(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083770
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】スライドシートのハーネス配索構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230609BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20230609BHJP
B60N 2/36 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197652
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 政宏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087CA12
3B087CB12
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】スライドシートを前後方向にスライドしたりスライドシートを足元空間に格納したりしても、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【解決手段】ハーネス配索構造20には、車体100とスライドシート200の間に架け渡されるハーネス21と、車体100の側に固定されてハーネス21のフロア側中途部分を案内するフロア側案内部24とが備えられている。そして、フロア側案内部24は、車体100からスライドシート200に近接する近接位置まで延伸された後に車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返されるハーネス21のフロア側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yへ案内するとともに左右方向Yに対して交差する方向へ案内してスライドシート200の近接位置に導くことを特徴としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクアームによって車体の前後方向に延びるレールが支持され、前記レールに沿って移動可能とするスライダにスライドシートが載置されており、前記リンクアームの枢動動作によって前記レール及び前記スライダとともに足元空間に格納可能とされる前記スライドシートの電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造であって、
前記車体と前記スライドシートの間に架け渡されるハーネスと、
前記車体の側に固定されて前記ハーネスのフロア側中途部分を案内するフロア側案内部とが備えられ、
前記フロア側案内部は、前記車体から前記スライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に前記車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返される前記ハーネスのフロア側中途部分において、前記車体の側から延出された前記ハーネスを前記車体の左右方向へ案内するとともに左右方向に対して交差する方向へ案内して前記スライドシートの近接位置に導く
ハーネス配索構造。
【請求項2】
前記フロア側案内部は、
前記車体の左右方向に前記ハーネスを案内するフロア側本体部と、
前記フロア側本体部の出口側開口部分に取り付けられて左右方向に対して交差する方向に前記ハーネスを案内するフロア側先端部とを有し、
前記フロア側本体部の出口側開口部分における中心軸を中心に前記フロア側先端部が回動自在に支持された
請求項1に記載のハーネス配索構造。
【請求項3】
前記フロア側先端部の回動中心が前記リンクアームの連結部分における枢動中心に対して同軸上に配置された
請求項2に記載のハーネス配索構造。
【請求項4】
前記フロア側本体部に形成されたハーネス通路の通路長を前記ハーネスの外径の5倍の値よりも長くした
請求項2又は請求項3に記載のハーネス配索構造。
【請求項5】
前記フロア側先端部に形成されたハーネス通路の曲げ半径を前記ハーネスの外径の1倍の値よりも大きくした
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のハーネス配索構造。
【請求項6】
前記リンクアームの枢動動作に伴って移動する部材に固定されて前記ハーネスのシート側中途部分を案内するシート側案内部が備えられ、
前記シート側案内部は、前記スライドシートの近接位置であるシート側中途部分において、前記フロア側案内部に案内された前記ハーネスを前記車体の左右方向に対して交差する方向から左右方向へ案内して前記ハーネスの曲げ返し部分に導く
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のハーネス配索構造。
【請求項7】
前記シート側案内部は、
前記車体の左右方向に前記ハーネスを案内するシート側本体部と、
前記シート側本体部の入口側開口部分に取り付けられて左右方向に対して交差する方向から前記ハーネスを案内するシート側先端部とを有し、
前記シート側本体部の入口側開口部分における中心軸を中心に前記シート側先端部が回動自在に支持された
請求項6に記載のハーネス配索構造。
【請求項8】
前記シート側先端部の回動中心が前記リンクアームの連結部分における枢動中心に対して同軸上に配置された
請求項7に記載のハーネス配索構造。
【請求項9】
前記シート側本体部に形成されたハーネス通路の通路長を前記ハーネスの外径の5倍の値よりも長くした
請求項7又は請求項8に記載のハーネス配索構造。
【請求項10】
前記シート側先端部に形成されたハーネス通路の曲げ半径を前記ハーネスの外径の1倍の値よりも大きくした
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のハーネス配索構造。
【請求項11】
前記ハーネスの基端部分を保持する車体側保持部が備えられ、
前記車体側保持部に前記ハーネスのコネクタが配置された
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のハーネス配索構造。
【請求項12】
前記ハーネスの先端部分を保持するシート側保持部が備えられ、
前記シート側保持部に前記ハーネスのコネクタが配置された
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のハーネス配索構造。
【請求項13】
前記ハーネスが前記車体を構成するフロアパネルと前記スライドシートを構成するシートクッションとの隙間に配索された
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のハーネス配索構造。
【請求項14】
リンクアームによって車体の前後方向に延びるレールが支持され、前記レールに沿って移動可能とするスライダにスライドシートが載置されており、前記リンクアームの枢動動作によって前記レール及び前記スライダとともに足元空間に格納可能とされる前記スライドシートの電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造のフロア側案内部であって、
前記車体から前記スライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に前記車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネスのフロア側中途部分において、前記車体の側から延出された前記ハーネスを前記車体の左右方向へ案内するとともに左右方向に対して交差する方向へ案内して前記スライドシートの近接位置に導く
フロア側案内部。
【請求項15】
リンクアームによって車体の前後方向に延びるレールが支持され、前記レールに沿って移動可能とするスライダにスライドシートが載置されており、前記リンクアームの枢動動作によって前記レール及び前記スライダとともに足元空間に格納可能とされる前記スライドシートの電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造のシート側案内部であって、
前記車体から前記スライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に前記車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネスのシート側中途部分において、前記車体の側から延出された前記ハーネスを前記車体の左右方向に対して交差する方向から左右方向へ案内して前記ハーネスの曲げ返し部分に導く
シート側案内部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドシートに組み込まれた電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体の前後方向にスライドするスライドシートであって、シートバックを倒伏させた状態でシート後部を引き上げ、前方側に向かって枢動させることにより、スライドシートを足元空間に格納できる、いわゆるダイブインを可能としたものが存在している(特許文献1参照)。かかるスライドシートには、シートベルトリマインダ等の電装部品が組み込まれている。そのため、車体からこれらの電装部品に対して給電を行う必要がある。
【0003】
ところで、スライドシートを前後方向にスライドする際には、車体とスライドシートの間に架け渡されるハーネスがスライドシートの移動に伴って変形することとなる。また、スライドシートを足元空間に格納する際にも、ハーネスがスライドシートの移動に伴って変形することとなる。すると、ハーネスに局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じ、ひいてはハーネスに過大な負荷が作用するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、スライドシートを前後方向にスライドしたりスライドシートを足元空間に格納したりしても、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できるハーネス配索構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、リンクアームによって車体の前後方向に延びるレールが支持され、前記レールに沿って移動可能とするスライダにスライドシートが載置されており、前記リンクアームの枢動動作によって前記レール及び前記スライダとともに足元空間に格納可能とされる前記スライドシートの電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造であって、前記車体と前記スライドシートの間に架け渡されるハーネスと、前記車体の側に固定されて前記ハーネスのフロア側中途部分を案内するフロア側案内部とが備えられ、前記フロア側案内部は、前記車体から前記スライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に前記車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返される前記ハーネスのフロア側中途部分において、前記車体の側から延出された前記ハーネスを前記車体の左右方向へ案内するとともに左右方向に対して交差する方向へ案内して前記スライドシートの近接位置に導くことを特徴としている。
なお、本願発明における前後方向とは、厳密な前後方向に限定するものではなく、ある程度のズレを許容する概念である。また、本願発明における左右方向も、厳密な左右方向に限定するものではなく、ある程度のズレを許容する概念である。そのため、前後方向と左右方向とは、厳密な垂直交差に限定するものではなく、ある程度のズレを許容する関係である。
【0007】
また本願発明には、前述したハーネス配索構造を構成するフロア側案内部も含まれるものとする。すなわち、フロア側案内部は、リンクアームによって車体の前後方向に延びるレールが支持され、前記レールに沿って移動可能とするスライダにスライドシートが載置されており、前記リンクアームの枢動動作によって前記レール及び前記スライダとともに足元空間に格納可能とされる前記スライドシートの電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造のフロア側案内部であって、前記車体から前記スライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に前記車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネスのフロア側中途部分において、前記車体の側から延出された前記ハーネスを前記車体の左右方向へ案内するとともに左右方向に対して交差する方向へ案内して前記スライドシートの近接位置に導くことを特徴としている。
【0008】
これらの発明によれば、スライドシートを前後方向にスライドしたりスライドシートを足元空間に格納したりしても、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るハーネス配索構造ならびにフロア側案内部によれば、フロア側案内部は、車体からスライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネスのフロア側中途部分において、車体の側から延出されたハーネスを車体の左右方向へ案内するとともに左右方向に対して交差する方向へ案内してスライドシートの近接位置に導いている。そのため、スライドシートを前後方向にスライドする際においては、ハーネスにおける曲げ返された部分が追従(移動)し、スライドシートを足元空間に格納する際においては、ハーネスにおける車体の左右方向に対して交差する方向に延伸された部分が追従(枢動)してスライドシートの移動に対応できる。これにより、ハーネスの変形(変位)を小さく抑え、ハーネスに局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じることを防止できる。したがって、スライドシートを前後方向にスライドしたりスライドシートを足元空間に格納したりしても、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0009】
この発明の態様として、前記フロア側案内部は、前記車体の左右方向に前記ハーネスを案内するフロア側本体部と、前記フロア側本体部の出口側開口部分に取り付けられて左右方向に対して交差する方向に前記ハーネスを案内するフロア側先端部とを有し、前記フロア側本体部の出口側開口部分における中心軸を中心に前記フロア側先端部が回動自在に支持されてもよい。
【0010】
この発明により、スライドシートを足元空間に格納する際においては、スライドシートの移動に伴うハーネス経路の変化に応じてフロア側先端部が回動するので、ハーネスが引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。また、スライドシートを足元空間から展開する際においても、スライドシートの移動に伴うハーネス経路の変化に応じてフロア側先端部が回動するので、ハーネスが引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記フロア側先端部の回動中心が前記リンクアームの連結部分における枢動中心に対して同軸上に配置されてもよい。
この発明により、リンクアームが枢動しても、フロア側先端部の回動によってハーネス経路の総延長が一定に保たれるので、ハーネスが引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。また、ハーネスが大きく弛んでしまうことも防止できる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記フロア側本体部に形成されたハーネス通路の通路長を前記ハーネスの外径の5倍の値よりも長くしてもよい。
この発明により、フロア側先端部の回動動作に起因してハーネスにおけるフロア側本体部に挿通された部分に捻り荷重がかかったとしても、ハーネス通路の全体にわたって捩れが分散されることとなる。そのため、ハーネスに局所的な捩れが生じることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記フロア側先端部に形成されたハーネス通路の曲げ半径を前記ハーネスの外径の1倍の値よりも大きくしてもよい。
この発明により、フロア側先端部の回動動作に起因してハーネスにおけるフロア側先端部に挿通された部分に引出荷重あるいは押込荷重がかかったとしても、ハーネス通路の形状に沿って曲げ半径が規制されることとなる。そのため、ハーネスに局所的な曲げが生じることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記リンクアームの枢動動作に伴って移動する部材に固定されて前記ハーネスのシート側中途部分を案内するシート側案内部が備えられ、前記シート側案内部は、前記スライドシートの近接位置であるシート側中途部分において、前記フロア側案内部に案内された前記ハーネスを前記車体の左右方向に対して交差する方向から左右方向へ案内して前記ハーネスの曲げ返し部分に導くとしてもよい。
【0015】
また本願発明には、前述したハーネス配索構造を構成するシート側案内部も含まれるものとする。すなわち、シート側案内部は、リンクアームによって車体の前後方向に延びるレールが支持され、前記レールに沿って移動可能とするスライダにスライドシートが載置されており、前記リンクアームの枢動動作によって前記レール及び前記スライダとともに足元空間に格納可能とされる前記スライドシートの電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造のシート側案内部であって、前記車体から前記スライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に前記車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネスのシート側中途部分において、前記車体の側から延出された前記ハーネスを前記車体の左右方向に対して交差する方向から左右方向へ案内して前記ハーネスの曲げ返し部分に導くことを特徴としている。
【0016】
この発明により、シート側案内部は、車体からスライドシートに近接する近接位置まで延伸された後に車体の前後方向に沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネスのフロア側中途部分において、車体の側から延出されたハーネスを車体の左右方向に対して交差する方向から左右方向へ案内してハーネスの曲げ返し部分に導いている。そのため、スライドシートを足元空間に格納する際においては、ハーネスにおける車体の左右方向に対して交差する方向に延伸された部分が追従(枢動)してスライドシートの移動に対応できる。これにより、ハーネスの変形(変位)を小さく抑え、ハーネスに局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じることを防止できる。したがって、スライドシートを前後方向にスライドしたりスライドシートを足元空間に格納したりしても、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記シート側案内部は、前記車体の左右方向に前記ハーネスを案内するシート側本体部と、前記シート側本体部の入口側開口部分に取り付けられて左右方向に対して交差する方向から前記ハーネスを案内するシート側先端部とを有し、前記シート側本体部の入口側開口部分における中心軸を中心に前記シート側先端部が回動自在に支持されてもよい。
【0018】
この発明により、スライドシートを足元空間に格納する際においては、スライドシートの移動に伴うハーネス経路の変化に応じてシート側先端部が回動するので、ハーネスが引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。また、スライドシートを足元空間から展開する際においても、スライドシートの移動に伴うハーネス経路の変化に応じてシート側先端部が回動するので、ハーネスが引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記シート側先端部の回動中心が前記リンクアームの連結部分における枢動中心に対して同軸上に配置されてもよい。
この発明により、リンクアームが枢動しても、シート側先端部の回動によってハーネス経路の総延長が一定に保たれるので、ハーネスが引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。また、ハーネスが大きく弛んでしまうことも防止できる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記シート側本体部に形成されたハーネス通路の通路長を前記ハーネスの外径の5倍の値よりも長くしてもよい。
この発明により、シート側先端部の回動動作に起因してハーネスにおけるシート側本体部に挿通された部分に捻り荷重がかかったとしても、ハーネス通路の全体にわたって捩れが分散されることとなる。そのため、ハーネスに局所的な捩れが生じることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記シート側先端部に形成されたハーネス通路の曲げ半径を前記ハーネスの外径の1倍の値よりも大きくしてもよい。
この発明により、シート側先端部の回動動作に起因してハーネスにおけるシート側先端部に挿通された部分に引出荷重あるいは押込荷重がかかったとしても、ハーネス通路の形状に沿って曲げ半径が規制されることとなる。そのため、ハーネスに局所的な曲げが生じることを防止できる。したがって、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記ハーネスの基端部分を保持する車体側保持部が備えられ、前記車体側保持部に前記ハーネスのコネクタが配置されてもよい。
この発明により、車体に配索されたハーネスとハーネス配索構造を構成するハーネスとを車体側保持部で接続することが可能となる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記ハーネスの先端部分を保持するシート側保持部が備えられ、前記シート側保持部に前記ハーネスのコネクタが配置されてもよい。
この発明により、スライドシートに配索されたハーネスとハーネス配索構造を構成するハーネスとをシート側保持部で接続することが可能となる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記ハーネスが前記車体を構成するフロアパネルと前記スライドシートを構成するシートクッションとの隙間に配索されてもよい。
この発明により、フロアパネルとシートクッションとの隙間にハーネスを収容できる。そのため、スライドシートに着座する者や周囲の者からハーネスを見えなくして美観を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本願発明によれば、スライドシートを前後方向にスライドしたりスライドシートを足元空間に格納したりしても、ハーネスに過大な負荷が作用することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図9】スライドシートを前方側へスライドする際のシート支持構造の動作態様を示す説明図。
【
図10】スライドシートを前方側へスライドする際のハーネス配索構造の動作態様を示す説明図。
【
図11】スライドシートを後方側へスライドする際のシート支持構造の動作態様を示す説明図。
【
図12】スライドシートを後方側へスライドする際のハーネス配索構造の動作態様を示す説明図。
【
図13】スライドシートを足元空間に格納する際のシート支持構造の動作態様を示す説明図。
【
図14】スライドシートを足元空間に格納する際のハーネス配索構造の動作態様を示す説明図。
【
図15】スライドシートを足元空間から展開する際のシート支持構造の動作態様を示す説明図。
【
図16】スライドシートを足元空間から展開する際のハーネス配索構造の動作態様を示す説明図。
【
図17】他の実施形態に係るハーネス配索構造の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
本願においては、全ての図面で車体100の方向を示している。詳しくは、矢印Fが車体前方側を示し、矢印Bが車体後方側を示し、矢印Rが車体右方側を示し、矢印Lが車体左方側を示している。そして、矢印Uが車体上方側を示し、矢印Dが車体下方側を示している。加えて、本願においては、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0028】
図1はシート支持構造10の斜視図である。
図2はハーネス配索構造20の斜視図であり、
図3はハーネス配索構造20の側面図であり、
図4はハーネス配索構造20の正面図である。
図5はフロア側案内部24の拡大斜視図であり、
図6は
図5におけるA-A矢視断面図である。
図7はシート側案内部25の拡大斜視図であり、
図8は
図7におけるB-B矢視断面図である。なお、
図1においては、シート支持構造10及びハーネス配索構造20が見えるようにスライドシート200を二点鎖線で表している。
図2においては、シート側案内部25の固定対象であるレール12を二点鎖線で表している。
図3から
図8においては、シート支持構造10を構成する全ての部材を省略している。
【0029】
また、
図9はスライドシート200を前方側Fへスライドする際のシート支持構造10の動作態様を示す説明図であり、
図10はスライドシート200を前方側Fへスライドする際のハーネス配索構造20の動作態様を示す説明図である。
図11はスライドシート200を後方側Bへスライドする際のシート支持構造10の動作態様を示す説明図であり、
図12はスライドシート200を後方側Bへスライドする際のハーネス配索構造20の動作態様を示す説明図である。なお、
図9及び
図11においては、ハーネス配索構造20が見えるように左方側Lのレール12等を削除している。
図10及び
図12においては、左方側Lだけでなく右方側Rのレール12等も削除しており、かつ動作の前後を二点鎖線と実線で表している。
【0030】
さらに、
図13はスライドシート200を足元空間Aに格納する際のシート支持構造10の動作態様を示す説明図であり、
図14はスライドシート200を足元空間Aに格納する際のハーネス配索構造20の動作態様を示す説明図である。
図15はスライドシート200を足元空間Aから展開する際のシート支持構造10の動作態様を示す説明図であり、
図16はスライドシート200を足元空間Aから展開する際のハーネス配索構造20の動作態様を示す説明図である。なお、
図13及び
図15においては、ハーネス配索構造20が見えるように左方側Lのレール12等を削除している。
図14及び
図16においては、左方側Lだけでなく右方側Rのレール12等も削除しており、かつ動作の前後を二点鎖線と実線で表している。
【0031】
図1に示すように、車体100は、フロアパネル101とキックアップ102とを有する。車体100には、スライドシート200を支持するシート支持構造10が設けられている。本実施形態に係るシート支持構造10は、一対のリンクアーム11と、一対のレール12と、一対のスライダ13とを有している。
【0032】
リンクアーム11は、その基端側の側面部分に左右方向Yに突出する連結軸111を有している。リンクアーム11は、フロアパネル101に固定されたフレーム10Fの貫通孔10hに連結軸111が挿入されることにより、フレーム10Fに対して枢動可能に連結されている。そのため、それぞれのリンクアーム11は、連結軸111を枢動中心として前方側Fから上方側Uまでの略90度の範囲で枢動することが可能である(矢印P参照)。
【0033】
また、リンクアーム11は、その先端側の側面部分にも左右方向Yに突出する連結軸112を有している。リンクアーム11は、レール12に固定されたフレーム12Fの貫通孔12hに連結軸112が挿入されることにより、フレーム12Fに対して枢動可能に連結されている。そのため、それぞれのリンクアーム11は、連結軸112を枢動中心として下方側Dから後方側Bまでの略90度の範囲で枢動することが可能ということもできる(
図13及び
図15参照)。
【0034】
レール12は、車体100の前後方向Xに沿って延びている。レール12は、その前端側部分がリンクアーム11によって支持(枢動可能に支持)され、その後端側部分がキックアップ102によって支持(枢動不能に支持)されている。そのため、それぞれのレール12は、後端側部分を引き上げて図示しないラッチを解除することにより、リンクアーム11の枢動動作に伴って移動可能である(矢印P参照)。それぞれのレール12の上面部分には、前後方向Xに沿って軌道溝12rが形成されている。
【0035】
スライダ13は、レール12の軌道溝12rに嵌め合わされた状態で支持されている。そのため、それぞれのスライダ13は、レール12に沿って移動可能である(矢印S参照)。また、それぞれのスライダ13は、リンクアーム11の枢動動作に伴ってレール12とともに移動可能である(矢印P参照)。それぞれのスライダ13の上端部分には、スライドシート200が載置されている。具体的には、スライドシート200を構成するシートクッション201が取り付けられている。つまり、スライダ13とシートクッション201は、一体的に構成されている。
【0036】
このような構成により、シート支持構造10は、レール12に沿ってスライダ13が移動することにより、車体100の前後方向Xにスライドシート200をスライド可能としている。また、シート支持構造10は、リンクアーム11が枢動することにより、レール12及びスライダ13とともにスライドシート200を足元空間Aに格納可能としている。なお、本実施形態に係るシート支持構造10においては、シートバック202を倒伏させた状態でシート後部を引き上げ、これによって図示しないラッチを解除し、前方側Fに向かって枢動させることにより、スライドシート200を足元空間Aに格納できるよう構成されている。
【0037】
図1に示すように、シート支持構造10には、スライドシート200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造20が設けられている。
図2に示すように、ハーネス配索構造20は、ハーネス21と、車体側保持部22と、シート側保持部23と、フロア側案内部24と、シート側案内部25とを有している。以下に、
図2から
図8を用いて、これらの部材について詳しく説明する。
【0038】
ハーネス21は、車体100とスライドシート200の間に架け渡される。ハーネス21は、複数本の被覆電線を束ねて構成されている。また、ハーネス21は、その基端部分に各被覆電線に加締められた端子金具を収容するコネクタ211が取り付けられている。さらに、その先端部分にも各被覆電線に加締められた端子金具を収容するコネクタ212が取り付けられている。なお、ハーネス21の一部は、ゴムチューブ31に挿通されている。但し、ゴムチューブ31の有無について限定するものではない。
【0039】
ハーネス21は、車体側保持部22からシート側保持部23までの間で、フロア側案内部24によって車体100の右方側Rへ案内されるとともに左右方向Yに対して垂直となる方向へ案内され(延伸部分21a参照)、シート側案内部25によって車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向(延伸部分21a参照)から左方側Lへ案内されている。その後、ハーネス21は、車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返されている(曲げ返し部分21b参照)。
【0040】
車体側保持部22は、ハーネス21の基端部分を保持している。車体側保持部22は、主にコネクタホルダ220で構成されており、かかるコネクタホルダ220に前述したコネクタ211が収容されている。そして、このコネクタ211に対して車体100に配索されたハーネス150のコネクタ151が連結(接続)される。これにより、車体100に配索されたハーネス150とハーネス配索構造20を構成するハーネス21とが電気的に接続されることとなる。なお、ハーネス150も、いわゆる被覆電線を束ねて構成されている。
【0041】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20において、車体側保持部22は、いずれの部材にも固定されていない。しかし、車体側保持部22が車体100を構成するフロアパネル101やその他の部材に固定されてもよい。例えば、コネクタホルダ220にボルト孔が設けられており、ボルト孔に挿通されるボルトによってフロアパネル101やその他の部材に固定されてもよい。また、ハーネス150とハーネス21とを車体側保持部22で接続する構成でなくてもよい。つまりは、互いのハーネス150,21にコネクタ151,211を備えず、ハーネス150とハーネス21が連続した一のハーネスであってもよい。
【0042】
シート側保持部23は、ハーネス21の先端部分を保持している。シート側保持部23は、主にコネクタホルダ230で構成されており、かかるコネクタホルダ230に前述したコネクタ212が収容されている。そして、このコネクタ212に対してスライドシート200に配索されたハーネス260のコネクタ262が連結(接続)される。これにより、スライドシート200に配索されたハーネス260とハーネス配索構造20を構成するハーネス21とが電気的に接続されることとなる。なお、ハーネス260も、いわゆる被覆電線を束ねて構成されている。
【0043】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20において、シート側保持部23は、いずれの部材にも固定されていない。しかし、シート側保持部23がスライドシート200を構成するシートクッション201やその他の部材に固定されてもよい。例えば、コネクタホルダ230にボルト孔が設けられており、ボルト孔に挿通されるボルトによってシートクッション201やその他の部材に固定されてもよい。また、ハーネス260とハーネス21とをシート側保持部23で接続する構成でなくてもよい。つまりは、互いのハーネス260,21にコネクタ262,212を備えず、ハーネス260とハーネス21が連続した一のハーネスであってもよい。
【0044】
フロア側案内部24は、車体100の側に固定されてハーネス21のフロア側中途部分を案内している。具体的には、車体100を構成するフロアパネル101のフレーム10Fに固定されてハーネス21の車体100側に近接した中途部分を案内している。フロア側案内部24は、主に本体部241と先端部242で構成されており、本体部241のハーネス通路241Pと先端部242のハーネス通路242Pとが連通されて(連続的につながって)一つのハーネス通路を構成している。
【0045】
本体部241は、その主体部分が略円筒状に形成されている。本体部241は、下方側Dに向かって延設された胴体部243と、胴体部243を挟んで前後方向Xへ突出する固定板部244とを有している。固定板部244には、上下方向Zに貫通するボルト孔が設けられており、ボルト24Bが挿通されている。そして、固定板部244は、フロアパネル101のフレーム10Fに当接した状態で、ボルト24Bによって固定される。このように、フロア側案内部24は、固定板部244のボルト孔に挿通されるボルト24Bによってフロアパネル101のフレーム10Fに固定される。但し、フレーム10Fに限定するものではない。
【0046】
また、本体部241には、前述したハーネス通路241Pが形成されている。ハーネス通路241Pは、本体部241の基端側(左端部分)から先端側(右端部分)まで貫通しており、その通路長L1がハーネス21の外径(束径)の5倍の値よりも長くなるように設計されている。さらに、ハーネス通路241Pは、その出口側開口部分(右端部分)において拡径されており、後述する嵌合軸部242sと嵌合する嵌合孔部241hが形成されている。そして、嵌合孔部241hの内周面には、二つの円環溝241gが所定の間隔を隔てて平行に設けられている。開口奥側(左方側L)の円環溝241gには、止水用のゴムリング35が収容されており、開口手前側(右方側R)の円環溝241gには、嵌合軸部242sの外周面に形成された円環片242tが嵌め込まれている。
【0047】
先端部242は、円筒体を円弧状に湾曲させた形状(曲管形状)とされている。先端部242には、前述したハーネス通路242Pが形成されている。ハーネス通路242Pは、先端部242の基端側から先端側まで貫通しており、その曲げ半径R1がハーネス2の外径(束径)の1倍の値よりも大きくなるように設計されている。さらに、ハーネス通路242Pは、その出口側開口部分(先端部分)において拡径されており、前述したゴムチューブ31と嵌合する嵌合孔部242hが形成されている。そして、嵌合孔部242hの内周面には、円環状に配置された係止爪242fが形成されている。係止爪242fは、ゴムチューブ31の凹溝に引っ掛かることにより、ゴムチューブ31の抜け出しを防いでいる。なお、先端部242とゴムチューブ31とは、テープによって巻き留められるとしてもよい。
【0048】
また、先端部242には、その基端側の端部(左端部分)に直線状に延伸された嵌合軸部242sが形成されている。嵌合軸部242sは、その外径が本体部241の嵌合孔部241hの内径よりも僅かに小さく形成されており、嵌合軸部242sの外周面には、一つの円環片242tが設けられている。そのため、本体部241の嵌合孔部241hに嵌合軸部242sが挿入されることにより、嵌合孔部241hの円環溝241gに嵌合軸部242sの円環片242tが嵌め込まれることとなる。このような構成により、本体部241に形成されたハーネス通路241Pの中心軸C1を中心として先端部242が回動自在に支持される。なお、本体部241のハーネス通路241Pは、左右方向Yに沿って形成されており、先端部242のハーネス通路242Pは、左右方向Yに対して垂直となる方向に曲げられている。そのため、ハーネス21は、車体100の左右方向Yから左右方向Yに対して垂直となる方向に案内される。
【0049】
シート側案内部25は、リンクアーム11の枢動動作に伴って移動する部材に固定されてハーネス21のシート側中途部分を案内している。具体的には、リンクアーム11の枢動動作に伴って移動するレール12に固定されてハーネス21のスライドシート200側に近接した中途部分を案内している。シート側案内部25も、主に本体部251と先端部252で構成されており、本体部251のハーネス通路251Pと先端部252のハーネス通路252Pとが連通されて(連続的につながって)一つのハーネス通路を構成している。
【0050】
本体部251は、その主体部分が略円筒状に形成されている。本体部251は、上方側Uに向かって延設された胴体部253と、胴体部253を挟んで前後方向Xへ突出する固定板部254とを有している。固定板部254には、上下方向Zに貫通するボルト孔が設けられており、ボルト25Bが挿通されている。そして、固定板部254は、レール12との連結部材であるステー25Sに当接した状態で、ボルト25Bによって固定される。このように、シート側案内部25は、固定板部254のボルト孔に挿通されるボルト25Bによってレール12との連結部材であるステー25Sに固定される。但し、ステー25Sに限定するものではない。
【0051】
また、本体部251には、前述したハーネス通路251Pが形成されている。ハーネス通路251Pは、本体部251の基端側(左端部分)から先端側(右端部分)まで貫通しており、その通路長L2がハーネス21の外径(束径)の5倍の値よりも長くなるように設計されている。さらに、ハーネス通路251Pは、その入口側開口部分(右端部分)において拡径されており、後述する嵌合軸部252sと嵌合する嵌合孔部251hが形成されている。そして、嵌合孔部251hの内周面には、二つの円環溝251gが所定の間隔を隔てて平行に設けられている。開口奥側(左方側L)の円環溝251gには、止水用のゴムリング36が収容されており、開口手前側(右方側R)の円環溝251gには、嵌合軸部252sの外周面に形成された円環片252tが嵌め込まれている。
【0052】
加えて、本体部251の胴体部253は、その前後方向Xの中央部分がハーネス通路251Pの出口側開口部分(左端部分)よりも左方側Lに延設されている。胴体部253の下面53dは、上下方向Zに対して垂直とされており、胴体部253の左面53lは、左右方向Yに対して垂直とされている。そして、下面53dと左面53lの角部分には、円弧面53rが形成されている。さらに、胴体部253は、その左端部分が上方側Uに向かって延設されており、かつ所定の曲げ半径で後方側Bに向かって湾曲した形状とされている。このため、胴体部253の左面53lは、その上端部分が後方側Bに向かって湾曲している。したがって、ハーネス21は、ハーネス通路251Pを通過してから下面53dに沿って左方側Lに延び、円弧面53rに沿って上方側Uに曲げられ、左面53lに沿って後方側Bに曲げられ、そのまま後方側Bに向かって延伸されることとなる。なお、ハーネス21における後方側Bに延伸された部分は、クランプ32によって胴体部253の後端部分に固定されている。
【0053】
先端部252は、円筒体を円弧状に湾曲させた形状(曲管形状)とされている。先端部252には、前述したハーネス通路252Pが形成されている。ハーネス通路252Pは、先端部252の基端側から先端側まで貫通しており、その曲げ半径R2がハーネス2の外径(束径)の1倍の値よりも大きくなるように設計されている。さらに、ハーネス通路252Pは、その出口側開口部分(先端部分)において拡径されており、前述したゴムチューブ31と嵌合する嵌合孔部252hが形成されている。そして、嵌合孔部252hの内周面には、円環状に配置された係止爪252fが形成されている。係止爪252fは、ゴムチューブ31の凹溝に引っ掛かることにより、ゴムチューブ31の抜け出しを防いでいる。なお、先端部252とゴムチューブ31とは、テープによって巻き留められるとしてもよい。
【0054】
また、先端部252には、その基端側の端部(左端部分)に直線状に延伸された嵌合軸部252sが形成されている。嵌合軸部252sは、その外径が本体部251の嵌合孔部251hの内径よりも僅かに小さく形成されており、嵌合軸部252sの外周面には、一つの円環片252tが設けられている。そのため、本体部251の嵌合孔部251hに嵌合軸部252sが挿入されることにより、嵌合孔部251hの円環溝251gに嵌合軸部252sの円環片252tが嵌め込まれることとなる。このような構成により、本体部251に形成されたハーネス通路251Pの中心軸C2を中心として先端部252が回動自在に支持される。なお、本体部251のハーネス通路251Pは、左右方向Yに沿って形成されており、先端部252のハーネス通路252Pは、左右方向Yに対して垂直となる方向に曲げられている。そのため、ハーネス21は、車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向から左右方向Yに案内される。
【0055】
このような構成により、ハーネス配索構造20は、スライドシート200を前方側Fへスライドする際にも後方側Bへスライドする際にも適宜にハーネス経路を規制することができる。また、ハーネス配索構造20は、スライドシート200を足元空間Aに格納する際にも足元空間Aから展開する際にも適宜にハーネス経路を規制することができる。以下に、シート支持構造10の動作態様と、ハーネス配索構造20の動作態様について説明する。
【0056】
まず、
図9及び
図10を用いて、スライドシート200を前方側Fへスライドする際のシート支持構造10の動作態様と、そのときのハーネス配索構造20の動作態様について説明する。
図9(a)は、スライドシート200を最も後方側Bにスライドした状態を示し、
図9(b)は、スライドシート200を最も前方側Fにスライドした状態を示している。
図10においては、
図9(a)に相当するハーネス配索構造20を二点鎖線で表し、
図9(b)に相当するハーネス配索構造20を実線で表している。
【0057】
スライドシート200を前方側Fへスライドする場合、レール12に沿ってスライダ13を前方側Fへ移動させる必要がある。すると、スライダ13に取り付けられたスライドシート200も前方側Fへ移動されることとなる(矢印Sf参照)。なお、スライドシート200を前方側Fへスライドする際には、図示しないラッチを解除する必要がある。
【0058】
また、スライドシート200を前方側Fへスライドする場合、スライドシート200とともにシート側保持部23が前方側Fへ移動する(矢印Sf参照)。すると、ハーネス21は、シート側保持部23によって前方側Fに引かれ、ハーネス21の曲げ返し部分21bが追従(移動)することとなる。このように、スライドシート200を前方側Fへスライドする場合においては、ハーネス21の曲げ返し部分21bが追従(移動)してスライドシート200の移動に対応できる。
【0059】
加えて、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、スライドシート200を前方側Fへスライドしても、フロア側案内部24とシート側案内部25は移動せず、前後方向Xに等しい位置(ズレのない位置)に保たれる。このとき、車体100から延出されたハーネス21は、フロア側案内部24によって車体100の右方側Rへ案内されるとともに上方側Uへ案内され(延伸部分21a参照)、シート側案内部25によって上方側Uに向かう方向から左方側Lへ案内される。そして、ハーネス21は、車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返され(曲げ返し部分21b参照)、スライドシート200に至ることとなる。
【0060】
次に、
図11及び
図12を用いて、スライドシート200を後方側Bへスライドする際のシート支持構造10の動作態様と、そのときのハーネス配索構造20の動作態様について説明する。
図11(a)は、スライドシート200を最も前方側Fにスライドした状態を示し、
図11(b)は、スライドシート200を最も後方側Bにスライドした状態を示している。
図12においては、
図11(a)に相当するハーネス配索構造20を二点鎖線で表し、
図11(b)に相当するハーネス配索構造20を実線で表している。
【0061】
スライドシート200を後方側Bへスライドする場合、レール12に沿ってスライダ13を後方側Bへ移動させる必要がある。すると、スライダ13に取り付けられたスライドシート200も後方側Bへ移動されることとなる(矢印Sb参照)。なお、スライドシート200を後方側Bへスライドする際にも、図示しないラッチを解除する必要がある。
【0062】
また、スライドシート200を後方側Bへスライドする場合、スライドシート200とともにシート側保持部23が後方側Bへ移動する(矢印Sb参照)。すると、ハーネス21は、シート側保持部23によって後方側Bに押され、ハーネス21の曲げ返し部分21bが追従(移動)することとなる。このように、スライドシート200を後方側Bへスライドする場合においても、ハーネス21の曲げ返し部分21bが追従(移動)してスライドシート200の移動に対応できる。
【0063】
加えて、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、スライドシート200を後方側Bへスライドしても、フロア側案内部24とシート側案内部25は移動せず、前後方向Xに等しい位置(ズレのない位置)に保たれる。このとき、車体100から延出されたハーネス21は、フロア側案内部24によって車体100の右方側Rへ案内されるとともに上方側Uへ案内され(延伸部分21a参照)、シート側案内部25によって上方側Uに向かう方向から左方側Lへ案内される。そして、ハーネス21は、車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返され(曲げ返し部分21b参照)、スライドシート200に至ることとなる。
【0064】
次に、
図13及び
図14を用いて、スライドシート200を足元空間Aに格納する際のシート支持構造10の動作態様と、そのときのハーネス配索構造20の動作態様について説明する。
図13(a)は、スライドシート200を足元空間Aから展開した状態を示し、
図13(b)は、スライドシート200を足元空間Aに格納する途中の状態を示し、
図13(c)は、スライドシート200を足元空間Aに格納した状態を示している。
図14においては、
図13(a)に相当するハーネス配索構造20を二点鎖線で表し、
図13(c)に相当するハーネス配索構造20を実線で表している。
【0065】
スライドシート200を足元空間Aに格納する場合、スライダ13を最も後方側Bへ移動させた状態とし、リンクアーム11を前方側Fへ枢動させる必要がある。すると、リンクアーム11の枢動動作によってレール12及びスライダ13とともにスライドシート200が足元空間Aに格納されることとなる(矢印Pd参照)。なお、スライドシート200を足元空間Aに格納する際には、シートバック202を倒伏させた状態でシート後部を引き上げ、これによって図示しないラッチを解除し、前方側Fに向かって枢動させる必要がある。
【0066】
また、スライドシート200を足元空間Aに格納する場合、レール12に固定されたシート側案内部25も足元空間Aに格納される(矢印Pd参照)。すると、ハーネス21の上方側Uに向かって延伸している部分(延伸部分21a参照)がシート側案内部25の移動に伴って前方側Fへ倒れ込むこととなる(矢印Pd参照)。このように、スライドシート200を足元空間Aに格納する場合においては、ハーネス21の延伸部分21aが追従(移動)してスライドシート200の移動に対応できる。
【0067】
加えて、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、スライドシート200を足元空間Aに格納すると、フロア側案内部24の位置は変わらずにシート側案内部25が前方側Fまで移動するので、上下方向Zに等しい位置(ズレのない位置)となる。このとき、車体100から延出されたハーネス21は、フロア側案内部24によって車体100の右方側Rへ案内されるとともに前方側Fへ案内され(延伸部分21a参照)、シート側案内部25によって前方側Fに向かう方向から左方側Lへ案内される。そして、ハーネス21は、車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返され(曲げ返し部分21b参照)、スライドシート200に至ることとなる。
【0068】
次に、
図15及び
図16を用いて、スライドシート200を足元空間Aから展開する際のシート支持構造10の動作態様と、そのときのハーネス配索構造20の動作態様について説明する。
図15(a)は、スライドシート200を足元空間Aに格納した状態を示し、
図15(b)は、スライドシート200を足元空間Aから展開する途中の状態を示し、
図15(c)は、スライドシート200を足元空間Aから展開した状態を示している。
図16においては、
図15(a)に相当するハーネス配索構造20を二点鎖線で表し、
図15(c)に相当するハーネス配索構造20を実線で表している。
【0069】
スライドシート200を足元空間Aから展開する場合、スライダ13を最も後方側Bへ移動させた状態とし、リンクアーム11を上方側Uへ枢動させる必要がある。すると、リンクアーム11の枢動動作によってレール12及びスライダ13とともにスライドシート200が足元空間Aから展開されることとなる(矢印Pu参照)。なお、スライドシート200を足元空間Aから展開する際には、上方側Uに向かってスライドシート200を枢動させ、シート後部を降ろすことによって図示しないラッチを係合し、シートバック202を起立させる必要がある。
【0070】
また、スライドシート200を足元空間Aから展開する場合、レール12に固定されたシート側案内部25も足元空間Aから展開される(矢印Pu参照)。すると、ハーネス21の前方側Fに向かって延伸している部分(延伸部分21a参照)がシート側案内部25の移動に伴って上方側Uへ起き上がることとなる(矢印Pu参照)。このように、スライドシート200を足元空間Aから展開する場合においては、ハーネス21の延伸部分21aが追従(移動)してスライドシート200の移動に対応できる。
【0071】
加えて、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、スライドシート200を足元空間Aから展開すると、フロア側案内部24の位置は変わらずにシート側案内部25が上方側Uまで移動するので、前後方向Xに等しい位置(ズレのない位置)となる。このとき、車体100から延出されたハーネス21は、フロア側案内部24によって車体100の右方側Rへ案内されるとともに上方側Uへ案内され(延伸部分21a参照)、シート側案内部25によって上方側Uに向かう方向から左方側Lへ案内される。そして、ハーネス21は、車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返され(曲げ返し部分21b参照)、スライドシート200に至ることとなる。
【0072】
以上のように、ハーネス配索構造20は、リンクアーム11によって車体100の前後方向Xに延びるレール12が支持され、レール12に沿って移動可能とするスライダ13にスライドシート200が載置されており、リンクアーム11の枢動動作によってレール12及びスライダ13とともに足元空間Aに格納可能とされるスライドシート200の電装部品に対して給電を行うものである。ハーネス配索構造20には、車体100とスライドシート200の間に架け渡されるハーネス21と、車体100の側に固定されてハーネス21のフロア側中途部分を案内するフロア側案内部24とが備えられている。そして、フロア側案内部24は、車体100からスライドシート200に近接する近接位置まで延伸された後に車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返されるハーネス21のフロア側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yへ案内するとともに左右方向Yに対して交差する方向へ案内してスライドシート200の近接位置に導くことを特徴としている。
【0073】
このようなハーネス配索構造20によれば、スライドシート200を前後方向Xにスライドしたりスライドシート200を足元空間Aに格納したりしても、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るハーネス配索構造20によれば、フロア側案内部24は、車体100からスライドシート200に近接する近接位置まで延伸された後に車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返されるハーネス21のフロア側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yへ案内するとともに左右方向Yに対して垂直となる方向へ案内してスライドシート200の近接位置に導いている。そのため、スライドシート200を前後方向Xにスライドする際においては、ハーネス21における曲げ返された部分(曲げ返し部分21b)が追従(移動)し、スライドシート200を足元空間Aに格納する際においては、ハーネス21における車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向に延伸された部分(延伸部分21a)が追従(枢動)してスライドシート200の移動に対応できる。これにより、ハーネス21の変形(変位)を小さく抑え、ハーネス21に局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じることを防止できる。したがって、スライドシート200を前後方向Xにスライドしたりスライドシート200を足元空間Aに格納したりしても、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0074】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20において、フロア側案内部24は、車体100の左右方向Yにハーネス21を案内する本体部241と、本体部241の出口側開口部分に取り付けられて左右方向Yに対して垂直となる方向にハーネス21を案内する先端部242とを有し、本体部241の出口側開口部分における中心軸C1を中心に先端部242が回動自在に支持されている。
【0075】
このようなハーネス配索構造20によれば、スライドシート200を足元空間Aに格納する際においては、スライドシート200の移動に伴うハーネス経路の変化に応じて先端部242が回動するので、ハーネス21が引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。また、スライドシート200を足元空間Aから展開する際においても、スライドシート200の移動に伴うハーネス経路の変化に応じて先端部242が回動するので、ハーネス21が引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0076】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、先端部242の回動中心がリンクアーム11の連結部分における枢動中心に対して同軸上に配置されている。
このようなハーネス配索構造20によれば、リンクアーム11が枢動しても、先端部242の回動によってハーネス経路の総延長が一定に保たれるので、ハーネス21が引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。また、ハーネス21が大きく弛んでしまうことも防止できる。
【0077】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、本体部241に形成されたハーネス通路241Pの通路長L1をハーネス21の外径の5倍の値よりも長くしている。
このようなハーネス配索構造20によれば、先端部242の回動動作に起因してハーネス21における本体部241に挿通された部分に捻り荷重がかかったとしても、ハーネス通路241Pの全体にわたって捩れが分散されることとなる。そのため、ハーネス21に局所的な捩れが生じることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0078】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、先端部242におけるハーネス通路242Pの曲げ半径R1をハーネス21の外径の1倍の値よりも大きくしている。
このようなハーネス配索構造20によれば、先端部242の回動動作に起因してハーネス21における先端部242に挿通された部分に引出荷重あるいは押込荷重がかかったとしても、ハーネス通路242Pの形状に沿って曲げ半径が規制されることとなる。そのため、ハーネス21に局所的な曲げが生じることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0079】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、リンクアーム11の枢動動作に伴って移動するレール12に固定されてハーネス21のシート側中途部分を案内するシート側案内部25が備えられている。そして、シート側案内部25は、スライドシート200の近接位置であるシート側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向から左右方向Yへ案内してハーネス21の曲げ返し部分21bに導くとしている。
【0080】
このようなハーネス配索構造20によれば、シート側案内部25は、スライドシート200の近接位置であるシート側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向から左右方向Yへ案内してハーネス21の曲げ返し部分21bに導いている。そのため、スライドシート200を足元空間Aに格納する際においては、ハーネス21における車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向に延伸された部分(延伸部分21a)が追従(枢動)してスライドシート200の移動に対応できる。これにより、ハーネス21の変形(変位)を小さく抑え、ハーネス21に局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じることを防止できる。したがって、スライドシート200を前後方向Xにスライドしたりスライドシート200を足元空間aに格納したりしても、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0081】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20において、シート側案内部25は、車体100の左右方向Yにハーネス21を案内する本体部251と、本体部251の入口側開口部分に取り付けられて左右方向Yに対して垂直となる方向からハーネス21を案内する先端部252とを有し、本体部251の入口側開口部分における中心軸C2を中心に先端部252が回動自在に支持されている。
【0082】
このようなハーネス配索構造20によれば、スライドシート200を足元空間Aに格納する際においては、スライドシート200の移動に伴うハーネス経路の変化に応じて先端部252が回動するので、ハーネス21が引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。また、スライドシート200を足元空間Aから展開する際においても、スライドシート200の移動に伴うハーネス経路の変化に応じて先端部252が回動するので、ハーネス21が引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0083】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、先端部252の回動中心がリンクアーム11の連結部分における枢動中心に対して同軸上に配置されている。
このようなハーネス配索構造20によれば、リンクアーム11が枢動しても、先端部252の回動によってハーネス経路の総延長が一定に保たれるので、ハーネス21が引っ張られたり局所的な曲げが生じたりすることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。また、ハーネス21が大きく弛んでしまうことも防止できる。
【0084】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、本体部251に形成されたハーネス通路251Pの通路長L2をハーネス21の外径の5倍の値よりも長くしている。
このようなハーネス配索構造20によれば、先端部252の回動動作に起因してハーネス21における本体部251に挿通された部分に捻り荷重がかかったとしても、ハーネス通路251Pの全体にわたって捩れが分散されることとなる。そのため、ハーネス21に局所的な捩れが生じることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0085】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、先端部252に形成されたハーネス通路252Pの曲げ半径R2をハーネス21の外径の1倍の値よりも大きくしている。
このようなハーネス配索構造20によれば、先端部252の回動動作に起因してハーネス21における先端部252に挿通された部分に引出荷重あるいは押込荷重がかかったとしても、ハーネス通路252Pの形状に沿って曲げ半径が規制されることとなる。そのため、ハーネス21に局所的な曲げが生じることを防止できる。したがって、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0086】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、ハーネス21の基端部分を保持する車体側保持部22が備えられ、車体側保持部22にハーネス21のコネクタ211が配置されている。
このようなハーネス配索構造20によれば、車体100に配索されたハーネス150とハーネス配索構造20を構成するハーネス21とを車体側保持部22で接続することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、ハーネス21の先端部分を保持するシート側保持部23が備えられ、シート側保持部23にハーネス21のコネクタ212が配置されている。
このようなハーネス配索構造20によれば、スライドシート200に配索されたハーネス260とハーネス配索構造20を構成するハーネス21とをシート側保持部23で接続することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態に係るハーネス配索構造20においては、ハーネス21が車体100を構成するフロアパネル101とスライドシート200を構成するシートクッション201との隙間に配索されている。
このようなハーネス配索構造20によれば、フロアパネル101とシートクッション201との隙間にハーネス21を収容できる。そのため、スライドシート200に着座する者や周囲の者からハーネス21を見えなくして美観を向上することが可能となる。
【0089】
本願発明の構成と前述した実施形態との対応において、
シート支持構造はシート支持構造10に対応し、
リンクアームはリンクアーム11に対応し、
レールはレール12に対応し、
スライダはスライダ13に対応し、
ハーネス配索構造はハーネス配索構造20に対応し、
ハーネスはハーネス21に対応し、
車体側保持部は車体側保持部22に対応し、
シート側保持部はシート側保持部23に対応し、
フロア側案内部はフロア側案内部24に対応し、
フロア側本体部は本体部241に対応し、
ハーネス通路はハーネス通路241Pに対応し、
フロア側先端部は先端部242に対応し、
ハーネス通路はハーネス通路242Pに対応し、
シート側案内部はシート側案内部25に対応し、
シート側本体部は本体部251に対応し、
ハーネス通路はハーネス通路251Pに対応し、
シート側先端部は先端部252に対応し、
ハーネス通路はハーネス通路252Pに対応し、
コネクタはコネクタ211,212に対応し、
車体は車体100に対応し、
フロアパネルはフロアパネル101に対応し、
スライドシートはスライドシート200に対応し、
シートクッションはシートクッション201に対応し、
足元空間は足元空間Aに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0090】
例えば、本願に開示するハーネス配索構造20においては、フロア側案内部24を構成する先端部242ならびにシート側案内部25を構成する先端部252が円筒体を円弧状に湾曲させた形状(曲管形状)となっている。しかし、
図17に示すように、先端部242ならびに先端部252の少なくとも一方が基端側(左端部分)から先端側(右端部分)に向けて徐々に拡径された、いわゆるトランペット形状となっていてもよい。
【0091】
このようなハーネス配索構造20によれば、スライドシート200を足元空間Aに格納する場合においては、ハーネス21が先端部242等の内周面に沿って枢動可能であるので、ハーネス21の上方側Uに向かって延伸している部分(延伸部分21a参照)が前方側Fへ倒れ込むこととなる(矢印Pd参照)。反対に、スライドシート200を足元空間Aから展開する場合においても、ハーネス21が先端部242等の内周面に沿って枢動可能であるので、ハーネス21の前方側Fに向かって延伸している部分(延伸部分21a参照)が上方側Uへ起き上がることとなる(矢印Pu参照)。
【0092】
また、本願に開示するハーネス配索構造20においては、ハーネス21が車体側保持部22からシート側保持部23までの間で、フロア側案内部24によって車体100の右方側Rへ案内されるとともに左右方向Yに対して垂直となる方向へ案内され(延伸部分21a参照)、シート側案内部25によって車体100の左右方向Yに対して垂直となる方向から左方側Lへ案内されている。その後、ハーネス21は、車体100の前後方向Xに沿って後方側Bに向かう方向から前方側Fに向かう方向へ曲げ返されている(曲げ返し部分21b参照)。しかし、ハーネス21がフロア側案内部24によって車体100の左方側Lへ案内されてもよい。また、シート側案内部25によって右方側Rへ案内されてもよい。さらに、ハーネス21が車体100の前後方向Xに沿って前方側Fに向かう方向から後方側Bに向かう方向へ曲げ返されてもよい。
【0093】
また、本願発明には、前述したハーネス配索構造20を構成するフロア側案内部24も含まれるものとする。すなわち、フロア側案内部24は、リンクアーム11によって車体100の前後方向Xに延びるレール12が支持され、レール12に沿って移動可能とするスライダ13にスライドシート200が載置されており、リンクアーム11の枢動動作によってレール12及びスライダ13とともに足元空間Aに格納可能とされるスライドシート200の電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造20のフロア側案内部24であって、車体100からスライドシート200に近接する近接位置まで延伸された後に車体100の前後方向Xに沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネス21のフロア側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yへ案内するとともに左右方向Yに対して交差する方向へ案内してスライドシート200の近接位置に導くことを特徴としている。
【0094】
これにおいても、前述の実施形態に係るハーネス配索構造20と同様の効果を奏する。つまりは、ハーネス21の変形(変位)を小さく抑え、ハーネス21に局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じることを防止できる。したがって、スライドシート200を前後方向Xにスライドしたりスライドシート200を足元空間Aに格納したりしても、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0095】
さらに、本願発明には、前述したハーネス配索構造20を構成するシート側案内部25も含まれるものとする。すなわち、シート側案内部25は、リンクアーム11によって車体100の前後方向Xに延びるレール12が支持され、レール12に沿って移動可能とするスライダ13にスライドシート200が載置されており、リンクアーム11の枢動動作によってレール12及びスライダ13とともに足元空間Aに格納可能とされるスライドシート200の電装部品に対して給電を行うハーネス配索構造20のシート側案内部25であって、車体100からスライドシート200に近接する近接位置まで延伸された後に車体100の前後方向Xに沿って一方側に向かう方向から他方側に向かう方向へ曲げ返されるハーネス21のシート側中途部分において、車体100の側から延出されたハーネス21を車体100の左右方向Yに対して交差する方向から左右方向Yへ案内してハーネス21の曲げ返し部分21bに導くことを特徴としている。
【0096】
これにおいても、前述の実施形態に係るハーネス配索構造20と同様の効果を奏する。つまりは、ハーネス21の変形(変位)を小さく抑え、ハーネス21に局所的な曲げ(曲率の大きな曲げ、つまりは曲がりの程度がきつい急激な曲げ)が生じることを防止できる。したがって、スライドシート200を前後方向Xにスライドしたりスライドシート200を足元空間Aに格納したりしても、ハーネス21に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0097】
最後に、本願に開示するハーネス配索構造1のハーネス21は、断面形状が丸い、被覆電線であるとして説明した。しかしながら、断面形状が扁平である、いわゆるリボン電線であってもよい。あるいは、電導板を絶縁性のシート材で挟み込んで帯状に形成した、いわゆるフレキシブルフラットケーブルであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
10…シート支持構造
11…リンクアーム
12…レール
13…スライダ
20…ハーネス配索構造
21…ハーネス
22…車体側保持部
23…シート側保持部
24…フロア側案内部
241…本体部
241P…ハーネス通路
242…先端部
242P…ハーネス通路
25…シート側案内部
251…本体部
251P…ハーネス通路
252…先端部
252P…ハーネス通路
211…コネクタ
212…コネクタ
100…車体
101…フロアパネル
200…スライドシート
201…シートクッション
A…足元空間