IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-8529活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法
<>
  • 特開-活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法 図1
  • 特開-活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法 図2
  • 特開-活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法 図3
  • 特開-活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008529
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230112BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20230112BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/46
B41J2/01 501
B41J2/01 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112170
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜輝
(72)【発明者】
【氏名】小島 智之
(72)【発明者】
【氏名】小林 広紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石井 煕
【テーマコード(参考)】
2C056
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FD20
2C056KC01
2C056KD08
4J011AA05
4J011QA01
4J011QA03
4J011QA13
4J011QA22
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA45
4J011QA46
4J011QB23
4J011QB24
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA02
4J127AA03
4J127BB051
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC051
4J127BC121
4J127BD411
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF221
4J127BF22X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB151
4J127CB152
4J127CB153
4J127CB281
4J127CB341
4J127CB361
4J127CC022
4J127CC031
4J127CC033
4J127CC113
4J127DA16
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】基材に対する密着性と耐ブロッキング性を両立できる活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、単官能モノマー及び多官能モノマーを含む活性エネルギー線硬化型組成物であって、組成物全体に対する前記単官能モノマーの含有量は、組成物全体に対する前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと前記多官能モノマーの含有量の合計量よりも多いことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、単官能モノマー及び多官能モノマーを含む活性エネルギー線硬化型組成物であって、
組成物全体に対する前記単官能モノマーの含有量は、組成物全体に対する前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと前記多官能モノマーの含有量の合計量よりも多いことを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
組成物全体に対する前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が、1.0質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
組成物全体に対する前記多官能モノマーの含有量が、3.0質量%以上15.0質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記多官能モノマーの官能基数が3であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物又は請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物が収容されていることを特徴とする組成物収容容器。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物又は請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物が収容された収容部と、
活性エネルギー線を照射する照射部と、を有することを特徴とする2次元又は3次元の像形成装置。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物又は請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程を含むことを特徴とする2次元又は3次元の像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、像形成装置体及び像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、広く利用されている。
【0003】
一方、活性エネルギー線硬化型組成物を用いた場合に、基材への密着性を高めることが求められており、例えばアクリルのようなプラスチック基材への密着性を高めることが求められている。従来技術として例えば以下のような技術が提案されている。
【0004】
特許文献1では、色材、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマーおよび光重合開始剤を含むインクジェット用インク組成物が提案されている。特許文献1によれば、非吸収性の記録媒体に対しても良好な印刷品質が得られ、特に記録媒体基材への密着性にすぐれるとしている。
【0005】
特許文献2では、アルミニウム箔基材上に第一の下塗り層、第二の下塗り層を形成し、第二の下塗り層上にインク組成物を吐出し、紫外線照射を行い硬化させるインクジェット記録方法が開示されており、前記インク組成物が、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合開始剤、及び、着色剤を含むとしている。特許文献2によれば、得られる印刷物の耐熱密着性に優れるとしている。
【0006】
特許文献3では、炭素数が13~25の長鎖アルキル基と活性エネルギー線硬化性官能基を有し、ポリカプロラクトン変性されたことを特徴とする活性エネルギー線硬化性ウレタン(メタ)アクリレートが開示されている。特許文献3によれば、耐擦傷性及び潤滑性を要求される分野で塗料又はコーティング剤として好適に使用することができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基材への密着性について求められる水準を達成しようとすると、塗膜強度が下がり、塗膜の耐ブロッキング性が低下する問題があった。一方で、耐ブロッキング性を向上させるために例えば架橋成分を組成物に添加すると、塗膜の内部応力が増大し、基材への密着性が低下してしまう。このように、基材に対する密着性と耐ブロッキング性についてはトレードオフの問題があった。
【0008】
そこで本発明は、基材に対する密着性と耐ブロッキング性を両立できる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、単官能モノマー及び多官能モノマーを含む活性エネルギー線硬化型組成物であって、組成物全体に対する前記単官能モノマーの含有量は、組成物全体に対する前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと前記多官能モノマーの含有量の合計量よりも多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材に対する密着性と耐ブロッキング性を両立できる活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である。
図4】本発明により得られる構造物の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物、組成物収容容器、像形成装置、像形成方法、硬化物、加飾体について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
(活性エネルギー線硬化型組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、単官能モノマー及び多官能モノマーを含み、必要に応じて、重合開始剤、色材、有機溶媒、その他の成分等を含む。
【0014】
従来の活性エネルギー線硬化型組成物では、基材に対する密着性を高めるために塗膜を柔らかくすると、耐ブロッキング性が低下する場合があり、耐ブロッキング性を向上させる手段として、例えば多官能モノマー等の架橋成分を添加すると、基材への密着性が低下するという問題があった。
【0015】
本発明者らは上記の問題を鑑みて鋭意検討を行い、本発明に至った。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、単官能モノマー及び多官能モノマーを含む活性エネルギー線硬化型組成物であって、組成物全体に対する前記単官能モノマーの含有量は、組成物全体に対する前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと前記多官能モノマーの含有量の合計量よりも多いことを特徴とする。
本発明によれば、基材に対する密着性と耐ブロッキング性を両立することができる。また、インクジェットにより組成物を吐出する場合の吐出安定性に優れる。
【0016】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物によって得られる硬化物を、硬化物、塗膜、インク硬化物などと称する。
【0017】
<3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー>
本発明に用いられる官能ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、アダクト体である必要がある。アダクト体は架橋点が立体障害の小さいC-C結合で構成されるため、化学架橋点としての効果が高く、基材への密着性に影響する柔軟性と耐ブロッキング性を両立した硬化物が得られる。
【0018】
本発明に用いられる3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、適宜選択することが可能であり、例えば、特許文献3(特開2002-256053)に記載の方法で作製可能である。
【0019】
前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーの含有量としては、組成物全体に対して1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下である場合、組成物を吐出する際の連続吐出安定性を向上させることができる。
【0020】
<単官能モノマー>
本発明に用いられる単官能モノマーとしては、例えば、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボロニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、N-ビニルホルムアミド、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート、イソボルニルアクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記単官能モノマーの含有量は、組成物全量に対して60.0質量%以上80.0質量%以下が好ましい。
【0022】
<多官能モノマー>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は多官能モノマーを含む。前記多官能モノマーを含むことで、強固な架橋構造を有する塗膜が得られる。多官能モノマーは、例えば官能基として(メタ)アクリロイル基由来の不飽和結合を含有するものを用いることができる。
【0023】
多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいい、(メタ)アクリレート等についても同様の意味である。
【0024】
前記多官能モノマーの含有量は、組成物全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下が好ましい。前記多官能モノマーの含有量が3.0質量%以上であると、十分な耐ブロッキング性が得られ、15.0質量%以下であると、基材への密着性がより低下しにくくなる。
【0025】
前記多官能モノマーの官能基数は、3であることが好ましい。官能基数が3であると、耐ブロッキング性と基材への密着性のバランスが比較的優れた塗膜が得られる。
【0026】
<含有量の関係>
本発明において、組成物全体に対する前記単官能モノマーの含有量は、組成物全体に対する前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと前記多官能モノマーの含有量の合計量よりも多いことを要する。このように前記単官能モノマーの含有量の方が多いことで、基材に対する良好な密着性を得ることができる。また、組成物を吐出する際の連続吐出安定性を向上させることができる。
【0027】
組成物全体に対する含有量の差、すなわち、単官能モノマーの含有量-(3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと多官能モノマーの含有量の合計量)としては、例えば10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。また、組成物全体に対する含有量の差は80質量%以下であることが好ましい。
【0028】
<重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0029】
重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
【0030】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0031】
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
<色材>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。
色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。
【0033】
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0034】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
【0035】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0037】
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0038】
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
【0039】
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
<有機溶媒>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0041】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0042】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されない。例えば、重合性化合物、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性化合物、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0043】
<粘度>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。
【0044】
なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0045】
(活性エネルギー線硬化型インク組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、基材に対する密着性と耐ブロッキング性を両立し、更にインクジェットによる吐出安定性に優れているので、活性エネルギー線硬化型インク組成物に適用するのに好適であり、特に、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に利用するのに好適である。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を含むことを特徴とする。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を含むことを特徴とする。
【0047】
(活性エネルギー線)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0048】
(組成物収容容器)
本発明の組成物収容容器は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物又は本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物が収容されていることを特徴とする組成物収容容器である。
【0049】
本発明の組成物収容容器は、活性エネルギー線硬化型組成物等が収容された状態の容器を意味し、後述のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができる。このように使用した場合、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。
【0050】
容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが好ましい。
【0051】
(像形成装置、像形成方法)
本発明の像形成装置は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物又は本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物が収容された収容部と、活性エネルギー線を照射する照射部と、を有することを特徴とする2次元又は3次元の像形成装置である。必要に応じて組成物を基材に付与する付与手段等を有していてもよい。
なお、基材を記録媒体、被記録媒体、媒体などとも称する。
【0052】
該収容部には前記組成物収容容器を収容してもよく、この場合、例えば収容部に収容された組成物を付与手段に供給し、付与手段から基材に組成物を付与してもよい。また、後述のように、収容部として貯留プール等を用いてもよい。
【0053】
本発明の像形成方法は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物又は本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程を含むことを特徴とする2次元又は3次元の像形成方法である。必要に応じて組成物を基材に付与する付与工程等を有していてもよい。
【0054】
本発明では活性エネルギー線を用いてもよいし、加温であってもよい。活性エネルギー線を照射する照射部や照射工程により、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させることができる。
【0055】
本発明の像形成装置、像形成方法において、付与手段や付与工程を有していてもよく、前記付与手段、前記付与工程は、活性エネルギー線硬化型組成物を吐出する吐出手段、吐出工程としてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0056】
図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された被記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
【0057】
被記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
【0058】
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
【0059】
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【0060】
図2は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。図2の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の活性エネルギー線硬化型組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の活性エネルギー線硬化型組成物とは組成が異なる第二の活性エネルギー線硬化型組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。
【0061】
より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の活性エネルギー線硬化型組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の活性エネルギー線硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。
なお、図2では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【0062】
(用途)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
【0063】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、図2図3(A)~(D)に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。
【0064】
なお、図2は、上述のように、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法である。また図3(A)~(D)は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
【0065】
まず、図3(A)では、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射している。続いて、図3(B)では、活性エネルギー線4の照射により所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成している。続いて、図3(C)では、可動ステージ3を下げている。続いて、図3(D)では、活性エネルギー線4の照射により、得られた硬化層6の上にさらに硬化層6を形成している。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
【0067】
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
【0068】
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0069】
また、本発明は例えば以下のような用途にも適用可能である。
ガラス、ポリイミド、陽極酸化アルミニウム、ポリカーボネート等から選ばれた基材上に電子構成要素を付与した後、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を付与する。また適宜、活性エネルギー線を照射する。これにより、電子構成要素がはがれにくく、電子構成要素が保護された構成物を作製することができる。例えば、ウエラブル製品に印刷するチップ保護層などの作製に本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いることができる。
【0070】
ここでの上記基材としては、特に制限されるものではないが、例えば0.1mm未満の厚さの基材を用いることができる。
また、ここでの上記電子構成要素としては、特に制限されるものではないが、例えば導電性インク等が挙げられる。
また、ここでの上記付与の方式については、インクジェット方式であっても、スクリーン方式であってもよく、その他の方式であってもよい。
【0071】
本例の構成物を図4に示す。基材51上に電子構成要素52が形成され、電子構成要素52上に活性エネルギー線硬化型組成物からなる塗膜53が形成されている。本例の構成物では、電子構成要素が保護されるとともに密着性を向上できる。
【0072】
(硬化物)
本発明によって得られる硬化物(塗膜、インク硬化物などとも称する)としては、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかに活性エネルギー線を照射することにより硬化させて形成される。なお、これら組成物としては上述の組成物と同様のものを用いることができる。
【0073】
(加飾体)
本発明によって選られる加飾体としては、基材上に、硬化物からなる表面加飾が施されてなり、前記硬化物と同様のものを用いることができる。
【実施例0074】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を表す。
【0075】
(合成例1)
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500ml容のフラスコにトルエン33部、ステアリルアルコール(NAA-46)4.8部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性タイプ(バーノックDN-950;大日本インキ化学工業株式会社製、不揮発分(N.V.):75%、NCO:12%)50部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02部仕込み同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA3;ダイセル化学工業製、水酸基価:122mgKOH/g)63.9部、ジブチルスズラウレート0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン60.7部を加え、固形分50重量%のウレタンアクリレートA(3官能アダクト体)を得た。
【0076】
(合成例2)
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500ml容のフラスコにトルエン60.8部、ステアリルアルコール(NAA-46)8.4部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(タケネートD-170N;武田薬品工業株式会社製、NCO%:20.9%)50部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02部仕込み同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA2D)83.5部、ジブチルスズラウレート0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン81.1部を加え、固形分50重量%のウレタンアクリレートB(3官能イソシアヌレート体)を得た。
【0077】
(合成例3)
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500ml容のフラスコにトルエン78.3部、ステアリルアルコール(NAA-46)8.5部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したことを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性タイプ(デュラネート24A-90CX;旭化成工業株式会社製、不揮発分(N.V.):90%、NCO%:21.2)50部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02部仕込み同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA4;ダイセル化学工業株式会社製、水酸基価:98mgKOH/g)140.8部、ジブチルスズラウレート0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン111部を加え固形分50重量%のウレタンアクリレートC(3官能ビウレット体)を得た。
【0078】
(実施例1~18及び比較例1~8)
<使用材料>
上記ウレタンアクリレートオリゴマー以外の材料として、表1の多官能モノマー及び表2の単官能モノマー、重合開始剤としてTPO(製品名:Omnirad TPO、IGM社製)、重合禁止剤としてMEHQ(製品名:メトキノン、精工化学社製)を使用した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
<活性エネルギー線硬化型組成物の作製>
表3~表5に示す材料と含有量(質量%)に基づき、常法により各実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
各実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型組成物について、アクリル基材上に10μmの膜を作製し、その膜をウシオ電機製LEDランプ(ピーク波長395nm、3000mJ/cm)で硬化させ塗膜を得た。
【0082】
<評価>
次に、得られた塗膜について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表3~表5に示す。
【0083】
<<耐ブロッキング性>>
耐ブロッキング性は以下のようにして評価した。
硬化させた塗膜面とアクリル基材を重ね合わせた上からA4サイズあたり5kgの荷重をかけて室温で24時間放置した。放置した後の、塗膜と基材の貼り付きの有無および塗膜の変化の度合い(目視での変化率)から下記の基準に基づいて評価した。
【0084】
[評価基準]
◎:貼り付きがなく、塗膜の変化もない
〇:貼り付きはあるが、塗膜の変化はない
△:貼り付きがあり、塗膜の変化率が10%未満
×:貼り付きがあり、塗膜の変化率が10%以上
【0085】
<<密着性>>
密着性は、密着性試験JIS K5600-5-6のクロスカット法の評価方法に従い、下記の基準に基づいて評価した。
【0086】
[評価基準]
◎:全く剥がれがない
〇:カッターの切込みに沿って剥がれがあるが、マスは剥がれていない
△:全体の50%未満のマスが剥がれている
×:全体の50%以上のマスが剥がれている
【0087】
<<インクジェットによる吐出安定性>>
表3~表5に示す材料と含有量(質量%)に基づき作製した各インクジェット用インクを、インクジェット吐出装置(株式会社リコー製、ヘッド:リコープリンティングシステムズ社製GEN5)に装填し、30分間連続で吐出した。連続で吐出した後のノズルからの吐出状態をカメラで観察し、下記基準により評価した。
【0088】
[評価基準]
〇:全てのノズルから吐出している
△:30ノズル未満の不吐出がみられる
×:30ノズル以上の不吐出がみられる
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【符号の説明】
【0092】
1 貯留プール
3 可動ステージ
4 活性エネルギー線
5 活性エネルギー線硬化型組成物
6 硬化層
21 供給ロール
22 被記録媒体
23a、23b、23c、23d 印刷ユニット
24a、24b、24c、24d 光源
25 加工ユニット
26 印刷物巻取りロール
30 造形物用吐出ヘッドユニット
31、32 支持体用吐出ヘッドユニット
33、34 紫外線照射手段
35 立体造形物
36 支持体積層部
37 造形物支持基板
38 可動ステージ
39 像形成装置
51 基材
52 電子構成要素
53 塗膜
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2006-257155号公報
【特許文献2】特開2020-1189号公報
【特許文献3】特開2002-256053号公報
図1
図2
図3
図4