IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図1
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図2
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図3
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図4
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図5
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図6
  • 特開-吸収性物品及びインジケータ組成物 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085129
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】吸収性物品及びインジケータ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/42 20060101AFI20230613BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61F13/42 B
A61F13/53 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199629
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】丹治 浩之
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA14
3B200BB14
3B200CA03
3B200CA08
3B200DA16
3B200DA25
3B200DB14
3B200DB20
3B200DD02
3B200DF02
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、視認性及び応答性を向上させた、尿比重の変化を検知可能なインジケータを備えた吸収性物品を提供する。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、トップシート層、吸収体層、インジケータ層、及び防漏層をこの順に有しており、前記吸収体層は、吸収コア層及び前記吸収コア層の少なくとも前記防漏層側を被覆しているコアラップ層を有しており、前記インジケータ層は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ少なくとも部分的に、前記コアラップ層と前記防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている、吸収性物品である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシート層、吸収体層、インジケータ層、及び防漏層をこの順に有しており、
前記吸収体層は、吸収コア層及び前記吸収コア層の少なくとも前記防漏層側を被覆しているコアラップ層を有しており、
前記インジケータ層は、
尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ
少なくとも部分的に、前記コアラップ層と前記防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記インジケータ層は、40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記インジケータ層は、親水性高分子及びアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方を更に含有している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記インジケータ層は、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色する、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記インジケータ層は、36℃で液体である液状成分を含有しており、
前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記防漏層のうち前記インジケータ層と重複する部分の少なくとも一部分において、前記液状成分が、前記防漏層に含浸している、
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記防漏層は、疎水性の不織布の層であり、
前記インジケータ層は、前記防漏層内に入り込んでいる防漏層含浸部を有している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記防漏層の前記インジケータ層が配置されている側の反対側に、バックシート層を更に有しており、
前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記バックシート層のうち前記インジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の坪量が、前記バックシート層の他の部分よりも小さい、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記インジケータ層よりも前記防漏層側の層は、少なくとも前記インジケータ層と重複する領域において、それらすべての層をあわせて可視スペクトル領域における30.0%以上90.0%以下の可視光透過率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記インジケータ層は、前記コアラップ層内に入り込んでいるコアラップ層含浸部を有している、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記コアラップ層含浸部の面積は、前記インジケータ層の面積の20.0%以上である、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記コアラップ層含浸部は、部分的に前記コアラップ層の前記吸収コア層側の面まで達しており、かつ前記吸収コア層に接している、
請求項9又は10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記コアラップ層含浸部のうち前記吸収コア層側の面まで達している部分の面積は、前記インジケータ層の面積の50.0%以下である、
請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記吸収コア層は、前記インジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の密度が前記吸収コア層の他の領域よりも大きい、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記インジケータ層は、前記コアラップ層及び前記防漏層のいずれにも含浸していない非含浸部を有している、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
トイレトレーニング用である、請求項1~14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ
40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している、
インジケータ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品及びインジケータ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、排尿の有無や着用者の健康状態の変化などを色の変化により検知可能なインジケータを備えた吸収性物品が知られている。
【0003】
吸収性物品に適用されるインジケータは、例えば特許文献1に開示されているように、着用者の尿の比重を定性的に表示することができる。
【0004】
近年においては、熱可塑性の固体物質からなる尿検知用のインジケータも実用化されている。例えば、特許文献2には、熱可塑性のインジケータ用組成物が開示されている。同文献によると、上記のようなインジケータ組成物では、湿り度インジケータを製品内の所望の位置に保持することができ、分子間結合力の形成によって着色剤の浸出の低減にも寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-18183号公報
【特許文献2】特表2015-529151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
尿比重の変化を検知可能なインジケータを備えた吸収性物品においては、尿比重に応じた色の違いの識別のしやすさ、すなわち高い視認性、及び着用者の排尿からインジケータの変色までにかかる時間の速さ、すなわち高い応答性が求められる。
【0007】
本発明は、視認性及び応答性を向上させた、尿比重の変化を検知可能なインジケータを備えた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様(態様1)は、
トップシート層、吸収体層、インジケータ層、及び防漏層をこの順に有しており、
前記吸収体層は、吸収コア層及び前記吸収コア層の少なくとも前記防漏層側を被覆しているコアラップ層を有しており、
前記インジケータ層は、
尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ
少なくとも部分的に、前記コアラップ層と前記防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている、
吸収性物品である。
【0009】
態様1に係る吸収性物品では、インジケータ層は、尿比重に応じて変色可能である。より具体的には、排尿の有無を検知するための変色(すなわち、酸性側の色からアルカリ性側の色への変色)とは異なり、尿比重に応じて(すなわち、尿中のナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)等のイオン濃度に応じて)アルカリ性側の外観色から変色するため、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用した時に、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすくなっている。
【0010】
このようなインジケータ層を用いた吸収性物品では、変色をより正確に確認する観点から、高い視認性が求められる。また、尿比重に応じた変色は、着用者の身体の状態、例えば成長の度合いや脱水症状の有無等を把握するために有用であるが、そのような状態の把握は、着用者による放尿後、よりすみやかに行われるのが望ましい。
【0011】
態様1に係る吸収性物品では、インジケータ層がコアラップ層と防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている。
【0012】
インジケータ層がコアラップ層と直接接合されていると、コアラップ層で保持される尿が当該接合部分を通してインジケータ層に流入しやすい。そのため、インジケータ層がコアラップ層と直接接合されていない場合と比較してより早くインジケータ層が変色する。したがって、応答性を向上させることができる。
【0013】
また、インジケータ層が防漏層と直接接合されていると、インジケータ層が防漏層と直接接合されていない場合と比較して、防漏層側からインジケータ層を視認しやすい。
【0014】
即ち、態様1に係る吸収性物品は、高い視認性及び応答性を有している。
【0015】
本発明の別の態様(態様2)は、態様1に記載の吸収性物品において、前記インジケータ層が、40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している。
【0016】
態様2に係る吸収性物品は、インジケータ層が、40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している。インジケータ層がこのような範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している場合、例えば吸収性物品の製造時に、当該融点又は軟化点においてインジケータ層を防漏層に塗布等して配置し、インジケータ層が凝固する前にコアラップ層をインジケータ層上に配置して、随意にプレスすることで、態様1に記載の吸収性物品を容易に形成することができる。
【0017】
更には、吸収性物品は、通常は40℃よりも低い温度、例えば着用者の一般的な体温である36℃前後の温度で使用される。したがって、使用時にインジケータ層が温度によって変形しにくく、例えば着用者の動作などによってインジケータ層とコアラップ層及び防漏層との接合が破壊される等しにくい。
【0018】
即ち、態様2に係る吸収性物品は、高い視認性及び応答性を実現しつつ、高い生産性及び耐久性を有する。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様3)は、態様1又は2に記載の吸収性物品において、前記インジケータ層が、親水性高分子及びアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方を更に含有している。
【0020】
態様3に係る吸収性物品は、インジケータ層が親水性高分子及びアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方を更に含有している。そのため、インジケータ層が尿と接触した時の尿比重の変化に対する変色の応答性が高く、尿比重の変化量が小さい場合でも明確に変色することができる。
【0021】
即ち、態様3に係る吸収性物品は、応答性が高い。
【0022】
本発明の更に別の態様(態様4)は、態様1~3のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記インジケータ層が、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色する。
【0023】
態様4に係る吸収性物品では、インジケータ層が、排尿の有無を検知するための変色(すなわち、インジケータ中のpH指示薬の酸性側の色からアルカリ性側の色への変色)とは異なり、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色するものであるため、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用した時に、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすく、特に、尿と接触する前の初期状態の色から高比重の尿に接触した時の黄色又は橙色への変色がより視認しやすくなっている。
【0024】
即ち、態様4に係る吸収性物品は、尿比重の変化をより精度よく、より容易に検知することができる。
【0025】
本発明の更に別の態様(態様5)は、態様1~4のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記インジケータ層が、36℃で液体である液状成分を含有しており、前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記防漏層のうち前記インジケータ層と重複する部分の少なくとも一部分において、前記液状成分が、前記防漏層に含浸している。
【0026】
液状成分が防漏層に含浸していると、インジケータ層と防漏層との間の空隙や、防漏層内部の微細な空間を液状成分が埋める。そのため、当該部分の乱反射が抑えられ、可視光透過率は防漏層の他の部分よりも高くなる。
【0027】
これにより、態様5に係る吸収性物品では、吸収性物品を積層方向から見たときに、防漏層のうちインジケータ層と重複する部分の少なくとも一部分の可視光透過率が高く、防漏層側からインジケータ層の変色をより視認しやすい。
【0028】
本発明の更に別の態様(態様6)は、態様1~5のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記防漏層が、疎水性の不織布の層であり、前記インジケータ層が、前記防漏層内に入り込んでいる防漏層含浸部を有している。
【0029】
防漏層が疎水性の不織布の層であると、尿中の液体が防漏層の反対側に漏出することを抑制しつつ、尿中の揮発成分、例えば水蒸気等を放出することができる。しかしながら、このような層は、不織布の空隙にある空気と防漏層を形成する材料との屈折率の違いにより、細孔のない層と比較して通常は可視光透過率が低い傾向にある。
【0030】
態様6に係る吸収性物品は、インジケータ層が防漏層内に入り込んでいる防漏層含浸部を有している。
【0031】
インジケータ層が防漏層内に入り込んでいると、吸収性物品の積層方向から見たときに、防漏層含浸部と重複する部分においてインジケータ層が入り込んでいない防漏層のみの厚みは、他の部分におけるインジケータ層が入り込んでいない防漏層のみの厚みよりも薄くなる。そのため、吸収性物品の積層方向から見たときに、防漏層含浸部と重複する部分は、防漏層側から見たときによりインジケータ層の視認性が高い。
【0032】
即ち、態様6に係る吸収性物品では、吸収性物品を積層方向から見たときに、防漏層のうちインジケータ層と重複する部分の少なくとも一部分の可視光透過率が高く、防漏層側からインジケータ層の変色をより視認しやすい。
【0033】
本発明の更に別の態様(態様7)は、態様1~6のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記防漏層の前記インジケータ層が配置されている側の反対側に、バックシート層を更に有しており、前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記バックシート層のうち前記インジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の坪量が、前記バックシート層の他の部分よりも小さい。
【0034】
態様7に係る吸収性物品では、積層方向から見たときに、バックシート層のうちインジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の坪量が、バックシート層の他の部分よりも小さい。
【0035】
これにより、態様7に係る吸収性物品では、バックシート層側からインジケータ層の変色をより視認しやすい。
【0036】
本発明の更に別の態様(態様8)は、態様1~7のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記インジケータ層よりも前記防漏層側の層が、少なくとも前記インジケータ層と重複する領域において、それらすべての層をあわせて可視スペクトル領域における30.0%以上90.0%以下の可視光透過率を有する。
【0037】
態様8に係る吸収性物品では、インジケータ層よりも防漏層側の層が、少なくともインジケータ層と重複する領域において、それらすべての層をあわせて可視スペクトル領域における30.0%以上90.0%以下の可視光透過率を有する。
【0038】
態様8に係る吸収性物品では、防漏層側の層が所定の可視光透過率を有している。そのため、インジケータ層の色の変化を、インジケータ層よりも防漏層側の層を介して検知可能な一方で、糞便や尿がそれらの層を介して視認できないように構成することができる。
【0039】
なお、「インジケータ層よりも防漏層側の層」とは、積層方向から見たときに、インジケータ層に関して、吸収体層が配置されている側の反対側に配置されている全ての層である。したがって、例えば吸収性物品がトップシート層/吸収体層/インジケータ層/防漏層/・・・他の層・・・の順番に配置されている場合、「インジケータ層よりも防漏層側の層」とは、防漏層及び上記の「他の層」を意味する。
【0040】
本発明の更に別の態様(態様9)は、態様1~8のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記インジケータ層が、前記コアラップ層内に入り込んでいるコアラップ層含浸部を有している。
【0041】
態様9に係る吸収性物品では、インジケータ層は、コアラップ層内に入り込んでいるコアラップ層含浸部を有している。コアラップ層内において、尿はコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層全体に移動しやすい。すなわち、コアラップ層含浸部は、着用者が排尿した際に、吸収コア層からコアラップ層に流入する尿がコアラップ層を通ってインジケータ層全体に到達するためのパスとして作用する。
【0042】
これにより、態様9に係る吸収性物品では、更に高い応答性を実現することができる。
【0043】
本発明の更に別の態様(態様10)は、態様9に記載の吸収性物品において、前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記コアラップ層含浸部の面積が、前記インジケータ層の面積の20.0%以上である。
【0044】
態様10に係る吸収性物品では、態様9に係る吸収性物品の構成を前提として、吸収性物品を積層方向から見たときに、コアラップ層含浸部の面積がインジケータ層の面積の所定の割合よりも大きいため、コアラップ層内において尿がコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層全体に特に移動しやすい。
【0045】
これにより、更に高い応答性を実現することができる。
【0046】
本発明の更に別の態様(態様11)は、態様9又は10に記載の吸収性物品において、前記コアラップ層含浸部が、部分的に前記コアラップ層の前記吸収コア層側の面まで達しており、かつ前記吸収コア層に接している。
【0047】
態様11に係る吸収性物品では、このような構成により、吸収コア層により吸収された尿が直接インジケータ層に接触することができる。
【0048】
これにより、態様11に係る吸収性物品では、更に高い応答性を実現することができる。
【0049】
本発明の更に別の態様(態様12)は、態様11に記載の吸収性物品において、前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記コアラップ層含浸部のうち前記吸収コア層側の面まで達している部分の面積が、前記インジケータ層の面積の50.0%以下である。
【0050】
態様12に係る吸収性物品では、上記の構成により、コアラップ層の吸収コア層側からコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層に到達する尿が、インジケータ層のうちコアラップ層側にある部分付近でコアラップ層によって面方向に拡散されやすく、特にインジケータ層全体に尿を移動させやすい。これにより、更に高い応答性を実現することができる。
【0051】
本発明の更に別の態様(態様13)は、態様1~12のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記吸収性物品を積層方向から見たときに、前記吸収コア層が、前記インジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の密度が前記吸収コア層の他の領域よりも大きい。
【0052】
吸収コア層のうち他の領域よりも高密度な部分、例えばエンボス加工された部分の周辺では、他の部分と比較して尿の厚さ方向への移動速度が速い。これは、高密度部分を伝って尿が移動しやすいためである。
【0053】
態様13に係る吸収性物品では、吸収性物品を積層方向から見たときに、吸収コア層のうち他の領域よりも高密度な部分が、インジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分と重複している。そのため、着用者が排尿した際に、より早く尿をインジケータ層に移動させやすい。
【0054】
これにより、態様13に係る吸収性物品では、更に高い応答性を実現することができる。
【0055】
本発明の更に別の態様(態様14)は、態様1~13のいずれか一つに記載の吸収性物品において、前記インジケータ層が、前記コアラップ層及び前記防漏層のいずれにも含浸していない非含浸部を有している。
【0056】
インジケータ層のうち非含浸部は、コアラップ層及び防漏層に含浸している部分と比較して、インジケータ層を構成する成分の密度が大きい。そのため、非含浸部は、コアラップ層及び防漏層に含浸している部分と比較して尿による変色の度合いが大きい。
【0057】
これにより、態様14に係る吸収性物品では、より高い視認性を実現することができる。
【0058】
本発明の更に別の態様(態様15)は、態様1~14のいずれか一つに記載の吸収性物品が、トイレトレーニング用である。
【0059】
トイレトレーニングを開始するには、脳機能や泌尿機能など幼児の心身の発達程度が一定以上となることが必要であるが、心身の発達程度には個人差があるため、容易には把握しづらい。
【0060】
態様15に係る吸収性物品は、インジケータ層が尿に応答するとともに、幼児の生育状態に応じて、トイレトレーニング用インジケータの尿への応答が異なるので、当該幼児におけるトイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0061】
本発明の更に別の態様(態様16)は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している、インジケータ組成物である。
【0062】
態様16に係るインジケータ組成物は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能である。より具体的には、排尿の有無を検知するための変色(すなわち、インジケータ中のpH指示薬の酸性側の色からアルカリ性側の色への変色)とは異なり、尿比重に応じて(すなわち、尿中のナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)等のイオン濃度に応じて)アルカリ性側の外観色から変色するため、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用した時に、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすくなっている。
【0063】
そして、態様16に係るインジケータ組成物は、40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している。そのため、例えば吸収性物品の製造時に、当該融点又は軟化点においてインジケータ組成物を防漏層に塗布等して配置し、インジケータ組成物が凝固する前にコアラップ層をインジケータ組成物上に配置することで、例えば態様1~15に記載の吸収性物品を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0064】
本開示によれば、視認性及び応答性を向上させた、尿比重の変化を検知可能なインジケータを備えた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に従う使い捨ておむつ1の模式図である。
図2図2は、図1における使い捨ておむつ1のII-II線に沿った断面の拡大端面図である。
図3図3は、図2における領域Xの拡大図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。
図6図6は、本発明の第4の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。
図7図7は、本発明の第5の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。以下、本発明の吸収性物品について、吸収性物品の一例である使い捨ておむつに適用した実施形態を用いて、詳細に説明する。なお、本明細書では、特に断りのない限り、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。また、本発明において、吸収性物品の積層方向とは、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品を構成する各層が積層されている方向を意味する。
【0067】
《吸収性物品》
本発明の吸収性物品は、トップシート層、吸収体層、インジケータ層、及び防漏層をこの順に有しており、吸収体層は、吸収コア層及び吸収コア層の少なくとも防漏層側を被覆しているコアラップ層を有している。インジケータ層は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ少なくとも部分的に、コアラップ層と防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている。
【0068】
ここで、「直接接合されて」とは、インジケータ層及び防漏層、並びにインジケータ層及びコアラップ層が、それぞれ他の層、例えば接着剤の層などを介することなく物理的に直接接した状態で接合されていることを意味する。
【0069】
また、インジケータ層が防漏層とコアラップ層との「間に配置されている」とは、吸収性物品を積層方向から見たときに、コアラップ層、インジケータ層、及び防漏層がこの順に配置されている部分を有する構成を意味している。したがって、インジケータ層の一部分がコアラップ層及び/又は防漏層に入り込んでいてもよい。ここで、インジケータ層のうち、コアラップ層及び/又は防漏層に入り込んでいる部分の一部が、コアラップ層及び/又は防漏層の反対側(コアラップ層の肌対向面側及び又は防漏層の非肌対向面側)にまで到達している場合にも、インジケータ層がコアラップ層と防漏層との間に配置されていると解される。
【0070】
本発明の吸収性物品では、インジケータ層は、尿比重に応じて変色可能である。より具体的には、排尿の有無を検知するための変色(すなわち、インジケータ中のpH指示薬の酸性側の色からアルカリ性側の色への変色)とは異なり、尿比重に応じて(すなわち、尿中のナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)等のイオン濃度に応じて)アルカリ性側の外観色から変色するため、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用した時に、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすくなっている。
【0071】
このようなインジケータ層を用いた吸収性物品では、変色をより正確に確認する観点から、高い視認性が求められる。また、尿比重に応じた変色は、着用者の身体の状態、例えば成長の度合いや脱水症状の有無等を把握するために有用であるが、そのような状態の把握は、着用者による放尿後、よりすみやかに行われるのが望ましい。
【0072】
本発明の吸収性物品では、インジケータ層がコアラップ層と防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている。
【0073】
インジケータ層がコアラップ層と直接接合されていると、コアラップ層で保持される尿が当該接合部分を通してインジケータ層に流入しやすい。そのため、インジケータ層がコアラップ層と直接接合されていない場合と比較してより早くインジケータ層が変色する。したがって、応答性を向上させることができる。
【0074】
また、インジケータ層が防漏層と直接接合されていると、インジケータ層が防漏層と直接接合されていない場合と比較して、防漏層側からインジケータ層を視認しやすい。
【0075】
即ち、本発明の吸収性物品は、高い視認性及び応答性を有している。
【0076】
図1は、本発明の第1の実施形態に従う使い捨ておむつ1の模式図である。また、図2は、図1における使い捨ておむつ1のII-II線に沿った断面の拡大端面図である。なお、図1及び図2は、本発明の吸収性物品を限定する趣旨ではない。
【0077】
図1に示すように、使い捨ておむつ1は、着用時に着用者の下腹部に位置する前面部と、着用時に着用者の臀部に位置する後面部と、前面部及び後面部の間に位置し且つ着用時に着用者の股下部に位置する中間部と、を備えている。使い捨ておむつ1は、前面部の左右方向の両端部と後面部の左右方向の両端部とが互いに接合されていることで、前面部の上側端部と後面部の上側端部とによって形成されるウエスト開口部と、中間部の左右方向の両側部に形成される一対のレッグ開口部とを備えた、パンツ型の外形形状を有している。すなわち、使い捨ておむつ1は、いわゆるパンツ型の使い捨ておむつである。
【0078】
図2に示すように、使い捨ておむつ1は、従来の使い捨ておむつと同様に、肌対向面側から非肌対向面側に向かってこの順に、トップシート層2、吸収体層4、インジケータ層5、及び防漏層3をこの順に有している。吸収体層4は、吸収コア層4a及び吸収コア層4aの少なくとも防漏層3側を被覆しているコアラップ層4bを有している(図2では全体を被覆している)。インジケータ層5は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ少なくとも部分的に、コアラップ層4bと防漏層3とに直接接合されて、それらの間に配置されている。
【0079】
本発明の吸収性物品は、少なくとも尿を吸収対象とする吸収性物品であれば特に限定されず、パンツ型の使い捨ておむつのほか、例えば、テープ型の使い捨ておむつや失禁パッド等の様々な吸収性物品に適用することができる。
【0080】
例えば、本発明のインジケータが、乳幼児のトイレトレーニング用の使い捨ておむつに適用された場合、乳幼児から排出される尿の比重の変化を適切に可視化することで、乳幼児の体がトイレトレーニングの準備が整っているかどうかを推定することができるという利点がある。即ち、本発明の吸収性物品は、トイレトレーニング用であることが好ましい。
【0081】
また、本発明のインジケータが、大人用の使い捨ておむつに適用された場合、被介護者等の大人の着用者から排出される尿の比重の変化を適切に可視化することで、脱水症状の予兆などを検知することができるという利点がある。
【0082】
なお、本発明の吸収性物品は、尿比重に応じたインジケータ層の変色の判定を容易にする観点から、尿比重の変色の色見本となる着色部を有していることができる。
【0083】
着色部は、防漏層非肌対向面側、すなわち吸収性物品を積層方向から見たときに、防漏層に関してインジケータ層が配置されている側の反対側に配置されていることが好ましい。これにより、着色部の色味とインジケータ層の変色とを近しくすることができ、より正確に尿比重に応じたインジケータ層の変色を観察することができる。
【0084】
また、着色部は、吸収性物品の展開状態における面方向に関して、インジケータ層と離間して配置されていることが好ましい。これにより、インジケータ層の変色と着色部とを明瞭に識別することができる。
【0085】
なお、インジケータ層の変色の度合いは、肉眼で判定してもよく、又は光学的に測定した反射率等で判定してもよい。肉眼で変色の度合いを判定する場合は、例えば、インジケータの色調と、予め作成した標準色調表(すなわち、色見本)などの色調とを、肉眼で比較することによって判定することができる。また、光学的測定で変色の度合いを判定する場合は、例えば、デジタルカメラやスマートフォン等の撮影手段によって撮影したインジケータの画像を、任意のコンピューターやスマートフォン等にインストールされた画像処理プログラムで処理することによって判定することができる。
【0086】
〈トップシート層〉
トップシート層は、吸収性物品の厚さ方向において肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌に当接し得る接触面、すなわち吸収性物品の肌対向面側の表面を形成するものであり、不織布等の液透過性のシート状部材によって形成されている。トップシート層の外形形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品のトップシート層として用い得るものであれば特に制限されず、所望の液透過性や肌触り、柔軟性、強度等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0087】
〈吸収体層〉
吸収体層は、吸収コア層及び吸収コア層の少なくとも防漏層側を被覆しているコアラップ層を有している。
【0088】
吸収体層の外形形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の吸収体層として用い得るものであれば特に制限されず、所望の吸水性や柔軟性、強度等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0089】
(吸収コア層)
吸収コア層は、吸水性繊維及び高吸収性ポリマーの少なくとも一方を含む吸収性材料からなっていることができる。ここで、吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維(例えば、粉砕パルプ等)、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維などを用いることができる。また、高吸収性ポリマーとしては、例えば、デンプン系の高吸収性ポリマー;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の合成ポリマー系の高吸収性ポリマー(いわゆる「SAP」)などの粒状物を用いることができる。
【0090】
吸収性物品を積層方向から見たときに、吸収コア層は、インジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の密度が吸収コア層の他の領域よりも大きいことが好ましい。
【0091】
吸収コア層のうち、吸収コア層の他の領域よりも密度が大きい部分は、例えば吸収コア層に施されたエンボス等であってよい。
【0092】
吸収コア層のうち高密度領域の周辺では、高密度部分を伝って尿が移動しやすいため、吸収コア層の他の部分と比較して尿の厚さ方向への移動速度が速い。そのため、吸収コア層が高密度領域を有する場合、吸収コア層が高密度領域を有しない場合と比較して、着用者が排尿した際に、より早く尿をインジケータ層に移動させやすい。
【0093】
図3は、図2における領域Xの拡大図である。なお、図3は、本発明の吸収性物品を限定する趣旨ではない。
【0094】
図3に示すように、本発明の第1の実施形態に従う使い捨ておむつ1が有する吸収コア層4aは、吸収コア層4aの他の領域よりも密度が大きい部分、すなわち高密度領域41を有している。高密度領域41は、積層方向から見たときに、インジケータ層5と重複する領域の少なくとも一部分と重複している。
【0095】
(コアラップ層)
コアラップ層は、吸収コア層の少なくとも防漏層側を被覆している、親水性の層である。コアラップ層は、例えばSMS不織布、SB不織布、スパンレース不織布、または、ティッシュシート(パルプ繊維)等によって形成されていることができる。コアラップ層は、吸収コア層の少なくとも防漏層側を被覆していればよいが、例えば吸収コア層の全面を被覆していてもよい。
【0096】
〈インジケータ層〉
インジケータ層は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつなくとも部分的に、コアラップ層と防漏層とに直接接合されて、それらの間に配置されている。
【0097】
インジケータ層は、40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有していることができる。ここで、「軟化点」及び「融点」は、それぞれ、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で、固体状から液状に変化する吸熱挙動を測定する際の、「吸熱開始温度」及び「ピークトップ温度」を意味する。具体的な成分は、以下の〈インジケータ組成物〉において説明する。
【0098】
インジケータ層がこのような範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している場合、例えば吸収性物品の製造時に、当該融点又は軟化点においてインジケータ層を防漏層に塗布等して配置し、インジケータ層が凝固する前にコアラップ層をインジケータ層上に配置して、随意にプレスすることで、態様1に記載の吸収性物品を容易に形成することができる。
【0099】
更には、吸収性物品は、通常は40℃よりも低い温度、例えば着用者の一般的な体温である36℃前後の温度で使用される。したがって、使用時にインジケータ層が温度によって変形しにくく、例えば着用者の動作などによってインジケータ層とコアラップ層及び防漏層との接合が破壊される等しにくい。
【0100】
これにより、高い視認性及び応答性を実現しつつ、高い生産性及び耐久性が得られる。
【0101】
また、インジケータ層は、親水性高分子及びアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方を更に含有していることができる。具体的な親水性高分子及びアミン系の陽イオン界面活性剤は、以下の〈インジケータ組成物〉において説明する。
【0102】
インジケータ層が親水性高分子及びアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方を更に含有している場合、インジケータ層が尿と接触した時の尿比重の変化に対する変色の応答性が高く、尿比重の変化量が小さい場合でも明確に変色することができる。
【0103】
また、インジケータ層は、36℃で液体である液状成分を含有していることができる。具体的な成分は、以下の《インジケータ組成物》において説明する。
【0104】
また、インジケータ層は、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色することができる。このような変色を呈するための構成についても、以下の《インジケータ組成物》において説明する。
【0105】
インジケータ層が、排尿の有無を検知するための変色(すなわち、酸性側の色からアルカリ性側の色への変色)とは異なり、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色するものである場合、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用した時に、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすく、特に、尿と接触する前の初期状態の色から高比重の尿に接触した時の黄色又は橙色への変色がより視認しやすい。これにより、尿比重の変化をより精度よく、より容易に検知することができる。
【0106】
なお、以下の《インジケータ組成物》の記載は、本発明の吸収性物品が有するインジケータ層に形成することができる材料を例示しているにすぎず、本発明の吸収性物品が有するインジケータ層を形成する材料は、これらに限定されない。
【0107】
(コアラップ層含浸部)
インジケータ層は、コアラップ層内に入り込んでいるコアラップ層含浸部を有していることが好ましい。
【0108】
インジケータ層がコアラップ層含浸部を有する場合、コアラップ層内において、尿はコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層全体に移動しやすい。すなわち、コアラップ層含浸部は、着用者が排尿した際に、吸収コア層からコアラップ層に流入する尿がコアラップ層を通ってインジケータ層全体に到達するためのパスとして作用する。これにより、コアラップ層内において、尿はコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層全体に移動しやすい。
【0109】
ここで、インジケータ層がコアラップ層内に「入り込んでいる」とは、インジケータ層を構成するインジケータ組成物のうち、固体状の成分、例えば以下の《インジケータ組成物》において説明する熱可塑性成分がコアラップ層内に存在する状態を意味する。なお、コアラップ層含浸部は、インジケータ層のうち他の部分と連続している。
【0110】
コアラップ層含浸部の有無は、例えば吸収性物品の積層方向の断面を電子顕微鏡等で観察することによって知ることができる。
【0111】
吸収性物品を積層方向から見たときに、コアラップ層含浸部の面積は、インジケータ層の面積の20.0%以上であることが好ましい。
【0112】
コアラップ層含浸部の面積がインジケータ層の面積の20.0%以上であると、コアラップ層内において尿がコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層全体に特に移動しやすい。これにより、更に高い応答性を実現することができる。
【0113】
また、吸収性物品を積層方向から見たときに、コアラップ層含浸部の面積は、インジケータ層の面積の30.0%以上95.0%以下であってよい。この割合は、20.0%以上、30.0%以上、40.0%以上、又は50.0%以上であってよく、95.0%以下、75.0%以下、又は65.0%以下であってよい。
【0114】
図4は、本発明の第2の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。なお、図4は、本発明の吸収性物品を限定する趣旨ではない。
【0115】
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に従う使い捨ておむつ1では、インジケータ層5は、コアラップ層4b内に入り込んでいるコアラップ層含浸部52を有している。
【0116】
また、コアラップ層含浸部は、部分的にコアラップ層の吸収コア層側の面まで達しており、かつ吸収コア層に接していることが好ましい。
【0117】
このような構成により、吸収コア層により吸収された尿が直接インジケータ層に接触することができる。そのため、吸収コア層により吸収された尿が、より早くインジケータ層全体に拡散することができ、更に高い応答性を実現することができる。
【0118】
なお、インジケータ層の面積に対する吸収性物品を積層方向から見たコアラップ層含浸部の面積の比率は、例えば次の(1)~(5)に示すような方法によって測定することができる:
(1)コアラップ層とインジケータ層と防漏層とが一体となった状態のサンプルを吸収性物品から取り出し、インジケータ層の存在領域を特定する(例えば、6mm幅×100mm長さでインジケータ層が塗布されたサンプルであれば、その長手方向中央部分の6mm幅×50mm長さの領域)。当該領域を測定対象領域とする。
(2)吸収性物品からコアラップ層を剥離させる。剥離させたコアラップ層は、吸収コア層及びインジケータ層の両方からも剥離されている。
(3)コアラップ層のインジケータ層側を上にし、標準白色板の上に載せ、測定対象領域を含む画像をデジタルカメラで撮影する。※通常の室内光の条件下で撮影は行い、影や反射光が入らないように注意し撮影を行う。
(4)撮影した画像につき、撮影領域におけるホワイトバランスを調整し、コアラップ層を構成する材料(インジケータ層と重さならない領域)のHSV色空間のH(色相)の値を、40~70の範囲内とする。
(5)次いで、測定対象領域における、H(色層)の値が、100以上となる部位の面積を測定し、測定対象領域全体の面積で除した値を、インジケータ層の面積に対する吸収性物品を積層方向から見たコアラップ層含浸部の面積の比率とする。
【0119】
ここで、吸収性物品を積層方向から見たときに、コアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積は、インジケータ層の面積の50.0%以下であることが好ましい。
【0120】
コアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積が上記のような範囲であると、コアラップ層の吸収コア層側からコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層に到達する尿が、インジケータ層のうちコアラップ層側にある部分付近でコアラップ層によって面方向に拡散されやすく、特にインジケータ層全体に尿を移動させやすい。
【0121】
これにより、更に高い応答性を実現することができる。
【0122】
吸収性物品を積層方向から見たときに、コアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積は、インジケータ層の面積の50.0%以下0.2%以上であることが特に好ましい。
【0123】
コアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積が50%以下であると、コアラップ層の吸収コア層側からコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層に到達する尿が、インジケータ層のうちコアラップ層側にある部分付近でコアラップ層によって面方向に拡散される幅が特に大きい。他方、コアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積が0.2%以上であると、尿がコアラップ層の吸収コア層側からコアラップ層含浸部を伝ってインジケータ層に到達するためのパスが十分に形成される。
【0124】
コアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積は、インジケータ層の面積の50.0%以下、20.0%以下、又は5.0%以下であってよく、0.2%以上、0.5%以上、又は1.0%以上であってよい。
【0125】
なお、インジケータ層の面積に対するコアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積の比率は、例えば以下の(1)~(5)に示すような方法によって測定することができる:
(1)コアラップ層とインジケータ層と防漏層とが一体となった状態のサンプルを吸収性物品から取り出し、インジケータ層の存在領域を特定する(例えば、6mm幅×100mm長さでインジケータ層が塗布されたサンプルであれば、その長手方向中央部分の6mm幅×50mm長さの領域)。当該領域を測定対象領域とする。
(2)吸収性物品からコアラップ層を剥離させる。剥離させたコアラップ層は、吸収コア層及びインジケータ層の両方からも剥離されている。
(3)コアラップ層の吸収コア層側を上にし、標準白色板の上に載せ、測定対象領域を含む画像をデジタルカメラで撮影する。※通常の室内光の条件下で撮影は行い、影や反射光が入らないように注意し撮影を行う。
(4)撮影した画像につき、撮影領域におけるホワイトバランスを調整し、コアラップ層を構成する材料(インジケータ層と重さならない領域)のHSV色空間のH(色相)の値を、40~70の範囲内とする。
(5)次いで、測定対象領域における、H(色層)の値が、100以上となる部位の面積を測定し、測定対象領域全体の面積で除した値を、インジケータ層の面積に対する吸収性物品を積層方向から見たコアラップ層含浸部の面積の比率とする。
【0126】
図5は、本発明の第3の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。なお、図5は、本発明の吸収性物品を限定する趣旨ではない。
【0127】
図5に示すように、本発明の第3の実施形態に従う使い捨ておむつ1では、コアラップ層含浸部52が、部分的にコアラップ層4bの吸収コア層4a側の面まで達しており、かつ吸収コア層4aに接している。
【0128】
(防漏層含浸部)
防漏層が疎水性の不織布の層である場合、インジケータ層は、防漏層内に入り込んでいる防漏層含浸部を有していることが好ましい。
【0129】
防漏層が疎水性の不織布の層であると、尿中の液体が防漏層の反対側に漏出することを抑制しつつ、尿中の揮発成分、例えば水蒸気等を放出することができる。しかしながら、疎水性の不織布の層は、不織布の空隙にある空気と防漏層を形成する材料との屈折率の違いにより、細孔のない層と比較して通常は可視光透過率が低い傾向にある。インジケータ層が防漏層内に入り込んでいると、吸収性物品の非肌対向面側から見たときに、インジケータ層が入り込んでいない防漏層のみの厚みが低減されることにより、インジケータ層の視認性が高い。
【0130】
ここで、インジケータ層が防漏層内に「入り込んでいる」とは、インジケータ層を構成するインジケータ組成物のうち、固体状の成分、例えば以下の《インジケータ組成物》において説明する熱可塑性成分が防漏層内に存在する状態を意味する。なお、防漏層含浸部は、インジケータ層のうち他の部分と連続している。
【0131】
防漏層含浸部の有無は、例えば吸収性物品の積層方向の断面を電子顕微鏡等で観察することによって知ることができる。
【0132】
図6は、本発明の第4の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。なお、図6は、本発明の吸収性物品を限定する趣旨ではない。
【0133】
図6に示すように、本発明の第4の実施形態に従う使い捨ておむつ1では、インジケータ層5は、防漏層3内に入り込んでいる防漏層含浸部53を有している。
【0134】
(非含浸部)
インジケータ層は、コアラップ層及び防漏層のいずれにも含浸していない非含浸部を有していることが好ましい。
【0135】
上記のように、インジケータ層のうち非含浸部は、インジケータ層を構成する成分の密度が大きい。そのため、非含浸部は、コアラップ層及び防漏層に含浸している部分と比較して尿による変色の度合いが大きい。
【0136】
なお、非含浸部は、インジケータ層がコアラップ層及び防漏層に含浸している部分、すなわちコアラップ層含浸部及び/又は防漏層含浸部が存在する事を前提としない。すなわち、インジケータ層は、非含浸部のみで構成されていてもよい。なお、インジケータ層がコアラップ層含浸部及び/又は防漏層含浸部を有している場合、非含浸部は、これらの部分と連続している。
【0137】
反応性向上の観点から、インジケータ層がコアラップ層含浸部及び/又は防漏層含浸部を有する場合、吸収性物品の積層方向に関して、非含浸部は、これらの層よりも厚いことが好ましい。
【0138】
非含浸部の有無は、例えば吸収性物品の積層方向の断面を電子顕微鏡等で観察することによって知ることができる。また、非含浸部、コアラップ層含浸部、及び防漏層含浸部の厚さも、例えば吸収性物品の積層方向の断面を電子顕微鏡等で観察することによって比較することができる。
【0139】
非含浸部は、例えば図3~7に示すような態様で、コアラップ層と防漏層との間に配置されている。
【0140】
〈防漏層〉
防漏層は、吸収性物品の厚さ方向において非肌対向面側の位置に配置されて、吸収性物品の非肌対向面側の表面を形成する。吸収性物品の着用者から排出された尿等の排泄物が吸収性物品の外部へ漏出するのを防ぎ得る、樹脂フィルムや疎水性不織布等の液不透過性のシート状部材によって形成されている。
【0141】
本発明の吸収性物品において、インジケータ層が36℃で液体である液状成分を含有している場合、吸収性物品を積層方向から見たときに、防漏層のうちインジケータ層と重複する部分の少なくとも一部分において、液状成分が、防漏層に含浸していることが好ましい。
【0142】
液状成分が防漏層に含浸していると、インジケータ層と防漏層との間の空隙や、防漏層内部の微細な空間を液状成分が埋める。そのため、当該部分において乱反射が抑制されることによって、可視光透過率が防漏層の他の部分よりも高くなる。そのため、防漏層側、すなわち吸収性物品の非肌対向面側からインジケータ層の変色をより視認しやすい。
【0143】
液状成分の防漏層への含浸の態様は、特に限定されないが、例えば防漏層が微細な細孔を有する透湿性フィルムや疎水性の不織布である場合には、液状成分は、防漏層の細孔や不織布の空隙に充填されることによって防漏層に含浸していることができる。また、防漏層が細孔を有しないフィルムである場合には、液状成分は、フィルムに浸透することによって含浸していることができる。
【0144】
図7は、本発明の第5の実施形態に従う使い捨ておむつ1の、図2における領域Xと同様の領域の拡大図である。
【0145】
図7に示すように、本発明の第5の実施形態に従う使い捨ておむつ1では、防漏層3のうちインジケータ層5と重複する部分の少なくとも一部分において、液状成分51が、防漏層3に含浸している。
【0146】
なお、吸収性物品の非肌対向面側からのインジケータ層の尿比重に応じた変色に対する視認性を向上させつつ、同側からの糞便や尿の視認性を抑制する観点から、吸収性物品を積層方向から見たときに、インジケータ層よりも防漏層側の層は、少なくともインジケータ層と重複する領域において、それらすべての層をあわせて可視スペクトル領域における30.0%以上90.0%以下の可視光透過率を有することが好ましい。
【0147】
なお、「インジケータ層よりも防漏層側の層」とは、吸収性物品がインジケータ層よりも非肌対向面側の層と同義であり、例えば防漏層を意味する。本発明の吸収性物品が、インジケータ層よりも非肌対向面側に防漏層に加えて更に他の層も有している場合には、「インジケータ層よりも防漏層側の層」は、防漏層及び当該層を合わせたものを意味する。
【0148】
なお、可視スペクトル領域における可視光透過率は、インジケータ層よりも防漏層側の層を吸収性物品から剥離させ、その厚さ方向の可視光透過率を透過率測定器(日本電色工業株式会社製の交照側光方式色差計A300/ZE-2000型)によって計測することにより求めることができる。
【0149】
〈バックシート層〉
本発明の吸収性物品は、防漏層のインジケータ層が配置されている側の反対側、すなわち非肌対向面側に、バックシート層を更に有していることができる。この場合、防漏層に替えてバックシート層が吸収性物品の非肌対向面側の表面を形成する。バックシート層は、非肌対向面側から吸収性物品を見たときに、インジケータ層の変色を視認できる程度の可視光透過率を有している。
【0150】
インジケータ層の視認性向上の観点から、吸収性物品を積層方向から見たときに、バックシート層のうちインジケータ層と重複する領域の少なくとも一部分の坪量は、バックシート層の他の部分よりも小さいことが好ましい。
【0151】
《インジケータ組成物》
本発明のインジケータ組成物は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能であり、かつ40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している、インジケータ組成物である。
【0152】
上記のとおり、本発明のインジケータ組成物を使用することで、本発明の吸収性物品を容易に形成することができる
【0153】
本開示のインジケータ組成物は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整され、尿に接触すると尿比重に応じた色に変色可能である。本発明のインジケータ組成物は、例えば、pH指示薬と、20質量%以上の、常温で固体の脂肪族アルコールと、10質量%以上の親水性高分子及び10質量%以上のアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方の成分と、を含有していることができる。
【0154】
インジケータ組成物は、尿と接触する前の初期状態においてアルカリ性側の外観色に調整されているが、吸収性物品の着用者から排出される尿に接触すると、酸性側の外観色に変色する。このとき、インジケータ組成物は、その尿の比重の値に応じて異なる色調に変色する。
【0155】
インジケータ組成物の色調に関し、アルカリ性側及び酸性側の外観色は、尿の接触による呈色前後の相対的なpHの関係によって定まるものであり、それぞれの外観色の色調は、インジケータ組成物に含まれるpH指示薬の種類によって異なる。例えば、pH指示薬としてブロモチモールブルーを用いた場合、アルカリ性側の外観色は紫色、青色又は青緑色となり、酸性側の外観色は黄緑色、黄色又は橙色となる。本発明のインジケータ組成物は、従来の排尿の有無を検知するための変色(すなわち、インジケータ組成物中のpH指示薬の酸性側の色からアルカリ性側の色への変色)とは異なり、尿比重に応じてアルカリ性側の外観色から酸性側の外観色へ変色するため、使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用したときに、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすくなる。
【0156】
なお、本発明のインジケータ組成物は、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色するものが好ましい。このようなインジケータ組成物は、排尿の有無を検知するための変色、すなわちインジケータ組成物中のpH指示薬の酸性側の色からアルカリ性側の色への変色とは異なり、低比重の尿に接触すると青色又は緑色に変色し、高比重の尿に接触すると黄色又は橙色に変色するので、吸収性物品に適用したときに、吸収性物品の着用者又はその補助者が尿比重の変化を認識しやすく、特に、尿と接触する前の初期状態の色から高比重の尿に接触した時の黄色又は橙色への変色がより視認しやすくなる。これにより、このようなインジケータ組成物は、尿比重の変化をより精度よく、より容易に検知することができる。
【0157】
ここで、尿と接触する前の初期状態のインジケータ組成物をアルカリ性側の外観色に調整する手段は、特に限定されないが、例えば、インジケータ組成物に含まれるpH指示薬をアルカリ性側の色調に呈色し得るアルカリ化剤(例えば、塩基、塩類、緩衝剤等の一部のpH調整剤など)を含有させることなどが挙げられる。
【0158】
〈pH指示薬〉
本発明のインジケータ組成物は、pH指示薬を含んでいることができる。pH指示薬としては、吸収性物品のインジケータ組成物に用い得るものであれば特に限定されないが、イオン強度の増大により解離が促進されるpH指示薬が好ましい。そのようなpH指示薬の具体的な例としては、ブロモチモールブルー(BTB)、ゲンチアナバイオレット、ブロモクレゾールパープル、マラカイトグリーン、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、コンゴーレッド、メチルオレンジ、リトマス、フェノールレッド、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、及びアリザリンイエローRなどを挙げることができる。これらのpH指示薬は、1種類のpH指示薬を単独で用いてもよく、2種類以上のpH指示薬を併用してもよい。
【0159】
好ましいpH指示薬としては、ブロモチモールブルー(BTB)、ブロモクレゾールパープル、チモールブルー、フェノールレッド、クロロフェノールレッド、ブロモクレゾールグリーン及びメチルレッドなどが挙げられる。これらのpH指示薬は、イオン強度の増強で解離が促進されるため好ましい。
【0160】
本発明のインジケータ組成物においては、pH指示薬として2種類以上のpH指示薬を含むことが好ましい。2種類以上のpH指示薬を組み合わせて用いることで、より小さい比重差の尿に対しても明確に変色することができるので、尿比重の変化をより精度よく、より確実に検知することができる。また、変色域の異なる2種類以上のpH指示薬を組み合わせることで、尿比重の検出範囲を広げることができ、尿比重の変化による色の変色度合いを増加させて、視認しやすくすることができる。
【0161】
pH指示薬として2種類以上のpH指示薬を併用する場合は、ブロモチモールブルーと他のpH指示薬との組み合わせが好ましい。pH指示薬としてこのような組み合わせを用いると、呈色する際の色調変化を大きくすることができる上、変色域も拡張することができるという利点がある。なお、ブロモチモールブルーと併用し得る他のpH指示薬としては、例えば、チモールブルー、フェノールレッド及びメチルレッドなどが挙げられる。これらのpH指示薬の中でも、メチルレッドを用いることが好ましい。ブロモチモールブルーとメチルレッドの組み合わせは、安定的かつ広範囲の変色(呈色反応)を実現することができる。
【0162】
インジケータ組成物に含まれるpH指示薬の含有量は、特に限定されず、呈色反応の応答性や視認性などを考慮して適宜設定することができる。そのような含有量としては、インジケータ組成物用組成物の全質量(100質量%)に対して、例えば、0.01質量%~10.0質量%であり、好ましくは0.01質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.05質量%~4.0質量%である。pH指示薬の含有量がこのような範囲内であると、インジケータ組成物の応答(呈色)の良好な視認性を確保することができる。
【0163】
〈熱可塑性成分〉
本発明のインジケータ組成物は、40℃~120℃の範囲内の融点又は軟化点を有する熱可塑性成分を含有している。熱可塑性成分は、例えば脂肪族アルコールであってよい。
【0164】
(脂肪族アルコール)
本発明のインジケータ組成物は、インジケータ組成物の全質量(100質量%)に対して20質量%以上の含有量の、常温(20℃)で固体の脂肪族アルコールを含んでいることができる。このような特定の脂肪族アルコールを含んでいることで、インジケータ組成物は、尿や湿気等の水分に対して溶解しにくくなっている。
【0165】
本発明のインジケータ組成物に用い得る脂肪族アルコールとしては、常温で固体であり、吸収性物品のインジケータ組成物に用い得るものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が8~34個(C8~C34)の脂肪族アルコールなどが挙げられる。脂肪族アルコールは、1種類の脂肪族アルコールを単独で用いてもよく、2種類以上の脂肪族アルコールを併用してもよい。
【0166】
好ましい脂肪族アルコールとしては、40℃より高く120℃以下の融点又は軟化点を有する脂肪族アルコールが挙げられ、具体的な例としては、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1-ドコサノール、1-テトラコサノール、1-ヘキサコサノール、1-オクタコサノールなどが挙げられる。インジケータ組成物に含まれる脂肪族アルコールがこのような特定の融点又は軟化点を有するものであると、インジケータ組成物用組成物を溶融状態で不織布やフィルム等の基材に塗工した後に、冷却固化が進行し、インジケータ組成物を基材上の的確な位置に均一に形成することができる。これにより、上記特定の脂肪族アルコールを含むインジケータ組成物は、尿中のナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)と接触した際に素早く変色することができる上、色の変化が小さい場合でも、変色が視認しやすくなるため、尿比重の変化をより精度よく、より確実に検知することができる。
【0167】
インジケータ組成物に含まれる脂肪族アルコールの含有量としては、インジケータ組成物の全質量(100質量%)に対して20質量%以上であれば特に限定されず、尿や湿気等の水分に対する溶解のしにくさや視認性などを考慮して適宜設定することができる。そのような含有量としては、インジケータ組成物用組成物の全質量(100質量%)に対して、例えば、20質量%~80質量%であり、好ましくは30質量%~60質量%である。
【0168】
〈親水性高分子〉
本発明のインジケータ組成物は、10質量%以上の親水性高分子及び10質量%以上のアミン系の陽イオン界面活性剤のうちの少なくとも一方の成分を、含んでいることができる。このような成分を所定量含んでいることで、インジケータ組成物は、尿と接触した時の尿比重の変化に対する変色の応答性が高くなり、尿比重の変化量が小さい場合でも明確に変色することができる。
【0169】
本発明のインジケータ組成物に用い得る親水性高分子としては、親水性を有する高分子であれば特に限定されず、例えば、ポリアミド、セルロース系ポリマー(例えば、セルロース、セルロース誘導体等)、アクリル系ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、無水マレイン酸ポリマー等)、ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール等)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー(例えば、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)等)などが挙げられる。親水性高分子は、1種類の親水性高分子を単独で用いてもよく、2種類以上の親水性高分子を併用してもよい。
【0170】
なお、本明細書においては、親水性高分子と後述する糖アルコール成分の糖アルコールの重合体とを区別するため、親水性高分子は糖アルコールの重合体を除くものとする。
【0171】
本発明のインジケータ組成物においては、親水性高分子としてポリアミドを含むことが好ましい。インジケータ組成物が親水性高分子としてポリアミドを含んでいると、pH指示薬の形態変化に作用し、尿比重の変色範囲が広くなる上、溶解作用が強く、応答速度が速くなる。これにより、親水性高分子としてポリアミドを含むインジケータ組成物は、幅広い尿比重の変化に対しても精度よく検知することができる。なお、ポリアミドは、軟化点が140℃以下のものが好適である。
【0172】
インジケータ組成物に含まれる親水性高分子の含有量としては、インジケータ組成物の全質量(100質量%)に対して10質量%以上であれば特に限定されず、呈色反応の応答性や視認性などを考慮して適宜設定することができる。そのような含有量としては、インジケータ組成物用組成物の全質量(100質量%)に対して、例えば、10質量%~40質量%であり、好ましくは15質量%~30質量%である。
【0173】
〈アミン系の陽イオン界面活性剤〉
本発明のインジケータ組成物に用い得るアミン系の陽イオン界面活性剤としては、陽イオン性の親水基を有するアミン系の界面活性剤であれば特に限定されず、例えば、第4級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤やアルキルアミン塩型の界面活性剤、ピリジン環を有する陽イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0174】
第4級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤の具体的な例としては、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム及び塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0175】
アルキルアミン塩型の陽イオン界面活性剤の具体的な例としては、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩及びトリメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0176】
ピリジン環を有する陽イオン界面活性剤の具体的な例としては、例えば、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム及び塩化セチルピリジニウムなどが挙げられる。
【0177】
なお、上記の陽イオン界面活性剤は、1種類の陽イオン界面活性剤を単独で用いてもよく、2種類以上の陽イオン界面活性剤を併用してもよい。
【0178】
本発明のインジケータ組成物においては、アミン系の陽イオン界面活性剤として第4級アンモニウム塩を含むものが好ましい。アミン系の陽イオン界面活性剤が第4級アンモニウム塩を含むものであると、界面活性能が高く、インジケータ組成物が尿と接触した時の変色速度がより速くなる。これにより、陽イオン界面活性剤として第4級アンモニウム塩を含むインジケータ組成物は、尿比重の変化をより精度よく検知することができる。
【0179】
インジケータ組成物に含まれる陽イオン界面活性剤の含有量としては、インジケータ組成物の全質量(100質量%)に対して10質量%以上であれば特に限定されず、呈色反応の応答性や視認性などを考慮して適宜設定することができる。そのような含有量としては、インジケータ組成物用組成物の全質量(100質量%)に対して、例えば、10質量%~40質量%であり、好ましくは15質量%~30質量%である。
【0180】
〈糖アルコール成分〉
本発明のインジケータ組成物は、糖アルコール成分を任意成分として更に含んでいることができる。本発明のインジケータ組成物は、糖アルコール成分として、糖アルコール及び糖アルコールの重合体のうちの少なくとも一つの成分を、2.5質量%以上の配合割合で更に含んでいることが好ましい。糖アルコール成分は、本発明のインジケータ組成物において、インジケータ組成物がこのような糖アルコール成分を含んでいると、親水性が高まり、尿と接触したときの変色速度を高くすることができる。
【0181】
本発明のインジケータ組成物に用い得る糖アルコール成分としては、糖アルコール及びその重合体が挙げられ、具体的には、グリセリン、エリトリトール、D-トレイトール、L-トレイトール、D-アラビニトール、L-アラビニトール、キシリトール、リビトール、D-イジトール、ガラクチトール、マンニトール、ボレミトール、ペルセイトールなどの糖アルコール、及びこれら糖アルコールの重合体などが挙げられる。好ましい糖アルコール成分としては、例えばグリセリンが挙げられる。なお、これらの糖アルコール成分は、1種類の糖アルコール成分を単独で用いてもよく、2種類以上の糖アルコール成分を併用してもよい。
【0182】
インジケータ組成物に含まれる糖アルコール成分の含有量としては、インジケータ組成物の全質量(100質量%)に対して2.5質量%以上であれば特に限定されず、呈色反応の応答性や視認性などを考慮して適宜設定することができる。そのような含有量としては、インジケータ組成物用組成物の全質量(100質量%)に対して、例えば、2.5質量%~20質量%であり、好ましくは3.0質量%~15.0質量%である。
【0183】
〈液状成分〉
本発明インジケータ組成物は、36℃で液体である液状成分を含有していることができる。このような液状成分としては、例えばワックスやオイルなどの液状成分を挙げることができる。液状成分は、可塑剤や粘着付与剤としてインジケータ組成物に含有されていることができる。本発明のインジケータ組成物は、液状成分として、ワックス及びオイルのうちの少なくとも一つの成分を更に含んでいることが好ましい。本発明のインジケータ組成物において、インジケータ組成物がこのような液状成分を含んでいると、インジケータ組成物用組成物を不織布やフィルム等の基材に塗布する際に、基材への定着性が高くなり、インジケータ組成物を基材上の所定の位置に的確に形成することができる。これにより、このような疎水性成分を含むインジケータ組成物は、尿比重の変化をより精度よく、より確実に検知することができる。なお、液状成分は疎水性の液状成分であってよい。また、液状成分は、親水性の液状成分であってもよい。
【0184】
本発明のインジケータ組成物に用い得るワックスとしては、可塑剤として作用し得るものであれば特に限定されず、例えば、公知の天然ワックスや合成ワックスなどが挙げられる。天然ワックスの具体的な例としては、パラフィンや微結晶ワックス(マイクロクリスタリンワックス)等の石油由来ワックス;蜜蝋や鯨蝋等の動物由来ワックス;カルナバ蝋等の植物由来ワックス;モンタンワックスやオゾケライト等の鉱物由来ワックスなどが挙げられる。合成ワックスの具体的な例としては、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、脂肪酸アミドなどが挙げられる。好ましいワックスとしては、パラフィンや微結晶ワックス等の石油由来ワックスが挙げられる。
【0185】
本発明のインジケータ組成物に用い得るオイルとしては、可塑剤として作用し得るものであれば特に限定されず、例えば、公知のパラフィン系オイルやナフテン系オイル、芳香族系オイルなどが挙げられる。好ましいオイルとしては、ナフテン系オイルが挙げられる。
【0186】
なお、以上の液状成分は、1種類の液状成分を単独で用いてもよく、2種類以上の液状成分を併用してもよい。
【0187】
インジケータ組成物に含まれる液状成分の含有量としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、インジケータ組成物の全質量(100質量%)に対して、0.1質量%~30.0質量%であり、好ましくは1.0質量%~20.0質量%である。
【0188】
〈粘着付与樹脂〉
本発明のインジケータ組成物は、粘着付与樹脂を含有していてよい。粘着性付与樹脂としては、粘着付与剤として作用し得るものであれば特に限定されず、例えば、公知の天然樹脂や石油系樹脂などが挙げられる。天然樹脂の具体的な例としては、ロジン及びロジン誘導体、テルペン及び変性テルペン等の植物由来樹脂などが挙げられる。石油系樹脂の具体的な例としては、C5~C9の脂肪族又は芳香族樹脂、C5~C9の脂肪族及び芳香族共重合樹脂などが挙げられる。
【0189】
〈アルカリ化剤〉
本発明のインジケータ組成物は、アルカリ化剤を更に含んでいることができる。このようなアルカリ化剤を含んでいることで、インジケータ組成物は、尿の接触による呈色前後の色調のムラが生じにくく、変色をより視認しやすくなっている。
【0190】
なお、インジケータ組成物においては、アルカリ化剤は、尿と接触する前の初期状態のインジケータ組成物をアルカリ性側の外観色に調整する手段としても用いられている。
【0191】
本発明のインジケータ組成物に用い得るアルカリ化剤としては、特に限定されないが、例えば、公知の炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸カリウム(KCO)などが挙げられる。
【0192】
本発明のインジケータ組成物においては、アルカリ化剤として炭酸ナトリウムを更に含んでいることが好ましい。炭酸ナトリウムは、水酸化ナトリウムや炭酸カリウム等の他のアルカリ化剤と比べて、インジケータ組成物中の他の成分と均一に混ざりやすいため、変色のムラや変色の異常が生じにくく、また、色の変化が小さい場合でも、変色が視認しやすくなる。これにより、アルカリ化剤として炭酸ナトリウムを含むインジケータ組成物は、尿比重の変化をより精度よく、より確実に検知することができる。
【0193】
〈その他の添加成分〉
本発明のインジケータ組成物は、吸収性物品用のインジケータ組成物に用い得る任意の添加成分を更に含んでいてもよい。そのような添加成分としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤や光安定化剤、抗菌剤、香料などが挙げられる。
【0194】
上記の各成分からなるインジケータ組成物は、特に限定されないが、任意の加熱溶融手段を用いて混合することにより製造することができる。
【実施例0195】
《実施例1~6及び比較例1》
〈実施例1〉
熱可塑性成分としての1-ドコサノールと、アミン系の陽イオン界面活性剤としての第4級アンモニウム塩と、親水性高分子としての軟化点が約120℃のポリアミドと、pH指示薬としてのメチルレッド及びBTBと、アルカリ化剤としての炭酸ナトリウムと、糖アルコール成分としてのグリセリンと、液状成分としてのナフテンオイルとを混合して、インジケータ組成物を得た。
【0196】
次いで、このインジケータ組成物を90℃で溶融して、使い捨ておむつの防漏層としてのポリエチレンフィルムの表面に塗布した。その後、インジケータ組成物が冷却される前に、使い捨ておむつの吸収体層(吸収コア層:高吸収性ポリマー及びパルプ繊維、コアラップ層:親水性処理を施したSMS不織布)をインジケータ組成物の上に積層して、所定のプレス圧でプレスした。最後に、インジケータ組成物を冷却して固化させることで、防漏層とコアラップ層との間に、それらの層と直接接合されたインジケータ層が配置されている、実施例1の使い捨ておむつを製造した。
【0197】
〈実施例2~6〉
インジケータ組成物の溶融温度を異ならせたこと、及びプレス圧を異ならせたことを除いて実施例1と同様にして、実施例1~6の使い捨ておむつを製造した。インジケータ組成物の溶融温度及びプレス圧は、表1に示すとおりである。
【0198】
〈比較例1〉
インジケータ組成物の上に吸収体層を積層する前にインジケータ組成物を冷却して固化させたこと、及びプレスを行わなかったことを除いて実施例1と同様にして、比較例1の使い捨ておむつを製造した。なお、比較例1の使い捨ておむつでは、インジケータ組成物を冷却して固化してインジケータ層を形成した後に、インジケータ層の上にコアラップ層を積層したため、インジケータ層と吸収体層とは接合されていなかった。インジケータ組成物の溶融温度は、表1に示すとおりである。
【0199】
〈変色性評価〉
尿比重が1.000~1.040の範囲の尿を用意し、各比重の尿を各例の製造に用いたインジケータ組成物に接触させた後、インジケータの変色の識別の可否を色見本と比較することによって評価した。全ての尿比重の尿において、尿比重に応じた変色が確認された。
【0200】
〈防漏層の透過率の観察〉
実施例1~6の使い捨ておむつでは、積層方向から見たときに、防漏層のうちインジケータ層と重複する部分の透明度が、比較例1の使い捨ておむつよりも高かった。これは、インジケータ層が含有している液状成分としてのナフテンオイルが、防漏層としてのポリエチレンフィルムに含浸したことによる。
【0201】
〈変色速度評価〉
尿を、使い捨ておむつの吸収体層側から滴下して、評価対象となるインジケータ層に接触させ、3分経過後のインジケータ層の色(尿による変色後の色)、5分経過後のインジケータの色、及び10分経過後のインジケータの色とを、防漏層側から色見本を用いて比較し、両者の色の同一性を評価した。
【0202】
インジケータ層全体の色が色見本と同じ色に変色した場合を「◎」、インジケータ層が部分的に色見本と同じ色に変色した場合を「〇」、最低限判別可能な程度に色見本と同じ色に変色した場合「△」、及び変色が確認できなかった、又は変色はあるが色見本と同じ色であるか判別が困難であった場合を「×」とした。
【0203】
結果を、以下の表1に示す。
【0204】
〈面積率測定〉
各例の使い捨ておむつについて、以下の方法によってコアラップ層の非肌対向面側及び肌対向面側におけるインジケータ層を構成する材料の色の部分の面積をそれぞれ測定した。
(1)コアラップ層とインジケータ層と防漏層とが一体となった状態のサンプルを吸収性物品から取り出し、インジケータ層の存在領域を特定する(例えば、6mm幅×100mm長さでインジケータ層が塗布されたサンプルであれば、その長手方向中央部分の6mm幅×50mm長さの領域)。当該領域を測定対象領域とする。
(2)吸収性物品からコアラップ層を剥離させる。剥離させたコアラップ層は、吸収コア層及びインジケータ層の両方からも剥離されている。
(3)コアラップ層の吸収コア層側を上にし、標準白色板の上に載せ、測定対象領域を含む画像をデジタルカメラで撮影する。同様に、コアラップ層のインジケータ層側を上にし、標準白色板の上に載せ、測定対象領域を含む画像をデジタルカメラで撮影する。※通常の室内光の条件下で撮影は行い、影や反射光が入らないように注意し撮影を行う。
(4)撮影した画像につき、撮影領域におけるホワイトバランスを調整し、コアラップ層を構成する材料(インジケータ層と重さならない領域)のHSV色空間のH(色相)の値を、40~70の範囲内とする。
(5)次いで、測定対象領域における、H(色層)の値が、100以上となる部位の面積を測定し、測定対象領域全体の面積で除した値を、インジケータ層の面積に対する吸収性物品を積層方向から見たコアラップ層含浸部の面積の比率とする。
【0205】
コアラップ層の非肌対向面側におけるインジケータ層を構成する材料の色の部分の面積をインジケータ層の面積で除した値を、インジケータ層の面積に対する吸収性物品を積層方向から見たコアラップ層含浸部の面積の比率とした。同様に、コアラップ層の肌対向面側におけるインジケータ層を構成する材料の色の部分の面積をインジケータ層の面積で除した値を、インジケータ層の面積に対するコアラップ層含浸部のうち吸収コア層側の面まで達している部分の面積の比率とした。
【0206】
結果を、以下の表1に示す。
【0207】
【表1】
【符号の説明】
【0208】
1 使い捨ておむつ
2 トップシート層
3 防漏層
31 低坪量領域
4 吸収体層
4a 吸収コア層
4b コアラップ層
41 高密度領域
5 インジケータ層
51 液状成分
52 コアラップ含浸部
53 防漏層含浸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7