(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084694
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用積層セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20230612BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230612BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230612BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230612BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230612BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230612BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230612BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/489
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195148
(22)【出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021198752
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 健作
(72)【発明者】
【氏名】古川 洵
(72)【発明者】
【氏名】橋脇 弘樹
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
(57)【要約】
【課題】捲回時の蛇行および巻きずれの抑制
【解決手段】ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に、多孔質層が積層されている積層セパレータにおいて、前記多孔質層とは反対側の面を対象に測定されるIRスペクトルにて、アミド結合およびアミド結合以外の結合由来のピークの強度の、ポリオレフィン多孔質フィルム由来のピークの強度に対する割合が0.02未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に、多孔質層が積層されている、非水電解液二次電池用積層セパレータであって、
前記多孔質層は、少なくとも1種類の、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含み、
以下の式(1)にて表されるピーク比が、0.02未満である、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
ピーク比=ピーク強度A/ピーク強度B 式(1)
(式(1)中、ピーク強度Aは、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層が積層している面の反対側の面を対象とするATR法にて測定されるIRスペクトルにおける、前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピークの強度であり、ピーク強度Bは、前記IRスペクトルにおける、前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける結合に由来するピークの強度である。)
【請求項2】
前記式(1)中の前記ピーク強度Aが、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層が積層している面の反対側の面を対象とするATR法にて測定されるIRスペクトルにおける、波数が1570cm-1~1620cm-1の範囲内に存在するピークの強度であり、
前記式(1)中の前記ピーク強度Bが、前記IRスペクトルにおける、波数が1450cm-1~1550cm-1の範囲内に存在するピークの強度である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項3】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の少なくとも1種類が、
下記式(2)で表されるユニットを主成分とするブロックAと、
-(NH-Ar1-NHCO-Ar2-CO)- 式(2)
下記式(3)で表されるユニットを主成分とするブロックBと、
-(NH-Ar3-NHCO-Ar4-CO)- 式(3)
を有しているブロック共重合体である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
(式(2)および式(3)中、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、ユニットごとに異なっていてもよく、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立して、1つ以上の芳香環を有する2価の基であり、
全てのAr1のうち50%以上は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有しており、
全てのAr3のうち50%以下は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有しており、
全てのAr1およびAr3のうち、10~70%は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有している。)
【請求項4】
前記多孔質層が、フィラーをさらに含み、
前記フィラーの含有量が、前記多孔質層全体の重量に対して、20重量%以上、90重量%以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項5】
正極と、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されている、非水電解液二次電池用部材。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用積層セパレータ、より詳細には、ポリオレフィン多孔質フィルムに多孔質層が積層している非水電解液二次電池用積層セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められている。
【0003】
従来の非水電解液二次電池における充電終止電圧は、4.1~4.2V(リチウム参照極電位に対する電圧としては、4.2~4.3V(vs Li/Li+))程度であった。これに対し、昨今の非水電解液二次電池では、充電終止電圧を従来よりも高い4.3V以上に高めて正極の利用率を上げることにより、電池の高容量化が図られている。そのためには、非水電解液二次電池用積層セパレータを構成する多孔質層に含まれている樹脂が、高電圧条件下に置かれても変質しないことが重要である。
【0004】
このような樹脂として、従来の非水電解液二次電池用積層セパレータにおける多孔質層を構成するポリアミドにおけるアミド結合の一部を、アミド結合以外の電子吸引性が強い結合に置き換えた構造を有する樹脂、すなわちアミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を挙げることができる。また、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の具体例として、例えば、特許文献1に記載された、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)とアミドとの共重合体等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含む多孔質層がポリオレフィン多孔質フィルム上に積層している非水電解液二次電池用積層セパレータにおいては、スリット時のフープ巻取の際など、各種の巻取り工程で、蛇行および巻きずれが発生する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、前記非水電解液二次電池用積層セパレータの多孔質層の反対側の面上に、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の調製時に副生成物として生成する小さな分子が堆積しており、当該堆積している小さな分子の量を低減することによって、前述の蛇行および巻きずれの発生を抑制できることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[6]に示す発明を含む。
[1]ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に、多孔質層が積層されている、非水電解液二次電池用積層セパレータであって、
前記多孔質層は、少なくとも1種類の、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含み、
以下の式(1)にて表されるピーク比が、0.02未満である、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
ピーク比=ピーク強度A/ピーク強度B 式(1)
(式(1)中、ピーク強度Aは、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層が積層している面の反対側の面を対象とするATR法にて測定されるIRスペクトルにおける、前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピークの強度であり、ピーク強度Bは、前記IRスペクトルにおける、前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける結合に由来するピークの強度である。)
[2]前記式(1)中の前記ピーク強度Aが、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層が積層している面の反対側の面を対象とするATR法にて測定されるIRスペクトルにおける、波数が1570cm-1~1620cm-1の範囲内に存在するピークの強度であり、
前記式(1)中の前記ピーク強度Bが、前記IRスペクトルにおける、波数が1450cm-1~1550cm-1の範囲内に存在するピークの強度である、[1]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
[3]前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の少なくとも1種類が、
下記式(2)で表されるユニットを主成分とするブロックAと、
-(NH-Ar1-NHCO-Ar2-CO)- 式(2)
下記式(3)で表されるユニットを主成分とするブロックBと、
-(NH-Ar3-NHCO-Ar4-CO)- 式(3)
を有しているブロック共重合体である、[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【0009】
(式(2)および式(3)中、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、ユニットごとに異なっていてもよく、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立して、1つ以上の芳香環を有する2価の基であり、
全てのAr1のうち50%以上は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有しており、
全てのAr3のうち50%以下は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有しており、
全てのAr1およびAr3のうち、10~70%は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有している。)
[4]前記多孔質層が、フィラーをさらに含み、
前記フィラーの含有量が、前記多孔質層全体の重量に対して、20重量%以上、90重量%以下である、[1]~[3]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
[5]正極と、[1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されている、非水電解液二次電池用部材。
[6][1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、スリット時および電池の組み立て時に捲回される際に、蛇行および巻きずれの発生が抑制される、との効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
[実施形態1:非水電解液二次電池用積層セパレータ]
本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用積層セパレータ(以下、単に、「積層セパレータ」とも称する)は、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に、多孔質層が積層されている、非水電解液二次電池用積層セパレータであって、前記多孔質層は、少なくとも1種類の、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含み、以下の式(1)にて表されるピーク比が、0.02未満である。
ピーク比=ピーク強度A/ピーク強度B 式(1)
前記式(1)中、ピーク強度Aは、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層が積層している面の反対側の面を対象とするATR法にて測定されるIRスペクトルにおける、前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピークの強度であり、ピーク強度Bは、前記IRスペクトルにおける、前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける結合に由来するピークの強度である。
【0013】
<ピーク比>
本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面上に前記多孔質層が積層されてなる積層体である。前記多孔質層が積層する場合に、当該多孔質層を構成するアミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の一部、具体的には、後述の小さな分子が、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層の内部の空孔を通って、前記積層セパレータの当該多孔質層とは反対側の面に堆積する。なお、前記積層セパレータの前記多孔質層とは反対側の面とは、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層が積層している面とは反対側の面である。
【0014】
後述のとおり、前記小さな分子は、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の一部であり、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える。「ピーク強度A」は、前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピークの強度である。また、「ピーク強度B」は、前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける結合に由来するピークの強度である。
【0015】
前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピーク、並びに、前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける結合に由来するピークの2種類のピークは、お互いに区別でき、かつ、「ピーク強度A」および「ピーク強度B」を正確に測定することができれば特に限定されない。前記アミド結合に由来するピークとしては、例えば、アミド結合のC=O基の伸縮振動に由来するピークであり得る。前記アミド結合以外の結合に由来するピークとしては、例えば、スルホニル結合のO=S=O基の伸縮振動に由来するピークであり得る。前記アミド結合のC=O基の伸縮振動およびスルホニル結合のO=S=O基の伸縮振動に由来するピークは、具体的には、波数が1570cm-1~1620cm-1の範囲内に存在するピークである。前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける結合に由来するピークとしては、例えば、ポリオレフィンのC-H基の伸縮振動に由来するピークであり得る。前記ポリオレフィンのC-H基の伸縮振動に由来するピークは、具体的には、1450cm-1~1550cm-1の範囲内に存在するピークである。ここで、ピークの強度は、そのピークに対応する基または結合を備える化合物の含有量と相関している。
【0016】
よって、「式(1)にて表されるピーク比」は、前記積層セパレータの多孔質層とは反対側の面の表層部における、ポリオレフィンの含有量に対する前記小さな分子の含有量の割合を表す。従って、「式(1)にて表されるピーク比」は、前記積層セパレータにおいて、前記多孔質層とは反対側の面に堆積した前記小さな分子の量を表すパラメータである。
【0017】
ここで、従来の前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含む多孔質層がポリオレフィン多孔質フィルムの面上に積層してなる積層セパレータにおいて、当該積層セパレータにおける当該多孔質層の反対側の面上に堆積した前記小さな分子により、当該多孔質層の反対側の面に凹凸が生成する。そのことにより前記積層セパレータの滑り性が低下し、その結果、捲回時に、蛇行および巻きずれが発生するおそれがあると考えられる。
【0018】
一方、本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、「式(1)にて表されるピーク比」が0.02未満の小さな値であり、前記積層セパレータにおける前記多孔質層の反対側の面上に堆積する前記小さな分子の量が少ない。従って、前記小さな分子が前記多孔質層と反対側の面上に堆積することに起因する前記非水電解液二次電池用積層セパレータの滑り性の低下が抑制される。それゆえに、本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、前記滑り性の低下による、スリット時および電池の組み立て時に捲回される際の、蛇行および巻きずれの発生を抑制することができる。
【0019】
前述の蛇行および巻きずれの発生を好適に抑制するとの観点から、「式(1)にて表されるピーク比」は、0.015以下であることが好ましい。
【0020】
一方、本発明の一実施形態に係る積層セパレータにおいて、「式(1)にて表されるピーク比」が、0を超えた値であることは、前記積層セパレータを構成する前記ポリオレフィン多孔質フィルムの多孔質層が積層している面と反対側の面の表層部に、当該多孔質層を構成する樹脂成分の一部が存在すること、すなわち、当該ポリオレフィン多孔質フィルムに、当該多孔質層を構成する樹脂成分の一部が入り込んでいることを意味する。ここで、前記多孔質層を構成する樹脂成分の一部が前記ポリオレフィン多孔質フィルムに入り込むことによって、前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層との親和性および接着性が向上すると考えられる。その結果、前記積層セパレータにおいて、前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層の密着性が向上し、例えば捲回時に、前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層との間にずれが発生することを好適に抑制することができると考えられる。
【0021】
前記積層セパレータにおいて、前記ポリオレフィン多孔質フィルムと前記多孔質層の密着性を向上させるとの観点から、「式(1)にて表されるピーク比」は、0.001以上であることが好ましく、0.003以上であることがより好ましい。
【0022】
<ピーク比の算出方法>
本発明の一実施形態において、前記「式(1)にて表されるピーク比」の算出は、以下の(A)~(C)の工程からなる方法にて実施され得る。
(A)前記積層セパレータにおける前記多孔質層の反対側の面を対象として、ATR法による測定を行い、IRスペクトルを得る工程。
(B)工程(A)にて得られたIRスペクトルから、「ピーク強度A」および「ピーク強度B」を得る工程。
(C)工程(B)にて得られた「ピーク強度A」および「ピーク強度B」に基づき、「式(1)にて表されるピーク比」を算出する工程。
【0023】
工程(A)において、ATR法による測定は、市販の反射型赤外線分析装置を用いて実施することができる。また、測定条件は、得られるIRスペクトルにおいて、「ピーク強度A」および「ピーク強度B」を測定できる条件であれば、特に限定されない。
【0024】
工程(C)において、「ピーク強度A」は、以下の(a)~(d)の工程からなる方法にて算出される。
(a)工程(B)にて得られるIRスペクトルにおいて、前記多孔質層に含まれるアミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂における、当該アミド結合および当該アミド結合以外の結合に由来するピークの強度を測定し、測定されたピークの強度を「実測ピーク強度A」とする工程。なお、前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピークは、例えば、波数1570cm-1~1620cm-1の範囲に存在するピークである。
(b)前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含まない前記ポリオレフィン多孔質フィルムにおける、工程(A)における測定対象の面と同一の面を対象として、ATR法による測定を行い、IRスペクトルを得る工程。
(c)工程(b)にて得られたIRスペクトルにおいて、工程(a)にて強度を測定したピークに係る前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合と同一の結合に由来するピークの強度を測定し、測定されたピークの強度を「ベースピーク強度A」とする工程。なお、工程(a)と同様、前記アミド結合および前記アミド結合以外の結合に由来するピークは、例えば、波数1570cm-1~1620cm-1の範囲に存在するピークである。
(d)工程(a)にて得られた「実測ピーク強度A」から工程(c)にて得られた「ベースピーク強度A」を引くことによって、「ピーク強度A」を算出する工程。
【0025】
よって、「式(1)にて表されるピーク強度」は、具体的には、以下の式(1´)にて算出される。
「式(1)で表されるピーク比」=(「実測ピーク強度A」-「ベースピーク強度A」)/「ピーク強度B」 式(1´)
ここで、工程(b)において、「ベースピーク強度A」は、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を含まない前記ポリオレフィン多孔質フィルムとして、前記積層セパレータを作製する前の、前記積層セパレータを構成するポリオレフィン多孔質フィルムを使用して予め測定してもよい。あるいは、「ベースピーク強度A」は、工程(A)にてATR法による測定を行った後の前記積層セパレータを、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を完全に溶解できる溶媒にて洗浄して得られる前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂が完全に除去されたポリオレフィン多孔質フィルムを使用して測定してもよい。
【0026】
<アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂>
本発明の一実施形態における多孔質層は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂を少なくとも1種類含む。前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、1種類の樹脂であってもよく、2種類以上の樹脂の混合物であってもよい。
【0027】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、2価の基が、化学結合によって連結されており、当該化学結合が、アミド結合およびアミド結合以外の結合からなる構造を有する。前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、前記2価の基を、前記化学結合を介して、順次連結させる重合方法により、調製され得る。前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂において、前記多孔質層の耐熱性の観点から、前記化学結合のうちアミド結合が占める割合は、45~85%であることが好ましく、55~75%であることがより好ましい。
【0028】
前記調製方法にて得られる前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、特定の数以上の前記2価の基および特定の数以上の前記化学結合からなる、高分子量の鎖状ポリマーを含み得る。一方、前記調製方法においては、副生成物として、前記連結が途中で中断することにより、前記鎖状ポリマーよりも前記2価の基および前記化学結合の数が少ない、低分子量の鎖状ポリマーが生成する。
【0029】
また、前記調製方法による前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の調製の途中において、前記高分子量の鎖状ポリマーよりも前記2価の基及び前記化学結合の数が少ない中間生成物が生成される。ここで、前記中間生成物における同一分子内の両末端同士が縮合することにより、別の副生成物として環状成分が生成する。前記環状成分は、前記2価の基が、前記化学結合によって連結されており、且つ末端がない構造を備える。
【0030】
前述のとおり、本発明の一実施形態において、前記環状成分は、前記高分子量の鎖状ポリマーよりも前記2価の基及び前記化学結合の数が少ない中間生成物から生成される。よって、前記環状成分は、前記高分子量の鎖状ポリマーよりも、前記2価の基及び前記化学結合の数が少なくなる。従って、前記環状成分の重量平均分子量も、前記高分子量の鎖状ポリマーの重量平均分子量よりも小さくなる。
【0031】
具体的には、本発明の一実施形態において、前記高分子量の鎖状ポリマーの分子量は、固有粘度を用いて表すと、0.5~5.0dL/gであることが好ましく、1.0~2.0dL/gであることがより好ましく、1.1~1.9dL/gであることがさらに好ましい。本発明の一実施形態において、前記低分子量の鎖状ポリマーの分子量は、固有粘度を用いて表すと、0.5~3.0dL/gであることが好ましく、0.7~1.5dL/gであることがより好ましい。
【0032】
前記低分子量の鎖状ポリマーおよび前記環状成分は、重量平均分子量が小さく、前記高分量の鎖状ポリマーよりも小さな分子である。よって、前記低分子量の鎖状ポリマーおよび前記環状成分は、前記積層セパレータにおける多孔質層と反対側の面に堆積する前記小さな分子に該当する。
【0033】
前記2価の基は、特に限定されない。本発明の一実施形態において、前記2価の基は、2価の芳香族基を含むことが好ましく、前記2価の基の全てが2価の芳香族基であることがより好ましい。前記2価の基は、1種類の基であってもよく、2種類以上の基であってもよい。
【0034】
本明細書において、「2価の芳香族基」は、置換されていない芳香環または置換されている芳香環を含む2価の基を意味し、好ましくは、置換されていない芳香環または置換されている芳香環からなる2価の基を意味する。芳香環とは、ヒュッケル則を満たしている環状化合物を表す。芳香環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンが挙げられる。本発明の一実施形態において、芳香環は、炭素原子および水素原子のみから構成される。本発明の一実施形態において、芳香環は、ベンゼン環または2個以上のベンゼン環の縮合環(ナフタレン、アントラセンなど)である。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記2価の基における置換基は、特に限定されない。本発明の一実施形態において、前記2価の基における置換基としては、高電圧条件下に置かれても変質し難く、耐高電圧性を備える非水電解液二次電池用多孔質層を得るとの観点から、電子求引性の置換基であることが好ましい。前記電子求引性の置換基は、特に限定されず、例えば、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0036】
前記アミド結合以外の結合は、特に限定されず、例えば、スルホニル結合、アルケニル結合(例えば、C1~C5のアルケニル結合)、エーテル結合、エステル結合、イミド結合、ケトン結合、スルフィド結合等を挙げることができる。前記アミド結合以外の結合は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記アミド結合以外の結合は、耐高電圧性を備える多孔質層を得るとの観点から、アミド結合よりも電子吸引性が強い結合を含むことが好ましい。また、前記多孔質層の耐高電圧性をより向上させるとの観点から、前記化学結合における前記アミド結合よりも電子吸引性が強い結合の占める割合は、15~35%がより好ましく、25~35%がさらに好ましい。
【0038】
前記アミド結合よりも電子吸引性が強い結合としては、上で挙げたアミド結合以外の結合のうち、例えば、スルホニル結合、エステル結合等を挙げることができる。
【0039】
具体的には、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、例えば、ポリアミドおよびポリアミドイミド、並びに、ポリアミドまたはポリアミドイミドと、スルホニル結合、エーテル結合およびエステル結合から1種以上選択される結合を備えるポリマーとの共重合体を挙げることができる。前記共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0040】
前記ポリアミドは、芳香族ポリアミドであることが好ましい。前記芳香族ポリアミドの例としては、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、半芳香族ポリアミドが挙げられる。前記芳香族ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミドが好ましい。芳香族ポリアミドの例としては、パラアラミド、メタアラミドが挙げられる。
【0041】
前記ポリアミドイミドは、芳香族ポリアミドイミドであることが好ましい。前記芳香族ポリアミドイミドの例としては、全芳香族ポリアミドイミド、半芳香族ポリアミドイミドが挙げられる。前記芳香族ポリアミドイミドとしては、全芳香族ポリアミドイミドが好ましい。
【0042】
前記共重合体を構成する、前記スルホニル結合、エーテル結合およびエステル結合から1種以上選択される結合を備えるポリマーとしては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエステル等を挙げることができる。
【0043】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、特に限定されず、例えば、下記式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。なお、ここで、「主成分とする」とは、前記全芳香族ポリアミド系樹脂に含まれる全ユニットのうち、式(4)にて表されるユニットが占める割合が、50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることを意味する。
-(NH-Ar5-NHCO-Ar6-CO)- 式(4)。
【0044】
式(4)中、Ar5およびAr6は、ユニットごとに異なっていてもよい。Ar5およびAr6は、それぞれ独立して、1つ以上の芳香環を有する2価の基である。
【0045】
全てのAr5のうち50%以上は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有している。この構造を有するAr5の割合の下限は、Ar5全体の60%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。このような構造である-Ar1-の例としては、4,4’-ジフェニルスルホニル、3,4’-ジフェニルスルホニル、3,3’-ジフェニルスルホニルが挙げられる。
【0046】
2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造でない-Ar5-および-Ar6-の構造の例としては、下記が挙げられる。
【0047】
【0048】
本発明の一実施形態において、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造である-Ar5-は、4,4’-ジフェニルスルホニルである。本発明の一実施形態において、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造でない-Ar5-および-Ar6-は、パラフェニルである。
【0049】
本発明の一実施形態において、式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂は、例えば、(i)4,4’-ジアミノジフェニルスルホンおよびパラフェニレンジアミンに由来するジアミンユニットと、(ii)テレフタル酸(または、ハロゲン化テレフタル酸)に由来するジカルボン酸ユニットと、を有する芳香族ポリアミドである。また、本発明の別の実施形態において、式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂は、(i)4,4’-ジアミノジフェニルスルホンに由来するジアミンユニットと、(ii)テレフタル酸(または、ハロゲン化テレフタル酸)に由来するジカルボン酸ユニットと、を有する芳香族ポリアミドである。これらのユニットは、モノマー(単量体)が入手しやすく扱いも容易である。
【0050】
式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂は、式(4)で表される以外のユニットから構成される構造を有していてもよい。このような構造の例としては、ポリイミド骨格が挙げられる。
【0051】
式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0052】
式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂は、常法に従って合成できる。例えば、NH2-Ar5-NH2で表されるジアミンと、X-C(=O)-Ar6-C(=O)-X(Xは、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化物とをモノマーに使用して、公知の芳香族ポリアミドの重合方法に従って重合させれば、式(4)にて表されるユニットを主成分とする全芳香族ポリアミド系樹脂が合成できる。
【0053】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の一例として、例えば、下記式(2)で表されるユニットを主成分とするブロックAと、下記式(3)で表されるユニットを主成分とするブロックBと、を有しているブロック共重合体を挙げることもできる。
【0054】
-(NH-Ar1-NHCO-Ar2-CO)- 式(2)
-(NH-Ar3-NHCO-Ar4-CO)- 式(3)
式(2)および式(3)中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、ユニットごとに異なっていてもよく、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立して、1つ以上の芳香環を有する2価の基であり、全てのAr1のうち50%以上は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有しており、全てのAr3のうち50%以下は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有しており、全てのAr1およびAr3のうち、10~70%、好ましくは10~50%は、2つの芳香環がスルホニル結合により連結された構造を有している。
【0055】
ここで、前記ブロック共重合体において、前記ブロックAに含まれている式(2)で表されるユニットのうち、50%以上は、4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミドであり、前記ブロックBに含まれている式(3)で表されるユニットのうち、50%以上は、パラフェニレンテレフタルアミドであることが好ましい。また、前記ブロック共重合体は、前記ブロックB-前記ブロックA-前記ブロックBのトリブロック構造を有することが好ましい。さらに、前記ブロック共重合体の分子量分布の最頻値に対応する分子は、前記ブロックAに含まれている式(2)で表されるユニットが10~1000個であり、前記ブロックBに含まれている式(3)で表されるユニットが10~500個であることが好ましい。
【0056】
また、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の別の一例として、前記式(2)で表されるユニットを含まず、前記式(3)で表されるユニットを5~200個有する重合体を挙げることができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂は、前述のように、ジアミン成分とジカルボン酸ジハロゲン化物成分とを使用し、当該成分が順次連結する重合方法によって調製され得る。ここで、溶媒中における前記成分の濃度が高い場合、異なる分子間の縮合反応が起こり易くなり、同一分子内での両末端間での縮合反応が起こり難くなるため、前記環状成分も生成し難くなる。そのことによって、前記小さな分子に該当する分子の生成量を少なくすること、言い換えると、前記積層セパレータにおいて、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層の反対側に堆積する前記小さな分子の量を少なくすることができる。その結果、「式(1)にて表されるピーク比」を好適な範囲に制御することができる。
【0058】
ここで、前述の重合方法においては、溶媒中における前記成分の濃度を制御することは、すなわち、溶媒中において生成されるポリマー濃度を制御することを意味する。本発明の一実施形態において、前記ポリマー濃度は0.5重量%~10.0重量%であることが好ましく、1.0重量%~7.0重量%であることがより好ましい。これによって、前記小さな分子に該当する分子の生成量、言い換えると、前記積層セパレータにおいて、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの前記多孔質層の反対側に堆積する前記小さな分子の量を好適な範囲に制御することができる。
【0059】
また、本発明の一実施形態において、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の調製方法は、ジアミン成分とジカルボン酸ジハロゲン化物成分とを重合して、アミド結合にて前記2価の基を順次連結していく工程を含み得る。ここで、ジアミン成分とジカルボン酸ジハロゲン化物成分との重合における、反応温度および/または水分率を好適な範囲に調整することによっても、前記小さな分子に該当する、「低分子量の鎖状ポリマー」の生成量を好適な範囲に制御し、その結果、「式(1)にて表されるピーク比」を好適な範囲に制御することができる。
【0060】
詳細には、前記アミド結合は、アミノ基(-NH2)における窒素原子(N)とカルボニル基(-C(=O)-)における炭素原子(C)とが結合してなる。一方、反応に用いるジカルボン酸ジハロゲン化物成分は、水(H2O)と反応し、少なくともどちらか一方の末端にカルボキシ基(-C(=O)-OH)を生成し得る。ここで、カルボキシ基とアミノ基は反応し難いため、ポリマーの末端においてカルボキシ基が生成した場合、前記2価の基のアミド結合による連結が中断される。
【0061】
前記重合における反応温度が低温の場合、反応溶媒中に存在するH2Oによる添加したジカルボン酸ジハロゲン化物の加水分解反応の進行が抑制されるため、前記アミド結合を生成する反応の方が、前述のカルボキシ基を生成する反応よりも起こり易くなる。その結果、前記「低分子量の鎖状ポリマー」の生成量を好適な範囲に減少させることができる。
【0062】
一方、前記アミド結合を生成する反応を起こすためにも、ある程度の温度が必要である。よって、前記重合における反応温度が過剰に低い場合には、前記アミド結合を生成する反応自体が起こり難くなるおそれがある。
【0063】
前記重合における水分率が低い場合、前述のジカルボン酸ジハロゲン化物と、水とが反応してカルボキシ基が生成する反応を抑制することができる。その結果、前記「低分子量の鎖状ポリマー」の生成量を好適な範囲に減少させることができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記反応温度は、10℃以上、50℃以下であることが好ましく、20℃以上、40℃以下であることがより好ましい。また、本発明の一実施形態において、前記水分率は、50ppm以上、900ppm以下であることが好ましく、100ppm以上、600ppm以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記多孔質層における前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の含有量は、前記多孔質層全体の重量に対して、10~80重量%であることが好ましく、20~70重量%であることがより好ましい。
【0066】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂の固有粘度は、析出性を制御する観点から、0.8~2.5g/dLが好ましく、1.0dL/g~2.0dL/gであることがより好ましく、1.1dL/g~1.9dL/gであることがさらに好ましい。
【0067】
[フィラー]
本発明の一実施形態に係る多孔質層は、フィラーを含み得る。
【0068】
前記フィラーの種類としては、有機フィラーおよび無機フィラーが挙げられる。
【0069】
前記有機フィラーの例としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチルなどの単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレートなどが挙げられる。有機フィラーは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの有機フィラーの中でも、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0070】
前記無機フィラーの例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩などの無機物からなる材料が挙げられる。具体的に例示すると、アルミニウム酸化物(アルミナなど)、ベーマイト、シリカ、チタニア、マグネシア、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウムなどの粉末;ならびに、マイカ、ゼオライト、カオリンおよびタルクなどの鉱物が挙げられる。無機フィラーは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの無機フィラーの中でも、化学的安定性の点で、アルミニウム酸化物が好ましい。
【0071】
前記フィラーの形状については、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状などが挙げられ、何れの粒子も用いることができる。均一な孔を形成しやすいことから、略球状粒子であることが好ましい。
【0072】
前記フィラーの平均粒径は、0.01~1μmであることが好ましい。本明細書においては、「フィラーの平均粒径」とはフィラーの体積基準の平均粒径(D50)を意味する。D50とは、体積基準による積算分布が50%になる値の粒子径のことを意味する。D50は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製、商品名:SALD2200、SALD2300など)を利用して測定することができる。
【0073】
前記フィラーの含有量は、前記多孔質層全体の重量に対して、20~90重量%であることが好ましく、30~80重量%であることがより好ましい。前記フィラーの含有量が前述の範囲であれば、充分なイオン透過性を有する多孔質層が得られる。
【0074】
[その他の成分]
本発明の一実施形態における前記多孔質層は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂およびフィラー以外のその他の成分を、本発明の目的を損なわない範囲にて、含有していてもよい。前記その他の成分としては、例えば、前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂以外の樹脂、および、非水電解液二次電池用多孔質層にて一般に使用される添加剤を含有していてもよい。前記その他の成分は、1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。
【0075】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリウレタン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0076】
前記添加剤としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、界面活性剤およびワックス等を挙げることができる。
【0077】
[ポリオレフィン多孔質フィルム]
前記積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを備えている。ポリオレフィン多孔質フィルムは、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。ポリオレフィン多孔質フィルムは、積層セパレータの基材となりうる。ポリオレフィン多孔質フィルムは、電池が発熱したときに溶融して積層セパレータを無孔化することにより、当該積層セパレータにシャットダウン機能を付与するものであり得る。
【0078】
ここで、「ポリオレフィン多孔質フィルム」とは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムである。また、「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、当該多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。
【0079】
ポリオレフィン多孔質フィルムの主成分であるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂である、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび/または1-ヘキセンなどのモノマーが重合されてなる単独重合体および共重合体が挙げられる。すなわち、単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブテンなどが、共重合体としてはエチレン-プロピレン共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン多孔質フィルムは、これらのポリオレフィン系樹脂を単独にて含む層、または、これらのポリオレフィン系樹脂の2種以上を含む層でありうる。このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止(シャットダウン)することができるため、ポリエチレンがより好ましく、特に、エチレンを主体とする高分子量のポリエチレンが好ましい。なお、ポリオレフィン多孔質フィルムは、その機能を損なわない範囲で、ポリオレフィン以外の成分を含むことを妨げない。
【0080】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)および超高分子量ポリエチレンなどが挙げられる。このうち、超高分子量ポリエチレンがさらに好ましく、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがさらに好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、ポリオレフィン多孔質フィルムおよび非水電解液二次電池用積層セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0081】
ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚は、5~20μmが好ましく、7~15μmがより好ましく、9~15μmがさらに好ましい。膜厚が5μm以上ならば、ポリオレフィン多孔質フィルムに要求される機能(シャットダウン機能など)が、充分に得られる。膜厚が20μm以下ならば、薄型化された積層セパレータが得られる。
【0082】
ポリオレフィン多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、0.1μm以下であることが好ましく、0.06μm以下であることがより好ましい。これにより、十分なイオン透過性を得ることができ、かつ、電極を構成する粒子の入り込みを、より防止することができる。
【0083】
ポリオレフィン多孔質フィルムの単位面積当たりの重量目付は、電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、4~20g/m2であることが好ましく、5~12g/m2であることがより好ましい。
【0084】
ポリオレフィン多孔質フィルムの透気度は、ガーレー値で30~500s/100mLであることが好ましく、50~300s/100mLであることがより好ましい。これにより、積層セパレータが十分なイオン透過性を得ることができる。
【0085】
ポリオレフィン多孔質フィルムの空隙率は、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。これにより、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)することができる。
【0086】
ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法は、公知の手法を用いることができ、特に限定されない。例えば、日本国特許第5476844号公報に記載されたように、熱可塑性樹脂にフィラーを加えてフィルム成形した後、当該フィラーを除去する方法が挙げられる。
【0087】
具体的には、例えば、ポリオレフィン多孔質フィルムが、超高分子量ポリエチレンおよび重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂から形成されてなる場合には、製造コストの観点から、以下に示す工程(1)~(4)を含む方法により製造することが好ましい。
【0088】
(1)超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5重量部~200重量部と、炭酸カルシウムなどの無機充填剤100重量部~400重量部とを混練してポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程、
(2)ポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを成形する工程、
(3)工程(2)で得られたシート中から無機充填剤を除去する工程、
(4)工程(3)で得られたシートを延伸する工程。
その他、前述した各特許文献に記載の方法を利用してもよい。
【0089】
また、ポリオレフィン多孔質フィルムとして、前述の特徴を有する市販品を使用してもよい。
【0090】
[非水電解液二次電池用積層セパレータおよび多孔質層の物性]
前記積層セパレータの透気度は、ガーレー値で、500s/100mL以下が好ましく、300s/100mL以下がより好ましい。前記多孔質層の透気度は、ガーレー値で、400s/100mL以下が好ましく、200s/100mL以下がより好ましい。前記積層セパレータおよび前記多孔質層の透気度が前記の範囲であるならば、充分なイオン透過性を有すると言える。
【0091】
前記多孔質層の透気度は、ポリオレフィン多孔質フィルムの透気度をX、積層セパレータの透気度をYとして、Y-Xにより算出される。前記多孔質層の透気度は、例えば、樹脂の固有粘度および多孔質層の目付によって調節できる。一般的に、樹脂の固有粘度が小さくなると、ガーレー値が小さくなる傾向にある。また、前記多孔質層の目付が小さくなると、ガーレー値が小さくなる傾向にある。
【0092】
前記積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムおよび多孔質層の他に、必要に応じて他の層を有していてもよい。このような層の例としては、接着層、保護層が挙げられる。
【0093】
[非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法]
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂および任意でフィラーを、溶媒に溶解または分散させた塗工液を用いて、前記多孔質層を形成し、前記積層セパレータを製造することができる。塗工液の形成方法としては、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法などが挙げられる。溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。
【0094】
前記積層セパレータの製造方法としては、例えば、前述の塗工液を調製し、当該塗工液をポリオレフィン多孔質フィルムに塗布し、乾燥させることにより、前記多孔質層を当該ポリオレフィン多孔質フィルム上に形成する方法が挙げられる。
【0095】
前記塗工液をポリオレフィン多孔質フィルムに塗工する方法としては、ナイフ、ブレード、バー、グラビア、またはダイなどの公知の塗工方法を用いることができる。
【0096】
前記溶媒(分散媒)の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥および減圧乾燥などが挙げられるが、前記溶媒(分散媒)を充分に除去することができるのであれば如何なる方法でもよい。また、塗料に含まれる溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから除去する方法としては、具体的には水、アルコール、またはアセトンなどの低沸点の貧溶媒で置換、析出させ、乾燥を行う方法がある。
【0097】
[実施形態2:非水電解液二次電池用部材、実施形態3:非水電解液二次電池]
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる。また、本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを備える。
【0098】
よって、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材および本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、双方共、組み立て時に、積層セパレータの蛇行および巻きずれの発生が抑制される、との効果を奏する。
【0099】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、前記積層セパレータを介して対向した構造体を有する。前記非水電解液二次電池では、当該構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入されている。例えば、前記非水電解液二次電池は、リチウムイオンのドープ・脱ドープにより起電力を得るリチウムイオン二次電池である。
【0100】
[正極]
正極としては、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0101】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。
【0102】
当該材料としては、例えば、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。リチウム複合酸化物としては、例えば、層状構造を有するリチウム複合酸化物、スピネル構造を有するリチウム複合酸化物、並びに、層状構造及びスピネル構造の両方を有するリチウム複合酸化物からなる固溶体リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。また、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物も挙げられる。さらに、これらのリチウム複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ca、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びW等の他の元素で置換したものも挙げられる。
【0103】
前記リチウム複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部を他の元素で置換したリチウム複合酸化物は、例えば、下記式(5)で表される層状構造を有するリチウムコバルト複合酸化物、下記式(6)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、下記式(7)で表されるスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、下記式(8)で表される固溶体リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられる。
【0104】
Li[Lix(Co1-aM1
a)1-x]O2・・・式(5)
(式(5)中、M1はNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、-0.1≦x≦0.30、0≦a≦0.5、を満たす。)
Li[Liy(Ni1-bM2
b)1-y]O2・・・式(6)
(式(6)中、M2はNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、-0.1≦y≦0.30、0≦b≦0.5、を満たす。)
LizMn2-cM3
cO4・・・式(7)
(式(7)中、M3はNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、0.9≦z、0≦c≦1.5を満たす。)
Li1+wM4
dM5
eO2・・・式(8)
(式(8)中、M4及びM5はAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、0<w≦1/3、0≦d≦2/3、0≦e≦2/3、w+d+e=1を満たす。)
前記式(5)~(8)で示されたリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.8Co0.2O2、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiMn2O4、LiMn1.5Ni0.5O4、LiMn1.5Fe0.5O4、LiCoMnO4、Li1.21Ni0.20Mn0.59O2、Li1.22Ni0.20Mn0.58O2、Li1.22Ni0.15Co0.10Mn0.53O2、Li1.07Ni0.35Co0.08Mn0.50O2、Li1.07Ni0.36Co0.08Mn0.49O2等が挙げられる。
【0105】
また、式(5)~(8)で示されるリチウム複合酸化物以外のリチウム複合酸化物も好ましく正極活物質として使用することができる。そのようなリチウム複合酸化物としては例えば、LiNiVO4、LiV3O6、Li1.2Fe0.4Mn0.4O2等が挙げられる。
【0106】
リチウム複合酸化物以外で好ましく正極活物質として使用することができる材料としては、例えば、オリビン型構造を有するリン酸塩が挙げられ、下記式(9)で表されるオリビン型構造を有するリン酸塩が挙げられる。
【0107】
Liv(M6
fM7
gM8
hM9
i)jPO4・・・式(9)
(式(9)中、M6は、Mn、Co、またはNiであり、M7は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、またはMoであり、M8は、VIA族およびVIIA族の元素を任意に除外した遷移金属または典型元素であり、M9は、VIA族およびVIIA族の元素を任意に除外した遷移金属または典型元素であり、1.2≧a≧0.9、1≧b≧0.6、0.4≧c≧0、0.2≧d≧0、0.2≧e≧0、1.2≧f≧0.9を満たす。)
正極活物質は、正極活物質を構成するリチウム金属複合酸化物の粒子の表面に、被覆層を有することが好ましい。前記被覆層を構成する材料としては例えば、金属複合酸化物、金属塩、ホウ素含有化合物、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物、硫黄含有化合物などが挙げられ、これらの中でも金属複合酸化物が好適に用いられる。
【0108】
前記金属複合酸化物としては、リチウムイオン伝導性を有する酸化物が好適に用いられる。このような金属複合酸化物としては、例えば、Liと、Nb、Ge、Si、P、Al、W、Ta、Ti、S、Zr、Zn、V及びBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素との金属複合酸化物を挙げることができる。正極活物質が被覆層を有すると、当該被覆層が高電圧下での正極活物質と電解質との界面における副反応を抑制し、得られる二次電池の高寿命化が実現できる。また、正極活物質と電解質との界面における高抵抗層の形成を抑制し、得られる二次電池の高出力化が実現できる。
【0109】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素質材料などが挙げられる。
【0110】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニルの共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ならびに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0111】
正極集電体としては、例えば、Al、Ni、ステンレスなどの導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0112】
シート状の正極の製造方法としては、例えば、正極合剤となる正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にして正極合剤を得た後、当該正極合剤を正極集電体に塗工し、これを乾燥して得られたシート状の正極合剤を加圧することにより、正極集電体に固着する方法などが挙げられる。
【0113】
[負極]
負極としては、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0114】
前記負極活物質としては、例えば、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属または合金であって、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープおよび脱ドープが可能な材料などが挙げられる。
【0115】
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体などを挙げることができる。
【0116】
前記負極活物質として使用可能な酸化物としては、例えば、SiO2、SiOなど式SiOx(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO2、TiOなど式TiOx(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V2O5、VO2など式VxOy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe3O4、Fe2O3、FeOなど式FexOy(ここで、xおよびyは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO2、SnOなど式SnOx(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO3、WO2など一般式WOx(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;Li4Ti5O12、LiVO2などのリチウムとチタンまたはバナジウムとを含有する複合金属酸化物;などを挙げることができる。
【0117】
負極活物質として使用可能な硫化物としては、例えば、Ti2S3、TiS2、TiSなど式TixSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V3S4、VS2、VSなど式VSx(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe3S4、FeS2、FeSなど式FexSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo2S3、MoS2など式MoxSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS2、SnSなど式SnSx(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WS2など式WSx(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sb2S3など式SbxSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se5S3、SeS2、SeSなど式SexSy(ここで、xおよびyは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
【0118】
負極活物質として使用可能な窒化物としては、例えば、Li3N、Li3-xAxN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方または両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
【0119】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質または非晶質のいずれでもよい。これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、主に負極集電体に担持させて、電極として用いられる。
【0120】
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属およびスズ金属などを挙げることができる。
【0121】
また、SiまたはSnを第1の構成元素とし、それに加えて第2、第3の構成元素を含む複合材料が挙げられる。第2の構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム及びジルコニウムのうち少なくとも1種である。第3の構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウム及びリンのうち少なくとも1種である。
【0122】
特に、高い電池容量および優れた電池特性が得られることから、前記金属材料として、ケイ素またはスズの単体(微量の不純物を含んでよい)、SiOv(0<v≦2)、SnOw(0≦w≦2)、Si-Co-C複合材料、Si-Ni-C複合材料、Sn-Co-C複合材料、Sn-Ni-C複合材料が好ましい。
【0123】
負極集電体としては、例えば、Cu、Ni、ステンレスなどが挙げられる。中でも、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0124】
シート状の負極の製造方法としては、例えば、負極合剤となる負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得た後、当該負極合剤を負極集電体に塗工し、これを乾燥して得られたシート状の負極合剤を加圧することにより、負極集電体に固着する方法などが挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤および前記結着剤が含まれる。
【0125】
[非水電解液]
非水電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiSO3F、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(COCF3)、Li(C4F9SO3)、LiC(SO2CF3)3、Li2B10Cl10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。なかでもリチウム塩としては、フッ素を含むLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiSO3F、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2およびLiC(SO2CF3)3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0126】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,2-ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3-メチル-2-オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3-プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;またはこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
【0127】
前記有機溶媒は、2種以上を混合して、混合溶媒として用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた非水電解液は、動作温度範囲が広く、高い電圧で使用しても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという利点を有する。
【0128】
また、非水電解液としては、得られる非水電解質二次電池の安全性が高まるため、LiPF6などのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む非水電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電圧で放電させても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0129】
[非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法]
非水電解液二次電池用部材の製造方法としては、例えば、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とをこの順で配置する方法が挙げられる。
【0130】
また、非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れる。次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ容器を密閉する。これにより、非水電解液二次電池を製造することができる。
【0131】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0132】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0133】
[各種の物性値の測定方法]
後述の実施例、比較例にて調製された、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂、多孔質層および当該非多孔質層を備える積層セパレータの各種の物性値等を以下に示す方法にて測定した。
【0134】
[膜厚]
積層セパレータおよび多孔質フィルムの膜厚を、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機(VL-50)を用いて測定した。また、積層セパレータの膜厚と多孔質フィルムの膜厚との差を算出し、多孔質層の膜厚とした。
【0135】
[重量目付]
予め、後述の実施例、比較例にて使用した多孔質フィルムから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、以下の式(10)に従い、多孔質フィルムの重量目付を算出した。
【0136】
多孔質フィルムの重量目付(g/m2)=W/(0.08×0.08) 式(10)
同様に、積層セパレータから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、以下の式(11)に従い、積層セパレータの重量目付を算出した。
【0137】
積層セパレータの重量目付(g/m2)=W/(0.08×0.08) 式(11)
積層セパレータの重量目付および多孔質フィルムの重量目付を用いて、以下の式(12)に従い、多孔質層の重量目付を算出した。
【0138】
多孔質層の重量目付(g/m2)=(積層セパレータの重量目付)-(多孔質フィルムの重量目付) 式(12)
[透気度]
積層セパレータの透気度(ガーレ値)および多孔質層を剥離した後の積層セパレータの透気度を、JIS P8117に準拠して測定した。
【0139】
[固有粘度]
固有粘度は、次の測定方法により測定した。
【0140】
測定するポリマー0.5gを96~98%硫酸100mLに溶解させた溶液と、96~98%硫酸とのそれぞれについて、毛細管粘度計により30℃における流動時間を測定した。測定した流動時間から、次式により固有粘度を求めた。
固有粘度=ln(T/T0)/C 〔単位:dL/g〕
式中、
T :ポリマーの硫酸溶液の流動時間
T0:硫酸の流動時間
C :溶液中のポリマー濃度(g/dL)。
【0141】
[ピーク比]
以下の(i)~(v)の工程からなる方法にて、前記積層セパレータにおける「式(1)にて表されるピーク比」を算出した。
(i)実施例、比較例および参考例にて使用するポリオレフィン多孔質フィルムの多孔質層を積層する面に対して、反射型赤外線分析装置(Agilent社製、商品名:Cary660 FTIR)を用いてATR法による測定を行い、IRスペクトルを得る工程。(ii)前記積層セパレータにおける多孔質層の反対側の面を対象として、工程(i)にて使用した反射型赤外線分析装置を用いてATR法による測定を行い、IRスペクトルを得る工程。
(iii)工程(ii)にて得られたIRスペクトルから、「実測ピーク強度A」および「ピーク強度B」を得、工程(i)にて得られたIRスペクトルから「ベースピーク強度A」を得る工程。
(iv)工程(iii)にて得られた「実測ピーク強度A」、「ベースピーク強度A」および「ピーク強度B」を用いて、以下の式(1´)に基づき、「式(1)にて表されるピーク比」を算出する工程。
「式(1)で表されるピーク比」=(「実測ピーク強度A」-「ベースピーク強度A」)/「ピーク強度B」 式(1´)
工程(i)および工程(ii)にて、ATR法によってIRスペクトルを得る際の測定条件は、以下の通りである。
[IR測定]
工程(iii)において、具体的には、工程(ii)にて得られたIRスペクトルにおける、波数1570cm-1~1620cm-1の範囲に存在するピークの強度を測定して、「実測ピーク強度A」とし、波数1450cm-1~1550cm-1の範囲に存在するピークの強度を測定して、「ピーク強度B」とした。また、工程(i)にて得られたIRスペクトルにおける、波数1570cm-1~1620cm-1の範囲に存在するピークの強度を測定して、「ベースピーク強度A」とした。
【0142】
[フープ巻取性]
セパレータ原反をスリッタにて、一定の幅(65mm~68mm)に切断したサンプルを作製した。その積層セパレータを100m/分の速度で搬送して、巻替えを実施した。巻替えの際に、積層セパレータのフープ巻取を良好に行うことができるか否かを以下に示す<評価基準>に基づき、評価した。
<評価基準>
良好:目視で判別できる巻ずれ品の発生割合が10%以下。
不良:目視で判別できる巻ずれ品の発生割合が10%以上。
【0143】
[実施例1]
<組成物の調製>
以下の(a)~(g)に示す工程からなる方法にて、組成物を調製した。
(a)撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5Lのセパラブルフラスコを充分乾燥させた。
(b)フラスコ内に、4217gのN-メチルピロリドン(NMP)を仕込んだ。さらに、324.22gの塩化カルシウム(200℃にて2時間乾燥させたもの)を加えて、100℃に昇温させ、塩化カルシウムを完全に溶解させ、塩化カルシウムの溶液を得た。ここで、前記塩化カルシウムの溶液において、塩化カルシウムの濃度は、7.14重量%であり、水分率は、300ppmになるように調整した。
(c)前記塩化カルシウムの溶液に対して、その温度を100℃に保持しつつ、140.816gの4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)を加えて、完全に溶解させ、溶液A(1)を得た。
(d)得られた溶液A(1)を25℃まで冷却した。その後、冷却された溶液A(1)に対して、その温度を25℃に保った状態にて、合計114.564gのテレフタル酸ジクロライド(TPC)を3分割して加え、1時間反応させ、反応溶液A(1)を得た。反応溶液A(1)における仕込み比:溶液A(1)に加えたDDS/TPCのモル比率は、1.005であった。反応溶液A(1)においては、ポリ(4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミド)からなるブロックA(1)が調製された。
(e)得られた反応溶液A(1)に対して、61.328gのパラフェニレンジアミン(PPD)を加え、1時間かけて完全に溶解させ、溶液B(1)を得た。
(f)溶液B(1)に対して、その温度を25℃に保った状態にて、合計114.335gのTPCを3分割して加え、1.5時間反応させ、反応溶液B(1)を得た。反応溶液B(1)における仕込み比:溶液Bに加えたPPD/TPCのモル比率は、1.007であった。反応溶液B(1)においては、前記ブロックA(1)の両側に、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)からなるブロックB(1)が伸長した。
(g)反応溶液B(1)の温度を25℃に保った状態にて、1時間熟成した。その後、減圧下にて1時間撹拌して、気泡を除去した。その結果、分子全体の50%を前記ブロックA(1)が占め、残りの分子全体の50%を前記ブロックB(1)が占めるブロック共重合体(1)を含む溶液を得た。前記ブロック共重合体(1)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0144】
前記セパラブルフラスコとは別のフラスコ内に0.5Lのイオン交換水を入れた。また、前記ブロック共重合体(1)を含む溶液のうちの50mLを量り取った。その後、前記別のフラスコに、前記量り取った50mLのブロック共重合体(1)を含む溶液を加え、前記ブロック共重合体(1)を析出させた。析出させた前記ブロック共重合体(1)を、ろ過操作によって、分離させ、3.5gの前記ブロック共重合体(1)からなる組成物(1)を得た。なお、前記ろ過操作において、前記ブロック共重合体(1)を析出させた後の溶液を、1回ろ過した後、得られた析出物にイオン交換水100mLを加えて再度ろ過した。すなわち、ろ過を2回行った。得られた組成物(1)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は2.08dL/gであった。
【0145】
<多孔質層、積層セパレータの作製>
前記ブロック共重合体(1)を含む溶液:4000gに、6.83LのNMPを加えて、前記ブロック共重合体(1)を溶解および分散させた溶液を得た。前記ブロック共重合体(1)を溶解および分散させた溶液に、酸化アルミニウム(平均粒径:0.013μm)280.0gを添加した。得られた混合物を、圧力式分散機により均一に分散させて、塗工液を調製した。前記塗工液の固形分濃度は、5重量%であった。
【0146】
前記塗工液をポリエチレン多孔質フィルム(厚さ:9.9μm、重量目付:5.7g/m2)に塗布し、50℃、湿度70%のオーブンで2分間処理することで多孔質層を形成させた。その後、水洗および乾燥させて、多孔質層を備えている積層セパレータ(1)を得た。
【0147】
[実施例2]
工程(d)~(g)において、溶液A(2)、反応溶液A(2)、溶液B(2)および反応溶液B(2)の温度を20℃に変更したこと、工程(d)において、反応溶液A(2)における仕込み比を1.0083になるようにTPCの使用量を変更したこと、および、工程(f)において、反応溶液B(2)における仕込み比を1.0099になるようにTPCの使用量を変更したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の50%を前記ブロックA(2)が占め、残りの分子全体の50%を前記ブロックB(2)が占めるブロック共重合体(2)を含む溶液および、3.5gのブロック共重合体(2)からなる組成物(2)を得た。得られた組成物(2)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、ブロック共重合体(2)の固有粘度は1.64dL/gであった。前記ブロック共重合体(2)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0148】
ブロック共重合体(1)を含む溶液の代わりにブロック共重合体(2)を含む溶液を使用したこと、および、ポリエチレン多孔質フィルムとして、実施例1とは別のポリエチレン多孔質フィルム(厚さ:10.5μm、重量目付:5.8g/m2)を使用したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、積層セパレータ(2)を得た。
【0149】
[実施例3]
ポリオレフィン多孔質フィルムとして、実施例1と同一のポリオレフィン多孔質フィルムを使用したこと以外は、実施例2と同一の方法にて、積層セパレータ(3)を得た。
【0150】
[実施例4]
多孔質層を形成させる際のオーブン処理時間を1分にした以外は、実施例3と同一の方法にて、積層セパレータ(4)を得た。
【0151】
[実施例5]
工程(b)において、NMPの使用量を4177g、塩化カルシウムの使用量を366.29gに変更して水分率を400ppmに調整したこと、工程(d)において、反応溶液A(3)における仕込み比を1.011になるようにTPCの使用量を変更したこと、および、工程(f)において、反応溶液B(3)における仕込み比を1.013になるようにTPCの使用量を変更したこと以外は、実施例2と同一の方法にて、分子全体の50%を前記ブロックA(3)が占め、残りの分子全体の50%を前記ブロックB(3)が占めるブロック共重合体(3)を含む溶液および、3.5gのブロック共重合体(3)からなる組成物(3)を得た。得られた組成物(3)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、ブロック共重合体(3)の固有粘度は1.65dL/gであった。前記ブロック共重合体(3)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0152】
ブロック共重合体(2)を含む溶液の代わりにブロック共重合体(3)を含む溶液を使用したこと以外は、実施例3と同一の方法にて、積層セパレータ(5)を得た。
【0153】
[実施例6]
工程(b)において、NMPの使用量を4177g、塩化カルシウムの使用量を366.29gに変更して水分率を320ppmに調整したこと、工程(d)において、反応溶液A(4)における仕込み比を1.016になるようにTPCの使用量を変更したこと、および、工程(f)において、反応溶液B(4)における仕込み比を1.018になるようにTPCの使用量を変更したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の50%を前記ブロックA(4)が占め、残りの分子全体の50%を前記ブロックB(4)が占めるブロック共重合体(4)を含む溶液および、3.5gのブロック共重合体(4)からなる組成物(4)を得た。得られた組成物(4)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、ブロック共重合体(4)の固有粘度は1.57dL/gであった。前記ブロック共重合体(4)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0154】
ブロック共重合体(2)を含む溶液の代わりにブロック共重合体(4)を含む溶液を使用したこと以外は、実施例3と同一の方法にて、積層セパレータ(6)を得た。
【0155】
[実施例7]
ポリオレフィン多孔質フィルムとして、実施例1と同一のポリオレフィン多孔質フィルムを使用したこと以外は、実施例6と同一の方法にて、積層セパレータ(7)を得た。
【0156】
[実施例8]
ポリオレフィン多孔質フィルムとして、実施例1~7とは別のポリオレフィン多孔質フィルム(厚さ:10.0μm、重量目付:6.1g/m2)を使用したこと以外は、実施例6と同一の方法にて、積層セパレータ(8)を得た。
【0157】
[実施例9]
工程(b)において、NMPの使用量を4177g、塩化カルシウムの使用量を366.29g、工程(c)におけるDDSの使用量を118.744g、工程(d)において、TPCの使用量を95.093g、工程(e)におけるPPDの使用量を77.573g、工程(f)においてTPCの使用量を142.361gに変更したこと以外は、実施例2と同一の方法にて、分子全体の40%を前記ブロックA(5)が占め、残りの分子全体の60%を前記ブロックB(5)が占めるブロック共重合体(5)を含む溶液および、3.5gのブロック共重合体(5)からなる組成物(5)を得た。得られた組成物(5)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、ブロック共重合体(5)の固有粘度は1.57dL/gであった。前記ブロック共重合体(5)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0158】
ブロック共重合体(4)の代わりにブロック共重合体(5)を使用したこと以外は、実施例8と同一の方法にて、積層セパレータ(9)を得た。
【0159】
[実施例10]
工程(c)におけるDDSの使用量を79.160g、工程(d)において、TPCの使用量を63.207g、工程(e)におけるPPDの使用量を80.443g、工程(f)においてTPCの使用量を147.772gに変更したこと以外は、実施例2と同一の方法にて、分子全体の30%を前記ブロックA(6)が占め、残りの分子全体の70%を前記ブロックB(6)が占めるブロック共重合体(6)を含む溶液および、3.0gのブロック共重合体(6)からなる組成物(6)を得た。得られた組成物(6)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.36dL/gであった。前記ブロック共重合体(6)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0160】
ブロック共重合体(5)を含む溶液の代わりにブロック共重合体(6)を含む溶液を使用したこと、および、NMPの使用量を5.18L、酸化アルミニウム(平均粒径:0.013μm)の使用量を240.0gに変更したこと以外は、実施例9と同一の方法にて、積層セパレータ(10)を得た。
【0161】
[実施例11]
工程(b)において、水分率を320ppmに調整したこと、工程(c)におけるDDSの使用量を55.727g、工程(d)において、TPCの使用量を44.324g、工程(e)におけるPPDの使用量を97.081g、工程(f)においてTPCの使用量を177.640gに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の20%を前記ブロックA(7)が占め、残りの分子全体の80%を前記ブロックB(7)が占めるブロック共重合体(7)を含む溶液および、3.0gのブロック共重合体(7)からなる組成物(7)を得た。得られた組成物(7)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.47dL/gであった。前記ブロック共重合体(7)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0162】
ブロック共重合体(6)を含む溶液の代わりにブロック共重合体(7)を含む溶液を使用したこと以外は、実施例10と同一の方法にて、積層セパレータ(11)を得た。
【0163】
[実施例12]
前記のブロック共重合体(4)を含む溶液:4000gに、9.44LのNMPを加えて、前記のブロック共重合体(4)を溶解および分散させた溶液を得た。前記のブロック共重合体(4)を溶解および分散させた溶液に、酸化アルミニウム(平均粒径:0.013μm)280.0gとさらに粒径が大きい酸化アルミニウム(平均粒径:0.7μm)350.0gとを添加した。得られた混合物を、圧力式分散機により均一に分散させて、塗工液を調製した。前記塗工液の固形分濃度は、6重量%であった。前記塗工液を用いて、実施例8と同一の方法にて、積層セパレータ(12)を得た。
【0164】
[比較例1]
工程(b)において、水分率を1000ppmに調整したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の50%を前記比較ブロックA(1)が占め、残りの分子全体の50%を前記比較ブロックB(1)が占める比較重合体(1)を含む溶液および、3.50gの比較重合体(1)からなる比較組成物(1)を得た。得られた比較組成物(1)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.08dL/gであった。前記比較重合体(1)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0165】
ブロック共重合体(1)を含む溶液の代わりに比較重合体(1)を含む溶液を使用したこと、および、7.61LのNMP、300gの酸化アルミニウム(平均粒径:0.013μm)を使用したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、比較用積層セパレータ(1)を得た。
【0166】
[比較例2]
工程(b)において、水分率を1000ppmに調整したこと、および、工程(d)~(g)において、溶液A、反応溶液A、溶液Bおよび反応溶液Bにあたる比較溶液A(2)、比較反応溶液A(2)、比較溶液B(2)および比較反応溶液B(2)の温度を40℃に変更したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の50%を前記比較ブロックA(2)が占め、残りの分子全体の50%を前記比較ブロックB(2)が占める比較重合体(2)を含む溶液および、3.5gの比較重合体(2)からなる比較組成物(2)を得た。得られた比較組成物(2)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.14dL/gであった。前記比較重合体(2)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0167】
ブロック共重合体(1)を含む溶液の代わりに比較重合体(2)を含む溶液を使用したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、比較用積層セパレータ(2)を得た。
【0168】
[比較例3]
工程(b)において、水分率を500ppmに調整したこと、および、工程(d)~(g)において、溶液A、反応溶液A、溶液Bおよび反応溶液Bにあたる比較溶液A(3)、比較反応溶液A(3)、比較溶液B(3)および比較反応溶液B(3)の温度を60℃に変更したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の50%を前記比較ブロックA(3)が占め、残りの分子全体の50%を前記比較ブロックB(3)が占める比較重合体(3)を含む溶液および、3.5gの比較重合体(3)からなる比較組成物(3)を得た。得られた比較組成物(3)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.15dL/gであった。前記比較重合体(3)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0169】
ブロック共重合体(1)を含む溶液の代わりに比較重合体(3)を含む溶液を使用したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、比較用積層セパレータ(3)を得た。
【0170】
[比較例4]
工程(b)において、水分率を760ppmに調整したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、分子全体の50%を前記比較ブロックA(4)が占め、残りの分子全体の50%を前記比較ブロックB(4)が占める比較重合体(4)を含む溶液および、3.5gの比較重合体(4)からなる比較組成物(4)を得た。得られた比較組成物(4)を用いて、前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.01dL/gであった。前記比較重合体(4)は、アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂である。
【0171】
ブロック共重合体(1)を含む溶液の代わりに比較重合体(4)を含む溶液を使用したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、比較用積層セパレータ(4)を得た。
【0172】
[比較例5]
[合成例1]
工程(a´)撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5Lのセパラブルフラスコを充分乾燥させた。
【0173】
工程(b´)フラスコ内に、4089gのNMPを仕込んだ。さらに、314.4gの塩化カルシウム(200℃にて2時間乾燥させたもの)を加えて、100℃に昇温させ、塩化カルシウムを完全に溶解させ、塩化カルシウムの溶液を得た。ここで、前記塩化カルシウムの溶液において、塩化カルシウムの濃度は、7.14重量%であり、水分率は、500ppmになるように調整した。
【0174】
工程(c´)前記塩化カルシウムの溶液に対して、その温度を100℃に保持しつつ、329.281gのDDSを加えて、完全に溶解させ、比較溶液A(5)を得た。
【0175】
工程(d´)得られた比較溶液A(5)を20℃まで冷却した。その後、冷却された比較溶液A(5)に対して、その温度を20±2℃に保った状態にて、合計266.568gのテレフタル酸ジクロライド(TPC)を3分割して加え、1時間反応させ、比較反応溶液A(5)を得た。
【0176】
工程(e´)比較反応溶液A(5)の温度を20±2℃に保った状態にて、1時間熟成した。その後、減圧下にて1時間撹拌して、気泡を除去した。その結果、ポリ(4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミド)からなる比較重合体(5)を含む溶液を得た。
【0177】
前記セパラブルフラスコとは別のフラスコ内に0.5Lのイオン交換水を入れた。また、前記比較重合体(5)を含む溶液のうちの50mLの溶液を量り取った。その後、前記別のフラスコに、前記量り取った50mLの比較重合体(5)を含む溶液を加え、前記比較重合体(5)を析出させた。析出させた前記比較重合体(5)を、ろ過操作によって、分離させ、5.0gの前記比較重合体(5)からなる比較組成物(5)を得た。なお、前記ろ過操作において、前記比較重合体(5)を析出させた後の溶液を、1回ろ過した後、得られた析出物にイオン交換水100mLを加えて再度ろ過した。すなわち、ろ過を2回行った。比較組成物(5)を用いて前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は0.85dL/gであった。
【0178】
[合成例2]
工程(b´)におけるNMPの使用量を4280g、塩化カルシウムの使用量を329.1g、工程(c´)における塩化カルシウムの溶液の温度を30℃に調整し、DDSの代わりに、PPDを使用し、PPDの使用量を138.57g、工程(d´)におけるTPCの使用量を合計252.06gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)からなる比較重合体(6)を含む溶液を得た。比較重合体(1)を含む溶液の代わりに、比較重合体(6)を含む溶液を用いたこと以外は、合成例1と同一の方法にて、比較組成物(6)を得た。比較組成物(6)を用いて前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.90dL/gであった。
【0179】
比較重合体(5):比較重合体(6)の重量比が50:50である多孔質層を作製した。具体的には、比較重合体(5):比較重合体(6)の重量比が50:50となるように、合成例1および2で合成した重合液を混合し、混合液4000gを得た。ブロック共重合体(2)を含む溶液5000gの代わりに、前記混合液4000gを使用したこと、および、NMPの使用量を7.61L、酸化アルミニウム(平均粒径:0.013μm)の使用量を300.0gに変更したこと以外は、実施例2と同一の方法にて、積層セパレータを得た。
【0180】
[参考例]
以下の(a´´)~(e´´)に示す工程からなる方法にて、組成物を調製した。
(a´´)撹拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5Lのセパラブルフラスコを充分乾燥させた。
(b´´)フラスコ内に、4280gのNMPを仕込んだ。さらに、329.1gの塩化カルシウム(200℃にて2時間乾燥させたもの)を加えて、100℃に昇温させ、塩化カルシウムを完全に溶解させ、塩化カルシウムの溶液を得た。ここで、前記塩化カルシウムの溶液において、塩化カルシウムの濃度は、7.14重量%であり、水分率は、500ppmになるように調整した。
(c´´)前記塩化カルシウムの溶液に対して、その温度を30±2℃に保持しつつ、138.932gのPPDを加えて、完全に溶解させ、参考溶液Aを得た。
(d´´)得られた参考溶液Aを20℃まで冷却した。その後、冷却された参考溶液Aに対して、その温度を20±2℃に保った状態にて、合計251.499gのテレフタル酸ジクロライド(TPC)を3分割して加え、1時間反応させ、参考反応溶液Aを得た。
(e´´)参考反応溶液Aの温度を20±2℃に保った状態にて、1時間熟成した。その後、減圧下にて1時間撹拌して、気泡を除去した。その結果、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)からなる参考重合体を含む溶液を得た。前記参考重合体は、アミド結合を備える樹脂である。
【0181】
前記セパラブルフラスコとは別のフラスコ内に0.5Lのイオン交換水を入れた。その後、前記別のフラスコに、前記参考重合体を含む溶液を加え、前記参考重合体を析出させた。析出させた前記参考重合体を、ろ過操作によって、分離させ、3gの前記参考重合体からなる参考組成物を得た。なお、前記ろ過操作において、前記参考重合体を析出させた後の溶液を、1回ろ過した後、得られた析出物にイオン交換水100mLを加えて再度ろ過した。すなわち、ろ過を2回行った。参考組成物を用いて前記固有粘度測定を実施した結果、固有粘度は1.90dL/gであった。
【0182】
ブロック共重合体(1)を含む溶液の代わりに参考重合体を含む溶液を使用したこと、および、NMPの使用量を6.34L、酸化アルミニウム(平均粒径:0.013μm)の使用量を240.0gに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法にて、積層セパレータを得た。
【0183】
[結果]
実施例1~12、比較例1~5にて製造された、多孔質層を構成する樹脂(アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂)、多孔質層及び積層セパレータの物性値、および、積層セパレータのフープ巻取性を、前述の方法にて測定および評価した結果を以下の表1および表2に示す。
【0184】
【0185】
【0186】
[結論]
表2に示すように、実施例1~12に記載の積層セパレータ(1)~(12)は、前記「式(1)にて表されるピーク比」が、0.02未満である一方、比較例1~5に記載の比較用積層セパレータ(1)~(5)は、前記「式(1)にて表されるピーク比」が、0.02以上であった。
【0187】
また、実施例1~12に記載の積層セパレータ(1)~(12)は、フープ巻取性が良好である一方、比較例1~5に記載の比較用積層セパレータ(1)~(5)のフープ巻取性は不良であった。
【0188】
さらに、参考例に記載の参考用積層セパレータも、前記「式(1)にて表されるピーク比」が、0.02未満であり、フープ巻取性が良好であった。
【0189】
以上のことから、本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、前記「式(1)にて表されるピーク比」が0.02未満であることにより、フープ巻取性が良好であり、スリット時および電池の組み立て時に捲回される際に、蛇行および巻きずれの発生が抑制される、との効果を奏することが分かった。
本発明の一実施形態に係る積層セパレータは、組み立て時に、積層セパレータの蛇行および巻きずれの発生を抑制することができる、非水電解液二次電池の製造に利用することができる。