(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008466
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】画像形成セット、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20230112BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20230112BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230112BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20230112BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230112BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 114
B41M5/00 120
D06P5/00 101
C09D11/322
C09D11/54
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41J2/175 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112055
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】古川 壽一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FC06
2C056HA42
2C056KC02
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
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2H186FB17
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2H186FB48
2H186FB56
4H157AA02
4H157CA12
4H157CB02
4H157DA01
4H157GA06
4J039BC07
4J039BE01
4J039CA06
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4J039EA41
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与し、布帛の前処理液が付与された領域に対してインクを付与することで画像を形成する場合、画像の発色性を向上させることができる一方で、画像の堅牢性が不十分である課題があった。また、画像の堅牢性を向上させようとすると、インクのデキャップ性が低下する課題があった。
【解決手段】 合成繊維を含む布帛に対して付与される前処理液と、布帛の前処理液が付与された領域に対して付与されるインクと、を有し、前処理液は、塩化カルシウムを含有し、インクは、水溶性有機溶剤、顔料、及び樹脂粒子を含有し、水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤を含有し、水溶性有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量は、インクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下である画像形成セット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維を含む布帛に対して付与される前処理液と、前記布帛の前記前処理液が付与された領域に対して付与されるインクと、を有する画像形成セットであって、
前記前処理液は、塩化カルシウムを含有し、
前記インクは、水溶性有機溶剤、顔料、及び樹脂粒子を含有し、
前記水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤を含有し、
前記水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とする画像形成セット。
【請求項2】
前記塩化カルシウムの含有量は、前記前処理液の質量に対して3.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1に記載の画像形成セット。
【請求項3】
前記樹脂粒子は、ガラス転移温度が0℃以下のウレタン樹脂を含有する請求項1又は2に記載の画像形成セット。
【請求項4】
前記インクの25℃における粘度は、8.0mPa・s以上15.0mPa・s以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成セット。
【請求項5】
前記合成繊維は、ポリエステル繊維である請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成セット。
【請求項6】
前記合成繊維は、生分解性のポリエステル繊維である請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成セット。
【請求項7】
前処理液を収容している前処理液収容手段と、
インクを収容しているインク収容手段と、
合成繊維を含む布帛に対して前記前処理液を付与する前処理液付与手段と、
前記布帛の前記前処理液が付与された領域に対して前記インクを付与するインク付与手段と、を有する画像形成装置であって、
前記前処理液は、塩化カルシウムを含有し、
前記インクは、水溶性有機溶剤、顔料、及び樹脂粒子を含有し、
前記水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤を含有し、
前記水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与する前処理液付与工程と、
前記布帛の前記前処理液が付与された領域に対してインクを付与するインク付与工程と、を含む画像形成方法であって、
前記前処理液は、塩化カルシウムを含有し、
前記インクは、水溶性有機溶剤、顔料、及び樹脂粒子を含有し、
前記水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤を含有し、
前記水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、
前記沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成セット、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターはオンデマンドでカラー印刷が容易に形成できるといった利点があることから、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。近年では、家庭用のみならず、コート紙等の緩浸透性メディアやプラスチックフィルム等の非吸収性メディア、織物や編物等のファブリックメディアに対しても、インクジェット記録方法により、従来のアナログ印刷並の画質を獲得することが要求されるようになっている。
【0003】
例えば、捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct to Garment)分野の市場規模は年々拡大しており、また、近年のアパレル業界におけるパーソナルレコメンデーションビジネスの隆盛や、インテリアテキスタイル分野において認められるファインアートとのコラボレーションの活発化といった動向により、ファブリックに対して発色性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
【0004】
顔料を色材として含むインクを用いて直接生地にインクジェットで作像する捺染方式においては、スクリーン捺染及びその他の従来の捺染とは異なり、版の作製・保管・洗浄等の版に関する事柄が必要なく、少量多品種生産に適していること、転写等の工程を含まないため短納期化が可能なこと、耐光性に優れること等の点において優位性を有しており、そのためのインクが開発されてきている。
【0005】
近年ではポリエステル素材等の合成繊維を含む生地への作像のニーズが高まっている。また、無地の生地のみならず、捺染等によって既に着色された生地への作像に対するニーズも高まっている。着色された生地への作像としては、生地をホワイトインクで被覆し、その上にカラーインクを着弾させるような方法が挙げられ、ブラックやネイビー等の濃色が着色した生地に対してもホワイトインクの層がカラーインクの下地となることで十分な発色性を持たせることができる。したがって、上記の作像方法においては、ホワイトインクが生地の濃色を隠蔽することが重要であり、高い白色度を有することが求められる。
【0006】
特許文献1には、捺染インク組成物によって形成される画像の粒状性を優れたものとすることを目的として、カチオン性化合物、乳化剤、及び水を含有する処理液組成物が開示されている。
【0007】
特許文献2には、十分な濃度の画像をにじむことなく布帛上に記録し、洗浄後も白場を汚染することなく、更に長期にわたり鮮明な画像を布帛上に形成することを目的として、インクジェット方式により布帛に記録するインクジェット捺染方法において、該記録に先だち布帛の少なくとも一部に前処理液を付与し、インクによる記録を行った後、該布帛を洗浄する工程を有し、該前処理液が二価以上の金属塩を含有し、表面張力が35mN/m以下であることを特徴とするインクジェット捺染方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与し、布帛の前処理液が付与された領域に対してインクを付与することで画像を形成する場合、画像の発色性を向上させることができる一方で、画像の堅牢性が不十分である課題があった。また、画像の堅牢性を向上させようとすると、インクのデキャップ性が低下する課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、合成繊維を含む布帛に対して付与される前処理液と、前記布帛の前記前処理液が付与された領域に対して付与されるインクと、を有する画像形成セットであって、前記前処理液は、塩化カルシウムを含有し、前記インクは、水溶性有機溶剤、顔料、及び樹脂粒子を含有し、前記水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、前記沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量は、前記インクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とする画像形成セットに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与し、布帛の前処理液が付与された領域に対してインクを付与することで画像を形成する場合において、画像の発色性及び堅牢性を向上させることができ、更にインクのデキャップ性を向上させることができる画像形成セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、収容手段の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
<<画像形成セット>>
本発明の画像形成セットは、前処理液及びインクを有し、必要に応じて、布帛及びその他の液体組成物などを有してもよい。また、前処理液及びインクは、それぞれ、1つであっても複数であってもよい。
本開示における「画像形成セット」は、前処理液及びインクがそれぞれ独立した状態で存在していればよく、例えば、前処理液を収容している前処理液収容手段およびインクを収容しているインク収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、前処理液収容手段およびインク収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、前処理液及びインクが併用されることを前提としている場合、及び前処理液及びインクが併用されることを実質的に誘導している場合などは画像形成セットに含まれる。
本開示における「前処理液」は、合成繊維を含む布帛に対して付与され、前処理液が付与された領域に対して後から付与されるインクと接触することで、インク中において凝集又は増粘を生じさせる液体組成物である。
本開示における「インク」は、合成繊維を含む布帛の前処理液が付与された領域に対して付与され、前処理液が付与された領域と接触することで凝集又は増粘を生じ、画像を形成する液体組成物である。インクの色としては、白色インク及びカラーインクが挙げられる。「白色インク」は、合成繊維を含む布帛に対して付与されることで白色画像を形成するインクである。白色インクが合成繊維を含む布帛上に白色画像を形成することで、例えば、白色インクが付与された領域に対して後から付与されるカラーインクにより形成されるカラー画像の下地として機能し、カラー画像の発色性を向上させることができる。なお、「白色」とは、社会通念上、白及びホワイト等と称される色であり、微量着色されているものも含む。また、「カラーインク」は、合成繊維を含む布帛に対して付与されることでカラー画像を形成するインクである。また、カラーインクは、発色性を向上させる観点から、合成繊維を含む布帛の白色インクが付与された領域に対して付与されることでカラー画像を形成することが好ましい。なお、「カラー」とは、上記の「白色」に含まれない色を表し、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローなどを含む。
本開示における「布帛」は、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。
【0014】
<前処理液>
前処理液は、塩化カルシウムを含有し、必要に応じて、塩化カルシウム以外の多価金属塩(以下、「その他多価金属塩」とも称する)、水、有機溶剤、樹脂、界面活性剤などのその他の成分を含むことが好ましい。なお、前処理液は、用途上、色材を含まないことが好ましい。
【0015】
-塩化カルシウム-
塩化カルシウムは、多価金属塩の一種であり、前処理液に含有されることで、前処理液が付与された領域に対して付与されたインクにより形成される画像の発色性及び堅牢性を向上させることができる。
【0016】
まず、前処理液が塩化カルシウムを含むことで、布帛の前処理液が付与された領域に対して後から付与されるインクにより形成される画像の発色性(例えば、インクが白色インクである場合は白色度)が向上する理由について説明する。
これは、先に布帛に付与された前処理液に含まれる塩化カルシウムが、後から付与されるインクに含まれる色材と接触したときに、電荷的な作用によって色材の凝集体を形成させ、色材を液相から分離させて布帛表面に対する定着を促進させるためである。前処理液に塩化カルシウムを含有させることで、布帛のような空隙の大きい媒体を用いたとしても、凝集体による層を形成することで色材を布帛の表面に留めることができ、高発色の画像を形成することができる。特に、着色された繊維を含む布帛に対してインクを付与し、インクにより形成される画像で布帛の色を隠蔽したい場合(具体的には、白色インクにより白色画像の下地を形成する場合)などにおいて、高発色の画像を形成することができ、布帛の色をより隠蔽できるので好ましい。また、色材の凝集体を形成させることで、液体吸収性の低い布帛を用いた場合に生じ得るビーディングも抑制でき、高画質な画像を形成できる。また、塩化カルシウムは、カチオンポリマー等の凝集剤と異なり、前処理液を布帛に付与した後からインクが付与されるまでの間において、前処理液が付与された領域に搬送部材等の接触部材が接触する場合であっても、接触部材に対して前処理液が転写されることを抑制することができる。
【0017】
次に、前処理液が塩化カルシウムを含むことで、布帛の前処理液が付与された領域に対して後から付与されるインクにより形成される画像の堅牢性が向上する理由について説明する。
これは、塩化カルシウムが、他の多価金属塩と比較して、水溶性有機溶剤の吸収能に優れるためである。具体的には、塩化カルシウムを含有する前処理液を布帛に付与することで布帛内に塩化カルシウムを配置し、その後、布帛の前処理液が付与された領域に対して付与されたインクと接触することで、塩化カルシウムがインクに含まれる水溶性有機溶剤を吸収する。これにより、インクにより形成される画像中の水溶性有機溶剤の含有量が減少し、結果として、画像の堅牢性が向上し、更に画像のベタつきも抑制することができる。また、塩化カルシウムによるインク中の水溶性有機溶剤の吸収能は、前処理液を布帛に付与した後からインクが付与される前の間に乾燥工程を有することでより向上する。
なお、本開示において「堅牢性」とは、インクにより形成される画像を別の部材で擦った場合において、画像から別の画像に対して転写が生じる程度を表し、転写が少ない場合を堅牢性が優れると判断し、転写が多い場合を堅牢性が劣ると判断する。
【0018】
塩化カルシウムの含有量は、前処理液の質量に対して3.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。3.0質量%以上20.0質量%以下であることで、塩化カルシウムによる水溶性有機溶剤の吸収能が十分発揮され、画像の堅牢性がより向上し、画像のベタつきもより抑制される。また、塩化カルシウムによる色材の凝集能も十分発揮され、画像の発色性がより向上する。
【0019】
-その他多価金属塩-
本開示においてその他多価金属塩は、上記の塩化カルシウム以外の多価金属塩を表す。その他多価金属塩が前処理液に含有されることで、前処理液が付与された領域に対して付与されたインクにより形成される画像の発色性(例えば、インクが白色インクである場合は白色度)を向上させることができる。
【0020】
前処理液がその他多価金属塩を含むことで、布帛の前処理液が付与された領域に対して後から付与されるインクにより形成される画像の発色性が向上する理由について説明する。
これは、先に布帛に付与された前処理液に含まれるその他多価金属塩が、後から付与されるインクに含まれる色材と接触したときに、電荷的な作用によって色材の凝集体を形成させ、色材を液相から分離させて布帛表面に対する定着を促進させるためである。前処理液にその他多価金属塩を含有させることで、布帛のような空隙の大きい媒体を用いたとしても、凝集体による層を形成することで色材を布帛の表面に留めることができ、高発色の画像を形成することができる。特に、着色された繊維を含む布帛に対してインクを付与し、インクにより形成される画像で布帛の色を隠蔽したい場合(具体的には、白色インクにより白色画像の下地を形成する場合)などにおいて、高発色の画像を形成することができ、布帛の色をより隠蔽できるので好ましい。また、色材の凝集体を形成させることで、液体吸収性の低い布帛を用いた場合に生じ得るビーディングも抑制でき、高画質な画像を形成できる。また、その他多価金属塩は、カチオンポリマー等の凝集剤と異なり、前処理液を布帛に付与した後からインクが付与されるまでの間において、前処理液が付与された領域に搬送部材等の接触部材が接触する場合であっても、接触部材に対して前処理液が転写されることを抑制することができる。
【0021】
その他多価金属塩としては、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ニッケル化合物などの塩が挙げられる。これらのなかでも、顔料を効果的に凝集させることができる点から、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、ニッケル化合物の塩が好ましく、カルシウム化合物、マグネシウム化合物のアルカリ土類金属塩がより好ましい。
【0022】
マグネシウム化合物としては、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、珪酸マグネシウムなどが挙げられる。
カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。
亜鉛化合物としては、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0023】
-水-
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などを用いることができる。
【0024】
水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の乾燥性の点から、前処理液の質量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0025】
-有機溶剤-
有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0026】
有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0027】
有機溶剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の質量に対して5.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上70.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以上50.0質量%以下が更に好ましい。
【0028】
-樹脂-
樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0029】
前処理液中における樹脂の形態としては特に制限はないが、樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0030】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10nm以上2,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0031】
樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の質量に対して1.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
【0032】
-その他の成分-
前処理液は、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などのその他の成分を含んでもよい。
【0033】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0034】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0035】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0037】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0038】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0040】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF
2m+1でmは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-CmF
2m+1でmは4~6の整数、又はCpH
2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
界面活性剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前処理液の質量に対して0.001質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0042】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0043】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0044】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0045】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく使用することができる。
【0046】
<インク>
インクは、水溶性有機溶剤、顔料、及び樹脂粒子を含有し、必要に応じて、水、界面活性剤などのその他の成分を含むことが好ましい。なお、水、界面活性剤などのその他の成分については、上記の前処理液と同様のものを使用することができるので、これらの説明を省略する。
【0047】
-水溶性有機溶剤-
インクは、付与される布帛中に事前に配置されている塩化カルシウムによって吸収されやすい観点から水溶性有機溶剤を含む。本開示において「水溶性有機溶剤」とは、水に容易に溶解する有機溶剤であり、具体的には、有機溶剤を25℃の水100mlに溶解させたときに、その溶解量が10ml以上である有機溶剤を表す。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0048】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0049】
水溶性有機溶剤としては、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤を含有する。インク中に沸点が250℃以上水溶性有機溶剤を含有することで、インクの乾燥が抑制され、インクのデキャップ性及び吐出安定性が向上する。また、水溶性有機溶剤の沸点は、インクにより形成される画像の乾燥性の観点から350℃以下であることが好ましい。
なお、本開示において「デキャップ性」とは、インクの乾燥を抑制する保護キャップがインクジェットヘッドに装着されていない状態(デキャップ状態)で放置された後でノズルにインクを供給して吐出したときに生じる不吐出ノズルの数の程度を表し、不吐出ノズルが少ない場合をデキャップ性が優れると判断し、不吐出ノズルが多い場合をデキャップ性が劣ると判断する。
また、本開示において「吐出安定性」とは、インクジェットヘッドから連続してインクを吐出した場合において生じる不吐出ノズルの数の程度を表し、不吐出ノズルが少ない場合を吐出安定性が優れると判断し、不吐出ノズルが多い場合を吐出安定性が劣ると判断する。
【0050】
沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤としては、例えば、トリエチレングリコール(沸点:285℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル(沸点:261℃)、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル(沸点:259℃)、グリセリン(沸点:290℃)などが挙げられ、これらの中でもトリプロピレングリコールn-プロピルエーテル又はグリセリンを用いることが好ましい。
【0051】
水溶性有機溶剤の含有量がインクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、且つ、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量がインクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であることで、インクが付与される布帛中に事前に配置されている塩化カルシウムにより水溶性有機溶剤が十分に吸収されるため、画像の堅牢性が損なわれずにインクのデキャップ性及び吐出安定性が向上する
【0052】
-顔料-
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
【0053】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0054】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化ジルコニウム、鉄とチタンの複合酸化物であるチタン酸鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0055】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0056】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0057】
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0058】
インク中の顔料の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、インクの質量に対して0.1質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。
【0059】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
-樹脂粒子-
インクに樹脂粒子が含まれることで、インクにより形成される画像において、堅牢性及び風合いが共に向上する。樹脂粒子を構成する材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられるが、インクにより形成される画像において、堅牢性及び風合いがより向上する観点からウレタン樹脂であることが好ましい。
なお、本開示において「風合い」とは、インクにより形成された画像の触手時の評価を表し、肌触りが柔らかい場合を風合いが優れると判断し、肌触りが硬い場合を風合いが劣ると判断する。
【0061】
樹脂粒子を構成する材料がウレタン樹脂である場合、ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であり、-5℃以下であることが好ましい。ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が0度以下であることで、インクにより形成される画像において、風合いが向上する。
【0062】
樹脂粒子は、インク中において分散して含有されていることが好ましい。樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10nm以上2,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0063】
樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの質量に対して1.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
【0064】
-インクの物性-
インクの物性としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、画像濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましく、8mPa・s以上15mPa・s以下がより好ましい。粘度が8mPa・s以上であることで、インクジェット方式でインクを吐出する際のミスト発生を抑制することができ、高画質の画像が得られる。粘度が15mPa・s以下であることで、インクジェットヘッドに対して加温等の処置を行わずに、常温での吐出を行うことができるため、高い吐出安定性とデキャップ性を得ることができる。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0065】
<布帛>
布帛は、繊維を含み、繊維を織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。
【0066】
布帛を構成する繊維としては、合成繊維を含み、必要に応じて、合成繊維以外のその他繊維を含んでもよい。布帛を構成する繊維として合成繊維を用いる理由について以下説明する。
一般に、ポリエステル繊維などの合成繊維は、綿繊維などの天然繊維と異なり、繊維内における空隙が少ない。このため、合成繊維を含む布帛に対してインクを付与することで画像を形成する場合、インクに含まれる水溶性有機溶剤が繊維内に吸収され難く、画像内に残留しやすくなる。画像内に水溶性有機溶剤が残留すると、上記の通り、画像の堅牢性が低下する。また、画像の堅牢性を維持するためにインクに含まれる水溶性有機溶剤の含有量を減らすと、インクのデキャップ性が低下する。
一方、本発明は、前処理液が付与された領域(塩化カルシウムが配置された領域)に対してインクが付与されるため、布帛を構成する繊維が合成繊維であったとしても、インクに含まれる水溶性有機溶剤が塩化カルシウムに吸収され、画像内における水溶性有機溶剤の残留が抑制され、結果として画像の堅牢性が向上する。また、水溶性有機溶剤の含有量がインクの質量に対して25.0質量%以上45.0質量%以下であり、且つ、沸点が250℃以上の水溶性有機溶剤の含有量がインクの質量に対して5.0質量%以上20.0質量%以下であることで、インクの湿潤性が維持されつつ、インク付与後には水溶性有機溶剤が塩化カルシウムに十分に吸収されるため、画像の堅牢性の向上及びインクのデキャップ性の向上を両立することができる。
【0067】
合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及びポリイミドなどの繊維が挙げられ、これらの中でもポリエステル繊維であることが好ましい。
【0068】
ポリエステル繊維としては、生分解性ポリエステル組成物を含む生分解性ポリエステル繊維を用いることができる。生分解性ポリエステル組成物は、例えば、生分解性脂肪族-芳香族ポリエステル又はポリ乳酸などを含有し、必要に応じて、有機フィラー又は無機フィラーなど含有してもよい。生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)などを挙げることができる。有機フィラーとしては、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維、木粉などを挙げることができる。無機フィラーとしては、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維、鉱物繊維などを挙げることができる。
【0069】
なお、合成繊維以外のその他繊維としては、半合成繊維、再生繊維、及び天然繊維などが挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどの繊維が挙げられる。再生繊維としては、例えば、ポリノジック、レーヨン、リヨセル、及びキュプラなどの繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、麻、絹、及び毛などの繊維が挙げられる。
【0070】
<<画像形成方法>>
本発明の画像形成方法は、合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与する前処理液付与工程と、布帛の前処理液が付与された領域に対してインクを付与するインク付与工程と、を含む。また、本発明の画像形成方法は、必要に応じてその他工程を含んでもよく、例えば、前処理液付与工程及びインク付与工程の間に、布帛に付与された前処理液を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。
【0071】
<前処理液付与工程>
前処理液付与工程は、合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与する工程である。
前処理液を付与する方法としては、特に限定されず、例えば、液体吐出方式及び塗布方式などが挙げられる。
液体吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。具体的には、インクジェット方式を用いた方法が挙げられる。
塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0072】
前処理液付与工程における、布帛に対する前処理液の付与量としては、10mg/cm2以上50mg/cm2以下が好ましく、20mg/cm2以上40mg/cm2以下がより好ましい。付与量が、10mg/cm2以上であると、画像品質を向上することができ、50mg/cm2以下であると、乾燥時に前処理液の固形分由来の析出が発生することを抑制することができる。
【0073】
<乾燥工程>
乾燥工程は、前処理液付与工程及びインク付与工程の間に、布帛に付与された前処理液を乾燥させる工程である。
布帛に付与された前処理液を乾燥させる方法としては、加熱することで乾燥させる方法であることが好ましく、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風、ヒートプレスなどの公知の加熱手段を用いることができる。なお、加熱手段による加熱温度は60℃以上であることが好ましい。
【0074】
<インク付与工程>
インク付与工程は、布帛の前処理液が付与された領域に対してインクを付与する工程である。
インクを付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられるがインクジェット法であることが好ましい。
【0075】
<<画像形成装置>>
本発明の画像形成装置は、前処理液を収容している前処理液収容手段と、インクを収容しているインク収容手段と、合成繊維を含む布帛に対して前処理液を付与する前処理液付与手段と、布帛の前処理液が付与された領域に対してインクを付与するインク付与手段と、を有する。また、本発明の画像形成装置は、必要に応じてその他手段を有してもよく、例えば、前処理液付与手段により付与された前処理液を乾燥させる乾燥手段を有してもよく、この乾燥手段による乾燥は、インク付与手段によるインク付与より前に行われる。
【0076】
図1~2を参照して、画像形成装置について説明する。
図1は、画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2は、収容手段(前処理液収容手段、インク収容手段)の一例を示す概略図である。
【0077】
図1に示す画像形成装置400は、シリアル型のインクジェットヘッドを有する画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。前処理液用の前処理液収容手段410p、白色インク用の白色インク収容手段410w、ブラックインク用のブラックインク収容手段410k、シアンインク用のシアンインク収容手段410cにおける収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これにより各収容手段410は、カートリッジとして用いられる。
【0078】
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、各収容手段410が着脱自在に装着される。これにより、各供給チューブ436を介して、各収容手段410の排出口413とインクジェット吐出ヘッド434(前処理液付与手段及びインク付与手段の一例)とが連通し、インクジェット吐出ヘッド434から布帛へ前処理液及び各インクを吐出可能となる。
なお、
図1に示す画像形成装置400では、前処理液をインクジェット吐出方式で布帛に付与するが、前処理液の付与方法としてはこれに限らない。例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法などで付与してもよい。
【0079】
なお、画像形成装置400は、布帛に付与された前処理液又はインクなどの液体を乾燥させる加熱手段(乾燥手段の一例)を有していてもよい。加熱手段としては、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などの公知の加熱手段を挙げることができる。
【実施例0080】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
<前処理液の作製例>
下記表1に示す処方の材料を用い、常法により前処理液1~7を得た。なお、下記表1に示す各種処方の数値の単位は「質量%」である。また、下記表1に示す樹脂粒子の含有量は固形分量としての表示である。また、下記表1に示す多価金属塩の含有量は、水和水を含む多価金属塩の量としての表示であり、かっこ書内の含有量は水和水を除く多価金属塩の量としての表示である。
【0082】
また、下記表1に示す各材料の詳細(商品名、製造会社名等)は以下の通りである。
【0083】
-有機溶剤-
・プロピレングリコール(関東化学株式会社製)
・グリセリン(関東化学株式会社製)
【0084】
-樹脂粒子(樹脂エマルション)-
・951HQ(スミカフレックス951HQ、住化ケムテックス株式会社製、有効成分55質量%)
【0085】
-多価金属塩-
・塩化カルシウム・二水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
・硝酸カルシウム・四水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
・硝酸マグネシウム・六水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)
【0086】
【0087】
<ウレタン樹脂粒子1の作製例>
撹拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、ポリマーポリオール(T-5651、旭化成ケミカルズ株式会社製)100g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸5.6g、ヘキサメチレンジイソシアネート27g、トリエチルアミン4.2g、及び有機溶剤としてアセトン70gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、60℃まで昇温して約3時間還流した。その後、温度を40℃まで下げ、該温度に保った。300rpmの速度で撹拌しながら純水250gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱撹拌した後、イソホロンジアミン3.5gを加え、約3時間加熱撹拌した。有効成分が30%となるように溶媒を留去しウレタン樹脂粒子1の分散液を得た。このウレタン樹脂粒子1のガラス転移点(Tg)をThermo plus EVO2(Rigaku製)を用いて測定したところ、-25℃であった。
【0088】
<ウレタン樹脂粒子2の作製例>
攪拌機、温度計、窒素シール管及び冷却器の付いた容量2Lの反応器に、メチルエチルケトンを100g、ポリエステルポリオール(iPA/AA=6/4(モル比)とEG/NPG=1/9(モル比)から得られたポリエステルポリオール、数平均分子量=2,000、平均官能基数=2、但し、iPA:イソフタル酸、AA:アジピン酸、EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール)を345g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)を9.92g仕込み、60℃にて均一に混合した。その後、トリエチレングリコールジイソシアネート(TEGDI)を45.1g、ジオクチルチンジラウレート(DOTDL)を0.08g仕込み、72℃で3時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。このポリウレタン溶液に、イソプロピルアルコール(IPA)を80g、メチルエチルケトン(MEK)を220g、トリエタノールアミン(TEA)を3.74g、水を596g仕込んで転相させた後、ロータリーエバポレーターにてMEKとIPAを除去し、常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して有効成分30%、pH8に調整したウレタン樹脂粒子2の分散液を得た。このウレタン樹脂粒子2のガラス転移点(Tg)をThermo plus EVO2(Rigaku製)を用いて測定したところ、-5℃であった。
【0089】
<ウレタン樹脂粒子3の作製例>
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオールとジフェニルカーボネートの反応生成物)(数平均分子量Mn=1200)1500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g、及びN-メチルピロリドン(NMP)1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。次いで、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加し混合したものの中から4340gを抜き出して、強攪拌下、水5400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1500gを投入し、35%の1,6-ヘキサメチレンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、有効成分が30%となるように溶媒を留去し、ウレタン樹脂粒子3の分散液を得た。このウレタン樹脂粒子3のガラス転移点(Tg)をThermo plus EVO2(Rigaku製)を用いて測定したところ、10℃であった。
【0090】
<顔料分散液の調整例>
ビーカー中でアクリルコポリマー(DISPERBYK-2008:BYK製、有効成分60質量%)37.5質量部を高純水100.0質量部に溶解させ、酸化チタン(JR-600A:テイカ製(一次粒子径250nm、表面処理:Al))30.0質量部を添加し、日本精機製作所製エクセルオートホモジナイザーで5000rpm、30分間攪拌を行い、塊のない状態まで分散し、徐々に回転数を上げていき10000rpmで30分間攪拌を行った。得られた二酸化チタン顔料分散液を水冷しながら日本精機製作所製超音波ホモジナイザーUS-300T(チップφ26)にて200μAで1時間処理し、5μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行って、二酸化チタン顔料の含有量が17.9質量%の顔料分散液を得た。
【0091】
<白色インクの調整例>
下記表2に示す処方の材料を用いて白色インク1~17を得た。具体的には、樹脂粒子の分散液及び顔料分散液以外の成分をイオン交換水に溶解させてビヒクルを作製した後、樹脂粒子の分散液と混合し、最後に顔料分散液と混合し、平均孔径0.8μmのフィルターでろ過して、白色インク1~17を得た。なお、下記表2に示す各種処方の数値の単位は「質量%」である。また、下記表2に示す樹脂粒子及び顔料の含有量は固形分量としての表示である。また、白色インク1~17の25℃における粘度を下記表2に併せて示す。
【0092】
また、下記表2に示す各材料の詳細(商品名、製造会社名等)は以下の通りである。
【0093】
-水溶性有機溶剤-
・プロピレングリコール(沸点:188℃、関東化学株式会社製)
・1,2-ブタンジオール(沸点:194℃、関東化学株式会社製)
・トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:261℃、関東化学株式会社製)
・グリセリン(沸点:290℃、関東化学株式会社製)
【0094】
-界面活性剤-
・BYK-348(BYK社製)
・FS-300(Dupont社製)
【0095】
-樹脂粒子(樹脂エマルション)-
・AE982(アクリル-シリコーン樹脂エマルション、株式会社イーテック社製、有効成分:30%)
【0096】
-添加剤-
・プロキセルLV(アビシア社製)
【0097】
【0098】
<画像サンプル作製方法>
(実施例1~17、比較例1~6)
まず、下記表3に示す通りに前処理液及び白色インクを組み合わせて実施例1~17、比較例1~6の画像形成セットを作製した。
次に、各画像形成セットにおける前処理液をハンドスプレーに充填し、トムス社製のブラックポリエステル生地に対して付着量が25mg/cm2となるように前処理液を塗布し、その後130℃で90秒乾燥させた。
次に、各画像形成セットにおける白色インクをインクジェット記録装置(Ri6000、株式会社リコー製)に充填し、ブラックポリエステル生地の前処理液を塗布した領域に対して600×600dpiで付着量が25mg/cm2となるように白色インクを吐出し、その後130℃で90秒乾燥させることでベタ画像状の画像サンプルを得た。
【0099】
(実施例18)
用いる布帛をブラックポリエステル生地から下記組成の均一混合物からなる生分解性ポリエステル繊維により形成された布帛に変更した以外は実施例1と同様にして実施例18の画像サンプルを得た。
-生分解性ポリエステル繊維の組成-
・ポリブチレンアジペートテレフタレート:84.1質量部
・ポリ乳酸:10.0質量部
・タルク粉:1.6質量部
・ADR4370(BASF社製):0.3質量部
・ステアラミド:0.5質量部
・カーボンブラック:5質量部(組成物全体に対して)
・テトラヒドロフラン:15ppm(組成物全体に対して)
・シクロペンタノン:10ppm(組成物全体に対して)
【0100】
得られた画像サンプルを用いて、以下のようにして「堅牢性」、「風合い」、「白色度」を評価した。結果を下記表3に示す。
また、作製した白色インクを用いて、以下のようにして「吐出安定性」、「デキャップ性」を評価した。結果を下記表3に示す。
【0101】
[堅牢性]
画像サンプルを綿布で10回擦り、綿布への顔料転写具合を目視で観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:綿布への顔料転写は殆どみられない
B:若干の顔料転写がみられる
C:明らかに顔料が転写している
【0102】
[風合い]
画像サンプルを手で触り、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:肌触りがやわらかい
B:若干肌触りが硬い
C:肌触りが硬い
【0103】
[白色度]
画像サンプルのベタ画像部のL値を分光測色計(X-Rite)により測色し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:L値が70以上
B:L値が60以上70未満
C:L値が60未満
【0104】
[吐出安定性]
インクジェットヘッド(MH2420、株式会社リコー製)を有するインクジェット記録装置に白色インクを充填し、白色インクの飛翔速度が7m/s±1m/sとなる条件で、5kHzの周波数で1分間連続吐出した後の不吐出となるノズル数をカウントし、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:不吐出ノズル数が0個以上2個以下である
B:不吐出ノズル数が3個以上9個以下である
C:不吐出ノズル数が10個以上である
【0105】
[デキャップ性]
インクジェット記録装置(Ri6000、株式会社リコー製)に白色インクを充填し、25℃、40%RHの環境下、インクジェット記録装置のメンテナンスコマンドよりヘッドクリーニングを実行し、テストチャートを印刷することでノズルの全チャンネルが吐出状態にあることを確認した。次に、インクジェットヘッドのキャップを外した状態で10分間放置した後、再度テストチャートを印刷した。放置後のテストチャートにより、不吐出チャンネル数をカウントし、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:不吐出チャンネル数が1個以下である
B:不吐出チャンネル数が2個以上9個以下である
C:不吐出チャンネル数が10個以上である
【0106】