さらにより好ましくは1.0050以下、特に好ましくは1.0045以下である。6FDA原料の仕込み比が上記の範囲内であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。前記6FDA原料の仕込み比は合計仕込み比を意味し、6FDA原料及び/又は脂肪族ジアミンを追加添加した場合には追加添加した量を含めて算出される。
【0027】
工程(A)において、6FDA原料の初期の仕込み比(モル比)は、脂肪族ジアミンに対して、好ましくは1.0020以上、より好ましくは1.0025以上、さらに好ましくは1.0030以上、さらにより好ましくは1.0035以上であり、好ましくは1.0070以下、より好ましくは1.0060以下、さらに好ましくは1.0055以下、さらにより好ましくは1.0050以下、特に好ましくは1.0045以下である。6FDA原料の初期の仕込み比が上記の範囲内であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。
【0028】
本発明では、工程(A)において、前記仕込み比に基づき、上述の6FDA原料の仕込み純度により仕込み量を算出することでポリイミド系樹脂の分子量を制御する。脂肪族ジアミンについては、例えば、脂肪族ジアミンの純度を仕込み純度として仕込み量を算出することができる。また、脂肪族ジアミンの純度については、好ましくはGC測定及びカールフィッシャー法による測定等を用いて揮発性成分等の不純物量を算出して求めればよい。
【0029】
6FDA原料と脂肪族ジアミンとの反応温度は、特に限定されず、例えば5~200℃であってもよく、反応時間も特に限定されず、例えば30分~72時間程度であってもよい。本発明の好適な実施態様においては、反応温度は、好ましくは5~200℃、より好ましくは50~190℃、さらに好ましくは100~180℃であり、反応時間は、好ましくは3~24時間、より好ましくは5~20時間である。このような反応温度及び反応時間であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。なお、ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mwともいう)及び数平均分子量(Mnともいう)はそれぞれ、反応時間及び反応温度等の反応条件;ジアミン、テトラカルボン酸化合物、触媒、及び溶媒の種類及び使用量;析出操作における良溶媒と貧溶媒の組成;並びに洗浄溶液の組成等を適宜変更することにより調整できる。
【0030】
6FDA原料と脂肪族ジアミンとの反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、フェノール系溶媒、アミド系溶媒を好適に使用できる。
本発明の好適な実施態様においては、反応に使用する溶媒は、水分量700ppm以下まで厳密に脱水した溶媒であることが好ましい。このような溶媒を用いると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。
【0031】
6FDA原料と脂肪族ジアミンとの反応は、必要に応じて、不活性雰囲気(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)又は減圧の条件下において行ってもよく、不活性雰囲気(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)下、厳密に制御された脱水溶媒中で撹拌しながら行うことが好ましい。このような条件であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。
【0032】
イミド化工程では、イミド化触媒を用いてイミド化しても、加熱によりイミド化しても、これらを組み合わせてもよい。イミド化工程で使用するイミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、及びN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
【0033】
本発明の一実施態様では、イミド化する場合、反応温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは190℃以下、より好ましくは170℃以下である。イミド化工程の反応時間は、好ましくは30分~24時間、より好ましくは1~12時間である。反応温度及び反応時間が上記の範囲内であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。なお、上記の通り、脂肪族ジアミンとテトラカルボン酸化合物とを反応させる際に、予め、イミド化触媒を加えておき、ポリアミック酸を得るステップとイミド化するステップとを同時進行で行うこともできる。
【0034】
ポリイミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様に係る樹脂の精製法では、樹脂を含む反応液に、多量のメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒を加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
【0035】
本発明の製造方法では、工程(A)において、少なくとも6FDA原料と脂肪族ジアミンとを反応させていれば、他の成分を併せて反応させてもよいし、工程(A)以外の他の工程で、さらに他の成分を反応させてもよい。これにより、他の成分由来の構成単位をポリイミド系樹脂に導入できる。他の成分としては、例えば6FDA以外の他のテトラカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、芳香族ジアミン等が挙げられる。得られるポリイミド系樹脂の優れた分子量制御性を発現しやすいという観点からは、6FDA原料と脂肪族ジアミンとの合計使用量は、工程(A)で反応させる原料の合計使用量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。6FDA原料と脂肪族ジアミンとの合計使用量が上記の下限以上であると、得られるポリイミド系樹脂の分子量制御性を高めやすい。また、得られるポリイミド系樹脂の優れた分子量制御性を発現しやすいという観点からは、他の工程を含まないことが好ましい。
【0036】
他のテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
【0037】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物;これらのテトラカルボン酸二無水物に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したテトラカルボン酸二無水物;等が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、及び該テトラカルボン酸二無水物に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及び該テトラカルボン酸二無水物に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0038】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物;これらの位置異性体;これらのテトラカルボン酸二無水物に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物;これらのテトラカルボン酸二無水物に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
【0039】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
【0040】
芳香族ジアミンとは、芳香環を有するジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミン;これらのジアミンに含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したジアミン;2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMBともいう);4,4’-(ヘキサフルオロプロピリデン)ジアニリン;9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレンなどが挙げられる。これらの芳香族ジアミンは単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
[ポリイミド系樹脂]
本発明の製造方法は分子量制御性に優れるため、繰り返し製造を行っても、得られるポリイミド系樹脂の分子量をターゲット分子量の範囲に調整しやすい。該ポリイミド系樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位(構成単位ともいう)を含有する重合体を意味し、さらにアミド基を含む繰り返し構造単位を含有していてもよく、これら以外の構成単位を含有していてもよい。
【0043】
前記ポリイミド系樹脂は、式(1):
【化4】
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有し、式(1)で表される構成単位は、Xとして、2価の脂肪族基を含み、Yとして、式(2):
【化5】
[式(2)中、*は結合手を表す]
で表される構造を含むことが好ましい。このような構成単位を有すると、ポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい。
【0044】
式(1)中のXは、それぞれ独立に2価の有機基を表し、好ましくは炭素数2~40の2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば2価の芳香族基、2価の脂肪族基等が挙げられる。なお、本明細書において、2価の芳香族基は芳香族基を有する2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。また、2価の脂肪族基は脂肪族基を有する2価の有機基であり、その構造の一部にその他の置換基を含んでいてもよいが、芳香族基は含まない。
【0045】
式(1)中のXは、2価の脂肪族基を含み、2価の脂肪族基としては、例えば2価の非環式脂肪族基又は2価の環式脂肪族基が挙げられる。これらの中でも、ポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい観点から、2価の非環式脂肪族基が好ましい。
【0046】
本発明の一実施態様において、式(1)中のXにおける2価の非環式脂肪族基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、2-メチル-1,2-プロパンジイル基、2-メチル-1,3-プロパンジイル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などが挙げられる。2価の非環式脂肪族基中の水素原子は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよく、炭素原子はヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子等)で置換されていてもよい。直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基の炭素数は、ポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。上記2価の非環式脂肪族基の中でも、ポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい観点から、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、テトラメチレン基がより好ましい。
【0047】
本発明の一実施態様において、式(1)中のXにおける2価の芳香族基又は2価の環式脂肪族基としては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。
【0048】
【化6】
【0049】
式(10)~式(18)中、
*は結合手を表し、
、V及びVは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-CO-又は-N(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基及びn-デシル基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などが挙げられる。
1つの例は、V及びVが単結合、-O-又は-S-であり、かつ、Vが-CH-、-C(CH-、-C(CF-又は-SO-である。VとVとの各環に対する結合位置、及び、VとVとの各環に対する結合位置は、互いに独立に、各環に対して好ましくはメタ位又はパラ位、より好ましくはパラ位である。なお、式(10)~式(18)における環上の水素原子は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基で置換されていてもよい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基及びビフェニル基等が挙げられる。これらの2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
本発明におけるポリイミド系樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。例えば、式(1)中のXとして、2価の非環式脂肪族基と、2価の芳香族基及び/又は2価の環式脂肪族基とを含んでいてもよい。
【0051】
本発明の一実施態様において、式(1)中のXが2価の脂肪族基、好ましくは2価の非環式脂肪族基である構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位の合計モル量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。式(1)中のXが2価の脂肪族基、好ましくは2価の非環式脂肪族基である構成単位の割合が上記の範囲であると、ポリイミド系樹脂の分子量制御性、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい。該構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0052】
式(1)において、Yは、それぞれ独立に4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はハロゲン置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びハロゲン置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明におけるポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
【0053】
Yは式(2)で表される構造を含む。本発明の製造方法では、Yが式(2)で表される構造を含むポリイミド系樹脂であっても、分子量のバラツキを有効に抑制できる。
【0054】
Yとしては、式(2)で表される構造の他、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子が置換基、例えばメチル基、フルオロ基、クロロ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基等で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。
【0055】
【化7】
【0056】
式(20)~式(29)中、
*は結合手を表し、
は、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-Ar-、-SO-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-又は-Ar-SO-Ar-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
【0057】
式(20)~式(29)で表される基の中でも、本発明の分子量制御に係る効果を発現しやすい観点、並びに、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい観点から、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、Wは、本発明の分子量制御性に係る効果を発現しやすい観点、並びに、光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい観点から、それぞれ独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、又は-C(CH-であることが好ましく、単結合、-O-、-CH-、-CH(CH)-、又は-C(CH-であることがより好ましく、単結合、又は-C(CH-であることがさらに好ましい。また、式(26)中のベンゼン環がカルボキシル基等の置換基を有する場合には、Wは-C(CF-であることが好ましい。
【0058】
本発明の一実施態様において、式(1)中のYが式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位の総モル量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。式(1)中のYが式(2)で表される構成単位の割合が上記の範囲であると、本発明の分子量制御に係る効果を発現しやすく、また得られるポリイミド系樹脂の光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい。式(1)中のYが式(2)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0059】
本発明におけるポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【化8】
【0060】
式(30)において、Yは4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0061】
式(31)において、Yは3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0062】
式(30)及び式(31)において、X及びXは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数2~40の2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば2価の芳香族基、2価の脂肪族基等が挙げられ、2価の脂肪族基としては、例えば2価の非環式脂肪族基又は2価の環式脂肪族基が挙げられる。X及びXにおける2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基としては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基などが挙げられる。2価の非環式脂肪族基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、2-メチル-1,2-プロパンジイル基、2-メチル-1,3-プロパンジイル基等の炭素数2~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などが挙げられる。2価の非環式脂肪族基中の水素原子は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよく、炭素原子はヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子等)で置換されていてもよい。
【0063】
本発明の製造方法で得られるポリイミド系樹脂はフッ素原子を含む。ポリイミド系樹脂中にフッ素原子を含むことで、ポリイミド系樹脂の光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい。本発明におけるポリイミド系樹脂は、樹脂中にフッ素原子が存在していればよく、6FDAによりフッ素含有置換基としてフッ素原子が導入されるが、他の構成成分からも導入されてもよい。かかる場合、導入形態は特に限定されないが、フッ素含有置換基、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基などの形態であってよい。
【0064】
本発明におけるポリイミド系樹脂中のフッ素原子の含有量は、ポリイミド系樹脂の質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。フッ素原子の含有量が上記の下限以上であると、ポリイミド系樹脂の光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を高めやすい。フッ素原子の含有量が上記の上限以下であると、合成がしやすくなる。
【0065】
本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。イミド化率が上記の下限以上であると、ポリイミド系樹脂の光学特性を高めやすい。イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば実施例に記載の方法により求めることができる。
【0066】
本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは170,000以上、さらにより好ましくは200,000以上、特に好ましくは220,000以上、特により好ましくは230,000以上、極めて好ましくは250,000以上であり、好ましくは800,000以下、より好ましくは700,000以下、さらに好ましくは600,000以下である。ポリイミド系樹脂のMwが上記の下限以上であると、ポリイミド系樹脂の耐熱性及び耐屈曲性を高めやすい。また、ポリイミド系樹脂のMwが上記の上限以下であると、ポリイミド系樹脂の光学特性、加工性及び溶媒への溶解性を向上しやすい。
【0067】
本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上、さらにより好ましくは25,000以上であり、好ましくは150,000以下、より好ましくは120,000以下、さらに好ましくは100,000以下、さらにより好ましくは50,000以下、特に好ましくは40,000以下である。ポリイミド系樹脂のMnが上記の下限以上であると、ポリイミド系樹脂の耐熱性及び耐屈曲性を高めやすい。また、Mnが上記の上限以下であると、ポリイミド系樹脂の位相差、加工性及び樹脂の溶解性を向上しやすい。ポリイミド系樹脂のMw及びMnはそれぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出できる。
【0068】
ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn;分子量分布)は、好ましくは13以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは8.0以下であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上である。ポリイミド系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が上記の上限以下であると、ポリイミド系樹脂の位相差、加工性及び樹脂の溶解性を向上しやすく、またポリイミド系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が上記の下限以上であると、ポリイミド系樹脂の耐熱性及び耐屈曲性を高めやすい。
【0069】
本発明の製造方法によれば、得られるポリイミド系樹脂の分子量のバラツキを抑制でき、容易に分子量を制御できることに加え、得られるポリイミド系樹脂の光学特性、耐熱性、耐屈曲性及び溶媒への溶解性を向上できるため、光学フィルムを形成する樹脂として好適に使用できる。
さらに、本発明の製造方法で得られるポリイミド系樹脂から形成された光学フィルムは、表示装置、特にタッチセンサ用基板として好適に使用できる。また、表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、及びスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。表示装置は好ましくはフレキシブル表示装置である。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず測定方法について説明する。
【0071】
<不純物含有率>
実施例1及び比較例1で使用した6FDA原料の不純物含有率は、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて、以下の条件により測定した。また、6FDA原料中の揮発性成分含有率は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、以下の条件により測定した。なお、揮発性成分のうち、水分量については水分測定装置を用いて、以下の条件により測定した。
【0072】
(LC条件)
装置:島津LC-20A液体クロマトグラフシステム
カラム:Sumipax Z-Clue ODS(3um、4.6mmI.D.×250mm)
移動相:
移動相A:水 リン酸0.1体積% 添加
移動相B:アセトニトリル リン酸0.1体積% 添加
※水はミリQ水、アセトニトリルはHPLCグレード、リン酸は特級グレードを使用
グラジエント条件(B%):20%(5min)→20min→100%(5min) (postrun15min) 計45min
検出波長:UV 254nm
流速:1mL/min
カラム温度:30℃
注入量:5 uL
溶解溶媒:ATN/水=2/1、リン酸10体積%添加
前処理:70℃加熱攪拌4時間
(解析条件)
ソフトウェア:島津製作所製 LabSolutions
アルゴリズム:i-Peak Finder
ピーク検出感度:3
ピーク検出範囲:8-30分
ベースライン処理:完全分離
ピークフィルタ:最小面積:400 uV*sec
最小高さ:10uV
最小高さ/幅:100uV/min
【0073】
(GC条件)
装置:島津GC2010ガスクロマトグラフシステム
カラム: DB-FFAP(1.0um, 0.32 mmI.D.×30 m)
カラム温度:40℃(5min)→ 5℃/min → 220℃(5min)
気化室/検出器温度:240℃/250℃(FID)
キャリアーガス:ヘリウム
流量:1.0mL/分(定流量)
スプリット比: 10:1
注入量:1uL
キャリア+メイクアップガス:ヘリウム 39mL/分
セプタムパージガス:ヘリウム 約3mL/分
水素/空気流量:約40mL/分 / 約450mL/分
溶解溶媒:アセトニトリル
【0074】
(水分測定の条件)
滴定装置:メトローム 微量水分測定装置KF Coulometer-831型
加熱気化装置:メトローム 水分気化装置Thermoprep-832型
発生液:三菱化学製アクアミクロンAX
対極液:三菱化学製アクアミクロンCXU
抽出時間:300秒
窒素流量:50mL/分
加熱温度:180℃
サンプル量:300mg
【0075】
<DABの純度>
DABの純度は、ガスクロマトグラフ及びカールフィッシャー水分計を用いて、不純物量を算出して求めた。各測定の条件は以下の通りである。
【0076】
(GC条件)
装置:島津GC2010ガスクロマトグラフシステム
カラム:Agilent社製 CAM(0.25um,0.25 mmI.D.×30m)
カラム温度:40℃(5min)→ 5℃/min → 220℃(5min)
気化室/検出器温度:240℃/250℃(FID)
キャリアーガス:ヘリウム
流量:1.0mL/分(定流量)
スプリット比: 5:1
注入量:1uL
キャリア+メイクアップガス:ヘリウム 39mL/分
セプタムパージガス:ヘリウム 約3mL/分
水素/空気流量:約40mL/分 / 約450mL/分
溶解溶媒/洗浄溶媒:超純水1vol%添加 THF(特級グレード)
【0077】
(水分測定の条件)
装置:カールフィッシャー水分計 AQ-6 (株式会社平沼)
試料量:50μL
試験数:3回
平均水分値:測定3回の平均
【0078】
<重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)>
実施例及び比較例で得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCを用いて、以下の条件により測定した。
(GPC条件)
装置:島津LC-20A
カラム:TSKgel GMHHR-M (ミックスカラム、排除限界分子量:400万)
ガードカラム:TSKgel guardcolumn HHR-H
移動相:N-メチル-2-ピロリジノン(NMP) 10mM LiBr添加
※NMPはHPLC用グレード、LiBrは試薬一級(無水物)を使用
流速:1mL/min
測定時間:20分
カラムオーブン:40℃
検出:UV 275nm
洗浄溶媒:NMP
試料濃度:1mg/mL
分子量較正:ポリマーラボラトリーズ製 標準ポリスチレン(分子量500~400万の17分子量)
【0079】
<イミド化率>
実施例及び比較例で得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は、NMRを用いて、以下の条件により測定した。
(NMR条件)
ポリイミド系樹脂10mgを秤量し、重DMSO 0.75mlを添加後、120℃で20分加熱することで溶解した。溶液をNMR管に移し、ブルカー製AV600装置を用いて、100℃で1H NMR測定を実施した。1H NMRスペクトルよりイミド基由来のプロトンとアミド基由来のプロトンを帰属し、次式を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率 = {イミド基積分比/(イミド基積分比+アミド基積分比)}×100
【0080】
<分子量制御性>
実施例1及び比較例1において、それぞれポリイミド系樹脂の重合を3回行い、得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量の標準偏差を求めた。標準偏差が、10,000以下である場合、分子量制御性が良好とした。
【0081】
<実施例1>
6FDA原料の仕込み純度を下記式(Y)により算出し、下記合成例1~3の通り、ポリイミド系樹脂の合成を実施した。
(仕込み純度)=〔1-揮発性成分含有率〕×〔6FDA原料のLC純度(%)+LC不純物含有率(%)〕 (Y)
【0082】
<合成例1>
(ポリイミド系樹脂)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株))179g、1,4-DAB(AnQore社製;仕込み純度99.84%)8g、6FDA原料(八幸通商(株)製;仕込み純度99.92%)40g、およびイソキノリン((株)C-Chem製)3gを添加した後、130℃に昇温し、8時間撹拌した後、得られた反応液を30℃まで冷却した。この際、6FDA/1,4-DABのモル比は1.0040であった。攪拌しながら、メタノール(関東化学(株)製)を336g添加して析出させた後、ろ過した。ろ過した析出物をメタノール(141g)で5回洗浄し、洗浄した析出物を70℃で12時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を39g得た。得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は262,000であり、数平均分子量(Mn)は35,000であった。得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は99.8%であった。また、LC測定において、6FDA由来のピーク面積は、保持時間が17.7~18.8(分)の範囲に観測された。また、不純物由来のピークのうち、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲(実際にピークが見られたのは0.9~1.2の範囲)に観測されたピーク面積を用いて、式(Y)中のLC不純物含有率を求めた。つまり、6FDA由来のピーク面積と、前記相対保持時間が0.8~1.3の範囲に観測された不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、6FDAの仕込み純度を算出し、これを基に仕込み量を調整した。式(Y)中のLC不純物含有率、すなわち、前記相対保持時間が0.8~1.3の範囲に観測された不純物由来のピーク面積は、6FDA原料の総ピーク面積を基準にして0.25%であった。
【0083】
<合成例2>
(ポリイミド系樹脂)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株))179g、1,4-DAB(AnQore社製;仕込み純度99.84%)8g、6FDA原料(八幸通商(株)製;仕込み純度99.93%)40g、およびイソキノリン((株)C-Chem製)3gを添加した後、130℃に昇温し、8時間撹拌した後、得られた反応液を40℃まで冷却した。この際、6FDA/1,4-DABのモル比は1.0039であった。攪拌しながら、メタノール(関東化学(株)製)を336g添加して析出させた後、ろ過した。ろ過した析出物をメタノール(141g)で3回洗浄し、洗浄した析出物を70℃で12時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を41g得た。得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は260,000であり、数平均分子量(Mn)は34,000であった。得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は99.7%であった。また、LC測定において、6FDA由来のピーク面積は、保持時間が17.7~18.8(分)の範囲に観測された。また、不純物由来のピークのうち、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲(実際にピークが見られたのは0.9~1.2の範囲)に観測されたピーク面積を用いて、式(Y)中のLC不純物含有率を求めた。つまり、6FDA由来のピーク面積と、前記相対保持時間が0.8~1.3の範囲に観測された不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、6FDAの仕込み純度を算出し、これを基に仕込み量を調整した。式(Y)中のLC不純物含有率、すなわち、前記相対保持時間が0.8~1.3の範囲に観測された不純物由来のピーク面積は、6FDA原料の総ピーク面積を基準にして0.19%であった。
【0084】
<合成例3>
(ポリイミド系樹脂)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株))179g、1,4-DAB(AnQore社製;仕込み純度99.84%)8g、6FDA原料(ダイキン工業(株)製;仕込み純度99.98%)40g、およびイソキノリン((株)C-Chem製)3gを添加した後、130℃に昇温し、8時間撹拌した後、得られた反応液を40℃まで冷却した。この際、6FDA/1,4-DABのモル比は1.0040であった。攪拌しながら、メタノール(関東化学(株)製)を336g添加して析出させた後、ろ過した。ろ過した析出物をメタノール(141g)で3回洗浄し、洗浄した析出物を70℃で12時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を40g得た。得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は252,000であり、数平均分子量(Mn)は34,000であった。得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は99.6%であった。また、LC測定において、6FDA由来のピーク面積は、保持時間が17.7~18.8(分)の範囲に観測された。また、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲のピークは観測されなかったため、式(Y)のLC不純物含有率は0として仕込み純度を求めた。つまり、6FDA由来のピーク面積と、前記相対保持時間が0.8~1.3の範囲に観測された不純物由来のピーク面積との合計ピーク面積に基づいて、6FDAの仕込み純度を算出し、これを基に仕込み量を調整した。
【0085】
3つの合成例1~3において、得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量の標準偏差は4,000であり、分子量制御性が良好であった。
【0086】
<比較例1>
6FDA原料の仕込み純度を下記の計算式により算出し、下記合成例4~6の通り、ポリイミド系樹脂の合成を実施した。
(仕込み純度)=〔1-揮発性成分含有率〕×〔6FDA原料のLC純度(%)〕 (X)
【0087】
<合成例4>
(ポリイミド系樹脂)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株))179g、1,4-DAB(AnQore社製;仕込み純度99.87%)8g、6FDA(八幸通商(株)製;純度99.75%)40g、およびイソキノリン((株)C-Chem製)3gを添加した後、130℃に昇温し、8時間撹拌した後、得られた反応液を40℃まで冷却した。この際、6FDA/1,4-DABのモル比は1.0031であった。攪拌しながら、メタノール(関東化学(株)製)を336g添加して析出させた後、ろ過した。ろ過した析出物をメタノール(141g)で3回洗浄し、洗浄した析出物を70℃で12時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を38g得た。
得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は205,000であり、数平均分子量(Mn)は36,000であった。また、得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は99.6%であった。また、LC測定において、6FDA由来のピーク面積は、保持時間が17.7~18.8(分)の範囲に観測された。なお、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲にピークが観測されたが、式(X)では、LC不純物含有率を仕込み純度の計算に含めない。
【0088】
<合成例5>
(ポリイミド系樹脂)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株))179g、1,4-DAB(AnQore社製;仕込み純度99.86%)8g、6FDA(八幸通商(株)製;仕込み純度99.74%)40g、およびイソキノリン((株)C-Chem製)3gを添加した後、130℃に昇温し、8時間撹拌した後、得られた反応液を40℃まで冷却した。この際、6FDA/1,4-DABのモル比は1.0030であった。攪拌しながら、メタノール(関東化学(株)製)を336g添加して析出させた後、ろ過した。ろ過した析出物をメタノール(141g)で3回洗浄し、洗浄した析出物を70℃で12時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を39g得た。得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は215,000であり、数平均分子量(Mn)は36,000であった。また、得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は99.7%であった。また、LC測定において、6FDA由来のピーク面積は、保持時間が17.7~18.8(分)の範囲に観測された。なお、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲にピークが観測されたが、式(X)では、LC不純物含有率を仕込み純度の計算に含めない。
【0089】
<合成例6>
(ポリイミド系樹脂)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株))179g、1,4-DAB(AnQore社製;純度99.84%)8g、6FDA(ダイキン工業(株)製;純度99.98%)40g、およびイソキノリン((株)C-Chem製)3gを添加した後、130℃に昇温し、8時間撹拌した後、得られた反応液を40℃まで冷却した。この際、6FDA/1,4-DABのモル比は1.0030であった。攪拌しながら、メタノール(関東化学(株)製)を336g添加して析出させた後、ろ過した。ろ過した析出物をメタノール(141g)で3回洗浄し、洗浄した析出物を70℃で12時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を40g得た。得られたポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は346,000であり、数平均分子量(Mn)は35,000であった。また、得られたポリイミド系樹脂のイミド化率は99.7%であった。また、LC測定において、6FDA由来のピーク面積は、保持時間が17.7~18.8(分)の範囲に観測された。なお、6FDA由来のピークが検出される保持時間を1としたときに、相対保持時間が0.8~1.3の範囲にピークは観測されなかったが、元々、式(X)では、LC不純物含有率を仕込み純度の計算に含めない。
【0090】
3つの合成例4~6において、得られた樹脂の重量平均分子量の標準偏差は64,000であり、分子量制御性が顕著に低かった。
【0091】
表1に、各合成例における6FDA原料の仕込み純度、6FDAの純度(補正後)、不純物含有率(補正後)、1,4-DABの仕込み純度、6FDA/1,4-DABの仕込み比(モル比)、ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び実施例1及び比較例1におけるMwの標準偏差を示す。6FDAの純度(補正後)は、〔1-揮発性成分含有率〕×〔6FDA原料のLC純度(%)〕を示し、不純物含有率(補正後)は、〔1-揮発性成分含有率〕×〔LC不純物含有率(%)〕を示す。なお、1,4-DABについては、上記測定方法で得られた純度を仕込み純度(%)とした。

【表1】
【0092】
表1に示されるように、実施例1における製造方法は、比較例1における製造方法と比べ、重量平均分子量の標準偏差が顕著に低く、分子量制御性に優れていることがわかった。
図1