(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084563
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ウェーハ支持ボート、横型熱処理炉、ウェーハの熱処理方法、及び貼り合わせウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230612BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230612BHJP
H01L 21/324 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L21/31 F
H01L21/324 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198816
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】草場 辰己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆生
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 悠平
(72)【発明者】
【氏名】森川 靖之
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA20
5F045AB32
5F045AC11
5F045AC15
5F045AC16
5F045BB13
5F045BB15
5F045DP20
5F045EK06
5F045EM02
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】本発明は、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することのできる、ウェーハ支持ボート及び該ウェーハ支持ボートを有する横型熱処理炉、該ウェーハ支持ボートを用いたウェーハの熱処理方法、及び貼り合わせウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のウェーハ支持ボートは、横型熱処理炉用のウェーハ支持ボートであり、収容部は、炭化ケイ素からなり、支持部は、石英からなる。本発明の横型熱処理炉は、上記のウェーハ支持ボートを備える。本発明のウェーハの熱処理方法は、上記のウェーハ支持ボートを用いて熱処理を行う、熱処理工程を含む。本発明の貼り合わせウェーハの製造方法は、上記のウェーハの熱処理方法による熱処理工程を含む。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型熱処理炉用のウェーハ支持ボートであって、
前記ウェーハ支持ボートは、ウェーハを収容する収容部と、前記収容部の底部に配置されてウェーハを支持する支持部とを備え、
前記支持部は、ウェーハの並ぶ方向に沿って延びる支持部本体と、前記支持部本体から上方に突出し前記支持部本体の延びる方向に沿って並ぶ複数の突出部とを有し、隣接する2つの前記突出部間によってウェーハが配置されるウェーハ溝が区画形成され、
前記収容部は、炭化ケイ素からなり、
前記支持部は、石英からなることを特徴とする、ウェーハ支持ボート。
【請求項2】
前記支持部本体の厚さは、2~30mmである、請求項1に記載のウェーハ支持ボート。
【請求項3】
前記収容部の前記底部は、面支持により、前記支持部本体を支持するように構成された、請求項1又は2に記載のウェーハ支持ボート。
【請求項4】
前記収容部の前記底部は、複数箇所による点支持により、前記支持部本体を支持するように構成された、請求項1又は2に記載のウェーハ支持ボート。
【請求項5】
前記支持部は、前記収容部に対して脱着可能に取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のウェーハ支持ボート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のウェーハ支持ボートを備えた、横型熱処理炉。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のウェーハ支持ボートを用いて熱処理を行う、熱処理工程を含む、ウェーハの熱処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載のウェーハの熱処理方法による熱処理工程を含む、貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項9】
前記熱処理工程として、BOX熱処理工程と貼り合わせ後熱処理工程との少なくともいずれか一方を行う、請求項7に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型熱処理炉用のウェーハ支持ボート、該ウェーハ支持ボートを備えた横型熱処理炉、該ウェーハ支持ボートを用いたウェーハの熱処理方法、及び貼り合わせウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炉本体の内部に横長に延在する炉芯管及び横方向に複数枚のウェーハを載置可能なウェーハ支持ボートを備えた横型熱処理炉を用いてウェーハの熱処理を行う手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、SOI(Silicon on Insulator)ウェーハは、支持基板用ウェーハ上に、酸化シリコン(SiO2)等の絶縁膜、及びデバイス活性層として用いられる単結晶シリコン層が順次形成された構造を有する。SOIウェーハの代表的な製造方法の一つに貼り合わせ法がある。貼り合わせ法は、支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとの少なくともいずれか一方にBOX(Buried Oxiede)層として酸化膜を形成し、次いで、酸化膜を介して支持基板用ウェーハおよび活性層用ウェーハを貼り合わせて貼り合わせウェーハとする。そして、支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとの接合を強固にするための熱処理を貼り合わせウェーハに施すことでSOIウェーハが製造される。
【0004】
図1Aは、従来のウェーハ支持ボートの概略正面図であり、
図1Bは、従来のウェーハ支持ボートの概略側面図である。全工程の中で、熱処理を行う工程としては、BOX(Buried Oxide)酸化膜熱処理工程と、貼り合わせ後に行う、貼り合わせ後熱処理工程とがある。
まず、活性層用ウェーハ及び支持基板用ウェーハを準備する。次いで、活性層用ウェーハに酸化膜を形成する、BOX熱処理工程を行う。BOX熱処理工程では、
図1A、
図1Bに示すように、活性層用のシリコンウェーハを載置したウェーハ支持ボートを熱処理炉に投入することで、活性層用ウェーハに酸化雰囲気下で熱処理を行って、活性層用ウェーハに酸化膜を形成する。
【0005】
ここで、ウェーハ支持ボートは、複数枚のウェーハが横方向に等間隔に整列し、各ウェーハが垂直方向に立てられるものを用いる(例えば、特許文献2)。
図1A、
図1Bに示すように、ウェーハ支持ボート91には、複数のウェーハ溝92が横方向に等間隔に設けられている。なお、
図1A、
図1Bにおいては簡略化のために1枚のみのウェーハWを示しているが、実際には複数枚のウェーハWを複数のウェーハ溝92の各々に載置する。
【0006】
次いで、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを、BOX層を介して貼り合わせる。活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとは、ノッチ部を揃え、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせ界面にエアや異物等が入り込まないように貼り合わせる。
【0007】
次いで、貼り合わせ強度を高めるために、貼り合わせ後熱処理を行う。この熱処理は、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを貼り合わせたウェーハWを、ウェーハ支持ボート91のウェーハ溝92に立て、ウェーハ支持ボート91ごと熱処理炉に投入し、酸化雰囲気で熱処理を行う。その後、熱処理炉からウェーハ支持ボート91を取出し、その後ウェーハ支持ボート91からウェーハWを取り出す。
【0008】
その後、活性層用ウェーハに対して、面取り、エッチング、研削、及び研磨加工を行って、活性層用ウェーハの厚さを所定の厚さとなるまで加工し、貼り合わせSOIウェーハを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-089993号公報
【特許文献2】特開2002-299423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、ウェーハ支持ボートは、全体を炭化ケイ素(SiC)で形成することが多い。その理由は、BOX層を形成するBOX熱処理工程においては、通常行われる熱処理温度や熱処理時間に鑑みて、熱変形が起こりにくく耐熱性がある材質を用いることが好ましいからである。また、貼り合わせ後熱処理工程においても、高温で長時間の熱処理が必要であることや、貼り合わせた2枚分の重量のウェーハをウェーハ支持ポートが支持する必要があることから、耐熱性と耐荷重性とが要求されるからである。そして、これらの特性を有する材質として、ウェーハ支持ボートの材質は炭化ケイ素とすることが多かった。
【0011】
しかしながら、炭化ケイ素製のウェーハ支持ボートを用いて熱処理を行うことには以下のような問題があった。
図2A~
図2Dは、従来のウェーハ支持ボートを用いたBOX熱処理及び貼り合わせについて説明するための図である。
BOX酸化工程では、熱処理によりシリコンウェーハWの表面に生成された酸化膜Waと炭化ケイ素製ウェーハ支持ボート91の表面に生成された酸化膜91aとが固着することがある(
図2A)。このとき、シリコンウェーハWを炭化ケイ素製ウェーハ支持ボート91から取出す際に、ウェーハ端面の炭化ケイ素製ウェーハボート91への固着により酸化膜の一部が欠けてシリコン片Wbが発生する場合があった(
図2B)。また、欠けたシリコン片Wbがウェーハ支持ボート91のウェーハ溝92に残存する場合もあり、ウェーハ溝92に残存したシリコン片の上に熱処理に供される次のバッチのウェーハWが載置されて熱処理されることから、ウェーハ端面の不良も生じやすい。また、シリコン片がウェーハ表面にも付着し(
図2C)、輝点不良にもなり易い。特に、形成するBOXの膜厚が厚いほど、上記の現象が生じやすく、起点不良率が高く、端面のチップ不良率も高い傾向があった。
【0012】
また、貼り合わせ後熱処理工程でも、活性層用ウェーハ及び支持基板用ウェーハの端面の、ウェーハ支持ボードとの固着部分に欠けが発生する場合があった。また、端面の酸化物が欠けた状態で、後工程のエッチングを行うと、シリコンウェーハ端面にピットが発生し不良となる。
【0013】
さらに、貼り合わせ工程においても、BOX熱処理時にウェーハ表面に付着したシリコン片が、支持基板用ウェーハとの間に挟まり、2枚のウェーハの界面に、シリコン片が挟まり、貼り合わせ不良を生じる場合があった(
図2D)。また、ウェーハ界面にシリコン片が挟まることは、ウェーハ界面にエアが入り込む不良にもつながる。
貼り合わせ工程や貼り合わせ後熱処理においても、特に、BOXの膜厚が厚いほど、上記の現象が生じやすく、不良率も高い傾向があった。
【0014】
以上の課題に鑑みて、本発明は、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することのできる、ウェーハ支持ボート及び該ウェーハ支持ボートを有する横型熱処理炉、該ウェーハ支持ボートを用いたウェーハの熱処理方法、及び貼り合わせウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)横型熱処理炉用のウェーハ支持ボートであって、
前記ウェーハ支持ボートは、ウェーハを収容する収容部と、前記収容部の底部に配置されてウェーハを支持する支持部とを備え、
前記支持部は、ウェーハの並ぶ方向に沿って延びる支持部本体と、前記支持部本体から上方に突出し前記支持部本体の延びる方向に沿って並ぶ複数の突出部とを有し、隣接する2つの前記突出部間によってウェーハが配置されるウェーハ溝が区画形成され、
前記収容部は、炭化ケイ素からなり、
前記支持部は、石英からなることを特徴とする、ウェーハ支持ボート。
【0016】
(2)前記支持部本体の厚さは、2~30mmである、上記(1)に記載のウェーハ支持ボート。
【0017】
(3)前記収容部の前記底部は、面支持により、前記支持部本体を支持するように構成された、上記(1)又は(2)に記載のウェーハ支持ボート。
【0018】
(4)前記収容部の前記底部は、複数箇所による点支持により、前記支持部本体を支持するように構成された、上記(1)又は(2)に記載のウェーハ支持ボート。
【0019】
(5)前記支持部は、前記収容部に対して脱着可能に取り付けられている、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のウェーハ支持ボート。
【0020】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のウェーハ支持ボートを備えた、横型熱処理炉。
【0021】
(7)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のウェーハ支持ボートを用いて熱処理を行う、熱処理工程を含む、ウェーハの熱処理方法。
【0022】
(8)上記(7)に記載のウェーハの熱処理方法による熱処理工程を含む、貼り合わせウェーハの製造方法。
【0023】
(9)前記熱処理工程として、BOX熱処理工程と貼り合わせ後熱処理工程との少なくともいずれか一方を行う、上記(7)に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することのできる、ウェーハ支持ボート及び該ウェーハ支持ボートを有する横型熱処理炉、該ウェーハ支持ボートを用いたウェーハの熱処理方法、及び貼り合わせウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】従来のウェーハ支持ボートの概略正面図である。
【
図1B】従来のウェーハ支持ボートの概略側面図である。
【
図2A】従来のウェーハ支持ボートを用いたBOX熱処理及び貼り合わせについて説明するための図である。
【
図2B】従来のウェーハ支持ボートを用いたBOX熱処理及び貼り合わせについて説明するための図である。
【
図2C】従来のウェーハ支持ボートを用いたBOX熱処理及び貼り合わせについて説明するための図である。
【
図2D】従来のウェーハ支持ボートを用いたBOX熱処理及び貼り合わせについて説明するための図である。
【
図3A】1枚のウェーハが載置された、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの概略正面図である。
【
図3B】1枚のウェーハが載置された、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの概略側面図である。
【
図3C】本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの概略上面図である。
【
図4A】従来の炭化ケイ素製のウェーハ支持ボートの場合の熱処理前の様子を模式的に示す図である。
【
図4B】従来の炭化ケイ素製のウェーハ支持ボートの場合の熱処理後の様子を模式的に示す図である。
【
図5A】ウェーハ支持部に石英を用いた場合の熱処理前の様子を模式的に示す図である。
【
図5B】ウェーハ支持部に石英を用いた場合の熱処理後の様子を模式的に示す図である。
【
図6A】1枚のウェーハが載置された、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの変形例の概略上面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの変形例の概略側面図である。
【
図7】支持部本体の厚さについて説明するための図である。
【
図8A】収容部の底部による支持部本体の面支持を示す図である。
【
図8B】収容部の底部による支持部本体の点支持を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態にかかる横型熱処理炉の断面図である。
【
図10A】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10B】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10C】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10D】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10E】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10F】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10G】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図10H】本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
【
図11A】比較例のウェーハ端面の品質評価の結果を示す図である。
【
図11B】発明例のウェーハ端面の品質評価の結果を示す図である。
【
図12A】比較例のウェーハ表面の輝点観察の結果を示す図である。
【
図12B】発明例のウェーハ表面の輝点観察の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0027】
(ウェーハ支持ボート)
図3Aは、1枚のウェーハが載置された、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの概略正面図である。
図3Bは、1枚のウェーハが載置された、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの概略側面図である。
図3Cは、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの概略上面図である。
【0028】
本実施形態のウェーハ支持ボート1は、横型熱処理炉用のウェーハ支持ボートであり、複数枚のウェーハW(本例では、シリコンウェーハ)を水平方向の一方向に整列させて、該複数枚のウェーハWを同時に熱処理することができるように構成されている。
【0029】
図3A~
図3Cに示すように、ウェーハ支持ボート1は、収容部2と支持部3と、を有している。
【0030】
以下の説明においては、
図3Aにおける紙面上に垂直な方向を前後方向、紙面上の左右方向を横方向、紙面上の上下方向を垂直方向とする。
収容部2は、底部21と、底部21に連結されて垂直方向上方に延在する側部22と、側部22に連結されて横方向に延在する上部23とを有する。
【0031】
図示例では、底部21は、横方向に延在する1枚の板状部材である。また、側部22は、
図3Bに示すように略U字状の2枚の板状部材からなる。上部23は、側部22の上端に連結され、横方向に延在する2枚の板状部材からなる。上部23には、ウェーハWが入り込むための複数のウェーハ溝231が設けられ、複数のウェーハ溝231は、横方向に整列されている。
【0032】
次に、支持部3は、収容部2の底部21の上面に配置されており、ウェーハを支持するように構成されている。支持部3は、収容部2に対して脱着可能に取り付けられている。
支持部3は、ウェーハの並ぶ方向(
図3Aの横方向)に沿って延びる支持部本体31と、支持部本体31から上方に突出し支持部本体31の延びる方向に沿って並ぶ複数の突出部32と、を有している。そして、隣接する2つの突出部32間によって、ウェーハWが配置されるウェーハ溝33が区画形成されている。図示例では、ウェーハ溝33が横方向に複数配列されている。突出部32は、ウェーハWの下部側面を支持可能に構成されている。
【0033】
ここで、本実施形態では、収容部21は、その全体が炭化ケイ素からなり、且つ、支持部3は、石英からなる。
以下、本実施形態のウェーハ支持ボートの作用効果について説明する。
図4Aは、従来の炭化ケイ素製のウェーハ支持ボートの場合の熱処理前の様子を模式的に示す図である。
図4Bは、従来の炭化ケイ素製のウェーハ支持ボートの場合の熱処理後の様子を模式的に示す図である。
図5Aは、ウェーハ支持部に石英を用いた場合の熱処理前の様子を模式的に示す図である。
図5Bは、ウェーハ支持部に石英を用いた場合の熱処理後の様子を模式的に示す図である。
【0034】
シリコンウェーハを酸素雰囲気中で熱処理すると、シリコンウェーハ表面のSiと雰囲気中のO
2とが反応して、酸化膜が形成される。さらに、シリコン表面に成長した酸化膜中にO
2が拡散し、酸化膜シリコン界面のSiと反応して酸化膜(SiO
2)がさらに形成される。
図4A、
図4Bに示すように、支持部(支持部本体131及び突出部132)が炭化ケイ素部材の場合、炭化ケイ素部材の表面のSiと雰囲気中のO
2とが反応し、熱酸化膜が形成される。さらに、シリコン表面に成長した酸化膜中にO
2が拡散し、酸化膜及び炭化ケイ素界面のSiと反応して、
図4Bにて斜線で示したように酸化膜(SiO
2)がさらに形成される。このことから、炭化ケイ素製のウェーハ支持ボートでは、炭化ケイ素部材とシリコンウェーハとが接触した部分では、双方の酸化膜成長が進む中で、ウェーハ側の酸化膜とウェーハ支持ボート側の酸化膜とが結合する。
一方で、
図5A、
図5Bに示すように、支持部(支持部本体31及び突出部32)が石英(SiO
2)部材の場合、SiO
2部材は、SiO
2内部にO
2が拡散しても結合するSiがない為、表面にSiO
2が形成されない。このことから、石英製のウェーハ支持ボートでは、ウェーハ側の酸化膜成長は進み、
図5Bにて斜線で示したように酸化膜(SiO
2)が形成されるが、ウェーハ支持ボート側には酸化膜が形成されないため、酸化膜の結合は生じない。
【0035】
本実施形態では、まず、収容部2は、炭化ケイ素からなるため、ウェーハ支持ボート1全体としての耐熱性及び耐荷重性に優れている。
一方で、シリコンウェーハWの荷重を支持する、支持部3は石英からなるため、上述したように、シリコンウェーハとウェーハ支持ボートとの酸化固着を抑制することができる。BOX熱処理工程や貼り合わせ後熱処理工程等における、高温且つ長時間の熱処理(例えば酸化膜厚が1μm以上の酸化処理)を行っても、シリコンウェーハWとウェーハ支持ボート1との酸化固着を抑制することができる。
従って、酸化熱処理後にシリコンウェーハ支持ボート1からシリコンウェーハWを取り出す際にも、シリコンウェーハW端面に傷や欠けが発生するのを抑制することができ、また、シリコンウェーハW表面にシリコン片Wbや酸化物等が付着するのも抑制することができる。
よって、シリコンウェーハW(又は貼り合わせウェーハ)端面の傷や欠けの発生を抑制し、ピット等の不良が生じることを抑制することができる。また、ウェーハの貼り合わせ時にウェーハ界面にシリコン片が挟まる貼り合わせ不良も抑制することができる。
このように、本実施形態のウェーハ支持ボート1によれば、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することができる。
【0036】
図6Aは、1枚のウェーハが載置された、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの変形例の概略上面図である。
図6Bは、本発明の一実施形態にかかるウェーハ支持ボートの変形例の概略側面図である。
図3A、
図3Bに示した例では、一列に整列した突出部32によりウェーハWを支持する例を示したが、複数列に整列した突出部によりウェーハWを複数箇所で支持することもできる。例えば、
図6A、
図6Bに示すように、2列に整列した突出部によりウェーハWを2箇所で支持することもできる。
【0037】
図7は、支持部本体の厚さについて説明するための図である。支持部本体31の厚さtは、2~30mmであることが好ましい。厚さtを2mm以上とすることにより、支持部の強度を保ちつつウェーハ溝を形成できる。一方で、石英はシリコンに比べて比熱が大きいため、厚さtを30mm以下とすることにより、熱処理工程においてウェーハと支持部との間に生じる温度差に起因するスリップ欠陥を抑制することができる。
【0038】
図8Aは、収容部の底部による支持部本体の面支持を示す図である。
図8Bは、収容部の底部による支持部本体の点支持を示す図である。収容部2の底部21は、面支持又は複数箇所による点支持により、支持部本体31を支持するように構成されていることが好ましい。
図8Aでは、収容部2の底部21の上面と支持部本体31の下面とが面接触しており、これにより、収容部2の底部21によって支持部本体31が面支持されている。このような面支持によれば、ウェーハを安定して支持することができる。
図8Bでは、収容部2の底部21の上面に、複数の凸部211が水平方向(図示横方向)に本例では等間隔に設けられており、複数の凸部211は、高さが同一であり、複数の凸部211上に、支持部本体31が載置されている。これにより、収容部2の底部21によって支持部本体31が点支持されている。このような点支持によれば、収容部2の底部21から支持部本体31への熱伝導を小さくして、収容部2から支持部3への急激な温度変化を抑え、そして、シリコンウェーハWと支持部3との間の温度差に起因するスリップ欠陥の発生を抑制することができる。
【0039】
なお、ウェーハがシリコンウェーハである場合、支持部には石英を用い、純度が高い方が、上記の作用効果を有効に得ることができるため、石英ガラスを用いることがより好ましい。
一方で、ウェーハがシリコンウェーハでない場合は、異なる材料を用いることができる。例えば、ウェーハがアルミナウェーハである場合は、支持部としてアルミナ(Al2O3)を用いることもできる。
【0040】
(横型熱処理炉)
次に、本発明の一実施形態にかかる横型熱処理炉について説明する。
図9は、本発明の一実施形態にかかる横型熱処理炉の断面図である。
【0041】
図9に示すように、この横型熱処理炉100は、炉本体101の内部に、横長に延在する炉芯管102を備える。炉芯管102は、一端に開口部103及びこれを開閉するドア104が設けられ、他端にガス導入管105が設けられている。
また、この横型熱処理炉100は、ウェーハ支持ボート1を備えており、このウェーハ支持ボート1は、
図9では簡略的に示しているが、上述のウェーハ支持ボートの実施形態において説明したものである。
そして、シリコンウェーハWを熱処理する場合は、シリコンウェーハWをウェーハ支持ボート1に載せて、炉芯管102の開口部103から挿入して中央にセットし、ドア104を閉じて略密閉したのち、ガス導入管105から窒素、酸素、アルゴン等の高純度ガスを流して、開口部103とドア104との間の隙間から高純度ガスを炉外に排気する。
一例としては、この横型熱処理炉100は、貼り合わせSOIウェーハの製造における、BOX熱処理工程や、貼り合わせ後熱処理工程に用いることができるが、これらの熱処理に限定されない。
【0042】
本実施形態の横型熱処理炉100によれば、上記の実施形態のウェーハ支持ボート1を用いているため、ウェーハ支持ボート1の実施形態で説明したのと同様の理由により、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することができる。
【0043】
(ウェーハの熱処理方法)
本発明の一実施形態にかかるウェーハの熱処理方法は、上記の実施形態のウェーハ支持ボートを用いて熱処理を行う、熱処理工程を含む。
このような熱処理工程としては、例えば、貼り合わせSOIウェーハの製造における、BOX熱処理工程や、貼り合わせ後熱処理工程を例示することができるが、これらに限定されない。
本実施形態のウェーハの熱処理方法によれば、上記の実施形態のウェーハ支持ボートを用いているため、ウェーハ支持ボートの実施形態で説明したのと同様の理由により、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することができる。
【0044】
(貼り合わせウェーハの製造方法)
図10A~
図10Hは、本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法の各工程を示す図である。
図10に示すように、まず、活性層用ウェーハ及び支持基板用ウェーハを準備する(
図10A)。
【0045】
次いで、活性層用ウェーハに酸化膜を形成する、BOX熱処理工程を行う(
図10B)。BOX熱処理工程は、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを貼り合わせる前に行う、活性層用ウェーハにBOXを形成する酸化熱処理工程である。 具体的には、ウェーハ支持ボートにシリコンウェーハを載置し、ウェーハ支持ボートごと熱処理炉に投入し、酸化雰囲気下で熱処理を行って、シリコンウェーハに酸化膜を形成する。酸化膜は斜線で示されている(以降も同様)。
【0046】
次いで、BOXが形成された活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせを行う(
図10C)。活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとは、ノッチ部を揃え、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせ界面に、エアや異物等が入り込まないように貼り合わせる。
【0047】
次いで、貼り合わせ強度を高めるために、貼り合わせ後熱処理を行う(
図10D)。貼り合わせ後熱処理は、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを貼り合わせた後に行う、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとの貼り合わせを強固にするための酸化熱処理工程である。この熱処理は、活性層用ウェーハと支持基板用ウェーハとを貼り合わせたウェーハWを、ウェーハ支持ボートのウェーハ溝に立て、ウェーハ支持ボートごと熱処理炉に投入し、酸化雰囲気で熱処理を行う。その後、熱処理炉からウェーハ支持ボートを取出し、その後ウェーハ支持ボートからウェーハWを取り出す。
その後、活性層用ウェーハに対して、面取り(
図10E)、エッチング(
図10F)、研削(
図10G)、及び研磨加工(
図10H)を行って、活性層用ウェーハの厚さを所定の厚さとなるまで加工し、貼り合わせSOIウェーハを製造する。
【0048】
ここで、本発明の一実施形態にかかる貼り合わせウェーハの製造方法は、上記の実施形態のウェーハ支持ボートを用いて熱処理を行う、熱処理工程を含む。その熱処理工程は、活性層用ウェーハに対してBOXを形成する際のBOX熱処理工程と、貼り合わせウェーハに対して行う貼り合わせ後熱処理工程との少なくともいずれかである。
【0049】
本実施形態の貼り合わせウェーハの製造方法によれば、上記の実施形態のウェーハ支持ボートを用いているため、ウェーハ支持ボートの実施形態で説明したのと同様の理由により、上記の種々の欠陥が生じることを抑制することができる。
【0050】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【実施例0051】
発明例として、
図3A~
図3Cに示したように、収容部が炭化ケイ素製であり、支持部が石英ガラス製である、ウェーハ支持ボートを作製した。比較例として、全体が炭化ケイ素製であるウェーハ支持ボートを用意した。
これらのウェーハ支持ボートの複数のウェーハ溝に複数枚のシリコンウェーハを載置し、1150℃の熱処理温度で、10時間の熱処理時間、酸化膜厚2.5μmのBOX熱処理工程を行って、品質評価を行った。
【0052】
図11Aは、比較例のウェーハ端面の品質評価の結果を示す図である。
図11Bは、発明例のウェーハ端面の品質評価の結果を示す図である。比較例では、ウェーハ端面に傷、欠けが観察された。一方で、発明例では、傷や欠けが観察されなかった。
図12Aは、比較例のウェーハ表面の輝点観察の結果を示す図である。
図12Bは、発明例のウェーハ表面の輝点観察の結果を示す図である。比較例では、ウェーハ支持部付近を確認するとエッジに輝点が確認された。一方で、発明例では、ウェーハ支持部付近のエッジに輝点は確認されなかった。