IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コンパレータ 図1
  • 特開-コンパレータ 図2
  • 特開-コンパレータ 図3
  • 特開-コンパレータ 図4
  • 特開-コンパレータ 図5
  • 特開-コンパレータ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083889
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20230609BHJP
   H03F 1/22 20060101ALI20230609BHJP
   H03F 3/45 20060101ALN20230609BHJP
【FI】
H03K5/08 E
H03F1/22
H03F3/45 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197856
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5J039
5J500
【Fターム(参考)】
5J039DA09
5J039KK16
5J039KK18
5J039MM04
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC62
5J500AF11
5J500AH09
5J500AH25
5J500AK05
5J500AK47
5J500AM02
5J500AM17
5J500AM21
5J500DN01
5J500DN22
5J500DN23
5J500DP01
(57)【要約】
【課題】回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供する。
【解決手段】分流回路4が、負荷抵抗器R1に流れる電流よりも負荷抵抗器R2に流れる電流が多い場合、トランジスタM4に流れる電流を分流して負荷抵抗器R1に流すと共に、負荷抵抗器R2に流れる電流よりも負荷抵抗器R1に流れる電流が多い場合、トランジスタM3に流れ込む電流を分流して負荷抵抗器R2に流す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電位及び第2の入力電位に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタと、
前記第1の差動トランジスタに直列接続された第1の負荷抵抗器と、
前記第2の差動トランジスタに直列接続された第2の負荷抵抗器とを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第4のトランジスタとを有し、前記第3のトランジスタが第1の出力段を構成し、前記第4のトランジスタが第2の出力段を構成するフォールデッドカスコード部と、
前記第1の出力段及び前記第2の出力段の出力に接続されて出力信号を出力する出力回路とを備えたコンパレータであって、
前記第1の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第2の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第4のトランジスタに流れる電流を分流して前記第1の負荷抵抗器に流すと共に、前記第2の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第1の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第3のトランジスタに流れる電流を分流して前記第2の負荷抵抗器に流す分流回路を有する、
コンパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタのゲートに接続された第5のトランジスタを有する、
コンパレータ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタのゲートに接続された第6のトランジスタを有し、
前記第1の出力段の出力には、前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタと、前記第6のトランジスタのソース又はエミッタとが接続され、
前記第2の出力段の出力には、前記第5のトランジスタのソース又はエミッタと、前記第6のトランジスタのドレイン又はコレクタとが接続された、
コンパレータ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記フォールデッドカスコード部は、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの共通接続されたゲート又はベースと、電源電圧との間に接続された第3の抵抗器を有する、
コンパレータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第1の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第7のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第8のトランジスタと、
前記第8のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第7のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第9のトランジスタとを有し、
前記第8のトランジスタと前記第9のトランジスタの接続点から前記出力信号を出力する、
コンパレータ。
【請求項6】
請求項5に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第7のトランジスタと直列接続され、ゲートが前記第8のトランジスタと前記第9のトランジスタの接続点に接続された第10のトランジスタを有する、
コンパレータ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のコンパレータであって、
前記第7のトランジスタ及び前記第8のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ、前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、COのような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、半導体集積回路に幅広く使われるコンパレータは、応答速度と消費電流が主要な性能として挙げられる。コンパレータの応答速度と消費電流は反比例の関係にあることから、消費電流を増加させずに入力信号に対する応答特性を改善し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
半導体集積回路に用いられるコンパレータとして、図6に示すような回路が知られている(例えば特許文献1など参照)。図6に示されているコンパレータ100は、差動入力部102と、フォールデッドカスコード部103と、出力回路105を主たる構成要素として構成される。
【0004】
差動入力部102は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1,M2と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1,R2と、トランジスタM1,M2の共通ソースと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源21とにより構成されている。
【0005】
フォールデッドカスコード部103は、負荷抵抗器R1,R2と各々ソースが接続されたトランジスタM3,M4と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に各々接続された定電流源31,32と、ゲート及びドレインがトランジスタM4のドレインに接続され、ソースがトランジスタM4のゲートに接続されたトランジスタM5とを有している。フォールデッドカスコード部103においては、トランジスタM3とトランジスタM4とをカレントミラー接続して、トランジスタM4のドレインと定電流源32との接続ノードより、出力を取り出すように構成されている。
【0006】
また、トランジスタM5は、トランジスタM6のゲート電位の上昇を抑制し、伝搬遅延時間が短縮されると共に、伝搬遅延時間の電源電圧依存性を改善させている(例えば、非特許文献1など参照)。
【0007】
出力回路105は、ゲートがフォールデッドカスコード部103の出力に接続され、ソースが負電源電圧VSSに接続されたトランジスタM6と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源51とからなり、トランジスタM6と定電流源51との接続ノードより、出力信号VOUTを取り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4677284号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】吉田晴彦著 CMOSアナログIC回路の実務設計 CQ出版社 2010年 (p144、図4.10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の構成を有する従来のコンパレータは、応答特性を改善するためには、回路電流を増加させないといけないという課題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコンパレータは、下記[1]~[9]を特徴としている。
[1]
第1の入力電位及び第2の入力電位に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタと、
前記第1の差動トランジスタに直列接続された第1の負荷抵抗器と、
前記第2の差動トランジスタに直列接続された第2の負荷抵抗器とを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第4のトランジスタとを有し、前記第3のトランジスタが第1の出力段を構成し、前記第4のトランジスタが第2の出力段を構成するフォールデッドカスコード部と、
前記第1の出力段及び前記第2の出力段の出力に接続されて出力信号を出力する出力回路とを備えたコンパレータであって、
前記第1の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第2の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第4のトランジスタに流れる電流を分流して前記第1の負荷抵抗器に流すと共に、前記第2の負荷抵抗器に流れる電流よりも前記第1の負荷抵抗器に流れる電流が多い場合、前記第3のトランジスタに流れる電流を分流して前記第2の負荷抵抗器に流す分流回路を有する、
コンパレータであること。
[2]
[1]に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタのゲートに接続された第5のトランジスタを有する、
コンパレータであること。
[3]
[2]に記載のコンパレータであって、
前記分流回路は、
前記第1の出力段の出力と前記第2の出力段の出力との間に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタのゲートに接続された第6のトランジスタを有し、
前記第1の出力段の出力には、前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタと、前記第6のトランジスタのソース又はエミッタとが接続され、
前記第2の出力段の出力には、前記第5のトランジスタのソース又はエミッタと、前記第6のトランジスタのドレイン又はコレクタとが接続された、
コンパレータであること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記フォールデッドカスコード部は、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの共通接続されたゲート又はベースと、電源電圧との間に接続された第3の抵抗器を有する、
コンパレータであること。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第1の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第7のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第8のトランジスタと、
前記第8のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第7のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第9のトランジスタとを有し、
前記第8のトランジスタと前記第9のトランジスタの接続点から前記出力信号を出力する、
コンパレータであること。
[6]
[5]に記載のコンパレータであって、
前記出力回路は、
前記第7のトランジスタと直列接続され、ゲートが前記第8のトランジスタと前記第9のトランジスタの接続点に接続された第10のトランジスタを有する、
コンパレータであること。
[7]
[5]又は[6]に記載のコンパレータであって、
前記第7のトランジスタ及び前記第8のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ、前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータであること。
[8]
[1]~[7]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
[9]
[1]~[8]の何れか1項に記載のコンパレータであって、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図3図3は、第3実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図4図4は、第4実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図5図5は、第5実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図6図6は、従来のコンパレータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態のコンパレータ1について図1を参照して説明する。同図に示すように、コンパレータ1は、反転入力端子T11に入力された反転入力電位INM(=第1の入力電位)と非反転入力端子T12に入力された非反転入力電位INP(=第2の入力電位)とを比較し、その比較結果を出力端子T3から出力する。コンパレータ1は、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部3と、分流回路4と、出力回路5とを備えている。
【0018】
差動入力部2は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1(=第1の差動トランジスタ)、差動トランジスタM2(=第2の差動トランジスタ)と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1(=第1の負荷抵抗器)、負荷抵抗器R2(=第2の負荷抵抗器)と、定電流源21とを備える。
【0019】
差動トランジスタM1,M2は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。差動トランジスタM1のゲートは、反転入力端子T11に接続され、差動トランジスタM2のゲートは、非反転入力端子T12に接続されている。差動トランジスタM1,M2のソースは共通接続され、定電流源21に接続されている。
【0020】
負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1に直列接続されている。詳しく説明すると、負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。負電源端子T22には負電源電圧VSSが供給されている。負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2に直列接続されている。詳しく説明すると、負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。
【0021】
定電流源21は、正電源端子T21と共通接続された差動トランジスタM1,M2のソースとの間に接続される。正電源端子T21には、正電源電圧VDDが供給されている。差動入力部2は、定電流源21が供給する定電流I1を差動トランジスタM1,M2に分流する。差動トランジスタM1,M2に流れる電流の電流比(分流比)は、反転入力端子T11に入力される反転入力電位INM、非反転入力端子T12に入力される非反転入力電位INPに応じた値となる。
【0022】
フォールデッドカスコード部3は、差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されたトランジスタM3(=第3のトランジスタ)と、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されたトランジスタM4(=第4のトランジスタ)と、抵抗器R3,R4と、定電流源31,32とを備えている。トランジスタM3,M4は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0023】
トランジスタM3は、ゲート・ドレイン間に抵抗器R3が接続されている。トランジスタM3は、ソースが負荷抵抗器R1と差動トランジスタM1のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源31に接続されている。トランジスタM4は、ゲートがトランジスタM3のゲートに接続され、ゲート・ドレイン間に抵抗器R4が接続されている。トランジスタM4は、ソースが負荷抵抗器R2と差動トランジスタM2のドレインとの接続点に接続され、ドレインが定電流源32に接続されている。
【0024】
定電流源31は、トランジスタM3のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。定電流源32は、トランジスタM4のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0025】
フォールデッドカスコード部3は、第1の出力段を構成するトランジスタM3のドレインと定電流源31との接続ノードA、及び第2の出力段を構成するトランジスタM4のドレインと定電流源32との接続ノードBより、出力を取り出すように構成されている。
【0026】
分流回路4は、負荷抵抗器R1に流れる電流よりも負荷抵抗器R2に流れる電流が多い場合、トランジスタM4に流れる電流を分流して負荷抵抗器R1に流す回路である。また、分流回路4は、負荷抵抗器R2に流れる電流よりも負荷抵抗器R1に流れる電流が多い場合、トランジスタM3に流れる電流を分流して負荷抵抗器R2に流す回路である。
【0027】
分流回路4は、トランジスタM91(=第5のトランジスタ),トランジスタM92(=第6のトランジスタ)を有している。トランジスタM91,M92は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM91は、ソースが接続ノードBに接続され、ドレインが接続ノードAに接続され、ゲートがトランジスタM3,M4のゲートに接続されている。トランジスタM92は、ソースが接続ノードAに接続され、ドレインが接続ノードBに接続され、ゲートがトランジスタM3,M4のゲートに接続されている。
【0028】
出力回路5は、トランジスタM5~M7と、定電流源51とを備えている。トランジスタM5,M6は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM5(=第8のトランジスタ)は、ゲートが接続ノードBに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインがトランジスタM7のドレイン及び出力端子T3に接続されている。トランジスタM6(=第7のトランジスタ)は、ゲートが接続ノードAに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインが定電流源51に接続されている。
【0029】
トランジスタM7(=第9のトランジスタ)は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM7は、トランジスタM5に直列接続されている。詳しく説明すると、トランジスタM7は、ゲートがトランジスタM6のドレインと定電流源51との接続点に接続され、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタM5のドレイン及び出力端子T3に接続されている。定電流源51は、正電源端子T21とトランジスタM6のドレインとの間に接続されている。
【0030】
次に、上述した構成のコンパレータ1の動作について説明する。最初に、反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ負電源電圧VSSとなっている場合の動作について説明する。
【0031】
反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高い場合、差動トランジスタM1よりも差動トランジスタM2の方に定電流源21からの電流I1がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R1での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R2での電圧降下が増加する。
【0032】
そして、トランジスタM4のゲート・ソース電位差が、トランジスタM3のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM3がオン状態となり、トランジスタM4がオフ状態となる。トランジスタM3がオン状態となると、接続ノードAの電位は低下する。接続ノードAの電位が低下して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM6がオフする。一方、トランジスタM4がオフ状態となると、接続ノードBの電位は上昇する。接続ノードBの電位が上昇して、トランジスタM5のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM5がオンする。
【0033】
トランジスタM6がオフすると、トランジスタM6のドレイン電位が上昇する。トランジスタM6のドレイン電位が上昇すると、それに伴いトランジスタM7のゲート電位が上昇し、トランジスタM7がオフする。この結果、出力端子T3の出力信号VOUTはLow状態となる。
【0034】
また、接続ノードAの電位が低下し、接続ノードBの電位が上昇すると、トランジスタM91がオン状態となる。これにより、定電流源32からの電流の一部がトランジスタM91のソースからドレインに流れ、トランジスタM3に流れ込み、負荷抵抗器R1に流れる電流を増加させる。また、定電流源32からの電流の一部がトランジスタM92の逆方向での動作によりドレインからソースに流れ、トランジスタM3に流れ込み、負荷抵抗器R1に流れる電流を増加させる。これにより、接続ノードAの電位が、トランジスタM91,M92が接続されていない場合に比べて高くなり、負電源電圧VSS近くまで低下するのを抑制することができる。
【0035】
また、出力信号VOUTがLow状態のとき、トランジスタM91は、接続ノードBの電位をトランジスタM3,M4のゲート電位にトランジスタM91のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプさせる。これにより、接続ノードBの電位は正電源電圧VDD付近まで上昇しない。なお、トランジスタM3,M4のゲート電位は、抵抗器R3,R4の働きにより、接合ノードAの電位と接合ノードBの電位の中間電圧となる。
【0036】
次に、非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ正電源電圧VDDとなっている場合の動作について説明する。
【0037】
非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高い場合、差動トランジスタM2よりも差動トランジスタM1の方に定電流源21からの電流I1がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R2での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R1での電圧降下が増加する。
【0038】
そして、トランジスタM3のゲート・ソース電位差が、トランジスタM4のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM4がオン状態となり、トランジスタM3がオフ状態となる。トランジスタM4がオン状態となると、接続ノードBの電位は低下する。接続ノードBの電位が低下して、トランジスタM5のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM5がオフする。上述したように出力信号VOUTがLow状態のとき、接続ノードBの電位は、トランジスタM91のクランプにより、上昇が抑制されているため、トランジスタM5がオンからオフするまでの時間を短くすることができる。
【0039】
また、トランジスタM3がオフ状態となると、接続ノードAの電位は上昇する。接続ノードAの電位が上昇して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM6がオンする。上述したように出力信号VOUTがLow状態のとき、トランジスタM6のゲート電位は、定電流源32からの電流の一部が負荷抵抗器R1に流れ込むことにより、低下が抑制されているため、トランジスタM6がオフからオンするまでの時間を短くすることができる。
【0040】
トランジスタM6がオンすると、トランジスタM6のドレイン電位が低下する。トランジスタM6のドレイン電位が低下すると、それに伴いトランジスタM7のゲート電位が低下し、トランジスタM7がオンする。この結果、出力端子T3の出力信号VOUTはHigh状態となる。上述したようにトランジスタM5がオンからオフ、トランジスタM6がオフからオンするまでの時間を短くすることができるため、出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に反転するまでの応答速度を早くすることができる。
【0041】
上述したように接続ノードAの電位が上昇し、接続ノードBの電位が低下すると、トランジスタM92がオン状態となる。これにより、定電流源31からの電流の一部がトランジスタM92のソースからドレインに流れ、トランジスタM4に流れ込み、負荷抵抗器R2に流れる電流を増加させる。また、定電流源31からの電流の一部がトランジスタM91の逆方向での動作によりドレインからソースに流れ、トランジスタM4に流れ込み、負荷抵抗器R2に流れる電流を増加させる。これにより、接続ノードBの電位は、トランジスタM91,M92がない場合に比べて高くなり、負電源電圧VSS近くまで低下するのを抑制することができる。
【0042】
また、出力信号VOUTがHigh状態のとき、トランジスタM92は、接続ノードAの電位をトランジスタM3,M4のゲート電位にトランジスタM92のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプさせる。これにより、接続ノードAの電位は正電源電圧VDD近くまで上昇しない。
【0043】
上述したように出力信号VOUTがHigh状態の間、トランジスタM5のゲート電位の低下、トランジスタM6のゲート電位の上昇を抑制することができる。このため、出力信号がLow状態に反転する際、トランジスタM5がオフからオン、トランジスタM6がオンからオフとなる時間を短くすることができ、出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に反転する応答速度を早くすることができる。
【0044】
なお、トランジスタM5,M6として、閾値電圧をトランジスタM3、M4の閾値電圧よりも低くすることで、トランジスタM5,M6がオフ状態からオン状態に変化する時間をより一層短縮することができる。これにより、出力回路5の応答特性をさらに改善することができる。
【0045】
しかして、第1実施形態におけるコンパレータ1は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のコンパレータ1Bについて図2を参照して説明する。なお、図2において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
コンパレータ1Bは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部3と、分流回路4と、出力回路5Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部3、分流回路4は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0048】
出力回路5Bは、トランジスタM5~M8を有している。第2実施形態の出力回路5Bは、第1実施形態の定電流源51をトランジスタM8(=第10のトランジスタ)に置き換えている。トランジスタM8は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM8は、ゲートが出力端子T3に接続され、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタM6のドレインに接続される。
【0049】
第2実施形態のコンパレータ1Bは、後述する点を除けば、基本的には第1の実施形態と同様である。
【0050】
すなわち、第1実施形態においては、トランジスタM6がオン状態のときに、トランジスタM6のドレイン電流が定常電流として流れ続ける。これに対して、第2の実施形態においては、トランジスタM6がオン状態のときにトランジスタM7がオン状態となり、トランジスタM8のゲート電位が上昇する。トランジスタM8のゲート電位が上昇すると、トランジスタM8がオフ状態になるため、トランジスタM6がオン状態のときにドレイン電流が定常電流として流れない。
【0051】
したがって、この第2実施形態におけるコンパレータ1Bは、消費電流が低減されると共に、応答特性を改善するという効果が得られるものとなっている。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のコンパレータ1Cについて図3を参照して説明する。なお、図3において、図1及び図2に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
コンパレータ1Cは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部3Cと、分流回路4と、出力回路5Bとを備えている。差動入力部2、分流回路4は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。出力回路5Bは、上述した第2実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0054】
第1実施形態のフォールデッドカスコード部3と第3実施形態のフォールデッドカスコード部3Cとで異なる点は、抵抗器R5(=第3の抵抗器)が設けられている点である。抵抗器R5は、トランジスタM3,M4のゲートと負電源端子T22との間に接続されている。
【0055】
第3実施形態のコンパレータ1Cは、後述する点を除けば、基本的には第2の実施形態と同様である。
【0056】
第1実施形態においては、トランジスタM3,M4のドレイン電位の変化がトランジスタM3,M4のゲート・ドレイン間寄生容量を介して、ノイズとしてトランジスタM3,M4のゲートに伝搬する。第3実施形態において、抵抗器R5を接続することで、トランジスタM3,M4のゲート電位の変動が抑制され、回路動作が安定し伝番遅延時間も改善される。
【0057】
従って、第3実施形態のコンパレータ1Cは、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善するという効果が得られるものになっている。
【0058】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のコンパレータ1Dについて図4を参照して説明する。なお、図4において、図1図2及び図3に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
コンパレータ1Dは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部3Cと、分流回路4Dと、出力回路5Bとを備えている。差動入力部2は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。フォールデッドカスコード部3Cは、上述した第3実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。出力回路5Bは、上述した第2実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
第1実施形態の分流回路4と第4実施形態の分流回路4Dとで異なる点は、分流回路4Dが、トランジスタM91のみから構成され、トランジスタM92が設けられていない点である。
【0061】
第4実施形態においては、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態のときに、定電流源32からの電流の一部がトランジスタM91のソースからドレインに流れた後、トランジスタM3のドレインに流れ込み、負荷抵抗器R1に流れる電流を増加させる。また、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態のときに、定電流源31からの電流の一部がトランジスタM91のドレインからソースに流れた後、トランジスタM4のドレインに流れ込み、負荷抵抗器R2に流れる電流を増加させる。
【0062】
また、トランジスタM91は、接続ノードAの電位をトランジスタM3,M4のゲート電位にトランジスタM91のゲート・ドレイン電位差を加えた電圧でクランプさせ、接続ノードBの電位をトランジスタM3,M4のゲート電位にトランジスタM91のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプさせることで、正電源電圧VDD付近まで上昇させない。
【0063】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態のコンパレータ1Eについて図5を参照して説明する。なお、図5において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
同図に示すように、コンパレータ1Eは、第1実施形態と同様に、差動入力部2Eと、フォールデッドカスコード部3Eと、分流回路4Eと、出力回路5Eとを備えている。
【0065】
第1実施形態と第5実施形態とで異なる点は、トランジスタM1~M7、M91、M92に相当するトランジスタM1E~M7E、M91E、M92Eの導電型を逆にした点である。また、第1実施形態と第5実施形態とで異なる点は、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にした点である。
【0066】
第2~第4実施形態についても同様に、トランジスタの導電型を逆にし、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にしてもよい。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0068】
上述した第1~第5実施形態では、トランジスタが電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタの少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【符号の説明】
【0069】
1、1B、1C、1D、1E コンパレータ
2、2E 差動入力部
3、3C、3E フォールデッドカスコード部
4、4D、4E 分流回路
5、5B、5E 出力回路
A 接続ノード(第1の出力段の出力)
B 接続ノード(第2の出力段の出力)
INM 反転入力電位(第1の入力電位)
INP 非反転入力電位(第2の入力電位)
M1、M1E 差動トランジスタ(第1の差動トランジスタ)
M2、M2E 差動トランジスタ(第2の差動トランジスタ)
M3、M3E トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4、M4E トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5、M5E トランジスタ(第8のトランジスタ)
M6、M6E トランジスタ(第7のトランジスタ)
M7、M7E トランジスタ(第9のトランジスタ)
M8 トランジスタ(第10のトランジスタ)
M91、M91E トランジスタ(第5のトランジスタ)
M92、M92E トランジスタ(第6のトランジスタ)
R1、R1E 負荷抵抗器(第1の負荷抵抗器)
R2、R2E 負荷抵抗器(第2の負荷抵抗器)
R5 負荷抵抗器(第3の抵抗器)
VOUT 出力信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6