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特開2023-84735処理液とインクのセット、印刷方法、及び印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084735
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】処理液とインクのセット、印刷方法、及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230613BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20230613BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20230613BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B41M5/00 110
B41M5/00 114
B41M5/00 120
D06P5/00 104
C09D11/54
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41M5/00 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198984
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】古川 壽一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FB03
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA44
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB13
2H186AB27
2H186AB44
2H186AB45
2H186AB53
2H186AB56
2H186FA07
4H157AA02
4H157CA15
4H157CB08
4H157CB14
4H157CB15
4H157CB16
4H157CC01
4H157DA01
4J039BE01
4J039EA18
4J039EA46
4J039EA48
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】濃色に着色された布地であっても優れた隠蔽性を付与することができる印刷方法の提供。
【解決手段】布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程を含む印刷方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記ノニオン性樹脂粒子からなる樹脂片を前記造膜助剤に浸漬したときの膨潤度が150%以上である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記ノニオン性樹脂粒子がビニル樹脂粒子及びアクリル樹脂粒子のいずれかであり、
前記造膜助剤がアルコール類、グリコール類、及びグリコールエーテル類から選択される少なくとも1種の有機溶剤である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項4】
前記ノニオン性樹脂粒子がビニル樹脂粒子及びアクリル樹脂粒子のいずれかであり、
前記造膜助剤がイソブチルアルデヒド、及びポリフェニルグリコール類から選択される少なくとも1種の有機溶剤である、請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記ノニオン性樹脂粒子がウレタン樹脂粒子であり、
前記造膜助剤がアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及びアミド類から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項6】
前記アルコール類が3-メトキシ-3-メチルブタノールである、請求項3及び5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項7】
前記グリコールエーテル類がポリエーテルである、請求項3及び5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項8】
前記グリコールエーテル類が脂肪族系エステルアルコールである、請求項3及び5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項9】
前記ノニオン性樹脂粒子がポリ酢酸ビニル樹脂粒子である、請求項1から8のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項10】
前記処理液を付与した部位に、樹脂粒子及び色材を含有するインクを付与するインク付与工程を含む、請求項1から9のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項11】
布地と、該布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与手段と、を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
前記処理液を付与した部位に、樹脂粒子及び色材を含有するインクを付与するインク付与手段を有する、請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液と、
樹脂粒子及び色材を含有するインクと、を有する処理液とインクのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液とインクのセット、印刷方法、及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布地に印刷を行う方法としては、例えば、布地に処理液を付与し、続いて該処理液と反応性を有するインクを処理液の付与部に重ねて付与することにより、インクを布地に定着させる印刷方法が行われている。
【0003】
このような処理液とインクを用いた印刷方法では、濃色に着色された布地に印刷を行う場合に、白インク層の隠蔽性が十分ではなく、下の布地の色に影響を受けて白インク層、及び白インク層に重ねて印刷を行うカラーインク層の発色が狙いの発色から外れてしまう。即ち、白インク層の色相が下の布地の色によりばらついてしまったり、布地の色が暗色であれば明度が低下し、彩度がくすんでしまうという問題がある。
【0004】
上記問題点を解決するため、例えば、粒子と、界面活性剤と、有機溶媒と、顔料と、水とを含むインクと、凝集剤と、1,2-アルカンジオールと、グリコールエーテル系溶媒及び/又はグリコールエーテルアセテート系溶媒と、水とを含有する処理液のインクセットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、濃色に着色された布地であっても優れた隠蔽性を付与することができる印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の印刷方法は、布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、濃色に着色された布地であっても優れた隠蔽性を付与することができる印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、浸漬時間と膨潤度との関係を示すグラフである。
図2図2は、造膜助剤の含有量と隠蔽率との関係を示すグラフである。
図3図3は、本発明の印刷装置の一例を示す概略図である。
図4図4は、メインタンクの一例を示す斜視説明図である。
図5図5は、溶剤濃度と隠蔽性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(印刷方法及び印刷装置)
本発明の印刷方法は、布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程を含み、インク付与工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0010】
本発明の印刷装置は、布地と、該布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与手段とを有し、インク付与手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0011】
本発明の印刷方法は、本発明の印刷装置により好適に実施することができ、前記処理液付与工程は前記処理液付与手段により行うことができ、前記インク付与工程は前記インク付与手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0012】
本発明において、布地としては、例えば、綿、麻、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の材質のものがあり、具体的には、シャツ、Tシャツ、トレーナー、ハンカチ、手ぬぐい、タオル、のれん、トートバッグなどが挙げられる。
布地に形成する画像としては、文字、絵、写真、文字と絵の組み合わせ、文字と写真の組み合わせ等、いかなる画像であってもよい。
【0013】
従来技術では、処理液に含まれるグリコールエーテル系溶媒及び/又はグリコールエーテルアセテート系溶媒が造膜助剤としてインク中の粒子に作用して造膜を活性化させるが、処理液が未乾燥の状態の内にインクを連続塗布する必要があり、インクが布地に浸透してしまい、隠蔽性が低下してしまうという問題がある。
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、及び水を含有する処理液中に、前記ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤を含有することによって、造膜助剤を含有しない場合に比べて、濃色に着色された布地であっても高い隠蔽性が得られることを知見した。濃色に着色された布地とは、白色以外の有色(例えば、黒色、赤色、青色等)で着色された布地であることを意味する。
【0015】
本発明の印刷方法で用いられる処理液を布地に付与し、乾燥して処理液層を形成する際に、処理液に含まれる造膜助剤が処理液に含まれるノニオン性樹脂粒子の造膜を助け、従来の造膜助剤を含まない処理液と比べて、より乾燥早期にノニオン性樹脂粒子の造膜が生じる。そして、早期に造膜が生じることによって布地の網目を造膜したノニオン性樹脂粒子が布地表層近くで塞ぐことができ、凝集剤の布地への浸透が防止でき、凝集剤も同様に布地表層近くに留まる。
このような処理液による処理液層の上にインクを付与した場合、(1)布地表層近くに凝集剤が多量に存在するため、インクに含まれる色材が布地表層近くで多量に凝集する。(2)布地表層の網目がノニオン性樹脂膜で塞がれているため、凝集した色材は布地に浸透しにくく、布地表層近くに留まって、インク層が造膜する。加えて、インクに樹脂粒子が含有されていると、(3)処理液層に残留した造膜助剤が有ればインク中の樹脂粒子の造膜も促進して、インクは更に浸透しにくくなり、インク層が布地表層近くで形成される。
したがって、上記(1)、(2)、及び(3)の作用効果によって、少量のインク付与量であっても布地表層に比較的厚いインク層が形成される。厚いインク層は光を透過しにくいため、布地の色を隠蔽することができる。
【0016】
本発明においては、処理液中のノニオン性樹脂粒子に対する造膜助剤の作用が大きくインク層の隠蔽性に関わっている。目安として、以下のようにして求めた処理液中のノニオン性樹脂粒子からなる樹脂片を造膜助剤に浸漬したときの膨潤度が150%以上であると、十分な隠蔽性を得ることができる。
【0017】
膨潤度測定用樹脂サンプルは、例えば、以下の(1)から(3)に示す方法により作製することができる。
(1)ノニオン性樹脂粒子を含有する処理液を、ETFE(Ethylene tetrafluoroethylene)テープを貼ったガラス板上にキャスト法によって塗布し、樹脂フィルムを作製する。この時、常温(23℃)環境において徐冷、乾燥により造膜させて樹脂フィルムを作製する。
(2)ノニオン性樹脂粒子を含有する処理液を、樹脂の離型性が高いフッ素樹脂シャーレ上に取り、平坦な場において、オーブン等で乾燥させノニオン性樹脂粒子を造膜させる。これを何度か繰り返し所望の厚さのフィルムを作製する。
(3)ノニオン性樹脂粒子を含有する処理液から遠心分離により樹脂粒子を取り出す。樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱したETFEテープを貼ったガラス板上にキャスト法によって塗布する。塗布後、常温(23℃)環境において徐冷し、樹脂を造膜させて樹脂フィルムを作製する。
(4)ノニオン性樹脂粒子を含有する処理液から遠心分離により樹脂粒子を分離する。分離管内で凝集した樹脂塊を取り出し、これを薄くスライスして、適度な厚さに研磨し樹脂フィルムを作製する。
上記(1)~(4)の方法により作製したフィルムを30℃で24時間程度、真空乾燥機を用いて乾燥することが好ましい。
【0018】
[膨潤度の測定]
常温(23℃)に冷却した上記の方法で作製した樹脂フィルムを裁断し、厚さ約1.0mm×縦10mm×横20mmの樹脂片を作製する。樹脂片の重量Waを化学天秤にて測定する。
共栓付250mL試験管に約100mLの溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液を取り、その中に樹脂片を漬けた。樹脂片が管壁にふれないように栓の下側に鉤をつけ単糸で吊り下げて計測する。
次に、容器を恒温槽にて一定温度(30℃)に保ち、暗室中に静置する。
溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液中に樹脂片を浸漬して1日~20日の膨潤平衡に達した後、樹脂片を溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液より取り出し、ろ紙で拭った後、予め秤量した秤量瓶に手早く入れ、膨潤した樹脂片の重量Wbをそれぞれ計測し、下記数式により膨潤度Qを算出することができる。
膨潤度Q(%)=100(Wb-Wa)ρ1/Wa×ρ2
ただし、ρ1は樹脂片の密度、ρ2は溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液の密度を表す。
浸漬時間に対して膨潤度をプロットした図1に示すグラフを作製し、膨潤度-時間曲線の直線分を延長し、浸漬時間が零になるときの切片を膨潤平衡値とする。
【0019】
造膜助剤としては、上記(1)~(4)のいずれかの方法により作製した樹脂片が膨潤平衡に達した時、膨潤により樹脂片の重量がWb>Waとなる溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液をいう。即ち、重量変化率が膨潤平衡に達した、膨潤平衡値が105%以上のとき、ノニオン性樹脂粒子に対して溶剤又は液体樹脂は造膜助剤としての機能を有しているとする。
また、膨潤度を測定しなくても分子構造又は統計データから求められるHSP溶解度パラメーター(HSP値)に基づき、造膜助剤のノニオン性樹脂粒子に対する造膜のし易さを定量的に推し量ることも可能である。処方設計する上で膨潤度が高い造膜助剤候補を数多く建てるのに役立つ。ただし、例外事例も多々あり、確実ではないため、造膜助剤の選定は必ず膨潤度の確認評価が必要である、
【0020】
前記ノニオン性樹脂粒子を構成する樹脂鎖群のうち1つの単位構造からなる樹脂鎖のHSP値を(δd1、δp1、δh1)とし、
前記樹脂鎖で構成するポリマーの相互作用球半径をR0とし、
前記ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤のHSP値を(δd2、δp2、δh2)とし
前記樹脂鎖のHSP値と前記造膜助剤のHSP値の距離Raを、次式、Ra=4(δd1-δd2)+(δp1-δp2)+(δh1-δh2)、とすると、次式、Ra≦R0、を充たす造膜助剤は、高い造膜性をノニオン性樹脂粒子に対して示す場合が多い。そのような造膜助剤を含む処理液を用いることにより十分な隠蔽性を得ることができる。
【0021】
相互作用球半径R0は、以下のようにして求めることができる。
まず、HSP値が決定されている溶媒(20種類弱)で溶解度を検討する。そして、ポリマーを溶解した溶媒の3次元上の点をすべて球の内側に内包し、溶解しない溶媒の点は球の外側になるような球を探し出す(この値の探索はHSPiPソフト、“Sphere”で行うことができる。)。なお、本発明においては、膨潤度150%を閾値として膨潤する溶媒、しない溶媒を振り分ける。
その球の中心座標(δd1、δp1、δh1)をそのポリマーのHSP値と定める。その球の半径を相互作用球半径R0と定める。
その球の内側に造膜助剤のHSP値の座標(δd2、δp2、δh2)が有れば、Ra<R0が成り立つ。
HSPでは、分子に3つのHansenパラメーターが与えられており、普通はその単位はMPa0.5である。
δDは、分子間の分散力に由来するエネルギー、δPは、分子間の極性力に由来するエネルギー、δHは、分子間の水素結合力に由来するエネルギーである
【0022】
樹脂鎖のHSP値(δd1、δp1、δh1)における、δd1は樹脂鎖の分子間の分散力に由来するエネルギー、δp1は樹脂鎖の分子間の極性力に由来するエネルギー、δh1は樹脂鎖の分子間の水素結合力に由来するエネルギーを表す。
ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤のHSP値(δd2、δp2、δh2)における、δd2は造膜助剤の分子間の分散力に由来するエネルギー、δp2は造膜助剤の分子間の極性力に由来するエネルギー、δh2は造膜助剤の分子間の極性力に由来するエネルギーである。
【0023】
上記相互作用球半径R0は、次式、R0≦Raを充たす時、樹脂鎖のみで構成する樹脂の樹脂片を該当する造膜助剤に浸漬した時、樹脂片の膨潤度が150%以上になると計算上想定される、(δd、δp、δh)座標軸上において球で示される範囲である。このような樹脂鎖のみで構成されるノニオン性樹脂粒子に対して、造膜助剤は良溶媒に該当する。
【0024】
代表的な溶剤のHSP値(δD、δP、δH)を以下に示す。
【表A】
*MMB:3-メトキシ-3-メチルブタノール
*M100:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
*DPG:ジプロピレングリコール
*2-E-1,3-HD:2-エチル-1,3-ヘキサンジオール
*DEGMBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
*PGnPE:プロピレングリコール-n-プロピルエーテル
*DEGMEE:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
*Y-PE:四日市合成株式会社製、2-フェノキシエタノール
【0025】
ノニオン性樹脂粒子に樹脂鎖単体では150%以上の膨潤度を示すセグメントが含まれており、かつ当該造膜助剤を含んでいれば、処理液中のノニオン性樹脂粒子は造膜助剤を含まない処理液よりも早い造膜性を得ることができる。処理液を布地に塗布した時、処理液中のノニオン性樹脂粒子は布地に深く浸透する前により浅い布地の表層で造膜し、布地の目地を効率よく埋める。その結果、処理液層に重ねて付与したインクは高い隠蔽性を得ることができる。
【0026】
乾燥する前の処理液中の造膜助剤は水等の他の溶剤と混合しているため、ノニオン性樹脂粒子を膨潤させない。乾燥時に水等の蒸発が早い溶剤が揮発して造膜助剤が濃く残った時に造膜性を発現する。
処理液調合の際はノニオン性樹脂粒子を膨潤させないように水等の主溶剤の後に造膜助剤を混合して均一化した後、ノニオン性樹脂粒子分散液を混合する必要がある。造膜助剤とノニオン性樹脂粒子の混合順が逆となると保存性及び品質安定性が損なわれるおそれがある
【0027】
処理液中の造膜助剤の理想の含有量は造膜助剤が造膜時に十分乾燥するか、不揮発分として造膜する樹脂内に多量に残留するかによって異なる。
処理液の乾燥は基材とする布地の種類にもよるが、作業性と布繊維の耐熱性や、染色された色素の耐熱性、遷移性などを考慮し常温から200℃ほどの乾燥温度で行われる。高沸点溶剤や液体樹脂などは残留しやすい。
造膜助剤が造膜時に十分乾燥・蒸発する場合には、理想の含有量は処理液中に1質量%以上30質量%以下であり、X軸に造膜助剤の含有量x、Y軸に隠蔽率I(x)を取った図2に示すグラフを作成すると、得られる隠蔽性I(x)はどこかでピークを持つ。最大ピーク時の隠蔽率の値は造膜助剤なし(x=0質量%)の時の隠蔽率I0よりも高くなる(図2参照)。
【0028】
本発明者は、上記現象について、以下のように説明できると考えている。
造膜助剤の含有する量が増えるほど処理液の表面張力が低下して、処理液の浸透性が増えてしまい、白インクの隠蔽性を押し下げるマイナス効果Aと、造膜助剤を多く含有することで処理液の浸透性が減るプラス効果Bの合計による作用であるためであると考えられる。マイナスA効果は造膜助剤の含有量に対して隠蔽性を単調減少させる効果であり、プラスB効果はノニオン性樹脂粒子の量に対応しては造膜助剤の含有量に対して増加傾向であるものの、一定量以上では飽和する。
このようにマイナス効果Aとプラス効果Bがせめぎ合うことによって、実態としては図2に示すようなカーブを描くことが考えられる。
造膜助剤の含有量によってはマイナス効果Aがプラス効果Bより強く、造膜助剤無しよりも隠蔽性が弱くなることもある。しかし、造膜助剤を適量含有するとプラス効果Bがマイナス効果Aよりも強くなる。
したがって、造膜助剤の含有量はHSP値やノニオン性樹脂粒子の含有量、造膜助剤の乾燥のしやすさなどに応じて異なるため適宜評価を行って最適化することが好ましい。
【0029】
一方、造膜助剤の乾燥性が低く、不揮発分として造膜する樹脂内に多量に残留しやすい場合は、造膜助剤の含有量は、処理液中に含有するノニオン性樹脂粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上7質量部以下がより好ましい。造膜助剤の含有量が0.5質量部未満であると、造膜助剤の少なさと処理液の表面張力の低下の影響もあり、十分な隠蔽性が得られない。一方、造膜助剤の含有量が10質量部を超えると、樹脂中に残留する造膜助剤が多すぎ、かえって造膜を阻害してしまい、強い皮膜を得ることができない。また、皮膜表面がべたつく等の欠点が生じる。
【0030】
<処理液付与工程及び処理液付与手段>
処理液付与工程は、布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する工程であり、処理液付与手段により実施される。なお、処理液は、「前処理液」、「先塗液」と称することもある。
【0031】
前記処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、ロールコート法、スプレーコート法が好ましい。
【0032】
処理液を付与された布地に対しては、必要に応じて、布地を加熱して処理液を乾燥させる加熱工程を行うことが好ましい。なお、加熱工程は、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などの公知の加熱手段により布地を加熱して布地に付与された処理液を乾燥させる工程である。
【0033】
前記処理液は、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0034】
<<凝集剤>>
凝集剤は処理液による処理液層の上に重ねて付与されるインクに含まれる顔料・樹脂粒子等を凝集させる機能を、処理液層に付与する目的で含有している。
インクに含まれる顔料や樹脂粒子をアニオン性、又はカチオン性の電荷をもつイオン分散型とするインクセットを想定しており、凝集剤は該電荷を打ち消す機能を持つ。
凝集剤としては、例えば、カチオン性樹脂粒子、多価金属塩、多価有機塩などが挙げられる。これらの中でも、多価金属塩は水への溶解度が高く、処理液に重ね打ったインクにも容易に溶解して浸透するため、インク中にイオン分散している色材や樹脂粒子などに対し高い凝集効果を持つ凝集剤として好適に用いることができる。
【0035】
-多価金属塩-
多価金属塩は、インク中の顔料を着滴後に速やかに凝集させ、カラーブリードを抑制するとともに、発色性を向上させる。
前記多価金属塩としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、或いはこれらの無水物又は水和物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料を効果的に凝集させることができるため、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩及びアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1つが好ましく、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属の塩がより好ましい。
【0036】
凝集剤の含有量は、処理液の全量に対して、0.1質量%以上20.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下が更に好ましい。凝集剤の含有量が0.1質量%以上であるとインクによる画像形成の際に、インク成分の凝集によるビーディング抑制効果が発揮される。一方、凝集剤の含有量が20.0質量%以下であると乾燥塗膜の強度及び透明性が向上する。
【0037】
<<ノニオン性樹脂粒子>>
ノニオン性樹脂粒子は処理液を塗布した処理液層において、布地に付与するときに布地の目地をある程度塞いで、物理的に処理液層に重ねて印刷したインクが布地に浸透するのをブロックさせる目的で含有する。布地の表層にインク中の顔料が留まるほどインク層による下地の布地の色をよく隠蔽することができ、良好な発色をした画像を得られる。
処理液に含有する樹脂粒子は分散安定性の確保のため、共に含有する凝集剤、とりわけ塩に対し、処理液中に含有する樹脂粒子は塩析しにくい高い分散安定性を持っている必要があること、即ち、樹脂粒子はアニオン性の荷電を持たない自己分散型の非イオン分散型の樹脂粒子が好ましい。
【0038】
ノニオン性樹脂粒子とは、電荷を利用せずとも分散可能な樹脂粒子である。
本発明におけるノニオン性樹脂粒子とは、液体組成物から遠心分離により固形分を単離後、熱分解GC-MS(例えば、株式会社島津製作所製、GC-17Aなど)により、カルボキシル基、スルホ基などの酸性官能基、あるいはアミノ基などの塩基性官能基を含有するモノマーが検出されない樹脂粒子を指す。
樹脂粒子の化学構造については、ノニオン分散可能なノニオン性樹脂粒子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノニオン性樹脂粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂;エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のビニル樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、又はこれらの共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂等のビニル系モノマーを乳化重合したビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂を乳化重合したものは低温(180℃未満)での造膜性に優れ、白インクを重ねて印刷した時、高い隠蔽性を得ることができる。また、密着性と粘弾性に優れているため、布地に塗布して下地層としても布地の伸縮性を害しにくく、衣類などへの印刷を行っても、画像割れを起こしにくく、洗濯堅牢性に優れた印刷物を得ることができる。
【0039】
乳化重合に使用されるビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロニトリル等のアクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、アクリルアミド、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのモノマーを常法により乳化重合することによって樹脂水性粒子が製造される。
また、樹脂水性粒子には、被覆組成物として使用する場合に添加されるクレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等の無機顔料や、着色顔料、増粘剤、可塑剤、消泡剤、防腐剤、離型剤等を添加したものでも差支えない。
【0040】
ノニオン性樹脂粒子としては、以下に示す市販品を用いることができる。
ポリエステル系樹脂粒子としては、例えば、ES509(住友精化株式会社製)などが挙げられる。
ポリアミド系樹脂粒子としては、例えば、NE205N(住友精化株式会社製)などが挙げられる。
ビニル樹脂粒子としては、例えば、VA406、VA407(住友化学株式会社製);S-465HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-500HQ、S-801HQ、S-808HQ、S-830、S-850HQ、S-900HL、S-951HQ、S-1010(住友化学工業株式会社製);ビニブラン1002、ビニブラン1017-AD、ビニブランGV-6181、ビニブラン4003(日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
アクリル樹脂粒子としては、例えば、ビニブラン1225、ビニブラン1245L、ビニブラン2680、ビニブラン2682(日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
ウレタン樹脂粒子としては、例えば、スーパーフレックス500M、スーパーフレックスE-2000(第一工業製薬株式会社製);PUE-1000、PUE-1370(村山化学株式会社製);ハイドランWLI-611(DIC株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
ノニオン性樹脂粒子のガラス転移温度Tgは、-30℃以上30℃以下が好ましく、-25℃以上25℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度Tgが-30℃以上であれば、樹脂皮膜が十分強靭なものとなり、処理液層がより堅牢なものとなり、30℃以下であれば樹脂の成膜性が向上し、充分な柔軟性も担保されるため基材密着性が強固なものとなり好ましい。
ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)装置(装置名:DSC120U、セイコーインスツル株式会社製)を用い、測定温度30℃~300℃、1分間に2.5℃の昇温速度により測定できる。
【0042】
ノニオン性樹脂粒子の含有量は、処理液の全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
前記含有量が0.5質量%以上であれば樹脂が充分に布地を被覆することができるため布地に対する密着性が向上し、前記含有量が30質量%以下であれば膜厚が厚くなりすぎないため基材に対する密着性の低下の恐れが無い。
【0043】
ノニオン性樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、及び高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0044】
ノニオン性樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)は20℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましい。
最低造膜温度(MFT)の低い樹脂を含有すると、造膜が早く、布地に塗布した時処理液の浸透が抑制され、布地表層近くでアンダーコート層を形成する。すると凝集剤も樹脂に伴って表層近くに残り、またノニオン性樹脂も拡散せずによく布地の目地を埋めることからインクの浸透をブロックする効果も高くなる。
【0045】
<<造膜助剤>>
造膜助剤はノニオン性樹脂粒子の表層を溶解・膨潤させる作用が有り、ノニオン性樹脂粒子の造膜を助け、早くする効果を有する溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液を指す。
造膜助剤とは、処理液に共に含有するノニオン性樹脂粒子に対する上記記載の方法で評価し判断される膨潤特性で該当/非該当を判定する処理液に共に含有するノニオン性樹脂に応じた相対的な溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液と定義する。
【0046】
処理液に配合するノニオン性樹脂粒子のHSP値に対し、近傍のHSP値を持つ有機溶剤(例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルデヒド類、ケトン類等)、液体樹脂、又はこれらの混合液は対象のノニオン性樹脂粒子をよく膨潤させることができ、処理液に配合するとノニオン性樹脂粒子の造膜助剤として働くことができる。
ある溶剤に対して樹脂が膨潤しやすいか否かの指標としてSP値が従来使われている。実際に膨潤するか否かはHSP値を指標とするよりも確度が低いが、およその傾向は示せている。
特にポリ酢酸ビニル樹脂のSP値が9.4~9.6とされており、酢酸ビニル系樹脂との組み合わせにおいてアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルデヒド類、フタル酸エステルは有効な造膜助剤として働くものが多い。
また、アクリル樹脂のSP値は約9.5で、ポリ酢酸ビニルのSP値と近く、同様のアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルデヒド類、フタル酸エステルが有効な造膜助剤として働く場合が多い。
ウレタン樹脂のSP値は約10であり、酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂のSP値とは少し離れている。造膜助剤としてアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルデヒド類、ケトン類に有効な造膜助剤として働くものがあるが、ポリ酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂に対して有効な造膜助剤とは必ずしも一致しない。
【0047】
ポリアミド類(例えば、ナイロン66:SP値=13.6)、ポリエチレン樹脂(SP値=7.9)などにおいても、同様に樹脂のSP値に応じて有効な造膜助剤はそれぞれ異なる。
造膜助剤は溶剤又は液体樹脂の単体であっても、混合液であってもよい。
特に混合液として適切な比率に混合することで、樹脂のSP値により近しいSP値の液体とすることが可能であり、より高い有効性(少量の含有率でよく樹脂のMFT値を下げる機能)を持った造膜助剤とすることが可能である。比率決定には蒸気圧差等も考慮する必要あり、同等であることが望ましい。
【0048】
アルコール類としては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1ブタノール(SP値=9.6)、3-メチル-1ブタノール、1-ドデカノール(SP値=9.8)などが挙げられる
グリコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール(SP値=9.5)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値=9.9)、エチレングリコールジアセテート(SP値=10.0)などが挙げられる。
脂肪族系エステルアルコールとしては、例えば、プロピレングリコールーモノ―2-エチルヘキサノエート(四日市合成株式会社製:商品名:ワイジノールEHP01)などが挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(SP値=9.9)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(SP値=10.2),エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.5)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.7)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値=10.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値=9.5)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.7)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値=9.4)、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値=9.8)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値=10.1)などが挙げられる。
【0049】
また、市販品の造膜助剤としてポリエーテルであるポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(花王株式会社製、商品名:スマック MP-40)などが挙げられる。
ポリフェニルグリコールであり、芳香族グリコールエーテルの一種でもあるポリオキシエチレンモノフェニルエーテルを主成分とした(四日市合成株式会社製:商品名Y-PE,)、更に酸化エチレン付加モル数の多い成分を少量含む(四日市合成株式会社製:商品名YG-15)などが挙げられる。
上記Y-PE、TG-15は水系酢酸ビニル樹脂向けの造膜助剤として混合比が適正に調整された2-フェノキシエタノールと2-(2-フェノキシエトキシ)エタノールを主成分とする混合液でもある。
【0050】
アルデヒド類としては、例えば、アセトアルデヒド(SP値=10.3)、イソブチルアルデヒドである、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(JNC社製、商品名:CS-12)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(JNC社製、商品名:CS-16)などが挙げられる。
【0051】
ケトン類としては、例えば、アセトン(SP値=10.0)、ε-カプロラクトン(SP値=10.1)などが挙げられる。
フタル酸エステルとしては、例えば、DEHP:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、DBP:フタル酸ビスブチル、BBP:フタル酸ブチルベンジル、DIBP:フタル酸ビスイソブチル、DINP:フタル酸ビスイソノリル、DIDP:フタル酸ビスイソデシル
DNOP:フタル酸ビスノルマルオクチル、DPENP:フタル酸ビスペンチル、DHEXP:フタル酸ビスヘキシル、DCHP:フタル酸ビスシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0052】
アミン類としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(SP値=10.1)、1.3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(SP値=10.1)などが挙げられる。
【0053】
これらの溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液は、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
<<水>>
水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
処理液中における水の含有量については、特に制限はなく、常温保管において多価金属塩が析出しない十分な量を含有していればよい。
【0055】
<<その他の成分>
前記処理液は、必要に応じて、色材(顔料又は染料)、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0056】
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0057】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0058】
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが 挙げられる。
【0059】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、 ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0060】
前記処理液は、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水、更に必要に応じてその他の成分を混合し、必要に応じて撹拌混合して作製することができる。撹拌混合は、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などで行うことができる。
【0061】
<インク付与工程及びインク付与手段>
インク付与工程は、処理液を付与した部位に、樹脂粒子及び色材を含有するインクを付与する工程であり、インク付与手段により実施される。
本発明においては、布地上に処理液を付与した後にインクを付与する。なお、インクの付与は処理液の乾燥前でもよいし、乾燥後であってもよいが、乾燥後が好ましい。
【0062】
前記インクの付与方法としては、特に制限はなく、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、機器のメンテナンス性や作業効率が高い点から、インクジェット方式が好ましい。
【0063】
前記インク付与工程の後に、加熱工程を有することが好ましい。
加熱工程は、充分に乾燥の効果を得られ、また、布地に損傷を与えないという点から、80℃以上200℃以下で加熱処理することが好ましい。
加熱時間は、充分に乾燥の効果が得られ、また、布地に損傷を与えないという点から、10秒間以上10分間以下が好ましい。
【0064】
本発明の印刷方法で使用される処理液層に付与するインクは、樹脂粒子及び色材を含有し、水、有機溶剤、及び界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0065】
<<樹脂粒子>>
前記樹脂粒子における樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリル-シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0066】
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販の樹脂粒子としては、例えば、マイクロジェルE-1002、E-5002(スチレン-アクリル系樹脂粒子、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂粒子、DIC株式会社製)、ボンコート5454(スチレン-アクリル系樹脂粒子、DIC株式会社製)、SAE-1014(スチレン-アクリル系樹脂粒子、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK-200(アクリル系樹脂粒子、サイデン化学株式会社製)、プライマルAC-22、AC-61(アクリル系樹脂粒子、ローム・アンド・ハース製)、ナノクリルSBCX-2821、3689(アクリルシリコーン系樹脂粒子、東洋インキ株式会社製)、#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂粒子、御国色素株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0067】
樹脂粒子が造膜してインク層を形成するため、インク中の顔料の浸透を抑制することができる。
樹脂粒子は処理液中の凝集剤と反応性を有することが望ましく、即ちアニオン性であることが好ましい。また、処理液層に残留した造膜助剤によって、造膜性が促進される樹脂種の樹脂粒子が好適である。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0068】
樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、及びインクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0069】
<<色材>>
本発明の印刷方法に用いられる処理液を付与した処理液層にインクを重ねて付与すれば、処理液中に造膜助剤が含まれない処方と比べて、白インクであれば布地色をよく隠蔽でき、カラーインクや黒インクでは高い画像濃度を得ることができる。
【0070】
色材としては、特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0071】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。
【0072】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
色材の含有量は、画像濃度の向上、及び良好な定着性や吐出安定性の点から、インクの全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0075】
顔料をインク中に分散させるには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散性顔料などが使用できる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを使用することが可能である。
竹本油脂株式会社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
-顔料分散体-
色材に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、体積平均粒径が30~110nmであることが好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0077】
<<有機溶剤>>
有機溶剤としては、特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物などが挙げられる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物;プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0078】
有機溶剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0079】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
【0080】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロ
アルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0081】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
<<水>>
水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
インク中における水の含有量については、特に制限はなく、常温保管において多価金属塩が析出しない十分な量を含有していればよい。
【0085】
<<その他の成分>>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0086】
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0087】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0088】
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0089】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0090】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
ここで、粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0091】
(処理液とインクのセット)
本発明の処理液とインクのセットは、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液と、
樹脂粒子及び色材を含有するインクと、を有する。
【0092】
<印刷装置及び印刷方法>
本発明で用いられるインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、印刷装置及び印刷方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
印刷装置及び印刷方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有してもよい。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、印刷装置及び印刷方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、印刷装置は、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、印刷装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0093】
印刷装置の一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は印刷装置の斜視説明図である。図4はメインタンクの斜視説明図である。印刷装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0094】
この印刷装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置及び後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0095】
なお、インク及び処理液の使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0096】
本発明で用いられるインク及び処理液の用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0097】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0098】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0099】
(樹脂サンプルの製造例1)
-樹脂サンプル1の作製-
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)原液をフッ素樹脂シャーレに4g取り、80℃で40時間超の乾燥を行い、残留溶媒1%未満の円盤状の固形物を得た。
常温(23℃)に冷却したエチレン-酢酸ビニル樹脂の円盤状の固形物を裁断し、厚さ約0.9mm×縦30mm×横15mmの樹脂片である樹脂サンプル1を作製した。
【0100】
(樹脂サンプルの製造例2)
-樹脂サンプル2の作製-
樹脂サンプルの製造例1におけるエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)を、ノニオン性アクリル樹脂粒子(ビニブラン2682、日信化学工業株式会社製)に代えた以外は、樹脂サンプルの製造例1と同様にして、アクリル樹脂からなる樹脂片である樹脂サンプル2を作製した
【0101】
(樹脂サンプルの製造例3)
-樹脂サンプル3の作製-
樹脂サンプルの製造例1におけるエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)を、ノニオン性ウレタン樹脂粒子(イソシアネートエステル系ウレタン樹脂粒子、スーパーフレックスE-2000、第一工業製薬株式会社製)に代えた以外は、樹脂サンプルの製造例1と同様にして、ウレタン樹脂からなる樹脂片である樹脂サンプル3を作製した
【0102】
<膨潤度の測定>
得られた樹脂サンプル1~3の重量Waをそれぞれ化学天秤にて測定した。共栓付250mL試験管に約100mLの溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液を取り、その中に各樹脂サンプルを漬けた。樹脂サンプルが管壁にふれないように栓の下側に鉤をつけ単糸で吊り下げて計測した。
次に、容器を恒温槽にて一定温度(30℃)に保ち、暗室中に静置した。
溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液中に各樹脂サンプルを浸漬して1日~20日の膨潤平衡に達した後、各樹脂サンプルを溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液より取り出し、ろ紙で拭った後、予め秤量した秤量瓶に手早く入れ、膨潤した各樹脂サンプルの重量Wbをそれぞれ計測した。膨潤度Qは次のように計算した。
膨潤度Q(%)=100(Wb-Wa)ρ1/Wa×ρ2
ただし、ρ1は樹脂片の密度、ρ2は溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液の密度を表す。
浸漬時間に対して膨潤度をプロットした図1に示すグラフを作製し、膨潤度-時間曲線の直線分を延長し、浸漬時間が零になるときの切片を膨潤平衡値とした。
【0103】
上記樹脂サンプル1~3について、下記の表2~表4に示すように溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合液を代えて浸漬し、膨潤度を測定し、膨潤平衡値を求め、下記表1に基づき膨潤平衡値ランクを評価した。結果を表2~表4に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
膨潤平衡値ランクがB以上(膨潤平衡値105%以上)のとき、ノニオン性樹脂粒子に対して溶剤、液体樹脂、又はこれらの混合溶剤は造膜助剤としての機能を有しているとする。
【0109】
(処理液の比較製造例1)
-処理液1の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0110】
(処理液の比較製造例2)
-処理液2の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・1.2-プロパンジオール・・・2.5質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0111】
(処理液の比較製造例3)
-処理液3の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・1.2-プロパンジオール・・・5質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0112】
(処理液の比較製造例4)
-処理液4の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・1.2-プロパンジオール・・・10質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0113】
(処理液の比較製造例5)
-処理液5の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・1.2-プロパンジオール・・・15質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0114】
(処理液の比較製造例6)
-処理液6の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・1.2-プロパンジオール・・・20質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0115】
(処理液の製造例1)
-処理液7の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・3-メトキシ-3-メチルブタノール・・・2.5質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0116】
(処理液の製造例2)
-処理液8の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・3-メトキシ-3-メチルブタノール・・・5質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0117】
(処理液の製造例3)
-処理液9の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・3-メトキシ-3-メチルブタノール・・・10質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0118】
(処理液の製造例4)
-処理液10の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・3-メトキシ-3-メチルブタノール・・・15質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0119】
(処理液の製造例5)
-処理液11の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・3-メトキシ-3-メチルブタノール・・・20質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0120】
【表5】
【0121】
(比較例1、比較例2、及び実施例1)
<処理液の布地への塗布方法>
(1)上記処理液1~11を綿布(綿100%のTシャツ、品名:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XL、カラー:ブラック)をA4サイズにカットしたもの)に霧吹きで満遍なく22.5g塗布した。
(2)上記処理液1~11を塗布した綿布をヒートプレス機(ユーロポート株式会社製、品番:CHP-2938)にセットし、離型紙(株式会社UACJ製箔、品名:クッキングシート)を綿布の上に被せ、プレスしながら165℃設定で90秒間の乾燥を行った。
【0122】
<布地への印刷方法>
上記処理液1~11を塗布した綿布にインクジェット印刷機(株式会社リコー製、Ri1000)を用いて白インク(株式会社リコー製、P3590)のベタ画像を印刷した。白インクの付与量が21.5g/mで白インク印刷後、ヒートプレス機(ユーロポート株式会社製、品番:CHP-2938)にセットし、離型紙(株式会社UACJ製箔、品名:クッキングシート)を綿布の上に被せ、プレスしながら165℃設定で90秒間の乾燥を行った。
【0123】
<画像評価方法>
分光測色計(X-rite社製、品名:eXact スタンダード)を用いて、布地(品名:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XL、カラー:ブラック)の黒濃度:K、及び各印刷サンプルの白ベタ画像の黒濃度:Kを測定し、下記式から隠蔽性Iを算出した。
隠蔽性I=(K-Ki)/K
ただし、Kは布地(085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLカラー:ブラック)の黒濃度、Kは各白ベタ画像の黒濃度を表す。
【0124】
溶剤濃度をX軸にとり、隠蔽性IをY軸にとってグラフを作製し、図5に示した。
下記の表6に記載の隠蔽性ランク1に基づき、比較例1、比較例2、及び実施例1の隠蔽性ランク1を評価した。結果を表7に示した。なお、隠蔽性ランク1は、比較例1(処理液1)における隠蔽性を基準とし、その基準に対する対象サンプル隠蔽性の差を示している。
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
表7及び図5の結果から、膨潤平衡値ランクがAである3-メトキシ-3-メチルブタノール(MMB)を含有する実施例1の処理液は、比較例1の有機溶剤を含有しない処理液1と比較して、3-メトキシ-3-メチルブタノールを一定濃度(5質量%~20質量%)含有する処理液(処理液8、処理液9、処理液10、及び処理液11)において、より高い隠蔽性を示した。処理液10(MMB:15質量%)において隠蔽性Iはピークを持った。
一方、膨潤平衡値ランクがCである1.2-プロパンジオールを含有する比較例2の処理液は、比較例1の有機溶剤を含有しない処理液1と比較して、低い隠蔽性を示した。1.2-プロパンジオールの含有濃度が高いほど隠蔽性Iは低下した。
含有する有機溶剤が易揮発性溶剤(目安として25℃蒸気圧0.5mmHg以上)であって、処理液が形成する樹脂層に残留しにくい場合において、有機溶剤の樹脂への膨潤度が低い(ランクC)と有機溶剤を含有しない方が好ましい。一方、有機溶剤の樹脂への膨潤度が高い(ランクA)の溶剤であれば一定量を含有すると、当該の有機溶剤(ランクA)の溶剤を含有しない場合より隠蔽性を高くすることができる。溶剤の適量は膨潤度Qの強さと蒸発しやすさ(蒸気圧)に依存すると考えられる。
3-メトキシ-3-メチルブタノールとエチレン酢酸ビニルの組み合わせにおいて、適量は樹脂固形分/造膜助剤比で3%/15%であった。
【0128】
(処理液の比較製造例7)
-処理液12の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・ジプロピレングリコール・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0129】
(処理液の製造例6)
-処理液13の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・2-エチル―1.3-ヘキサンジオール・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0130】
(処理液の製造例7)
-処理液14の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・ワイジノール(R)EHP01(プロピレングリコール-モノ-2-エチルヘキサノエート、四日市合成株式会社製)・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0131】
(処理液の製造例8)
-処理液15の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル・・・0.12質量%
ル)・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0132】
(処理液の製造例9)
-処理液16の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0133】
(処理液の製造例10)
-処理液17の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・スマックMP-40(花王株式会社製、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0134】
(処理液の製造例11)
-処理液18の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・Y-PE(四日市合成株式会社製)(2-フェノキシエタノール:85質量部、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール:15質量部)・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0135】
(処理液の製造例12)
-処理液19の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・YG-15(四日市合成株式会社製)(2-フェノキシエタノール、2-(2-フェノキシエトキシ)エタノール、ポリエチレングリコールモノフェノキシエーテル)・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0136】
(処理液の製造例13)
-処理液20の調製-
・凝集剤:塩化カルシウム・・・6質量%
・ノニオン性樹脂粒子:エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂粒子(スミカフレックス465HQ、住友化学工業株式会社製)・・・3質量%
・CS-12〔JNC株式会社製〕(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)・・・0.12質量%
・純水・・・残量(合計:100質量%)
【0137】
【表8】
【0138】
(比較例1、比較例3及び実施例2~9)
<処理液の布地への塗布方法>
上記比較例1(処理液1)と同様にして、上記処理液12~20を綿布(綿100%のTシャツ:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLをA4サイズにカットしたもの)にスプレー塗布、及びプレス乾燥(165℃で90sec)を行った。
【0139】
<布地への印刷方法>
各処理液(処理液12~20)を塗布した綿布にインクジェット印刷機(株式会社リコー製、Ri1000)を用いて白インク(株式会社リコー製、P3590)のベタ画像を印刷し、各印刷サンプルを作製した。白インクの付与量は21.5g/mであった。
【0140】
<画像評価方法>
分光測色計(X-rite社製、品名:eXact スタンダード)を用いて布地(品名:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XL、カラー:ブラック)の黒濃度:K、及び各印刷サンプルの白ベタ画像の黒濃度:Kを測定し、下記数式から隠蔽性Iを算出した。
I=(K-Ki)/K
ただし、Kは布地(085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLカラー:ブラック)の黒濃度、Kは各白ベタ画像の黒濃度を表す。
【0141】
次に、上記の表6に記載の隠蔽性ランク1に基づき、比較例1、3及び実施例2~9の隠蔽性を評価した。結果を表9に示した。なお、隠蔽性ランク1は、比較例1(処理液1)における隠蔽性を基準とし、その基準に対する対象サンプル隠蔽性の差を示している。
【0142】
【表9】
表9の結果から、上記造膜助剤を含有する処理液13~20は、いずれも処理液1及び処理液3(比較例1及び3)よりも隠蔽性が優れていることがわかった。
【0143】
(処理液の比較製造例8~9及び処理液の製造例14~21)
-処理液21~30の調製-
次に、下記の表11に示す処方のノニオン性アクリル樹脂粒子を含有する処理液21~30を作製した。
【0144】
【表11】
【0145】
(比較例4~5及び実施例10~17)
<処理液の布地への塗布方法>
比較例1(処理液1)と同様にして、上記処理液21~30を綿布(綿100%のTシャツ:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLをA4サイズにカットしたもの)にスプレー塗布、及びプレス乾燥(165℃で90sec)を行った。
【0146】
<布地への印刷方法>
上記の方法で作製した各処理液(処理液21~30)を塗布した綿布にインクジェット印刷機(株式会社リコー製、Ri1000)を用いて白インク(株式会社リコー製、P3590)のベタ画像を印刷し、印刷サンプルを作製した。白インクの付与量は21.5g/mであった。
【0147】
<画像評価方法>
作製した印刷サンプルに対し、分光測色計(X-rite社製、品名:eXact スタンダード)を用いて布地(品名:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XL、カラー:ブラック)の黒濃度:K、及び各印刷サンプルの白ベタ画像の黒濃度:Kを測定し、下記数式から隠蔽性Iを算出した。
隠蔽性I=(K-Ki)/K
ただし、Kは布地(085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLカラー:ブラック)の黒濃度、Kは各白ベタ画像の黒濃度を表す。
【0148】
次に、下記の表12に記載の隠蔽性ランク2に基づき、比較例4~5及び実施例10~17の隠蔽性を評価した。結果を表13に示した。なお、隠蔽性ランク2は、比較例4(処理液21)における隠蔽性を基準とし、その基準に対する対象サンプル隠蔽性の差を示している。
【0149】
【表12】
【0150】
【表13】
表13の結果から、上記処理液23~30の造膜助剤を含有する実施例10~17の処理液は、いずれも処理液21及び22(比較例4及び5)よりも隠蔽性が優れていることがわかった。
【0151】
(処理液の比較製造例10~13及び処理液の製造例22~27)
-処理液31~40の調製-
次に、下記の表14に示す処方のノニオン性ウレタン樹脂粒子を含有する処理液31~40を作製した。
【0152】
【表14】
【0153】
(比較例6~9及び実施例18~23)
<処理液の布地への塗布方法>
比較例1(処理液1)と同様にして、上記処理液31~40を綿布(綿100%のTシャツ:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLをA4サイズにカットしたもの)にスプレー塗布、及びプレス乾燥(165℃で90sec)を行った。
【0154】
<布地への印刷方法>
各処理液(処理液31~40)を塗布した綿布にインクジェット印刷機(株式会社リコー製、Ri1000)を用いて白インク(株式会社リコー製、P3590)のベタ画像を印刷し、印刷評価用サンプルを作製した。白インクの付与量は21.5g/mであった。
【0155】
<画像評価方法>
分光測色計(X-rite社製、品名:eXact スタンダード)を用いて布地(品名:085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XL、カラー:ブラック)の黒濃度:K、及び各印刷サンプルの白ベタ画像の黒濃度:Kを測定し、下記数式から隠蔽性Iを算出した。
I=(K-Ki)/K
ただし、Kは布地(085-CVT、トムス株式会社製、サイズ:XLカラー:ブラック)の黒濃度、Kは各白ベタ画像の黒濃度を表す。
【0156】
次に、下記の表15に記載の隠蔽性ランク3に基づき、比較例6~9及び実施例18~23の隠蔽性を評価した。結果を表16に示した。なお、隠蔽性ランク3は、比較例6(処理液31)における隠蔽性を基準とし、その基準に対する対象サンプル隠蔽性の差を示している。
【0157】
【表15】
【0158】
【表16】
【0159】
表16の結果から、処理液34~36及び38~40のいずれかの造膜助剤を含有する実施例18~23の処理液は、処理液31~33及び37(比較例6~8及び9)のいずれよりも隠蔽性が同等又は優れていることがわかった。
【0160】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与工程を含むことを特徴とする印刷方法である。
<2> 前記ノニオン性樹脂粒子からなる樹脂片を前記造膜助剤に浸漬したときの膨潤度が150%以上である、前記<1>に記載の印刷方法である。
<3> 前記ノニオン性樹脂粒子がビニル樹脂粒子及びアクリル樹脂粒子のいずれかであり、
前記造膜助剤がアルコール類、グリコール類、及びグリコールエーテル類から選択される少なくとも1種の有機溶剤である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<4> 前記ノニオン性樹脂粒子がビニル樹脂粒子及びアクリル樹脂粒子のいずれかであり、
前記造膜助剤がイソブチルアルデヒド、及びポリフェニルグリコール類から選択される少なくとも1種の有機溶剤である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の印刷方法である。
<5> 前記ノニオン性樹脂粒子がウレタン樹脂粒子であり、
前記造膜助剤がアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及びアミド類から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<6> 前記アルコール類が3-メトキシ-3-メチルブタノールである、前記<3>及び<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<7> 前記グリコールエーテル類がポリエーテルである、前記<3>及び<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<8> 前記グリコールエーテル類が脂肪族系エステルアルコールである、前記<3>及び<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<9> 前記ノニオン性樹脂粒子がポリ酢酸ビニル樹脂粒子である、前記<1>から<8>のいずれかに記載の印刷方法である。
<10> 前記処理液を付与した部位に、樹脂粒子及び色材を含有するインクを付与するインク付与工程を含む、前記<1>から<9>のいずれかに記載の印刷方法である。
<11> 布地と、該布地上に、凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液を付与する処理液付与手段と、を有することを特徴とする印刷装置である。
<12> 前記処理液を付与した部位に、樹脂粒子及び色材を含有するインクを付与するインク付与手段を有する、前記<11>に記載の印刷装置である。
<13> 凝集剤、ノニオン性樹脂粒子、該ノニオン性樹脂粒子の造膜助剤、及び水を含有する処理液と、
樹脂粒子及び色材を含有するインクと、を有する処理液とインクのセットである。
【0161】
前記<1>から<10>のいずれかに記載の印刷方法、前記<11>から<12>のいずれかに記載の印刷装置、及び前記<13>に記載の処理液とインクのセットによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0162】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0163】
【特許文献1】国際公開第2017/154683号公報
図1
図2
図3
図4
図5