(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008390
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H01L21/306 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111926
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫太郎
(72)【発明者】
【氏名】立花 康三
(72)【発明者】
【氏名】中森 光則
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA26
5F043BB15
5F043DD10
5F043DD13
5F043DD14
5F043DD25
5F043EE07
5F043EE08
(57)【要約】
【課題】基板上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による基板処理装置は、基板保持部と、処理液供給部と、陽極および陰極と、制御部と、を備える。基板保持部は、基板を保持する。処理液供給部は、基板保持部に保持される基板に処理液を供給する。陽極および陰極は、処理液供給部から供給される処理液に電圧を印加する。制御部は、各部を制御する。処理液供給部は、基板上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に処理液を吐出可能である。陽極は、1つの箇所の処理液と接触するように配置されている。陰極は、別の箇所の処理液と接触するように配置されている。制御部は、陽極と陰極との間を流れる電流値に基づいて、陽極と陰極との間の電圧値を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持される前記基板に処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液供給部から供給される前記処理液に電圧を印加する陽極および陰極と、
各部を制御する制御部と、
を備え、
前記処理液供給部は、前記基板上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に前記処理液を吐出可能であり、
前記陽極は、1つの前記箇所の前記処理液と接触するように配置されており、
前記陰極は、別の前記箇所の前記処理液と接触するように配置されており、
前記制御部は、前記陽極と前記陰極との間を流れる電流値に基づいて、前記陽極と前記陰極との間の電圧値を制御する
基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、前記電流値が処理開始時の電流値よりも低い所与の第1しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、前記電流値が処理開始時の電流値よりも高い所与の第2しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、前記電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値よりも低い所与の第3しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、前記電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値よりも高い所与の第4しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項1または3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板保持部は、保持された前記基板を回転させる基板回転機構を有し、
前記制御部は、前記基板回転機構により前記基板を回転させながら、複数の前記箇所が前記基板の周縁部となるよう前記処理液の吐出位置を制御する
請求項1~5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部に保持される前記基板上に形成される膜の膜厚を測定可能である光学測定器、をさらに備え、
前記制御部は、前記光学測定器で測定される前記膜の膜厚に基づいて、前記基板に対する処理が正常に行われているか否かを判定する
請求項1~6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部に保持される前記基板上に形成される膜を撮像可能である撮像装置、をさらに備え、
前記制御部は、前記撮像装置で撮像される前記膜の画像から求められる前記膜の膜厚に基づいて、前記基板に対する処理が正常に行われているか否かを判定する
請求項1~7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理液供給部は、
前記陽極に接続される前記処理液を前記基板上に吐出する第1ノズルと、
前記陰極に接続される前記処理液を前記基板上に吐出する第2ノズルと、
前記第1ノズルから吐出される前記処理液と前記第2ノズルから吐出される前記処理液との間を絶縁する絶縁流体を前記基板上に吐出する第3ノズルと、を有する
請求項1~8のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に処理液を吐出する工程と、
前記基板上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に吐出される前記処理液同士の間に陽極および陰極で電圧を印加する工程と、
前記陽極と前記陰極との間を流れる電流値を測定する工程と、
前記電流値に基づいて、前記陽極と前記陰極との間の電圧値を制御する工程と、
を含む基板処理方法。
【請求項11】
前記制御する工程は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、前記電流値が処理開始時の電流値よりも低い所与の第1しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記制御する工程は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、前記電流値が処理開始時の電流値よりも高い所与の第2しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記制御する工程は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、前記電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値よりも低い所与の第3しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項10または11に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記制御する工程は、前記基板上に形成され処理液に接触する膜の抵抗値が、前記膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、前記電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値よりも高い所与の第4しきい値となったときに、前記電圧値を低下させる
請求項10または12に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記制御する工程は、前記基板上に形成される膜を撮像可能である撮像装置で撮像される前記膜の画像から求められる前記膜の膜厚に基づいて、前記基板に対する処理が正常に行われているか否かを判定する
請求項10~14のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ(以下、ウェハとも呼称する。)などの基板上に形成されたルテニウム(Ru)膜などの貴金属膜をエッチングする技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、基板保持部と、処理液供給部と、陽極および陰極と、制御部と、を備える。基板保持部は、基板を保持する。処理液供給部は、前記基板保持部に保持される前記基板に処理液を供給する。陽極および陰極は、前記処理液供給部から供給される前記処理液に電圧を印加する。制御部は、各部を制御する。前記処理液供給部は、前記基板上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に前記処理液を吐出可能である。前記陽極は、1つの前記箇所の前記処理液と接触するように配置されている。前記陰極は、別の前記箇所の前記処理液と接触するように配置されている。前記制御部は、前記陽極と前記陰極との間を流れる電流値に基づいて、前記陽極と前記陰極との間の電圧値を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、処理ユニットの具体的な構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るエッチング処理のメカニズムを説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るエッチング処理の良否について示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るエッチング処理における電圧値および電流値の推移の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るエッチング処理の初期段階における電圧値と電流値との関係について示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るエッチング処理の電圧値および電流値の推移の別の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るエッチング処理における電圧値、電流値および電流値の時間微分値の推移の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るエッチング処理における電圧値、電流値および電流値の時間微分値の推移の別の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の変形例1に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例2に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例3に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例4に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態の変形例5に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態の変形例6に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態の変形例7に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例8に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態の変形例9に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態の変形例10に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態の変形例11に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態の変形例12に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態の変形例13に係る処理ユニット内の処理液供給部および電圧印加部の構成を示す図である。
【
図24】
図24は、実施形態に係る基板処理システムが実行する基板処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理装置および基板処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0009】
従来、半導体ウェハ(以下、ウェハとも呼称する。)などの基板上に形成されたルテニウム(Ru)膜などの貴金属膜をエッチングする技術が知られている。しかしながら、従来技術には、基板上に形成された貴金属膜のみを精度よくエッチングするうえで更なる改善の余地があった。
【0010】
そこで、上述の問題点を克服し、基板上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる技術の実現が期待されている。
【0011】
<基板処理システムの概要>
最初に、
図1を参照しながら、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成について説明する。
図1は、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成を示す図である。なお、基板処理システム1は、基板処理装置の一例である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0012】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0013】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウェハW(以下、ウェハWと呼称する。)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0014】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0015】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0016】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0017】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して所定の基板処理を行う。
【0018】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0019】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0020】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0021】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0022】
<処理ユニットの構成>
次に、処理ユニット16の構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、処理ユニット16の具体的な構成例を示す模式図である。
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持部30と、処理液供給部40と、回収カップ50とを備える。また、詳細は後述するが、処理ユニット16は、さらに電圧印加部60(
図3参照)を備える。
【0023】
チャンバ20は、基板保持部30と、処理液供給部40と、回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0024】
基板保持部30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備え、ウェハWを保持して回転させる。駆動部33は、基板回転機構の一例である。保持部31は、ウェハWの底面を吸着して、かかるウェハWを水平に保持する。
【0025】
支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。
【0026】
かかる基板保持部30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
【0027】
処理液供給部40は、ウェハWの周縁部Waなどに対して処理液L(
図3参照)を供給する。処理液供給部40は、複数(ここでは2つ)のノズル41a、41bと、かかるノズル41a、41bをそれぞれ水平に支持するアーム42a、42bと、アーム42a、42bをそれぞれ旋回および昇降させる旋回昇降機構43a、43bとを備える。
【0028】
ノズル41aは、第1ノズルの一例であり、バルブ44aおよび流量調整器45aを介して処理液供給源46に接続される。また、ノズル41bは、第2ノズルの一例であり、バルブ44bおよび流量調整器45bを介して処理液供給源46に接続される。
【0029】
処理液供給源46から供給される処理液Lは、酸性水溶液、中性水溶液またはアルカリ性水溶液である。この処理液Lとして用いられる酸性水溶液は、塩酸(HCl)や硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)などである。また、処理液Lとして用いられる中性水溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液や塩化カリウム(KCl)水溶液などである。
【0030】
また、処理液Lとして用いられるアルカリ性水溶液は、TMAH(TetraMethylAmmonium Hydroxide)や水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液、アンモニア(NH3)水溶液などである。
【0031】
なお、処理液Lは、電解質を含む有機溶媒(たとえば、アルコールや炭化水素などの有機溶媒に過塩素酸塩などの塩が含有した液体)であってもよい。
【0032】
ノズル41aおよびノズル41bは、処理液供給源46より供給される処理液LをウェハWの周縁部Waにおける所定の箇所に個別に吐出する。
【0033】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液Lを捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液Lは、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0034】
<処理液供給部および電圧印加部の構成>
次に、実施形態に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成について、
図3~
図10を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
【0035】
制御部18(
図1参照)は、
図3に示すように、処理液供給部40のノズル41aおよびノズル41bを用いて、回転中のウェハWの周縁部Waにおいてそれぞれ位置が異なる箇所に処理液Lを吐出する。実施形態では、ノズル41aおよびノズル41bから吐出される処理液Lが、ウェハWの周縁部Waまで途切れることなく吐出される。
【0036】
また、実施形態に係る処理ユニット16は、ウェハWの周縁部Waに供給される処理液Lに電圧を印加する電圧印加部60を備える。かかる電圧印加部60は、陽極61と、陰極62と、可変直流電源63と、スイッチ64と、電流計65と、電圧計66とを有する。
【0037】
陽極61は、ノズル41aの内部に設けられ、ノズル41a内を通流する処理液Lに所定の正電圧を印加する。陰極62は、ノズル41bの内部に設けられ、ノズル41b内を通流する処理液Lに所定の負電圧を印加する。
【0038】
また、陽極61は可変直流電源63の正極側に接続され、陰極62は可変直流電源63の負極側にスイッチ64を介して接続される。制御部18は、かかるスイッチ64をオン状態に制御することにより、陽極61に所定の正電圧を印加することができるとともに、陰極62に所定の負電圧を印加することができる。
【0039】
電流計65は、たとえば、陽極61と可変直流電源63との間に設けられ、陽極61と陰極62との間に流れる電流値を測定する。電圧計66は、可変直流電源63の正極と負極との間に印加される電圧を測定する。
【0040】
そして、実施形態では、ノズル41aから吐出される処理液LがウェハWの周縁部Waまで途切れることなく吐出されることから、処理液Lを介してウェハWの周縁部Waまで所定の正電圧が印加される。
【0041】
同様に、実施形態では、ノズル41bから吐出される処理液LがウェハWの周縁部Waまで途切れることなく吐出されることから、処理液Lを介してウェハWの周縁部Waまで所定の負電圧が印加される。
【0042】
ここで、実施形態では、ノズル41aから吐出される処理液Lと、ノズル41bから吐出される処理液Lとが、回転中のウェハWの周縁部Waにおいてそれぞれ位置が異なる箇所に配置される。すなわち、回転中のウェハWの周縁部Waにおいて、ノズル41aから吐出される処理液Lと、ノズル41bから吐出される処理液Lとの間には、ギャップGが設けられる。
【0043】
かかるギャップGの効果について、
図4および
図5を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係るエッチング処理のメカニズムを説明するための図である。なお、
図4の例では、処理液Lに塩酸を用いるとともに、ウェハWの表面にルテニウム膜が形成されている場合について示す。
【0044】
図4に示すように、可変直流電源63の負極から陰極62に供給される電子によって、陰極62と処理液Lとの界面では処理液L中の水素イオン(H
+)の還元反応が生じる。
【0045】
また、陰極62に接する処理液LとウェハWとの界面では、陽極酸化によりルテニウムがイオン化して、かかるイオン化したルテニウム(Ru3+)が処理液Lに溶出する。これにより、ウェハWの表面に形成されるルテニウム膜が電気化学的にエッチングされることから、かかるルテニウム膜を効率よくエッチングすることができる。
【0046】
なお、かかる陽極酸化によって生じた電子は、ウェハWを介して陽極61と接する処理液Lに供給される。そして、かかる電子によって、ウェハWと陽極61に接する処理液Lとの界面では処理液L中の水素イオン(H+)の還元反応が生じる。
【0047】
また、陽極61と処理液Lとの界面では、処理液L中の塩素イオン(Cl-)の酸化反応が生じる。そして、かかる酸化反応によって生じた電子は、陽極61および可変直流電源63を介して陰極62に供給され、ここまで説明した各種の反応が繰り返される。
【0048】
ここで、もし仮に、ノズル41aから吐出される処理液Lとノズル41bから吐出される処理液Lとの間にギャップGが形成されていない場合、陰極62と接する処理液L内で生じた電子は、ウェハWよりもむしろ処理液Lを介して陽極61に供給される。
【0049】
なぜなら、ウェハWに形成されるルテニウム膜は膜厚が比較的薄い(数十nm程度)ことから、電気抵抗がかなり大きいため、処理液Lのほうが電子が流れやすいためである。
【0050】
これにより、陰極62に接する処理液LとウェハWとの界面において、ルテニウムが陽極酸化される割合が低くなる。すなわち、ギャップGが形成されていない場合、ルテニウム膜のエッチングレートを向上させることが困難である。
【0051】
しかしながら、実施形態では、ノズル41aから吐出される処理液Lとノズル41bから吐出される処理液Lとの間にギャップGが形成されることから、陰極62と処理液Lとの界面で生じた電子がウェハWを介して陽極61に供給される。これにより、ウェハW表面のルテニウムが陽極酸化される割合を高くすることができる。
【0052】
したがって、実施形態によれば、ギャップGを設けることにより、
図5に示すように、ウェハW上の貴金属膜(ここではルテニウム膜)を効率よくエッチングすることができる。
図5は、実施形態に係るエッチング処理の良否について示す図である。
【0053】
なお、上記の実施形態では、ルテニウム膜を塩酸で電気化学的にエッチングした例について示したが、実施形態に係るエッチング処理を施す貴金属膜はルテニウム膜に限られず、また用いられる処理液Lは塩酸に限られない。
【0054】
また、実施形態では、制御部18が、電圧印加部60を流れる電流値に基づいて、可変直流電源63の電圧値を制御する。かかる制御の詳細について、
図6を参照しながら説明する。
【0055】
図6は、実施形態に係るエッチング処理における電圧値および電流値の推移の一例を示す図である。なお、
図6の例は、エッチング処理の対象となる貴金属膜の抵抗値が、かかる貴金属膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合の例である。
【0056】
図6に示すように、実施形態では、制御部18(
図1参照)が、時間T0から、所与の電圧値V1を陽極61(
図3参照)と陰極62(
図3参照)との間に印加して、ウェハW(
図3参照)上の貴金属膜のエッチング処理を開始する。
【0057】
なお、この電圧値V1は、貴金属膜に対する十分なエッチングレートを確保することができる電圧値である。また、制御部18は、陽極61と陰極62との間に所与の電圧値V1で電圧を印加するため、電圧計66で測定される電圧値に基づいて可変直流電源63の出力をフィードバック制御する。
【0058】
そして、時間T0から電圧値V1で電圧を印加すると、陽極61と陰極62との間には、電流値I1で電流が流れ始める。一方で、ウェハW上の貴金属膜はエッチング処理で徐々に膜厚が薄くなることから、ウェハW表面の抵抗値が徐々に大きくなるため、陽極61と陰極62との間の電流値は電流値I1から徐々に小さくなる。
【0059】
そして、時間T1付近でウェハW上の貴金属膜が連続膜から島状膜に変化すると、ウェハW表面の抵抗値が急激に増加するため、陽極61と陰極62との間の電流値は急激に減少する。
【0060】
そして、陽極61と陰極62との間の電流値が時間T2で処理開始時の電流値I1よりも低い所与の電流値I2になると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を、電圧値V1よりも低い電圧値V2に変更する。電流値I2は、第1しきい値の一例であり、たとえば、初期値である電流値I1の50%の値である。
【0061】
また、変更後の電圧値V2は、たとえば、
図7に示す電圧値である。
図7は、実施形態に係るエッチング処理の初期段階における電圧値と電流値との関係について示す図である。
【0062】
図7に示すように、実施形態に係るエッチング処理において、電流値と電圧値とはすべての範囲で線型ではなく、特定のしきい電圧以上から急激に電流値が増加する。すなわち、実施形態に係るエッチング処理では、かかるしきい電圧よりも高い電圧を印加すると、エッチングレートが急激に増加するため、貴金属膜を効率よくエッチングすることができる。
【0063】
一方で、実施形態に係るエッチング処理では、このしきい電圧よりも高い電圧を印加すると、貴金属膜の直下に存在する下地層または基板層が誤ってエッチングされる恐れがある。
【0064】
そこで、実施形態では、あらかじめ
図7のようにエッチング処理の初期段階における電圧値と電流値との関係をプロットし、電流値が立ち上がるしきい電圧を変更後の電圧値V2として設定する。
【0065】
これにより、島状膜となった貴金属膜が高いエッチングレートで過剰にエッチングされ、下地層または基板層までエッチングされることを抑制することができる。さらに、実施形態では、島状膜となった貴金属膜を適度なエッチングレートでエッチングすることができることから、島状膜となった貴金属膜を過不足なくエッチング処理することができる。
【0066】
すなわち、実施形態では、電圧印加部60を流れる電流値に基づいて、可変直流電源63の電圧値を制御することにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0067】
また、実施形態では、陽極61と陰極62との間の電流値が処理開始時の電流値I1よりも低い所与の電流値I2となったときに、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V1から電圧値V2に低下させる。
【0068】
これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができるとともに、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0069】
図6の説明に戻る。時間T2以降も下がり続けた陽極61と陰極62との間の電流値は、時間T3付近で減少率が減少し、その後の電流値は徐々に減少する。
【0070】
そして、陽極61と陰極62との間の電流値が時間T4で処理開始時の電流値I1よりも低い所与の電流値I3になると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値をゼロに変更する。電流値I3は、たとえば、初期値である電流値I1の5%の値である。これにより、ウェハW上の貴金属膜が除去され、実施形態に係るエッチング処理が終了する。
【0071】
このように、実施形態では、陽極61と陰極62との間の電流値が処理開始時の電流値I1よりも低い所与の電流値I3となったときに、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V2からゼロに低下させる。これにより、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0072】
また、実施形態では、制御部18が駆動部33によりウェハWを回転させながら、処理液Lの吐出位置がウェハWの周縁部Waとなるよう処理液供給部40を制御するとよい。これにより、ウェハWをベベルエッチングすることができる。
【0073】
図8は、実施形態に係るエッチング処理の電圧値および電流値の推移の別の一例を示す図である。この
図8の例は、エッチング処理の対象となる貴金属膜の抵抗値が、かかる貴金属膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合の例である。
【0074】
図8に示すように、実施形態では、制御部18(
図1参照)が、時間T10から、所与の電圧値V1を陽極61(
図3参照)と陰極62(
図3参照)との間に印加して、ウェハW(
図3参照)上の貴金属膜のエッチング処理を開始する。
【0075】
そして、時間T10から電圧値V1で電圧を印加すると、陽極61と陰極62との間には、電流値I4で電流が流れ始める。一方で、ウェハW上の貴金属膜はエッチング処理で徐々に膜厚が薄くなることから、ウェハW表面の抵抗値が徐々に小さくなるため、陽極61と陰極62との間の電流値は電流値I4から徐々に大きくなる。
【0076】
そして、時間T11付近でウェハW上の貴金属膜が連続膜から島状膜に変化すると、ウェハW表面の抵抗値が急激に減少するため、陽極61と陰極62との間の電流値は急激に増加する。
【0077】
そして、陽極61と陰極62との間の電流値が時間T12で処理開始時の電流値I4よりも高い所与の電流値I5になると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を、電圧値V1よりも低い電圧値V2に変更する。電流値I5は、第2しきい値の一例であり、たとえば、初期値である電流値I4の2倍の値である。
【0078】
これにより、島状膜となった貴金属膜が高いエッチングレートで過剰にエッチングされ、下地層または基板層までエッチングされることを抑制することができる。さらに、
図8の例では、島状膜となった貴金属膜を適度なエッチングレートでエッチングすることができることから、島状膜となった貴金属膜を過不足なくエッチング処理することができる。
【0079】
すなわち、
図8の例では、電圧印加部60を流れる電流値に基づいて、可変直流電源63の電圧値を制御することにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0080】
また、
図8の例では、陽極61と陰極62との間の電流値が処理開始時の電流値I4よりも高い所与の電流値I5となったときに、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V1から電圧値V2に低下させる。
【0081】
これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができるとともに、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0082】
そして、時間T12以降も上がり続けた陽極61と陰極62との間の電流値は、時間T13付近で増加率が減少し、その後の電流値は徐々に増加する。
【0083】
そして、陽極61と陰極62との間の電流値が時間T14で処理開始時の電流値I4よりも高い所与の電流値I6になると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値をゼロに変更する。電流値I6は、たとえば、初期値である電流値I1の3倍の値である。これにより、ウェハW上の貴金属膜が除去され、実施形態に係るエッチング処理が終了する。
【0084】
このように、
図8の例では、陽極61と陰極62との間の電流値が処理開始時の電流値I4よりも高い所与の電流値I6となったときに、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V2からゼロに低下させる。これにより、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0085】
なお、ここまで示した例では、陽極61と陰極62との間の電流値が所与のしきい値以上またはしきい値以下になった場合に、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を制御する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。
【0086】
図9は、実施形態に係るエッチング処理の電圧値、電流値および電流値の時間微分値の推移の一例を示す図である。この
図9の例は、エッチング処理の対象となる貴金属膜の抵抗値が、かかる貴金属膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合の例である。
【0087】
図9に示すように、実施形態では、制御部18(
図1参照)が、時間T20から、所与の電圧値V1を陽極61(
図3参照)と陰極62(
図3参照)との間に印加して、ウェハW(
図3参照)上の貴金属膜のエッチング処理を開始する。
【0088】
そして、時間T20から電圧値V1で電圧を印加すると、陽極61と陰極62との間には、電流値I7で電流が流れ始める。一方で、ウェハW上の貴金属膜はエッチング処理で徐々に膜厚が薄くなることから、ウェハW表面の抵抗値が徐々に大きくなるため、陽極61と陰極62との間の電流値は電流値I7から徐々に小さくなる。
【0089】
そのため、
図9に示すように、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値は、負の時間微分値―d1でほぼ一定となる。
【0090】
そして、時間T21付近でウェハW上の貴金属膜が連続膜から島状膜に変化すると、ウェハW表面の抵抗値が急激に増加するため、陽極61と陰極62との間の電流値、および陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値は急激に減少する。
【0091】
そして、陽極61と陰極62との間の電流値の時間微分値が時間T22で処理開始時の時間微分値-d1よりも低い所与の時間微分値-d2になると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を、電圧値V1よりも低い電圧値V2に変更する。時間微分値-d2は、第3しきい値の一例であり、たとえば、-50(mA/s)程度である。
【0092】
これにより、島状膜となった貴金属膜が高いエッチングレートで過剰にエッチングされ、下地層または基板層までエッチングされることを抑制することができる。さらに、
図9の例では、島状膜となった貴金属膜を適度なエッチングレートでエッチングすることができることから、島状膜となった貴金属膜を過不足なくエッチング処理することができる。
【0093】
すなわち、
図9の例では、電圧印加部60を流れる電流値の時間微分値に基づいて、可変直流電源63の電圧値を制御することにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0094】
また、
図9の例では、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値-d1よりも低い所与の時間微分値-d2となったときに、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V1から電圧値V2に低下させる。
【0095】
これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができるとともに、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0096】
そして、時間T22以降も下がり続けた陽極61と陰極62との間の時間微分値は、時間T23付近で極小値に達し、その後の時間微分値は徐々に増加する。
【0097】
そして、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値が時間T24でゼロになると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値をゼロに変更する。これにより、ウェハW上の貴金属膜が除去され、実施形態に係るエッチング処理が終了する。
【0098】
このように、
図9の例では、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値がゼロとなった場合に、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V2からゼロに低下させる。これにより、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0099】
図10は、実施形態に係るエッチング処理の電圧値、電流値および電流値の時間微分値の推移の別の一例を示す図である。この
図10の例は、エッチング処理の対象となる貴金属膜の抵抗値が、かかる貴金属膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合の例である。
【0100】
図10に示すように、実施形態では、制御部18(
図1参照)が、時間T30から、所与の電圧値V1を陽極61(
図3参照)と陰極62(
図3参照)との間に印加して、ウェハW(
図3参照)上の貴金属膜のエッチング処理を開始する。
【0101】
そして、時間T30から電圧値V1で電圧を印加すると、陽極61と陰極62との間には、電流値I8で電流が流れ始める。一方で、ウェハW上の貴金属膜はエッチング処理で徐々に膜厚が薄くなることから、ウェハW表面の抵抗値が徐々に小さくなるため、陽極61と陰極62との間の電流値は電流値I7から徐々に大きくなる。
【0102】
そのため、
図10に示すように、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値は、正の時間微分値d3でほぼ一定となる。
【0103】
そして、時間T31付近でウェハW上の貴金属膜が連続膜から島状膜に変化すると、ウェハW表面の抵抗値が急激に減少するため、陽極61と陰極62との間の電流値、および陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値は急激に増加する。
【0104】
そして、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値が時間T32で処理開始時の時間微分値d3よりも高い所与の時間微分値d4になると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を、電圧値V1よりも低い電圧値V2に変更する。時間微分値d4は、第4しきい値の一例であり、たとえば、50(mA/s)程度である。
【0105】
これにより、島状膜となった貴金属膜が高いエッチングレートで過剰にエッチングされ、下地層または基板層までエッチングされることを抑制することができる。さらに、
図10の例では、島状膜となった貴金属膜を適度なエッチングレートでエッチングすることができることから、島状膜となった貴金属膜を過不足なくエッチング処理することができる。
【0106】
すなわち、
図10の例では、電圧印加部60を流れる電流値の時間微分値に基づいて、可変直流電源63の電圧値を制御することにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0107】
また、
図10の例では、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値d3よりも高い所与の時間微分値d4となったときに、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V1から電圧値V2に低下させる。
【0108】
これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができるとともに、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0109】
そして、時間T32以降も下がり続けた陽極61と陰極62との間の時間微分値は、時間T33付近で極大値に達し、その後の時間微分値は徐々に減少する。
【0110】
そして、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値が時間T34でゼロになると、制御部18は、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値をゼロに変更する。これにより、ウェハW上の貴金属膜が除去され、実施形態に係るエッチング処理が終了する。
【0111】
このように、
図10の例では、陽極61と陰極62との間における電流値の時間微分値がゼロとなった場合に、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値を電圧値V2からゼロに低下させる。これにより、貴金属膜の直下に存在する下地層等が誤ってエッチングされることを抑制することができる。
【0112】
<変形例1>
つづいて、実施形態の各種変形例について、
図11~
図23を参照しながら説明する。なお、以下の各種変形例において、実施形態と同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0113】
図11は、実施形態の変形例1に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図11に示すように、変形例1では、処理ユニット16に光学測定器70が別途設けられる点が実施形態と異なる。かかる光学測定器70は、ウェハW上に形成される膜の膜厚を測定可能であり、たとえば、エリプソメータである。
【0114】
光学測定器70は、たとえば、発光部71および受光部72を有し、発光部71からの出射光と、かかる出射光がウェハWの表面で反射し、受光部72で受光された反射光との偏光の変化量を波長ごとに計測することで、ウェハW上の貴金属膜の膜厚を計測する。
【0115】
そして、変形例1では、制御部18が、光学測定器70で測定される貴金属膜の膜厚に基づいて、ウェハWに対する処理が正常に行われているか否かを判定するとよい。たとえば、制御部18は、
図6で示した例において、陽極61と陰極62との間の電流値が電流値I3になった際に、光学測定器70によって測定された膜厚がゼロになっている場合には、電圧値をゼロにするとよい。
【0116】
一方で、制御部18は、
図6で示した例において、陽極61と陰極62との間の電流値が電流値I3になった際に、光学測定器70によって測定された膜厚がゼロになっていない場合には、電圧値を電圧値V2で維持し、エッチング処理を継続するとよい。
【0117】
さらにこの場合、制御部18は、光学測定器70によって測定された膜厚がゼロになったタイミングで、電圧値をゼロにするとよい。これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。
【0118】
また、変形例1では、処理液Lが吐出される部位から離れた部位(たとえば、処理液Lが吐出される部位の反対側)を光学測定器70で測定するとよい。これにより、処理液LがウェハW表面に付着していることに起因する貴金属膜の膜厚計側の誤差を低減することができることから、貴金属膜の膜厚を精度よく測定することができる。
【0119】
したがって、変形例1によれば、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。なお、この変形例1において、光学測定器70はエリプソメータに限られず、各種の膜厚測定器を用いることができる。
【0120】
<変形例2>
図12は、実施形態の変形例2に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図12に示すように、変形例2では、処理ユニット16に撮像装置75が別途設けられる点が実施形態と異なる。かかる撮像装置75は、ウェハW上に形成される膜を撮像可能である。
【0121】
また、変形例2では、制御部18が、撮像装置75で撮像される貴金属膜の画像に基づいて、かかる貴金属膜の膜厚を求めることができる。
【0122】
そして、変形例2では、制御部18が、貴金属膜の画像に基づいて求められる貴金属膜の膜厚に基づいて、ウェハWに対する処理が正常に行われているか否かを判定するとよい。たとえば、制御部18は、
図6で示した例において、陽極61と陰極62との間の電流値が電流値I3になった際に、貴金属膜の画像に基づいて求められる膜厚がゼロになっている場合には、電圧値をゼロにするとよい。
【0123】
一方で、制御部18は、
図6で示した例において、陽極61と陰極62との間の電流値が電流値I3になった際に、貴金属膜の画像に基づいて求められる膜厚がゼロになっていない場合には、電圧値を電圧値V2で維持し、エッチング処理を継続するとよい。
【0124】
さらにこの場合、制御部18は、貴金属膜の画像に基づいて求められる膜厚がゼロになったタイミングで、電圧値をゼロにするとよい。これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。
【0125】
また、変形例2では、処理液Lが吐出される部位から離れた部位(たとえば、処理液Lが吐出される部位の反対側)を撮像装置75で撮像するとよい。これにより、処理液LがウェハW表面に付着していることに起因する貴金属膜の膜厚計側の誤差を低減することができることから、貴金属膜の膜厚を精度よく測定することができる。
【0126】
したがって、変形例2によれば、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。
【0127】
<変形例3>
図13は、実施形態の変形例3に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。なお、以降の図面では、電圧印加部60の可変直流電源63やスイッチ64、電流計65、電圧計66の図示を省略する場合がある。
【0128】
図13に示すように、変形例3では、処理ユニット16にノズル80が別途設けられる点が実施形態と異なる。かかるノズル80は、第3ノズルの一例であり、DIW(脱イオン水)や酢酸ブチルなどの電気抵抗の高い絶縁流体Lxを、ノズル41aから吐出される処理液Lと、ノズル41bから吐出される処理液Lとの間に吐出する。
【0129】
変形例3では、このノズル80によって、ノズル41aから吐出される処理液Lとノズル41bから吐出される処理液Lとの間の絶縁状態を良好に維持することができる。したがって、変形例3によれば、ウェハW上の貴金属膜を効率よくエッチングすることができる。
【0130】
<変形例4、5>
図14は、実施形態の変形例4に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図14に示すように、変形例4では、処理ユニット16にガスノズル90が別途設けられる点が実施形態と異なる。
【0131】
かかるガスノズル90は、空気や窒素などのガスを、ノズル41aから吐出される処理液Lと、ノズル41bから吐出される処理液Lとの間に吐出する。
【0132】
変形例4では、このガスノズル90によって、ノズル41aから吐出される処理液Lとノズル41bから吐出される処理液Lとの間にギャップGをより確実に形成することができる。したがって、変形例4によれば、ウェハW上の貴金属膜をさらに効率よくエッチングすることができる。
【0133】
なお、
図14の例では、ガスノズル90がノズル41aやノズル41bと別体で設けられる例について示したが、ガスノズル90の構成はこの例に限られない。
図15は、実施形態の変形例5に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
【0134】
図15に示すように、ガスノズル90は、ノズル41aやノズル41bと一体で設けられてもよい。これにより、ノズル41aから吐出される処理液Lとノズル41bから吐出される処理液Lとの間に、ガスをより確実に吐出することができる。
【0135】
<変形例6、7>
図16は、実施形態の変形例6に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図16に示すように、それぞれに陰極62が設けられるノズル41bを処理ユニット16内に複数(図では5つ)配置して、かかる複数のノズル41bから個別に処理液LをウェハWの周縁部Waに吐出してもよい。
【0136】
このような場合であっても、ノズル41aから吐出される処理液Lと、ノズル41bから吐出される処理液Lとの間にギャップGを設けることにより、ウェハW上の貴金属膜を効率よくエッチングすることができる。
【0137】
また、変形例6では、貴金属膜が電気化学的にエッチングされる箇所(すなわち、ノズル41bから処理液Lが吐出される箇所)を増やすことができることから、ウェハW上の貴金属膜をより効率よくエッチングすることができる。
【0138】
なお、
図16の例では、隣接するノズル41bから吐出される処理液L同士が離間して配置される例について示しているが、隣接するノズル41bから吐出される処理液L同士は必ずしも離間しなくともよい。
【0139】
たとえば、隣接するノズル41bから吐出される処理液L同士を互いに接触させることにより、かかる接触した処理液L内において、貴金属膜を均等にエッチングすることができる。
【0140】
また、
図16の例では、複数のノズル41bを用いて複数の箇所に処理液Lを吐出する例について示したが、ノズル41bの構成はこの例に限られない。
図17は、実施形態の変形例7に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
【0141】
図17に示すように、陰極62が設けられる1つのノズル41bに複数(図では5つ)の吐出口を設け、かかる複数の吐出口から個別に処理液LをウェハWの周縁部Waに吐出してもよい。これによっても、貴金属膜が電気化学的にエッチングされる箇所を増やすことができることから、ウェハW上の貴金属膜をより効率よくエッチングすることができる。
【0142】
<変形例8>
ここまで説明した例では、ノズル41aおよびノズル41bの内部にそれぞれ陽極61および陰極62が配置された例について示したが、陽極61および陰極62の配置はこの例に限られない。
【0143】
図18は、実施形態の変形例8に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。なお、
図18~
図23では、ノズル41aにおける陽極61の配置と、ノズル41bにおける陰極62の配置とを同じ図面で示す。
【0144】
また、
図18~
図23の例において、ノズル41bにおける陰極62の配置は、ノズル41aにおける陽極61の配置と同様であることから、ノズル41bにおける陰極62の配置についての説明は省略する。
【0145】
図18に示すように、陽極61は、ノズル41aに処理液Lを供給する導電性配管47に設けられてもよい。これによっても、導電性配管47およびノズル41a内を通流する処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。
【0146】
したがって、変形例8によれば、ノズル41aからウェハWの周縁部Waに供給される処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。なお、導電性配管47としては、たとえば、樹脂材料にカーボンなどの導電性粉末を添加することで導電性が付与された配管を用いることができる。
【0147】
<変形例9>
図19は、実施形態の変形例9に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図19に示すように、陽極61は、ノズル41aからウェハWの周縁部Waに吐出された後の処理液Lに直接接触するように配置されてもよい。
【0148】
これによっても、ノズル41aからウェハWの周縁部Waに供給される処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。なお、周縁部Waに吐出された後の処理液Lに直接接触するように陽極61を配置する場合、かかる陽極61の側面を覆うようにカバー67を設けるとよい。
【0149】
ここまで説明した例では、ノズル41aからウェハWの周縁部Waに処理液Lが直接吐出された例について示したが、処理液Lをいったん液保持部材で保持し、この保持された状態の処理液LをウェハWの周縁部Waに接触させてもよい。
【0150】
<変形例10>
図20は、実施形態の変形例10に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図20では、処理液Lを保持可能に構成される液保持部材の一例として、多孔質体68を用いた例について示している。かかる多孔質体68は、たとえば、スポンジであり、陽極61の側面に巻かれるように配置される。
【0151】
そして、変形例10では、ノズル41aから処理液Lを多孔質体68に吐出して、かかる多孔質体68で処理液Lを保持する。さらに、処理液Lが保持された多孔質体68をウェハWの周縁部Waに接触させることにより、ウェハWの周縁部Waに供給される処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。
【0152】
また、変形例10では、多孔質体68に保持された処理液Lで周縁部Waのエッチング処理を行うことができることから、処理液Lの使用量を削減することができる。
【0153】
<変形例11>
図21は、実施形態の変形例11に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
図21に示すように、多孔質体68の大部分をカバー69で覆い、このカバー69と多孔質体68との間に陽極61を配置してもよい。
【0154】
これによっても、処理液Lが保持された多孔質体68の露出した部分をウェハWの周縁部Waに接触させることにより、ウェハWの周縁部Waに供給される処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。
【0155】
また、変形例11では、多孔質体68に保持された処理液Lで周縁部Waのエッチング処理を行うことができることから、処理液Lの使用量を削減することができる。
【0156】
<変形例12>
なお、
図20および
図21の例では、液保持部材として多孔質体68を用いた例について示したが、実施形態に係る液保持部材は多孔質体68に限られない。
図22は、実施形態の変形例12に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
【0157】
図22に示すように、変形例12では、ノズル41aの吐出口に液保持部41cが設けられている。この液保持部41cは、液保持部材の別の一例であり、断面視で略C字形状を有する。液保持部41cでは、処理液Lの表面張力を利用することにより、処理液Lを凹部41caの内部に保持することができる。
【0158】
また、変形例12では、陽極61がノズル41aに処理液Lを供給する導電性配管47に設けられる。すなわち、変形例12では、液保持部41cに保持される処理液Lに陽極61が間接的に接触する。
【0159】
そして、
図22に示すように、液保持部41cの凹部41caにウェハWの周縁部Waを挿入することにより、ウェハWの周縁部Waに保持される処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。
【0160】
また、変形例12では、液保持部41cに保持された処理液Lで周縁部Waのエッチング処理を行うことができることから、処理液Lの使用量を削減することができる。
【0161】
<変形例13>
なお、
図22の例では、陽極61が導電性配管47に設けられる例について示したが、陽極61の配置はこの例に限られない。
図23は、実施形態の変形例13に係る処理ユニット16内の処理液供給部40および電圧印加部60の構成を示す図である。
【0162】
図23に示すように、変形例13では、液保持部41cに形成される凹部41caの内側に陽極61が設けられる。これによっても、凹部41caの内部にウェハWの周縁部Waを挿入することにより、ウェハWの周縁部Waに供給される処理液Lに所定の正電圧を印加することができる。
【0163】
また、変形例13では、液保持部41cに保持された処理液Lで周縁部Waのエッチング処理を行うことができることから、処理液Lの使用量を削減することができる。
【0164】
実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)は、基板保持部30と、処理液供給部40と、陽極61および陰極62と、制御部18と、を備える。基板保持部30は、基板(ウェハW)を保持する。処理液供給部40は、基板保持部30に保持される基板(ウェハW)に処理液Lを供給する。陽極61および陰極62は、処理液供給部40から供給される処理液Lに電圧を印加する。制御部18は、各部を制御する。処理液供給部40は、基板(ウェハW)上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に処理液Lを吐出可能である。陽極61は、1つの箇所の処理液Lと接触するように配置されている。陰極62は、別の箇所の処理液Lと接触するように配置されている。制御部18は、陽極61と陰極62との間を流れる電流値に基づいて、陽極61と陰極62との間の電圧値を制御する。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0165】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、制御部18は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、電流値が処理開始時の電流値I1よりも低い所与の第1しきい値(電流値I2)となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0166】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、制御部18は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、電流値が処理開始時の電流値I4よりも高い所与の第2しきい値(電流値I5)となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0167】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、制御部18は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値-d1よりも低い所与の第3しきい値(時間微分値-d2))となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0168】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、制御部18は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値d2よりも高い所与の第4しきい値(時間微分値d4))となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0169】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、基板保持部30は、保持された基板(ウェハW)を回転させる基板回転機構(駆動部33)を有する。また、制御部18は、基板回転機構(駆動部33)により基板(ウェハW)を回転させながら、複数の箇所が基板(ウェハW)の周縁部Waとなるよう処理液Lの吐出位置を制御する。これにより、ウェハWをベベルエッチングすることができる。
【0170】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)は、基板保持部30に保持される基板(ウェハW)上に形成される膜の膜厚を測定可能である光学測定器70、をさらに備える。また、制御部18は、光学測定器70で測定される膜の膜厚に基づいて、基板(ウェハW)に対する処理が正常に行われているか否かを判定する。これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。
【0171】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)は、基板保持部30に保持される基板(ウェハW)上に形成される膜を撮像可能である撮像装置75、をさらに備える。また、制御部18は、撮像装置75で撮像される膜の画像から求められる膜の膜厚に基づいて、基板(ウェハW)に対する処理が正常に行われているか否かを判定する。これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。
【0172】
また、実施形態に係る基板処理装置(基板処理システム1)において、処理液供給部40は、第1ノズル(ノズル41a)と、第2ノズル(ノズル41b)と、第3ノズル(ノズル80)と、を有する。第1ノズル(ノズル41a)は、陽極61に接続される処理液Lを基板(ウェハW)上に吐出する。第2ノズル(ノズル41b)は、陰極62に接続される処理液Lを基板(ウェハW)上に吐出する。第3ノズル(ノズル80)は、第1ノズル(ノズル41a)から吐出される処理液Lと第2ノズル(ノズル41b)から吐出される処理液Lとの間を絶縁する絶縁流体Lxを基板(ウェハW)上に吐出する。これにより、ウェハW上の貴金属膜を効率よくエッチングすることができる。
【0173】
<処理の手順>
つづいて、実施形態に係る基板処理の手順について、
図24を参照しながら説明する。
図24は、実施形態に係る基板処理システム1が実行する基板処理の手順を示すフローチャートである。
【0174】
最初に、制御部18は、処理ユニット16などを制御して、基板保持部30でウェハWを保持して回転させる(ステップS101)。そして、制御部18は、処理液供給部40などを制御して、ウェハWの周縁部Waにおける複数の箇所に処理液Lを吐出する(ステップS102)。
【0175】
次に、制御部18は、電圧印加部60などを制御して、ウェハWにおいて複数の箇所に吐出される処理液L同士の間に、陽極61および陰極62で電圧を印加する(ステップS103)。そして、制御部18は、電流計65を用いて、陽極61と陰極62との間に流れる電流値を測定する(ステップS104)。
【0176】
次に、制御部18は、陽極61と陰極62との間に流れる電流値に基づいて、陽極61と陰極62との間の電圧値を制御し(ステップS105)、一連の基板処理を完了する。
【0177】
実施形態に係る基板処理方法は、吐出する工程(ステップS102)と、印加する工程(ステップS103)と、測定する工程(ステップS104)と、制御する工程(ステップS105)とを含む。吐出する工程(ステップS102)は、基板(ウェハW)上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に処理液Lを吐出する。印加する工程(ステップS103)は、基板(ウェハW)上でそれぞれ位置が異なる複数の箇所に吐出される処理液L同士の間に陽極61および陰極62で電圧を印加する。測定する工程(ステップS104)は、陽極61と陰極62との間を流れる電流値を測定する。制御する工程(ステップS105)は、電流値に基づいて、陽極61と陰極62との間の電圧値を制御する。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0178】
また、実施形態に係る基板処理方法において、制御する工程(ステップS105)は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、電流値が処理開始時の電流値I1よりも低い所与の第1しきい値(電流値I2)となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0179】
また、実施形態に係る基板処理方法において、制御する工程(ステップS105)は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、電流値が処理開始時の電流値I4よりも高い所与の第2しきい値(電流値I5)となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0180】
また、実施形態に係る基板処理方法において、制御する工程(ステップS105)は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも低い場合、電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値-d1よりも低い所与の第3しきい値(時間微分値-d2))となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0181】
また、実施形態に係る基板処理方法において、制御する工程(ステップS105)は、基板(ウェハW)上に形成され処理液Lに接触する膜の抵抗値が、膜の直下に存在する下地層または基板層の抵抗値よりも高い場合、電流値の時間微分値が処理開始時の時間微分値d3よりも高い所与の第4しきい値(時間微分値d4))となったときに、電圧値を低下させる。これにより、ウェハW上の貴金属膜を精度よくエッチングすることができる。
【0182】
また、実施形態に係る基板処理方法において、制御する工程(ステップS105)は、基板上に形成される膜を撮像可能である撮像装置75で撮像される膜の画像から求められる膜の膜厚に基づいて、基板に対する処理が正常に行われているか否かを判定する。これにより、ウェハW上の貴金属膜をさらに精度よくエッチングすることができる。
【0183】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、陽極61と陰極62との間に印加される電圧値をゼロにすることでエッチング処理を終了する例について示したが、本開示はかかる例に限られず、たとえば、処理液Lの吐出を停止することでエッチング処理を終了してもよい。
【0184】
また、上記の実施形態では、エッチング処理の際の電圧値を2段階(電圧値V1、V2)に制御する例について示したが、制御される電圧値は2段階に限られず、3段階以上に制御してもよい。
【0185】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0186】
W ウェハ
Wa 周縁部
1 基板処理システム(基板処理装置の一例)
16 処理ユニット
18 制御部
30 基板保持部
40 処理液供給部
41a ノズル(第1ノズルの一例)
41b ノズル(第2ノズルの一例)
60 電圧印加部
61 陽極
62 陰極
70 光学測定器
75 撮像装置
80 ノズル(第3ノズルの一例)
L 処理液
Lx 絶縁流体