(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084671
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】抗体又はその抗原結合性断片
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230612BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230612BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230612BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230612BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230612BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230612BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230612BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230612BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230612BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230612BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P29/00
A61P9/14
A61P9/00
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61K45/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179915
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2021198818の分割
【原出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】521536361
【氏名又は名称】ペリオセラピア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 義明
(72)【発明者】
【氏名】眞田 文博
(72)【発明者】
【氏名】森下 竜一
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA20
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE03
4B064CE06
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AB01
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA08
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BD14
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA99
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZA36
4C084ZA44
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZC02
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB11
4C085CC23
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトぺリオスチンのエクソン21に対する新規抗体又はその抗原結合性断片を提供すること。
【解決手段】特定のアミノ酸配列Aと特定のアミノ酸配列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して結合性を有する、抗体又はその抗原結合性断片。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号61で示されるアミノ酸配列Aと配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配
列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して結合性を有する、
抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記ヒトぺリオスチンがヒト細胞から分泌されたヒトぺリオスチンである、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記ヒト細胞がヒト乳癌細胞である、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1~3のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2、配列番号13及び/若しくは14、配列番号25及び/若しくは26、配列番号37及び/若しくは38、又は配列番号49及び/若しくは50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4、配列番号15及び/若しくは16、配列番号27及び/若しくは28、配列番号39及び/若しくは40、又は配列番号51及び/若しくは52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6、配列番号17及び/若しくは18、配列番号29及び/若しくは30、配列番号41及び/若しくは42、又は配列番号53及び/若しくは54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8、配列番号19及び/若しくは20、配列番号31及び/若しくは32、配列番号43及び/若しくは44、又は配列番号55及び/若しくは56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10、配列番号21及び/若しくは22、配列番号33及
び/若しくは34、配列番号45及び/若しくは46、又は配列番号57及び/若しくは58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12、配列番号23及び/若しくは24、配列番号35及び/若しくは36、配列番号47及び/若しくは48、又は配列番号59及び/若しくは60で表されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~4のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
(A)
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(B)
重鎖CDR1が配列番号13及び/若しくは14で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号15及び/若しくは16で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号17及び/若しくは18で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号19及び/若しくは20で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号21及び/若しくは22で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号23及び/若しくは24で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(C)
重鎖CDR1が配列番号25及び/若しくは26で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号27及び/若しくは28で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号29及び/若しくは30で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号31及び/若しくは32で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号33及び/若しくは34で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号35及び/若しくは36で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(D)
重鎖CDR1が配列番号37及び/若しくは38で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号39及び/若しくは40で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号41及び/若しくは42で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号43及び/若しくは44で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号45及び/若しくは46で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号47及び/若しくは48で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(E)
重鎖CDR1が配列番号49及び/若しくは50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号51及び/若しくは52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号53及び/若しくは54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号55及び/若しくは56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号57及び/若しくは58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号59及び/若しくは60で表されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~5のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
(A)
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12で表されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
(e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマが産生する抗体から、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに結合する抗体を選別する工程を含む方法により得られた、抗体。
【請求項9】
(e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマから産生され、且つヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに対する結合性を有する、抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片のコード配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含有する、細胞。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片と薬剤との複合体。
【請求項13】
請求項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片、及び請求項12に記載の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、医薬組成物。
【請求項14】
癌の予防若しくは治療用、癌の血管擬態抑制用、ぺリオスチン阻害用、炎症関連疾患の予防若しくは治療用、血管内膜肥厚抑制用、血管新生抑制用、又は動脈瘤の予防若しくは治療用である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片、及び請求項12に記載の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体又はその抗原結合性断片等に関する。
【背景技術】
【0002】
ペリオスチンは、細胞外マトリックスタンパク質の一種であり、分子量約9万のポリペ
プチドからなる。各ポリペプチド鎖には、シグナル配列、システインリッチドメイン、4
回繰り返しドメイン、C末端ドメインが含まれている。これまで、ペリオスチン遺伝子の
発現が血管再狭窄病態、癌、炎症、血管新生の病態にも関連することが示唆されている。
【0003】
特許文献1には、ぺリオスチンのエクソン21に対する抗体が報告されており、この抗体により、細胞接着活性を有するペリオスチンを阻害することができ、また血管内膜肥厚や癌、炎症性大腸炎を含む炎症、血管新生を伴う疾患等で発現が増大する特定のペリオスチンバリアントの作用を抑制し、病状の増悪化抑制を行うことにより、疾患の治療を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は研究を進める中で、ぺリオスチンのエクソン21に対する既存の抗体は、ヒト細胞から分泌されたヒトぺリオスチンに対する結合性が極めて低いことを見出した。このため、この問題が改善された新たな抗体の開発が必要であることに着目した。
【0006】
本発明は、ヒトぺリオスチンのエクソン21に対する新規抗体又はその抗原結合性断片を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を進めた結果、配列番号61で示されるアミノ酸配列Aと配列番号62
~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン上の立体
エピトープに対して結合性を有する、抗体又はその抗原結合性断片、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. 配列番号61で示されるアミノ酸配列Aと配列番号62~64のいずれかで示される
アミノ酸配列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して結合性
を有する、抗体又はその抗原結合性断片。
【0009】
項2. 前記ヒトぺリオスチンがヒト細胞から分泌されたヒトぺリオスチンである、項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【0010】
項3. 前記ヒト細胞がヒト乳癌細胞である、項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【0011】
項4. モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片である、項1~3のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【0012】
項5. 重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2、配列番号13及び/若しくは14、配列番号25及び/若しくは26、配列番号37及び/若しくは38、又は配列番号49及び/若しくは50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4、配列番号15及び/若しくは16、配列番号27及び/若しくは28、配列番号39及び/若しくは40、又は配列番号51及び/若しくは52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6、配列番号17及び/若しくは18、配列番号29及び/若しくは30、配列番号41及び/若しくは42、又は配列番号53及び/若しくは54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8、配列番号19及び/若しくは20、配列番号31及び/若しくは32、配列番号43及び/若しくは44、又は配列番号55及び/若しくは56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10、配列番号21及び/若しくは22、配列番号33及
び/若しくは34、配列番号45及び/若しくは46、又は配列番号57及び/若しくは58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12、配列番号23及び/若しくは24、配列番号35及び/若しくは36、配列番号47及び/若しくは48、又は配列番号59及び/若しくは60で表されるアミノ酸配列を含む、
項1~4のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【0013】
項6. (A)
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(B)
重鎖CDR1が配列番号13及び/若しくは14で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号15及び/若しくは16で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号17及び/若しくは18で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号19及び/若しくは20で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号21及び/若しくは22で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号23及び/若しくは24で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(C)
重鎖CDR1が配列番号25及び/若しくは26で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号27及び/若しくは28で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号29及び/若しくは30で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号31及び/若しくは32で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号33及び/若しくは34で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号35及び/若しくは36で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(D)
重鎖CDR1が配列番号37及び/若しくは38で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号39及び/若しくは40で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号41及び/若しくは42で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号43及び/若しくは44で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号45及び/若しくは46で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号47及び/若しくは48で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(E)
重鎖CDR1が配列番号49及び/若しくは50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号51及び/若しくは52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号53及び/若しくは54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号55及び/若しくは56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号57及び/若しくは58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号59及び/若しくは60で表されるアミノ酸配列を含む、
項1~5のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【0014】
項7. (A)
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12で表されるアミノ酸配列を含む、
項1~6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【0015】
項8. (e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、
及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマが産生する抗体から、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに結合する抗体を選別する工程を含む方法により得られた、抗体。
【0016】
項9. (e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、
及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマから産生され、且つヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに対する結合性を有する、抗体。
【0017】
項10. 項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片のコード配列を含む、ポリヌクレオチド。
【0018】
項11. 項10に記載のポリヌクレオチドを含有する、細胞。
【0019】
項12. 項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片と薬剤との複合体。
【0020】
項13. 項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片、及び項12に記載の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、医薬組成物。
【0021】
項14. 癌の予防若しくは治療用、癌の血管擬態抑制用、ぺリオスチン阻害用、炎症関連疾患の予防若しくは治療用、血管内膜肥厚抑制用、血管新生抑制用、又は動脈瘤の予防若しくは治療用である、項13に記載の医薬組成物。
【0022】
項15. 項1~9のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合性断片、及び項12に記載の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、試薬。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヒトぺリオスチンのエクソン21に対する新規抗体又はその抗原結合性断片を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】各抗体のヒトぺリオスチン-エクソン21認識試験(試験例2)の結果を示す。(A)は免疫沈降後サンプルのウェスタンブロットの結果を示す。(B)はウェスタンブロット後のゲルのCBB染色図を示す。各写真の上方に使用した抗体を示し、左側に分子量マーカーの各バンドの分子量を示す。
【
図2】各抗体の血管擬態に対する影響を調べた試験例5の結果を示す。(A)は培養細胞系の血管擬態モデルの蛍光写真像を示す。蛍光部は4T07マウス乳がん細胞を示す。(B)は管腔形成の指標であるnumber of nodesの測定結果を示す。(C)管腔形成の指標であるnumber of segmentsの測定結果を示す。
【
図3】各抗体の腫瘍成長に対する影響を調べた試験例6の結果を示す。縦軸は腫瘍体積を示し、横軸は腫瘍移植後からの経過日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、「含む」なる表現は、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0026】
1.抗体又はその抗原結合性断片
本発明は、その一態様において、配列番号61で示されるアミノ酸配列Aと配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して結合性を有する、抗体又はその抗原結合性断片(本明細書において、「本発明の抗体又はその断片」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0027】
ヒトぺリオスチンは、複数存在するスプライシングバリアントの内、エクソン21(配列番号65)を有するヒトぺリオスチンである限り、特に制限されない。ヒトぺリオスチンとしては、好ましくはエクソン17を有さず且つエクソン21を有するヒトぺリオスチンが挙げられ、より好ましくは配列番号66で示されるアミノ酸配列からなるヒトぺリオスチン(PN-2)が挙げられる。
【0028】
ヒトぺリオスチンは、後述の立体エピトープの構造及び配列が変わらない限りにおいて、ヒト種内で生じる変異体も包含する。この観点から、ヒトぺリオスチンとしては、
例えば下記(a)に記載するタンパク質及び下記(b)に記載するタンパク質:
(a)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、及び
(b)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質
からなる群より選択される少なくとも1種のヒトぺリオスチンが挙げられ、
好ましくは下記(c)に記載するタンパク質及び下記(d)に記載するタンパク質:
(c)配列番号66で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び
(d)配列番号66で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列か
らなり、且つ配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質
からなる群より選択される少なくとも1種のヒトぺリオスチンが挙げられる。
【0029】
上記(b)及び(d)において、同一性は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上である。
【0030】
アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対する
アミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど
、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若し
くは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS,Altschul SF.“Methods
for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用い
て決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラム
が開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of
Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の『同一性』も上記に準じて定義される。
【0031】
上記(b)、(d)に記載するタンパク質の一例としては、例えば
(b’)配列番号65で示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入(好ましくは置換、より好ましくは保存的置換)されたアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列
番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質
(d’)配列番号66で示されるアミノ酸配列に対して1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入(好ましくは置換、より好ましくは保存的置換)されたアミノ酸配列からなり、且つ配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質
が挙げられる。
【0032】
上記(b’)及び(d’)において、複数個とは、例えば2~20個であり、好ましくは2~10個であり、より好ましくは2~5個であり、よりさらに好ましくは2又は3個である。
【0033】
「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0034】
ヒトぺリオスチンは、ヒト細胞から分泌されたヒトぺリオスチンであることが好ましい。ヒト細胞から分泌されたヒトぺリオスチンとは、ヒト細胞内でヒトぺリオスチン遺伝子から転写されたmRNAに基づいて生成されて当該細胞外に分泌されたヒトぺリオスチンであり、その限りにおいて特に制限されない。よって、非ヒト細胞(例えば細菌)を用いて発現及び精製して得られたリコンビナントヒトぺリオスチンは、「ヒト細胞から分泌されたヒトぺリオスチン」には包含されない。
【0035】
ヒト細胞は、ヒトぺリオスチンを分泌可能な細胞である限り、特に制限されない。ヒト細胞としては、例えば癌細胞が挙げられる。癌細胞の由来する癌としては、例えば脳腫瘍
、白血病、骨肉腫、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、骨癌、胃癌、肺癌、肝癌、腎癌、膵癌、胆のう癌、皮膚癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、結腸癌、卵管癌、食道癌、小腸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、前立腺癌、膀胱癌、悪性リンパ腫等を挙げることができ、好ましくは乳癌、大腸癌、肺癌、及び悪性黒色腫を挙げることができ、特に好ましくは乳癌を挙げることができる。
【0036】
本発明の抗体又はその断片は、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して結合性を有する。ヒトぺリオスチン上の立体エピトープは、配列番号61で示されるアミノ酸配列A
と配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bとから構成される立体構造であり
、その限りにおいて特に制限されない。上記結合性について、換言すれば、本発明の抗体又はその断片は、ヒトぺリオスチン上の立体構造を認識する、又は当該立体構造に結合することができる。本発明の抗体又はその断片は、好ましくは、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して特異的結合性を有する。アミノ酸配列Bとしては、好ましくは配列番
号62が挙げられる。
【0037】
本発明の抗体又はその断片は、好ましい態様において、
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2、配列番号13及び/若しくは14、配列番号25及び/若しくは26、配列番号37及び/若しくは38、又は配列番号49及び/若しくは50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4、配列番号15及び/若しくは16、配列番号27及び/若しくは28、配列番号39及び/若しくは40、又は配列番号51及び/若しくは52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6、配列番号17及び/若しくは18、配列番号29及び/若しくは30、配列番号41及び/若しくは42、又は配列番号53及び/若しくは54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8、配列番号19及び/若しくは20、配列番号31及び/若しくは32、配列番号43及び/若しくは44、又は配列番号55及び/若しくは56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10、配列番号21及び/若しくは22、配列番号33及
び/若しくは34、配列番号45及び/若しくは46、又は配列番号57及び/若しくは58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12、配列番号23及び/若しくは24、配列番号35及び/若しくは36、配列番号47及び/若しくは48、又は配列番号59及び/若しくは60で表されるアミノ酸配列を含む、
抗体又はその断片であることができる。
【0038】
上記好ましい態様において、奇数の配列番号で示されるアミノ酸配列はKabatによって
定義されるCDR配列であり、偶数の配列番号で示されるアミノ酸配列はIMGTによって定義
されるCDR配列である。
【0039】
本発明の抗体又はその断片は、より好ましい態様において、
(A)
重鎖CDR1が配列番号1及び/若しくは2で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3及び/若しくは4で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5及び/若しくは6で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7及び/若しくは8で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9及び/若しくは10で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11及び/若しくは12で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(B)
重鎖CDR1が配列番号13及び/若しくは14で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号15及び/若しくは16で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号17及び/若しくは18で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号19及び/若しくは20で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号21及び/若しくは22で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号23及び/若しくは24で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(C)
重鎖CDR1が配列番号25及び/若しくは26で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号27及び/若しくは28で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号29及び/若しくは30で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号31及び/若しくは32で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号33及び/若しくは34で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号35及び/若しくは36で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(D)
重鎖CDR1が配列番号37及び/若しくは38で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号39及び/若しくは40で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号41及び/若しくは42で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号43及び/若しくは44で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号45及び/若しくは46で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号47及び/若しくは48で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(E)
重鎖CDR1が配列番号49及び/若しくは50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号51及び/若しくは52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号53及び/若しくは54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号55及び/若しくは56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号57及び/若しくは58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号59及び/若しくは60で表されるアミノ酸配列を含む、
抗体又はその抗原結合性断片であることができる。
【0040】
本発明の抗体又はその断片は、上記(A)~(E)の抗体又はその抗原結合性断片の中でも、さらに好ましくは上記(A)又は(B)の抗体又はその抗原結合性断片であり、特に好ましくは上記(A)の抗体又はその抗原結合性断片である。
【0041】
本発明の抗体又はその断片は、より好ましい態様において、
(A1)
重鎖CDR1が配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号5で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号11で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(A2)
重鎖CDR1が配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号10で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(B1)
重鎖CDR1が配列番号13で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号15で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号17で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号19で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号21で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号23で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(B2)
重鎖CDR1が配列番号14で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号16で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号18で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号20で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号22で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号24で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(C1)
重鎖CDR1が配列番号25で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号27で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号29で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号31で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号33で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号35で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(C2)
重鎖CDR1が配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号28で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号30で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号32で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号34で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号36で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(D1)
重鎖CDR1が配列番号37及び/若しくは38で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号39及び/若しくは40で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号41及び/若しくは42で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号43及び/若しくは44で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号45及び/若しくは46で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号47及び/若しくは48で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(D2)
重鎖CDR1が配列番号38で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号40で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号42で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号44で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号46で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号48で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(E1)
重鎖CDR1が配列番号49で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号51で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号53で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号55で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号57で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む;或いは
(E2)
重鎖CDR1が配列番号50で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号52で表されるアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号54で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR1が配列番号56で表されるアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号58で表されるアミノ酸配列を含み、且つ
軽鎖CDR3が配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む、
抗体又はその抗原結合性断片であることができる。
【0042】
本発明の抗体又はその断片は、上記(A1)~(E2)の抗体又はその抗原結合性断片の中でも、さらに好ましくは上記(A1)、(A2)、(B1)、又は(B2)の抗体又はその抗原結合性断片であり、特に好ましくは上記(A1)又は(A2)の抗体又はその抗原結合性断片である。
【0043】
(A)の抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号67で示されるアミノ酸配列AH1、前記アミノ酸配列AH1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さ
らに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列AH2、又は前記アミノ酸配列AH1のヒト化配列であるアミノ酸配列AH3を含む重鎖可変領
域、及び/又は配列番号68で示されるアミノ酸配列AL1、前記アミノ酸配列AL1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列AL2、又は前記アミノ酸配
列AL1のヒト化配列であるアミノ酸配列AL3を含む軽鎖可変領域を含むことが好ましい。
【0044】
(B)の抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号69で示されるアミノ酸配列BH1、前記アミノ酸配列BH1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さ
らに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列BH2、又は前記アミノ酸配列BH1のヒト化配列であるアミノ酸配列BH3を含む重鎖可変領
域、及び/又は配列番号70で示されるアミノ酸配列BL1、前記アミノ酸配列BL1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列BL2、又は前記アミノ酸配
列BL1のヒト化配列であるアミノ酸配列BL3を含む軽鎖可変領域を含むことが好ましい。
【0045】
(C)の抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号71で示されるアミノ酸配列CH1、前記アミノ酸配列CH1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さ
らに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列CH2、又は前記アミノ酸配列CH1のヒト化配列であるアミノ酸配列CH3を含む重鎖可変領
域、及び/又は配列番号72で示されるアミノ酸配列CL1、前記アミノ酸配列CL1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列CL2、又は前記アミノ酸配
列CL1のヒト化配列であるアミノ酸配列CL3を含む軽鎖可変領域を含むことが好ましい。
【0046】
(D)の抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号73で示されるアミノ酸配列DH1、前記アミノ酸配列DH1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さ
らに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列DH2、又は前記アミノ酸配列DH1のヒト化配列であるアミノ酸配列DH3を含む重鎖可変領
域、及び/又は配列番号74で示されるアミノ酸配列DL1、前記アミノ酸配列DL1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列DL2、又は前記アミノ酸配
列DL1のヒト化配列であるアミノ酸配列DL3を含む軽鎖可変領域を含むことが好ましい。
【0047】
(E)の抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号75で示されるアミノ酸配列EH1、前記アミノ酸配列EH1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さ
らに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列EH2、又は前記アミノ酸配列EH1のヒト化配列であるアミノ酸配列EH3を含む重鎖可変領
域、及び/又は配列番号76で示されるアミノ酸配列EL1、前記アミノ酸配列EL1に対して85%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列EL2、又は前記アミノ酸配
列EL1のヒト化配列であるアミノ酸配列EL3を含む軽鎖可変領域を含むことが好ましい。
【0048】
抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を包含する意味で用いる。抗体は、任意のアイソタイプ、例えばIgG(例:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例:IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgM等であることができる。抗体は、ヒト抗体であっても非ヒト抗体であっ
てもよい。非ヒト抗体としては、例えばマウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、サル抗体、チンパンジー抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、マウス-ヒトキ
メラ抗体等のキメラ抗体であってもよい。抗体は、部分又は完全ヒト化抗体であることができる。本発明の抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0049】
本明細書において、抗体の抗原結合断片としては、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む限り、特に制限されず、例えばFab、F(ab’)2、ミニボディ(minibody)、scFv‐Fc、Fv
、scFv、ディアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)等が挙げられる。
【0050】
Fabとは、重鎖可変領域及び重鎖定常領域中のCH1を含む重鎖の断片と、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域(CL)を含む軽鎖とを含み、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが上述する非共有結合性の分子間相互作用によって会合するか、またはジスルフィド結合によって結合してなる構造を有する。Fabにおいて、CH1とCLとは、それぞれに存在するシステイン残基のチオール基同士でジスルフィド結合していてもよい。
【0051】
F(ab’)2とは、2対の上記Fabを有し、CH1同士がこれらに含まれるシステイン残基のチ
オール基同士でジスルフィド結合してなる構造である。
【0052】
ミニボディとは、下記scFVを構成する重鎖可変領域にCH3が結合した断片2つが、CH3同
士で非共有結合性の分子間相互作用によって会合した構造である。
【0053】
scFv‐Fcとは、下記scFv、CH2、およびCH3を含む抗体断片2つが、上記ミニボディと同
様にCH3同士で非共有結合性の分子間相互作用によって会合し、それぞれのCH3に含まれるシステイン残基のチオール基同士でジスルフィド結合した構造である。
【0054】
Fvとは、抗体の最小構造単位ともいわれ、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが非共有結合性の分子間相互作用によって会合した構造である。Fvにおいて、重鎖可変領域および軽鎖可変領域内に存在するシステイン残基のチオール基同士がジスルフィド結合していても良い。
【0055】
scFvとは、重鎖可変領域のC末端と軽鎖可変領域のN末端がリンカーで繋がれた構造、又は重鎖可変領域のN末端と軽鎖可変領域のC末端とがリンカーで繋がれた構造であり、単鎖抗体とも呼ばれる。
【0056】
ディアボディ、トリアボディ、およびテトラボディとは、それぞれ上記scFvが2量体、3量体および4量体を形成し、Fvなどと同様に可変領域同士の非共有結合性の分子間相互作
用等により、構造的に安定な状態で会合した構造である。
【0057】
本発明の抗体又はその断片は、他のペプチド、オリゴペプチド、又はタンパク質と結合又は融合していてもよい。他のペプチド、オリゴペプチド、又はタンパク質としては、例えばアルブミン(例:血清アルブミン)、タンパク質タグ(例:ビオチン、Hisタグ、FLAGタ
グ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ)、蛍光タンパク質(例:GFP
、Azami-Green、ZsGreen、GFP2、HyPer、Sirius、BFP、CFP、Turquoise、Cyan、TFP1、YFP、Venus、ZsYellow、Banana、KusabiraOrange、RFP、DsRed、AsRed、Strawberry、Jred
、KillerRed、Cherry、HcRed、mPlum)、発光タンパク質(例:ルシフェラーゼ、βガラク
トシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、βグルクロニダーゼ)
、分泌シグナル配列(例:Igκシグナル配列)、プロテアーゼ認識配列(例:TEVプロテアーゼ認識配列)、発現増強配列、可溶化配列、多量体化ドメイン(例:軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質ドメイン、ロイシンジッパードメイン、コラーゲン様ドメイン、コレラトキシンBサブユニットドメイン、テトラブラキオンコイルドコアドメイン、レオウイル
スσ1タンパク質ドメイン、ヘパチチスデルタ抗原ドメイン)等が挙げられる。本発明の抗体又はその断片が多量体化ドメインと結合又は融合したものである場合、当該多量体化ドメインに、さらに本発明の抗体又はその断片と同種又は異種の抗体又はその抗原結合断片が結合又は融合し、多量体(ホモ多量体又はヘテロ多量体)を形成してもよい。
【0058】
本発明の抗体又はその断片は、ヒトぺリオスチンに対する結合性が著しく損なわれない限りにおいて、化学修飾されたものであってもよい。
【0059】
本発明の抗体又はその断片は、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート
(-COO-)、アミド基(-CONH2)、エステル基(-COOQ)の何れであってもよい。こ
こでエステル基におけるQとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基;α-ナフチル
メチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0060】
本発明の抗体又はその断片は、C末端以外のカルボキシル基(またはカルボキシレート
)が、アミド化またはエステル化されていてもよい。この場合のエステルとしては、例えば上記C末端のエステルなどが用いられる。
【0061】
本発明の抗体又はその断片は、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護基(例えば、ホ
ルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成し得るN末端のグルタミン残基がピログルタミン
酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども包含される。
【0062】
2.抗体又はその抗原結合性断片の製造方法
本発明の抗体又はその断片は、様々な方法で製造することができる。
【0063】
本発明の抗体又はその断片は、例えば、
(e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマが産生する抗体から、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに結合する抗体を選別する工程を含む方法によって、製造することができる。
【0064】
この観点から、本発明の一態様において、本発明の抗体又はその断片は、
(e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマが産生する抗体から、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに結合する抗体を選別する工程を含む方法により得られた、抗体、であることができる。
【0065】
また、上記観点から、本発明の一態様において、本発明の抗体又はその断片は、
(e)配列番号65で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチド、及び
(f)配列番号65で示されるアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列Xを含み、且つ前記アミノ酸配列X内に配列番号61で示されるアミノ酸配列A及び配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bを含む、タンパク質又はペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はペプチド免疫した動物から得
られたハイブリドーマから産生され、且つヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに対する結合性を有する、抗体、であることができる。
【0066】
上記(e)及び(f)のタンパク質及びペプチドは、上記した(a)及び(b)のタンパク質に準じる。
【0067】
免疫する動物としては、ハイブリドーマを調製可能な動物である限り特に制限されないが、好ましくは、自己免疫疾患動物(マウスの場合であれば、例えばBXSBマウスなど))が挙げられる。免疫、ハイブリドーマの調製は、公知の方法に従って行うことができる(例えば、Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4~11.11)。ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンに結合する抗体の選別の方法の評価方法としては、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチンを用いて、抗原・抗体反応を利用した方法である限り特に制限されないが、例えば後述の試験例2に記載の方法を採用することができる。
【0068】
なお、本明細書において、抗体又はその断片の標的(例えば、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチン)に対する結合性は、Surface plasmon resonance (SRP)法に
より測定できる。本発明の一態様において、本発明の抗体又はその断片と標的(例えば、ヒト乳がん細胞から分泌されたヒトペリオスチン)との解離定数(KD値)は、例えば9×10-6M以下、好ましくは9×10-8M以下、より好ましくは9×10-10M以下である。当該解離定
数の下限は、特に制限されないが、例えば1×10-14M、1×10-13M、1×10-12M、1×10
-11Mであることができる。
【0069】
別の例として、本発明の抗体又はその断片は、例えば、本発明の抗体又はその断片のコード配列を含むポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)により形質転換させた宿主を培養し、本発明の抗体を含む画分を回収する工程を含む方法によって、製造することができる。
【0070】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体又はその断片のコード配列を含む限り、特に制限されない。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、上記コード配列を、本発明の抗体又はその断片を発現可能な状態で含む。本発明のポリヌクレオチドは、上記コード配列以外に、他の配列を含んでいてもよい。他の配列としては、本発明の抗体コード配列に隣接して配置される分泌シグナルペプチドコード配列、プロモーター配列、エンハンサ
ー配列、リプレッサー配列、インスレーター配列、複製基点、薬剤耐性遺伝子コード配列などが挙げられる。また、本発明のポリヌクレオチドは、直鎖状のポリヌクレオチドであってもよいし、環状のポリヌクレオチド(ベクターなど)であってもよい。
【0071】
本発明のポリヌクレオチドの具体例としては、(I)本発明の抗体の重鎖、重鎖可変領
域、及び重鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、(II)本発明の抗体の軽鎖、軽鎖可変領域、及び軽鎖CDRs1-3から
なる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドであ
っても、(III)本発明の抗体の重鎖、重鎖可変領域、及び重鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含む核酸、並びに本発明の抗体の軽鎖、
軽鎖可変領域、及び軽鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0072】
宿主は、特に制限されず、例えば昆虫細胞、真核細胞、哺乳類細胞等が挙げられる。中でも、抗体をより効率的に発現させる観点から、哺乳類細胞であるHEK細胞、CHO細胞、NS0細胞、SP2/O細胞など好ましい。
【0073】
形質転換、培養、及び回収の方法は、特に制限されず、抗体製造における公知の方法を採用することができる。
【0074】
回収後は、必要に応じて本発明の抗体を精製してもよい。精製は、抗体製造における公知の方法、例えばクロマトグラフィー、透析などにより行うことができる。
【0075】
DNA、RNA等のポリヌクレオチドには、次に例示するような化学修飾が施されていてもよい。ヌクレアーゼ等の加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えばホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えば-CH3、-CH2CH2OCH3、-CH2CH2NHC(NH)NH2、-CH2CONHCH3、-CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換等が挙げら
れる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えばビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたもの等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0076】
2-1.ヒト型抗体の作製
本発明の抗体をヒト型抗体として得る場合は、以下の情報に基づいて、必要に応じてその他の公知の情報に従って又は準じて、作製することができる。
【0077】
免疫グロブリンG(以下、単に「IgG」という。)は、分子量約23000の軽ポリペプチド
鎖(以下「軽鎖」という)、分子量約50000の重ポリペプチド鎖(以下「重鎖」という)
の各2本ずつから構成される。重鎖、軽鎖とも約110残基からなる、アミノ酸配列が保存されている領域の繰り返し構造を持ち、これらはIgGの3次元構造の基本単位(以下、「ドメイン」という。)を構成する。重鎖及び軽鎖は、それぞれ連続した4個、及び2個のドメインから構成されている。重鎖、軽鎖いずれにおいても、アミノ末端のドメインは他のドメインに比べ各抗体分子間でのアミノ酸配列の変異が大きく、このドメインは可変ドメイン(variable domain:以下、「Vドメイン」という。)と呼ばれる。IgGのアミノ末端においては、重鎖、軽鎖のVドメインが相補的に会合し可変領域を形成している。これに対し
、残余のドメインは、全体として定常領域を形成する。定常領域は、各動物種に特徴的な配列を有し、例えば、マウスIgGの定常領域はヒトIgGの定常領域とは異なっているので、
マウスIgGはヒトの免疫系によって異物として認識され、その結果、ヒト抗マウス抗体(Human Anti Mouse Antibody:以下「HAMA」という。)応答が起こる(SchroffRW. et al Cancer Res. (1985)45,879-85)。従って、マウス抗体はヒトに繰返し投与することは
できない。このような抗体をヒトに投与するためには、抗体の特異性を保持したままHAMA応答を起こさないように抗体分子を修飾する必要がある。
【0078】
X線結晶構造解析の結果によれば、一般に、このようなドメインは3本から5本のβ鎖か
らなる逆平行βシートが二層重なり合った長円筒状の構造をとる。可変領域では、重鎖、軽鎖のVドメインそれぞれにつき各3個のループが集合し、抗原結合部位を形成する。この各ループは相補性決定領域(complementarity determining region:以下、「CDR」と
いう。)と呼ばれ、アミノ酸配列の変異が最も著しい。可変領域のCDR以外の部分は、一
般に、CDRの構造を保持する役割を有し、「フレームワーク」と呼ばれる。カバトらは、
重鎖、軽鎖の可変領域の一次配列を多数収集し、配列の保存性に基づき、それぞれの一次配列をCDR及びフレームワークに分類した表を作成した(Kabatt et al. SEQUENCES OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th edition, NIH publication, No.91-3242, E.A.)。
【0079】
また、各フレームワークは、アミノ酸配列が共通の特徴を有する複数のサブグループに分類された。さらに、ヒトとマウスの間で対応するフレームワークが存在することも見いだされた。このようなIgGの構造的特徴に関する研究から以下のヒト化抗体の作製法が考
案された。研究初期の段階では、マウス由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体が提案された(Morrison SL. et al Proc Natl Acad Sci U S A. (1984)81,6851-5)。しかしながら、そのようなキメラ抗体は、依然として、多くの非ヒトアミノ酸残基を含むので、特に長期間投与した場合にはHAMA応答を誘導しうる(Begent et al.,
Br. J. Cancer, (1990)62, 487)。
【0080】
ヒトに対しHAMA応答を発現する可能性のある、非ヒト哺乳動物由来のアミノ酸残基を更に少なくする方法として、CDR部分のみをヒト由来の抗体に組み込む方法が提案された(Peter T et al. Nature, (1986) 321, 522-5)が、一般に、抗原に対する免疫グロブリン
活性を保持するにはCDRのみの移植では不十分であった。一方、チョッチアらは、1987年
、X線結晶構造解析データを用い、(a)CDRのアミノ酸配列中には、抗原に直接結合する
部位とCDR自体の構造を維持する部位とが存在し、CDRの取り得る三次元構造は、複数の典型的なパターン(カノニカル構造)に分類されること、(b)カノニカル構造のクラスは
、CDRのみならずフレームワーク部分の特定の位置のアミノ酸の種類によって決定される
こと、を見いだした(Chothia C. et al. J. Mol. Biol. (1987)196, 901-17)。この知
見に基づき、CDR移植法を用いる場合、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植する必要性が示唆された(特表平4-502408号)。
【0081】
一般に、移植すべきCDRを有する非ヒト哺乳動物由来の抗体は「ドナー」、CDRが移植される側のヒト抗体は「アクセプター」と定義され、CDR移植法を実施する際に考慮すべき
点は、可能な限りCDRの構造を保存し、免疫グロブリン分子の活性を保持することにある
。この目的を達成するためには、(a)アクセプターは、いずれのサブグループに属する
ものを選択すべきか、及び、(b)ドナーのフレームワークからいずれのアミノ酸残基を
選択すべきか、の2点に留意する必要がある。
【0082】
クィーンらは、ドナーのフレームワークのアミノ酸残基が、以下の基準の少なくともひとつに該当する場合、CDR配列とともにアクセプターに移植するデザインの方法を提唱し
た(特表平4-502408号):
(a)アクセプターのフレームワーク領域中のアミノ酸がその位置において稀であり、ド
ナーの対応するアミノ酸がアクセプターの前記位置において普通であること
(b)該アミノ酸がCDRのひとつのすぐ近くであること
(c)該アミノ酸が三次元免疫グロブリンモデルにおいてCDRの約3Å(オングストローム
)以内に側鎖原子を有し、そして抗原と又はヒト化抗体のCDRと相互作用することができ
ると予想されること。
【0083】
2-2.ヒト抗体の作製
本発明の抗体をヒト抗体として得る場合は、以下の情報に基づいて、必要に応じてその他の公知の情報に従って又は準じて、作製することができる。
【0084】
本発明における「ヒト抗体」又は「ヒト免疫グロブリン」とは、免疫グロブリンを構成するH鎖の可変領域(VH)及びH鎖の定常領域(CH)並びにL鎖の可変領域(VL)及びL鎖の定常領域(CL)を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。換言すれば、H鎖がヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子に由来し、
軽鎖がヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子に由来するものである抗体を意味する。
【0085】
ヒト抗体は、常法に従って、例えば、少なくともヒトイムノグロブリン遺伝子をマウス等のヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたトランスジェニック動物を、抗原で免疫感作することにより、モノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができる。例えば、ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスは、既報(Mendez MJ et al.Nature Genetics(1997)15,146-56,Green LL et al.Nature Genetics(1994)7,13-21,表平4-504365号公報;国際出願公開WO94/25585号公報;日経サイエンス、6月号、第40~第50頁、1995年;Nils Lonberg et al.Nature(1994)368,856-9,及び特表平6-500233号公報)に記載の方法に従って作製することができる。
【0086】
3.細胞
本発明は、その一態様において、本発明のポリヌクレオチドを含有する、細胞、に関する。
【0087】
前記細胞は、例えば本発明のポリヌクレオチドを形質導入した細胞を包含する。
【0088】
前記細胞は単離された細胞であることが好ましい。前記細胞は培養細胞であってもよく、初代培養細胞であっても継代培養細胞であってもよい。前記細胞は株化細胞であってもよい。前記細胞はiPS細胞であってもよい。
【0089】
前記細胞の例としては、Escherichia coli K12等の大腸菌、Bacillus subtilis MI114
等のバチルス属細菌、Saccharomyces cerevisiae AH22等の酵母、Spodoptera frugiperda
由来のSf細胞系又はTrichoplusia ni由来のHighFive細胞系、嗅神経細胞等の昆虫細胞、動物細胞等を挙げることができる。動物細胞としては、好ましくは、哺乳動物由来の培養細胞、具体的には、COS7細胞、CHO細胞、HEK293細胞、HEK293FT細胞、Hela細胞、PC12細
胞、N1E-115細胞、SH-SY5Y細胞等が挙げられる。
【0090】
4.複合体
本発明は、その一態様において、本発明の抗体又はその断片と薬剤との複合体、に関する。
【0091】
薬剤としては、生理活性を有するものであれば特に制限されない。薬剤としては、例えばタンパク質、ペプチド、低分子化合物、核酸、糖鎖等が挙げられる。
【0092】
本発明の抗体又はその断片と薬剤とを複合体化させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0093】
本発明の複合体は、本発明の抗体と薬剤とが、直接又はリンカーなどを介して間接的に結合することによって形成される。結合態様は特に制限されず、例えば共有結合、配位結合、イオン結合などが挙げられる。本発明の抗体と薬剤との結合は、その結合態様に応じて、公知の方法に従って又は準じて実施することができる。
【0094】
共有結合は、例えば、本発明の抗体と薬剤の各々が有する官能基又は必要に応じて導入された官能基を反応させることによって行われ得る。当該官能基の組み合わせとしては、例えば、アミノ基とカルボキシル基、カルボキシル基とヒドロキシル基、マレイミド基とチオール基、チオール基とチオール基、ヒドラジド基とケトン基、ヒドラジド基とアルデヒド基、アミノ基とアルデヒド基、チオール基とカルボキシル基、アミノ基とスクアリン酸誘導体、ジエニルアルデヒド基とアミノ基、ハロエステルとチオール基、アジドとアルキン等が挙げられる。
【0095】
5.用途
本発明は、その一態様において、本発明の抗体又はその断片、及び本発明の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、医薬組成物、試薬等、に関する。
【0096】
本発明の医薬組成物は、癌の予防若しくは治療用、癌の血管擬態抑制用、ぺリオスチン阻害用、炎症関連疾患の予防若しくは治療用、血管内膜肥厚抑制用、血管新生抑制用、又は動脈瘤の予防若しくは治療用として、好適に用いることができる。
【0097】
本発明の1つの態様において、本発明の抗体又はその断片、本発明の複合体は、細胞接
着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患を予防又は治療するために使用することができる。
【0098】
細胞接着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患とは、疾患の病態時に細胞接着活性を有するペリオスチンの遺伝子の発現が高く、該遺伝子によりコードされるタンパク質の産生が増加している疾患である。また、該遺伝子又はタンパク質の増加により、病態が悪化する疾患のことである。
【0099】
このような細胞接着活性を有する炎症関連疾患としては、特に限定されるものではないが、血管内膜肥厚を主因とする疾患、癌及びその他の炎症関連疾患が挙げられる。血管内膜肥厚を主因とする疾患としては、動脈硬化、冠動脈形成術後に認められる血管内膜肥厚を主因とした再狭窄等が挙げられる。
【0100】
また、本発明の抗体又はその断片、本発明の複合体を適用できる癌としては、これに限定されるものではないが、例えば、脳腫瘍、白血病、骨肉腫、乳癌、大腸癌、悪性黒色腫、骨癌、胃癌、肺癌、肝癌、腎癌、膵癌、胆のう癌、皮膚癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、結腸癌、卵管癌、食道癌、小腸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、前立腺癌、膀胱癌、悪性リンパ腫等を挙げることができ、特に好適には、乳癌、大腸癌、肺癌、及び悪性黒色腫を挙げることができる。
【0101】
その他の炎症関連疾患としては、自己免疫性関節炎、アトピー性皮膚炎、喘息、肺気腫、ベーチェット病、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、ブドウ膜炎、ギランバレー症候群、フィッシャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多発性筋炎、強皮症、自己免疫性肝炎、サルコイドーシス、慢性膵炎、炎症性腸炎、クローン病、固形癌、多発性骨髄腫、血管線維腫、粥状動脈硬化、動静脈奇形、肉芽、血管腫、肥大性瘢痕、ケロイド、早老、乾癬、発熱性肉芽腫、疣、出血性関節、非結合骨折、リウマチ様関節炎(例えば、悪性関節リウマチ等)、変形性関節症、卵胞嚢胞、卵巣肥大症候群、多嚢胞卵巣、加齢性黄班変性症、糖尿病性網膜症、新生血管緑内障、トラコーマ、肺気腫、慢性気管支炎、肥満症、歯
周病、角膜移植片の血管新生、動脈瘤等が挙げられる。上記例示した炎症関連疾患の多くに血管新生が関与する。
【0102】
本発明の他の態様としては、上記の抗体をマーカー標識することにより作製した、前記細胞接着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患の診断薬が挙げられる。ここでマーカーとしては、特に限定されず、酵素、放射性同位元素、蛍光色素等を用いることができる。ここで用いる酵素としては、ターンオーバー数(turn over number)が大きく、かつ酵素と結合しても安定であること、基質と特異的に反応して発色させることができる等の条件を満たす物であれば特に制限されるものではなく、通常の酵素免疫アッセイ(EIA)に用いられる酵素を使用することができる。好ましい酵素の例としては、ペルオ
キシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素
酵素等が挙げられる。また、酵素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。
【0103】
これら酵素と抗体との結合は、マレイミド化合物等の公知の架橋剤を用いる公知の方法により行うことができる。基質としては、使用する酵素に応じて公知の物質を使用することができる。例えば酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンを、また酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる場合には、パラニトロフェノール等を用いることができる。マーカーとして用いる放射性同位元素としては、125Iや3H等の通常のラジオイムノアッセイ(RIA)で用いられて
いるものを使用することができる。蛍光色素としては、フルオレッセンスイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗
体法に用いられるものを使用することができる。また、本診断薬は、癌細胞と周辺の線維芽細胞を特異的に染色することが可能な、免疫組織学的染色として使用することができる。また、放射性同位体を標識した場合には、体内に投与することによって、癌病態時等の病変部を画像化するために使用することもできる。
【0104】
本発明の1つの態様は、本発明の抗体又はその断片、本発明の複合体を用いることによ
る、ヒト又は動物の血液から血清を調製した生体試料のサンプル中、すなわち血清中における細胞接着活性を有するペリオスチンを検出又は定量する方法であり、さらに検出又は定量することによる心不全等の細胞接着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患の診断方法を提供する。本方法において、いわゆるサンドイッチELISA法(Enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定法)によって細胞接着活性を有するペリオス
チンを検出することができる。本発明の診断キットを用いる場合には、まず抗ペリオスチン一次抗体を固相化したプレートに試料を接触させて両者を結合させ、この結合体にマーカー標識した抗ペリオスチン二次抗体を結合させ、この三者の結合体におけるマーカーのシグナル強度を測定することにより、細胞接着活性を有するペリオスチンを検出又は定量することができる。特に細胞接着活性を有するペリオスチンは、癌等の病態時に特異的に発現するスプライシングバリアントであるため、ペリオスチンの産生をモニターすることにより癌等における病態の診断をすることができる。
【0105】
このように、本発明の抗体を標識化して、二次抗体として使用することが可能である。
【0106】
また、本発明の1つの態様としては、本発明の抗体又はその断片、本発明の複合体を有
効成分として含有する、細胞接着活性を有するペリオスチンに対する阻害用医薬組成物が挙げられる。前記抗体、抗体断片及び/又は誘導体が、細胞接着活性を有するペリオスチンに対する阻害活性を有することにより、前記医薬組成物は、血管新生を抑制し、血管内膜肥厚を抑制し、癌を治療し、又、動脈瘤を予防若しくは治療することができる。すなわち、本発明は、細胞接着作用を有するペリオスチンのスプライシングバリアントを認識する抗ペリオスチン抗体を含む、血管内膜肥厚抑制用、癌治療用、血管新生抑制用、動脈瘤
を予防若しくは治療用組成物である。本発明の組成物は、冠動脈形成術後に認められる血管内膜肥厚を主因とした再狭窄の治療及び予防、癌の予防又は治療、血管新生を伴う疾患の治療又は予防、動脈瘤を予防又は治療するために使用することができる。
【0107】
さらに、本発明の1つの態様として、本発明の抗体、抗体断片及び/又は誘導体を有効
成分として含有する、細胞接着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患の予防又は治療用医薬組成物が挙げられる。例えば、本発明の1つの態様として、前記抗体、抗
体断片及び/又は抗体の誘導体を有効成分として含有する血管内膜肥厚抑制用医薬組成物、前記抗体、抗体断片及び/又は抗体の誘導体を有効成分として含有する癌治療用医薬組成物、前記抗体、抗体断片及び/又は抗体の誘導体を有効成分として含有する血管新生抑制用医薬組成物、前記抗体、抗体断片及び/又は抗体の誘導体を有効成分として含有する動脈瘤の予防又は治療用医薬組成物等が挙げられる。
【0108】
本発明の癌治療用組成物は、癌の病原巣の増殖を抑制する効果、及び癌の転移を抑制する効果を有する。従って、癌の病原巣の増殖を抑制する効果を期待して、又は癌の転移を抑制する効果を期待して、さらにはその両者を期待して使用することができる。
【0109】
本発明の抗体又はその断片、本発明の複合体を有効成分として含有する医薬組成物は、通常の製剤化の際に用いられ、薬理学的に許容し得る公知の担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
【0110】
本発明に係る医薬組成物の有効成分は、薬理学的に許容し得る公知の担体、賦形剤、希釈剤等と混合して医薬に一般に使用されている投与方法(例えば、経口投与方法、又は、静脈内投与、筋肉内投与もしくは皮下投与等の非経口投与方法)によって投与するのが好ましい。本発明の医薬組成物は、例えば、有効成分を、薬理学的に許容される担体、香味剤、賦形剤、安定剤、希釈剤、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤等と、適宜混和することにより製造することができる。本発明の医薬組成物の剤形としては、特に限定されず、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、溶液剤等が挙げられる。錠剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン等の結合剤、コーンスターチ等の潤沢剤等を用いることができる。また、医薬組成物を、糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムにより被膜してもよい。カプセルの剤型である場合には、前記の組成物に更に液状担体を含有させることができる。注射のための無菌組成物も、通常の医薬の処方を適用して製造することができる。注射用の水性液としては、ブドウ糖等を含む等張液等が挙げられ、ポリエチレングリコール等の適当な溶解補助剤等と併用してもよい。また、医薬組成物を、緩衝剤、安定剤、保存剤、酸化防止剤、無痛化剤等と配合してもよい。経口投与において、消化管内で有効成分が分解を受けやすい場合、消化管内で分解を受けにくい製剤(例えば、活性成分をリポソーム中に包容したマイクロカプセル剤)として経口投与することも可能である。また、直腸、鼻腔内、舌下、肺等の消化管以外の粘膜から吸収せしめる投与方法も可能である。この場合は、座剤、点鼻剤、舌下剤、経肺剤といった形態で投与することができる。
【0111】
本発明の医薬組成物の投与量は、治療に用いられる場合、治療に有効な投与量が決められるが、当該投与量は投与対象者の年齢、体重、症状の程度及び投与経路等によって異なり、個々の場合に応じて決められる。通常、経口投与による場合、成人一日当たりの投与量は0.1~1000mg程度であり、これを1~数回(2、3回等)に分けて投与すればよい。持
続静脈内投与においては、0.01μg/kg/min~1.0μg/kg/minの範囲で投与すること
ができ、0.025μg/kg/min~0.1μg/kg/minで投与するのが望ましい。
【0112】
本発明の1つの態様として、「ペリオスチン抗体を用いることを特徴とする、細胞接着
活性を有するペリオスチンに対する阻害方法」、「治療的有効量の細胞接着作用を有する
ペリオスチンのスプライシングバリアントを認識する抗ペリオスチン抗体を癌患者に投与することを含む、細胞接着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患の予防又は治療方法」が挙げられる。本発明の1つの態様として、「細胞接着活性を有するペリオス
チンに対する阻害用医薬組成物製造のためのペリオスチン抗体の使用」、「細胞接着活性を有するペリオスチンが関与する炎症関連疾患の予防又は治療用医薬組成物製造のためのペリオスチン抗体の使用」が挙げられる。前記抗ペリオスチン抗体としては、上述の抗体、抗体断片及び/又は抗体の誘導体が挙げられる。炎症関連疾患としては、上述の炎症関連疾患が挙げられる。
【0113】
本発明の試薬は、本発明の抗体又はその断片、及び本発明の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物の形態であってもよい。該組成物には、必要に応
じて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
【0114】
本発明の試薬は、本発明の抗体、及び本発明の複合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むキットの形態であってもよい。該キットには、ヒトぺリオスチンの検出、
分離などの実施に用いられ得る器具、試薬などが含まれていてもよい。このような器具、試薬としては、例えば試験管、マイクロタイタープレート、アガロース粒子、ラテックス粒子、精製用カラム、標識抗体、標準試料(陽性対照、陰性対照)などが挙げられる。
【実施例0115】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0116】
試験例1.ヒトぺリオスチンに対するモノクローナル抗体の作製
(1)抗原の作製
ヒトペリオスチンエクソン21を構成するアミノ酸配列(配列番65:EVTKVTKFIEGGDGHLFEDEEIKRLLQG)のN末端にCys残基を付加したペプチドを、Fmoc法にて化学合成し、純度90%以上の抗原ペプチド10mgを得た。この抗原ペプチド5mgにキャリアータンパク質としてKLH(CALBIOCHEM社製)5mgを結合させ、抗原溶液を得た。すなわち、KLHをPBS(0.01M)に溶解して3.3mg/mLに調整し、0.2524mg/mLのMBS溶液(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を滴下して室温で60分間攪拌し反応させた。ジクロロメタンを用いてフリーのMBSを除
き、KLH-MBを得た。このKLH-MB5mgと、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)に溶解
した抗原ペプチド5mgとを混合し、4℃で12時間攪拌して反応させ、抗原溶液を得た。
【0117】
(2)免疫
6週齢のBALB/c雌性マウス3匹の両足に、(1)で得られたKLH結合抗原ペプチド100μg
を含む抗原溶液50μlと、FCA(フロイント完全アジュバント)50μlとの混合乳濁液全量
を皮下注射した。その後2週間間隔で2回、用時調製した上記抗原溶液とFIA(フロイント
不完全アジュバント)との混合乳濁液を両足に投与した。その後、そのマウスを頸椎脱臼により致死させ、無菌的に足部リンパ節を採取した。
【0118】
RPMI培地(コージンバイオ株式会社製)を供給しながら上記リンパ節を破砕し、孔径約10μmのメッシュを通過させてRPMI培地に懸濁状態のリンパ節細胞を得た。これを1000rpm、10分間の遠心分離にかけて、リンパ節細胞を沈殿画分として得た。この沈殿画分に、0.84%の塩化アンモニウム溶液に20mMのHEPES緩衝液(pH7.4)を加えた溶液1mlを入れて溶
血させ、赤血球を除いた後、1,000rpm、5分間の遠心分離にかけた。得られた沈殿画分(
細胞画分)をRPMI培地で数回洗浄し、細胞融合に用いた。
【0119】
(3)ミエローマ細胞の調製
8-アザグアニン耐性でかつイムノグロブリン非分泌型のマウスミエローマ細胞株P3X63Ag8U.1(P3U1株)を、20%のウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI培地で、10%CO2・37℃インキュベーター内で培養し、対数増殖期にある細胞を集め、1,000rpm、5分間の遠心分離に
かけて沈殿画分として細胞のみを取得し、RPMI培地に懸濁させた。
【0120】
(4)細胞の融合
(2)で得た免疫化リンパ節細胞1×108~3×108個を含むRPMI培地と、(3)で得たミエローマ細胞108個を含むRPMI培地とを混合した後、1,000rpm、10分間の遠心分離にかけた
。上清を静かに除いて沈殿画分として細胞を取得し、これに25%(w/v)のポリエチレングリコール1500(PEG 1500、ベーリンガー社製)1mlを加えた後、更にRPMI培地をゆっく
りと加えて総量を10mlとした。これに20% FCSを含むRPMI培地10mlを加えて、少し静置させた後、1,000rpm、5分間の遠心分離にかけ、得られた沈殿画分(細胞画分)に20% FCS
を含むRPMI培地を加えて細胞濃度が106個/mlになるように調整した細胞懸濁液を、コー
ニング社製の96穴培養プレートに200μL/ウェルずつ分注した。5%CO2・37℃インキュベーター中で24時間培養後、HAT溶液(インビトロジェン社製)を添加した後、更に2週間培養した。
【0121】
(5)ELISA法によるスクリーニング
培養上清が抗原ペプチドと反応する陽性ウェルのスクリーニングを行った。アッセイ用の抗原溶液には、(1)で得られた抗原ペプチド、ヒトぺリオスチンPN1(全長)、又はマウスぺリオスチンPN2(エクソン17欠損)2mgに、キャリアータンパク質として卵白アルブミン(OVA)を結合させたコンジュゲートを用いた。
【0122】
96穴マイクロタイタープレート(ファルコン353912)の各ウェルを、上記コンジュゲート1μg/mlで4℃下一夜静置してコーティングした。このプレートを洗浄後、(4)の培養上清(モノクローナル抗体を含む)50μlを各ウェルに滴下し、37℃のインキュベーター
内で2時間放置した後、PBS(-)(リン酸緩衝液)で洗浄した。これにアルカリフォスターゼ結合ヒツジ抗マウスIgG抗体(Zymed社製)を加え、37℃インキュベーターで1時間放
置し、PBS(-)で洗浄後、発色基質剤(ALP)を加えて20分間発色させ、プレートリーダー(BIO-RAD、Model 680 MICRO PLATE READER)で各ウェルのOD490nmの吸光度(抗体価)を測定し、抗原ペプチドとの反応性を確認し、培養上清が抗原ペプチドと反応する陽性ウェルを決定した。
【0123】
(6)抗体産生細胞のクローニング
(5)のELISA法で抗原ペプチドとの反応性が確認された陽性ウェル内の細胞から、限界希釈法により、抗体産生細胞株のクローニングを行った。すなわち、陽性ウェル内の細胞を96穴培養プレートの各ウェルに撒き込み、5%CO2・37℃インキュベーター内で2週間培
養した。各ウェルの培養上清について、(5)の方法と同様に、ELISA法にて、抗原ペプチド、ヒトぺリオスチンPN1(全長)、又はマウスぺリオスチンPN2(エクソン17欠損)との反応性を確認し、陽性ウェルについて、再度、限界希釈法によるクローニングを行い、抗原ペプチドとの反応性が高く、細胞コロニーの発育が良好な細胞を得た。これら細胞を24穴培養プレートに移し、5%CO2・37℃インキュベーター内で2週間培養した。これらの中
から、5ウェル内の細胞、すなわち5個のハイブリドーマ細胞株(A、B、C、D、E)を、選
別した。なお、選別は、後述の試験例2に従った免疫沈降試験により行った。
【0124】
(7)モノクローナル抗体の大量調製と精製
BALB/cマウスの腹腔内にプリスタン[2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(和
光純薬製)]0.5mlを投与し、2~3週間飼育した。予め、対数増殖期に維持しておいたモ
ノクローナル抗体産生ハイブリドーマA~Eを回収し、培養上清を除いた沈殿画分の細胞に
FCS不含のRPMI培地を加え、細胞数が1×107個/mlになるように細胞液を調製した。この
細胞液を、プリスタン前投与したBALB/cマウスの腹腔中に注入し、3週間後頃から漏出した腹水を腹部より注射器で回収した。採取した腹水を、孔径0.22μmφのフィルターを用
いて濾過した後、濾液をプロテインG-セファロースカラム(Millipore、11511324)によるアフィニティークロマトグラフィーによって常法に従い精製し、抗ヒトぺリオスチン-エクソン21モノクローナル抗体5種(抗体A~E)を調製した。
【0125】
試験例2.ヒトぺリオスチン-エクソン21認識試験
ハイブリドーマA及びハイブリドーマBそれぞれから得られたモノクローナル抗体(抗体A及びB)と、特許文献1で作製が報告されている抗体#8(抗体産生細胞株(ハイブリドーマ)No.8(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)に国際寄託されている(受託日:2013年2月26日、受託番号:NITE BP-01546、識別の表示:KS-0259#8,080611 Kohjin Bio)から産生される抗体)を使用して、ヒト細胞から分泌されるヒトぺリオスチンに対する結合試験を行った。具体的には以下のようにして行った。
【0126】
ヒト乳癌細胞Hs578tを3日間0%FBSで培養後、上清1.0mlを用いて免疫沈降を行った。抗体A、抗体B、抗体#8、及びコントロールのmouse IgG抗体それぞれ5μgを免疫沈降用ビー
ズ(Invitrogen immunoprecipitation kit - Dynabeads Protein G cat #10007D)に結合後、4℃で一晩を培養上清とインキュベーションした。その後、各抗体に結合したタンパ
ク質を抽出し、一次抗体としてペリオスチン・エクソン12抗原(ペリオスチンのN末端抗
原)に対する抗体を用いたウェスタンブロットを行い、各エクソン21抗体のペリオスチンへの結合を確認した。
【0127】
結果を
図1に示す。抗体#8は全くヒト乳癌細胞の上清から分泌されるペリオスチン・エクソン21を認識することはできなかったが、抗体Aと抗体Bは当該ぺリオスチン・エクソン21を強く認識することが示された(
図1(A))。また、ウェスタンブロット後にCBB染色を行い各レーンの抗体用量に偏りがないことを確認した(
図1(B))。なお、抗体C~E
についても同様に試験を行い、抗体C~Eのいずれも、ヒト乳癌細胞の上清から分泌されるペリオスチン・エクソン21を認識できることが分かった。
【0128】
試験例3.抗体のCDR配列の決定
試験例1でクローニングしたハイブリドーマ(A~E)のゲノム情報より、抗体A~Eのア
ミノ酸配列を決定した。抗体A~Eの重鎖可変領域(Heavy chain variable region)及び
軽鎖可変領域(Light chain variable region)のアミノ酸配列は以下のとおりである(
配列番号を、配列末尾のカッコ内に示す。)。
【0129】
<抗体A>
Heavy chain variable region
KVQLVQSGAEVVKPGASVKLSCKASGYTFTEYIIHWVKQASGQGLEWIGWFYPGRGIIKYNEKFKDKATLTADKSISTVYMDLSRLRSEDTAVYFCARHGITTATGAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号67)
Light chain variable region
DVVMTQTPLSLSVTLGQPASISCRSSQSLLHSNGNTYLHWYLQKPGQAPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYFCSQSTHVPFTFGQGTKLEIK(配列番号68)。
【0130】
<抗体B>
Heavy chain variable region
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGITFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVASISSGGSTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCVAIWDGSSYGYWGQGTTVTVSS(配列番号69)
Light chain variable region
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSGQSLVHSNGKTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKI
SRVEAEDVGVYYCSQSTHVPFTFGQGTKLEIK(配列番号70)。
【0131】
<抗体C>
Heavy chain variable region
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFIFSSYAMSWVRQPPGKRLEWVASIGSGGTTYYPDSVRGRFTISRDNARNILYLQMRSLRAEDTAVYYCAAIWDGSSHGYWGQGTLLTVSS(配列番号71)
Light chain variable region
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNLVHSNGNTYLHWYLQRPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCSQSTHVPYTFGPGTKLEIK(配列番号72)。
【0132】
<抗体D>
Heavy chain variable region
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQTPEKRLEWVASINSGGVTTYYPDSVKGRFTISRDNAINILYLQMRSLRSEDTALYYCAAIWDGSSHGYWGQGTLVTVSS(配列番号73)
Light chain variable region
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWYLQRPGQSPRLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDFGVYFCSQSTHVPYTFGPGTKLEIK(配列番号74)。
【0133】
<抗体E>
Heavy chain variable region
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSDAWMDWVRQAPGKGLEWVAEIRNKANNHATYFTESVKGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCTTATFVYWGQGTLVTVSS(配列番号75)
Light chain variable region
DVVMTQSPLSLPVSLGDRASISCRSSQSLVRNGITYLHWYQQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISSVEAEDFGVYYCSQTPHVPYTFGQGTKLEIK(配列番号76)。
そのアミノ酸配列を、既知の抗体のアミノ酸配列のデータベース(IgBLASTのウェブサイ
ト:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/、及びIMGTのウェブサイト:http://www.imgt.org/)と比較して相同性を調べることにより、CDRのアミノ酸配列を決定した。すなわち、IgBLASTのウェブサイトのデータベースとの比較に従って「Kabatによって定義されるCDR配列」を決定し、IMGTウェブサイトのデータベースとの比較に従って「IMGTによって
定義されるCDR配列」を決定した。抗体A~Eそれぞれの、Kabatによって定義されるCDR配
列(Kabat)と、IMGTによって定義されるCDR配列(IMGT)を、表1~5に示す。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
試験例4.エクソン21内のエピトープの決定
抗体A~Eについて、ヒトぺリオスチン-エクソン21内のエピトープを決定した。具体的には以下のようにして行った。
【0140】
ヒトペリオスチンエクソン21アミノ酸配列のN末端側から10アミノ酸ずつポリペプチド
を作成。このポリペプチドをガラススライド上にアレイ。アレイをブロッキング後、ペプチドアレイにA-Eの一次抗体、AlexaFluor 647標識二次抗体を順次添加してインキュベー
ト。ウォシュ作業後にエピトープに結合した抗体をAxon Genepix Scanner 4300 SL50によって検出した。各ペプチドスポットの蛍光はレーザースキャナーでキャプチャーし、強いシグナルを放つ陽性ペプチドをSpot-recognition software GenePixで解析した。
【0141】
その結果、抗体A~Eは、以下の表に示されるアミノ酸配列Aとアミノ酸配列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン-エクソン21上の立体構造を認識することが分かった。
【0142】
【0143】
試験例5.血管擬態試験
癌細胞内で腫瘍が血管に擬態して、血流を腫瘍内外に通す現象が報告されている。この現象は、血管擬態(Vasculogenic Mimicry)と呼ばれている(Hendrix et al. Nature. 520, pages300-302 (2015))。この現象は乳癌などの臨床症例にも観察されており、予後不
良因子として報告されている。また、この培養細胞系の血管擬態モデルにおいて、癌細胞の管腔形成を評価することが報告されている。そこで、この培養モデルを用いて抗体を比較検討した。
【0144】
マウス乳癌細胞4T07を、マトリゲル(Corning Matrigel Matrix Growth Factor Reduced 5ml cat#356230)でコーティングしたu-Slide angiogenesis plate上に播種し、血管擬態を誘導した。培養液はRPMI-1640をserum free状態で使用し、播種した細胞数は3x105cells/mlとした。添加する薬剤として、マウスペリオスチン(PN2)、ペリオスチン抗体(抗体#8、抗体A)を用いた。最終濃度はPN2 10μg/ml、抗体 20μg/mlで使用し、一晩4T07細胞とインキュベーション後に血管擬態を解析した。解析にはImage J Angiogenesis Analyzerを用いた。
【0145】
結果を
図2に示す。PN2投与により、乳癌細胞の血管擬態が著明に誘導された(P<0.05
)。PN2に加えて抗体も投与した場合、抗体#8を使用してもnumber of nodes及びnumber of segmentsといった管腔形成の指標は抑制されなかったが、抗体Aの使用によりこれらの
指標が有意に抑制され(P<0.01)。
【0146】
試験例6.癌細胞移植試験
マウス乳癌細胞4T07を、10%牛血清アルブミン(Invitrogen)及びPenicillin-Streptomycin Mixed Solution(ナカライテスク)含有RPMI1640(Gibco)を用いてtissue culture treated 10cm dishes(グライナー)に播種し、37度にてインキュベーターにて24時間培養した。その後、培養上清を除去しPBSにて洗浄した後にトリプシン/EDTAにより浮遊させた。細胞を回収し5分間遠心した後、乳癌細胞1x106個/匹になるようにカウントし100μlのPBSに懸濁した。調整した細胞を25G注射針を用いてBALB/cヌードマウス8週齢の雌の乳腺
に移植した。移植を行った1週間後から細胞が生着した乳腺部位をノギスで直径(mm)と短
径(mm)を測定し、計算式:腫瘍体積=直径×短径2×0.5 を用いて腫瘍体積を算出し、体積が100mm3となった時点でコントール群、抗体#8投与群、及び抗体A投与群の3群に振り分けた(各6匹)。その後、抗体10mg/kg×2回/週で30G注射針を用いて尾静脈より投与し、
その後の腫瘍体積を比較検討した。
【0147】
結果を
図3に示す。抗体#8投与群ではコントロール群と比較して腫瘍縮小を認めなかったが、抗体A投与群では著明な腫瘍抑制効果を示した(P<0.01)。
配列番号61で示されるアミノ酸配列Aと配列番号62~64のいずれかで示されるアミノ酸配列Bとから構成される、ヒトぺリオスチン上の立体エピトープに対して結合性を有する、抗体又はその抗原結合性断片。
癌の予防若しくは治療用、癌の血管擬態抑制用、ぺリオスチン阻害用、炎症関連疾患の予防若しくは治療用、血管内膜肥厚抑制用、血管新生抑制用、又は動脈瘤の予防若しくは治療用である、請求項12に記載の医薬組成物。