IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

特開2023-83223気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083223
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230608BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/18
A61P9/10
A61P43/00 121
A61P3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183154
(22)【出願日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2021196994
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克典
(72)【発明者】
【氏名】平野 惠子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴光
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD59
4B018MD61
4B018MD63
4B018MD64
4B018MD66
4B018ME14
4C088AB11
4C088BA06
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZC22
(57)【要約】
【課題】本発明は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための、生薬成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の組成物は、有効成分として、下記の成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)を含む:
成分(1):炙甘草、甘草、山薬、大棗、膠飴及び人参からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(2):姜黄、竜眼肉、莪朮、鶏血藤、絲瓜絡、サンリョウ、紅花及び劉寄奴からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(3):茶葉、薄荷、桑葉、菊花及び香鼓からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(4):陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、生姜、ゲンスイ、葱白、酸棗仁、柏子仁、車前子、車前草、ヨクイニン、玉米鬚、地膚子、冬瓜子、扁蓄、金銭草、肉桂、乾姜、小茴香、蜀椒、胡椒、刺五加及び艾葉からなる群より選ばれる少なくとも2種の生薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、下記の成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)を含む、組成物。
成分(1):炙甘草、甘草、山薬、大棗、膠飴及び人参からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(2):姜黄、竜眼肉、莪朮、鶏血藤、絲瓜絡、サンリョウ、紅花及び劉寄奴からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(3):茶葉、薄荷、桑葉、菊花及び香鼓からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(4):陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、生姜、ゲンスイ、葱白、酸棗仁、柏子仁、車前子、車前草、ヨクイニン、玉米鬚、地膚子、冬瓜子、扁蓄、金銭草、肉桂、乾姜、小茴香、蜀椒、胡椒、刺五加及び艾葉からなる群より選ばれる少なくとも2種の生薬
【請求項2】
気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
気虚及び/又は血虚に関連する症状が、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、尿量の異常、頻尿、不眠、及び睡眠障害からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
食品組成物又は医薬組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な伝統医学体系である中国医学及びそれに端を発する漢方医学においては、体調・体質及び摂取する食品・医薬品が及ぼす影響を解釈する基本概念として「気血水」論が体系化されている。これは、身体を構成する要素として気・血・水の三要素を挙げ、それらの不足、流れの滞り等のバランスの乱れの結果として体調・体質を分類する考え方である。
【0003】
このうち、「気」は、生体エネルギーを指すが、働きがあって形のないものであり、経路を循行して全身を巡りすべての臓腑を滋養し保護して生命を維持するものとされる。「気」は、西洋医学的には主として神経系・内分泌系など、生体の情報伝達系の機能が関与すると解釈できる。「気」の異常には、気の産生障害あるいは消耗過多により気が不足した「気虚」、気が下半身から上半身へ昇った状態を示す「気の上衝(気逆)」、様々な部位で気が鬱滞した「気鬱」があり、種々の健康異常と関連付けて理解されている(非特許文献1、2)。
【0004】
また、「血」は、現象的には血液を指し、その機能をも包含した概念である。「血」は「気」の働きにより全身を巡り各組織に必要な栄養をもたらし、身体の形を作り出している源であるとされる。「血」の異常には、血の量に不足を生じた病態である「血虚」と、血の流通に障害をきたし滞った病態である「お血」があり、種々の健康異常と関連付けて理解されている(非特許文献1、2)。
【0005】
気虚、すなわち「気」の不足は、胃腸機能及び消化吸収機能の低下に基づくものとされており、元気が衰え気力がなく、活発に活動できない状態を言う。これに伴う不調症状としては、倦怠感、気力低下、易疲労感、慢性疲労、日中の眠気、食欲不振、易感染性(風邪を引きやすい)、発育不全、冷え、四肢冷感、脱力感、下痢、むくみ、消化不良、痩せ、皮膚乾燥、多汗、気分の抑うつに代表される精神不安定、易出血、腎気不足すなわち排尿機能の異常による尿量の異常、頻尿、遺尿、尿失禁、夜尿などが挙げられる(非特許文献1~4)。
【0006】
また、血虚、すなわち「血」の量の不足は、血液・免疫系の異常で不足に陥ったものと推定され、これに伴う不調症状としては、貧血、免疫能の低下、集中力の低下、不眠、睡眠障害、頭髪が抜けやすい、眼精疲労、皮膚の乾燥及び荒れ、爪の異常、こむらがえり、知覚異常、過小月経、月経不順、顔色不良などが挙げられる(非特許文献1、2)。
【0007】
漢方医学において、弁証論治、すなわち、病気の原因を見分け、それに対応した処方を投与することを原則としている。気虚及び/又は血虚に関連する症状に対して、各種漢方薬(混合生薬)が提案されている。例えば、気虚関連症状に対しては四君子湯、血虚関連症状に対しては四物湯などが挙げられている(非特許文献1、2)。これらの漢方薬は、複数の生薬成分を含むものであり、医師の処方に従って服用するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】柴原 直利、漢方医薬における基本用語、ファルマシア、第47巻第5号(2011)、p408-412
【非特許文献2】松田邦夫、稲木一元(編集)、臨床医のための漢方(基礎編)(1987)、株式会社カレントテラピー、p12-14
【非特許文献3】仙頭 正四郎、系統中医学講座 ダイジェスト 第4回 気津液血の生理機能と失調、中医臨床、第23巻第3号(2002)、p46-54
【非特許文献4】山田光胤、橋本竹二郎(著者)、福島普徳(編集)、図説 東洋医学<湯液編I 薬方開設>(1984)、株式会社東京印書館、p27-28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための、生薬成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の帰経及び性味の生薬群を選定し配合することによって、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和できることを見出した。本発明は、本知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものであり、生薬成分を含む新規な組成物を提供するものである。
【0011】
すなわち、本発明は、例えば以下のとおりである。
[1]
有効成分として、下記の成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)を含む、組成物。
成分(1):炙甘草、甘草、山薬、大棗、膠飴及び人参からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(2):姜黄、竜眼肉、莪朮、鶏血藤、絲瓜絡、サンリョウ、紅花及び劉寄奴からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(3):茶葉、薄荷、桑葉、菊花及び香鼓からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(4):陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、生姜、ゲンスイ、葱白、酸棗仁、柏子仁、車前子、車前草、ヨクイニン、玉米鬚、地膚子、冬瓜子、扁蓄、金銭草、肉桂、乾姜、小茴香、蜀椒、胡椒、刺五加及び艾葉からなる群より選ばれる少なくとも2種の生薬
[2]
気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための、[1]に記載の組成物。
[3]
気虚及び/又は血虚に関連する症状が、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、尿量の異常、不眠、及び睡眠障害からなる群より選択される少なくとも1つである、[2]に記載の組成物。
[4]
食品組成物又は医薬組成物である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載の組成物を、これを必要とする対象に与える工程を含む、気虚及び/又は血虚に関連する症状を予防、改善又は緩和する方法。
[6]
気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[7]
気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物の製造における、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物の使用。
[8]
気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和における、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、特定の帰経及び性味の生薬を配合することによって、気を生み出し、抵抗力・虚弱に関係する中焦に働きかけ、気を養って気虚を補い、また補われた気の働きにより血虚を補うと共に、精神安定作用を相乗的に発現し、気虚及び/又は血虚に関連する様々な症状を予防、改善又は緩和することができる。特に、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、尿量の異常、不眠、睡眠障害等の症状に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「気」とは生体のエネルギーのことを表しており、主に神経系・内分泌系等、生体の情報伝達系の機能に関与しているとされる。「気虚」とは、生体のエネルギーが不足した状態である。元気が衰え気力がなく、活発に活動できない状態であり、胃腸機能及び消化吸収機能の低下に基づくものであるとされている。気虚に関連する症状としては、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、脱力感、気力低下、精神不安定、下痢、尿量の異常、頻尿、遺尿、尿失禁、夜尿、日中の眠気、食欲不振、易感染性、発育不全、冷え、四肢冷感、むくみ、消化不良、痩せ、皮膚乾燥、多汗、易出血等が挙げられる。
【0014】
「血虚」とは、血液・免疫系の機能が衰えた状態とされる。血虚に関連する症状としては、貧血、免疫の低下、集中力低下、不眠、睡眠障害、頭髪が抜けやすい、眼精疲労、皮膚の乾燥及び荒れ、爪の異常、こむら返り、知覚異常、過少月経、月経不順、四肢冷感、易疲労、易感染性、顔色不良等が挙げられる。
【0015】
本明細書において、気虚及び/又は血虚に関連する症状(病変又は身体の不調)は、主に気虚に関連する症状であり、さらに、気虚によりもたらされる血虚に関連する様々な症状を指す。より具体的には、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、尿量の異常、不眠、睡眠障害からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられ、好ましくは、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、不眠、睡眠障害等が挙げられ、特に好ましくは慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下等が挙げられる。ここで、「尿量の異常」とは、尿量が少ない又は多いことをいい、特に尿量が少ないことを指す。気虚及び/又は血虚に関連する症状は、さらに、脱力感、下痢、頻尿、食欲不振、尿失禁、四肢冷感、冷え、易感染性、多汗、顔色不良等を含んでいてもよい。
【0016】
気虚及び/又は血虚に関連する諸症状は、気虚及び/又は血虚以外の原因によって引き起こされる場合もある。例えば、細菌性・毒物・薬物等によって下痢などの症状を引き起こす場合があり、また、一過性の筋肉痛、過度の疲労、栄養不足若しくは過食等によっても倦怠感等の症状が引き起こされることがある。しかしこのような場合、これら特定の原因がなくなれば、通常症状が回復する。一方、気虚及び/又は血虚は、「気」及び/又は「血」の不足に関連するものであるため、慢性症状であることが多く、また、特定な明白な原因が思い当たらない場合が多い。したがって、上記挙げられた気虚及び/又は血虚に関連する諸症状のうち少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又は少なくとも7つ)は、1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上の期間にわたって継続する場合は、気虚及び/又は血虚に関連する症状である可能性が高く、さらに、それらの症状に思い当たる直接的な原因がない場合、気虚及び/又は血虚である可能性がより高い。より確実には、中国医学に基づいて、気虚及び/又は血虚であるかどうか診断できる。
【0017】
本実施形態の組成物は、有効成分として、成分(1)、成分(2)、成分(3)、及び成分(4)を含む。成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)は、それぞれ特定の帰経及び性味を有する一群の生薬を含む。各生薬の帰経、性味及び効能は後述のとおりである。また、各生薬は一般的に知られている由来及び部位を用いられてよく、詳細は後述のとおりである。
【0018】
ここで、帰経とは、中国医学(中医学)で用いられる概念の1つであり、生薬が人体のどの部分に作用するかを指し、薬効が現れる作用部位を示す。帰経はいわゆる「五臓」、すなわち、「肝・心・脾・肺・腎」で構成されるが、中国医学の五臓は解剖学的臓器とは一致せず、より人体の「機能」を意味する。肝は、自律経、情緒、運動神経、婦人科系、肝臓に関係し、血液を貯蔵し、気血がスムーズに流れるようにコントロールする。心は、脳、心臓を含む循環器系に関係し、血を全身にめぐらせ、滋養させる働きがある。脾は、消化器系、アレルギー、水分代謝の一部に関係し、飲食物を消化吸収し、体の基本となる「気血水」を作る。肺は、呼吸器系、皮膚、水分代謝の一部、アレルギーに関係し、脾と協力して「気」をつくり、全身に散布し、水のめぐりを調節し、身体を外邪から守る、免疫力と関係が深い。腎は、生殖器系、泌尿器系、内分泌系、老化や発育に関係し、生命エネルギーの源を蓄え、全身の水の代謝を司り、尿を生成し、再吸収する。中国医薬では、五臓は共同で人体の精気の生成や貯蔵を行い、精神活動もコントロールするとされている。
【0019】
性味(「気味」ともいう)とは、生薬の性質を示す分類体系の一類型であり、それぞれの味は五臓に関係し、また味自体にそれぞれ役割がある。最も一般的には、「寒・涼・平・温・熱」の五性により人体を冷やしたり、温めたりする性質を示し、また、「辛・甘・酸・苦・鹹」の五味により摂取時の味を示すとともに効能の指標ともなっている。五味にはさらに「淡・渋」が加えられることもある。「熱」及び「温」は寒さを退けて身体を温かくし、興奮させ、活発にする働きがあり、一方、「寒」及び「涼」は体の熱を冷まし、解毒し、気持ちを落ち着かせる働きがあり、「平」は、温めもせず冷やしもしない性質をいう。「寒」は程度によって「大寒」、「寒」、「微寒」にさらに分けることもある。「辛」は肺に関係し、発汗させ、気を巡らし、散らす作用がある。「甘」は脾に関係し、補う又は緩和する作用がある。「酸」は肝に関係し、ひきしめる作用がある。「苦」は心に関係し、熱を冷まし、湿を乾かし、下す作用がある。「鹹」は腎に関係し、堅いものを柔らかくし、潤して下す作用がある。性味は程度によって「大寒」、「微苦」等のように細分化されることもある。
【0020】
帰経及び性味は、ほぼ全ての生薬に設定されており、帰経及び/又は性味の一致する生薬はその効能も同様となる傾向が強く、膨大な生薬の効能・処方設計の体系化を助ける技術思想の代表的なものである。
【0021】
また、生薬の分類として、辛涼解表薬、清熱瀉火薬、催吐薬、瀉下薬、利水滲湿薬、きょ風湿薬、きょ寒薬、清熱薬、鎮咳去痰薬、理気薬、補気薬、理血薬、養血薬、活血化お薬、補養薬、芳香開孔薬、鎮静鎮痙薬、収渋薬、消化薬、駆虫薬、及び外用薬等が挙げられる。
【0022】
<成分(1)>
成分(1)は、帰経が「脾」である生薬であり、具体的には、炙甘草、甘草、山薬、大棗、膠飴及び人参からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの生薬のうち、入手しやすさ(供給安定性)の観点から、炙甘草、甘草、山薬、大棗及び膠飴からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、少ない原料生薬量で効果を奏する観点から、炙甘草、甘草及び大棗からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。成分(1)としては、少なくとも1種の生薬、少なくとも2種の生薬、少なくとも3種の生薬、又は少なくとも4種の生薬であってよい。
【0023】
炙甘草(シャカンゾウ)は、ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisch.)又はスペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra L.)の根及びストロンの乾燥したものをそのまま又はハチミツをまぶして煎ったものであり、性味は平、甘であり、帰経は十二経であり、効能は補中益気、潤肺・きょ痰止咳、緩急止痛、清熱解毒、調和薬性である。主成分が、トリテルペン配糖体、フラバノン配糖体である。
【0024】
甘草(カンゾウ)は、ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisch.)又はスペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra L.)の根及びストロンを乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は十二経であり、効能は補中益気、潤肺・きょ痰止咳、緩急止痛、清熱解毒、調和薬性である。主成分が、トリテルペン配糖体、フラバノン配糖体である。
【0025】
山薬(サンヤク)は、ヤマノイモ(Dioscorea japonica Thunb.)又はナガイモ(Dioscorea batatas Decne.)の周皮を除いた根茎(担根体)を乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は脾・肺・腎であり、効能は補脾止瀉、養陰扶脾、養肺益陰・止咳、補腎固精・縮尿・止帯である。主成分が、多糖類(デンプン、糖たんぱく質)である。
【0026】
大棗(タイソウ)は、ナツメ(Zizyphus jujuba Mill. var. inermis (Bunge) Rehder)の果実を乾燥したものであり、性味は微温、甘であり、帰経は脾・胃・心・肝であり、効能は補脾和胃、養営安神、緩和薬性である。主成分が、果糖、ブドウ糖である。
【0027】
膠飴(コウイ)は、トウモロコシ(Zea mays L.)、キャッサバ(Manihot esculenta Crantz)、ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)、サツマイモ(Ipomoea batatas (L.) Poir.)、又はイネ(Oryza sativa L.)のデンプン又はイネの種皮を除いた種子を加水分解し、糖化したものであり、性味は微温、甘であり、帰経は脾・胃・肺であり、効能は補虚建中・緩急止痛、潤肺止咳である。主成分が、麦芽糖である。
【0028】
人参(ニンジン)は、オタネニンジン(Panax ginseng C.A. Mey.)の細根を除いた根又はこれを軽く湯通しし、乾燥したものであり、性味は微温、甘・微苦であり、帰経は肺・脾であり、効能は補気固脱、補脾気、益肺気、生津止渇、である。主成分が、サポニン、フラボノイドである。
【0029】
<成分(2)>
成分(2)は、帰経が「肝」又は「脾」である生薬であり、具体的には、姜黄、竜眼肉、莪朮、鶏血藤、絲瓜絡、サンリョウ、紅花及び劉寄奴からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの生薬のうち、入手しやすさ(供給安定性)の観点から、姜黄、竜眼肉、莪朮、鶏血藤、絲瓜絡及び紅花からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、効能の観点から、姜黄、莪朮、鶏血藤及び紅花からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、姜黄、莪朮及び鶏血藤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。成分(2)としては、少なくとも1種の生薬、少なくとも2種の生薬、少なくとも3種の生薬、又は少なくとも4種の生薬であってよい。
【0030】
姜黄(キョウオウ)は、ウコン(Curcuma longa L.)の根茎をそのまま又はコルク層を除いたものを通例湯通しし乾燥したものであり、性味は温、苦・辛であり、帰経は脾・肝であり、効能は破血行気・通経止痛、きょ風勝湿である。主成分が、精油、ポリフェノール、デンプンである。
【0031】
竜眼肉(リュウガンニク)は、リュウガン(Euphoria longana Lam)の仮種皮を乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は心・脾であり、効能は養心血、安神、補脾気 である。主成分が、糖類、有機酸である。
【0032】
莪朮(ガジュツ)は、ガジュツ(Curcuma zedoaria Roscoe、Curcuma phaeocaulis Valeton、Curcuma Kwangsiensis S. G.Lee et C. F. Liang)の根茎を通例湯通し乾燥したものであり、性味は温、苦・辛であり、帰経は肝・脾であり、効能は行気破血、消積止痛である。主成分が、精油、ポリフェノール、デンプンである。
【0033】
鶏血藤(ケイケットウ)は、ミツカトウ(Spatholobus suberectus Dunn)のつる性の茎を乾燥したものであり、性味は温、苦・微甘、であり、帰経は肝・腎であり、効能は活血補血、舒筋通絡である。主成分が、フェノール性化合物、鉄分、アミノ酸である。
【0034】
絲瓜絡(シカラク)は、ヘチマ(Luffa cylindrica (L.) M.Roem.)成熟果実の維管束を乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は肺・胃・肝であり、効能は行血通絡である。主成分が、多糖類、フェノール性化合物である。
【0035】
サンリョウは、ミクリ(Sparganium stoloniferum (Graebn.) Buch.-Ham. ex Juz.)の塊茎の外皮を除いて乾燥したものであり、性味は平、苦であり、帰経は肝・脾であり、効能は破血行気、消積止痛である。主成分が、精油、デンプンである。
【0036】
紅花(コウカ)は、ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)の管状花をそのまま又は黄色色素の大部分を除いたものでときに圧搾して板状としたものであり、性味は温、辛であり、帰経は心・肝であり、効能は活血通経、きょお止痛である。主成分が、フラボノイドである。
【0037】
劉寄奴(リュウキド)は、リトウザンヨモギ(Artemisia anomala S. Moore)の全草を乾燥したものであり、性味は温、辛・苦であり、帰経は心・肝・脾・肺・腎・膀胱であり、効能は破血通経・消脹止痛、止血消腫、清熱利湿、下気除脹である。主成分が、精油である。
【0038】
<成分(3)>
成分(3)は帰経が「肺」であり、性味が「涼」、「寒」又は「微寒」である生薬であり、具体的には、茶葉、薄荷、桑葉、菊花及び香鼓からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの生薬のうち、少ない原料生薬量で効果を奏する観点から、茶葉、薄荷及び桑葉からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、風味の観点から、茶葉及び桑葉からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。成分(3)としては、少なくとも1種の生薬、少なくとも2種の生薬、少なくとも3種の生薬、又は少なくとも4種の生薬であってよい。
【0039】
茶葉(チャヨウ)は、チャ(Camellia sinensis (L.) Kuntze)の葉(しばしば枝先を伴う)を乾燥したものであり、性味が微寒、苦・微甘であり、帰経が心・肺・肝・腎・脾・胃であり、効能がきょ風・清爽頭目、清熱降火・解暑、解熱毒・止痢、利水である。主成分が、アルカロイド、フラボノイド、タンニンである。
【0040】
薄荷(ハッカ)は、ハッカ(Mentha arvensis L. var. piperascens Malinv.)の地上部を乾燥したものであり、性味が涼、辛であり、帰経が肺・肝であり、効能が疏散風熱、清頭目・利咽頭、透疹止痒、疏肝解鬱、闢えである。主成分が、精油である。
【0041】
桑葉(ソウヨウ)は、マグワ(Morus alba L.)の葉を乾燥したものであり、性味が寒、苦・甘であり、帰経が肺・肝であり、効能が疏散風熱、清肺潤燥・止咳、平肝陽、明目である。主成分が、フラボノイド、ミネラルである。
【0042】
菊花(キクカ)は、キク(Chrysanthemum morifolium Ramat.)又はシマカンギク(Chrysanthemum indicum L.)の頭花を乾燥したものであり、性味が涼、甘・微苦であり、帰経が肺・肝であり、効能が疏散風熱、明目、平肝陽である。主成分が、フラボノイド、セスキテルペンである。
【0043】
香鼓(コウシ)は、ダイズ(Glycine max (L.) Merr. subsp. Max)の成熟種子を蒸して発酵し乾燥したものであり、性味が涼、辛・甘・微鹹であり、帰経が肺・胃であり、効能が疏散解表、宣鬱除煩である。主成分が、脂肪、たんぱく質である。
【0044】
<成分(4)>
成分(4)は帰経が「腎」、「脾」又は「胃」である生薬であり、具体的には、陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、生姜、ゲンスイ、葱白、酸棗仁、柏子仁、車前子、車前草、ヨクイニン、玉米鬚、地膚子、冬瓜子、扁蓄、金銭草、肉桂、乾姜、小茴香、蜀椒、胡椒、刺五加及び艾葉からなる群より選ばれる少なくとも2種である。成分(4)は、気を生み出し、抵抗力・虚弱に関係する中焦を温める作用を有する生薬である。成分(4)を構成する生薬を1種配合するのみでは中焦を温める作用が限定的で、成分(3)と拮抗し本発明の効果を十分に奏することができないが、成分(4)を構成する生薬を2種配合することにより中焦を十分に温めることができ、他成分の作用と相乗的に働き本発明の効果を奏することが期待できる。なお、中焦とは、三焦の一つであり、中国医学で三焦とは、単一の形態器官ではなく一つの機能単位であるとされており、横隔膜から上の胸部を指す「上焦」、横隔膜からへその間の腹部を指す「中焦」、胃以下の部位を指す「下焦」に分けられている。中焦は脾、胃を含み、栄養物の消化、運搬に関与することで気を生み出し、抵抗力の源泉となると共に虚弱に関係する三焦である。
【0045】
これらの生薬のうち、入手しやすさ(供給安定性)の観点から、陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、生姜、ゲンスイ、車前子、車前草、ヨクイニン、玉米鬚、地膚子、肉桂、乾姜、小茴香及び刺五加からなる群より選ばれる少なくとも2種であることが好ましく、効能の観点から、陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、生姜、ゲンスイ、肉桂、乾姜、小茴香及び刺五加からなる群より選ばれる少なくとも2種であることがより好ましく、補骨脂、畢撥、肉桂、乾姜及び刺五加からなる群より選ばれる少なくとも2種であることが特に好ましい。成分(4)としては、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種の生薬であってよい。
【0046】
また、製品加工容易性の観点からは、成分(4)は、陳皮、補骨脂、木瓜、畢撥、桂枝、紫蘇、ゲンスイ、車前草、ヨクイニン、玉米鬚、地膚子、肉桂、小茴香及び刺五加からなる群より選ばれる少なくとも2種(例えば、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種の生薬)であることが好ましい。
【0047】
陳皮(チンピ)は行気薬であり、ウンシュウミカン(Citrus unshiu (Swingle) Marcow.)又はポンカン(Citrus reticulata Blanco)の成熟果皮を乾燥したものであり、性味が温 、辛・苦であり、帰経が脾・肺であり、効能が理気健脾、燥湿化痰である。主成分が、精油、フラボノイドである。
【0048】
補骨脂(ホコツシ)は助陽薬であり、オランダビュ(Psoralea corylifolia L.)の成熟果実を乾燥したものであり、性味が大温、辛・苦・渋であり、帰経が腎・脾であり、効能が補腎壮陽・固精縮尿、温脾止瀉、温腎納気・平喘である。主成分が、精油、有機酸、フラボノイドである。
【0049】
木瓜(モッカ)はきょ風湿薬であり、カリン(Chaenomeles sinensis (Thouin) Koehne)又はボケ(Chaenomeles speciosa (Sweet) Nakai)の成熟に近い又は成熟した偽果を乾燥したものであり、性味が温、酸であり、帰経が肝・脾であり、効能が平肝舒筋、和中きょ湿である。主成分が、サポニン、有機酸、タンニンである。
【0050】
畢撥(ヒハツ)は散寒薬であり、インドナガコショウ(Piper longum L.)の成熟に近い又は成熟果穂を乾燥したものであり、性味が熱、辛であり、帰経が胃・大腸であり、効能が温中散寒・行気止痛である。主成分が、精油、アルカロイドである。
【0051】
桂枝(ケイシ)は辛温解表薬であり、ケイ(Cinnamomum cassia Blume)の小枝を乾燥したものであり、性味が温、辛・甘であり、帰経が肺・心・脾・肝・腎・膀胱であり、効能が発汗解肌、温通経脈、通陽化気、平衡降逆である。主成分が、精油、タンニンである。
【0052】
紫蘇(シソ)は辛温解表薬であり、シソ(Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane)の葉及び枝先を乾燥したものであり、性味が温、辛であり、帰経が肺・脾・胃であり、効能が散寒解表、理気寛中、行気安胎、解魚蟹毒である。主成分が、精油、アントシアニン配糖体、フラボノイドである。
【0053】
生姜(ショウキョウ)は辛温解表薬であり、ショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の根茎で、ときに周皮を除いたものを乾燥したものであり、性味が微温、辛であり、帰経が肺・脾・胃であり、効能が散寒解表、温胃止嘔、化痰行水、解毒である。主成分が、精油、辛み成分、デンプンである。
【0054】
ゲンスイは辛温解表薬であり、コエンドロ(Coriandrum sativum L.)の全草を乾燥したものであり、性味が温、辛であり、帰経が肺・胃であり、効能が解表透疹、開胃消食である。主成分が、精油、テルペンである。
【0055】
葱白(ソウハク)は辛温解表薬であり、ネギ(Allium fistulosum L.9の鱗茎を乾燥したものであり、性味が温、辛であり、帰経が肺・胃であり、効能が散寒解表、通陽散寒である。主成分が、精油、含硫化合物である。
【0056】
酸棗仁(サンソウニン)は養心安神薬であり、サネブトナツメ(Ziziphus jujuba Mill. var. spinosa (Bunge) Hu ex H.F.Chow)の成熟種子を乾燥したものであり、性味が平、甘・酸であり、帰経が心・肝・胆・脾であり、効能が補肝寧心、収斂止汗である。主成分が、トリテルペン、サポニン、フラボノイドである。
【0057】
柏子仁(ハクシニン)は養心安神薬であり、コノテガシワ(Platycladus orientalis (L.) Franco)の成熟種子を乾燥し種皮を除いたものであり、性味が平、甘 であり、帰経が心・脾・肝・腎であり、効能が養心安神、益陰止汗、益脾潤腸である。主成分が、脂肪油、サポニンである。
【0058】
車前子(シャゼンシ)は利水滲湿薬であり、オオバコ(Plantago asiatica L.)の成熟種子を乾燥したものであり、性味が寒、甘・淡であり、帰経が肝・腎・肺・小腸であり、効能が清熱利水、滲湿止瀉、清肝明目、化痰止咳である。主成分が、粘液性多糖類、イリドイド配糖体である。
【0059】
車前草(シャゼンソウ)は利水滲湿薬であり、オオバコ(Plantago asiatica L.)の花期の全草を乾燥したものであり、性味が寒、甘・淡であり、帰経が肝・腎・肺・小腸であり、効能が清熱利水、滲湿止瀉、清肝明目、化痰止咳である。主成分が、イリドイド配糖体、フラボノイドである。
【0060】
ヨクイニンは利水滲湿薬であり、ハトムギ(Coix lacryma-jobi var. ma-yuen (Rom.Caill.) Stapf)の成熟種子を乾燥し種皮を除いたものであり、性味が微寒、甘・淡であり、帰経が脾・胃・肺であり、効能が清利湿熱、きょ湿舒除痺、排膿消腫、健脾止瀉である。主成分が、デンプン、たんぱく質である。
【0061】
玉米鬚(ギョクベイジュ)は利水滲湿薬であり、トウモロコシ(Zea mays L.)の花柱を乾燥したものであり、性味が平、甘であり、帰経が肝・腎・膀胱・心・小腸であり、効能が利水消腫、退黄である。主成分が、サポニン、フラボノイドである。
【0062】
地膚子(ジフシ)は利水滲湿薬であり、ホウキギ(Kochia scoparia(L.)Schrad.)の成熟果実を乾燥したものであり、性味が寒、辛・苦であり、帰経が腎・膀胱であり、効能が清湿熱・利小便、きょ風止痒である。主成分が、トリテルペノイドサポニンである。
【0063】
冬瓜子(トウガシ)は利水滲湿薬であり、トウガン(Benincasa cerifera Savi)又はBenincasa cerifera Savi forma emarginata K. Kimura et Sugiyamaの成熟種子を乾燥したものであり、性味が微寒、甘であり、帰経が肺・胃・大腸・小腸であり、効能が清熱・利水消腫である。主成分が、脂肪酸、アルカロイドである。
【0064】
扁蓄(ヘンチク)は利水滲湿薬であり、ニワヤナギ(Polygonum aviculare L.)の地上部を乾燥したものであり、性味が平、苦であり、帰経が胃・膀胱であり、効能が利水通淋、殺虫止痒である。主成分が、フラボン配糖体、タンニンである。
【0065】
金銭草(キンセンソウ)は利水滲湿薬であり、キンセンソウ(Lysimachia christinae Hance)の全草を乾燥したものであり、性味が微寒、甘・鹹・淡であり、帰経が肝・胆・腎・膀胱であり、効能が利水通淋・排石止痛、清熱きょ湿・退黄である。主成分が、精油、タンニンである。
【0066】
肉桂(ニッケイ)は散寒薬であり、ケイ(Cinnamomum cassia Blume)の樹皮又は周皮の一部を除いた樹皮を乾燥したものであり、性味が大熱、辛・甘であり、帰経が肝・腎・心・脾・胃であり、効能が温中補陽、散寒止痛、温通経脈である。主成分が、精油、タンニンである。
【0067】
乾姜(カンキョウ)は散寒薬であり、ショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の根茎を湯通し又は蒸して乾燥したものであり、性味が大熱、大辛であり、帰経が心・肺・脾・胃であり、効能が温中散寒、回陽通脈、温肺化痰・化飲である。主成分が、精油、辛み成分、デンプンである。
【0068】
小茴香(ショウウイキョウ)散寒薬であり、ウイキョウ(Foeniculum vulgare Mill.)の成熟果実を乾燥したものであり、性味が温、辛であり、帰経が肝・腎・脾・胃であり、効能が散寒止痛、理気和胃である。主成分が、精油である。
【0069】
蜀椒(ショクショウ)は散寒薬であり、カホクザンショウ(Zanthoxylum bungeanum Maxim.)又はフユザンショウ(Zanthoxylum armatum DC. var. subtrifoliatum (Franch.) Kitam.)の成熟果皮で、分離した種子をできるだけ除き、乾燥したものであり、性味が熱、辛であり、帰経が脾・胃・腎であり、効能が散寒止痛・燥湿、解毒駆虫である。主成分が、精油、辛み成分である。
【0070】
胡椒(コショウ)は散寒薬であり、コショウ(Piper nigrum L.)の成熟に近い又は成熟果実を乾燥したものであり、性味が熱、辛であり、帰経が胃・大腸であり、効能が温中散寒・行気止痛である。主成分が、精油、アルカロイドである。
【0071】
刺五加(シゴカ)はきょ風湿薬であり、エゾウコギ(Eleutherococcus senticosus (Rupr. et Maxim.) Maxim.)の根、根茎を乾燥したものであり、性味が温、辛・苦であり、帰経が肝・腎であり、効能が舒風湿、補肝腎・強筋骨、利水消腫である。主成分が、サポニン、リグナンである。
【0072】
艾葉(ガイヨウ)は散寒薬であり、ヨモギ(Artemisia princeps Pamp.)又はオオヨモギ(Artemisia montana (Nakai) Pamp.)の葉及び枝先を乾燥したものであり、性味が温、苦・辛であり、帰経が肝・脾・腎であり、効能が散寒除湿・止痛、温経止痛である。主成分が、精油、脂肪酸、タンニンである。
【0073】
本実施形態の組成物に含まれる成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)としての生薬は、生薬のままであってもよく、生薬を細断又は粉砕したものであってもよく、或いは、生薬のエキスであってもよい。本願明細書において、生薬のエキスとは、生薬を製薬上許容される水性溶媒、例えば、水(熱水を含む)、エタノール又は水とエタノールとの混合溶媒によって抽出されたものであることが好ましい。生薬エキスは、公知の抽出方法によって作製されるものであってよく、一般的な軟エキス又はエキス末・エキス顆粒であってよい。
【0074】
本実施形態の組成物に含まれる成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)としての生薬の配合量は、摂取者の体重、年齢、症状等の種々の条件に応じて適宜設定することができ、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和を発揮するのに十分な量であればよく、1日量あたりの生薬の重量(エキスの場合、使用した生薬の重量(生薬換算重量))(g/日)で規定される。
【0075】
各生薬の1日量としては、成分(1)として、炙甘草3~6g、甘草3~6g、山薬9~30g、大棗3~9g、膠飴30~60g及び人参3~9gが挙げられる。成分(2)として、姜黄3~9g、竜眼肉6~12g、莪朮3~9g、鶏血藤9~15g、絲瓜絡6~15g、サンリョウ3~9g、紅花3~9g及び劉寄奴9~15が挙げられる。成分(3)として、茶葉3~15g、薄荷1.5~6g、桑葉3~9g、菊花6~12g及び香鼓9~15gが挙げられる。成分(4)として、陳皮3~9g、補骨脂3~9g、木瓜3~9g、畢撥1.5~6g、桂枝3~10g、紫蘇6~12g、生姜3~9g、ゲンスイ3~6g、葱白3~9g、酸棗仁9~15g、柏子仁6~15g、車前3~9g子、車前草3~9g、ヨクイニン9~30g、玉米鬚15~30g、地膚子9~15g、冬瓜子15~30g、扁蓄9~30g、金銭草15~30g、肉桂1.5~5g、乾姜3~9g、小茴香3~9g、蜀椒3~6g、胡椒1.5~3g、刺五加3~9g及び艾葉3~6gが挙げられる。成分(1)、成分(2)、成分(3)、又は成分(4)として、複数の生薬が用いられる場合、各生薬の1日量は適宜に減量してもよい。
【0076】
本実施形態の組成物は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための組成物である。本実施形態の組成物は、成分(1)が脾に働きかけることで気を生み出して補うと共に、補った気の働きに加えて成分(2)が血を作り巡るのを助けることで血虚をも補うことを図る。更に、成分(4)が、気を生み出し、抵抗力・虚弱に関係する中焦を温めることで気を補う作用を増強すると共に、成分(3)により温寒のバランスを適切に取り、かつ精神安定作用を相乗的に発現する。このように、成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)を含むことにより、気虚及び/又は血虚に関連する様々な症状を予防、改善又は緩和することができる。
【0077】
気虚及び/又は血虚に関連する症状は、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、尿量の異常、不眠、睡眠障害から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つであり、特に慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、不眠、睡眠障害からなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つであることが好ましい。また、上記少なくとも1つの症状は、1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上の期間にわたって継続している症状であることが好ましい。
【0078】
本実施形態の組成物は、食品組成物又は医薬組成物であることが好ましい。本実施形態の組成物に含まれる各生薬は、日本薬局方 生薬等に収録されておらず、使用規制のないものであるため、医療及び食品の両方に用いられる。そのため、本実施形態の組成物は、機能性食品などの食品組成物とすることができる。そのため、医師の処方を必要とせず、気軽に不快の症状や身体の不調を予防、改善又は緩和できるという利点がある。
【0079】
食品組成物は、食品としてあり得る任意の形態であってよい。例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、チーズ等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、炭酸飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、日本酒、果実酒、洋酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、キャンデー、ゼリー、クッキー、ケーキ、チョコレート、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、粥、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、旨味調味料、ふりかけ、スープの素等)等が挙げられる。かかる食品組成物は、業務店舗で料理として提供することもでき、また、惣菜、レトルト食品、冷凍食品、その他一般的な食品組成物の包装形態等を取って一般流通形態で提供することもできる。
【0080】
上記各種形態の食品組成物は、有効成分としての成分(1)、成分(2)、成分(3)、及び成分(4)の他に、有効成分の作用に影響を与えなければ、食品として許容される成分を含んでもよい。例えば、各種一般食材、デンプン、ゼラチン、植物油脂、動物油脂、加工油脂等、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、カラヤガム、コンニャクグルコマンナン、キサンタンガム、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、カロブビーンガム、アルギン酸、シクロデキストリン等のゲル化剤、調味料、甘味料、香辛料、着色料、保存料、酸化防止剤、水、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0081】
本実施形態の食品組成物は、さらに複合的な効果を奏することを目的として、機能性を有する食品材料を適宜任意に配合することができる。例えば、成分(1)、成分(2)、成分(3)、及び成分(4)以外の各種生薬、各種プロバイオティクス、各種オリゴ糖、ビタミン、ミネラル等の栄養成分、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、その他公知の機能性食品材料を適宜任意に配合することができる。
【0082】
各種形態の食品組成物の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。また、生薬の特有の味及び匂いを低減できる成分を添加したり、処理を行ったりしてもよい。
【0083】
本実施形態の食品組成物は、また、保健、健康維持、健康増進等を目的とする食品、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品又は栄養機能食品等であってよい。本実施形態の食品組成物は、サプリメントである場合、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤、ドリンク剤、ゼリー等の形態であってもよい。本実施形態の食品組成物はそのまま摂取してもよく、食事、軽食、飲料等に混ぜ込んで摂取してもよい。
【0084】
本実施形態の食品組成物における有効成分としての成分(1)、成分(2)、成分(3)、及び成分(4)の含有量は、特に限定されず、また、食品組成物の形態によっても異なる。例えば、食品組成物の形態が、錠剤・カプセル剤・顆粒剤・液剤・散剤・スティックゼリー等のサプリメント形態である場合、食品組成物における各生薬の総重量は典型的には当該食品組成物の0超~100重量%、例えば10~80質量%であることを挙げられる。また、食品組成物の形態が、各種飲料・ゼリー、食品類・レトルト食品類等の一般食品形態である場合、食品組成物における各生薬の総重量は、典型的には当該食品組成物の0.05~25質量%であることを挙げられる。味や量を考慮すれば、食品組成物中における有効成分の配合量最小限に抑えることが好ましく、その場合、生薬のままで配合するよりも、生薬エキスを用いることが好ましい。本実施形態の食品組成物に含まれる生薬は、通常食品として用いられる作用が緩和なものであるため、その摂取量は特に限定されない。本実施形態の食品組成物の摂取量が、上述の生薬の1日量を含む量であれば、所望の気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和効果を得ることができる。
【0085】
本実施形態の医薬組成物は、ドリンク剤、シロップ、ゼリー、凍結乾燥粉末、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等の剤形であってもよく、また、有効成分としての成分(1)、成分(2)、成分(3)、及び成分(4)の他に、例えば、薬学的に許容される成分、例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤を含んでいてもよい。
【0086】
本実施形態の組成物は、他の組成物と併用することもできる。例えば、本実施形態の組成物を、気虚及び/又は血虚に関連する症状の対処に用いる市販薬、例えば、ビタミンB群や肝臓水解物等と併用することで、最低限の市販薬の使用により不快症状をなくすことができる。
【0087】
組成物の摂取は1日1回であってもよく、複数回、例えば2回、3回又は4回に分けて摂取してもよい。複数回摂取する場合は、1日の合計量が1日量となるように摂取すればよい。本実施形態の組成物の摂取タイミングはとくに限定されず、1日1回の摂取の場合、起床後、食前、食間、食後、就寝前等任意の時間で摂取してもよく、1日複数回の摂取の場合、起床後、食前、食間、食後、就寝前のうちの2つ、3つ又は4つ以上のタイミングで摂取してもよい。また、食事と同時に摂取してもよい。
【0088】
本実施形態の組成物は1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上の期間にわたって継続して摂取してもよい。本実施形態の組成物が安全な生薬成分であるため、長期にわたって摂取しても安全であり、かつ、長期服用することで、徐々に体質を改善し、気虚及び/又は血虚に関連する症状を徐々に緩和又は改善できる。
【0089】
一実施形態の方法は、上記本実施形態の組成物を、これを必要とする対象に与える工程を含む、気虚及び/又は血虚に関連する症状を予防、改善又は緩和する方法である。ここで、対象は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の自覚を有するか、中国医学に基づいて気虚及び/又は血虚であると診断された対象である。組成物は、上述の1日量で対象に与える(例えば、投与する)。投与期間は、特に限定されないが、1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上であってもよい。
【0090】
一実施形態の組成物は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための組成物であり、該組成物は上記本実施形態の組成物であってよい。ここで、使用方法(摂取量、摂取期間)は上述のとおりである。
【0091】
一実施形態の使用は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物の製造における、上記本実施形態の組成物の使用である。また、別の実施形態の使用は、気虚及び/又は血虚に関連する症状の予防、改善又は緩和における、上記本実施形態の組成物の使用である。ここで、使用方法(摂取量、摂取期間)は上述のとおりである。組成物が食品組成物又は医薬組成物であってよく、該組成物は、有効量の成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)の生薬又は生薬エキスを含むように、通常の方法にしたがって製造することができ、必要があれば上述の他の成分を含ませてもよい。
【0092】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等に何ら限定されるものではない。
【実施例0093】
<試験例1>
(気虚及び/又は血虚に関連する身体の不調に与える影響の評価試験)
気虚及び/又は血虚に関連する日常的な身体トラブルを自覚する18歳以上64歳以下の日本人男女19名(実施例1)、18名(実施例2及び比較例1)又は14名(実施例3)を対象とした単盲検前後比較試験を実施し、本発明の効果を検討した。
【0094】
(組成物)
実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の生薬組成及び1回分の使用量は表1に示す。原料生薬として表2に記載の生薬の1回分量の比例にしたがって、原料生薬を配合し、常水にて沸騰抽出し、ろ過、濃縮、殺菌を行い、デキストリンを適量添加した後スプレードライヤーにて乾燥し、混合植物エキス末を得た。得られたエキスのうち、原料生薬として表2に記載の生薬量に相当する実施例1のエキス末6.0g、実施例2のエキス末15.0g、実施例3のエキス末7.2g又は比較例1のエキス末6.0gを1日分の食品組成物とした。
【表1】
【0095】
被験者には実施例1、2、3又は比較例1のエキス末1日量(実施例1:2.0g、実施例2:5.0g、実施例3:2.4g、比較例1:2.0g)を、1日1回朝食前に、約150ccのお湯に溶かして2週間(14日間)連続で摂取させた。摂取前及び2週間の摂取完了時に、全被験者を対象とした不快症状アンケートを実施し、症状の改善度を評価した。摂取前の不快症状アンケートは、表2に記載の症状群それぞれにつき、「とても気になる(1)」、「少し気になる(2)」、「気にならない(3)」の3段階のスコアを設定し、各症状の自覚の有無を評価した。摂取完了時の不快症状アンケートは、表2に記載の症状群それぞれにつき、「とても良くなった(1)」、「良くなった(2)」、「変わらない(3)」、「悪くなった(4)」、「とても悪くなった(5)」の5段階のスコアを設定し、各症状の改善の有無を評価した。摂取前アンケートのスコアが1又は2であった被験者のうち、摂取完了時アンケートのスコアが4又は5になった被験者の割合(%)を改善率とし、改善率が10%以上の不快症状を当該エキスが改善効果あり、改善率が30%以上の不快症状を当該エキスが顕著な改善効果ありと判定した。
【0096】
(結果)
結果を表2に示す。表2から、1つの生薬からなる成分(1)、1つの生薬からなる成分(2)及び1つの生薬からなる成分(3)を含み、成分(4)を構成する生薬を1種のみ含む比較例1の生薬エキスを摂取した被験者に比べて、1つの生薬からなる成分(1)、1つの生薬からなる成分(2)、1つの生薬からなる成分(3)及び5つの生薬からなる成分(4)を含む実施例1、2つの生薬からなる成分(1)、1つの生薬からなる成分(2)、1つの生薬からなる成分(3)及び2つの生薬からなる成分(4)を含む実施例2、又は、2つの生薬からなる成分(1)、1つの生薬からなる成分(2)、1つの生薬からなる成分(3)及び4つの生薬からなる成分(4)を含む実施例3の生薬エキスを摂取した被験者において、慢性疲労、易疲労感、倦怠感、気力低下、尿量の異常、不眠、睡眠障害の改善が認められた。前記効果に加えて、実施例1の生薬エキスの摂取によっては、脱力感、食欲不振、下痢、尿失禁、頻尿、四肢冷感、冷え、易感染性、多汗、顔色不良の改善が、実施例2の生薬エキスの摂取によっては、脱力感、下痢、頻尿の改善が、実施例3の生薬エキスの摂取によっては冷えの改善が認められた。すなわち、成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)の相乗作用に基づき気虚及び/又は血虚に関連する症状の全般において予防、改善又は緩和効果が確認された。
【表2】