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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084103
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】顆粒製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/238 20060101AFI20230609BHJP
   A61K 36/17 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/234 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/534 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/538 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/634 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/725 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/744 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A61K36/238
A61K36/17
A61K36/232
A61K36/234
A61K36/284
A61K36/346
A61K36/484
A61K36/534
A61K36/538
A61K36/539
A61K36/634
A61K36/65
A61K36/725
A61K36/744
A61K36/9068
A61K33/08
A61K9/16
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188168
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021198028
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴大
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 美咲
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076DD22
4C076DD24
4C076DD67
4C076EE31
4C076EE38
4C076FF52
4C086AA01
4C086HA04
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA09
4C088AB04
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB26
4C088AB30
4C088AB38
4C088AB40
4C088AB41
4C088AB58
4C088AB60
4C088AB64
4C088AB81
4C088MA09
4C088MA41
4C088NA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、100重量部当たり2重量部以上のショウキョウを含む生薬調合物のから調製される防風通聖散エキスを含みながら、苦味が抑制され服用性が向上した顆粒製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】防風通聖散エキスとケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロースとを含有し、前記防風通聖散エキスの抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりショウキョウを2重量部以上含む顆粒製剤は、苦味が抑制されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)防風通聖散エキスと(B)ケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロースとを含有し、
前記(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりショウキョウを2重量部以上含む、顆粒製剤。
【請求項2】
前記(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりボウショウを硫酸ナトリウム無水物換算量で3重量部以上含む、請求項1に記載の顆粒製剤。
【請求項3】
前記(A)成分を65重量%以上含む、請求項1に記載の顆粒製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショウキョウ含量が多い原生薬調合物から調製される防風通聖散エキスを含みながらも苦味が低減され服用性が向上した顆粒製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ショウキョウは、ショウガ科(Zingiberaceae)のショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の根茎であり、有用な生理活性作用を有する生薬として古くから用いられており、日本薬局方にも医薬品として収載されている。また、ショウガには、ジンゲロール、ショウガオール等の有用な効果があることが知られているため、ショウキョウは多くの漢方に配合されて使用されている。
【0003】
また、特許文献1に示されるように、ショウガに含まれる有用成分の1つであるショウガオールは、苦味や臭みの原因となることも知られており、生ショウガや生ショウガ抽出物に含まれる精油成分ar-クルクメンにも苦味があることが知られている。特許文献1では、ショウガ由来成分であるジンゲロールとショウガオールを10:1~1:10の重量濃度比で、合計0.001重量%以上含有し、香気成分であるar-クルクメンの含有量が15mg/kg以下であり、糖質の濃度が40~90重量%であるように調製されたショウガ加工食品組成物が、ショウガ風味は残ったままで、苦味や臭みを感じない程度にまで減少させることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-124786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ショウキョウの苦味成分は有用な効果を奏するため、このような効果をより高めるために、漢方に配合するショウキョウ量を多くすることが有効と考えられる。本発明者は、ショウキョウを含む漢方である防風通聖散について検討したところ、防風通聖散エキスの抽出に使用された生薬調合物に含まれるショウキョウが、生薬調合物の100重量部当たり2重量部以上になると、顆粒製剤の苦味が目立ち、服用性に悪影響を与えるという課題に直面した。さらにそのような苦味は、これまでの防風通聖散製剤に用いられていた添加物では十分に抑制できないものであった。また、ジンゲロールとショウガオールとの構成濃度比及びar-クルクメンの含有量を特定範囲に調整し多量の糖質を配合すれば苦味は低減されると考えられるものの、そのような多量の糖質を配合する組成は漢方薬として採用することは出来ない。
【0006】
本発明の目的は、100重量部当たり2重量部以上のショウキョウを含む生薬調合物のから調製される防風通聖散エキスを含みながら、苦味が抑制され服用性が向上した顆粒製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、100重量部当たり2重量部以上のショウキョウを含む生薬調合物から調製される防風通聖散エキスに、ケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロースを添加剤として配合することで、苦味が顕著に抑制され、服用性が顕著に向上することを見出した。さらに、このような組成の顆粒製剤が、吸湿に対する抑制性が向上することも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)防風通聖散エキスと(B)ケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロースとを含有し、
前記(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりショウキョウを2重量部以上含む、顆粒製剤。
項2. 前記(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たりボウショウを硫酸ナトリウム無水物換算量で3重量部以上含む、項1に記載の顆粒製剤。
項3. 前記(A)成分を65重量%以上含む、項1又は2に記載の顆粒製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、100重量部当たり2重量部以上のショウキョウを含む生薬調合物から調製される防風通聖散エキスを含みながら、苦味が抑制され服用性が向上した顆粒製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の顆粒製剤は、(A)防風通聖散エキス(以下において「(A)成分」とも記載する)と(B)ケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロース(以下において「(B)成分」とも記載する)とを含有し、(A)成分の抽出に使用された生薬調合物が、当該生薬調合物の100重量部当たりショウキョウを2重量部以上含むことを特徴とする。顆粒製剤に配合される防風通聖散エキスを得るための生薬調合物のショウキョウ量がこのように多いと本来的には苦味が目立ち服用性が悪いが、本発明の顆粒製剤では、苦味が抑制され良好な服用性が得られる。以下、本発明の顆粒製剤について詳述する。
【0011】
(A)防風通聖散エキス
本発明の顆粒製剤は、(A)成分として所定の防風通聖散エキスを含む。防風通聖散を構成する生薬は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)によれば、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ボウショウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ、及びカッセキである。書簡によっては、前記生薬の内、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)や、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)がある。本発明で使用される防風通聖散エキスは、これらのいずれの防風通聖散から得られるものであってもよい。
【0012】
本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物は、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、ショウキョウが2重量部以上含まれる。本発明の顆粒製剤は、苦味抑制効果に優れているため、当該生薬調合物に含まれるショウキョウ量が多くても、効果的に苦味が抑制され良好な服用性が得られる。このような観点から、当該生薬調合物の全量100重量部当たりのショウキョウ量の好適な例としては、好ましくは3重量部以上、より好ましくは3.5重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上、一層好ましくは4.2重量部以上、4.4重量部以上、4.5重量部以上、4.75重量部以上、又は4.8重量部以上が挙げられる。当該生薬調合物の全量100重量部当たりのショウキョウ量範囲の上限としては特に限定されないが、例えば5重量部以下が挙げられ、苦味抑制効果を向上させる観点から、好ましくは4.9重量部以下、4.85重量部以下、4.6重量部以下、4.5重量部以下、4.4重量部以下、4.35重量部以下又は4.3重量部以下が挙げられる。
【0013】
また、(B)成分としてケイ酸及び/又はデンプンを用いる場合、苦味抑制効果をより一層向上させる観点、及び/又は、吸湿抑制効果をより一層向上させる観点から、当該生薬調合物の全量100重量部当たりのショウキョウ量としては、好ましくは5重量部以下、4.9重量部以下、又は4.85重量部以下、より好ましくは4.6重量部以下又は4.5重量部以下、さらに好ましくは4.4重量部以下、4.35重量部以下又は4.3重量部以下が挙げられる。さらに、(B)成分として結晶セルロースを用いる場合、苦味抑制効果をより一層向上させる観点、及び/又は、吸湿抑制効果をより一層向上させる観点から、当該生薬調合物の全量100重量部当たりのショウキョウ量としては、好ましくは4.2重量部以上、より好ましくは4.75重量部以上、さらに好ましくは4.77重量部以上、一層好ましくは4.79重量部以上、より一層好ましくは4.81重量部以上、特に好ましくは4.83重量部以上が挙げられる。
【0014】
また、防風通聖散を構成する各生薬の具体的な分量としては、ショウキョウ量が上記範囲内である限りにおいて限定されるものではないが、例えば、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)、「第十七改正日本薬局方」等によれば、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ショウキョウ0.3~1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部またはハマボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ0.6~1.5重量部(硫酸ナトリウム無水物換算量)、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2~3重量部、及びカッセキ3~5重量部が挙げられる。また、書簡によっては、前記分量中、1.2重量部を全て1.5重量部としているものもある(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行)。
【0015】
防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物における各生薬の分量の好適な例として、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ0.6~1.5重量部(硫酸ナトリウム無水物換算量)、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2~3重量部(好ましくは2重量部)、及びカッセキ3~5重量部(好ましくは3重量部)であり、且つショウキョウが0.6~1.5重量部、好ましくは0.8~1.4重量部、更に好ましくは1~1.3重量部、特に好ましくは1.2重量部であるものが挙げられる。
【0016】
本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物のボウショウの配合量は、当該生薬調合物の全量100重量部当たりの硫酸ナトリウム無水物換算量で、例えば2重量部以上が挙げられる。本発明の顆粒製剤は、苦味抑制効果に優れているため、当該生薬調合物に含まれる別の苦み成分であるボウショウ量が多くても、効果的に苦味が抑制され良好な服用性が得られる。このような観点から、当該生薬調合物に含まれるボウショウ量の好適な例としては、上記生薬調合物の全量100重量部当たりの硫酸ナトリウム無水物換算量で、好ましくは3重量部以上、より好ましくは3.4重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上、一層好ましくは4.5重量部以上、より一層好ましくは5重量部以上、特に好ましくは5.2重量部以上が挙げられる。当該生薬調合物に含まれるボウショウ量の上限としては特に限定されないが、上記生薬調合物の全量100重量部当たりの硫酸ナトリウム無水物換算量で、例えば6重量部以下が挙げられ、苦味抑制効果を高める観点から、好ましくは5.5重量部以下、5重量部以下、4.5重量部以下、4重量部以下、3.5重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、又は2.2重量部以下が挙げられる。
【0017】
また、(B)成分としてケイ酸及び/又はデンプンを用いる場合、苦味抑制効果をより一層向上させる観点、及び/又は、吸湿抑制効果をより一層向上させる観点から、当該生薬調合物に含まれるボウショウ量(上記生薬調合物の全量100重量部当たりの硫酸ナトリウム無水物換算量)としては、好ましくは2.8重量部以上、好ましくは3重量部以上、より好ましくは3.2重量部以上、さらに好ましくは4.5重量部以上、一層好ましくは4.7重量部以上、より一層好ましくは5重量部以上、特に好ましくは5.3重量部以上が挙げられる。さらに、(B)成分として結晶セルロースを用いる場合、苦味抑制効果をより一層向上させる観点、及び/又は、吸湿抑制効果をより一層向上させる観点から、当該生薬調合物に含まれるボウショウ量(上記生薬調合物の全量100重量部当たりの硫酸ナトリウム無水物換算量)としては、好ましくは2.5重量部以下、より好ましくは2.2重量部以下が挙げられる。
【0018】
本発明で使用される防風通聖散エキスは、前記生薬調合物を公知の手法で抽出することによって得ることができる。前記生薬調合物を抽出する方法については、従来の防風通聖散エキスの抽出法と同様の方法で行えばよく、例えば、前記生薬調合物に対して、約10~20倍量の水を加え、80~100℃程度で1~3時間程度撹拌して抽出する方法が挙げられる。抽出後に、遠心分離、濾過等の固液分離に供して固形分を除去し、必要に応じて、濃縮処理や乾燥処理に供することによって防風通聖散エキスが得られる。
【0019】
防風通聖散エキスをエキス末として得るには、固形分を除去した抽出液を、必要に応じて濃縮した後に、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供すればよい。また、乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する際に、必要に応じて抽出液に、賦形剤を添加してもよい。このように賦形剤を添加することにより、乾燥時間を短縮することが可能になる。添加される賦形剤の種類や添加量については、一般的な漢方エキス末を製造する場合と同様である。
【0020】
また、防風通聖散エキスを軟エキスとして得るには、形分を除去した抽出液を、減圧濃縮等によって濃縮すればよい。また、軟エキスに、適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末としてもよい。
【0021】
本発明で使用される防風通聖散エキスは、エキス末又は軟エキスのいずれであってもよいが、好ましくはエキス末である。
【0022】
本発明の顆粒製剤に含まれる(A)成分の含有量(乾燥重量換算量)としては、例えば65重量%以上が挙げられる。本発明の顆粒製剤は、苦味抑制効果に優れているため、防風通聖散エキス量が比較的多くても、効果的に苦味抑止効果を得ることができる。このような観点から、本発明の顆粒製剤に含まれる(A)成分の含有量の好適な例としては、好ましくは68重量%以上、より好ましくは69重量%以上が挙げられる。本発明の顆粒製剤に含まれる(A)成分の含有量の上限としては特に制限されず、例えば90重量%以下が挙げられ、苦味抑止効果をより一層高める観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下が挙げられる。
【0023】
(B)ケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロース
本発明の顆粒製剤は、(B)成分としてケイ酸、デンプン、及び/又は結晶セルロースを含む。本発明で用いられる防風通聖散エキスは上述のようにショウキョウ量が多い生薬調合物から得られるものであるため顆粒製剤に配合されると本来的には苦味が目立ち服用性が悪いが、本発明の顆粒製剤では、(B)成分を含むことにより、苦味が抑制され良好な服用性が得られる。また、本発明の顆粒製剤では、苦味抑制に加え、さらに吸湿性に対する抑制性を得る目的で(B)成分を配合してもよい。
【0024】
デンプンとしては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等が挙げられ、これらは単独又は複数種の組み合わせて用いることができ、好ましくはトウモロコシデンプンが挙げられる。
【0025】
結晶セルロースは、繊維性植物からパルプとして得たα-セルロースを鉱酸で部分的に解重合し、精製した結晶性粉末である。本発明で用いられる結晶セルロースとしては特に限定されないが、苦味抑制効果をより一層向上させる観点、及び/又は、吸湿抑制効果をより一層向上させる観点から、嵩密度が0.2~0.3g/ml、好ましくは0.2~0.23g/ml;平均粒子径(JIS標準篩を用いて試料20gを15分間篩分することにより粒度分布を測定した場合における、篩下積算分布での積算50質量%粒子径とする。)が40~90μm、好ましくは45~60μm;安息角が34~50°好ましくは40~50°を示す結晶セルロースが挙げられる。結晶セルロースとしては、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(B)成分の含有量(総量)としては、抑制すべき苦味の程度、又は更に抑制すべき吸湿性の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば(A)成分100重量部(乾燥重量換算量)当たり0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは25重量部以上、一層好ましくは30重量部以上、より一層好ましくは35重量部以上、特に好ましくは40重量部以上となる量が挙げられる。(A)成分100重量部(乾燥重量換算量)当たりの(B)成分の含有量(総量)の上限としては特に限定されないが、例えば60重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、又は3重量部以下が挙げられる。発明の固形製剤における(B)成分の具体的な含有量(総量)としては、例えば0.5重量%以上、好ましくは0.8重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、一層好ましくは18重量%以上、より一層好ましくは25重量%以上、特に好ましくは28重量部以上が挙げられる。当該具体的な含有量(総量)の上限としては特に限定されないが、例えば60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、22重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は3重量%以下が挙げられる。
【0027】
その他の成分
本発明の顆粒製剤は、上記の(A)成分及び(B)成分に加え、製剤形態に応じた他の添加剤及び/又は基剤を含んでいてもよい。
【0028】
他の添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、顆粒製剤として製剤できることを限度として、使用する添加剤及び基剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0029】
他の添加剤及び基剤としては、乳糖、カルメロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン酸水素カルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドンが挙げられる。
【0030】
上記他の添加剤及び基材の中でも、乳糖を含むことが好ましい。本発明の顆粒製剤が乳糖を含む場合、乳糖の含有量としては、例えば20~40重量%、好ましくは24~35重量%、好ましくは26~32重量%が挙げられる。
【0031】
また、本発明の顆粒製剤は、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0032】
製剤形態
本発明は、顆粒製剤である。本発明の顆粒製剤は、比表面積が大きく本来的に苦味を特に感じやすい製剤形態でありながら効果的に苦味を抑制できる。
【0033】
製造方法
本発明の顆粒製剤は、上記の(A)成分及び(B)成分、並びに、必要に応じて添加される他の添加剤、基剤、及び/又は薬理成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製造することができる。好ましくは、本発明の顆粒製剤の製造方法は、上記の(A)成分及び(B)成分、並びに、必要に応じ他の添加剤、基材、及び/又は薬理成分と混合した防風通聖散エキス混合物を造粒する造粒工程を含む。
【0034】
用途
本発明の顆粒製剤は、防風通聖散エキスの効能が期待される用途であればどのような用途で用いられてもよい。防風通聖散エキスの効能が期待される用途としては、肥満症、高血圧又は肥満に伴う動悸、肩こり、のぼせ・むくみ、便秘、副鼻腔炎、湿疹、皮ふ炎、にきび等が挙げられる。
【0035】
用量・用法
本発明の顆粒製剤は、ヒト1人に対する1日当たりの用量が、(A)成分の前記生薬調合物換算量で28g以上、好ましくは28~73gとなるように設計することができる。本発明の顆粒製剤は、当該用量で、1日1~3回、好ましくは2又は3回の頻度で服用することができる。服用タイミングについては、特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、食前(食事の30分前)又は食間(食後2時間後)が好ましい。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
試験例1
(1)防風通聖散エキス末の調製
表1に示す組成の原料生薬調合物を調製し、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、各防風通聖散エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0038】
【表1】
【0039】
(2)防風通聖散エキスの顆粒製剤の作製
上記(1)で調製した防風通聖散エキス末を用いて、表2A~表2D及び表3A~表3Cに示す組成の顆粒剤組成物を調製し、造粒することで、顆粒製剤を得た。なお、結晶セルロースとしては、セオラスKG-802(旭化成ケミカルズ(株);嵩密度0.21g/ml、平均粒子径50μm、安息角49°)を用いた。
【0040】
(3)苦味評価
訓練されたパネラー10人による官能試験により、表2A~表2Dの顆粒剤組成物の苦味を評価した。苦味は、1点が苦味なし、10点が苦味が強いとする10段階評価にて行い、評点を平均化し、苦味の指標とした。苦味の指標が小さいほど、苦味抑制効果が高く服用性に優れている。さらに、比較例1、3、4における苦味の指標を100とした場合の各比較例及び各実施例の苦味の指標の相対値を苦味低減率として導出した。結果を表2A~表2Dに示す。
【0041】
(4)吸湿試験
表3A~表3Cの顆粒製剤を40℃、75%RHで放置し、放置前後の重量差を測定した。放置後の重量から放置前の重量を差し引き、重量変化量を導出した。比較例1、3、4における重量変化量を100とした場合の各比較例及び各実施例の重量変化量の相対値を吸湿率として導出した。吸湿率が低い程、吸湿抑制性に優れている。結果を表3A~表3Cに示す。
【0042】
【表2A】
【0043】
【表2B】
【0044】
【表2C】
【0045】
【表2D】
【0046】
【表3A】
【0047】
【表3B】
【0048】
【表3C】
【0049】
表2Aに示すとおり、ショウキョウ量が少ない生薬調合物から調製された防風通聖散エキス末を用いた顆粒製剤(参考例1及び参考例2)に比べて、所定比率以上のショウキョウ量を含む生薬調合物から調製された防風通聖散エキス末を用いた顆粒製剤(比較例1、3、4)では、苦味の課題が生じた。表2B~表2Dに示す通り、比較例1、3、4の顆粒製剤の苦味は、従前の防風通聖散の顆粒製剤に用いられている添加剤を配合した程度では抑制することができなかった(比較例2、5、6)一方で、無水ケイ酸、デンプン、又は結晶セルロースを配合することで、顕著に抑制された(実施例1~18)。
【0050】
表3A~表3Cに示す通り、比較例1、3、4の顆粒製剤に様々な賦形剤を配合したところ、無水ケイ酸、デンプン、又は結晶セルロースを加えた場合に、顕著な吸湿性抑制効果が認められた(実施例1~18)。