(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083888
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
H03K 5/08 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
H03K5/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197855
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039DA09
5J039KK00
5J039KK16
5J039KK18
5J039MM03
(57)【要約】
【課題】回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供する。
【解決手段】トランジスタM3は、差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されている。トランジスタM4は、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されている。トランジスタM7は、トランジスタM4がオン状態の場合に、トランジスタM4のドレイン電位の低下を制限する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電位及び第2の入力電位に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第4のトランジスタとを有するフォールデッドカスコード部と、
前記第4のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続されて出力信号を出力する出力回路とを備えたコンパレータであって、
前記フォールデッドカスコード部は、前記第4のトランジスタがオン状態の場合に、前記第4のトランジスタのドレイン電位又はコレクタ電位の上昇又は低下を制限する電圧クランプ素子を有する
コンパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンパレータであって、
前記電圧クランプ素子は、前記第4のトランジスタのドレイン電位又はコレクタ電位を、前記第3のトランジスタのドレイン電位又はコレクタ電位に応じた電圧にクランプする、
コンパレータ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンパレータであって、
前記電圧クランプ素子は、前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタと、前記第4のトランジスタのドレイン又はコレクタとの間にダイオード接続された第5のトランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【請求項4】
請求項3に記載のコンパレータであって、
前記フォールデッドカスコード部は、前記第5のトランジスタのゲート・ドレイン間又はベース・コレクタ間に接続された抵抗器を有する、
コンパレータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、前記第4のトランジスタのドレイン又はコレクタにゲート又はベースが接続された第6のトランジスタを有し、
前記第6のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータ。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、CO2のような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、半導体集積回路に幅広く使われるコンパレータは、応答速度と消費電流が主要な性能として挙げられる。コンパレータの応答速度と消費電流は反比例の関係にあることから、消費電流を増加させずに入力信号に対する応答特性を改善し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
半導体集積回路に用いられるコンパレータとして、
図4に示すような回路が知られている(例えば特許文献1など参照)。
図4に示されているコンパレータ100は、差動入力部102と、フォールデッドカスコード部103と、出力回路104を主たる構成要素として構成される。
【0004】
差動入力部102は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1,M2と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1,R2と、トランジスタM1,M2の共通ソースと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源21とにより構成されている。
【0005】
フォールデッドカスコード部103は、負荷抵抗器R1,R2と各々ソースが接続されたトランジスタM3,M4と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に各々接続された定電流源31,32と、ゲート及びドレインがトランジスタM4のドレインに接続され、ソースがトランジスタM4のゲートに接続されたトランジスタM5とを有している。フォールデッドカスコード部103においては、トランジスタM3とトランジスタM4とをカレントミラー接続して、トランジスタM4のドレインと定電流源32との接続ノードより、出力を取り出すように構成されている。
【0006】
また、トランジスタM5は、トランジスタM1に流れる電流よりもトランジスタM2に流れる電流が多い場合にオンして、トランジスタM6のゲート電位の上昇を抑制し、伝搬遅延時間が短縮されると共に、伝搬遅延時間の電源電圧依存性を改善させている(例えば、非特許文献1など参照)。
【0007】
出力回路104は、ゲートがフォールデッドカスコード部103の出力に接続され、ソースが負電源電圧VSSに接続されたトランジスタM6と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源41とからなり、トランジスタM6と定電流源41との接続ノードより、出力信号VOUTを取り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】吉田晴彦著 CMOSアナログIC回路の実務設計 CQ出版社 2010年 (p144、
図4.10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の構成を有する従来のコンパレータは、応答特性を改善するためには、回路電流を増加させないといけないという課題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコンパレータは、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
第1の入力電位及び第2の入力電位に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第4のトランジスタとを有するフォールデッドカスコード部と、
前記第4のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続されて出力信号を出力する出力回路とを備えたコンパレータであって、
前記フォールデッドカスコード部は、前記第4のトランジスタがオン状態の場合に、前記第4のトランジスタのドレイン電位又はコレクタ電位の上昇又は低下を制限する電圧クランプ素子を有する
コンパレータであること。
[2]
[1]に記載のコンパレータであって、
前記電圧クランプ素子は、前記第4のトランジスタのドレイン電位又はコレクタ電位を、前記第3のトランジスタのドレイン電位又はコレクタ電位に応じた電圧にクランプする、
コンパレータであること。
[3]
[2]に記載のコンパレータであって、
前記電圧クランプ素子は、前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタと、前記第4のトランジスタのドレイン又はコレクタとの間にダイオード接続された第5のトランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
[4]
[3]に記載のコンパレータであって、
前記フォールデッドカスコード部は、前記第5のトランジスタのゲート・ドレイン間又はベース・コレクタ間に接続された抵抗器を有する、
コンパレータであること。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、前記第4のトランジスタのドレイン又はコレクタにゲート又はベースが接続された第6のトランジスタを有し、
前記第6のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータであること。
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
[7]
[1]~[6]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供することができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
【
図4】
図4は、従来のコンパレータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態のコンパレータ1について
図1を参照して説明する。同図に示すように、コンパレータ1は、反転入力端子T11に入力された反転入力電位INM(=第1の入力電位)と非反転入力端子T12に入力された非反転入力電位INP(=第2の入力電位)とを比較し、その比較結果を出力端子T3から出力する。コンパレータ1は、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部3と、出力回路4とを備えている。
【0018】
差動入力部2は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1(=第1の差動トランジスタ)、差動トランジスタM2(=第2の差動トランジスタ)と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1、負荷抵抗器R2と、定電流源21とを備える。
【0019】
差動トランジスタM1,M2は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。差動トランジスタM1のゲートは、反転入力端子T11に接続され、差動トランジスタM2のゲートは、非反転入力端子T12に接続されている。差動トランジスタM1,M2のソースは共通接続され、定電流源21に接続されている。
【0020】
負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1に直列接続されている。詳しく説明すると、負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。負電源端子T22には負電源電圧VSSが供給されている。負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2に直列接続されている。詳しく説明すると、負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。
【0021】
定電流源21は、正電源端子T21と共通接続された差動トランジスタM1,M2のソースとの間に接続される。正電源端子T21には、正電源電圧VDDが供給されている。差動入力部2は、定電流源21が供給する定電流I1を差動トランジスタM1,M2に分流する。差動トランジスタM1,M2に流れる電流の電流比(分流比)は、反転入力端子T11に入力される反転入力電位INM、非反転入力端子T12に入力される非反転入力電位INPに応じた値となる。
【0022】
フォールデッドカスコード部3は、差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されるトランジスタM3(=第3のトランジスタ)と、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されるトランジスタM4(=第4のトランジスタ)と、トランジスタM4のドレイン電位をクランプするトランジスタM5,M7と、定電流源31,32とを備えている。トランジスタM3~M5,M7は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0023】
トランジスタM3は、ゲート・ドレインが接続されている。トランジスタM3は、ソースが負荷抵抗器R1と差動トランジスタM1のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源31に接続されている。トランジスタM4は、ゲートがトランジスタM3のゲート・ドレインに接続されている。トランジスタM4は、ソースが負荷抵抗器R2と差動トランジスタM2のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源32に接続されている。
【0024】
定電流源31は、トランジスタM3のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。定電流源32は、トランジスタM4のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0025】
トランジスタM5は、ゲート及びドレインがトランジスタM4のドレインと定電流源32との接続ノードAに接続され、ソースがトランジスタM3のゲート・ドレイン、トランジスタM4のゲートに接続されている。トランジスタM7(=第5のトランジスタ、電圧クランプ素子)は、ゲート及びドレインがトランジスタM3のドレインと定電流源31との接続ノードに接続され、ソースが接続ノードAに接続されている。すなわち、トランジスタM7は、トランジスタM3のドレイン、トランジスタM4のドレイン間にダイオード接続されている。
【0026】
フォールデッドカスコード部3は、トランジスタM4のドレインと定電流源32との接続ノードAにより、出力を取り出すように構成されている。
【0027】
出力回路4は、トランジスタM6(=第6のトランジスタ)と、定電流源41とを備えている。トランジスタM6は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM6は、ゲートが接続ノードAに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインが定電流源41に接続されている。定電流源41は、トランジスタM6のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0028】
次に、上述した構成のコンパレータ1の動作について説明する。最初に、反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ負電源電圧VSSとなっている場合の動作について説明する。
【0029】
反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高い場合、差動トランジスタM1よりも差動トランジスタM2の方に定電流源21からの電流I1がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R1での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R2での電圧降下が増加する。
【0030】
そして、トランジスタM4のゲート・ソース電位差が、トランジスタM3のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM4がオフ状態となる。トランジスタM4がオフ状態となると、接続ノードAの電位は上昇する。接続ノードAの電位が上昇して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM6がオンする。この結果、出力端子T3の出力信号VOUTはLow状態となる。
【0031】
また、接合ノードAの電位が上昇して、トランジスタM5のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM5がオン状態となる。このため、接続ノードAの電位は、トランジスタM3のドレイン電位(=ゲート電位)にトランジスタM5のゲート・ソース間電位を加えた電圧でクランプされ、正電源電圧VDD付近まで上昇しない。
【0032】
次に、非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ正電源電圧VDDとなっている場合の動作について説明する。
【0033】
非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高い場合、差動トランジスタM2よりも差動トランジスタM1の方に定電流源21からの電流I1がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R2での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R1での電圧降下が増加する。
【0034】
そして、トランジスタM4のゲート・ソース電位差が、トランジスタM3のゲート・ソース電位差よりも大きくなり、トランジスタM4がオン状態となる。トランジスタM4がオン状態となると、接続ノードAの電位は低下する。接続ノードAの電位が低下して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM6がオフする。この結果、出力端子T3の出力信号VOUTはHigh状態となる。
【0035】
また、接続ノードAの電位が低下して、トランジスタM7のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM7がオン状態となる。このため、接続ノードAの電位は、トランジスタM3のドレイン電位(=ゲート電位)にトランジスタM7のゲート・ソース間電位を差し引いた電圧でクランプされ、負電源電圧VSS付近まで低下しない。
【0036】
上述したように出力信号VOUTがLow状態、トランジスタM4がオフ状態のときは、トランジスタM5の働きにより、トランジスタM6のゲート電位の上昇が抑えられている。このため、トランジスタM6がオンからオフするまでの時間を短くすることができるため、出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0037】
また、上述したように出力信号VOUTがHigh状態、トランジスタM4がオン状態のときは、トランジスタM7の働きにより、トランジスタM6のゲート電位の低下が抑えられている。このため、トランジスタM6がオフからオンするまでの時間を短くすることができるため、出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0038】
なお、トランジスタM6として、閾値電圧をトランジスタM3,M4の閾値電圧よりも低くすることで、トランジスタM6がオフ状態からオン状態に変化する時間をより一層短縮することができる。これにより、出力回路4の応答特性をさらに改善することができる。
【0039】
しかして、第1実施形態におけるコンパレータ1は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のコンパレータ1Bについて
図2を参照して説明する。なお、
図2において、
図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
コンパレータ1Bは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部3Bと、出力回路4とを備えている。差動入力部2、出力回路4は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0042】
第2実施形態のフォールデッドカスコード部3Bと第1実施形態のフォールデッドカスコード部3とで異なる点は、トランジスタM7のドレイン・ゲート間に抵抗器R3を設けた点である。
【0043】
第2実施形態のコンパレータ1Bは、後述する点を除けば、基本的には、第1実施形態と同様である。
【0044】
すなわち、第1実施形態においてトランジスタM4がオン状態の接続ノードAの電位は、トランジスタM7のゲート・ソース電位で電圧クランプされている。これに対して、第2実施形態においては、トランジスタM7のゲート・ソース間電位に加えて、定電流源31の電流と抵抗器R3による電圧降下が加算されるものとなっている。
【0045】
従って、トランジスタM4がオン状態のときの接続ノードAの電位は、抵抗器R3が接続されていない場合に比べて、高くなり、トランジスタM6がオフからオンに変化するまでの時間が短縮されるため、出力端子T3の出力信号VOUTがHihg状態からLow状態に変化する伝搬遅延時間が第1実施形態よりもさらに短縮される。
【0046】
しかして、第2実施形態におけるコンパレータ1Bは、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0047】
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のコンパレータ1Cについて
図3を参照して説明する。なお、
図3において、
図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
同図に示すように、コンパレータ1Cは、第1実施形態と同様に、差動入力部2Cと、フォールデッドカスコード部3Cと、出力回路4Cとを備えている。
【0050】
第1実施形態と第3実施形態とで異なる点は、トランジスタM1~M7に相当するトランジスタM1C~M7Cの導電型を逆にした点である。また、第1実施形態と第3実施形態とで異なる点は、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にした点である。
【0051】
第3実施形態においては、出力信号VOUTがHigh状態の場合、トランジスタM4Cがオフ状態となる。トランジスタM4Cのゲート・ソース電位差がトランジスタM3Cのゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM4Cがオフ状態となると、接合ノードAの電位が低下する。接合ノードAの電位が低下して、トランジスタM5Cのゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM5Cがオン状態となる。このため、接続ノードAの電位は、トランジスタM3Cのドレイン電位(=ゲート電位)にトランジスタM5Cのゲート・ソース電位を差し引いた電圧でクランプされ、負電源電圧VSS付近まで低下しない。
【0052】
これにより、トランジスタM6Cのオンからオフまでの時間を短くすることができため、出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0053】
一方、出力信号VOUTがLow状態の場合、トランジスタM4Cがオン状態となる。トランジスタM4Cのゲート・ソース電位差がトランジスタM3Cのゲート・ソース電位差よりも大きくなり、トランジスタM4Cがオン状態となると、接合ノードAの電位が上昇する。接合ノードAの電位が上昇して、トランジスタM7Cのゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM7Cがオン状態となる。このため、接続ノードAの電位は、トランジスタM3Cのドレイン電位(=ゲート電位)にトランジスタM7Cのゲート・ソース電位を加えた電圧でクランプされ、正電源電圧VDD付近まで上昇しない。
【0054】
これにより、トランジスタM6Cのオフからオンまでの時間を短くすることができため、出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0055】
第2実施形態についても同様に、トランジスタの導電型を逆にし、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にしてもよい。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0057】
上述した第1~第3実施形態では、トランジスタが電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタの少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1B、1C コンパレータ
2、2C 差動入力部
3、3B、3C フォールデッドカスコード部
4、4C 出力回路
INM 反転入力電位(第1の入力電位)
INP 非反転入力電位(第2の入力電位)
M1、M1C 差動トランジスタ(第1の差動トランジスタ)
M2、M2C 差動トランジスタ(第2の差動トランジスタ)
M3、M3C トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4、M4C トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5、M5C トランジスタ
M6、M6C トランジスタ(第6のトランジスタ)
M7、M7C トランジスタ(第5のトランジスタ、電圧クランプ素子)
R3 抵抗器