(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084854
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】液体回収装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20230613BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199211
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】谷奥 雄一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA27
2C056FA13
2C056HA46
2C056JC10
2C056JC13
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】作業者が吸収体に湿潤剤を含ませるメンテナンス作業を行わなくても、吸収体の吸収性を良好に維持する。
【解決手段】液体回収装置30は、液体吐出部21から吐出された液体を回収する回収容器31と、回収容器31に回収された液体を吸収する吸収体32と、液体吐出部21から吐出された液体の溶媒成分を吸収体32へ供給する溶媒供給部33を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出部から吐出された液体を回収する回収容器と、
前記回収容器に回収された前記液体を吸収する吸収体と、
前記液体吐出部から吐出された液体の溶媒成分を前記吸収体へ供給する溶媒供給部を備えることを特徴とする液体回収装置。
【請求項2】
前記溶媒供給部は、前記液体吐出部から吐出された液体が付着するシートを加熱して、前記液体の溶媒成分を気化して回収し、回収された前記溶媒成分を液化して前記吸収体へ供給する請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項3】
前記溶媒供給部は、前記液体が付着するシートを加熱する加熱部と、気化された前記溶媒成分を回収する溶媒回収部と、回収された前記溶媒成分を液化する凝縮部を有する請求項2に記載の液体回収装置。
【請求項4】
前記溶媒供給部は、前記液体吐出部から吐出された液体が付着するシートを加熱して、前記液体の溶媒成分を気化し、気化された前記溶媒成分を前記吸収体へ供給する請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項5】
前記溶媒供給部は、前記液体が付着するシートを加熱する加熱部を有し、
前記加熱部は、前記回収容器の下方に配置され、
前記回収容器は、前記加熱部の加熱によって気化された前記溶媒成分を通過させて前記吸収体へ接触させるための通気孔を有する請求項4に記載の液体回収装置。
【請求項6】
前記溶媒供給部は、前記回収容器とは別の回収機構によって回収された液体を加熱して前記液体の溶媒成分を気化し、気化された前記溶媒成分を液化して前記吸収体へ供給する請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項7】
前記溶媒供給部は、前記回収機構によって回収された液体を加熱する加熱部と、前記加熱部の加熱によって気化された溶媒成分を回収する溶媒回収部と、回収された前記溶媒成分を液化する凝縮部を有する請求項6に記載の液体回収装置。
【請求項8】
液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部から吐出された液体を回収する請求項1から7のいずれか1項に記載の液体回収装置を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
インクジェット式の画像形成装置においては、インクが増粘したり固化したりすることによるインクの吐出不良が生じないように、画像形成時とは別に、液体吐出ヘッドから定期的にインクを吐出し、液体吐出ヘッドの性能維持回復を図る動作が行われる。このとき、液体吐出ヘッドから吐出されるインクは、シート上に吐出されないため、液体吐出ヘッドの下方に配置される回収容器によって回収される。
【0004】
また、特許文献1(特開2010-214811号公報)においては、上記のような回収容器内に配置される吸収体を備えるインク回収ユニットの構成が開示されており、この吸収体のインク吸収性を向上させるために、保湿性の高い湿潤剤を吸収体に含ませる技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸収体の吸収性を継続して維持するには、定期的に吸収体に湿潤剤を含ませる必要があり、そのためのメンテナンス作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る液体回収装置は、液体吐出部から吐出された液体を回収する回収容器と、前記回収容器に回収された前記液体を吸収する吸収体と、前記液体吐出部から吐出された液体の溶媒成分を前記吸収体へ供給する溶媒供給部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者が吸収体に湿潤剤を含ませるメンテナンス作業を行わなくても、吸収体の吸収性を良好に維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【
図3】本実施形態に係るヘッドユニットの平面図である。
【
図4】液体吐出ヘッドから吐出されたインクを回収する回収容器の構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る液体回収装置の構成を示す図である。
【
図6】液体回収装置の動作を説明するための図である。
【
図7】液体回収装置の動作を説明するための図である。
【
図8】液体回収装置の動作を説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る液体回収装置の構成を示す図である。
【
図10】液体回収装置の動作を説明するための図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る液体回収装置の構成を示す図である。
【
図12】液体回収装置の動作を説明するための図である。
【
図13】液体回収装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
まず、
図1及び
図2に基づき、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の構成について説明する。
図1は、インクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図、
図2は、インクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成用のシートSを供給するシート供給部1と、シートSに画像を形成する画像形成部2と、シートSを乾燥させる乾燥部3と、画像が形成されたシートSを回収するシート回収部4を備えている。また、本実施形態に係る画像形成装置100は、シート供給部1、画像形成部2、乾燥部3、シート回収部4を制御するための制御部6(
図2参照)を備えている。
【0012】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構12を有している。供給ローラ11は、
図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、供給ローラ11が回転することにより、シートSが繰り出される。張力調整機構12は、シートSを掛け渡して張力を付与する複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、シートSが供給ローラ11から一定の張力で繰り出される。
【0013】
画像形成部2は、液体吐出ユニットであるヘッドユニット13と、搬送されるシートSを支持するシート支持部材としてのプラテン14を有している。プラテン14は、ヘッドユニット13と対向するように配置されており、シート供給部1から供給されたシートSの下面を支持する。ヘッドユニット13は、液体吐出部としての複数の液体吐出ヘッドを有しており、制御部6によって生成された画像データに基づいて各液体吐出ヘッドからシートSにインクが吐出されることにより、シートS上に画像が形成される。ここで、インクは、色材と溶剤、溶剤に分散された結晶性樹脂粒子を含む液体である。また、結晶性樹脂は、所定の融点以上に熱せられると相変化を起こし結晶状態から液体に融解する樹脂である。
【0014】
乾燥部3は、シートS上のインクの乾燥を促進させるためにシートSを加熱する加熱ドラム15を有している。加熱ドラム15は、外周面にシートSが巻きつけられながら回転する円筒状の部材であり、内部にハロゲンヒータなどの加熱源が配置されている。また、シートSを加熱する加熱手段としては、加熱ドラム15などの接触式の加熱手段のほか、シートSに温風を吹き付ける温風発生装置などの非接触式の加熱手段であってもよい。
【0015】
シート回収部4は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ16と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構17を有している。回収ローラ16は、
図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、回収ローラ16が回転することにより、シートSがロール状に巻き取られて回収される。張力調整機構17は、シート供給部1の張力調整機構12と同じように、複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、回収ローラ16によってシートSが一定の張力で巻き取られる。
【0016】
制御部6は、PC(Personal Computer)などの情報処理装置によって構成される。制御部6は、シートSに形成される画像データを生成するほか、シート供給部1、画像形成部2、乾燥部3、シート回収部4の各種動作を制御する。例えば、制御部6は、供給ローラ11、回収ローラ16、加熱ドラム15のそれぞれの回転速度、及び画像形成装置100内においてシートSを搬送する複数の搬送ローラの回転速度を制御したり、加熱ドラム15を加熱する加熱源の温度を制御したりする。
【0017】
図3は、本実施形態に係るヘッドユニットの平面図である。
【0018】
図3に示されるように、ヘッドユニット13は、ベース部20と、ベース部20に設けられた複数の液体吐出ヘッド21を有している。複数の液体吐出ヘッド21は、シートSの搬送方向Aとは交差するシート幅方向(
図3における横方向)へ配列された多数のノズルから成るノズル列22を有している。
【0019】
このように構成されたヘッドユニット13へシートSが搬送されると、画像情報に基づく駆動信号によって各液体吐出ヘッド21の吐出駆動が制御され、各液体吐出ヘッド21からシートSへインクが吐出される。これにより、シートSに対して画像情報に応じた画像が形成される。
【0020】
ところで、
図3に示される最大画像形成領域H(各液体吐出ヘッド21によってインクを吐出可能な最大範囲)よりも狭い幅のシートSが搬送される場合、シートSに画像を形成するには、シートSが通過する領域に配置されるノズルからインクを吐出しさえすればよい。しかしながら、シートSが通過しない領域において、ノズルからインクの吐出が長時間行われないと、インクの溶媒成分が蒸発してインクが増粘したり固化したりすることにより、インクを良好に吐出できなくなる虞がある。そのため、シートSが通過しない領域に配置されるノズルにおいても、定期的にインクを吐出し、インクの増粘及び固化を抑制する液体吐出ヘッドの性能維持回復が行われる。
【0021】
このような液体吐出ヘッド21の性能維持回復動作が行われる際、シートSが通過しない領域に配置されるノズルから吐出されるインクは、シートS上に吐出されないため、
図4に示されるように、液体吐出ヘッド21の下方に、吐出されたインクを回収する回収容器31が設けられている。また、吐出されたインクが回収容器31内で跳ねて周囲を汚さないようにするために、回収容器31内には、発泡ウレタンなどから成る吸収体32が収容されている。なお、吸収体32として、発泡ウレタンのほか、不織布などを用いてもよい。
【0022】
ここで、吸収体がインクを効果的に吸収するには、吸収体に湿潤剤を含ませて吸収性を向上させることが好ましい。しかしながら、吸収性を維持するには、定期的に吸収体に湿潤剤を含ませる必要があり、そのために、ユーザ又はサービスマンなどの作業者によるメンテナンス作業が必要となるため、作業者の負担が増加する。本発明においては、斯かる事情に鑑み、作業者によるメンテナンス作業を行わなくても、吸収体の吸収性を良好に維持できる液体回収装置を提案する。以下、本発明に係る液体回収装置の実施形態について説明する。
【0023】
図5は、本発明の第1実施形態に係る液体回収装置の構成を示す図である。
【0024】
図5に示されるように、本実施形態に係る液体回収装置30は、回収容器31と、吸収体32のほか、インクに含まれる溶媒成分である水分を回収して吸収体32へ供給する溶媒供給部33を備えている。具体的に、溶媒供給部33は、シートSを加熱する加熱部(乾燥部)34と、加熱されたシートS上のインクから生じる水蒸気(水分)を回収する溶媒回収部35と、回収された水蒸気を液化する凝縮部36を有している。
【0025】
加熱部34は、シートSを加熱するヒータなどの加熱源を有している。例えば、加熱部34は、上記のようなシートSを巻き付けて加熱する加熱ドラムであってもよいし、シートSに温風を吹き付けて加熱する温風発生装置などであってもよい。
【0026】
溶媒回収部35は、水蒸気を回収するダクトなどの回収流路37と、回収流路37内を負圧にして水蒸気を吸引する負圧発生装置としての吸引ファン38を有している。吸引ファン38は、水蒸気を吸引して回収する溶媒回収手段として機能するほか、回収した水蒸気を凝縮部36へ送る溶媒移送手段としても機能する。また、吸引ファン38に代えて、コンプレッサなどを用いてもよい。回収流路37の吸引側の開口部37aは、水蒸気を回収しやすいように、加熱部34を通過したシートSの上方に配置されている。
【0027】
凝縮部36は、回収された水蒸気を冷却して水に戻す熱交換器を有している。熱交換器としては、フィンなどを介して自然に放熱する自然空冷式のものであってもよいし、送風ファンから送風されるエアをフィンにあてて冷却する強制冷却方式のものであってもよい。凝縮部36は、パイプなどの流路を介して、回収流路37、吸引ファン38及び回収容器31と連結されている。
【0028】
次に、本実施形態に係る液体回収装置30の動作について説明する。
【0029】
図6に示されるように、まず、画像形成部2において、液体吐出ヘッド21からシートSにインクが吐出され画像が形成される。そして、
図7に示されるように、シートSが搬送され、シートS上のインク付着部(画像部)Bが加熱部34へ送られると、加熱部34においてシートSが加熱される。これにより、シートS上のインクに含まれる水分が気化して水蒸気200となる。そして、インクから発生する水蒸気200が、吸引ファン38によって回収流路37内に吸引されて回収される。そして、回収された水蒸気200は、凝縮部36へ送られる。その後、凝縮部36において水蒸気が冷却されることにより液化し、水に戻される。そして、
図8に示されるように、凝縮部36内の水300が回収容器31へ送られ、吸収体32へ供給される。
【0030】
このように、本実施形態に係る液体回収装置30においては、加熱されたシートS上のインクから発生する水蒸気を回収し、回収した水蒸気を液化して吸収体32へ供給するので、作業者が吸収体32へ湿潤剤を供給するメンテナンス作業を行わなくても、吸収体32に水分を供給して吸収体32を湿潤状態に保つことができる。これにより、作業者の負担を軽減しつつ、吸収体32のインク吸収性の向上を図れる。また、本実施形態に係る構成によれば、吸収体32に供給する湿潤剤として、シートSを乾燥させる際にインクから生じる水蒸気を利用するので、吸収体32へ供給する湿潤剤をあらかじめ貯留しておく専用のタンクなどを設置する必要もない。このため、専用のタンクへの湿潤剤の補充作業も不要となり、作業者の負担を軽減できる。
【0031】
続いて、上記第1実施形態とは異なる本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に同じ構成であるので適宜説明を省略する。
【0032】
図9は、本発明の第2実施形態に係る液体回収装置の構成を示す図である。
【0033】
図9に示されるように、第2実施形態においては、吸収体32へ溶媒を供給する溶媒供給部33が、回収容器31の下方に配置された加熱部39を有している。なお、本実施形態において、上記第1実施形態の回収流路37、吸引ファン38、凝縮部36などは設けられていない。加熱部39は、シートSを加熱する加熱源を備えるものであれば、加熱ドラムのような接触式の加熱手段であってもよいし、温風発生装置のような非接触式の加熱手段であってもよい。また、
図9に示されるように、回収容器31の底部には、多数の通気孔31aが設けられている。
【0034】
上記の如く構成された第2実施形態においては、
図10に示されるように、シートSのインク付着部(画像部)Bが加熱部39へ送られると、加熱部39においてシートSが加熱されることにより、シートS上のインクに含まれる水分が気化して水蒸気200となる。そして、水蒸気200は、回収容器31に設けられた通気孔31aを介して吸収体32へ供給される。
【0035】
このように、第2実施形態においては、シートS上のインクから生じる水蒸気が吸収体32に直接供給されるため、作業者が吸収体32へ湿潤剤を供給するメンテナンス作業を行わなくても、吸収体32に水分を供給し、吸収体32を湿潤状態に保つことができる。すなわち、水蒸気が吸収体32に接触すると、水蒸気が冷却されて水に戻されることにより、吸収体32を湿潤状態にすることができる。これにより、作業者が吸収体32へ湿潤剤を供給するメンテナンス作業を行わなくても、吸収体32のインク吸収性を向上させることができ、作業者の負担を軽減できる。また、本実施形態においても、湿潤剤をあらかじめ貯留しておく専用のタンクなどを設置する必要がないので、湿潤剤の補充作業も不要となる。さらに、本実施形態に係る構成によれば、水蒸気を回収する回収流路37及び吸引ファン38のほか、水蒸気を水に戻す凝縮部36も必要ないため、装置の小型化及び低コスト化を図れるようになる。
【0036】
図11は、本発明の第3実施形態に係る液体回収装置の構成を示す図である。
【0037】
図11に示されるように、第3実施形態においては、吸収体32へ溶媒を供給する溶媒供給部33が、回収容器31とは別の回収機構40によって回収されたインクを加熱する加熱部43と、加熱部43によって加熱されたインクから生じる水蒸気を回収する溶媒回収部44と、回収された水蒸気を液化する凝縮部45を有している。
【0038】
ここで、回収容器31とは別の回収機構40は、ヘッドユニット13が画像形成部2(画像形成を行うポジション)とは別のメンテナンスポジションに移動した際に、そのメンテナンスポジションにおいて液体吐出ヘッド21から吐出されるインクを回収する機構である。具体的に、回収機構40は、液体吐出ヘッド21を覆ってインクの乾燥を抑制するキャップ部材41と、キャップ部材41とパイプ又はチューブなどを介して接続される廃液タンク42を有している。
【0039】
加熱部43は、廃液タンク42内に貯留されるインクを加熱するヒータなどの加熱源を有している。
【0040】
溶媒回収部44は、廃液タンク42内で生じた水蒸気を回収する回収流路46と、回収流路46内を負圧にして水蒸気を吸引する負圧発生装置としての吸引ファン47を有している。また、吸引ファン47は、回収された水蒸気を凝縮部45へ送る溶媒移送手段としても機能する。
【0041】
上記の如く構成された第3実施形態においては、
図12に示されるように、ヘッドユニット13が画像形成部2からメンテナンスポジションへ移動すると、液体吐出ヘッド21がキャップ部材41によって覆われる。そして、この状態において、液体吐出ヘッド21からインクが吐出されることにより、液体吐出ヘッド21の性能維持回復動作が行われる。このとき、吐出されたインク400は、廃液タンク42へ送られ、廃液タンク42内に貯留される。
【0042】
そして、
図13に示されるように、加熱部43によって廃液タンク42内のインクが加熱されることにより、インクに含まれる水分が気化して水蒸気200となる。発生した水蒸気200は、吸引ファン47によって回収流路37内に吸引されて回収される。そして、回収された水蒸気200は、凝縮部45へ送られる。その後、凝縮部45において水蒸気が冷却されることにより液化し、水に戻される。そして、凝縮部45内の水300が回収容器31へ送られ、吸収体32へ供給される。
【0043】
このように、第3実施形態においては、廃液タンク42内のインクを加熱して発生する水蒸気を回収し、回収した水蒸気を液化して吸収体32へ供給するので、作業者が吸収体32へ湿潤剤を供給するメンテナンス作業を行わなくても、吸収体32に水分を供給し、吸収体32を湿潤状態に保つことができる。また、本実施形態においては、吸収体32に供給する湿潤剤として、廃液タンク42内のインクから生じる水蒸気を利用するため、吸収体32へ供給する湿潤剤をあらかじめ貯留しておく専用のタンクなどを設置する必要が無く、このようなタンクへの湿潤剤の補充作業も不要となる。
【0044】
以上のように、本発明に係る各実施形態によれば、作業者が吸収体に湿潤剤を含ませるメンテナンス作業を行わなくても、吸収体の吸収性を良好に維持できるので、作業者の負担が軽減され、取り扱い性に優れる画像形成装置を提供できるようになる。
【0045】
上記各実施形態においては、吸収体に供給する湿潤剤として、インクに含まれる水分を用いた場合を例に説明したが、湿潤剤は、インクに含まれる水分のほか、画像形成前のシートに付与される前処理液に含まれる溶媒成分、又は、画像形成後のシートに付与される後処理液に含まれる溶媒成分であってもよい。
【0046】
従って、本発明は、
図14に示されるような、シート供給部1から供給されるシートSに対して前処理液を付与する前処理液付与部7と、シートSに付与された前処理液を乾燥させる前処理液乾燥部8と、画像形成部2を通過したシートSに後処理液を付与する後処理液付与部9と、シートSに付与された後処理液を乾燥させる後処理液乾燥部10を備える画像形成装置100においても適用可能である。すなわち、本発明に係る液体回収装置は、前処理液乾燥部8において気化した前処理液の溶媒成分、又は、後処理液乾燥部10において気化した後処理液の溶媒成分を回収し、その溶媒成分を回収容器内の吸収体へ供給するものであってもよい。また、吸収体へ供給される溶媒成分(湿潤剤)は、水分(水)以外の溶媒成分であってもよい。
【0047】
また、本発明は、
図3に示されるような、液体吐出ヘッド21がシートSに対して移動せずにインクを吐出する、いわゆるライン型の液体吐出装置に適用される場合に限らない。本発明は、このようなライン型の液体吐出装置のほか、
図15に示されるような、キャリッジ23をシート搬送方向Aに対して交差する方向E(シート幅方向)へ移動させ、そのキャリッジ23に搭載れる液体吐出ヘッド21からインクをシートSへ吐出する、いわゆるシリアル型の液体吐出装置にも適用可能である。
【0048】
また、本発明において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出又は噴射する機能部品を意味する。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水又は有機溶媒などの溶媒、染料又は顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸又はたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子又は発光素子の構成要素、あるいは電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0049】
液体を吐出するエネルギー発生源としては、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0050】
また、本発明において、「液体吐出ユニット」は、上記実施形態のような複数の液体吐出ヘッドを備えるヘッドユニットほか、1つの液体吐出ヘッドを備えるヘッドユニットであってもよい。「液体吐出ユニット」には、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」には、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0051】
「液体吐出ユニット」としては、例えば、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているもののほか、液体吐出ヘッドとヘッドタンクがチューブなどで互いに接続されて一体化されているものがある。これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間に、フィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0052】
また、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものであってもよい。
【0053】
また、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドが走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持されて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものであってもよいし、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものでもよい。ここでいう主走査移動機構には、ガイド部材単体も含まれる。
【0054】
また、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものであってもよい。
【0055】
また、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンクもしくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものであってもよい。ここでいう、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものである。
【0056】
また、本発明において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置を意味する。「液体吐出装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中又は液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0057】
「液体吐出装置」としては、例えば、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0058】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像を可視化するものに限らず、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0059】
また、「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むものであってもよい。
【0060】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能な搬送対象物であって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などのシート、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。また、液体が付着するシートは、シート供給部から連続して供給されるロール紙などの長尺シートのほか、カット紙などのあらかじめ所定のサイズにカットされたシートであってもよい。
【0061】
また、「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0062】
また、「液体吐出装置」には、液体吐出ヘッドが移動しながら液体を吐出するもの、液体吐出ヘッドが移動せずに液体を吐出するものがあるが、いずれのものであってもよい、
【0063】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【符号の説明】
【0064】
21 液体吐出ヘッド(液体吐出部)
30 液体回収装置
31 回収容器
31a 通気孔
32 吸収体
33 溶媒供給部
34 加熱部
35 溶媒回収部
36 凝縮部
39 加熱部
40 回収機構
43 加熱部
44 溶媒回収部
45 凝縮部
100 画像形成装置(液体吐出装置)
S シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】