(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083731
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197596
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】軍司 勲男
(72)【発明者】
【氏名】宮下 大幸
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB07
2G084BB23
2G084BB26
2G084BB28
2G084CC16
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD18
2G084DD19
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD38
2G084DD48
2G084DD62
2G084FF13
2G084FF15
2G084FF38
2G084FF40
(57)【要約】
【課題】電磁波の供給口付近のプラズマによるガス活性化を効率的に実施する。
【解決手段】処理容器と、前記処理容器の一部を構成し、開口を有する天壁と、前記開口を閉塞する透過窓と、を有し、前記透過窓下の前記開口が凹部として形成され、前記凹部は、前記透過窓から前記処理容器内へ電磁波を供給する供給口であり、前記天壁の下面に第1ガス供給孔が設けられ、前記凹部の内側面に第2ガス供給孔が設けられている、プラズマ処理装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器の一部を構成し、開口を有する天壁と、
前記開口を閉塞する透過窓と、を有し、
前記透過窓下の前記開口が凹部として形成され、前記凹部は、前記透過窓から前記処理容器内へ電磁波を供給する供給口であり、
前記天壁の下面に第1ガス供給孔が設けられ、前記凹部の内側面に第2ガス供給孔が設けられている、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1ガス供給孔は、相対的に分解しやすいガスを供給するように構成され、
前記第2ガス供給孔は、相対的に分解し難いガスを供給するように構成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記天壁は、複数の前記開口を有し、
複数の前記透過窓は、複数の前記開口を閉塞し、
前記第2ガス供給孔は、複数の前記透過窓のうち中央領域の前記透過窓下の前記凹部の内側面に設けられている、
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記天壁は、複数の前記開口を有し、
複数の前記透過窓は、複数の前記開口を閉塞し、
前記第2ガス供給孔は、複数の前記透過窓の各透過窓下の前記凹部の内側面に設けられている、
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2ガス供給孔は、前記凹部の高さ方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面をXY平面としたとき、XY平面上に形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第2ガス供給孔は、前記凹部の高さ方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面をXY平面としたとき、XY平面よりも上向きに形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第2ガス供給孔は、前記透過窓に向けて形成されている、
請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第2ガス供給孔は、前記凹部の中心軸に向かう向きに対して斜めの向きに形成されている、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第2ガス供給孔は、前記凹部内で旋回流を生じるように構成されている、
請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記透過窓の下面は、凹形状である、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1ガス供給孔を有する第1ガス供給路は、前記天壁の上下方向に貫通するように構成されている、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第2ガス供給孔を有する第2ガス供給路は、前記天壁の上方向から横方向に屈曲し、前記凹部の内側面を貫通するように構成されている、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、処理容器の天壁から突出した複数のガスノズルを開示している。ガスノズルは、天壁の下面よりも下方の位置に相対的に分解しやすいガスを供給し、ガスの解離を調整する。天壁に突出したガスノズルを加工する難易度とコストが高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電磁波の供給口付近のプラズマによるガス活性化を効率的に実施することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、処理容器と、前記処理容器の一部を構成し、開口を有する天壁と、前記開口を閉塞する透過窓と、を有し、前記透過窓下の前記開口が凹部として形成され、前記凹部は、前記透過窓から前記処理容器内へ電磁波を供給する供給口であり、前記天壁の下面に第1ガス供給孔が設けられ、前記凹部の内側面に第2ガス供給孔が設けられている、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、電磁波の供給口付近のプラズマによるガス活性化を効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す模式断面図。
【
図3】実施形態に係るガス供給構造の一例を示す図。
【
図4】実施形態に係るガス供給孔の配置例を示す図。
【
図5】実施形態に係るガス供給孔の角度(XZ面)の一例を示す図。
【
図6】実施形態に係るガス供給孔の角度(XY面)の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書において平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直、円、一致には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直、略円、略一致が含まれてもよい。
【0010】
[プラズマ処理装置]
実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を説明する。
図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置100の一例を示す模式断面図である。プラズマ処理装置100は、処理容器101と、載置台102と、ガス供給部103と、排気装置104と、マイクロ波放射源140と、制御部106とを有する。
【0011】
処理容器101は、金属材料、例えば表面にイットリア(Y2O3)等で皮膜処理が施されたアルミニウムからなり、有底の円筒形状の容器本体112と天壁111とを有する。容器本体112の上部には天壁111が設けられ、天壁111は処理容器101の一部を構成する。容器本体112と天壁111とにより、プラズマ処理空間Uが形成される。天壁111は、上面111bと下面111aとを有し、下面111aはプラズマ処理空間Uに露出する。天壁111は、複数の開口を有し、その複数の開口を閉塞するように上面111b側に複数のマイクロ波放射源140が配置される。
【0012】
処理容器101内では底部に載置台102が配置されている。載置台102は円板形状であり、例えば表面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム等の金属材料、又は例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料から形成されている。載置台102は、半導体ウエハを一例とする基板Wを載置する。載置台102は、容器本体112の底部から絶縁部材121を介して上方に延びる金属製の支持部材120により支持されている。
【0013】
また、載置台102の内部には、基板Wを昇降するための昇降ピン(図示せず)が載置台102の上面に対して突没可能に設けられている。さらに、載置台102の内部には加熱手段としてヒータ107が設けられている。ヒータ107は、ヒータ電源127から給電されて発熱する。そして、載置台102の上面の近傍に設けられた不図示のセンサ(例えば、熱電対)の温度信号によりヒータ107の出力を制御することで、基板Wが所定の温度に制御される。
【0014】
載置台102には、高周波電源122が電気的に接続されている。載置台102がセラミックスの場合は、載置台102に電極を設けて、その電極に高周波電源122を電気的に接続する。高周波電源122は、載置台102にバイアス電力として高周波電力を印加する。高周波電源122が印加する高周波電力の周波数は0.4~27.12MHzの範囲が好ましい。
【0015】
容器本体112の底部には排気管116が設けられ、排気管116には排気装置104が接続されている。排気装置104は、真空ポンプ、圧力制御バルブ等を備え、真空ポンプにより排気管116を介して処理容器101内が排気され、所望の真空状態に制御される。処理容器101内の圧力は、圧力計(図示せず)の値に基づいて圧力制御バルブにより制御される。容器本体112の側壁には、処理容器101に隣接する搬送室(図示せず)との間で基板Wの搬入出を行うための搬入出口114が設けられている。基板Wの搬入出時、搬入出口114は、容器本体112の側壁に沿って設けられたゲートバルブ115により開口される。
【0016】
マイクロ波放射源140は、天壁111の外周領域の6つの開口(
図1では2つのみ図示)と、天壁111の中央領域の1つの開口とに配置される。本実施形態では、7つのマイクロ波放射源140のそれぞれの下端の透過窓145が天壁111の開口を閉塞し、これにより、マイクロ波放射源140の全体が天壁111の上面111b上に設置される。ただし、マイクロ波放射源140の個数及び配置はこれに限らず、例えば天壁111の中央領域に1つのみ配置してもよいし、天壁111の外周領域のみに複数配置してもよい。
【0017】
マイクロ波放射源140は、アンプ部142を介してマイクロ波出力部130に接続されている。マイクロ波出力部130は、マイクロ波を生成するとともに、マイクロ波を分配して各アンプ部142に出力する。各アンプ部142は、分配されたマイクロ波を主に増幅して各マイクロ波放射源140に出力する。
【0018】
マイクロ波放射源140は、アンテナモジュール143、スロットアンテナ144及び透過窓145を有する。アンテナモジュール143は、内導体143aと内導体143aの周りに同心円に配置された外導体143bとを有する同軸導波管であり、内導体143aと外導体143bとの間の空間をマイクロ波が伝搬する。内導体143aと外導体143bとの間の空間には環状の誘電体部材M1、M2が設けられている。誘電体部材M1は、誘電体部材M2の上部に配置されている。誘電体部材M1、M2は上下動可能であり、これによりインピーダンスを調整する。
【0019】
外導体143bの先端(アンテナモジュール143の先端)は拡径されている。外導体143bの拡径された内部には円盤形状のスロットアンテナ144が嵌め込まれている。アンテナモジュール143及びスロットアンテナ144は天壁111の上部(外部)に設けられている。内導体143aはスロットアンテナ144の上面中央に当接している。スロットアンテナ144は、スロットアンテナ144の中心部の周りに弧状または円環状のスロットSを有する。スロットアンテナ144は、スロットSからマイクロ波を放射するアンテナの機能を有する。
【0020】
スロットアンテナ144の下方には、スロットSから放射されたマイクロ波を処理容器101内に放射する透過窓145が設けられている。透過窓145はアルミナ(Al2O3)等の誘電体から形成され、マイクロ波を透過する。透過窓145は、天壁111に設けられた開口の上部位置で開口を閉塞する。これにより、透過窓145下の開口が凹部Vとして形成される。凹部Vはプラズマ処理空間Uへ電磁波の一例であるマイクロ波を供給する供給口として機能する。透過窓145を透過したマイクロ波は、凹部Vの供給口から処理容器101内のプラズマ処理空間Uへ放射される。
【0021】
ガス供給部103は、複数のガス導入管124~126と、ガス供給配管128と、ガス供給源129とを有する。複数のガス導入管124~126は、ガス供給配管128を介してガス供給源129に接続されている。複数のガス導入管124~126は、天壁111の中央領域のマイクロ波放射源140の周りからガスを供給する。
【0022】
複数のガス導入管124、125は、天壁111を上下方向に貫通するように構成された第1ガス供給路R1、R2にそれぞれ接続されている。第1ガス供給路R1は下面111aに開口する第1ガス供給孔124aを有し、第1ガス供給路R2は下面111aに開口する第1ガス供給孔125aを有する(
図3(a)参照)。
【0023】
複数のガス導入管126は、天壁111の上方向から延びる経路126b(
図3(a)参照)と、天壁111内で横方向に屈曲し、凹部Vの内側面111cへ延びる経路126cを含む第2ガス供給路R3に接続されている。第2ガス供給路R3は、内側面111cに開口する第2ガス供給孔126aを有する。
【0024】
ガス供給源129は、処理ガスを供給する。一例としては、基板Wにシリコン窒化膜(SiN)を形成する場合、複数の第1ガス供給孔124aからN2ガス及び/又はNH3ガスを供給し、複数の第1ガス供給孔125aからSiH4(シラン)ガスを供給する。また、複数の第2ガス供給孔126aからN2ガス及び/又はNH3ガスを供給する。
【0025】
ただし、処理ガスの供給はこれに限らず、第1ガス供給孔125aは、相対的に分解しやすいガスを供給し、第2ガス供給孔126aは、相対的に分解し難いガスを供給してもよい。なお、第1ガス供給孔124aは、相対的に分解しやすいガスを供給してもよく、相対的に分解し難いガスを供給してもよい。
【0026】
なお、ガス供給配管128には、処理ガスの供給及びその停止を制御するバルブや処理ガスの流量を調整する流量調整器が設けられている。
【0027】
制御部106は、例えば、コントローラ106a、メモリ106bを有するコンピュータである。制御部106は、入力装置、表示装置等を有してもよい。コントローラ106aは、プラズマ処理装置100の各部を制御する。コントローラ106aでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、コントローラ106aは、表示装置により、プラズマ処理装置100の稼働状況等を可視化して表示することができる。さらに、メモリ106bには、プラズマ処理装置100で実行される各種処理をコントローラ106aにより制御するための制御プログラム及びレシピデータが格納されている。コントローラ106aが制御プログラムを実行して、レシピデータにしたがってプラズマ処理装置100の各部を制御することにより、プラズマ処理装置100を使用して成膜等の基板の処理が実行される。
【0028】
[ガス供給機構]
次に、マイクロ波を供給する供給口付近のガス供給構造の詳細について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2(a)は、参考例に係るガス供給構造の一例を示す図である。
図3(a)は、実施形態に係るガス供給構造の一例を示す図である。
【0029】
図2(a)の参考例では、透過窓145'の下に凹部V'が形成されている。凹部V'は、透過窓145'から放射されたマイクロ波を処理容器101内へ供給する供給口となる。凹部V'の深さをH4で示す。換言すれば、凹部V'の内側面111cの長さはH4である。ガスA、Bを供給するとき、ガス導入管123からガス供給孔123aへは、相対的に分解しやすいガスBを供給するように構成され、ガス導入管124からガス供給孔124aへは、相対的に分解し難いガスAを供給するように構成される。一例として処理ガスBをSiH
4ガスとし、処理ガスAをN
2ガス及び/又はNH
3ガスとする。参考例では、相対的に分解しやすいSiH
4ガス(ガスB)は、天壁111の下面111aから突出した複数のガスノズル111dから処理容器101内に供給される。ガスノズル111dの天壁111の下面111aからの長さをH3で示す。
【0030】
透過窓145'は、円盤形状であり、天壁111の開口の上面111b側から開口を閉塞する。透過窓145'と天壁111との境界にはOリング146が設けられている。Oリング146は、処理容器101内を処理容器101外の大気から封止し、処理容器101内の気密を保持する。
【0031】
第1ガス供給孔124aは、天壁111の下面111aからN2ガス及び/又はNH3ガスを処理容器101内に供給する。ガス供給孔123aは、ガスノズル111dの先端からSiH4ガスを供給する。
【0032】
図2(b)は、透過窓145'下の凹部V'付近を、天壁111の下面111a側から見た図である。
図2(b)に示すように、ガスノズル111dに設けられたガス供給孔123aと同一円周上に第1ガス供給孔124aが配置され、ガス供給孔123aと第1ガス供給孔124aとは交互に設けられている。なお、
図2(a)では便宜上、第1ガス供給孔124aとガス供給孔123aとの位置を径方向にずらして示している。
【0033】
N2ガス及び/又はNH3ガスは、凹部V'付近を含む処理容器101内に生成されるプラズマにより活性化され、反応させ易くする。凹部V'付近では、活性化されたN2ガス及び/又はNH3ガスによる高密度プラズマ領域が形成されている。よって、SiH4ガスの供給位置が凹部V'の領域から近いと、反応性の高いSiH4ガスが気相中で重合して基板W上に飛来し、パーティクルとなることがある。また、SiH4ガスを供給するガス供給孔123aにて異常放電が生じることがある。
【0034】
そこで、参考例では、SiH4ガスを、N2ガス及びNH3ガスの第1ガス供給孔124aが設けられた高さより長さH3だけ低い位置にガス供給孔123aを設け、高密度プラズマ領域から遠ざけてガス供給孔123aからSiH4ガスを供給する。これにより、活性化されたN2ガス及び/又はNH3ガスと反応させ、SiH4ガス起因のSiを窒化させて基板W上にシリコン窒化膜を形成する。これにより、パーティクルの発生を抑制し、SiH4ガスのガス供給孔123aでの異常放電を抑制している。
【0035】
ところが、参考例では、天壁111の下面111aから下方にガスノズル111dの突起を形成することで天壁111の形状が複雑になり、加工上の難易度が高くなりコストが高くなる。加えて、天壁111はアルミニウムで形成されているため、プラズマ耐性を上げるために天壁111にイットリア等の溶射膜を溶射してプラズマ耐性を得るようにしているが、溶射時にガスノズル111dの突起によって溶射加工の難易度が高くなってしまい、加工コストや装置コストが高くなってしまう。
【0036】
また、クリーニング時に処理容器101の内壁等に付着するシリコン窒化膜を除去する際、NF3ガスをガスノズル111dから供給する。その際、生成する副生成物であるフッ化アルミニウム(AlF)やフッ化イットリウム(YF)が、ガスノズル111dに付着し、パーティクルの原因となる。加えて、ガスノズル111dの突起があるために、ガス供給孔の配置が制限され自由な設計の妨げとなる場合がある。
【0037】
そこで、実施形態に係るガス供給構造では、
図3(a)に示すように、ガスノズル111dの構造をなくし、天壁111の下面111aを例えば長さH3だけ下方に位置させる。つまり、実施形態の天壁111は、参考例の天壁111と比較してH3だけ厚く形成し、高密度プラズマ領域をH3だけ上方にシフトさせている。これにより、N
2ガス及び/又はNH
3ガスを供給する第1ガス供給孔124aと、SiH
4ガスを供給する第1ガス供給孔125aとを同一面(下面111a)上であって同一円周上に形成する。つまり、天壁111の下面111aを平面にでき、第1ガス供給孔124aと第1ガス供給孔125aとは同じ高さに設けられる。これにより、天壁111の形状の簡易化により、マイクロ波の供給口付近のガス供給構造をシンプルに構成でき、加工上の難易度を低くできる。
【0038】
図3(a)の実施形態では、透過窓145の下に凹部Vが形成されている。凹部Vは、透過窓145から放射されたマイクロ波を処理容器101内へ供給する供給口となる。凹部Vの深さは天壁111が厚くなった分(つまり、H3)だけ深くなり、凹部Vの内側面111cの長さはH4+H3である。第1ガス供給孔125aは、相対的に分解しやすいSiH
4ガス(ガスB)を供給するように構成され、第1ガス供給孔124aは、相対的に分解し難いN
2ガス及び/又はNH
3ガス(ガスA)を供給するように構成される。ただし、第1ガス供給孔124aからの相対的に分解し難いN
2ガス及び/又はNH
3ガス(ガスA)の供給は、後述の第2ガス供給孔126aを設けたため、必須ではない。
【0039】
図3(b)は、透過窓145下の凹部V付近を、天壁111の下面111a側から見た図である。
図3(b)に示すように、同一円周上にSiH
4ガス(ガスB)を供給する第1ガス供給孔125aとN
2ガス及び/又はNH
3ガス(ガスA)を供給する第1ガス供給孔124aとが交互に設けられている。第1ガス供給孔125aと第1ガス供給孔124aとは等間隔に設けられている。なお、
図3(a)において便宜上、第1ガス供給孔124aと第1ガス供給孔125aとは径方向にずらして示している。
【0040】
凹部Vの深さは天壁111が厚くなったH3の長さ分だけ参考例よりも深い。よって、N2ガス及び/又はNH3ガスを供給する複数の第2ガス供給孔126aを凹部Vの内側面111cに等間隔に配置する。これにより、第2ガス供給孔126aを第1ガス供給孔124a、125aから離して配置できる。この結果、第1ガス供給孔125aで異常放電が生じること、及び反応性の高いSiH4ガスが気相中で重合してパーティクルとなることを防止又は抑制できる。
【0041】
N2ガス及び/又はNH3ガスは、第2ガス供給孔126aから透過窓145下の高密度プラズマ領域に直接供給される。これにより、N2ガス及び/又はNH3ガスの活性化を促進できる。
【0042】
透過窓145は、下向きに凹形状を有し、外周側にて環状に厚みを有する。透過窓145と天壁111との境界にはOリング146が設けられている。Oリング146は、処理容器101内を処理容器101外の大気から封止し、処理容器101内の気密を保持する。
【0043】
実施形態においても天壁111はイットリアの溶射膜等でコーティングされ、凹部Vの内側壁にも溶射膜が形成されている。一方、透過窓145の下面は凹形状であり、実施形態のOリング146の位置は、透過窓145の外周の厚みの分だけ参考例よりも下方にある。これにより、参考例よりもプラズマ密度及び温度が低い位置にOリング146を配置することができ、Oリング146の周りの溶射膜の消耗を緩和でき、天壁111のメンテナンスや交換までの時間を長くすることができる。
【0044】
以上から、第2ガス供給孔126aは、Oリング146の周りの溶射膜の消耗を緩和できる位置又はそれよりも下であって透過窓145下の高密度プラズマ領域に出来る限り近い位置に配置することが好ましい。これにより、凹部V内での溶射膜の消耗を緩和しつつ、N2ガス及び/又はNH3ガスの活性化を促進できる。
【0045】
なお、第1ガス供給孔124aから供給するN2ガス及び/又はNH3ガスは第1ガス供給孔125aから供給するSiH4ガスを希釈化させて、SiH4ガスの反応性(分解)を抑制する効果を有する。このため、第1ガス供給孔124aは第1ガス供給孔125aと同一円周上に交互に配置されることが好ましい。ただし、パーティクルや異常放電が問題とならない程度に抑制できれば、第1ガス供給孔124aは第1ガス供給孔125aと対の位置に(例えば交互に)配置しなくてもよい。例えば第1ガス供給孔124aを第1ガス供給孔125aの内周側又は外周側に配置してもよい。パーティクルや異常放電の問題を解消できれば第1ガス供給孔124aはなくてもよい。実施形態に係るガス供給構造によれば、天壁111の下面111aから突起をなくし、平面にすることでガス供給孔の設計の自由度を高めることができる。
【0046】
[第2ガス供給孔の配置]
図4は、実施形態に係るガス供給孔の配置例を示す図である。
図4は、天壁111の下面111aを見た図である。
図4(a)(b)では、円で示す境界線Arの内外を中央領域及び外周領域に分けている。
図4(a)(b)では、天壁111は中央領域に1つ、外周領域に6つ、合計7つの開口を有し、7つの開口は、7つの透過窓145で閉塞されている。
図4(a)では、第2ガス供給孔126aは、7つの開口のうち中央領域の開口を閉塞する透過窓145下の凹部Vの内側面111cに設けられている。第2ガス供給孔126aの周囲には、第1ガス供給孔124aと第1ガス供給孔125aとが同一円周上に交互に配置されている。
【0047】
図4(b)では、第2ガス供給孔126aは、前記7つの開口を閉塞する7つの透過窓145下に形成される7つの凹部Vの内側面111c毎に設けられている。第2ガス供給孔126aのそれぞれの周囲には、第1ガス供給孔124aと第1ガス供給孔125aとが同一円周上に交互に配置されている。
【0048】
ただし、
図4のガス供給孔の配置は一例であり、ガス供給孔の個数及び配置はこれに限らない。例えば、天壁111に設けられた開口は、中央領域において0であってもよいし、1以上であってもよい。天壁111に設けられた開口は、外周領域において0であってもよいし、6つ以外の複数であってもよい。
【0049】
[第2ガス供給孔の向き]
凹部Vの高さ方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面をXY平面とする。Z軸は、天壁111の下面111aに対して垂直な軸であり、XY平面は下面111aに対して水平である。
図3(b)及び
図6(a)に示すように、透過窓145の中心(凹部Vの中心)を通る軸を特にZ1軸とする。
【0050】
図5は、XZ面における第2ガス供給孔126aの角度の一例を示す図である。
図6は、XY面における第2ガス供給孔126aの角度の一例を示す図である。
【0051】
図5(a)と
図3(a)とを比較すると、
図3(a)に示す第2ガス供給孔126aは、XY平面上に形成され、Z方向とは直交している。また、
図3(b)に示すように、XY面において複数の第2ガス供給孔126aはすべてZ1軸に向かう。つまり、
図3(a)(b)に示す第2ガス供給孔126aは、凹部Vの内側面に対して垂直に開口している。
【0052】
これに対して、
図5(a)に示す第2ガス供給孔126aは、XY平面よりも上向きに形成され、Z方向の角度を有する。
図5(b)に示すように、XZ平面のX方向に対するZ方向の角度をθ
zxとする。
図5(a)に示す第2ガス供給孔126aでは、角度θ
zxは0°よりも大きく、例えば30°以上45°以下であってもよいし、45°以上であってもよい。第2ガス供給孔126aの角度θ
zxはこれに限らず、XY平面よりも上向きに形成されていればよく、透過窓145に向かう上向きの角度が好ましい。
【0053】
更に、
図5(a)に示す第2ガス供給孔126aは、XY面において第2ガス供給孔126aは
図3(b)の矢印の向きと同様にZ1軸に向かう。つまり、
図5(a)に示す第2ガス供給孔126aは、凹部Vの内側面に対してXY方向に傾きを有さずにまっすぐ開口し、Z方向に上向きに0°よりも大きい角度θ
zxで開口している。なお、角度θ
zxは0°よりも小さい値は取らない。つまり、第2ガス供給孔126aは、XY面に対して下向きになるように角度を持って開口することはない。
【0054】
凹部V内の透過窓145の直下及びその付近では、より高密度なプラズマが発生する。
図3(a)に示すようにZ方向の角度θ
zxが0°になるように第2ガス供給孔126aを開口すると、内側面111cに複数配置された第2ガス供給孔126aから水平方向に供給されたN
2ガス及び/又はNH
3ガスが凹部Vの内部で衝突し合い易い。これに対して、
図5(a)に示すように角度θ
zxが0°よりも大きくなるように複数の第2ガス供給孔126aを上向きに開口すると、N
2ガス及び/又はNH
3ガスが正面から衝突し難く、透過窓145の直下付近までスムーズに流れる。これにより、透過窓145下の高密度プラズマ領域においてN
2ガス及び/又はNH
3ガスの活性化を促進できる。
【0055】
更に、
図6(a)(b)に示す第2ガス供給孔126aは、XY面において第2ガス供給孔126aがZ1軸に向かうX方向の角度θ
xyを0°として、Y方向に横向きに角度θ
xyの傾きをもって開口している。角度θ
xyは、正負のいずれであってもよい。
図6(b)に示すように角度θ
xyが正のとき、複数の第2ガス供給孔126aのすべてが同じ角度でZ1軸に向かう方向よりも右向きに開口する。角度θ
xyが負のとき、複数の第2ガス供給孔126aのすべてが同じ角度でZ1軸に向かう方向よりも左向きに開口する。
【0056】
なお、
図6(a)(b)に示す第2ガス供給孔126aのZ方向の角度θ
zxは0°であってもよいし、0°よりも大きくてもよい。ただし、
図6(a)(b)に示す第2ガス供給孔126aのZ方向の角度θ
zxは0°よりも大きく、第2ガス供給孔126aが斜め上向きに開口し、旋回流を生じさせるように構成されていることがより好ましい。
【0057】
また、複数の第2ガス供給孔126aの角度θzxのすべてを同一角度にすることが好ましいが多少異なる向き(角度)にしてもよい。同様に、複数の第2ガス供給孔126aの角度θxyのすべてを同一角度にすることが好ましいが多少異なる向き(角度)にしてもよい。
【0058】
以上に説明したように、第2ガス供給孔126aは、凹部Vの中心軸となるZ1軸に向かう向きに対してXY面方向に斜めの向きに形成され、凹部V内で旋回流が生じるように構成することができる。これにより、高密度プラズマ領域にて活性化されたN2ガス及び/又はNH3ガスが旋回流となって高密度プラズマ領域へスムーズに流れ、凹部Vから第1ガス供給孔124a、125a側へ押し出されるように活性種の流れを形成できる。
【0059】
このように凹部V内にてN2ガス及び/又はNH3ガスの旋回流を形成することで、高密度プラズマ領域にN2ガス及び/又はNH3ガスを満遍なく供給でき、N2ガス及び/又はNH3ガスの活性化の効率を高めることができる。加えて、凹部V内におけるガス同士の衝突による乱流を回避でき、活性化されたN2ガス及び/又はNH3ガスを第1ガス供給孔124a、125a側へ輸送する効率を高めることができる。
【0060】
N2ガス及び/又はNH3ガスの活性化の効率及び輸送の効率を向上させるためには、第2ガス供給孔126aの角度θzxは0よりも大きく、角度θxyは0以外の正又は負値を有することが好ましい。換言すれば、第2ガス供給孔126aは、Z1軸に向かう水平方向の向きをX方向として基準としたときに、その右向き、左向き、上向き、右斜め上向き、又は左斜め上向きに開口していることが好ましい。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、下面111aに第1ガス供給孔125aが設けられ、凹部Vの内側面111cに第2ガス供給孔126aが設けられている。これにより、下面111aに突起がなく、電磁波の供給口付近のガス供給構造をシンプルにすることができ、パーティクル及び異常放電の発生を防止又は抑制することができる。
【0062】
[その他]
第1ガス供給孔124a、125aの個数、第2ガス供給孔126aの個数は同じであってもよいし、異なってもよい。
【0063】
第1ガス供給孔124aから供給するN2ガス及び/又はNH3ガスと、第2ガス供給孔126aから供給するN2ガス及び/又はNH3ガスとは独立して制御することが好ましい。第2ガス供給孔126aから供給するN2ガス及び/又はNH3ガスは、主に高密度プラズマにより高効率でNラジカル及び/又はNHラジカルを生成する機能を有する。一方、第1ガス供給孔124aから供給するN2ガス及びNH3ガスは、第1ガス供給孔125aから供給するSiH4ガスを希釈する機能を有する。制御部106は、このようにN2ガス及び/又はNH3ガスに対する別々の機能を発揮させるために必要な制御を別々に行い、第1ガス供給孔124aから供給するガスと第2ガス供給孔126aから供給するガスの解離度や流量を最適化することが好ましい。これにより、より効果的にパーティクル及び異常放電の発生を防止又は抑制することができる。また、これにより、SiH4ガスの解離状態をより正確に制御でき、良質なSiN膜を成膜できる。
【0064】
よって、第1ガス供給孔124aから供給するガスと、第2ガス供給孔126aから供給するガスとは、ガス種及び/又はガス流量を変えてもよい。例えば第2ガス供給孔126aからNH3ガスを導入し、NH3ガスを活性化(解離)させ、第1ガス供給孔124aからN2ガスを導入し、N2ガスによりシランガスを希釈してもよい。逆に、第2ガス供給孔126aからN2ガスを導入し、第1ガス供給孔124aからNH3ガスを導入してもよい。第1ガス供給孔124a及び/又は第2ガス供給孔126aから供給するガスは、N2ガス、NH3ガス以外のガスであって、各プロセスに適したガスを使用してもよい。例としてH2ガス、N2Oガス、NOガス、O2ガス、H2Oガスおよびそれらの混合ガスなどが考えられる。
【0065】
流量制御器は、第1ガス供給孔124a、125a及び第2ガス供給孔126aの3か所からそれぞれ供給するガスの流量を個別制御するために、前記3種類のガス供給孔毎に中央領域に1つずつ、外周領域に1つずつ設けることが好ましい。つまり、流量制御器は、最低でも中央領域に3つ、外周領域に3つ、合計6つ配置することが好ましい。
【0066】
より好ましくは、外周領域の6つ透過窓145に対する6つのガス供給構造毎に流量制御器を3つずつ設け、中央領域の1つ透過窓145に対する1つのガス供給構造毎に流量制御器を1つ設ける。この場合、流量制御器は、中央領域に3つ、外周領域に18(=3×6)、合計21配置する。流量制御器の個数及び配置により、より効果的に3種類のガス供給孔から供給する各種ガスの流量を制御できる。このため、各種ガスの活性化、輸送、希釈の程度をより高い精度で制御することによりパーティクル及び異常放電の発生をより効果的に防止又は抑制することができる。また、これにより、SiH4ガスの解離状態をより正確に制御でき、良質なSiN膜を成膜できる。
【0067】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
100 プラズマ処理装置
101 処理容器
102 載置台
103 ガス供給部
106 制御部
111 天壁
140 マイクロ波放射源
144 スロットアンテナ
145 透過窓
124a、125a 第1ガス供給孔
126a 第2ガス供給孔