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特開2023-851透明シート、合わせガラス、合わせガラスの製造方法、及びガラス積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000851
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】透明シート、合わせガラス、合わせガラスの製造方法、及びガラス積層板
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221222BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221222BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C03C27/12 D
C03C27/12 Z
B32B7/023
B32B17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101910
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】室伏 英伸
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AG00E
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100DD11D
4F100DD31D
4F100JK14
4F100JM10A
4F100JN01
4F100JN18B
4F100JN18C
4G061AA03
4G061BA02
4G061CB03
4G061CD03
4G061DA23
(57)【要約】
【課題】キセロゲル層と樹脂層を含む透明シートの透視性を向上する、技術を提供する。
【解決手段】透明シートは、互いに反対向きの第1主面と第2主面を有するキセロゲル層と、前記キセロゲル層の前記第1主面に接し、前記キセロゲル層よりも高い屈折率を有する第1樹脂層と、を備える。前記キセロゲル層と前記第1樹脂層の界面の十点平均粗さRzが、0μm~0.20μmである。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対向きの第1主面と第2主面を有するキセロゲル層と、
前記キセロゲル層の前記第1主面に接し、前記キセロゲル層よりも高い屈折率を有する第1樹脂層と、
を備え、
前記キセロゲル層と前記第1樹脂層の界面の十点平均粗さRzが、0μm~0.20μmである、透明シート。
【請求項2】
0%~20%のヘイズを有する、請求項1に記載の透明シート。
【請求項3】
前記キセロゲル層を厚み方向に挟んで圧縮した状態で互いに貼合されている第1貼合層及び第2貼合層を備え、
前記第1樹脂層は、前記キセロゲル層と前記第1貼合層の間に配置され、前記キセロゲル層及び前記第1貼合層に比べて高い圧縮弾性率を有する、請求項1又は2に記載の透明シート。
【請求項4】
前記キセロゲル層の厚み方向における圧縮率は、0.5%~20%である、請求項3に記載の透明シート。
【請求項5】
前記第1貼合層、及び前記第2貼合層は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を含む、請求項3又は4に記載の透明シート。
【請求項6】
前記キセロゲル層の前記第2主面に接し、前記キセロゲル層よりも高い屈折率を有する第2樹脂層を備え、
前記キセロゲル層と前記第2樹脂層の界面の十点平均粗さRzが、0μm~0.20μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の透明シート。
【請求項7】
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の間に、前記キセロゲル層の周縁全体を取り囲む樹脂スペーサを備える、請求項6に記載の透明シート。
【請求項8】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される中間シートと、
を備え、
前記中間シートは、請求項1~7のいずれか1項に記載の透明シートである、合わせガラス。
【請求項9】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される中間シートと、
を備え、
前記中間シートは、請求項6又は7に記載の透明シートであり、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、0μmよりも大きく0.10μm以下の厚みを有する接着層である、合わせガラス。
【請求項10】
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の少なくとも1つが、無機ガラスを含む、請求項8又は9に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の1つが、有機ガラスを含む、請求項10に記載の合わせガラス。
【請求項12】
請求項7に記載の透明シートを用いて、第1ガラス板と第2ガラス板を熱圧着することを有し、
前記樹脂スペーサとして、複数の切れ込みを有する櫛歯状の熱可塑性樹脂を準備することを有する、合わせガラスの製造方法。
【請求項13】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に積層される請求項1~7のいずれか1項に記載の透明シートと、
備える、ガラス積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明シート、合わせガラス、合わせガラスの製造方法、及びガラス積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の断熱性シートは、エアロゲルを含むエアロゲル層と、エアロゲル層の少なくとも一方の面に積層された熱可塑性樹脂を含む樹脂層との積層体からなる。この断熱性シートは、例えば合わせガラス用中間膜として用いられる。合わせガラス用中間膜を一対のガラス板の間に介在させることで、合わせガラスが得られる。
【0003】
特許文献2に記載の複層ガラスは、2枚の板ガラスと、2枚の板ガラスに挟持された平板状の透明多孔体、及び窓枠を備える。透明多孔体は、メチル化シリカキセロゲルを使用する。窓枠は、2枚の板ガラスの間隔を固定することで、透明多孔体を両側から締め付ける。
【0004】
特許文献3に記載の断熱用透明多孔体は、エアロゲルと、エアロゲルの表面の全部又は一部に透明樹脂による保護被膜と、を備える。保護被膜は、熱軟化性樹脂であるエチレン/酢酸ビニル共重合体に低密度ポリエチレンが積層されたフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/155551号
【特許文献2】特開2009-286685号公報
【特許文献3】特開平10-324585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、単独で透視性の良いキセロゲル層と、単独で透視性の良い樹脂層とを積層し、透明シートを試作した。樹脂層は、加熱によって軟化した熱可塑性樹脂を、キセロゲル層の表面に密着させることで形成した。その結果、透視性の悪い透明シートが得られた。なお、透視性の良否は、透過像が明瞭に見えるか否かで判断した。
【0007】
本願発明者がキセロゲル層の表面を調べたところ、その表面には凹凸が存在していた。凹凸は、キセロゲル層を製造する過程で生じ、主にゲル化の過程で生じた。凹凸が生じる原因としては、ひび割れ、うねり、又はシワが考えられる。キセロゲル層は、単独で用いられる場合、空気と接する。キセロゲル層と空気の屈折率差は0.1以下であり、キセロゲル層と空気の界面に存在する凹凸は透過光を散乱しない。それゆえ、キセロゲル層は、単独では透視性が良かった。
【0008】
樹脂層は、加熱によって軟化した状態で、キセロゲル層の表面に密着される。それゆえ、樹脂層にも、キセロゲル層の表面の凹凸が転写される。その結果、キセロゲル層と樹脂層の界面には凹凸が存在する。キセロゲル層と樹脂層の屈折率差は0.2以上であり、キセロゲル層と樹脂層の界面に存在する凹凸が透過光を散乱してしまう。それゆえ、透明シートの透視性が悪く、透明シートは白濁して見えてしまった。
【0009】
本発明の一態様は、キセロゲル層と樹脂層を含む透明シートの透視性を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕本発明の一態様に係る透明シートは、互いに反対向きの第1主面と第2主面を有するキセロゲル層と、前記キセロゲル層の前記第1主面に接し、前記キセロゲル層よりも高い屈折率を有する第1樹脂層と、を備える。前記キセロゲル層と前記第1樹脂層の界面の十点平均粗さRzが、0μm~0.20μmである。
【0011】
〔2〕上記〔1〕に記載の透明シートは、0%~20%のヘイズを有する。
【0012】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の透明シートは、前記キセロゲル層を厚み方向に挟んで圧縮した状態で互いに貼合されている第1貼合層及び第2貼合層を備える。前記第1樹脂層は、前記キセロゲル層と前記第1貼合層の間に配置され、前記キセロゲル層及び前記第1貼合層に比べて高い圧縮弾性率を有する。
【0013】
〔4〕上記〔3〕に記載の透明シートであって、前記キセロゲル層の厚み方向における圧縮率は、0.5%~20%である。
【0014】
〔5〕上記〔3〕又は〔4〕に記載の透明シートであって、前記第1貼合層、及び前記第2貼合層は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を含む。
【0015】
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の透明シートは、前記キセロゲル層の前記第2主面に接し、前記キセロゲル層よりも高い屈折率を有する第2樹脂層を備える。前記キセロゲル層と前記第2樹脂層の界面の十点平均粗さRzが、0μm~0.20μmである。
【0016】
〔7〕上記〔6〕に記載の透明シートは、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の間に、前記キセロゲル層の周縁全体を取り囲む樹脂スペーサを備える。
【0017】
〔8〕本発明の一態様に係る合わせガラスは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される中間シートと、を備える。前記中間シートは、上記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の透明シートである。
【0018】
〔9〕本発明の別の一態様に係る合わせガラスは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される中間シートと、を備える。前記中間シートは、上記〔6〕又は〔7〕に記載の透明シートである。前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、0μmよりも大きく0.10μm以下の厚みを有する接着層である。
【0019】
〔10〕上記〔8〕又は〔9〕に記載の合わせガラスであって、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の少なくとも1つが、無機ガラスを含む。
【0020】
〔11〕上記〔10〕に記載の合わせガラスであって、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の1つが、有機ガラスを含む。
【0021】
〔12〕本発明の一態様に係る合わせガラスの製造方法は、上記〔7〕に記載の透明シートを用いて、第1ガラス板と第2ガラス板を熱圧着することを有し、前記樹脂スペーサとして、複数の切れ込みを有する櫛歯状の熱可塑性樹脂を準備することを有する。
【0022】
〔13〕本発明の一態様に係るガラス積層板は、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に積層される上記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の透明シートと、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、キセロゲル層と樹脂層の界面の凹凸を低減することで、透明シートの透視性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、参考形態に係るキセロゲル層と空気の界面を透過する透過光を示す断面図である。
図2図2は、参考形態に係るキセロゲル層と樹脂層の界面を透過する透過光を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る透明シートに用いられるキセロゲル層の製造方法を示すフローチャートである。
図4図4は、図3のステップS2の第1例を示す断面図である。
図5図5は、図3のステップS2の第2例を示す断面図である。
図6図6は、図3のステップS2の第3例を示す断面図である。
図7図7は、図3のステップS2の第4例を示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係る透明シートを示す断面図である。
図9図9は、図8に示す透明シートの変形例を示す断面図である。
図10図10は、図9に示す透明シートを用いた合わせガラスの一例を示す断面図である。
図11図11は、図10に示す透明シートの変形例を示す断面図である。
図12図12は、熱圧着前の樹脂スペーサの一例を示す平面図である。
図13図13は、第2実施形態に係る透明シートの製造に用いられる積層体と真空バックの一例を示す断面図である。
図14図14は、図13に示す真空バックの内部を真空引きした状態の一例を示す断面図である。
図15図15は、第2実施形態に係る透明シートを示す断面図である。
図16図16は、第2実施形態に係る透明シートの製造に用いられる積層体と一対のニップローラの一例を示す断面図である。
図17図17は、第3実施形態に係る合わせガラスの熱圧着前の状態を示す断面図である。
図18図18は、第3実施形態に係る合わせガラスの熱圧着後の状態を示す断面図である。
図19図19は、実施例の欄に記載のキセロゲル層の第1領域を撮像したSEM写真である。
図20図20は、実施例の欄に記載のキセロゲル層の第3領域を撮像したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、本明細書及び特許請求の範囲における用語について説明する。「ゲル」とは、「湿潤ゲル」と「キセロゲル」との両方を含む。
【0026】
「湿潤ゲル」とは、三次元網目が膨潤剤によって膨潤したゲルを意味する。膨潤剤が水であるヒドロゲル、膨潤剤がアルコールであるアルコゲル、膨潤剤が有機溶媒であるオルガノゲルを包含する。
【0027】
「キセロゲル」とは、「国際純正応用化学連合(IUPAC)無機化学部会及び高分子部会高分子用語法小委員会」の「ゾル,ゲル,網目,及び無機有機複合材料の構造とプロセスに関する術語の定義(IUPAC勧告2007)」によれば「ゲルから膨潤剤を除去して形成された開放網目からなるゲル。」を意味する。超臨界乾燥によって膨潤剤を除去したものをエアロゲル、通常の蒸発乾燥によって膨潤剤を除去したものをキセロゲル、凍結乾燥によって膨潤剤を除去したものをクライオゲルとする分類法もあるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、これらを総称してキセロゲルと称する。
【0028】
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0030】
先ず、図1及び図2を参照して、本発明の課題について説明する。本願発明者は、図2に示すように、単独で透視性の良いキセロゲル層102と、単独で透視性の良い樹脂層103とを積層し、透明シート101を試作した。樹脂層103は、加熱によって軟化した熱可塑性樹脂を、キセロゲル層102の表面に密着させることで形成した。その結果、透視性の悪い透明シート101が得られた。なお、透視性の良否は、透過像が明瞭に見えるか否かで判断した。
【0031】
本願発明者がキセロゲル層102の表面を調べたところ、その表面には図1に誇張して示すように凹凸が存在していた。凹凸は、キセロゲル層102を製造する過程で生じ、主にゲル化の過程で生じた。凹凸が生じる原因としては、ひび割れ、うねり、又はシワが考えられる。キセロゲル層102は、単独で用いられる場合、空気と接する。キセロゲル層102と空気の屈折率差は0.1以下であり、キセロゲル層102と空気の界面に存在する凹凸は透過光を散乱しない。それゆえ、キセロゲル層102は、単独では透視性が良かった。
【0032】
樹脂層103は、加熱によって軟化した状態で、図2に示すように、キセロゲル層102の表面に密着される。それゆえ、樹脂層103にも、キセロゲル層102の表面の凹凸が転写される。その結果、キセロゲル層102と樹脂層103の界面には凹凸が存在する。キセロゲル層102と樹脂層103の屈折率差は0.2以上であり、キセロゲル層102と樹脂層103の界面に存在する凹凸が透過光を散乱してしまう。それゆえ、透明シート101の透視性が悪く、透明シート101は白濁して見えてしまった。
【0033】
そこで、本願発明者は、(1)キセロゲル層の製造方法を改良し、その製造過程で生じる凹凸を小さくすることと、(2)キセロゲル層の製造後にキセロゲル層の表面の凸部を潰し、その表面を平らにすることと、を検討した。詳しくは後述するが、上記(1)と(2)のいずれによっても、透明シートの透視性を改善できた。
【0034】
次に、図3を参照して、第1実施形態に係るキセロゲル層の製造方法について説明する。キセロゲル層の製造方法は、例えば、原料液の調液(ステップS1)と、ゲル化(ステップS2)と、溶媒置換(ステップS3)と、乾燥(ステップS4)と、を有する。
【0035】
なお、キセロゲル層の製造方法は図3に示す処理を全て含まなくてもよく、例えば原料液の溶媒が乾燥(ステップS4)に適したものである場合、溶媒置換(ステップS3)が実施されなくてもよい。また、キセロゲル層の製造方法は、図3に示す処理とは別の処理を含んでもよい。
【0036】
ステップS1では、原料液を調製する。原料液は、キセロゲルの種類に応じて選択される。キセロゲルの種類は、例えば(1)ポリシロキサンキセロゲルであるが、(2)ポリマーキセロゲル、及び(3)セルロースキセロゲルなどの多糖類キセロゲルから選択されてもよい。
【0037】
原料液は、例えばゲルの原料(以下、「ゲル原料」とも呼ぶ。)と、ゲル原料を溶かす溶媒とを含む。ゲル原料は、最終的に得られるキセロゲルの種類に応じて適宜選択される。溶媒は、例えば水又は有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等)、非プロトン性極性有機溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ケトン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等)、又は炭化水素(n-ヘキサン、ヘプタン等)等が挙げられる。複数の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
キセロゲルが(1)ポリシロキサンキセロゲルの場合、ゲル原料としては、例えば(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものが挙げられる。(1B)触媒は、ゲル化を均一に促進するためのものである。ゲル原料は、(1C)界面活性剤を更に含んでもよい。
【0039】
(1A)シラン化合物としては、アルコキシシラン、6員環含有骨格と加水分解性シリル基とを有する6員環含有シラン化合物、有機ポリマー骨格と加水分解性シリル基とを有するシリル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0040】
アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、モノアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等)、トリメトキシフェニルシラン、アルキレン基の両末端にアルコキシシリル基を有する化合物(1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン等)、ペルフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン、ペルフルオロポリエーテルメチルジエトキシシラン等)、ペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等)、アリル基を有するアルコキシシラン(アリルトリメトキシシラン、アリルジメトキシメチルシラン、アリルジエトキシメチルシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、メタクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)等、又は上記のアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。複数の上記材料を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
6員環含有シラン化合物における6員環含有骨格は、例えば、イソシアヌル環、トリアジン環、又はベンゼン環などからなる6員環を有する有機骨格である。
【0042】
シリル基含有ポリマーにおける有機ポリマー骨格は、例えば、ポリエチレン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、又はポリカーボネート鎖などからなる鎖を有する有機骨格である。
【0043】
(1B)触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられ、それらの水溶液であってもよい。塩基触媒としては、例えば、アミン(トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等)、尿素、アンモニア、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等が挙げられる。酸触媒としては、例えば、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、又は有機酸(ギ酸、シュウ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)が挙げられる。
【0044】
(1C)界面活性剤としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、プルロニック(登録商標)F127及びPE10500(BASF社商品名)、又はEH-208(日油社商品名)などが挙げられる。
【0045】
キセロゲルが(2)ポリマーキセロゲルの場合、ゲル原料としては、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂等が挙げられる。
【0046】
熱可塑性樹脂としては、加熱すると溶媒に溶解し、冷却するとモノリス(多孔体)を形成できるものが挙げられ、具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレート、又はポリスチレン等が挙げられる。
【0047】
硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と光重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と熱重合開始剤とを含むものなどの他に、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの付加縮合物、又はメラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合物等が挙げられる。
【0048】
キセロゲルが(3)多糖類キセロゲルの場合、ゲル原料としては、(3A)多糖類ナノファイバーと(3B)酸とを含むものが挙げられる。多糖類としては、セルロースの他に、キチン、キトサン、又はジェランガムなども挙げられる。
【0049】
(3A)多糖類ナノファイバーとしては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)酸化セルロースナノファイバー等が挙げられる。(3A)多糖類ナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーの他に、キチンナノファイバー、又はキトサンナノファイバーなども挙げられる。
【0050】
(3B)酸としては、前記無機酸又は前記有機酸が挙げられる。酸の代わりに、塩基も使用可能である。
【0051】
ステップS2では、原料液を容器の内部に注入し、原料液を含む原料液層を作製し、作製した原料液層を容器の内部でゲル化する。ゲル化によって、原料液の全体で架橋が進み、高分子の三次元骨格構造が形成される。ゲル化は、熟成を含む。ゲル化によって、湿潤ゲル層が得られる。
【0052】
ゲル原料が(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものである場合、ゲル化は、加熱によって行われる。シラン化合物は、酸触媒などで加水分解され、シラノール基(Si-OH)を有するゾルになる。ゾルが加熱されると、シラノール基同士が分子間で脱水縮合反応しSi-O-Si結合を形成し、原料液がゲル化される。
【0053】
なお、原料液層をゲル化させる手段は、加熱器には限定されず、ゲル原料の種類に応じて適宜選択される。
【0054】
例えば、ゲル原料が熱可塑性樹脂である場合、原料液層をゲル化させる手段は、冷却器である。
【0055】
ゲル原料が光硬化性樹脂である場合、原料液層をゲル化させる手段は、光源である。光源は、原料液層に対して紫外線等の光を照射し、光硬化性モノマーを硬化し、原料液層をゲル化する。
【0056】
ゲル原料が熱硬化性樹脂である場合、原料液層をゲル化させる手段は、加熱器である。
【0057】
ゲル原料が多糖類ナノファイバーである場合、多糖類ナノファイバーは酸触媒又は塩基触媒に接触すると、短時間でゲル化する。従って、原料液は、多糖類ナノファイバーを含み、酸触媒又は塩基触媒を含まなくてよい。酸触媒又は塩基触媒は、原料液層に対して、上方からシャワー状に供給されてよい。この場合、原料液層をゲル化させる手段は、原料液層に対して上方から酸触媒又は塩基触媒を供給する供給器である。
【0058】
ゲル化の最終段階では、硬化収縮が生じるので、その硬化収縮によって湿潤ゲル層の外周が容器の側壁から剥離されてもよい。
【0059】
ステップS3では、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を別の溶媒に置換する。湿潤ゲル層は、微細な多孔質体であり、内部に溶媒を含む。溶媒置換(ステップS3)は、乾燥(ステップS4)の前に実施され、乾燥時に溶媒の表面張力によって湿潤ゲル層が収縮するのを抑制し、湿潤ゲル層の微細構造が破損するのを抑制する目的で実施される。
【0060】
溶媒置換では、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を、ゲル化に適した溶媒(つまり、原料液の溶媒)から、乾燥に適した溶媒に置換する。置換後の溶媒は、乾燥方法に応じて適宜選択される。乾燥方法としては、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。
【0061】
超臨界乾燥は、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を、超臨界流体に置換する。超臨界乾燥に適した溶媒として、例えばメタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールなどが用いられる。超臨界流体として、一般的に、超臨界状態の二酸化炭素ガスが用いられる。超臨界乾燥は、密閉式の高圧容器の内部で実施される。
【0062】
凍結乾燥は、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を凍結した後で、真空中で蒸発させる。通常これを、昇華と呼ぶ。凍結乾燥に適した溶媒として、水、tert-ブチルアルコール、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、又はフッ素系溶媒等が用いられる。凍結乾燥は、密閉式の真空容器の内部で実施される。
【0063】
常圧乾燥は、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を、常圧下で蒸発させる。溶媒蒸発に伴う毛細管力による湿潤ゲル層の微細骨格の収縮力を小さくすることが重要なので、常圧乾燥に適した溶媒としては、表面張力の小さな溶媒、例えばヘキサン若しくはヘプタンなどの低分子量の脂肪族炭化水素系の溶媒、又はフッ素系溶媒が用いられる。常圧乾燥は、常圧で行われるので、密閉式の容器が不要である。
【0064】
溶媒置換は、溶媒の沸騰によって湿潤ゲル層の微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の置換効率を高めるべく、溶媒を沸点以下の温度で加熱してもよい。加熱温度は、例えば40℃~100℃である。
【0065】
溶媒の置換回数は、本実施形態では1回であるが、複数回であってもよい。つまり、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒は、原料液の溶媒から、原料液の溶媒とは異なる組成の第1溶媒に置換され、更に原料液の溶媒及び第1溶媒とは異なる組成の第2溶媒に置換されてもよい。
【0066】
原料液の溶媒と第2溶媒との相溶性が低い場合には、置換効率が悪くなるので、その間に一旦、第1溶媒での置換を導入することで、原料液の溶媒から第2溶媒への置換にかかる時間を短縮できる。第1溶媒としては、原料液の溶媒と第2溶媒との両方に対し高い相溶性を有するものが用いられる。
【0067】
なお、原料液の溶媒が乾燥に適したものである場合、溶媒置換は不要である。
【0068】
ステップS4では、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を除去する。湿潤ゲル層の乾燥方法としては、上記の通り、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。これらの中でも、常圧乾燥は、密閉式の容器が不要である点で優れている。
【0069】
常圧乾燥は、溶媒の沸騰によって湿潤ゲル層の微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の除去効率を高めるべく、湿潤ゲル層を沸点以下の温度で加熱してもよい。湿潤ゲル層の乾燥温度は、例えば室温~100℃である。
【0070】
常圧乾燥では、湿潤ゲル層に対して風を送ることで、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒の蒸発を促進できる。常圧乾燥で蒸発させた溶媒は、回収され、廃棄又は必要に応じてリサイクルされる。
【0071】
乾燥(ステップS4)によって、キセロゲル層が得られる。キセロゲル層の厚みは、例えば0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~10mmである。キセロゲル層は、キセロゲルを含む。キセロゲルは、多孔質なモノリスであって、透明性と断熱性とを有するものであってよい。透明性と断熱性を有するキセロゲル層は、例えば、自動車用窓ガラスや建物用窓ガラスにおける透明断熱材として用いられる。
【0072】
キセロゲル層の用途が透明断熱材である場合、キセロゲル層の波長500nmにおける透過率は、厚み1mm換算で70%以上が好ましく、80%以上が好ましく、90%以上が好ましい。透過率は、日本工業規格(JIS R 3106:1998)に準拠して測定される。透過率を測定する装置としては、例えば島津製作所社製の分光光度計(Solid Spec-3700DUV)が用いられる。
【0073】
キセロゲル層の用途としては、例えば、断熱材の他に、フィルター、吸着剤、吸音材、吸湿材、吸油材、又は分離膜が挙げられる。
【0074】
次に、図4図7を参照して、キセロゲル層の製造過程で生じる凹凸を小さくする方法について説明する。キセロゲル層の凹凸は、主にゲル化(ステップS2)の過程で生じる。凹凸が生じる原因としては、ひび割れ、うねり、又はシワが考えられる。
【0075】
ひび割れは、原料液層の上面から溶媒が揮発することで生じ、原料液層の上面に生じる。原料液層の下面には、ひび割れは、ほとんど生じない。溶媒の蒸発は、容器の内部における溶媒の蒸気圧が飽和蒸気圧に達するまで続く。溶媒の蒸気圧が飽和蒸気圧に達すると、溶媒が液体から気体になる蒸発と、溶媒が気体から液体になる凝縮とで速度が等しくなる。
【0076】
図4に示すように、原料液を容器10の内部に注入し、原料液を含む原料液層11を作製した後で、容器10の内部を密閉することが考えられる。容器10の容積は一定であるので、容器10の内部が密閉されれば、溶媒の蒸気圧が短時間で飽和蒸気圧に達する。また、容器10の内部に存在する空間(原料液層11よりも上方に存在する空間)の体積が小さい方が、溶媒の蒸発量も少量になるので、好ましい。その結果、原料液層11の上面にひび割れが生じるのを抑制できる。
【0077】
図5に示すように、容器10の内部に原料液を含む原料液層11を作製した後で、原料液層11の上に乾燥防止液層12を形成することも考えられる。乾燥防止液層12は、乾燥防止液を含む。乾燥防止液としては、原料液よりも密度が低く、原料液との相溶性が低く、且つ原料液との反応性が低い液体が用いられる。乾燥防止液層12で原料液層11の上面を覆うことで、原料液に含まれる溶媒の蒸発を抑制でき、ひび割れを抑制できる。乾燥防止液層12の材料としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、又はオクタン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0078】
うねり、又はシワは、原料液層11がゲル化によって収縮する際に、容器10が原料液層11の下面又は側面を拘束することで生じる。
【0079】
図6に示すように、容器10の壁面に離型剤13を塗布することが考えられる。原料液層11がゲル化によって収縮する際に、原料液層11と容器10との間に離型剤13が存在する。離型剤13は、原料液をはじく。離型剤13によって、容器10が原料液層11の下面又は側面を拘束するのを抑制でき、うねり又はシワを抑制できる。
【0080】
離型剤13は、固体膜でもよいし、液体膜でもよい。固体膜の具体例として、例えばフッ素系樹脂のコーティング膜が挙げられる。液体膜の具体例として、フッ素系オイルの塗布膜又はシリコーンオイルの塗布膜が挙げられる。離型剤13は、耐久性及び安定性の観点から、好ましくは固体膜である。
【0081】
図7に示すように、容器10の内部に高密度液層14を作製した後で、高密度液層14の液面の上に原料液層11を形成することも考えられる。高密度液層14は、高密度液を含む。高密度液としては、原料液よりも密度が高く、原料液との相溶性が低く、且つ原料液との反応性が低い液体が用いられる。高密度液層14の液面の上で、原料液層11のゲル化を行うことで、容器10が原料液層11の下面又は側面を拘束するのを抑制でき、うねり又はシワを抑制できる。
【0082】
高密度液は、フッ素原子を有する液状化合物、塩素原子を有する液状化合物、ケイ素原子を有する液状化合物、水、又は水銀などを含む。高密度液は、フッ素、塩素、臭素、あるいは、ヨウ素などのハロゲン原子や、ケイ素原子などを含なくてもよい。水は、密度を調整するために水溶性塩を含んでいてもよい。水溶性塩としては、塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0083】
フッ素原子を有する液状化合物としては、例えば、フッ素系溶媒、又はフッ素系オイル等が挙げられる。
【0084】
フッ素系溶媒としては、例えば、ハイドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、パーフルオロモノエーテル、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロアミン、フッ素原子含有アルケン、フッ素原子含有芳香族化合物、フッ素原子含有ケトン、又はフッ素原子含有エステル等が挙げられる。フッ素系溶媒の市販品としては、旭硝子社登録商標のアサヒクリンAK-225(CFCFCHCl)、AC-2000(CFCFCFCFCFCHF)、AC-6000(CFCFCFCFCFCFCHCH)、AE-3000(CFCHOCFCHF);3M社商品名のフロリナートやノベック7100(COCH)、7200(COC)、7300(CCF(OCH)CF(CF);三井・デュポンフロロケミカル社商品名のバートレルXF(CFCHFCHFC)、又はMCA、XH;日本ゼオン社商品名のゼオローラH(ヘプタフルオロシクロペンタン)等が挙げられる。
【0085】
フッ素系オイルの市販品としては、例えば、ソルベイ社商品名のフォンブリン、又はダイキン工業社商品名のデムナム若しくはダイフロイル等が挙げられる。
【0086】
塩素原子を有する液状化合物としては、例えば、塩素系溶媒、又は塩素系オイル等が挙げられる。塩素系溶媒としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、又は塩化メチレン等が挙げられる。
【0087】
ケイ素原子を有する液状化合物としては、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、又はメチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルの市販品としては、例えば、信越化学工業社商品名のKF-96等が挙げられる。
【0088】
なお、図4図7に示す方法は、単独で用いられてもよいし、任意の組み合わせで用いられてもよい。
【0089】
次に、図8を参照して、第1実施形態に係る透明シート20について説明する。透明シート20は、キセロゲル層21と、第1樹脂層22と、を備える。キセロゲル層21は、互いに反対向きの第1主面21aと第2主面21bを有する。第1樹脂層22は、キセロゲル層21の第1主面21aに接し、キセロゲル層21よりも高い屈折率を有する。
【0090】
キセロゲル層21は、図4図7の少なくとも1つに示す方法で凹凸を小さくしたものを用いる。キセロゲル層21の第1主面21aは原料液層11の上面に相当し、キセロゲル層21の第2主面21bは原料液層11の下面に相当する。なお、キセロゲル層21の第1主面21aは原料液層11の下面に相当し、キセロゲル層21の第2主面21bは原料液層11の上面に相当してもよい。
【0091】
キセロゲル層21と第1樹脂層22の界面の十点平均粗さRzを、以下、第1十点平均粗さRz1とも呼ぶ。十点平均粗さRzは、日本工業規格(JIS B 0601:1994)に準拠して測定する。十点平均粗さRzを測定する装置としては、例えばOLMPUS社製のLEXT OLS400が用いられる。
【0092】
第1十点平均粗さRz1は、例えば0μm~0.20μmである。第1十点平均粗さRz1が0.20μm以下であれば、キセロゲル層21と第1樹脂層22の界面に存在する凹凸が小さく、その凹凸が透過光をほとんど散乱しない。それゆえ、透明シート20の透視性が良い。第1十点平均粗さRz1は、好ましくは0.10μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。第1十点平均粗さRz1が小さいほど、透明シート20の透視性が良い。
【0093】
透明シート20の透視性は、ヘイズで表される。ヘイズは、測定対象を板厚方向に透過する透過光のうち、前方散乱によって入射光から2.5°以上それた透過光の百分率として求められる。ヘイズが小さいほど、透視性が良い。ヘイズは、日本工業規格(JIS K 7136:2000)に準拠して測定する。ヘイズを測定する装置としては、例えば村上色彩技術研究所社製のヘイズメータ(HM-65L2)が用いられる。
【0094】
透明シート20のヘイズは、例えば0%~20%である。透明シート20のヘイズが20%以下であれば、透視性が良い。透明シート20のヘイズは、好ましくは18%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0095】
第1十点平均粗さRz1が0.20μm以下であれば、透明シート20のヘイズが20%以下になる。第1十点平均粗さRz1が0.10μm以下であれば、透明シート20のヘイズが18%以下になる。第1十点平均粗さRz1が0.05μm以下であれば、透明シート20のヘイズが10%以下になる。
【0096】
第1樹脂層22は、例えば、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、加熱により軟化し、キセロゲル層21に密着する。第1樹脂層22は、キセロゲル層21に接するので、可塑剤を含まないものが好ましい。可塑剤は、柔軟性を高めるための添加剤であるが、キセロゲル層21に移行すると、キセロゲル層21の微細構造を破壊し、キセロゲル層21の白化、又はクラックを生じさせてしまう。可塑剤を含まない熱可塑性樹脂の具体例としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)が挙げられる。
【0097】
透明シート20は、図9に示すように、キセロゲル層21を基準として第1樹脂層22とは反対側に、第2樹脂層23を備えてもよい。第2樹脂層23は、第1樹脂層22と同じ材質を有してもよいし、第1樹脂層22とは異なる材質を有してもよいが、キセロゲル層21に接するので、可塑剤を含まないことが好ましい。
【0098】
第2樹脂層23は、キセロゲル層21の第2主面21bに接し、キセロゲル層21よりも高い屈折率を有する。キセロゲル層21と第2樹脂層23の界面の十点平均粗さRzを、以下、第2十点平均粗さRz2とも呼ぶ。
【0099】
第2十点平均粗さRz2は、例えば0μm~0.20μmである。第2十点平均粗さRz2が0.20μm以下であれば、キセロゲル層21と第1樹脂層22の界面に存在する凹凸が小さく、その凹凸が透過光をほとんど散乱しない。それゆえ、透明シート20の透視性が良い。第2十点平均粗さRz2は、好ましくは0.10μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。第2十点平均粗さRz2が小さいほど、透明シート20の透視性が良い。
【0100】
次に、図10を参照して、第1実施形態に係る合わせガラス30について説明する。合わせガラス30は、第1ガラス板31と、第1ガラス板31に対向する第2ガラス板32と、第1ガラス板31と第2ガラス板32の間に配置される中間シート33と、を備える。中間シート33は、例えば、図9に示す透明シート20である。
【0101】
透明シート20は、キセロゲル層21の片側に第1樹脂層22を備え、キセロゲル層21の反対側に第2樹脂層23を備える。第1樹脂層22は、例えば加熱によって接着性を示し、キセロゲル層21と第1ガラス板31とを接着する。第2樹脂層23は、例えば加熱によって接着性を示し、キセロゲル層21と第2ガラス板32とを接着する。透明シート20を介して第1ガラス板31と第2ガラス板32を接着することで、合わせガラス30が得られる。
【0102】
透明シート20は、均一な厚みを有するが、不均一な厚みを有してもよい。例えば、ヘッドアップディスプレイの画像が合わせガラス30に投影される場合、画像が二重に見えてしまうのを抑制すべく、透明シート20の厚みは下側から上側に向かうほど厚くなってもよい。この場合、透明シート20はくさび形に形成され、そのくさび角度は例えば1.0mrad以下である。
【0103】
第1ガラス板31と、第2ガラス板32は、同じ材質でも、異なる材質でもよい。第1ガラス板31と第2ガラス板32の材質は、無機ガラスでも、有機ガラスでもよい。第1ガラス板31と第2ガラス板32の少なくとも1つは、無機ガラスを含むことが好ましい。残りの1つは、無機ガラスでも、有機ガラスでもよい。
【0104】
有機ガラスとしては、例えば、アクリル樹脂、又はポリカーボネート樹脂が挙げられる。無機ガラスとしては、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、又はホウ珪酸ガラス等が挙げられる。無機ガラスを板状に成形する方法は、特に限定されないが、例えばフロート法などである。
【0105】
第1ガラス板31と、第2ガラス板32は、未強化ガラス(生ガラス)であってよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したガラスであり、風冷強化処理、化学強化処理等の強化処理が施されていないものである。未強化ガラスは、衝撃を受けて割れたときに、網状若しくは蜘蛛の巣状のひび割れ等を生じにくく、視界を確保できる。
【0106】
第1ガラス板31と、第2ガラス板32とは、同じ厚みでも、異なる厚みでもよい。第1ガラス板31が第2ガラス板32の車外側に設けられる場合、第1ガラス板31の厚みは第2ガラス板32の厚みよりも厚くてもよい。第1ガラス板31の厚みは、例えば1.1mm以上3.5mm以下である。第2ガラス板32の厚みは、0.5mm以上2.3mm以下である。合わせガラス30全体の厚みは、2.3mm以上8.0mm以下である。
【0107】
合わせガラス30は、透明シート20と同様に製造される。例えば、先ず、第1ガラス板31と、透明シート20と、第2ガラス板32とをこの順番で有する積層体を作製する。次に、積層体を真空バックの内部に挿入し、真空バックの内部を減圧しながら真空バックを外部から加熱する。その後、真空バックから取り出した積層体を、例えばオートクレーブなどで熱圧着する。これにより、合わせガラス30が得られる。
【0108】
透明シート20は、熱圧着前に、第1ガラス板31に接する面、及び第2ガラス板32に接する面の少なくとも1つに、エンボスパターンを有してもよい。透明シート20のエンボスパターンは、真空バックの内部を減圧する際に排気効率を向上し、合わせガラス30に気泡が噛み込むのを抑制する。
【0109】
合わせガラス30は、例えば、自動車の窓ガラスとして用いられる。合わせガラス30は、図示しないが、全体的に又は部分的に車外側に凸に湾曲していてもよい。合わせガラス30は、車両の前後方向及び上下方向に湾曲した複曲であるが、前後方向又は上下方向にのみ湾曲した単曲であってもよい。
【0110】
図11に示すように、透明シート20は、第1樹脂層22と第2樹脂層23の間に、キセロゲル層21の周縁全体を取り囲む樹脂スペーサ24を備えてもよい。樹脂スペーサ24は、キセロゲル層21と同じ厚みを有し、大気中の水分がキセロゲル層21に侵入するのを抑制し、キセロゲル層21の劣化を抑制する。
【0111】
樹脂スペーサ24は、第1樹脂層22及び第2樹脂層23と同じ材質を有してもよいし、異なる材質を有してもよい。樹脂スペーサ24は、第1樹脂層22及び第2樹脂層23と同様に、加熱によって接着性を示してもよく、第1樹脂層22及び第2樹脂層23と一体化してもよい。
【0112】
図12に示すように、樹脂スペーサ24として、複数の切れ込み24aを有する櫛歯状の熱可塑性樹脂を準備してもよい。樹脂スペーサ24は、帯状であり、キセロゲル層21の周縁に巻き付けられる。複数の切れ込み24aは、樹脂スペーサ24のキセロゲル層21に接する面とは反対向きの面に配置される。切れ込み24aは、曲面においてV字状に開き、隙間24bを形成する。また、樹脂スペーサ24の両端間に、隙間24cが形成される。これらの隙間24b、24cは、透明シート20を用いて第1ガラス板31と第2ガラス板32とを熱圧着する際に、樹脂の流動によって埋まる。
【0113】
なお、図10及び図11では第1ガラス板31と中間シート33と第2ガラス板32とで合わせガラス30が構成されるが、第1ガラス板31と中間シート33でガラス積層板が構成されてもよい。つまり、ガラス積層板は、中間シート33の片側のみに、ガラス板を有してもよい。下記の第2実施形態について同様である。
【0114】
次に、図13図15を参照して、第2実施形態に係る透明シート20について説明する。本実施形態の透明シート20も、合わせガラス30の中間シートとして使用可能である。本実施形態の透明シート20は、キセロゲル層21の製造後にキセロゲル層21の表面の凸部を潰し、その表面を平らにしたものである。以下、第1実施形態と第2実施形態の相違点について主に説明する。
【0115】
図13に示すように、第1離型フィルム41と、第1貼合層25と、第1樹脂層22と、キセロゲル層21と、第2樹脂層23と、第2貼合層26と、第2離型フィルム42とが、この順番で重ね合わされ、積層体40が作製される。積層体40は、例えば真空バック50の内部に挿入される。
【0116】
第1離型フィルム41は、真空バック50と第1貼合層25の貼合を防止し、真空バック50から取り出された後で第1貼合層25から剥離される。第2離型フィルム42は、真空バック50と第2貼合層26の貼合を防止し、真空バック50から取り出された後で第2貼合層26から剥離される。なお、積層体40は第1離型フィルム41及び第2離型フィルム42を含まなくてもよく、真空バック50の内面に離型剤が塗布されてもよい。第1離型フィルム41の代わりに第1ガラス板31が用いられ、第2離型フィルム42の代わりに第2ガラス板32が用いられてもよい。この場合、図14に示す工程によって、合わせガラスを作製することが可能である。
【0117】
図14に示すように、真空バック50の内部を減圧しながら真空バック50を外部から加熱する。真空バック50の内部の気圧は、大気圧を基準として、例えば-100kPa~-65kPaである。真空バック50の加熱温度は、例えば70℃~110℃である。その後、真空バック50から取り出した積層体40を、100℃~150℃で加熱しながら、0.3MPa~1.3MPaの圧力で熱圧着する。熱圧着には、例えばオートクレーブが用いられる。
【0118】
図15に示すように、透明シート20が得られる。透明シート20は、第1貼合層25と、第1樹脂層22と、キセロゲル層21と、第2樹脂層23と、第2貼合層26と、をこの順番で備える。第1貼合層25と第2貼合層26が、キセロゲル層21を厚み方向に挟んで圧縮した状態で、互いに貼合されている。なお、第1貼合層25と第2貼合層26の間に配置されるキセロゲル層21の数は、複数であってもよい。複数のキセロゲル層がタイルのように面状に並べて配列されてもよい。
【0119】
第1樹脂層22は、キセロゲル層21と第1貼合層25の間に配置され、キセロゲル層21及び第1貼合層25よりも高い圧縮弾性率を有する。圧縮弾性率の大小関係は、室温から貼合温度までの温度範囲で成立すればよく、例えば20℃~200℃の温度範囲で成立すればよい。第1樹脂層22は、キセロゲル層21及び第1貼合層25よりも硬く、キセロゲル層21の第1主面21aを押して平らにする。仮に第1樹脂層22が存在しない場合、第1貼合層25は柔らかいので第1主面21aの凹凸に倣って変形してしまう。第1樹脂層22が存在することで、第1主面21aを平らにできる。なお、第1樹脂層22とキセロゲル層21は、接着しなくてもよい。第1樹脂層22とキセロゲル層21は、第1貼合層25と第2貼合層26によって挟んで固定される。
【0120】
第2樹脂層23は、キセロゲル層21と第2貼合層26の間に配置され、キセロゲル層21及び第2貼合層26よりも高い圧縮弾性率を有する。第2樹脂層23は、キセロゲル層21及び第2貼合層26よりも硬く、キセロゲル層21の第2主面21bを押して平らにする。仮に第2樹脂層23が存在しない場合、第2貼合層26は柔らかいので第2主面21bの凹凸に倣って変形してしまう。第2樹脂層23が存在することで、第2主面21bを平らにできる。なお、第2樹脂層23とキセロゲル層21は、接着しなくてもよい。第2樹脂層23とキセロゲル層21とは、第1貼合層25と第2貼合層26によって挟んで固定される。
【0121】
第1貼合層25と第2貼合層26は、周縁全体に亘って貼合されてもよいし、互いに対向する2辺のみで貼合されてもよい。キセロゲル層21を厚み方向に圧縮した状態に維持できればよい。キセロゲル層21を厚み方向に圧縮した状態を維持することによって、第1十点平均粗さRz1と第2十点平均粗さRz2を所望の範囲に維持できる。
【0122】
キセロゲル層21の厚み方向における圧縮率CRは、例えば0.5%~20%である。、圧縮率CRは、CR=(TB-TA)/TB×100の式で求められる。TBは圧縮前の厚みであり、TAは圧縮後の厚みである。
【0123】
圧縮率CRが0.5%以上であれば、第1十点平均粗さRz1と第2十点平均粗さRz2を0.20μm以下にできる。圧縮率CRが20%以下であれば、キセロゲル層21の微細構造を維持でき、キセロゲル層21の白化、又はクラックを抑制できる。圧縮率CRは、好ましくは1%以上であり、より好ましくは5%以上である。
【0124】
第1樹脂層22は、第1貼合層25が可塑剤を含む場合に、第1貼合層25からキセロゲル層21への可塑剤の移行を抑える第1バリア層として機能してもよい。可塑剤がキセロゲル層21の微細構造を破壊するのを第1バリア層によって抑制しつつ、第1貼合層25に可塑剤を含めることで、合わせガラス30の耐貫通性を向上できる。
【0125】
第2樹脂層23は、第2貼合層26が可塑剤を含む場合に、第2貼合層26からキセロゲル層21への可塑剤の移行を抑える第2バリア層として機能してもよい。可塑剤がキセロゲル層21の微細構造を破壊するのを第2バリア層によって抑制しつつ、第2貼合層26に可塑剤を含めることで、合わせガラス30の耐貫通性を向上できる。
【0126】
第1樹脂層22と第2樹脂層23は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、又は透明ポリイミドを含む。第1樹脂層22と第2樹脂層23は、キセロゲル層21に接するので、可塑剤を含まないことが好ましい。
【0127】
第1貼合層25と第2貼合層26は、特に限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、又はポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を含み、好ましくはPVB樹脂を含む。PVB樹脂は、EVA樹脂に比べて、耐貫通性に優れており、自動車のフロントガラスなどに適している。PVB樹脂は、EVA樹脂とは異なり、可塑剤を含む。
【0128】
なお、キセロゲル層21は、圧縮前に、第1主面21aのみに凹凸を有してもよい。この場合、第2貼合層26がキセロゲル層21の第2主面21bに接してもよく、透明シート20は、第1貼合層25と、第1樹脂層22と、キセロゲル層21と、第2貼合層26と、をこの順番で備えてもよい。第2貼合層26が第2樹脂層として機能する。
【0129】
第2貼合層26がキセロゲル層21の第2主面21bに接する場合、第2貼合層26はEVA樹脂を含むことが好ましい。第2貼合層26がPVB樹脂を含む場合、キセロゲル層21の第2主面21bの凹凸の有無に関係なく、第2貼合層26とキセロゲル層21の間には第2樹脂層23が設けられることが好ましい。
【0130】
図15に示す透明シート20は、図16に示すように一対のニップローラ51を用いて作製してもよい。一対のニップローラ51は、それぞれ、ローラ52と、ローラ52の軸方向一端に設けられる第1フランジ53と、ローラ52の軸方向他端に設けられる第2フランジ54と、を有する。
【0131】
一対のローラ52が、キセロゲル層21を圧縮する。一対の第1フランジ53が、第1貼合層25と第2貼合層26の側端同士を貼合する。一対の第2フランジ54が、第1貼合層25と第2貼合層26の別の側端同士を貼合する。第1貼合層25と第2貼合層26は、キセロゲル層21を厚み方向に挟んで圧縮した状態に維持し、第1十点平均粗さRz1と第2十点平均粗さRz2を所望の範囲に維持する。
【0132】
ニップローラ51は、第1貼合層25と第2貼合層26を加熱すべく、不図示のヒータを内部に有してもよい。
【0133】
なお、図16に示す積層体40は、第1離型フィルム41及び第2離型フィルム42を含むが、含まなくてもよく、ニップローラ51の外周面に離型剤が塗布されてもよい。また、ローラ52は、その外周面にエンボスパターンを有し、そのエンボスパターンを第1貼合層25及び第2貼合層26の少なくとも1つに転写してもよい。透明シート20のエンボスパターンは、真空バックの内部を減圧する際に排気効率を向上し、合わせガラス30に気泡が噛み込むのを抑制する。
【0134】
次に、図17及び図18を参照して、第3実施形態に係る合わせガラス30について説明する。本実施形態では、上記第2実施形態とは別の方法で、キセロゲル層21の製造後にキセロゲル層21の表面の凸部を潰し、その表面を平らにする。以下、第1実施形態及び第2実施形態と、第3実施形態の相違点について主に説明する。
【0135】
図17に示すように、第1ガラス板31と、第1樹脂層22と、キセロゲル層21と、第2樹脂層23と、第2ガラス板32とが、この順番で重ね合わされ、積層体60が作製される。第1樹脂層22は、第1ガラス板31に予め形成される。第2樹脂層23は、第2ガラス板32に予め形成される。
【0136】
第1樹脂層22、及び第2樹脂層23は、例えば0μmよりも大きく0.10μm以下の厚みを有する接着層である。接着層の厚みが0.10μm以下であれば、接着層の変形代がほとんどない。それゆえ、積層体60(詳細にはキセロゲル層21)を厚み方向に圧縮する際に、接着層がキセロゲル層21の凹凸に倣って変形するのを抑制できる。接着層の厚みは、好ましくは0.08μm以下である。接着層としては、例えば市販の光学透明粘着剤(OCA:Optically Clear Adhesive)が用いられる。
【0137】
図示しないが、積層体60を真空バック50の内部に挿入し、真空バック50の内部を減圧しながら真空バック50を外部から加熱する。真空バック50の内部の気圧は、大気圧を基準として、例えば-100kPa~-65kPaである。真空バック50の加熱温度は、例えば70℃~110℃である。その後、真空バック50から取り出した積層体60を、100℃~150℃で加熱しながら、0.3MPa~1.3MPaの圧力で熱圧着する。熱圧着には、例えばオートクレーブが用いられる。
【0138】
熱圧着時に、キセロゲル層21の厚み方向における圧縮率CRは、例えば0.5%~20%である。熱圧着時に、第1樹脂層22及び第2樹脂層23は、キセロゲル層21の表面の凸部を潰した状態で、キセロゲル層21の表面全体に接着される。熱圧着時の圧縮率CRは、好ましくは1%以上であり、より好ましくは5%以上である。なお、熱圧着後、キセロゲル層21は、弾性復元力によって元の厚みに戻ってもよい。
【0139】
その結果、図18に示すように、合わせガラス30が得られる。合わせガラス30は、第1ガラス板31と、第1樹脂層22と、キセロゲル層21と、第2樹脂層23と、第2ガラス板32と、をこの順番で備える。第1ガラス板31は、第1樹脂層22を介して、キセロゲル層21の第1主面21aを平らに拘束し、第1十点平均粗さRz1を所望の範囲内に維持する。また、第2ガラス板32は、第2樹脂層23を介して、キセロゲル層21の第2主面21bを平らに拘束し、第2十点平均粗さRz2を所望の範囲内に維持する。
【0140】
なお、本実施形態においても、図12に示す樹脂スペーサ24を用いて、キセロゲル層21の周縁全体を取り囲んでもよい。この場合、樹脂スペーサ24は、第1ガラス板31と第2ガラス板32の間隔を一定に保ち、キセロゲル層21を厚み方向に圧縮した状態に維持してもよい。
【実施例0141】
以下、実験データについて説明する。
【0142】
(キセロゲル層)
先ず、原料液であるゾル液を作製した。具体的には、メチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)を40g、テトラメトキシシラン(東京化成工業社製)を10g、5ミリモル/Lの酢酸水溶液を100g、尿素を30g、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製)を10g、マグネット撹拌子の入ったポリ容器に入れ、25℃にて800rpmの回転数で60分間撹拌し、アルコキシシランを加水分解させてゾル化し、ゾル液を作製した。
【0143】
次に、12cm角のポリスチレン製容器に厚みが10mm程度になるようにゾル液を流し入れ、容器に蓋を付けた状態で、容器を60℃オーブン中で4日間加熱して、湿潤ゲル層を得た。
【0144】
次に、湿潤ゲル層に含まれる溶媒を置換した。具体的には、水をメタノールに置換する1次置換と、メタノールをイソプロパノールに置換する2次置換と、イソプロパノールをヘプタンに置換する3次置換とを実施した。1次置換では、湿潤ゲル層をメタノールに8時間浸漬することを3回繰り返し、1回目と2回目の間と、2回目と3回目の間でメタノールを交換した。2次置換、及び3次置換も、1次置換と同様に実施した。
【0145】
次に、3次置換の済んだ湿潤ゲル層を、50℃のオーブンに入れ、24時間常圧乾燥することで、キセロゲル層として、透明なポリシロキサンゲルを得た。ポリシロキサンゲルは、下面には凹凸が視認されなかったが、上面には凹凸が視認されなかった第1領域と、凹凸が僅かに視認された第2領域と、凹凸が明瞭に視認された第3領域とが存在した。
【0146】
第1領域と第2領域と第3領域のそれぞれについて、厚みと、十点平均粗さRzと、透過率と、ヘイズとを測定した。結果を表1に示す。また、第1領域のSEM写真を図19に示し、第3領域のSEM写真を図20に示す。
【0147】
(合わせガラス)
得られたキセロゲル層を、2枚のEVAフィルムで挟み、さらに外側から2枚のガラス板で挟むように、積層体を作製した。各EVAフィルムとしては、東ソー社製の商品名メルセンG(厚み0.38mm)を用いた。各ガラス板としては、AGC社製のソーダライムガラス板(厚み2mm)を用いた。
【0148】
次に、作製した積層体を真空包装用バッグ(明和産商社製 耐熱バリアラミネート規格袋 400×500mm R-4050 H)に入れて減圧吸引し、各層の界面に残留する空気を脱気し、封印した。これを、110℃で15分間加熱して合わせガラスを得た。
【0149】
その後、第1領域と第2領域と第3領域のそれぞれについて、透過率と、ヘイズとを測定した。結果を表1に示す。
【0150】
(評価結果)
【0151】
【表1】
表1から明らかなように、キセロゲル層を単独で用いる場合、つまり、キセロゲル層の両面が空気に接する場合、ヘイズは、十点平均粗さRzの大小に関係なく、略同じであった。これは、キセロゲル層と空気の屈折率差が略ゼロであるためである。
【0152】
一方、キセロゲル層の両面がEVAフィルムに接する場合、ヘイズは、十点平均粗さRzに応じて変化した。キセロゲル層とEVAフィルムの屈折率差は、約0.5である。屈折率差の大きい境界では、凹凸が大きくなるほど、光が散乱されてしまう。
【0153】
第1領域と第2領域では、十点平均粗Rzが0.20μm以下であったので、合わせガラスのヘイズが20%以下であり、合わせガラスの透視性が良かった。また、第1領域では、十点平均粗さRzが0.10μm以下であったので、合わせガラスのヘイズが18%以下であり、合わせガラスの透視性が特に良かった。
【0154】
なお、透過率は、透過した全ての光の透過率である。透過した全ての光は、散乱された光を含む。それゆえ、合わせガラスの透過率は、合わせガラスのヘイズとは異なり、十点平均粗さRzの大小に関係なく、ほぼ同じであった。
【0155】
以上、本発明に係る透明シート、合わせガラス、合わせガラスの製造方法、及びガラス積層板について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0156】
20 透明シート
21 キセロゲル層
21a 第1主面
21b 第2主面
22 第1樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20