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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083887
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20230609BHJP
   H03F 1/22 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H03K5/08 E
H03F1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197854
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5J039
5J500
【Fターム(参考)】
5J039DA09
5J039DA10
5J039KK00
5J039KK16
5J039KK18
5J039MM03
5J500AA01
5J500AA13
5J500AC36
5J500AC61
5J500AF09
5J500AH10
5J500AH25
5J500AK05
5J500AM11
5J500AM17
(57)【要約】
【課題】回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供する。
【解決手段】分流回路4が、負荷抵抗器R1に流れる電流よりも負荷抵抗器R2に流れる電流が多い場合、トランジスタM41に流れる電流を分流して負荷抵抗器R1に流すと共に、負荷抵抗器R2に流れる電流よりも負荷抵抗器R1に流れる電流が多い場合、トランジスタM42に流れ込む電流を分流して負荷抵抗器R2に流す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電位及び第2の入力電位に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタと、
前記第1の差動トランジスタに直列接続された第1の負荷抵抗器と、
前記第2の差動トランジスタに直列接続された第2の負荷抵抗器とを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第4のトランジスタとを有し、前記第4のトランジスタが第1の出力段を構成する第1のフォールデッドカスコード部と、
前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第5のトランジスタと、前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第6のトランジスタとを有し、前記第6のトランジスタが第2の出力段を構成する第2のフォールデッドカスコード部と、
前記第1及び第2の出力段の出力に接続されて出力信号を出力する出力回路とを備えたコンパレータであって、
前記第1の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第2の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第4のトランジスタに流れる電流を分流して前記第1の負荷抵抗器に流し、前記第2の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第1の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第6のトランジスタに流れる電流を分流して前記第2の負荷抵抗器に流す分流回路を有する、
コンパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第7のトランジスタを有する、
コンパレータ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第8のトランジスタを有し、
前記第1の出力段の出力には、前記第7のトランジスタのソース又はエミッタと、前記第8のトランジスタのドレイン又はコレクタとが接続され、
前記第2の出力段の出力には、前記第7のトランジスタのドレイン又はコレクタと、前記第8のトランジスタのソース又はエミッタとが接続された、
コンパレータ。
【請求項4】
請求項1に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第1の差動トランジスタ及び前記第1の負荷抵抗器の接続点との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第9のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力と前記第2の差動トランジスタ及び前記第2の負荷抵抗器の接続点との間に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第10のトランジスタとを有する、
コンパレータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第1の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第11のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第12のトランジスタと、
前記第11のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第12のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第13のトランジスタとを有し、
前記第11のトランジスタと前記第13のトランジスタの接続点から前記出力信号を出力する、
コンパレータ。
【請求項6】
請求項5に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第12のトランジスタと直列接続され、ゲートが前記第11のトランジスタと前記第13のトランジスタの接続点に接続された第14のトランジスタを有する、
コンパレータ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のコンパレータであって、
前記第11のトランジスタ及び前記第12のトランジスタの閾値電圧が、前記第3~前記第6のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、COのような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、半導体集積回路に幅広く使われるコンパレータは、応答速度と消費電流が主要な性能として挙げられる。コンパレータの応答速度と消費電流は反比例の関係にあることから、消費電流を増加させずに入力信号に対する応答特性を改善し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
半導体集積回路に用いられるコンパレータとして、図6に示すような回路が知られている(例えば特許文献1など参照)。図6に示されているコンパレータ100は、差動入力部102と、フォールデッドカスコード部103と、出力回路105を主たる構成要素として構成される。
【0004】
差動入力部102は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1,M2と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1,R2と、トランジスタM1,M2の共通ソースと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源21とにより構成されている。
【0005】
フォールデッドカスコード部103は、負荷抵抗器R1,R2と各々ソースが接続されたトランジスタM3,M4と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に各々接続された定電流源311,312と、ゲート及びドレインがトランジスタM4のドレインに接続され、ソースがトランジスタM4のゲートに接続されたトランジスタM5とを有している。フォールデッドカスコード部103においては、トランジスタM3とトランジスタM4とをカレントミラー接続して、トランジスタM4のドレインと定電流源312との接続ノードより、出力を取り出すように構成されている。
【0006】
また、トランジスタM5は、トランジスタM6のゲート電位の上昇を抑制し、伝搬遅延時間が短縮されると共に、伝搬遅延時間の電源電圧依存性を改善させている(例えば、非特許文献1など参照)。
【0007】
出力回路105は、ゲートがフォールデッドカスコード部103の出力に接続され、ソースが負電源電圧VSSに接続されたトランジスタM6と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源51とからなり、トランジスタM6と定電流源51との接続ノードより、出力信号VOUTを取り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4677284号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】吉田晴彦著 CMOSアナログIC回路の実務設計 CQ出版社 2010年 (p144、図4.10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の構成を有する従来のコンパレータは、応答特性を改善するためには、回路電流を増加させないといけないという課題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコンパレータは、下記[1]~[9]を特徴としている。
[1]
第1の入力電位及び第2の入力電位に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタと、
前記第1の差動トランジスタに直列接続された第1の負荷抵抗器と、
前記第2の差動トランジスタに直列接続された第2の負荷抵抗器とを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第4のトランジスタとを有し、前記第4のトランジスタが第1の出力段を構成する第1のフォールデッドカスコード部と、
前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第5のトランジスタと、前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続される第6のトランジスタとを有し、前記第6のトランジスタが第2の出力段を構成する第2のフォールデッドカスコード部と、
前記第1及び第2の出力段の出力に接続されて出力信号を出力する出力回路とを備えたコンパレータであって、
前記第1の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第2の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第4のトランジスタに流れる電流を分流して前記第1の負荷抵抗器に流し、前記第2の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第1の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第6のトランジスタに流れる電流を分流して前記第2の負荷抵抗器に流す分流回路を有する、
コンパレータであること。
[2]
[1]に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第7のトランジスタを有する、
コンパレータであること。
[3]
[2]に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第8のトランジスタを有し、
前記第1の出力段の出力には、前記第7のトランジスタのソース又はエミッタと、前記第8のトランジスタのドレイン又はコレクタとが接続され、
前記第2の出力段の出力には、前記第7のトランジスタのドレイン又はコレクタと、前記第8のトランジスタのソース又はエミッタとが接続された、
コンパレータであること。
[4]
[1]に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第1の差動トランジスタ及び前記第1の負荷抵抗器の接続点との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第9のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力と前記第2の差動トランジスタ及び前記第2の負荷抵抗器の接続点との間に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第10のトランジスタとを有する、
コンパレータであること。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第1の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第11のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第12のトランジスタと、
前記第11のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第12のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第13のトランジスタとを有し、
前記第11のトランジスタと前記第13のトランジスタの接続点から前記出力信号を出力する、
コンパレータであること。
[6]
[5]に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第12のトランジスタと直列接続され、ゲートが前記第11のトランジスタと前記第13のトランジスタの接続点に接続された第14のトランジスタを有する、
コンパレータであること。
[7]
[5]又は[6]に記載のコンパレータであって、
前記第11のトランジスタ及び前記第12のトランジスタの閾値電圧が、前記第3~前記第6のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータであること。
[8]
[1]~[7]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
[9]
[1]~[8]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図3図3は、第3実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図4図4は、第4実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図5図5は、第5実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図6図6は、従来のコンパレータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態のコンパレータ1について図1を参照して説明する。同図に示すように、コンパレータ1は、反転入力端子T11に入力された反転入力電位INM(=第1の入力電位)と非反転入力端子T12に入力された非反転入力電位INP(=第2の入力電位)とを比較し、その比較結果を出力端子T3から出力する。コンパレータ1は、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31(=第1のフォールデッドカスコード部),フォールデッドカスコード部32(=第2のフォールデッドカスコード部)と、分流回路4と、出力回路5とを備えている。
【0018】
差動入力部2は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1(=第1の差動トランジスタ)、差動トランジスタM2(=第2の差動トランジスタ)と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1(=第1の負荷抵抗器)、負荷抵抗器R2(=第2の負荷抵抗器)と、定電流源21とを備える。
【0019】
差動トランジスタM1,M2は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。差動トランジスタM1のゲートは、反転入力端子T11に接続され、差動トランジスタM2のゲートは、非反転入力端子T12に接続されている。差動トランジスタM1,M2のソースは共通接続され、定電流源21に接続されている。
【0020】
負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1に直列接続されている。詳しく説明すると、負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。負電源端子T22には負電源電圧VSSが供給されている。負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2に直列接続されている。詳しく説明すると、負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。
【0021】
定電流源21は、正電源端子T21と共通接続された差動トランジスタM1,M2のソースとの間に接続される。正電源端子T21には、正電源電圧VDDが供給されている。差動入力部2は、定電流源21が供給する定電流I1を差動トランジスタM1,M2に分流する。差動トランジスタM1,M2に流れる電流の電流比(分流比)は、反転入力端子T11に入力される反転入力電位INM、非反転入力端子T12に入力される非反転入力電位INPに応じた値となる。
【0022】
フォールデッドカスコード部31は、差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されたトランジスタM31(=第3のトランジスタ)と、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されたトランジスタM41(=第4のトランジスタ)と、定電流源311,312とを備えている。トランジスタM31,M41は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0023】
トランジスタM31は、ゲート・ドレインが接続されている。トランジスタM31は、ソースが負荷抵抗器R1と差動トランジスタM1のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源311に接続されている。トランジスタM41は、ゲートがトランジスタM31のゲート、ドレインに接続されている。トランジスタM41は、ソースが負荷抵抗器R2と差動トランジスタM2のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源312に接続されている。
【0024】
定電流源311は、トランジスタM31のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。定電流源312は、トランジスタM41のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0025】
フォールデッドカスコード部31においては、トランジスタM31とトランジスタM41をカレントミラー接続して、第1の出力段を構成するトランジスタM41と定電流源312との接続ノードAにより出力を取り出すように構成されている。
【0026】
フォールデッドカスコード部32は、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されるトランジスタM32(=第5のトランジスタ),差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されるトランジスタM42(=第6のトランジスタ)と、定電流源321,322とを備えている。トランジスタM32,M42は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0027】
トランジスタM32は、ゲート・ドレインが接続されている。トランジスタM32は、ソースが負荷抵抗器R2と差動トランジスタM2のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源321に接続されている。トランジスタM42は、ゲートがトランジスタM32のゲート、ドレインに接続されている。トランジスタM42は、ソースが負荷抵抗器R1と差動トランジスタM1のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源322に接続されている。
【0028】
定電流源321は、トランジスタM32のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。定電流源322は、トランジスタM42のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0029】
フォールデッドカスコード部32においては、トランジスタM32とトランジスタM42をカレントミラー接続して、第2の出力段を構成するトランジスタM42と定電流源322との接続ノードBにより出力を取り出すように構成されている。
【0030】
分流回路4は、負荷抵抗器R1に流れる電流よりも負荷抵抗器R2に流れる電流が多い場合、トランジスタM41に流れる電流を分流して負荷抵抗器R1に流す回路である。また、分流回路4は、負荷抵抗器R2に流れる電流よりも負荷抵抗器R1に流れる電流が多い場合、トランジスタM42に流れる電流を分流して負荷抵抗器R2に流す回路である。
【0031】
分流回路4は、トランジスタM101(=第7のトランジスタ),トランジスタM102(=第8のトランジスタ)を有している。トランジスタM101,M102は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM101は、ソースが接続ノードAに接続され、ドレインが接続ノードBに接続され、ゲートが定電流源311とトランジスタM31のドレインとの接続点に接続されている。
【0032】
トランジスタM102は、ソースが接続ノードBに接続され、ドレインが接続ノードAに接続され、ゲートが定電流源321とトランジスタM32のドレインとの接続点に接続されている。
【0033】
出力回路5は、トランジスタM6~M8と、定電流源51とを備えている。トランジスタM6,M7は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM6(=第11のトランジスタ)は、ゲートが接続ノードAに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインがトランジスタM8のドレイン及び出力端子T3に接続されている。トランジスタM7(第12のトランジスタ)は、ゲートが接続ノードBに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインが定電流源51に接続されている。
【0034】
トランジスタM8(=第13のトランジスタ)は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM8は、トランジスタM6に直列接続されている。詳しく説明すると、トランジスタM8は、ゲートがトランジスタM7のドレインと定電流源51との接続点に接続され、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタM6のドレイン及び出力端子T3に接続されている。定電流源51は、正電源端子T21とトランジスタM7のドレインとの間に接続されている。
【0035】
次に、上述した構成のコンパレータ1の動作について説明する。最初に、反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ負電源電圧VSSとなっている場合の動作について説明する。
【0036】
反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高い場合、差動トランジスタM1よりも差動トランジスタM2の方に定電流源21からの電流I1がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R1での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R2での電圧降下が増加する。
【0037】
そして、トランジスタM41のゲート・ソース電位差が、トランジスタM31のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM41がオフ状態となる。トランジスタM41がオフ状態となると、接続ノードAの電位は上昇する。接続ノードAの電位が上昇して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM6がオンする。
【0038】
また、トランジスタM42のゲート・ソース電位差が、トランジスタM32のゲート・ソース電位差よりも大きくなり、トランジスタM42がオン状態となると、接続ノードBの電位は低下する。接続ノードBの電位が低下して、トランジスタM7のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM7がオフする。
【0039】
トランジスタM7がオフすると、トランジスタM7のドレイン電位が上昇する。トランジスタM7のドレイン電位が上昇すると、それに伴いトランジスタM8のゲート電位が上昇し、トランジスタM8がオフする。この結果、出力端子T3の出力信号VOUTはLow状態となる。
【0040】
また、上述したようにトランジスタM41がオフ状態となると、トランジスタM41のドレイン電位が上昇して、トランジスタM101がオン状態となる。これにより、定電流源312からの電流の一部がオン状態のトランジスタM101のソースからドレインに流れ、トランジスタM42に流れ込み、負荷抵抗器R1に流れる電流を増加させる。また、定電流源312からの電流の一部がトランジスタM102の逆方向での動作によりドレインからソースに流れ、トランジスタM42に流れ込み、負荷抵抗器R1に流れる電流を増加させる。これにより、接続ノードBの電位が、トランジスタM101及びM102が接続されていない場合に比べて高くなり、負電源電圧VSS近くまで低下するのを抑制することができる。
【0041】
また、出力信号VOUTがLow状態のとき、トランジスタM101は、接続ノードAの電位をトランジスタM31のドレイン電位にトランジスタM101のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプさせる。これにより、接続ノードAの電位は正電源電圧VDD付近まで上昇しない。
【0042】
次に、非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ正電源電圧VDDとなっている場合の動作について説明する。
【0043】
非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高い場合、差動トランジスタM2よりも差動トランジスタM1の方に定電流源21からの電流I1がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R2での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R1での電圧降下が増加する。
【0044】
そして、トランジスタM41のゲート・ソース電位差が、トランジスタM31のゲート・ソース電位差よりも大きくなり、トランジスタM41がオン状態となる。トランジスタM41がオン状態となると、接続ノードAの電位は低下する。接続ノードAの電位が低下して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM6がオフする。上述したように出力信号VOUTがLow状態のとき、接続ノードAの電位は、トランジスタM101のクランプにより、上昇が抑制されている。このため、このとき、トランジスタM6がオンからオフするまでの時間を短くすることができる。
【0045】
また、トランジスタM42のゲート・ソース電位差が、トランジスタM32のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM42がオフ状態となると、接続ノードBの電位は上昇する。接続ノードBが上昇して、トランジスタM7のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM7がオンする。上述したように出力信号VOUTがLow状態のとき、接続ノードBの電位は、定電流源312からの電流の一部が負荷抵抗器R1に流れ込むことにより、低下が抑制されている。このため、トランジスタM7がオフからオンするまでの時間を短くすることができる。
【0046】
トランジスタM7がオンすると、トランジスタM7のドレイン電位が低下する。トランジスタM7のドレイン電位が低下すると、それに伴いトランジスタM8のゲート電位が低下し、トランジスタM8がオンする。この結果、出力端子T3の出力信号VOUTはHigh状態となる。上述したようにトランジスタM6がオンからオフ、トランジスタM7がオフからオンするまでの時間を短くすることができるため、出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0047】
また、上述したようにトランジスタM42がオフ状態となると、トランジスタM42のドレイン電位が上昇して、トランジスタM102がオン状態となる。これにより、定電流源322からの電流の一部がオン状態のトランジスタM102のソースからドレインに流れ、トランジスタM41に流れ込み、負荷抵抗器R2に流れる電流を増加させる。また、定電流源322からの電流の一部がトランジスタM101の逆方向での動作によりドレインからソースに流れ、トランジスタM41に流れ込み、負荷抵抗器R2に流れる電流を増加させる。これにより、接続ノードAの電位が、トランジスタM101及びM102が接続されていない場合に比べて高くなり、負電源電圧VSS近くまで低下するのを抑制することができる。
【0048】
また、出力信号VOUTがHigh状態のとき、トランジスタM102は、接続ノードBの電位を、トランジスタM32のドレイン電位にトランジスタM102のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプさせる。これにより、接続ノードBの電位は正電源電圧VDD付近まで上昇しない。
【0049】
上述したように出力信号VOUTがHigh状態の間、接続ノードBの電位の上昇、接続ノードAの電位の低下を抑制することができる。このため、出力信号がLow状態に反転する際、トランジスタM6がオフからオン、トランジスタM7がオンからオフとなる時間を短くすることができ、出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に反転する応答速度を早くすることができる。
【0050】
なお、トランジスタM6,M7として、閾値電圧がトランジスタM31、M32、M41、M42の閾値電圧よりも低いトランジスタを用いることで、トランジスタM6,M7がオフ状態からオン状態に変化する時間をより一層短縮することができる。これにより、出力回路5の応答特性をさらに改善することができる。
【0051】
しかして、第1実施形態におけるコンパレータ1は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のコンパレータ1Bについて図2を参照して説明する。なお、図2において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
コンパレータ1Bは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31,フォールデッドカスコード部32と、分流回路4と、出力回路5Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部31,フォールデッドカスコード部32、分流回路4は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0054】
出力回路5Bは、トランジスタM6~M9を有している。第2実施形態の出力回路5Bは、第1実施形態の定電流源51をトランジスタM9(=第14のトランジスタ)に置き換えている。トランジスタM9は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM9は、ゲートが出力端子T3に接続され、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタM7のドレインに接続される。
【0055】
第2実施形態のコンパレータ1Bは、後述する点を除けば、基本的には第1の実施形態と同様である。
【0056】
すなわち、第1実施形態においては、トランジスタM7がオン状態のときに、トランジスタM7のドレイン電流が定常電流として流れ続ける。これに対して、第2の実施形態においては、トランジスタM7がオン状態のときにトランジスタM8がオン状態となり、トランジスタM9のゲート電位が上昇する。トランジスタM9のゲート電位が上昇すると、トランジスタM9がオフ状態になるため、トランジスタM7がオン状態のときにドレイン電流が定常電流として流れない。
【0057】
したがって、この第2実施形態におけるコンパレータ1Bは、消費電流が低減されると共に、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0058】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のコンパレータ1Cについて図3を参照して説明する。なお、図3において、図1及び図2に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
コンパレータ1Cは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31,フォールデッドカスコード部32と、分流回路4Cと、出力回路5Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部31,32は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。出力回路5Bは、上述した第2実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
第1実施形態の分流回路4と第3実施形態の分流回路4Cとで異なる点は、トランジスタM101C(=第9のトランジスタ)、トランジスタM102C(=第10のトランジスタ)のドレインの接続である。第3実施形態のトランジスタM101Cのドレインは、トランジスタM42のソースと負荷抵抗器R1との接続点に接続されている。第3実施形態のトランジスタM102Cのドレインは、トランジスタM41のソースと負荷抵抗器R2との接続点に接続されている。
【0061】
第3実施形態のコンパレータ1Cは、後述する点を除けば、基本的には第2の実施形態と同様である。
【0062】
第3実施形態においては、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態のときに、定電流源312からの電流の一部がトランジスタM101Cを介して、トランジスタM42のソースに接続される負荷抵抗器R1に流れ込む電流を増加させる。このため、トランジスタM7のゲート電位は、トランジスタM101Cが接続されていない場合に比べ高くなり、トランジスタM7がオフ状態からオン状態に変化するまでの時間が短縮される。このため、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に変化する伝搬遅延時間が短縮される。
【0063】
また、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態のときに、定電流源322からの電流の一部がトランジスタM102Cを介して、トランジスタM41のソースに接続される負荷抵抗器R2に流れ込む電流を増加させる。このため、トランジスタM6のゲート電位は、トランジスタM102Cが接続されていない場合に比べ高くなり、トランジスタM6がオフ状態からオン状態に変化するまでの時間が短縮される。このため、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に変化する伝搬遅延時間が短縮される。
【0064】
従って、第3実施形態のコンパレータ1Cは、消費電流が低減されると共に、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0065】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のコンパレータ1Dについて図4を参照して説明する。なお、図4において、図1及び図2に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
コンパレータ1Dは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31,32と、分流回路4Dと、出力回路5Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部31,32は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。出力回路5Bは、上述した第2実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0067】
第1実施形態の分流回路4と第4実施形態の分流回路4Dとで異なる点は、分流回路4Dが、トランジスタM101のみから構成され、トランジスタM102が設けられていない点である。
【0068】
第4実施形態のコンパレータ1Dは、後述する点を除けば、基本的には第2の実施形態と同様である。
【0069】
第4実施形態においては、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態のときに、定電流源312からの電流の一部がトランジスタM101のソースからドレインに流れた後、トランジスタM42のドレインに流れ込み、負荷抵抗器R1に流れる電流を増加させる。また、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態のときに、定電流源322からの電流の一部がトランジスタM101のドレインからソースに流れた後、トランジスタM41のドレインに流れ込み、負荷抵抗器R2に流れる電流を増加させる。
【0070】
また、トランジスタM101は、接合ノードAの電位をトランジスタM31のドレイン電位にトランジスタM101のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプさせ、接合ノードBの電位をトランジスタM31のドレイン電位にトランジスタM101のゲート・ドレイン電位差を加えた電圧でクランプさせることで、正電源電圧VDD付近まで上昇させない。
【0071】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態のコンパレータ1Eについて図5を参照して説明する。なお、図5において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
同図に示すように、コンパレータ1Eは、第1実施形態と同様に、差動入力部2Eと、フォールデッドカスコード部31E,フォールデッドカスコード部32Eと、分流回路4Eと、出力回路5Eとを備えている。
【0073】
第1実施形態と第5実施形態とで異なる点は、トランジスタM1、M2、M31、M41、M32、M42、M6~M8、M101、M102に相当するトランジスタM1E、M2E、M31E、M41E、M32E、M42E、M6E~M8E、M101E、M102Eの導電型を逆にした点である。また、第1実施形態と第5実施形態とで異なる点は、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にした点である。
【0074】
第2~第4実施形態についても同様に、トランジスタの導電型を逆にし、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にしてもよい。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0076】
上述した第1~第5実施形態では、トランジスタが電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタの少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【符号の説明】
【0077】
1、1B、1C、1D、1E コンパレータ
2、2E 差動入力部
4、4C、4D、4E 分流回路
5、5B、5E 出力回路
31、31E フォールデッドカスコード部(第1のフォールデッドカスコード部)
32、32E フォールデッドカスコード部(第2のフォールデッドカスコード部)
INM 反転入力電位(第1の入力電位)
INP 非反転入力電位(第2の入力電位)
M1、M1E 差動トランジスタ(第1の差動トランジスタ)
M2、M2E 差動トランジスタ(第2の差動トランジスタ)
M31、M31E トランジスタ(第3のトランジスタ)
M41、M41E トランジスタ(第4のトランジスタ)
M32、M32E トランジスタ(第5のトランジスタ)
M42、M42E トランジスタ(第6のトランジスタ)
M101、M101E トランジスタ(第7のトランジスタ)
M102、M102E トランジスタ(第8のトランジスタ)
M101C トランジスタ(第9のトランジスタ)
M102C トランジスタ(第10のトランジスタ)
M6、M6E トランジスタ(第11のトランジスタ)
M7、M7E トランジスタ(第12のトランジスタ)
M8、M8E トランジスタ(第13のトランジスタ)
M9 トランジスタ(第14のトランジスタ)
R1、R1E 負荷抵抗器(第1の負荷抵抗器)
R2、R2E 負荷抵抗器(第2の負荷抵抗器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6