(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083993
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】クリーニング方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230609BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230609BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101H
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198043
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】羽根 秀臣
(72)【発明者】
【氏名】栗林 昭博
(72)【発明者】
【氏名】吹上 紀明
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA16
4K030AA17
4K030BA40
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA06
4K030EA04
4K030FA01
4K030GA05
4K030HA01
4K030LA02
4K030LA15
5F004AA15
5F004BA03
5F004BA20
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5F004DA24
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5F045DP27
5F045DQ10
5F045EB06
5F045EE17
5F045EF02
5F045EH03
5F045EH18
5F045EK07
5F045EM10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クリーニングの際に回転テーブルがエッチングされることを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】処理容器内に回転可能に設けられる回転テーブルであり、基板が載置される載置領域が周方向に沿って複数設けられる回転テーブルと、処理容器の側壁を貫通して設けられるガスインジェクタとを備える成膜装置において処理容器内をクリーニングする方法であって、回転テーブルを回転させながら、ガスインジェクタから処理容器内に第1流量に調整されたキャリアガスと共にクリーニングガスを吐出するステップ(a)と、第1流量よりも小さい第2流量に調整されたキャリアガスと共にクリーニングガスを吐出するステップ(b)と、回転テーブルが1回転する間にステップ(a)からステップ(b)への切り替え及びステップ(b)からステップ(a)への切り替えを載置領域の数と同じ回数行うステップ(c)と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に回転可能に設けられる回転テーブルであり、基板が載置される載置領域が周方向に沿って複数設けられる回転テーブルと、前記処理容器の側壁を貫通して設けられるガスインジェクタとを備える成膜装置において前記処理容器内をクリーニングする方法であって、
(a)前記回転テーブルを回転させながら、前記ガスインジェクタから前記処理容器内に第1流量に調整されたキャリアガスと共にクリーニングガスを吐出するステップと、
(b)前記回転テーブルを回転させながら、前記ガスインジェクタから前記処理容器内に前記第1流量よりも小さい第2流量に調整された前記キャリアガスと共に前記クリーニングガスを吐出するステップと、
(c)前記回転テーブルが1回転する間に前記ステップ(a)から前記ステップ(b)への切り替え及び前記ステップ(b)から前記ステップ(a)への切り替えを前記載置領域の数と同じ回数行うステップと、
を有する、クリーニング方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)は、前記回転テーブルの回転角度に基づいて前記ステップ(a)から前記ステップ(b)への切り替え及び前記ステップ(b)から前記ステップ(a)への切り替えを行うことを含む、
請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)は、少なくとも平面視で前記ガスインジェクタと前記回転テーブルの中心とを結ぶ線分上に前記載置領域が位置しない場合に行われる、
請求項1又は2に記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)は、少なくとも平面視で前記ガスインジェクタと前記回転テーブルの中心とを結ぶ線分上に前記載置領域の中心が位置する場合に行われる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)において吐出される前記クリーニングガスの流量は、前記ステップ(a)において吐出される前記クリーニングガスの流量と同じである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)における前記回転テーブルの回転速度は、前記ステップ(a)における前記回転テーブルの回転速度よりも大きい、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項7】
前記クリーニングガスは、三フッ化窒素であり、かつリモートプラズマにより活性化されて吐出される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項8】
前記載置領域は、前記回転テーブルの上面に対して窪んだ凹部である、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項9】
処理容器と、
前記処理容器内に回転可能に設けられる回転テーブルであり、基板が載置される載置領域が周方向に沿って複数設けられる回転テーブルと、
前記処理容器の側壁を貫通して設けられるガスインジェクタと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)前記回転テーブルを回転させながら、前記ガスインジェクタから前記処理容器内に第1流量に調整されたキャリアガスと共にクリーニングガスを吐出するステップと、
(b)前記回転テーブルを回転させながら、前記ガスインジェクタから前記処理容器内に前記第1流量よりも小さい第2流量に調整された前記キャリアガスと共に前記クリーニングガスを吐出するステップと、
(c)前記回転テーブルが1回転する間に前記ステップ(a)から前記ステップ(b)への切り替え及び前記ステップ(b)から前記ステップ(a)への切り替えを前記載置領域の数と同じ回数行うステップと、
を実行するように構成される、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーニング方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転テーブルの回転方向に沿って複数の基板を載置し、回転テーブルを回転させた状態で回転テーブルの径方向に沿って設けられたノズルから処理ガスを供給することにより、複数の基板に膜を形成する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の装置では、回転テーブルの上にも膜が堆積する。堆積した膜の量が多くなると、パーティクルが発生する。そのため、上記の装置では、回転テーブルにクリーニングガスを供給して回転テーブルの上に堆積した膜を除去するクリーニングが定期的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、クリーニングの際に回転テーブルがエッチングされることを抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるクリーニング方法は、処理容器内に回転可能に設けられる回転テーブルであり、基板が載置される載置領域が周方向に沿って複数設けられる回転テーブルと、前記処理容器の側壁を貫通して設けられるガスインジェクタとを備える成膜装置において前記処理容器内をクリーニングする方法であって、(a)前記回転テーブルを回転させながら、前記ガスインジェクタから前記処理容器内に第1流量に調整されたキャリアガスと共にクリーニングガスを吐出するステップと、(b)前記回転テーブルを回転させながら、前記ガスインジェクタから前記処理容器内に前記第1流量よりも小さい第2流量に調整された前記キャリアガスと共に前記クリーニングガスを吐出するステップと、(c)前記回転テーブルが1回転する間に前記ステップ(a)から前記ステップ(b)への切り替え及び前記ステップ(b)から前記ステップ(a)への切り替えを前記載置領域の数と同じ回数行うステップと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、クリーニングの際に回転テーブルがエッチングされることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る成膜装置の一例を示す概略縦断面図
【
図3】
図1の成膜装置に設けられるガス給排気ユニットの下面図
【
図5】実施形態に係るクリーニング方法を示す図(1)
【
図6】実施形態に係るクリーニング方法を示す図(2)
【
図7】実施形態に係るクリーニング方法を示す図(3)
【
図8】Arガスの流量とエッチング速度分布との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜装置〕
図1~
図4を参照し、実施形態に係る成膜装置の一例について説明する。成膜装置1は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法又は分子層堆積(MLD:Molecular Layer Deposition)法により、基板の表面に窒化シリコン(SiN)膜を形成する装置である。基板は、例えば半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)である。
【0010】
成膜装置1は、処理容器としての真空容器11を備える。真空容器11は、概ね円形の平面形状を有する。真空容器11は、本体11A及び天板11Bを含む。本体11Aは、側壁及び底部を構成する。天板11Bは、例えばOリング等の封止部材を介して本体11Aに取り付けられる。これにより、真空容器11が気密に密閉される。本体11A及び天板11Bは、例えばアルミニウム(Al)で作製できる。
【0011】
真空容器11内には、回転テーブル12が設けられている。回転テーブル12は、円板状を有し、例えば石英で作製できる。回転テーブル12は、支持部12Aによって裏面の中央が支持され、水平に設けられている。
【0012】
回転テーブル12の上面には、回転テーブル12の周方向(回転方向)に沿って6つの凹部14が設けられている。凹部14は、載置領域の一例である。各凹部14は、平面視で円形状を有し、回転テーブル12の上面に対して窪んだ形状を有する。各凹部14には、ウエハWが載置される。
【0013】
支持部12Aの下面には、回転機構13が接続されている。回転機構13は、成膜処理の際に支持部12Aを介して回転テーブル12を、軸Xを中心として回転テーブル12の周方向に平面視時計回りに回転させる。回転機構13は、回転テーブル12(支持部12A)の回転角度を検出するエンコーダ13Aを含み、エンコーダ13Aにより検出された回転テーブル12の回転角度を制御部10に送信する。制御部10は、回転機構13から送信される回転テーブル12の回転速度に基づいて、回転テーブル12上の各凹部14の位置を特定する。
【0014】
本体11Aの底部には、複数のヒータ15が設けられている。複数のヒータ15は、例えば同心円状に配置されている。複数のヒータ15は、回転テーブル12に載置されたウエハWを加熱する。
【0015】
本体11Aの側壁には、搬送口16が設けられている。搬送口16は、ウエハWの受け渡しを行うための開口である。搬送口16は、ゲートバルブ(図示せず)により気密に開閉自在に構成されている。真空容器11の外部には搬送アーム(図示せず)が設けられ、該搬送アームにより真空容器11内にウエハWが搬送される。
【0016】
回転テーブル12の上には、ガス給排気ユニット2、第2の処理領域R2、第3の処理領域R3及び第4の処理領域R4が、回転テーブル12の回転方向の下流側に向かい、該回転方向に沿ってこの順に設けられている。
【0017】
ガス給排気ユニット2は、シリコン(Si)含有ガスを供給するガス吐出口及び排気口を備える。以下、ガス給排気ユニット2について、
図3も参照しながら説明する。ガス給排気ユニット2は、平面視において、回転テーブル12の中央側から周縁側に向かうにつれて回転テーブル12の周方向に広がる扇状に形成されている。ガス給排気ユニット2の下面は、回転テーブル12の上面に近接すると共に対向している。
【0018】
ガス給排気ユニット2の下面には、ガス吐出口21、排気口22及びパージガス吐出口23が開口している。ガス吐出口21は、ガス給排気ユニット2の下面の周縁よりも内側の扇状領域24に多数配列されている。ガス吐出口21は、成膜処理の際、回転テーブル12の回転中にSi含有ガスを下方にシャワー状に吐出して、ウエハWの表面全体に供給する。シリコン含有ガスは、例えばジクロロシラン(DCS)ガスである。
【0019】
扇状領域24においては、回転テーブル12の中央側から周縁側に向けて、3つの区域24A、24B、24Cが設定されている。夫々の区域24A、区域24B、区域24Cに設けられるガス吐出口21の夫々に独立してSi含有ガスを供給できるように、ガス給排気ユニット2には互いに区画されたガス流路(図示せず)が設けられている。互いに区画されたガス流路の各上流側は、各々、バルブ及びマスフローコントローラを含むガス供給機器を備えた配管を介してSi含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。
【0020】
排気口22及びパージガス吐出口23は、扇状領域24を囲むと共に回転テーブル12の上面に向かうように、ガス給排気ユニット2の下面の周縁に環状に開口する。パージガス吐出口23は、排気口22の外側に位置する。回転テーブル12上における排気口22の内側の領域は、ウエハWの表面へのSi含有ガスの吸着が行われる第1の処理領域R1を構成する。排気口22には排気装置(図示せず)が接続され、パージガス吐出口23にはパージガスの供給源が接続されている。パージガスは、例えばアルゴン(Ar)ガスである。
【0021】
成膜処理の際、ガス吐出口21からのSi含有ガスの吐出、排気口22からの排気及びパージガス吐出口23からのパージガスの吐出が共に行われる。これにより、回転テーブル12へ向けて吐出されたSi含有ガス及びパージガスは、回転テーブル12の上面を排気口22へと向かい、当該排気口22から排気される。このようにパージガスの吐出及び排気が行われることにより、第1の処理領域R1の雰囲気は外部の雰囲気から分離され、当該第1の処理領域R1に限定的にSi含有ガスを供給できる。即ち、第1の処理領域R1に供給されるSi含有ガスと、後述するプラズマ形成ユニット3A~3Cによって第1の処理領域R1の外部に供給される各ガス及びガスの活性種とが混合されることを抑制できる。
【0022】
第2~第4の処理領域R2~R4には、夫々の領域に供給されたガスを活性化(励起)するためのプラズマ形成ユニット3A~3Cが設けられている。プラズマ形成ユニット3A~3Cは各々同様に構成されている。以下では、代表して
図1に示されるプラズマ形成ユニット3Cについて説明する。
【0023】
プラズマ形成ユニット3Cは、プラズマ形成用のガスを回転テーブル12上に供給すると共に、プラズマ形成用のガスにマイクロ波を供給して、回転テーブル12上にプラズマを発生させる。プラズマ形成ユニット3Cは、マイクロ波を供給するためのアンテナ31を備える。
【0024】
アンテナ31は、誘電体板32及び金属製の導波管33を含む。誘電体板32は、平面視において回転テーブル12の中央側から周縁側に向かうにつれて広がる概ね扇状に形成されている。天板11Bには誘電体板32の形状に対応するように、概ね扇状の貫通口が設けられており、当該貫通口の下端の内周面は貫通口の中心方向へと僅かに突出して、支持部34を形成している。誘電体板32は貫通口を上側から塞ぎ、回転テーブル12に対向するように設けられており、誘電体板32の周縁は支持部34に支持されている。導波管33は、誘電体板32上に設けられている。導波管33は、天板11B上に延在する内部空間35を備える。誘電体板32の上面には、誘電体板32に接するようにスロット板36が設けられている。スロット板36は、導波管33の下部を構成する。スロット板36は、複数のスロット孔36Aを有する。導波管33の回転テーブル12の中央側の端部は塞がれており、回転テーブル12の周縁側の端部には、マイクロ波発生器37が接続されている。マイクロ波発生器37は、例えば2.45GHzのマイクロ波を導波管33に供給する。
【0025】
第2の処理領域R2の下流側の端部には、ガスインジェクタ41が設けられている。ガスインジェクタ41は、配管41pを介して、水素(H2)ガス供給源41a及びアルゴン(Ar)ガス供給源41bに接続されている。ガスインジェクタ41は、上流側に向けてH2ガス及びArガスを吐出する。ガスインジェクタ41は、更に別のガス供給源に接続されていてもよい。
【0026】
第3の処理領域R3の上流側の端部には、ガスインジェクタ42が設けられている。ガスインジェクタ42は、配管42pを介して、H2ガス供給源42a及びArガス供給源42bに接続されている。ガスインジェクタ42は、下流側に向けてH2ガス及びArガスを吐出する。ガスインジェクタ42は、更に別のガス供給源に接続されていてもよい。
【0027】
第4の処理領域R4の下流側の端部には、ガスインジェクタ43が設けられている。ガスインジェクタ43は、配管43pを介して、H2ガス供給源43a、アンモニア(NH3)ガス供給源43b及びArガス供給源43cに接続されている。ガスインジェクタ43は、上流側に向けてH2ガス、NH3ガス及びArガスを吐出する。ガスインジェクタ43は、更に別のガス供給源に接続されていてもよい。
【0028】
ガスインジェクタ41~43は、例えば
図1及び
図2に示されるように、先端側が閉じられた細長い管状体より構成されている。ガスインジェクタ41~43は、真空容器11の側壁から中央領域に向かって水平に伸びるように、真空容器11の側壁に各々設けられ、回転テーブル12上のウエハWが通過する領域と交差するように夫々配置されている。ガスインジェクタ41~43には、その長さ方向に沿ってガスの吐出口40が夫々形成されている。例えば、ガスの吐出口40は、ガスインジェクタ41~43において、回転テーブル12上のウエハWが通過する領域をカバーする領域に形成されている。
【0029】
第2~第4の処理領域R2~R4では、導波管33に供給されたマイクロ波は、スロット板36のスロット孔36Aを通過して誘電体板32に至り、該誘電体板32の下方に吐出されたガス、例えばH2ガス、NH3ガス、Arガスに供給される。これにより、誘電体板32の下方の第2~第4の処理領域R2~R4に限定的にプラズマが形成される。
【0030】
第2の処理領域R2と第3の処理領域R3との間には、
図2に示されるように、ガスインジェクタ45が設けられている。ガスインジェクタ45は、先端側が開口した細長い管状体より構成されている。ガスインジェクタ45は、本体11Aの側壁から中央領域に向かって水平に伸びるように、真空容器11の側壁を貫通して設けられている。ガスインジェクタ45は、先端側の開口から真空容器11の中心に向けて三フッ化窒素(NF
3)ガス及びArガスを吐出する。
【0031】
ガスインジェクタ45は、配管45pを介して、NF3ガス供給源45a及びArガス供給源45bに接続されている。配管45pには、リモートプラズマ源46が設けられている。リモートプラズマ源46は、各供給源から配管45pを介してガスインジェクタ45に導入されるNF3ガス及びArガスをプラズマにより活性化させる。これにより、ガスインジェクタ45は、活性化されたNF3ガス及びArガスを真空容器11内に吐出する。NF3ガスはクリーニングガスの一例であり、Arガスはキャリアガスの一例である。
【0032】
ガスインジェクタ45の先端は、平面視で回転テーブル12の外周よりも中央側に位置することが好ましい。これにより、回転テーブル12の下面側へのNF3ガス及びArガスの回り込みを抑制し、かつ回転テーブル12の上面側にNF3ガス及びArガスを効率よく供給できる。ガスインジェクタ45の先端は、平面視で凹部14の回転軌道の外周よりも本体11Aの側壁の側に位置することが好ましい。これにより、回転テーブル12の中央側から周縁側までの広範囲にNF3ガス及びArガスを供給できる。
【0033】
第3の処理領域R3と第4の処理領域R4との間には、
図2に示されるように、分離領域Dが設けられている。分離領域Dの天井面は、第3及び第4の処理領域R3、R4の各々の天井面よりも低く設定されている。分離領域Dは、平面視において、回転テーブル12の中央側から周縁側に向かうにつれて回転テーブル12の周方向に広がる扇状に形成されており、その下面は回転テーブル12の上面に近接すると共に対向している。分離領域Dの下面と回転テーブル12の上面との間は、分離領域Dの下方へのガスの侵入を抑えるために、例えば3mmに設定されている。なお、分離領域Dの下面を天板11Bの下面と同一の高さに設定してもよい。
【0034】
回転テーブル12の外側であって、第2の処理領域R2の上流側の端部、第3の処理領域R3の下流側の端部及び第4の処理領域R4の上流側の端部の各々に臨む位置には、第1の排気口51、第2の排気口52及び第3の排気口53が夫々開口している。第1~第3の排気口51~53は、夫々第2~第4の処理領域R2~R4内のガスを排気する。
【0035】
図1に示されるように、第3の排気口53は、本体11Aにおける回転テーブル12の外側の領域に、上を向いて開口するように形成されている。第3の排気口53の開口部は、回転テーブル12の下方に位置している。第3の排気口53は、排気流路531を介して排気装置54に接続されている。また、第1及び第2の排気口51、52についても第3の排気口53と同様に構成されており、例えば排気流路511、521を介して例えば共通の排気装置54に接続されている。各排気流路511、521、531には、夫々排気量調整部(図示せず)が設けられ、排気装置54による第1~第3の排気口51~53からの排気量は例えば個別に調整自在に構成されている。なお、第1~第3の排気口51~53からの排気量は、共通化された排気量調整部により調整するようにしてもよい。このように、第2~第4の処理領域R2~R4において、ガスインジェクタ41~43から吐出された各ガスは、第1~第3の排気口51~53から排気され、これら排気量に応じた圧力の真空雰囲気が真空容器11内に形成される。
【0036】
図1に示されるように、成膜装置1には、制御部10が設けられている。制御部10は、例えばコンピュータである。制御部10には、プログラムが格納されている。プログラムについては、成膜装置1の各部に制御信号を送信して各部の動作を制御し、後述のクリーニング方法が実行されるようにステップ群が組まれている。具体的には、回転機構13による回転テーブル12の回転速度、各ガス供給機器による各ガスの流量及び給断、排気装置54による排気量、マイクロ波発生器37からのアンテナ31へのマイクロ波の給断、ヒータ15への給電等が、プログラムによって制御される。ヒータ15への給電の制御は、即ちウエハWの温度の制御であり、排気装置54による排気量の制御は、即ち真空容器11内の圧力の制御である。プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード等の記憶媒体から制御部10にインストールされる。
【0037】
〔クリーニング方法〕
図5~
図7を参照し、実施形態に係るクリーニング方法について説明する。実施形態に係るクリーニング方法は、成膜処理が繰り返されることにより回転テーブル12上に堆積する膜を除去する場合に行われる。該膜は、例えばSiN膜である。実施形態に係るクリーニング方法は、凹部14にウエハWが載置されていない状態で行われる。
【0038】
まず、真空容器11内を所定の圧力に減圧すると共に、回転テーブル12を所定の回転速度V1で回転させる。所定の回転速度V1は、例えば10rpm以下であってよい。また、ガスインジェクタ45から真空容器11内にNF3ガス及びArガスを吐出する。NF3ガス及びArガスは、リモートプラズマ源46により活性化されて吐出される。真空容器11内に吐出されたNF3ガスは、回転テーブル12上に堆積した膜をエッチングして除去する。リモートプラズマ源46の出力P1は、2000W~4000Wであってよく、例えば3000Wである。
【0039】
このとき、制御部10は、回転機構13から送信される回転テーブル12の回転速度に基づいて、回転テーブル12上の各凹部14の位置を特定する。また、制御部10は、特定した各凹部14の位置に基づいて、ガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるArガスの流量を調整する。
【0040】
具体的には、回転テーブル12の回転により、平面視でガスインジェクタ45と回転テーブル12の中心Oとを結ぶ線分(以下「第1線分L1」という。)上に凹部14が位置しない場合(
図5参照)、制御部10はArガスの流量を第1流量F1に調整する(ステップS1)。第1流量F1は、回転テーブル12の中央側までNF
3ガス及びArガスが到達する流量であることが好ましい。第1流量F1は、500sccm~1000sccmであってよく、例えば770sccmである。これにより、回転テーブル12上の中央側から周縁側までの広範囲にNF
3ガスが行き届くので、回転テーブル12上に堆積した膜を、回転テーブル12の径方向において略均一に除去できる。
図5においては、第1線分L1上に凹部14が位置しない領域を領域A1で示し、第1線分L1上に凹部14が位置する領域を領域A2で示している。
図6及び
図7においても同様である。
【0041】
続いて、回転テーブル12の回転により、平面視で第1線分L1上に凹部14が位置し始めると(
図6参照)、制御部10はArガスの流量を第1流量F1から第2流量F2に変更する(ステップS2)。第2流量F2は、第1流量F1よりも小さい流量であり、回転テーブル12上の中央側よりも周縁側に多くのNF
3ガス及びArガスが供給される流量であることが好ましい。第2流量F2は、100sccm~300sccmであってよく、例えば170sccmである。これにより、NF
3ガスが回転テーブル12上の中央側に到達しにくくなるので、回転テーブル12上の中央側に堆積した膜のエッチング速度が小さくなる。また、制御部10は、ステップS1及びステップS2において、NF
3ガスの流量を同じ流量F3に調整する。NF
3ガスの流量F3は、100sccm~500sccmであってよく、例えば250sccmである。
【0042】
ところで、成膜処理が繰り返されると、回転テーブル12上にはSiN膜が堆積する。成膜処理は各凹部14にウエハWが載置された状態で行われるので、各凹部14上に堆積するSiN膜の膜厚は回転テーブル12上の各凹部14以外の領域上に堆積するSiN膜の膜厚よりも小さくなる。そのため、回転テーブル12上の全ての領域に同じ量のNF3ガスが供給されると、凹部14以外の領域上に堆積した膜よりも凹部14上に堆積した膜が先に除去され、凹部14の表面が露出する。凹部14の露出した表面がNF3ガスに晒されると、凹部14の表面がエッチングされて凹部14の形状が変化する場合がある。
【0043】
そこで、実施形態では、ステップS2において、平面視で第1線分L1上に凹部14が位置し始めると(
図6参照)、制御部10はガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるArガスの流量を第1流量F1から第2流量F2に減らす。これにより、凹部14上に堆積した膜のエッチング速度が回転テーブル12上の周縁側に堆積した膜のエッチング速度よりも小さくなる。そのため、回転テーブル12上の凹部14以外の領域上に堆積した膜が除去される前に、凹部14の表面が露出することを抑制できる。その結果、凹部14の形状が変化することを抑制できる。
【0044】
続いて、回転テーブル12の回転により、平面視で第1線分L1上に凹部14が位置しなくなると、制御部10はガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるArガスの流量を第2流量F2から第1流量F1に変更する(ステップS1)。
【0045】
このように、制御部10は、回転テーブル12を回転させながら、平面視で第1線分L1上に凹部14が位置するか否かに基づきガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるArガスの流量を第1流量F1と第2流量F2との間で切り替える(
図7参照)。実施形態の成膜装置1では回転テーブル12上に6つの凹部14が形成されているので、制御部10は回転テーブル12が1回転する間にステップS1からステップS2への切り替え及びステップS2からステップS1への切り替えを凹部14の数と同じ6回行う。
【0046】
なお、ステップS1及びステップS2においては、パージガス吐出口23及びガスインジェクタ41~43からArガスを吐出してもよい。これにより、真空容器11内をクリーニングする際に、ガスインジェクタ45から吐出されるNF3ガスがガス吐出口21及びガスインジェクタ41~43に侵入することを防止できる。
【0047】
また、制御部10は、ステップS2における回転テーブル12の回転速度がステップS1における回転テーブル12の回転速度よりも大きくなるように回転機構13を制御してもよい。これにより、凹部14がNF3ガスに晒される時間が短くなるので、凹部14の表面が露出することを抑制できる。
【0048】
また、制御部10は、ステップS2におけるNF3ガスの流量をステップS1におけるNF3ガスの流量よりも小さくしてもよい。これにより、凹部14上に供給されるNF3ガスの量が少なくなるので、凹部14の表面が露出することを抑制できる。
【0049】
また、制御部10は、平面視で第1線分L1上において凹部14が占める長さが凹部14以外の部分が占める長さよりも短い場合に、ガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるArガスの流量を第1流量に調整してもよい。また、制御部10は、平面視で第1線分L1上において凹部14が占める長さが凹部14以外の部分が占める長さよりも長い場合に、ガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるArガスの流量を第2流量に調整してもよい。
【0050】
〔実施例〕
図8を参照し、Arガスの流量とエッチング速度分布との関係について評価を行った実施例について説明する。実施例では、成膜装置1において、ガスインジェクタ45から真空容器11内に吐出されるNF
3ガスの流量を250sccmに固定した状態で、Arガスの流量を変更した場合における回転テーブル12の径方向におけるSiN膜のエッチング速度を測定した。Arガスの流量は、170sccm、270sccm、370sccm、570sccm、770sccmの5条件である。
【0051】
図8は、Arガスの流量とエッチング速度分布との関係を示す図である。
図8において、横軸は回転テーブル12の径方向位置を示し、縦軸はSiN膜のエッチング速度[nm/min]を示す。
【0052】
図8に示されるように、Arガスの流量を大きくすると、回転テーブル12の周縁側から中央側までの広範囲において高いエッチング速度が得られていることが分かる。これは、Arガスの流量を大きくすると、Arガスと共に吐出されるNF
3ガスの流速が大きくなり、多量のNF
3プラズマもしくはNF
3ラジカルが回転テーブル12の中央側まで行き届いていることによると考えられる。
【0053】
一方、Arガスの流量を小さくすると、回転テーブル12の周縁側では高いエッチング速度が得られているが、回転テーブル12の中央側ではエッチング速度が低く、SiN膜がほとんどエッチングされていないことが分かる。これは、Arガスの流量を小さくすると、Arガスと共に吐出されるNF3ガスの流速が小さくなり、吐出されるNF3ガスのほとんどが回転テーブル12の周縁側で消費され、回転テーブル12の中央側まで行き届いていないことによると考えられる。
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、成膜装置が3つのプラズマ形成ユニットを有する場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、成膜装置は、1つ、2つ又は4つ以上のプラズマ形成ユニットを有していてもよい。また、成膜装置は、プラズマ形成ユニットを有していなくてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、プラズマ形成ユニットがマイクロ波プラズマを形成するユニットである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。プラズマ形成ユニットは、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ等を形成するユニットを含んでいてもよい。
【0057】
上記の実施形態では、クリーニングガスがNF3ガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、クリーニングガスは三フッ化塩素(ClF3)であってもよい。
【0058】
上記の実施形態では、キャリアガスがArガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、キャリガスは窒素(N2)ガス等の不活性ガスであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 成膜装置
11 真空容器
12 回転テーブル
14 凹部
45 ガスインジェクタ
W ウエハ