(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084273
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】供給搬送ユニット及びマルチ搬送選別システム
(51)【国際特許分類】
B07B 11/06 20060101AFI20230612BHJP
B07B 9/00 20060101ALI20230612BHJP
B01J 4/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B07B11/06
B07B9/00 A
B01J4/00 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198344
(22)【出願日】2021-12-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法(平成12年法律第44号)第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】大木 達也
(72)【発明者】
【氏名】野口 智弘
【テーマコード(参考)】
4D021
4G068
【Fターム(参考)】
4D021GA02
4D021GA08
4D021GA27
4D021GB03
4D021HA10
4G068AA03
4G068AB21
4G068AD01
4G068AD16
4G068AD45
4G068AF01
4G068AF31
(57)【要約】
【課題】選別対象物に対する選別処理のバリエーションを手間をかけずに拡張する供給搬送ユニット及びマルチ搬送選別システムを提供すること。
【解決手段】複数の選別機に連結された分配ユニットを有するマルチ搬送選別システム。マルチ搬送選別システムは、複数の選別機と分配ユニットとを連結し、選別機における選別産物を分配ユニットに回収させる回収路と、分配ユニットと複数の選別機の各々とを接続し、選別機に選別産物を供給するための供給路と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の選別機に連結された分配ユニットと、
複数の前記選別機と前記分配ユニットとを連結し、前記選別機における選別産物を前記分配ユニットに回収させる回収路と、
前記分配ユニットと複数の前記選別機の各々とを接続し、前記選別機に選別産物を供給するための供給路と、を有する、供給搬送ユニット。
【請求項2】
複数の前記選別機をさらに有し、
前記分配ユニットは、
前記供給路に接続される複数の排出口を有しており、
各選別機は、それぞれ、対応する前記排出口よりも下方に設けられている、請求項1に記載の供給搬送ユニット。
【請求項3】
前記分配ユニットは、
複数の前記排出口のうちの何れかに対応づけられる可動式の分配ノズルを有する、請求項2に記載の供給搬送ユニット。
【請求項4】
前記分配ユニットは、
選別産物が流入する流入口、前記分配ノズル、及び複数の前記排出口を含む分配機と、
前記分配機の前記流入口に連結され、前記回収路が接続される固気分離装置と、を有する、請求項3に記載の供給搬送ユニット。
【請求項5】
前記分配ユニットは、
選別産物が流入する流入口と、前記分配ノズルと、複数の前記排出口と、を含む2台以上の分配機を有すると共に、
前記分配機の1つの前記排出口と、その下方に配置された前記分配機の流入口とを接続する中継路を有する、請求項3に記載の供給搬送ユニット。
【請求項6】
最も上流に配置される前記分配機の前記流入口に連結され、前記回収路が接続される固気分離装置を有する、請求項5に記載の供給搬送ユニット。
【請求項7】
前記分配ユニットは、
前記分配機の前記流入口を開閉する分配開閉装置を有する、請求項4又は6に記載の供給搬送ユニット。
【請求項8】
前記排出口に接続される終端路と、
前記分配機の下方に配置されると共に、前記排出口に前記終端路を介して連結される回収容器を有する、請求項4~7の何れか一項に記載の供給搬送ユニット。
【請求項9】
前記分配ユニットの下流に配置され、選別産物を前記分配ユニットへ搬送する吸引装置を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の供給搬送ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の供給搬送ユニットと、
前記分配ユニット及び前記吸引装置の動作を制御する制御装置と、有する、マルチ搬送選別システム。
【請求項11】
請求項1~9の何れか一項に記載の供給搬送ユニットと、
複数の前記選別機を用いた選別対象物の選別処理における工程及び条件を管理する工程条件管理装置と、を有し、
前記工程条件管理装置は、
前記選別対象物の物性を示す情報を含む物性関連情報と、複数の前記選別機それぞれの特性を示す選別特性データとに基づいて、各選別機それぞれの運転条件を含む選別プロセスを決定する演算処理手段と、
少なくとも前記分配ユニット及び前記選別機の動作を制御する駆動処理手段と、を有するものである、マルチ搬送選別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再資源化の対象となる廃棄物に対し選別処理を施す供給搬送ユニット及びマルチ搬送選別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃家電製品や電子回路基板などの再資源化が行われており、こうした廃棄物の再資源化には、選別機を用いての選別処理が採り入れられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の再資源化システムは、種々の選別機を用いて行う複数の選別工程を経て最終産物を得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような従来のシステムは、予め決められた選別対象物の選別用に構築されているため、選別機の組み合わせはもとより、選別機間における選別産物の搬送経路も固定されている。すなわち、従来のシステムは、選別機の使用順序が固定されており、容易には変更できないため、選別対象物が限定され、拡張性に欠けるという実情がある。加えて、従来のシステムは、選別機による選別産物を下流側の選別機などへ搬送する際、手作業を伴うことがあるため、処理が煩雑で非効率となる。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、選別対象物に対する選別処理のバリエーションを手間をかけずに拡張する供給搬送ユニット及びマルチ搬送選別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る供給搬送ユニットは、複数の選別機と、複数の選別機に連結された分配ユニットと、複数の選別機と分配ユニットとを連結し、選別機における選別産物を分配ユニットに回収させる回収路と、分配ユニットと複数の選別機の各々とを接続し、選別機に選別産物を供給するための供給路と、を有するものである。
【0007】
本発明の一態様に係るマルチ搬送選別システムは、分配ユニットの下流に配置され、選別産物を分配ユニットへ搬送する吸引装置を有する上記の供給搬送ユニットと、分配ユニット、選別機、及び吸引装置の動作を制御する制御装置と、有するものである。
【0008】
本発明の一態様に係るマルチ搬送選別システムは、上記の供給搬送ユニットと、複数の選別機を用いた選別対象物の選別処理における工程及び条件を管理する工程条件管理装置と、を有し、工程条件管理装置は、選別対象物の物性を示す情報を含む物性関連情報と、複数の選別機それぞれの特性を示す選別特性データとに基づいて、各選別機それぞれの運転条件を含む選別プロセスを決定する演算処理手段と、少なくとも分配ユニット及び選別機の動作を制御する駆動処理手段と、を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、選別機における選別産物を回収路を介して分配ユニットに回収させ、分配ユニットから選別産物を各供給路を介して任意の選別機に振り分けることができる。よって、選別機の取捨選択と使用順序の柔軟な変更が可能となるため、選別対象物に対する選別処理のバリエーションを、手間をかけずに拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るマルチ搬送選別システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の供給搬送ユニットの一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図1の供給搬送ユニットの他の例を示す概略構成図である。
【
図4】
図1の工程条件管理装置の機能的な構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図1の制御装置の機能的構成と、その制御対象となるアクチュエータなどの周辺機器を例示したブロック図である。
【
図6】選別対象物の電子素子の構成及びサイズ分布を例示した表である。
【
図7】気流選別機による、相対的に小さいサイズの各電子素子における積算浮揚率を例示した表である。
【
図8】気流選別機による、中間サイズの各電子素子における積算浮揚率を例示した表である。
【
図9】気流選別機による、相対的に大きいサイズの各電子素子における積算浮揚率を例示した表である。
【
図10】吊り下げ型磁選機による、相対的に小さいサイズの各電子素子における積算浮揚率を例示した表である。
【
図11】吊り下げ型磁選機による、中間サイズの各電子素子における積算浮揚率を例示した表である。
【
図12】吊り下げ型磁選機による、相対的に大きいサイズの各電子素子における積算浮揚率を例示した表である。
【
図13】
図1の供給搬送ユニットが3台の選別機を有する場合の選別プロセスの一例を示す説明図である。
【
図14】
図13の選別プロセスにより選別処理を行った場合の選別産物及び最終産物の予測量を例示した表である。
【
図15】
図14の気流選別での選別産物の浮揚と落下を模式的に例示した説明図である。
【
図16】
図4のデータベース部に格納される指標データベースを概略的に例示した表である。
【
図17】
図16の指標データベースに紐付くプロセス詳細データを例示した表である。
【
図18】
図1の供給搬送ユニットによる選別処理で複数のターゲットを回収する場合の選別プロセスの一例を示す説明図である。
【
図19】本発明の実施の形態1に係る指標データベースの作成方法について例示したフローチャートである。
【
図20】本発明の実施の形態1に係る工程条件管理方法の動作例を示すフローチャートである。
【
図21】本発明の実施の形態1に係る供給搬送方法の動作例を示すフローチャートである。
【
図22】
図2の供給搬送ユニットを
図21の原料投入工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図23】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第1選別工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図24】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第1搬送工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図25】
図2の供給搬送ユニットを
図21の供給工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図26】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第2選別工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図27】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第2搬送工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図28】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第1回収工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図29】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第3搬送工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図30】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第2回収工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図31】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第4搬送工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図32】
図2の供給搬送ユニットを
図21の第3回収工程に対応づけて例示した説明図である。
【
図33】本発明の実施の形態2に係るマルチ搬送選別システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【
図34】本発明の実施の形態3に係るマルチ搬送選別システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態1におけるマルチ搬送選別システムの全体的な構成例について説明する。
図1に示すように、マルチ搬送選別システム100は、供給搬送ユニット10と、制御装置70と、工程条件管理装置80と、により構成されている。供給搬送ユニット10は、選別対象物を選別するために、複数の構成部材と複数の駆動機構などを組み合わせた構成となっている。選別対象物とは、選別前の対象物、すなわち選別処理の対象となっている物である。選別対象物は、廃電気製品又は廃電子製品内の電子基板から剥離回収した各種電子素子及び部品などである。選別対象物は、例えば、廃家電製品の破砕産物であり、廃家電基板から剥離された各種電子素子などがこれに相当する。
【0012】
制御装置70は、供給搬送ユニット10に搭載された種々のアクチュエータの動作を制御するものである。工程条件管理装置80は、選別対象物に対する選別処理全体を管理するものである。
図1では、工程条件管理装置80と制御装置70とが、インターネットなどのネットワークNを介して通信可能に接続されている。もっとも、工程条件管理装置80と制御装置70とは、LANケーブルなどにより有線接続されてもよく、Bluetooth(登録商標)又はWiFi(登録商標)などの無線通信の規格によりデータ通信を行うようにしてもよい。
【0013】
次に、
図2を参照して、
図1の供給搬送ユニット10の一例について具体的に説明する。
図2に例示する供給搬送ユニット10は、選別機Z
1及び選別機Z
2と、選別機Z
1及び選別機Z
2に連結された分配ユニットXと、を有している。以下、選別機Z
1と選別機Z
2とを区別せずに指す場合、これらを総称して選別機Zともいう。もっとも、供給搬送ユニット10は、3台以上の選別機Zを有していてもよい。すなわち、供給搬送ユニット10は、複数の選別機Zと、複数の選別機Zに連結された分配ユニットXと、を有するものである。
【0014】
選別機Zとしては、振動スクリーン、比重選別機(気流選別機など)、形状選別機、磁選機(吊り下げ型磁選機、ドラム型磁選機など)、渦電流選別機などが想定される。選別機Zは、選別対象物又は選別産物を定量的に選別機本体へ供給するフィーダー部25を有している。選別産物とは、選別機Zでの選別処理によって回収される産物のことである。本実施の形態1において、各選別機Zは、制御装置70による自動制御で駆動するため、作業員は、制御装置70が各選別機Zの動作を制御している間、選別機Zの手動操作を行う必要がない。
【0015】
供給搬送ユニット10は、複数の選別機Zと分配ユニットXとを連結し、選別機Zにおける選別産物を分配ユニットXに回収させる回収路30を有している。回収路30は、選別機Zでの選別後による選別産物を分配ユニットXに回収させるための搬送路である。
図2における回収路30は、選別機Z
1側に設けられる第1回収路31と、選別機Z
2側に設けられる第2回収路32と、分配ユニットX側に設けられる第3回収路33と、を有している。回収路30には、第1回収路31と第2回収路32と第3回収路33とに接続され、選別機Z
1及び選別機Z
2から分配ユニットXに向かう流路を切り替える流路切替装置39が設けられている。流路切替装置39は、例えば、三方ボール弁などのエアー式の三方弁により構成される。
【0016】
第1回収路31は、流路切替装置39から選別機Z1に向かって延びており、選別機Z1側の端部には、選別機Z1から選別産物を回収する2つの回収ホッパー35a及び35bが設けられている。第1回収路31は、主路31aと、一方の回収ホッパー35aへ分岐する支路31bと、他方の回収ホッパー35bへ分岐する支路31cと、を有している。第2回収路32は、流路切替装置39から選別機Z2に向かって延びており、選別機Z2側の端部には、選別機Z2から選別産物を回収する2つの回収ホッパー35c及び35dが設けられている。第2回収路32は、主路32aと、一方の回収ホッパー35cへ分岐する支路32bと、他方の回収ホッパー35dへ分岐する支路32cと、を有している。回収ホッパー35a~35dを区別せずに指す場合、これらを総称して回収ホッパー35ともいう。
【0017】
支路31b、支路31c、支路32b、及び支路32cには、制御装置70により制御される開閉装置38が設けられている。開閉装置38は、例えば、ナイフゲートバルブなどのエアー式の二方弁により構成される。第3回収路33は、流路切替装置39から分配ユニットXに向かって延び、分配ユニットXに接続されている。第3回収路33は、選別機Z1又は選別機Z2における選別産物を分配ユニットXへ搬送するための搬送路である。
【0018】
ここで、選別産物が相対的に詰まりやすい支路31c及び支路32cのエルボ部分(湾曲している部分)には、三方分岐菅(いわゆる分岐チーズ)を採用してもよい。そして、開閉装置38から流路切替装置39とは反対側に分岐する管(開閉装置38と流路切替装置39とをつなぐ流路に属さない管の端部)を開放状態として空気の取り込み口とし、選別産物の詰まりを防ぐようにしてもよい。
【0019】
供給搬送ユニット10は、分配ユニットXと複数の選別機Zの各々とを接続し、選別機Zに選別産物を供給する供給路20を有している。供給路20は、分配ユニットX内の選別産物を選別機Zへ供給する搬送路である。
図2の供給搬送ユニット10は、2つの供給路20を有しており、一方の供給路20は分配ユニットXから選別機Z
1に向かって延び、他方の供給路20は分配ユニットXから選別機Z
2に向かって延びている。もっとも、分配ユニットXに選別対象物を投入した場合、供給路20は、選別機Zに選別対象物を供給するものとなる。
【0020】
図2の分配ユニットXは、選別機Zに対する高さを確保するため、土台部15の上部に設置されている。分配ユニットXと選別機Zとの高低差は、分配ユニットXから供給路20を介して選別機Zまで選別産物等を自由落下させたとき、該選別産物等が選別機Zまで円滑に搬送されるように設定される。なお、
図2では、土台部15を極めて簡単に例示しているが、土台部15は、分配ユニットXと選別機Zとの高低差が上記程度となるように構成すればよく、形状等は問わない。
【0021】
分配ユニットXは、固気分離装置11と、分配機12と、を有している。固気分離装置11と分配機12との間には、選別産物が流入する流入口13が設けられており、流入口13には分配開閉装置13aが配設されている。固気分離装置11は、例えばサイクロン型の固気分離装置であり、制御装置70により制御される。固気分離装置11は、回収した選別産物の粉塵を除去することにより、分配機12への粉塵の流入を抑制するものである。固気分離装置11は、回収路30を介して回収した選別産物を流入口13を介して分配機12へ受け渡す。分配開閉装置13aは、流入口13を開閉するものである。分配開閉装置13aは、閉の状態において、固気分離装置11に回収された選別産物の分配機12への流入を阻止する。例えば、分配開閉装置13aは、選別産物が回収路30を介して固気分離装置11へ吸引搬送されている際に、該選別産物が分配機12へ流入することを防ぐ。
【0022】
分配機12は、モータ(図示せず)の駆動により動作するノズル14と、複数の排出口(図示せず)と、を有している。ノズル14は、流入口13側の端部を中心に回動し、他方の端部が複数の排出口のうちの何れかに対応づけて配置される。一方の供給路20は1つの排出口に接続されており、他方の供給路20は、他の1つの排出口に接続されている。ノズル14が、選別機Z1へ向かう供給路20に接続された排出口に対応づけられると、固気分離装置11から落下する選別産物がノズル14を介して選別機Z1へ供給される状態となる。ノズル14が、選別機Z2へ向かう供給路20に接続された排出口に対応づけられると、固気分離装置11から落下する選別産物がノズル14を介して選別機Z2へ供給される状態となる。
【0023】
供給搬送ユニット10は、分配機12に設けられた複数の排出口のうちの何れかに接続された終端路40を2つ有している。各終端路40は、それぞれ、最終産物を回収するための回収容器60に向かって延びている。最終産物は、選別機Zにおける選別産物のうち、最終的に回収することが確定したもの、及び最終的に除去することが確定したものである。すなわち、最終産物は、回収対象物と除去対象物とを合わせたものである。ここで、回収対象物とは、選別対象物中に存在する高価値物などの回収したい成分のことである。つまり、回収対象物は、ユーザが再資源化等のために回収の対象とする電子素子などである。除去対象物とは、選別対象物中に存在する有害物などの除去したい成分のことである。回収対象物及び除去対象物としては、例えば、廃家電基板から剥離された各種電子素子が想定される。
【0024】
供給搬送ユニット10は、制御装置70により制御されて動作する吸引装置Yを有している。吸引装置Yは、分配ユニットXの下流に配置され、選別産物の空気輸送を行うものである。吸引装置Yと分配ユニットXとは、吸引路41を介して接続されている。吸引装置Yは、例えば、気体にエネルギーを与えて圧力を上げ、流速を増加させて送出するブロワなどの送風機により構成される。吸引装置Yは、選別機Zにおける選別産物を、回収路30を介して分配ユニットX側、つまり固気分離装置11側へ吸引する。
【0025】
本実施の形態1において、供給搬送ユニット10は、分配ユニットXと回収容器60との間に、終端路40内の自由落下により選別産物等を回収容器60へ搬送できるだけの高低差がついている。この高低差は、分配ユニットX内の選別産物(最終産物)が、終端路40内を自由落下して回収容器60へ搬送される程度に設定される。すなわち、終端路40には、分配ユニットX内の選別産物又は対象物が、自由落下により回収容器60まで搬送可能な程度の傾斜がつけられている。
【0026】
供給搬送ユニット10は、各選別機Zのフィーダー部25及び各回収ホッパー35のうちの少なくとも1つに設けられ、フィーダー部25又は回収ホッパー35に蓄えられている選別産物の量を計測するレベル計37(
図2では不図示)を有している。レベル計37は、計測した選別産物の量を示すレベル情報を逐次又は定期的に制御装置70へ送信する。
【0027】
供給搬送ユニット10は、分配開閉装置13a及び複数の開閉装置38を動作させるために機能するコンプレッサ65(
図2では不図示)を有している。本実施の形態1のコンプレッサ65は、圧縮空気の吐出により種々の機械の動力源となるエアコンプレッサであり、分配開閉装置13a及び複数の開閉装置38に接続されている。なお、供給搬送ユニット10は、排出口に接続され、分配ユニットXに搬送される選別産物を一時保存する退避ホッパー(
図2では不図示)を有していてもよい。供給搬送ユニット10は、退避ホッパーにレベル計37を設けた構成としてもよい。
【0028】
ここで、吸引装置Yによる吸引時の選別産物の流れにおける各構成部材の位置関係について定義する。吸引装置Yによる吸引時(回収時)は、吸引装置Yの動作に起因して、選別機Zにおける選別産物が、選別機Zから回収路30を経て固気分離装置11に流れ込む。すなわち、回収時は、固気分離装置11に対し、選別機Zが上流側であり、吸引装置Yが下流側である。一方、選別産物(最終産物)が、固気分離装置11から分配機12を経て選別機Z又は回収容器60へ搬送されるとき、つまり搬送時は、固気分離装置11及び分配機12に対し、選別機Z及び回収容器60が下流側である。
【0029】
次に、
図3を参照して、
図1の供給搬送ユニット10の他の構成例について説明する。
図2の例と同等の構成部材については同一の符号を付して説明は省略する。
図3の供給搬送ユニット10は、空気輸送を用いた6連の選別システム(起点となる選別機1台と選別順序可変の選別機6台とを組み合わせたシステム)の例である。
図3では、煩雑化を避けるため、符号の一部を省略する。
図3の供給搬送ユニット10は、選別機Z
1~Z
7と、選別機Z
1~Z
7に連結された分配ユニットXと、を有している。選別機Z
1~Z
7を区別せずに指す場合、これらを総称して選別機Zともいう。
【0030】
供給搬送ユニット10は、複数の選別機Zと分配ユニットXとを連結し、選別機Zにおける選別産物を分配ユニットXに回収させる回収路30を有している。回収路30には、複数の流路切替装置39が設けられている。制御装置70が各流路切替装置39を制御することにより、回収路30の流路構成が変更され、吸引装置Yの吸引によって選別産物が気流搬送される。
【0031】
図3の分配ユニットXは、選別産物が流入する流入口13と、分配ノズル14と、複数の排出口12aと、を含む2つの分配機12を有している。分配ノズル14は、可動式であり、分配ユニットXにおいて回収路30を介して取り込んだ選別産物を、対応づけられた排出口12aへ流し込むためのものである。分配機12は、分配ノズル14を動作させるモータ14aを有している。
図3の分配機12は、9つの排出口12aを有しており、そのうちの5つは、各選別機Zへ向かって延びる供給路20に接続されている。
【0032】
分配ユニットXは、分配機12の1つの排出口12aと、その下方に配置された分配機12の流入口13とを接続する中継路21を有している。
図3の分配ユニットXは、2台の分配機12を有しており、中継路21は、上流側の分配機12の1つの排出口12aと、下流側の分配機12の流入口13と、を接続している。なお、ここでの上流・下流は、搬送時のものである。
図3の分配機12は、予備の排出口12a(
図3では破線で囲っている)を2つ有している。予備の排出口12aは、選別機Zの増設や分配機12の増設などに対応するものであり、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0033】
分配ユニットXは、最も上流に配置される分配機12の流入口13に連結され、回収路30が接続される固気分離装置11を有している。上流側の分配機12の流入口13には、分配開閉装置13aが設けられている。分配開閉装置13aは、中継路21が連結される下流側の分配機12の流入口13にも設けられている。
【0034】
ここで、
図3の供給搬送ユニット10は、選別機Z
6が比較的高所(
図3では上流側の分配機12の排出口と同程度の高さ)に配置されているため、上流側の分配機12からの自由落下では、選別機Z
6のフィーダー部25に選別産物を供給することができない。よって、
図3の分配ユニットXは、選別機Z
6の上部に固気分離装置11が設けられている。すなわち、供給搬送ユニット10は、回収路30の最上部に設けられた流路切替装置39(最も下流に設けられた流路切替装置39)によって該回収路30が分岐されている。そして、分岐されている回収路30の一方は、分配機12に連結された固気分離装置11に接続され、分岐されている回収路30の他方は、選別機Z
6の上部に配置された固気分離装置11に接続されている。
【0035】
供給搬送ユニット10は、2台の固気分離装置11の下流側、すなわち吸引装置Y側に、微粒子などの粉塵を回収する粉塵回収装置110が設けられている。粉塵回収装置110は、集塵フィルターを備え、集塵機としても機能するサイクロン型の固気分離装置である。粉塵回収装置110は、粉塵が集められるダストボックス110aを有している。
【0036】
分配ユニットXは、1つ又は複数の退避ホッパー26を有していてもよい。
図3の分配ユニットXは、3つの退避ホッパー26が、それぞれ、下流側の分配機12の3つの排出口12aに接続されている。退避ホッパー26は、選別産物を一時的に貯留するためのものである。フィーダー部25、退避ホッパー26、及び回収ホッパー35には、それぞれ、レベル計37が設けられている。そのため、制御装置70は、各レベル計37から送信されるレベル情報をもとに、選別産物を退避ホッパー26から固気分離装置11などへ移動させるタイミングや、選別産物を分配機12から選別機Zなどへ移動させるタイミングを調整することができるため、選別処理の効率化を図ることができる。
【0037】
供給搬送ユニット10は、分配機12の下方に配置されると共に、排出口12aに終端路40を介して連結される回収容器60を有している。回収容器60は、分配機12から送り込まれる最終産物を回収し、一時的に貯留するものである。
図3の分配ユニットXは、4つの回収容器60を有しており、各回収容器60は、下流側の分配機12が有する4つの排出口12aに、終端路40を介して1対1で接続されている。なお、
図3の供給搬送ユニット10においても、
図2の例と同様、回収路30の各回収ホッパー35の近傍には開閉装置38(図示せず)が設けられている。
【0038】
次に、
図4を参照して、工程条件管理装置80の機能的構成について説明する。工程条件管理装置80は、供給搬送ユニット10での選別処理における工程及び条件を管理するものである。工程条件管理装置80は、マルチ搬送選別システム100を管理する管理者などが使用するPC(Personal Computer)などにより構成される。PCには、タブレットPC、ノートPC、デスクトップ型PCなどが含まれる。
図4に示すように、工程条件管理装置80は、通信部81と、記憶部82と、制御部83と、データベース部84と、入力部85と、表示部86と、を有している。
【0039】
通信部81は、制御装置70などの外部機器との間で有線又は無線による通信を行うためのインタフェースである。記憶部82には、工程条件管理プログラム82pなどの制御部83の動作プログラムの他、物性関連情報82m及び選別特性データ82nなどの種々の情報が記憶される。物性関連情報82mは、選別対象物の物性を示す情報を含んでいる。つまり、物性関連情報82mは、選別対象物に含まれる電子素子などの成分の電気伝導率、磁性、比重、導電性などの情報を含む。物性関連情報82mは、選別対象物の構成を示す構成データを含む。構成データは、例えば、選別対象物を構成する電子素子などの成分それぞれのサイズごとの存在比率を示す情報である。物性関連情報82mは、選別対象物及びこれに含まれる電子素子などの成分の大きさ、形状、重さなどの情報を含んでいてもよい。
【0040】
より具体的に、物性関連情報82mは、選別対象物に含まれる1又は複数の回収対象物の電気伝導率、磁性、比重、導電性などの情報を含む。物性関連情報82mは、選別対象物に含まれる1又は複数の回収対象物の大きさ、形状、重さなどの情報を含んでいてもよい。回収対象物の大きさの情報は、例えば、回収対象物の「幅×奥行×高さ」といったサイズ情報を含んでいてもよい。物性関連情報82mは、選別対象物に含まれる1又は複数の除去対象物の電気伝導率、磁性、比重、導電性などの情報を含んでいてもよく、選別対象物に含まれる1又は複数の回収対象物の大きさ、形状、重さなどの情報を含んでいてもよい。
【0041】
選別特性データ82nは、選別機Zの特性を示す情報であり、選別機Zごとに設定される。例えば、選別特性データ82nは、選別機Zによる選別処理の不完全性を示す情報を含む。より具体的に、選別特性データ82nは、選別機Zの複数の運転条件と、選別対象物に含まれる各素子それぞれの抽出率とが対応づけられたテーブル情報である条件対応データを含む。条件対応データは、例えば、選別機Zの複数の運転条件と、複数の電子素子と、選別機Zの各運転条件における電子素子の選別結果とを関連付けた情報である。条件対応データは、素子のサイズごとに整理されており、選別機Zごとに設定されている。選別特性データ82nは、選別機Zごとに運転条件と選別成績とを対応づけたテーブル情報である成績テーブルを含んでいてもよい。記憶部82は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk Drive)等により構成することができる。
【0042】
データベース部84は、複数の選別プロセスと各選別プロセスの選別指標とが対応づけられた指標データベース84aを格納する記憶装置である。より具体的に、指標データベース84aは、選別プロセスごとに選別指標の予測値が整理されたデータベースである。データベース部84は、RAM及びROM、フラッシュメモリ等のPROM、又はHDD等により構成することができる。
【0043】
本実施の形態1において、選別プロセスとは、選別機Zの使用順序と選別機Zの運転条件との組み合わせのことである。より具体的に、選別プロセスを構成する要素には、選別処理に使用する選別機Zの種類と、選別機Zの使用順序と、選別機Zの運転条件と、がある。選別指標は、選別プロセスの評価用の指標であり、ユーザが回収対象物の回収状況を評価するためのものである。選別指標には、回収対象物の回収率、回収対象物の品位(純度)、及び回収対象物の分離効率のうちの少なくとも1つが含まれる。以下、回収対象物の回収率のことを「回収率」ともいい、回収対象物の品位のことを「対象品位」ともいう。回収対象物の分離効率は、具体的には、選別対象物における回収対象物とそれ以外の物との分離効率のことであり、以下「分離効率」ともいう。
【0044】
回収率は、選別対象物に含まれる回収対象物の量に対する、最終産物に含まれる回収対象物の回収量の割合のことである。対象品位は、最終産物の全体量に対する、最終産物に含まれる回収対象物の回収量の割合のことである。分離効率は、最終産物における回収対象物の回収率から、最終産物における回収対象物以外のものの混入率を減算した値である。
【0045】
選別指標としては、総処理量を採用してもよい。総処理量は、1つの選別プロセスで使用される選別機Zで処理される選別対象物あるいは選別産物の量の合計である。総処理量は、選別機Zのトータルでの稼働時間に関連するため、省電力化などの目安となる情報である。選別指標としては、選別機Zの運転台数を採用してもよい。選別機Zの運転台数が少ないことは、選別機Zの保守や省エネルギー化などの目安となる。選別指標としては、除去対象物の品位を採用してもよい。除去対象物の品位は、最終産物の全体量に対する、最終産物に含まれる除去対象物の回収量の割合のことである。
【0046】
入力部85は、例えば、キーボードと、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスと、を含んで構成される。入力部85は、ユーザによる入力操作を受け付け、受け付けた内容に応じた操作信号を制御部83へ送信する。表示部86は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、制御部83からの指示により種々の情報を表示する。ユーザは、表示部86を視認しながら、入力部85を介して物性関連情報82m及び選別特性データ82nの入力処理を行うことができる。もっとも、工程条件管理装置80は、入力部85及び表示部86の代わりに、文字又は画像等を表示する表示パネルと、該表示パネルに積層されてタッチ操作を検出する検出手段と、を含むタッチパネルを有していてもよい。工程条件管理装置80は、タッチパネルと入力部85とを併せ持つものであってもよい。
【0047】
ユーザは、マルチ搬送選別システム100による選別処理の目的に合わせた選別条件を設定することができる。選別条件は、マルチ搬送選別システム100による選別処理をユーザのニーズに合わせて最適化するための条件である。例えば、ユーザは、制御部83が表示部86に表示させる指標設定画面(不図示)を用い、入力部85を介して、選別指標に基づく選別条件を設定することができる。選別条件は、少なくとも1つの選別指標を要素とする条件であり、適宜追加や変更などを行うことができる。ユーザは、入力部85を介して回収対象物及び除去対象物の設定を行うことができる。
【0048】
選別条件には、下記(1)~(10)などがあり、これらは、予め選択可能に登録されていてもよい。(1)選別対象物における回収対象物とそれ以外の物との分離効率が最大となる条件(分離効率最大条件)。(2)選別対象物における回収対象物とそれ以外の物との分離効率が効率閾値以上となる条件(分離効率優位条件)。(3)選別産物中の回収対象物の回収率が最大となる条件(回収率最大条件)。(4)選別産物中の回収対象物の品位が最大となる条件(品位最大条件)。(5)選別産物中の回収対象物の品位が品位閾値以上となり、かつ回収率が最大となる条件(回収率優先条件)。(6)選別産物中の回収対象物の回収率が回収閾値以上となり、かつ品位が最大となる条件(品位優先条件)。(7)除去対象物の品位が除去閾値以下となり、かつ、回収対象物の回収率が最大となる条件(除去回収率条件)。(8)除去対象物の品位が除去閾値以下となり、かつ、回収対象物の品位が最大となる条件(除去品位条件)。(9)選別産物中の回収対象物の品位が品位閾値以上、回収率が回収閾値以上となり、かつ、使用する選別機が最小となる条件(選別機数条件)。(10)選別産物中の回収対象物の品位が品位閾値以上、回収率が回収閾値以上となり、かつ、各選別機における処理量の総和が最小となる条件(処理量条件)。さらに、選別条件は、上記(1)~(10)のような条件を複数組み合わせたものであってもよい。
【0049】
効率閾値は、分離効率の最大値をもとに設定される。具体的には、例えば、分離効率の最大値に対する割合を示す導出係数が設定しておき、制御部83が、分離効率の最大値に導出係数を乗ずることにより効率閾値を求めるようにしてもよい。導出係数は、例えば0.80(80%)に設定され、適宜変更することができる。品位閾値及び回収閾値は、回収対象物の種類等に応じて予め設定され、適宜変更することができる。除去閾値は、除去対象物の種類等に応じて予め設定され、適宜変更することができる。各閾値は、選別条件ごとに異なる値としてもよく、各選別条件に共通する値としてもよい。
【0050】
制御部83は、入力処理手段83aと、出力処理手段83bと、演算処理手段83cと、を有している。入力処理手段83aは、入力部85を介して物性関連情報82m及び選別特性データ82nが直接入力された場合、入力された物性関連情報82m及び選別特性データ82nを記憶部82に記憶させる。物性関連情報82m及び選別特性データ82nは、ユーザによる直接入力に限定されない。例えば、入力処理手段83aは、選別対象物としての基板等の種類を示す対象情報(基板の年式や型番など)の入力を受けたとき、対象情報に紐付く物性関連情報82mをネットワークNを介して外部から取得するようにしてもよい。入力処理手段83aは、複数の対象情報に紐付く物性関連情報82mを、ユーザによる手入力から取得し、あるいはネットワークNを介して取得し、対象情報と物性関連情報82mとを対応づけたテーブル情報(物性テーブル)を生成して記憶部82に記憶させてもよい。そして、入力処理手段83aは、ユーザが対象情報を入力した際、該対象情報を物性テーブルに照らして物性関連情報82mを読み出すようにしてもよい。入力処理手段83aは、選別機Zの型番などをもとに、外部から選別特性データ82nを取得するようにしてもよい。
【0051】
出力処理手段83bは、ユーザによる入力部85の操作に応じて、種々の情報を含む画面を表示部86に表示させる。出力処理手段83bは、選別条件に適合する少なくとも1つの選別プロセスと、これに対応する選別指標の予測値とを表示部86に表示させる機能を有している。ユーザは、表示部86を視認しつつ、入力部85を介して選別プロセスの選択操作を行うことができる。演算処理手段83cは、選別プロセスの選択操作に応じて、選択された選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを生成する。ここで、工程条件管理装置80は、LED(light emitting diode)などの光源を含む発光部やスピーカを含む報知部を有していてもよく、この場合、出力処理手段83bは、発光部を種々の態様で発光させ、報知部に音又は音声を報知させるとよい。
【0052】
演算処理手段83cは、選別対象物の物性を示す情報を含む物性関連情報82mと、複数の選別機Zそれぞれの特性を示す選別特性データ82nとに基づいて、各選別機Zそれぞれの運転条件を含む選別プロセスを決定するものである。演算処理手段83cは、物性関連情報82mと選別特性データ82nとに基づいて、どの選別機Zを使用し、どの選別機Zを使用しないかを決定する機能、つまり選別対象物の選別処理に用いる選別機Zを選定する機能を有している。すなわち、演算処理手段83cは、使用する少なくとも1台の選別機Zを選定する機能を有している。演算処理手段83cは、物性関連情報82mと選別特性データ82nとに基づき、選別プロセスの要素として、選定した複数の選別機Zの使用順序を決定する機能を有している。すなわち、演算処理手段83cは、選定した複数の選別機Zをどの順序で使用するかを決定する機能を有している。
【0053】
演算処理手段83cは、物性関連情報82m及び選別特性データ82nに基づいて、複数の選別プロセスを導出する。そして、演算処理手段83cは、各選別プロセスそれぞれの評価用である選別指標の予測値を求め、求めた選別プロセスごとの選別指標の予測値をもとに、外部入力された選別条件に合致する選別プロセスを選定する。すなわち、演算処理手段83cは、選別指標の予測値をもとに、複数の選別プロセス間の相対比較を行うことにより1又は複数の選別プロセスを選定する。演算処理手段83cは、選別指標の予測値として、最終産物における回収対象物の回収率を求める機能を有している。演算処理手段83cは、選別指標の予測値として、回収率から最終産物における回収対象物以外のものの混入率を減算した値である分離効率を求める機能を有している。演算処理手段83cは、選別指標の予測値として、最終産物の全体量に対する、最終産物に含まれる回収対象物の回収量の割合である対象品位を求める機能を有している。
【0054】
演算処理手段83cは、物性関連情報82mと選別特性データ82nとに基づいて、選別機Zの使用順序と選別機Zの運転条件とを組み合わせた選別プロセスを複数求めると共に、求めた複数の選別プロセスそれぞれの評価用である選別指標の予測値を求め、選別プロセスと選別指標の予測値とを対応づけた指標データベース84aを作成する機能を有している。そして、演算処理手段83cは、外部入力された選別条件をもとに、指標データベース84a内の複数の選別プロセス相互の選別指標の予測値を比較し、選別条件に合致する選別プロセスを選定する機能を有している。演算処理手段83cは、指標データベース84aから、選定した選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを抽出する機能を有している。つまり、演算処理手段83cは、指標データベース84a内のデータを選別条件に基づいてソートする等により、該選別条件に適合する選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを抽出する選別シミュレータ機能を有している。そして、演算処理手段83cは、抽出した供給選別データを制御装置70へ送信するようになっている。
【0055】
図3では、2つの分配機12を有する分配ユニットXを例示したが、これに限定されない。分配ユニットXは、1台の分配機12を有する構成としてもよく、3台以上の分配機12を有する構成としてもよい。分配機12の排出口12aの数は適宜変更することができる。例えば、
図3の例よりも多くの排出口12aを備えた分配機12を用いれば、1台の分配機12によって
図3と同様に機能するシステムを構築することができる。データベース部84は、工程条件管理装置80の外部に設けられた記憶装置であってもよく、クラウドコンピューティングに基づくクラウドサーバ、もしくは物理サーバなどに設けられてもよい。もっとも、工程条件管理装置80は、データベース部84を設けずに構成し、記憶部82に指標データベース84aを格納してもよい。
【0056】
次に、
図5を参照して、制御装置70の機能的構成について説明する。
図5に示すように、制御装置70は、通信部71と、記憶部72と、駆動処理部73と、を有している。通信部71は、工程条件管理装置80との間で有線又は無線による通信を行うためのインタフェースである。記憶部72には、供給搬送プログラム72pなどの駆動処理部73の動作プログラムの他、種々の情報が記憶される。記憶部72は、RAM及びROM、フラッシュメモリ等のPROM、又はHDD等により構成することができる。
【0057】
駆動処理部73は、工程条件管理装置80から送信される供給選別データをもとに、分配ユニットX、吸引装置Y、複数の選別機Z、流路切替装置39、及びコンプレッサ65などを制御する。駆動処理部73は、コンプレッサ65を介して分配開閉装置13a及び開閉装置38の開閉動作を制御する。なお、供給搬送ユニット10は、複数の選別機Z、複数のレベル計37、及び複数の開閉装置38を有しているが、
図5では、簡略化のため、これらを1つだけ図示している。また、
図5では、1つのコンプレッサ65を例示しているが、供給搬送ユニット10は、複数のコンプレッサ65を有していてもよい。要するに、分配開閉装置13a及び各開閉装置38のそれぞれの開閉動作を駆動処理部73が個別に制御できる構成を採るとよい。
【0058】
より具体的に、駆動処理部73は、情報処理手段73aと、流路処理手段73bと、搬送処理手段73cと、選別処理手段73dと、を有している。情報処理手段73aは、工程条件管理装置80から送信される供給選別データに基づく指令信号を、流路処理手段73b、搬送処理手段73c、及び選別処理手段73dへ出力するものである。情報処理手段73aは、各レベル計37から送信されるレベル情報を用いて、指令信号を出力するタイミングを調整する。
【0059】
流路処理手段73bは、情報処理手段73aからの指令信号に応じて、コンプレッサ65を制御することにより、分配開閉装置13a及び開閉装置38の開閉動作を制御する。流路処理手段73bは、開閉装置38の開度を、まず設定開度にし、待機時間の経過を待って100%にする、といったように、開閉装置38を段階的に開くよう構成してもよい。一度に大量の選別産物がエルボ部分や分岐箇所などに投入されると、詰まりが生じやすくなるが、開閉装置38を段階的に開くようにすれば、選別産物の投入量が抑えられるため、選別産物の詰まりを防ぐことができる。かかる制御は、支路32cのエルボ部分に三方分岐菅を採用する場合にも有用である。
【0060】
設定開度及び待機時間は、例えば、回収ホッパー35に、容量の上限まで選別産物を貯めた状態で搬送処理を行う際、配管の詰まりが生じないことを条件として設定するとよい。具体的には、設定開度は、例えば50%に設定され、適宜変更することができる。待機時間は、例えば、容量が約20リットルの回収ホッパー35であれば20秒、といったように、回収ホッパー35の容量に合わせて設定することができる。もっとも、待機時間は、選別機Zの種類や選別産物の種類等に応じて調整するとよい。
【0061】
また、流路処理手段73bは、情報処理手段73aからの指令信号に応じて、流路切替装置39の開閉状態の切替制御を行う。搬送処理手段73cは、情報処理手段73aからの指令信号に応じて吸引装置Yの動作を制御する。搬送処理手段73cは、情報処理手段73aからの指令信号に応じて、固気分離装置11及び分配機12の動作を制御する。選別処理手段73dは、情報処理手段73aからの指令信号に応じて、1又は複数の選別機Zの動作を制御する。
【0062】
制御装置70は、駆動処理部73による制御内容を変更する指示を受け付ける操作部を有していてもよい。この場合、情報処理手段73aは、操作部による操作の内容を示す信号を、流路処理手段73b、搬送処理手段73c、及び選別処理手段73dのうちの少なくとも1つへ出力してもよい。制御装置70は、種々の情報を表示する表示部を有していてもよい。この場合、情報処理手段73aは、操作部による操作に関連する情報を含む画面などを表示部に表示させてもよい。すなわち、情報処理手段73aは、流路処理手段73b、搬送処理手段73c、及び選別処理手段73dとの連携により、各種アクチュエータの動作状態を変更したり、表示部への表示処理を行ったりしてもよい。もっとも、制御装置70は、入力部及び表示部の代わりに、文字又は画像等を表示する表示パネルと、該表示パネルに積層されてタッチ操作を検出する検出手段と、を含むタッチパネルを有していてもよい。制御装置70は、タッチパネルと入力部とを併せ持つものであってもよい。
【0063】
駆動処理部73は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各種機能を実現させる供給搬送プログラム72pと、により構成することができる。すなわち、供給搬送プログラム72pは、コンピュータとしての駆動処理部73及び記憶部72を、情報処理手段73a、流路処理手段73b、搬送処理手段73c、及び選別処理手段73dとして機能させるためのプログラムである。
【0064】
次に、
図6~
図12を参照し、演算処理手段83cの選別シミュレータ機能による選別産物の予測方法について具体例を説明する。
図6~
図12では、選別対象物に含まれる電子素子の種類、及び選別機Zごとの運転条件を簡略化した選別特性データ82nを例示している。すなわち、
図6は、振動スクリーンに関する選別特性データ82nを例示した表であり、物性関連情報82mに含まれる構成データを含む。
図7~
図12は、選別特性データ82nに含まれる複数の条件対応データを例示した表である。
図7~
図12では、説明の便宜上、選別対象物(選別前試料)が素子Aと素子Bと素子Cとにより構成されているものとする。
【0065】
図7~
図9は、選別機Zとしての気流選別機に対応する条件対応データであるため、抽出率として積算浮揚率が採用されている。ここでの気流選別機は、1回の選別処理において2段階の風速による選別が可能な複管式気流選別機であるものとする。
図7~
図9では、4つの風速条件それぞれに、素子A~Cの積算浮揚率が対応づけられており、最大風速に設定されても浮揚しない各素子の比率も記録されている。
図10~
図12は、選別機Zとしての吊り下げ磁選機に対応する条件対応データであるため、抽出率として積算磁着率が採用されている。ここでの吊り下げ型磁選機は、1回の選別処理において2段階の磁束密度による選別が可能な2段式の磁選機であるものとする。
図10~
図12では、4つの磁束密度条件それぞれに、素子A~Cの積算磁着率が対応づけられており、最大の磁束密度に設定されても磁着しない各素子の比率も記録されている。
【0066】
図6に例示する素子A~素子Cの構成比率は、素子Aが25.0%、素子Bが35.0%、素子Cが40.0%となっている。そして、素子Aの構成比率は、1mm未満のサイズが選別対象物全体の2.0%、1mm以上2mm未満のサイズが選別対象物全体の3.0%、2mm以上4mm未満のサイズが選別対象物全体の20.0%となっている。素子Bの構成比率は、1mm未満のサイズが選別対象物全体の8.0%、1mm以上2mm未満のサイズが選別対象物全体の12.0%、2mm以上4mm未満のサイズが選別対象物全体の15.0%となっている。素子Cの構成比率は、1mm未満のサイズが選別対象物全体の16.0%、1mm以上2mm未満のサイズが選別対象物全体の18.0%、2mm以上4mm未満のサイズが選別対象物全体の6.0%となっている。
【0067】
図6では、3種類のサイズ(1mm未満、1mm以上2mm未満、2mm以上(4mm未満))を想定しているため、これらのうちの1つを取り出す場合の数が3通り(
3C
1)、2つを取り出す場合の数が3通り(
3C
2)、3つを取り出す場合の数が1通り(
3C
3)である。よって、振動スクリーンによるサイズ選別の組み合わせは、合計7通りとなる。演算処理手段83cは、
図6に例示する構成データをもとに、選別機Zとしての振動スクリーンによるサイズ選別の7通りの結果を求める。
【0068】
図7~
図9では、1つの風速で浮揚物(軽産物)と落下物(重産物)とに分割する組み合わせが4通り(
4C
1)であり、これにつき、軽産物を必要な産物として扱う場合と、重産物を必要な産物として扱う場合とがあるため、8通り(4×2)となる。また、
図7~
図9では、2つの風速で選別する条件、すなわち1つの風速で浮揚させ、他の風速で落下させる条件は、6通り(
4C
2)となる。よって、気流選別機による気流選別の組み合わせは、合計14通りとなる。演算処理手段83cは、
図7~
図9に例示する条件対応データをもとに、選別機Zとしての気流選別機による比重選別の14通りの結果を求める。
【0069】
図10~
図12では、1つの磁束密度で磁着物と非磁着物とに分割する組み合わせが4通り(
4C
1)であり、これにつき、磁着物を必要な産物として扱う場合と、非磁着物を必要な産物として扱う場合とがあるため、8通り(4×2)となる。また、
図10~
図12では、2つの磁束密度で選別する条件、すなわち1つの磁束密度で非磁着とし、もう1つの磁束密度で磁着させる条件は、6通り(
4C
2)となる。よって、磁選機による気流選別の組み合わせは、合計14通りとなる。演算処理手段83cは、
図10~
図12に例示する条件対応データをもとに、選別機Zとしての吊り下げ型磁選機による磁選の14通りの結果を求める。
【0070】
ここで、供給搬送ユニット10が3台の異なる選別機Zを含む場合を想定し、使用する選別機Z、選別機Zの使用順序、及び選別機Zの運転条件を決定する手法について説明する。ここでは、供給搬送ユニット10が、3台の選別機Zとして、振動スクリーンと気流選別機と磁選機とを有する場合を想定し、振動スクリーンは必ず使用されるものとする。複数台の選別機Zが使用される場合は、振動スクリーンによるサイズ選別が必ず最初に実施されるものとする。気流選別機及び磁選機の使用は任意であり、これらによる選別処理の順序は可変とする。
【0071】
そうすると、1台の選別機Zを選定する場合の数は、振動スクリーンの1通りである。2台の選別機Zを選定する場合の数は、振動スクリーンと気流選別機との組み合わせ、又は振動スクリーンと磁選機との組み合わせの2通りである。3台の選別機Zを選定する場合の数は1通りである。そこで、これら4通りについて、選別機Zの使用順序と選別機Zの運転条件、及びこれらの組み合わせについて説明する。以降では、選別機Zの使用順序と選別機Zの運転条件との組み合わせのことを「選別プロセス」ともいう。1台の選別機Zだけを使用する場合、使用する選別機Zの運転条件が選別プロセスに相当する。
【0072】
[1台の選別機Z]
選別機Zとして、振動スクリーンだけを使用する場合、選別機Zの組み合わせが生じないため、選別機Zの使用順序(選別機Zの組み合わせ)は1通りであり、振動スクリーンの運転条件は7通りである。そのため、選別プロセスの合計は7通りとなる。
【0073】
[2台の選別機Z]
次に、2台の選別機Zとして、振動スクリーンと気流選別機とを使用する場合の選別プロセスについて考える。ここでは必ず、振動スクリーンを使用した後に気流選別機を使用する前提となっているため、選別機Zの使用順序は1通りである。また、各選別機Zの運転条件の組み合わせの合計は、振動スクリーンの運転条件の7通りと気流選別機の運転条件の14通りとの積(7×14=98)となる。そのため、選別プロセスの合計は98通りとなる。
【0074】
2台の選別機Zとして、振動スクリーンと磁選機とを使用する場合も、上記同様の前提により、選別機Zの使用順序は1通りとなる。また、各選別機Zの運転条件の組み合わせの合計は、振動スクリーンの運転条件の7通りと磁選機の運転条件の14通りとの積(7×14=98)となる。そのため、選別プロセスの合計は98通りとなる。
【0075】
[3台の選別機Z]
3台の選別機Zとして、振動スクリーンと気流選別機と磁選機とを使用する場合は、気流選別機と磁選機との順序の入れ替えが可能なため、選別機Zの使用順序は2通りとなる。また、各選別機Zの運転条件の組み合わせの合計は、振動スクリーンの運転条件の7通りと、気流選別機の運転条件の14通りと、磁選機の運転条件の14通りとの積(7×14×14=1372)となる。そのため、選別プロセスの合計は2744通り(2×1372)となる。
【0076】
以上から、3台の異なる選別機Zを有する供給搬送ユニット10においては、使用する選別機Zと、選別機Zの使用順序と、選別機Zの運転条件との組み合わせの合計が2947通り(7+98+98+2744)となる。すなわち、3台の異なる選別機Zのうちの少なくとも1台を用いて選別処理を行う場合の選別プロセスは、上記の前提によれば、2947通り存在することがわかる。
【0077】
続いて、
図13に例示する選別プロセスをもとに、
図6~
図12、
図14、及び
図15を参照して、選別結果の予測値の演算方法について説明する。
図13では、3台の選別機Z(振動スクリーン・気流選別機・吊り下げ型磁選機)を使用することが前提となっている。
図13に例示する選別プロセスは、素子Aを回収するためのものである。
【0078】
図14は、
図13の選別プロセスにより、選別対象物100kgに選別処理を施した場合、最終産物として回収される各素子の重量、およびその演算方法を示す表である。
図14に示す各回収率は、
図6~
図12に対応している。演算処理手段83cは、選別対象物の重量に、各選別機Zにおける各素子の回収率を乗じることにより、各素子の最終産物として分配される重量を算出する(
図14の演算方法参照)。
【0079】
図6に例示する構成データから、振動スクリーンによる2mm~4mmの素子を回収する篩分けで、素子Aの20.0%、素子Bの15.0%、素子Cの6.0%が選別産物として回収されると予測される。なお、他のサイズ(~1mm、1mm~2mm)は不要物となる。振動スクリーンで回収された選別産物は、回収路30、分配ユニットX、及び供給路20を経由して気流選別機に分配される。
【0080】
気流選別機では、
図9に示すように、15m/sの気流により、素子Aの98.0%、素子Bの90.0%、素子Cの2.0%が浮揚し、10m/sの気流により、素子Aの2.0%、素子Bの80.0%が浮揚する。素子Cは、10m/sの気流では全く浮揚しない。これにより、素子Aの大部分を残し、素子B及び素子Cの大部分を取り除くことができる。
【0081】
より具体的に、
図15を参照し、気流選別機での選別処理について説明する。
図15では、15m/sの気流による浮揚分を浮揚(1)とし、落下分を落下(1)としている。また、その後の10m/sの気流による浮揚分を浮揚(2)とし、落下分を落下(2)としている。素子Aは、15m/sの気流での選別で98.0%が浮揚し、浮揚分に対する10m/sの気流での選別で96.0%が落下する。素子Bは、15m/sの気流での選別で90.0%が浮揚し、浮揚分に対する10m/sの気流での選別で10.0%が落下する。素子Cは、15m/sの気流での選別で浮揚した2.0%が、10m/sの気流での選別において、そのまま落下する。
【0082】
つまり、
図14に示すように、各素子について、15m/sでの浮揚率から10m/sでの浮揚率を減算することにより、気流選別機での選別産物(中間産物)の量を求めることができる。なお、
図15の落下(1)は
図13の重産物に相当し、
図15の落下(2)は
図13の中間産物に相当し、
図15の浮揚(2)は
図13の軽産物に相当する。気流選別機で回収された選別産物は、回収路30、分配ユニットX、及び供給路20を経由して吊り下げ型磁選機に分配される。
【0083】
吊り下げ型磁選機において磁束密度100mTで磁選した場合、
図12及び
図14に示すように、素子Aの95.0%、素子Bの100.0%、素子Cの5.0%が非磁着となる。つまり、磁束密度100mTでの磁選機による選別処理では、素子Bを減らすことはできないが、素子Aの残留量を確保しつつ、素子Cの大部分を不要物とすることができる。
【0084】
以上から、
図14に示す通り、最終産物に含まれる各素子は、素子Aが18.240kg、素子Bが1.500kg、素子Cが0.006kgとなる。ここで、素子Aの回収率は下記の式(1)により算出することができ、素子Aの対象品位は下記の式(2)により算出することができ、素子Aと素子A以外との分離効率は下記の式(3)により算出することができる。
【0085】
[数1]
回収率 = 素子Aの回収量 / 選別対象物の素子Aの量 …(1)
【0086】
[数2]
対象品位 = 素子Aの回収量 / 最終産物の全体量 …(2)
【0087】
[数3]
分離効率 = 素子Aの回収量 - 素子A以外の混入率 …(3)
【0088】
式1~式3における素子Aの回収量は、最終産物における素子Aの回収量のことであり、ここでは18.24kgとなる。選別対象物の素子Aの量は、
図6より、25.00kg(100kg×0.25)となる。最終産物の全体量は、19.746kg(18.240+1.500+0.006)である。素子A以外の混入率は、最終産物における素子A以外の量を選別対象物の素子A以外の量で除することにより求めることができ、2.0%(1.506kg/75)となる。
【0089】
よって、素子Aの回収率は、式(1)の演算により72.3%(18.24kg/25.00kg)となる。素子Aの対象品位は、式(2)の演算により92.4%(18.240kg/19。746kg)となる。素子Aと素子A以外との分離効率は、式(3)の演算により、70.3%(72.3%-2.0%)となる。
【0090】
ここで、上記の選別処理の場合の供給搬送ユニット10による総処理量と各選別機Zでの処理量について整理する。選別対象物は100kgであるため、振動スクリーンでの処理量は100kgである。また、上記の演算から、気流選別機での処理量は41kgであり、吊り下げ型磁選機での処理量は約21kg(20.82kg)である。よって、供給搬送ユニット10による総処理量は162kgであるため、総処理量の選別対象物に対する比は1.62となる。
【0091】
すなわち、
図6~
図15に基づく上記想定の場合、演算処理手段83cは、2947通りの選別プロセスについて、選別指標(回収率、品位、分離効率、総処理量など)の予測値の演算を実行する。もっとも、演算処理手段83cは、選別機Zごとに、単独での選別成績が低い動作条件を選定し、選定した動作条件を演算対象から除外してもよい。このようにすれば、演算処理手段83cによる演算量を削減することができる。
【0092】
図16は、選別指標の予測値の演算結果が選別プロセスごとに整理された指標データベース84aを部分的に例示した表である。本実施の形態1における演算処理手段83cは、選別プロセスごとに選別指標の予測値を求めると共に、選別プロセスと1又は複数の選別指標の予測値とを対応づけた指標データベース84aを構築する。指標データベース84aは、例えば、選別プロセスの固有の識別情報と、各選別プロセスの処理内容と、1又は複数の選別指標とが対応づけられたテーブル情報である。演算処理手段83cは、外部入力された選別条件を基準として指標データベース84a内の選別指標の予測値を比較し、各選別プロセスを評価する。そして、演算処理手段83cは、指標データベース84a内のデータを、設定された選別条件に基づいてソートする等により、該選別条件に合致する選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを抽出する。
【0093】
図16では、指標データベース84a内の選別指標として、回収率、品位、分離効率、選別機数、及び総処理量を例示している。演算処理手段83cは、想定される全ての選別プロセスについての選別指標の予測値を求めて指標データベース84aを構築してもよく、選別機Z単独での選別結果が良好な選別プロセスを選定し、選定した選別プロセスの選別指標の予測値だけを求めて指標データベース84aを構築してもよい。
【0094】
指標データベース84a内の各選別プロセスの処理内容には、各選別プロセスにおける詳細な情報であるプロセス詳細データが含まれる。
図17は、
図16の指標データベースに紐付くプロセス詳細データを例示した表である。プロセス詳細データは、各選別機Zの処理順序の情報と、各選別機Zにおける選別処理の基準となる選別基準データと、回収対象物の情報と、を含む。
図17に例示する選別プロセスWは、振動スクリーン、気流選別機の順に選別処理が行われる設定となっており、選別プロセスX及びYは、振動スクリーン、気流選別機、磁選機の順に選別処理が行われる設定となっている。
【0095】
振動スクリーンにおいて、選別プロセスW及びXでは、目のサイズの異なる2つのふるい網(スクリーン)が使用される設定となっている。選別プロセスYでは、1つのふるい網が使用される設定となっている。下限サイズは、目の小さい方のふるい網における目のサイズに対応し、上限サイズは、目の大きい方のふるい網における目のサイズに対応する。選別プロセスYのように、振動スクリーンで1つのふるい網が使用される場合、そのふるい網の目のサイズは、上限サイズに対応づけられてもよく、下限サイズに対応づけられてもよい。
【0096】
振動スクリーンにおいて、選別プロセスWでは、選別対象物が、4mm未満、4mm以上5.6mm未満、5.6mm以上の3つのサイズに選別される。選別プロセスXでは、選別対象物が、2mm未満、2mm以上4mm未満、4mm以上の3つのサイズに選別される。選別プロセスYでは、選別対象物が、4mm未満、4mm以上の2つのサイズに選別される。
【0097】
選別プロセスW及びXでは、気流選別機が下限風速と上限風速の2つの風速を用いて選別処理を行い、選別プロセスYでは、気流選別機が1つの風速(
図17では下限風速に対応づけられている)を用いて選別処理を行う設定となっている。これらを
図15に対応づけると、選別プロセスW及びXで得られる中間産物は、
図15の落下(2)に相当する。選別プロセスYで得られる重産物は、13m/sの気流による落下分に相当する。
【0098】
選別プロセスXでは、磁選機が1つの磁束密度(
図17では下限磁束密度に対応づけられている)を用いて選別処理を行い、選別プロセスYでは、下限磁束密度と上限磁束密度の2つの磁束密度を用いて選別処理を行う設定となっている。なお、選別プロセスWでは、磁選機を用いない設定となっている。磁選機において、選別プロセスXでは、選別対象物が、磁束密度100mTで磁着する磁着物と、磁束密度100mTでは磁着しない非磁着物とに選別される。選別プロセスYでは、磁束密度50mTで磁着する磁着物と、磁束密度50mTでは磁着しないが磁束密度200mTで磁着する中間磁着物と、磁束密度200mTでも磁着しない非磁着物とに選別される。
【0099】
もっとも、演算処理手段83cは、
図16のような各選別プロセスにおける全体的な情報を含む指標データベース84aを構築すると共に、これとは別に、各選別プロセスにおける詳細な情報を含む詳細データベースをデータベース部84などに構築するよう構成してもよい。詳細データベースは、例えば
図17のように、各選別プロセスと、各選別機Zの処理順序及び選別基準データなどとが対応づけられたテーブル情報となる。
【0100】
図18は、
図1の供給搬送ユニット10による選別処理で複数のターゲットを回収する場合の選別プロセスの一例を示す説明図である。すなわち、
図13では、選別対象物から1つの回収対象物を最終産物として回収する選別プロセスを例示したが、これに限定されない。工程条件管理装置80は、選別対象物から複数の回収対象物を回収する選別プロセスを導出し、導出した選別プロセスに基づく選別処理を供給搬送ユニット10に実施させることができる。
【0101】
図18は、選別機Zとして、振動スクリーン、ドラム磁選機、傾斜多段弱磁力磁選機、複管式気流選別機を有する供給搬送ユニット10における選別プロセスの一例である。
図18では、全ての選別機Zに共通する動作条件として、フィーダー部25からの試料供給速度が挙げられている。振動スクリーンの動作条件としては、例えば周波数の条件があり、ドラム磁選機の動作条件としては、ドラムの回転数及びデバイダの位置などのパラメータの条件がある。傾斜多段弱磁力磁選機の動作条件としては、ベルト速度、ベルト傾斜、磁石の高さ、及びフィーダー部25の高さなどのパラメータの条件がある。複管式気流選別機の動作条件としては、第1風洞の風速及び第2風洞の風速などの条件がある。
【0102】
複数の回収対象物を回収する場合、演算処理手段83cは、複数の回収対象物のそれぞれについて、導出した選別プロセスごとの最終産物の予測値の比較を行う。そして、演算処理手段83cは、設定された選別条件をもとに、各回収対象物のバランスを調整し、選別条件にとって最適と予測される選別プロセスを導出し、導出した選別プロセスに基づく供給選別データを生成する。
【0103】
次に、
図19のフローチャートを参照して、工程条件管理装置80による指標データベース84aの作成方法について説明する。まず、演算処理手段83cは、入力処理手段83aにより記憶部82に記憶された物性関連情報82m及び選別特性データ82nを取得する(ステップS101)。次いで、演算処理手段83cは、物性関連情報82mと選別特性データ82nとに基づいて複数の選別プロセスを導出する。上述した前提の場合、演算処理手段83cは、2947通り全ての選別プロセスを導出する。もっとも、演算処理手段83cは、各選別機Z単独での選別成績が低い運転条件を含む選別プロセスを除外し、有意な選別プロセスだけを導出してもよい(ステップS102)。
【0104】
次に、演算処理手段83cは、導出した複数の選別プロセスそれぞれについての選別指標の予測値を求める。ステップS102において、各選別機Z単独での選別成績に基づく選別プロセスの抜粋処理を行っていない場合、演算処理手段83cは、該工程で選別プロセスの抜粋処理を行ってもよい。すなわち、演算処理手段83cは、ステップS102で導出した複数の選別プロセスから、成績テーブルをもとに、各選別機Z単独での選別成績が設定基準以上である選別プロセスを選定し、選定した選別プロセスについての選別指標の予測値を求めてもよい。本実施の形態1の演算処理手段83cは、選別指標の予測値として、回収率、対象品位、分離効率、選別機Zの運転台数、除去対象物の品位、及び総処理量を求める機能を有している。演算処理手段83cは、設定に応じて、回収率、対象品位、分離効率、選別機Zの運転台数、除去対象物の品位、及び総処理量のうちの少なくとも1つを求める(ステップS103)。
【0105】
そして、演算処理手段83cは、選別プロセスと選別指標の予測値とを対応づけた指標データベース84aを作成する。すなわち、演算処理手段83cは、選別指標の予測値を求めた各選別プロセスにつき、該選別プロセスを示す固有の識別情報と、該識別プロセスにおける選別処理の内容と、該識別プロセスの選別指標の予測値とを対応づけた指標データベース84aを作成する(ステップS104)。
【0106】
次いで、
図20のフローチャートを参照して、工程条件管理方法に係る動作の一例について説明する。制御部83は、入力部85を介して選別条件の設定を受け付けると(ステップS201)、データベース部84の指標データベース84aにアクセスする(ステップS202)。
【0107】
制御部83は、設定された選別条件をもとに、各選別プロセスの選別指標の予測値を比較し、選別条件に合致する選別プロセスを選定する。例えば、選別条件が分離効率最大条件であれば、制御部83は、指標データベース84a内のデータを、回収対象物の分離効率が高い順に並べ替え、上位に配置された選別プロセスを選定する。選別条件が回収率優先条件であれば、制御部83は、指標データベース84a内のデータから、対象品位が品位閾値以上のものを抜粋すると共に、抜粋したデータを回収対象物の回収率が高い順に並べ替え、上位に配置された選別プロセスを選定する。選別条件が品位優先条件であれば、制御部83は、指標データベース84a内のデータから、回収対象物の回収率が回収閾値以上のものを抜粋すると共に、抜粋したデータを対象品位が高い順に並べ替え、上位に配置された選別プロセスを選定する。制御部83は、他の設定条件についても同様の選定処理を実行する。制御部83は、複数の選別条件が設定された場合、各選別条件それぞれに合致する選別プロセスを選定する(ステップS203)。
【0108】
制御部83は、選定した1又は複数の選別プロセスに係る1又は複数の選別指標の予測値を表示部86に表示させる。その際、制御部83は、選別プロセスにおける選別処理の内容を示す情報を併せて表示させてもよい。制御部83は、他の選別条件に合致する選別プロセスに係る1又は複数の選別指標の予測値を併せて表示させてもよい(ステップS204)。
【0109】
制御部83は、表示部86を確認したユーザから実施の指示があるまで待機し(ステップS205/No)、実施の指示があると(ステップS205/Yes)、供給搬送ユニット10に選別処理を実施させる。制御部83が複数の選別プロセスについての情報を表示部86に表示させた場合、ユーザは、表示された1又は複数の選別指標の予測値をもとに、1つの選別プロセスを選択することができる。本実施の形態1において、制御部83は、選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを制御装置70へ送信することにより、制御装置70を介して供給搬送ユニット10を制御する(ステップS206)。もっとも、制御部83は、表示部86を確認したユーザから不実施の指示があれば、一連の処理を終了する。
【0110】
図20の動作例はあくまで例示であり、工程条件管理方法に係る動作は適宜変更することができる。例えば、
図20のステップS204及びS205は省略してもよい。すなわち、ステップS203で1つの選別プロセスを選定し、選定した選別プロセスに基づく選別処理を供給搬送ユニット10に実施させてもよい(ステップS206)。
【0111】
次いで、
図21のフローチャートと
図22~
図32の説明図を参照して、本実施の形態1の供給搬送方法の動作例について説明する。ここでは、
図2の供給搬送ユニット10を用いた供給搬送方法の一例を説明する。
【0112】
まず、
図22に示すように、起点となる選別機Z
1に選別対象物を投入する。このとき、回収ホッパー35a及び回収ホッパー35bのそれぞれの下部の開閉装置38は閉の状態となっている(ステップS301:原料投入工程)。ユーザが工程条件管理装置80又は制御装置70から選別処理の実施を指示すると、駆動処理部73が選別機Z
1を駆動させることにより、
図23のように、選別機Z
1での選別対象物の選別が行われる。すなわち、選別機Z
1は、回収ホッパー35aに粗粒の選別産物を排出し、回収ホッパー35bに細粒の選別産物を排出するように構成されている。駆動処理部73は、回収ホッパー35aに規定量の選別産物が溜まったとき、もしくは選別機Z
1内の全ての選別対象物に対する選別処理が完了したとき、第1搬送工程のために、回収ホッパー35aの下部の開閉装置38を開の状態にすると共に、回収ホッパー35bの下部の開閉装置38を閉の状態にする(ステップS302:第1選別工程)。
【0113】
次いで、駆動処理部73は、分配開閉装置13aを閉の状態にし、流路切替装置39を第1回収路31と第3回収路33とが連通する状態にする。その際、駆動処理部73は、流路切替装置39の第2回収路32側を閉状態にし、第2回収路32側から空気が吸引されないようにするとよい。そして、駆動処理部73は、吸引装置Yを駆動させ、
図24に示すように、回収ホッパー35aに貯留された粗粒の選別産物を固気分離装置11へ搬送する。駆動処理部73は、選別産物の搬送が終わると、吸引装置Yの駆動を停止させる(ステップS303:第1搬送工程)。駆動処理部73は、選別機Z
2へ延びる供給路20に接続された排出口12aにノズル14を対応づけ、分配開閉装置13aを開の状態にして、
図25のように、固気分離装置11に貯留された選別産物を自由落下等により選別機Z
2へ搬送する(ステップS304:供給工程)。
【0114】
続いて、駆動処理部73は、
図26のように、選別機Z
2を駆動させる。これにより、選別機Z
2は、選別産物の選別を行う。すなわち、選別機Z
2は、回収ホッパー35cに選別産物としての磁着物を排出し、回収ホッパー35bに選別産物としての非磁着物を排出するように構成されている。このとき、回収ホッパー35c及び回収ホッパー35dのそれぞれの下部の開閉装置38は閉の状態となっている。駆動処理部73は、回収ホッパー35cに規定量の選別産物が溜まったとき、もしくは選別機Z
2内の全ての選別対象物に対する選別処理が完了したとき、第3搬送工程のために、回収ホッパー35cの下部の開閉装置38を開の状態にすると共に、回収ホッパー35dの下部の開閉装置38とを閉の状態にする(ステップS305:第2選別工程)。
【0115】
また、駆動処理部73は、回収ホッパー35bの下部の開閉装置38を開の状態にし、分配開閉装置13aを閉の状態にし、流路切替装置39を第1回収路31と第3回収路33とが連通する状態にする。その際、駆動処理部73は、流路切替装置39の第2回収路32側を閉状態にし、第2回収路32側から空気が吸引されないようにするとよい。併せて、駆動処理部73は、回収ホッパー35aの下部の開閉装置38を閉の状態にするとよい。そして、駆動処理部73は、吸引装置Yを駆動させ、
図27に示すように、回収ホッパー35bに貯留された細粒の選別産物を固気分離装置11へ搬送する。駆動処理部73は、選別産物の搬送が終わると、吸引装置Yの駆動を停止させる(ステップS306:第2搬送工程)。
【0116】
駆動処理部73は、銅産物回収用の回収容器60へ延びる終端路40に接続された排出口12aにノズル14を対応づけ、分配開閉装置13aを開の状態にする。そして、駆動処理部73は、
図28のように、固気分離装置11に貯留された細粒の選別産物を、自由落下等により銅産物回収用の回収容器60へ搬送する(ステップS307:第1回収工程)。
【0117】
次に、駆動処理部73は、分配開閉装置13aを閉の状態にし、流路切替装置39を第2回収路32と第3回収路33とが連通する状態にする。その際、駆動処理部73は、流路切替装置39の第1回収路31側を閉状態にし、第1回収路31側から空気が吸引されないようにするとよい。そして、駆動処理部73は、吸引装置Yを駆動させ、
図29に示すように、回収ホッパー35cに貯留された選別産物としての磁着物を固気分離装置11へ搬送する。駆動処理部73は、選別産物の搬送が終わると、吸引装置Yの駆動を停止させる(ステップS308:第3搬送工程)。
【0118】
駆動処理部73は、鉄産物回収用の回収容器60へ延びる終端路40に接続された排出口12aにノズル14を対応づけ、分配開閉装置13aを開の状態にする。そして、駆動処理部73は、
図30のように、固気分離装置11に貯留された選別産物としての磁着物を、自由落下等により鉄産物回収用の回収容器60へ搬送する(ステップS309:第2回収工程)。
【0119】
次いで、駆動処理部73は、回収ホッパー35dの下部の開閉装置38を開の状態にし、分配開閉装置13aを閉の状態にし、流路切替装置39を第2回収路32と第3回収路33とが連通する状態にする。その際、駆動処理部73は、流路切替装置39の第1回収路31側を閉状態にし、第1回収路31側から空気が吸引されないようにするとよい。併せて、駆動処理部73は、回収ホッパー35cの下部の開閉装置38を閉の状態にするとよい。そして、駆動処理部73は、吸引装置Yを駆動させ、
図31に示すように、回収ホッパー35dに貯留された選別産物としての非磁着物を固気分離装置11へ搬送する。駆動処理部73は、選別産物の搬送が終わると、吸引装置Yの駆動を停止させる(ステップS310:第4搬送工程)。
【0120】
駆動処理部73は、銅産物回収用の回収容器60へ延びる終端路40に接続された排出口12aにノズル14を対応づけ、分配開閉装置13aを開の状態にする。そして、駆動処理部73は、
図32のように、固気分離装置11に貯留された選別産物としての非磁着物を、自由落下等により銅産物回収用の回収容器60へ搬送する(ステップS311:第3回収工程)。
【0121】
上記の動作は
図21に付されたステップ番号の順に説明したが、各処理の順序は適宜変更することができる。例えば、ステップS305の処理と、ステップS306及びS307の処理とは、並行して行うことができる。上記においては、回収ホッパー35aの容量及び規定量を主として説明し、すなわち、回収ホッパー35aに規定量の選別産物が溜まったとき、回収ホッパー35bに溜まった選別産物は容量以下であることを前提に説明したが、これに限定されない。駆動処理部73は、第1選別工程において、回収ホッパー35bの容量及び規定量に基づく処理を行ってもよい。同様に、上記においては、回収ホッパー35cに規定量の選別産物が溜まったとき、回収ホッパー35dに溜まった選別産物は容量以下であることを前提に説明したが、これに限定されない。駆動処理部73は、第2選別工程において、回収ホッパー35dの容量及び規定量に基づく処理を行ってもよい。各回収ホッパー35の規定量は、任意に設定することができる。そして、マルチ搬送選別システム100では、各選別機Z内の選別対象物の選別処理が終了するまで、各選別機Zでの選別処理と各搬送処理が繰り返し実行される。
図21では、各工程を
図22~
図32と明確に対応づけるため、各構成部材に符号を付しているが、例えば
図3のように、3台以上の選別機Zを有する供給搬送ユニット10でも、
図21の例と同様の供給搬送方法を実施することができる。
【0122】
以上のように、本実施の形態1における供給搬送ユニット10は、複数の選別機Zと、複数の選別機Zに連結された分配ユニットXと、を有している。そして、供給搬送ユニット10は、複数の選別機Zと分配ユニットXとを連結し、選別機Zにおける選別産物を分配ユニットXに回収させる回収路30と、分配ユニットXと複数の選別機Zの各々とを接続し、選別機Zに選別産物を供給するための供給路20と、を有している。よって、選別機Zにおける選別産物を回収路30を介して分配ユニットXに回収させ、分配ユニットXから、各供給路20を介して選別産物を任意の選別機Zへ振り分けることができる。したがって、選別機Zの取捨選択と使用順序の柔軟な変更が可能となるため、選別対象物に対する選別処理のバリエーションを、手間をかけずに拡張することができる。
【0123】
すなわち、マルチ搬送選別システム100は、ある選別機Zに隣接する回収ホッパー35から選別産物を排出し、次工程の選別機Zへの供給を行う。また、マルチ搬送選別システム100は、選別プロセスの最後の選別工程の選別機Zに隣接する回収ホッパー35から最終産物を排出し、回収容器60への搬送を行う。その際、マルチ搬送選別システム100は、一度高所に設置された分配機12に選別産物を空気輸送し、搬送先を適宜切り替えて、分配機12から選別産物を落下させることにより、選別産物を所定の場所に振り分けることができる。
【0124】
また、
図18にも示すように、工程条件管理装置80は、選別対象物から複数の回収対象物を回収する選別プロセスを導出し、導出した選別プロセスに基づく選別処理を供給搬送ユニット10に実施させることができる。すなわち、工程条件管理装置80は、選別プロセスごとの最終産物の予測値の比較を、複数のターゲット(回収対象物・除去対象物)に対して行うことができるため、複数のターゲットの総合的な最適回収を実現することができる。
【0125】
分配ユニットXは、供給路20に接続される複数の排出口12aを有しており、各選別機Zは、それぞれ、対応する排出口12aよりも下方に設けられている。すなわち、供給搬送ユニット10は、分配ユニットXが選別機Zよりも高い場所に配置されているため、選別産物又は選別対象物を自由落下により選別機Zへ搬送することができる。よって、供給搬送ユニット10は、排出口12aと各選別機Zとの高低差により供給路20に傾斜がつくため、分配ユニットXに回収された選別産物を、自由落下により各選別機Zへ搬送することができる。すなわち、供給搬送ユニット10は、コンベアなどを設けることなく、分配ユニットXに回収された選別産物を各選別機Zへ搬送することができるため、省エネルギー化とシステムの簡素化を図ることができる。
【0126】
分配ユニットXは、複数の排出口12aのうちの何れかに対応づけられる可動式の分配ノズル14を有する。よって、分配ユニットXに回収された選別産物を、供給路20を介して任意の選別機Zへ供給することができるため、選別機Zの使用順序を適宜変更することができる。分配ユニットXは、選別産物が流入する流入口13、分配ノズル14、及び複数の排出口12aを含む分配機12と、分配機12の流入口13に連結され、回収路30が接続される固気分離装置11と、を有している。よって、供給搬送ユニット10は、固気分離装置11により、分配機12の前段で粉塵を除去することができるため、粉塵の最終産物への混入を抑制することができると共に、分配機12及び供給路20等の汚損を抑制することができる。また、選別機Zへの粉塵流入を防ぐことにより、選別機Zの不具合の発生を抑えることができる。加えて、分配ユニットXは、分配機Zの流入口13に設けられた分配開閉装置13aを有してため、分配ユニットXから分配ノズル14及び供給路20を介して選別産物を選別機Zへ搬送するタイミングを調整することができる。
【0127】
分配ユニットXは、選別産物が流入する流入口13と、分配ノズル14と、複数の排出口12aと、を含む2台以上の分配機12を有すると共に、分配機12の1つの排出口12aと、その下方に配置された分配機12の流入口とを接続する中継路21を有していてもよい。このように、複数の排出口12aを備えた分配機12を複数有する構成を採れば、分配機12の排出口12aに供給路20を介して連結される選別機Zの台数を増やすことができるため、選別対象物に対する選別処理のバリエーションをさらに拡張することができる。また、分配ユニットXは、最も上流に配置される分配機Zの流入口13に連結され、回収路20が接続される固気分離装置11を有している。よって、供給搬送ユニット10は、固気分離装置11により、分配機12の前段で粉塵を除去することができるため、粉塵の最終産物への混入を抑制することができると共に、分配機12、中継路21、及び供給路20等の汚損を抑制することができる。また、選別機Zへの粉塵流入を防ぐことにより、選別機Zの不具合の発生を抑えることができる。分配ユニットXは、分配機12の流入口13を開閉する分配開閉装置13aを有しているため、分配ユニットXから分配ノズル14及び供給路20を介して選別産物を選別機Zへ搬送するタイミングを調整することができる。
【0128】
排出口12aに接続される終端路40と、分配機12の下方に配置されると共に、排出口12aに終端路40を介して連結される回収容器60を有している。このように、供給搬送ユニット10は、回収容器60が分配機12の下方に配置されているため、分配ユニットXに回収された選別産物を自由落下により回収容器60に搬送することができる。
【0129】
供給搬送ユニット10は、分配ユニットXの下流に配置され、選別産物を分配ユニットXへ搬送する吸引装置Yを有している。そのため、選別機Zによる選別産物を空気輸送により分配ユニットXに、すなわち固気分離装置11に回収させることができる。そのため、コンベアなどを用いることなく、選別産物を迅速に且つ自動的に固気分離装置11へ搬送することができる。
【0130】
加えて、マルチ搬送選別システム100は、供給搬送ユニット10と、分配ユニットX、選別機Z、及び吸引装置Yの動作を制御する制御装置70と、を有している。すなわち、マルチ搬送選別システム100によれば、供給搬送ユニット10に備わる種々のアクチュエータを、制御装置70による自動制御により一括管理することができるため、選別対象物の選別処理に要する手間及び時間を削減し、選別処理の効率化を実現することができる。
【0131】
ところで、リサイクル中間処理における多種の成分が混合した廃製品・廃部品に対する原料化技術は、現在においても確立されておらず、作業者は、経験則に基づいて選別機Zの運転条件を決めている。作業者の経験則に基づく操業は、作業者の技術が要求され、選別機Z等の導入のみでは操業できないことから、選別機Z等の普及の妨げになっている。また、選別対象物が変更された場合、作業者は、選別機Zの使用順序及び選別機Zの運転条件を一から検討しなければならないため、多様な製品の変動に対応することは困難である。例えば、リサイクル工場に導入される従来の選別システムは、予め定めた一つの選別処理の各工程に従って、選別対象物をある選別機Zから別の選別機Zに搬送し、選別機Zに順次処理させる形態である。
【0132】
一方、本実施の形態1のマルチ搬送選別システム100によれば、例えばリサイクル中間処理工場において、既存の選別機Zを利用する選別処理から手作業が一掃され、人件費を最小限にした操業が可能となる。また、マルチ搬送選別システム100によれば、作業者の経験に頼らないシステム制御が可能となる。さらに、マルチ搬送選別システム100によれば、製品変動や部品の組成変動に順応させた選別処理を、供給搬送ユニット10の自動制御により実現することができるため、ユーザのニーズに合わせた選別条件を満たす回収対象物の最適回収を安定的に行うことができる。
【0133】
なお、工程条件管理装置80は、クラウドコンピューティングに基づくクラウドサーバ、もしくは物理サーバ、又はこれらを組み合わせたシステムなどより構成されてもよい。この場合、工程条件管理装置80は、例えば、通信部81、記憶部82、及び制御部83を有するように構成し、マルチ搬送選別システム100を管理する管理者などが使用する管理端末(PC)との連携により、上記の各機能を実現してもよい。
【0134】
実施の形態2.
図33を参照して、本発明の実施の形態2におけるマルチ搬送選別システム200の全体的な構成例について説明する。前述した実施の形態1のマルチ搬送選別システム100と同等の構成については同一の符号を付して説明は省略する。
【0135】
図33に示すように、マルチ搬送選別システム200は、供給搬送ユニット10と、制御装置170と、工程条件管理装置180と、指標サーバ装置90と、により構成されている。指標サーバ装置90は、少なくとも、指標データベース84aが格納されるデータベース部84を有している。指標サーバ装置90は、クラウドコンピューティングに基づくクラウドサーバ、もしくは物理サーバ、又はこれらを組み合わせたシステムなどより構成される。制御装置170は、制御部183の演算処理手段183cが、指標サーバ装置90のデータベース部84において、指標データベース84aを作成するようになっている。
【0136】
表示部76は、例えば液晶ディスプレイからなり、駆動処理部173からの指示により種々の情報を表示する。入力部75は、供給搬送ユニット10を操作するための操作ボタンや、表示部76の表示画面に情報を入力するためのキーボードなどを含む。入力部75は、ユーザによる入力操作を受け付け、受け付けた内容に応じた操作信号を駆動処理部173へ送信する。制御装置170は、入力部75及び表示部76の代わりに、文字又は画像等を表示する表示パネルと、当該表示パネルに積層されてタッチ操作を検出する検出手段と、を含むタッチパネルを有していてもよい。制御装置170は、タッチパネルとは別に、入力操作を受け付ける入力部75を有していてもよい。
【0137】
駆動処理部173の情報処理手段173aは、ユーザに選別条件を設定させる条件設定画面(図示せず)を表示部76に表示させる。情報処理手段173aは、ユーザによる選別条件の設定操作を受け付けると、該選別条件を指標データベース84aに照らし、選別条件に適合する選別プロセスを選定し、選定した選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを抽出する。つまり、情報処理手段173aは、実施の形態1の演算処理手段83cと同様に機能し、選別条件に適合する選別プロセスを選定すると共に、選定した選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを抽出する選別シミュレータ機能を有している。そして、情報処理手段173aは、抽出した供給選別データに基づく指令信号を、流路処理手段73b、搬送処理手段73c、及び選別処理手段73dへ出力するようになっている。
【0138】
駆動処理部173は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記の各種機能を実現させる供給搬送プログラム172pと、により構成することができる。すなわち、供給搬送プログラム172pは、コンピュータとしての駆動処理部173及び記憶部72を、情報処理手段173a、流路処理手段73b、搬送処理手段73c、及び選別処理手段73dとして機能させるためのプログラムである。他の構成、代替構成、及び動作については実施の形態1と同様である。
【0139】
以上のように、本実施の形態2のマルチ搬送選別システム200は、指標サーバ装置90のデータベース部84に指標データベース84aが構築されるため、制御装置170が主体的に選別プロセスの選定処理及び供給選別データの生成処理を行うことができる。そして、制御装置170は、実施の形態1と同様、供給搬送ユニット10に、選別対象物に対する最適な選別処理を実施させることができる。つまり、選別機Zの取捨選択と使用順序の柔軟な変更の実現により、選別対象物に対する選別処理のバリエーションを、手間をかけずに拡張することができる。他の効果等については実施の形態1と同様である。
【0140】
実施の形態3.
図34を参照して、本発明の実施の形態3におけるマルチ搬送選別システム300の全体的な構成例について説明する。上述した各実施の形態におけるマルチ搬送選別システム100又は200と同等の構成については同一の符号を付して説明は省略する。
【0141】
図34に示すように、マルチ搬送選別システム300は、供給搬送ユニット10と、工程条件管理装置280と、により構成されている。工程条件管理装置280の制御部283は、実施の形態1の駆動処理部73と同様に機能する駆動処理手段273を有している。駆動処理手段273は、
図34では図示を省略しているが、情報処理手段73aと、流路処理手段73bと、搬送処理手段73cと、選別処理手段73dと、を有している。
【0142】
すなわち、工程条件管理装置280は、駆動処理手段273によって供給搬送ユニット10を直接的に制御するようになっている。したがって、演算処理手段83cは、供給選別データを駆動処理手段273に出力するか、あるいは供給選別データを記憶部82に記憶させる。駆動処理手段273は、演算処理手段83cから出力される供給選別データ、あるいは記憶部82から読み出した供給選別データを用いて、供給搬送ユニット10の各種アクチュエータの動作を制御する。工程条件管理プログラム282pは、コンピュータとしての制御部283及び記憶部82を、入力処理手段83a、出力処理手段83b、演算処理手段83c、駆動処理手段273として機能させるためのプログラムである。他の構成、代替構成、及び動作については実施の形態1及び2と同様である。
【0143】
以上のように、本実施の形態3における工程条件管理装置280は、演算処理手段83cによって生成される、選別プロセスの処理内容を示す供給選別データに応じて選別処理を実行する駆動処理手段273を有している。駆動処理手段273は、供給選別データに応じた選別対象物の選別処理を供給搬送ユニット10に実施させるものである。したがって、工程条件管理装置280は、最適な選別プロセスに基づく供給搬送ユニット10の動作制御を直接的に行うことができる。なお、出力処理手段83bが、選別条件に適合する少なくとも1つの選別プロセスと、これに対応する選別指標の予測値とを表示部85に表示させた場合、演算処理手段83cは、選別プロセスの選択操作に応じて供給選別データを生成することができる。他の効果等については、上述した実施の形態1及び2と同様である。
【0144】
ここで、上述した各実施の形態は、供給搬送ユニット及びマルチ搬送選別システムの具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、分配ユニットXは、分配機12を有しない構成を採ってもよい。この場合、分配ユニットXは、分配機12の代わりに、三方弁などの多方弁、あるいは複数の多方弁の組み合わせを有する構成としてもよい。また、選別機Zの上流側に固気分離装置11を連結し、回収路30を介して固気分離装置11に回収された選別産物が、直接的に選別機Zへ供給されるようにしてもよい。分配開閉装置13aは、エアー式のものに限らず、電磁式の二方弁などであってもよい。同様に、開閉装置38は、エアー式のものに限らず、電磁式の二方弁などであってもよい。
図2及び
図3等では、回収対象物ごとに回収容器60が設けられた例を示したが、これに限らず、回収容器60は、複数に区分けされ、複数の回収対象物の収容が可能なものであってもよい。
【0145】
上記各実施の形態では、制御装置70及び170が各選別機Zの動作を制御する例を示したが、これに限定されない。制御装置70及び170は、各選別機Zの動作を制御する機能を持たない構成、つまり、供給搬送ユニット10における選別機Z以外のアクチュエータの動作を制御する構成としてもよい。この場合、マルチ搬送選別システム100は、各選別機Zの動作を制御する別の制御装置(以下「選別処理装置」という)を有するようにしてもよい。そして、工程条件管理装置80が選別処理装置にも供給選別データを送信するようにするとよい。なお、マルチ搬送選別システム100は、選別処理装置を設けずに構成し、各選別機Zについては作業員が都度動作させるようにしてもよい。
【0146】
複数の回収対象物を回収する場合、制御部83、183、及び283は、選別プロセスの構成要素を段階的に構築するようにしてもよい。すなわち、演算処理手段83c又は183cは、上流の1又は複数の選別機Zでの回収対象物の回収にとって有用な選別プロセスを導出して供給選別データを生成してもよい。駆動処理部73、173、又は駆動処理手段273は、供給選別データをもとに、上流の1又は複数の選別機Zを用いた選別処理を終えると、残存している選別産物の情報である残存産物データを演算処理手段83c又は183cへ送信するとよい。そして、演算処理手段83c又は183cは、残存産物データをもとに、再度選別プロセスを導出して供給選別データを生成し、駆動処理部73、173、又は駆動処理手段273に、後続する選別機Zを用いた選別処理を実行させるとよい。このような演算処理手段83c又は183cと、駆動処理部73、173、又は駆動処理手段273との連携処理の回数は、マルチ搬送選別システム100の構成や回収対象物の種類などに応じて適宜変更することができる。
【0147】
制御部83は、表示部86を確認したユーザから実施の指示があるまで待機し(ステップS205/No)、実施の指示があると(ステップS205/Yes)、供給搬送ユニット10に選別処理を実施させる。制御部83が複数の選別プロセスについての情報を表示部86に表示させた場合、ユーザは、表示された1又は複数の選別指標の予測値をもとに、1つの選別プロセスを選択することができる。本実施の形態1において、制御部83は、選別プロセスの処理内容を示す供給選別データを制御装置70へ送信することにより、制御装置70を介して供給搬送ユニット10を制御する(ステップS206)。もっとも、制御部83は、表示部86を確認したユーザから不実施の指示があれば、一連の処理を終了する。
【0148】
複数の回収対象物を回収する場合、演算処理手段83cは、複数の回収対象物のそれぞれについて、導出した選別プロセスごとの最終産物の予測値の比較を行う。そして、演算処理手段83cは、設定された選別条件をもとに、各回収対象物のバランスを調整し、選別条件にとって最適と予測される選別プロセスを導出し、導出した選別プロセスに基づく供給選別データを生成する。
【0149】
上記各実施の形態では、マルチ搬送選別システム100、200、300が選別産物を空気輸送する例を示したが、これに限定されない。供給搬送ユニット10は、選別産物の搬送経路の一部又は全部に、ベルト式コンベア、チェーン式コンベア、ねじ式コンベアなどのコンベアを有する構成としてもよい。空気輸送の場合は、回収路30に接続された固気分離装置11を分配機12に連結させているが、コンベア搬送の場合は、コンベアの排出先を分配機12に接続するとよい。分配ユニットXは、分配機12を有しない構成を採ってもよく、この場合は、各選別機Zに、コンベアの排出先を接続するとよい。
【0150】
もっとも、マルチ搬送選別システム100、200、300は、分配ユニットXから選別機Zへの搬送、及び分配ユニットXから回収容器60への搬送のうちの何れか一方にコンベア搬送を適用してもよい。また、マルチ搬送選別システム100、200、300は、分配ユニットXから選別機Zへの1又は複数の搬送経路、及び分配ユニットXから回収容器60への1又は複数の搬送経路のうちの少なくとも1つが、コンベア搬送を行う経路となるように構成してもよい。
【0151】
図2及び
図3では、1台の吸引装置Yを例示しているが、これに限らず、供給搬送ユニット10は、複数台の吸引装置Yを有していてもよい。例えば、供給搬送ユニット10は、複数の選別機Zの各々に1台の吸引装置Yが対応づけられたものであってもよく、幾つかの選別機Zのグループごと(1台の場合も含む)に1台の吸引装置Yが対応づけられたものであってもよい。さらに、供給搬送ユニット10は、選別機Zへの選別産物の供給に吸引装置Yを利用する構成を採ってもよい。
【0152】
演算処理手段83c及び183cは、使用する少なくとも1台の選別機Zを選定する機能を有しなくてもよい。すなわち、演算処理手段83c及び183cは、供給搬送ユニット10に備わる全ての選別機Zを使用する前提で、選別機Zの使用順序と選別機Zの運転条件とを決定してもよい。また、演算処理手段83c及び183cは、選別機Zの使用順序を決定する機能を有しなくてもよい。すなわち、演算処理手段83c及び183cは、予め使用順序が決められた複数の選別機Zそれぞれの運転条件を決定するものであってよい。
【符号の説明】
【0153】
10 供給搬送ユニット、11 固気分離装置、12 分配機、12a 排出口、13 流入口 13a 分配開閉装置、14 分配ノズル、14a モータ、15 土台部、20 回収路、21 中継路、25 フィーダー部、26 退避ホッパー、30 回収路、31 第1回収路、31a、32a 主路、31b、31c、32b、32c 支路、32 第2回収路、33 第3回収路、35、35a~35d 回収ホッパー、37 レベル計、38 開閉装置、39 流路切替装置、40 終端路、41 吸引路、60 回収容器、65 コンプレッサ、70 制御装置、71 通信部、72 記憶部、72p 供給搬送プログラム、73、173 駆動処理部、73a 情報処理手段、73b 流路処理手段、73c 搬送処理手段、73d 選別処理手段、75 入力部、76 表示部、80、180、280 工程条件管理装置、81 通信部、82 記憶部、82m 物性関連情報、82n 選別特性データ、82p 工程条件管理プログラム、83、183、283 制御部、83a 入力処理手段、83b 出力処理手段、83c、183c 演算処理手段、84 データベース部、84a 選別データベース、84a 指標データベース、85 入力部、86 表示部、90 指標サーバ装置、100、200、300 マルチ搬送選別システム、110 粉塵回収装置、110a ダストボックス、170 制御装置、172p 供給搬送プログラム、173a 情報処理手段、273 駆動処理手段、282p 工程条件管理プログラム。