(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008531
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230112BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230112BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 301
B41J2/01 401
B41J2/19
B41J2/175 175
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112172
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】小林 義宏
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA22
2C056EB20
2C056EB44
2C056EB50
2C056EB51
2C056EB52
2C056EC15
2C056EE18
2C056FA13
2C056HA42
2C056HA46
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB10
2C056KB11
2C056KB37
2C056KB40
2C056KC01
2C056KC06
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】メインタンクにインク残量情報を保持する記録媒体を備えることができない方式において、メインタンクの供給経路へのジョイント未接続とインクエンドと切り分けを精度よく行うことができる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体を吐出する液体吐出ヘッドに供給する液体を一時的に貯留するサブタンクと、サブタンクに供給する液体を貯留するメインタンクと、メインタンクとサブタンクとを通じる液体経路と、メインタンクと液体経路の接続又は遮断を行う継手と、液体経路に設置され、液体の含まれる気体を捕捉する空気捕捉手段と、空気捕捉手段の送液方向下流に設置された送液手段と、送液手段とサブタンクを不通にし、送液手段の接続先をメインタンクへと変更する逆流経路と、送液手段からサブタンクへの経路の連通又は不通と、送液手段から逆流経路への不通又は連通を切り替える切替手段と、を有する液体吐出装置による。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドに供給する液体を一時的に貯留するサブタンクと、
前記サブタンクに供給する液体を貯留するメインタンクと、
前記メインタンクと前記サブタンクとを通じる液体経路と、
前記メインタンクと前記液体経路の接続又は遮断を行う継手と、
前記液体経路に設置され、前記液体の含まれる気体を捕捉する空気捕捉手段と、
前記空気捕捉手段の送液方向下流に設置された送液手段と、
前記送液手段と前記サブタンクを不通にし、前記送液手段の接続先を前記メインタンクへと変更する逆流経路と、
前記送液手段から前記サブタンクへの経路の連通又は不通と、前記送液手段から前記逆流経路への不通又は連通を切り替える切替手段と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記メインタンクにおける前記液体の貯留量が一定量以下になったことを判断するとき、
前記送液手段により前記メインタンクから前記空気捕捉手段へ前記液体の送液を開始してからの経過時間が所定の規定時間を過ぎるまでに、前記空気捕捉手段における前記液体の貯留量が所定量を超えないとき、
前記切替手段により前記送液からサブタンクへの経路は不通にし、前記逆流経路へは連通させて、
前記空気捕捉手段から前記逆流経路を介して前記メインタンクへ前記液体の逆転送液をさせる、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記空気捕捉手段で捕捉された空気を排気する排気手段を有し、
前記逆転送液を行うとき、前記逆流経路を連通状態にして前記排気手段を駆動させて、前記空気捕捉手段から前記逆流経路を介して前記メインタンクへ前記液体を逆流させる、
請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記空気捕捉手段に複数の液面検出手段を有し、
前記送液手段により前記メインタンクから前記空気捕捉手段へ前記液体の送液を開始してからの経過時間が所定の規定時間を過ぎるまでに、前記液面検出手段の含まれる適量検出手段が前記液体の液面を検出しないとき、前記切替手段により前記送液からサブタンクへの経路は不通にし、前記逆流経路へは連通させて、前記空気捕捉手段から前記逆流経路を介して前記メインタンクへ前記液体の逆転送液をさせる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記逆転送液を開始してからの経過時間が所定の規定時間を過ぎるまでに、前記液面検出手段の含まれる適量検出手段又は下限検出手段が、前記空気捕捉手段における前記液体の液面を検出しないときは、前記継手において前記メインタンクと前記液体経路が遮断されていると判断し、
前記逆転送液を開始してからの経過時間が所定の規定時間を過ぎるまでに、前記液面検出手段の含まれる適量検出手段又は下限検出手段が、前記空気捕捉手段における前記液体の液面を検出したときは、前記継手において前記メインタンクと前記液体経路が接続されていると判断する、
請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記メインタンクにおける前記液体の貯留量を含む情報を記録する記録媒体に対する情報の書き込み又は読み出しを行う書込読出手段を有し、
前記逆転送液を実行した結果、前記継手において前記メインタンクと前記液体経路が接続されていると判断されたとき、書込読出手段が前記記録媒体にインクエンド処理を行う、
請求項5に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット技術を活用して様々な記録媒体にインクを吐出して画像を形成する液体吐出装置が開発されている。従来の液体吐出装置において、吐出ヘッドに供給するインクを一時貯留するサブタンクと、ヘッドタンクに供給するインクを貯留するメインタンクと、を連通するインク供給経路を備えるものも知られている。従来の液体吐出装置において、インク供給経路に送液ポンプを備え、メインタンクとしてのインクカートリッジからサブタンクとしてのヘッドタンクにインクを送液する正転送液、あるいは逆送させる逆転送液を行う構成を備える液体吐出装置も知られている。
【0003】
また、10L程度の容量のメインタンクを有するカートリッジ方式や、100Lを超える大容量のドラム容器をメインタンクとするドラム容器方式などが知られている。いずれの方式も、インクの種類や残量情報をICチップなどの不揮発性記録媒体に記憶させて管理し、メインタンクの使用可否を判断する構成が用いられる。
【0004】
カートリッジ方式はメインタンクとしてのカートリッジ自体にICチップを搭載し、液体吐出装置にカートリッジを設置するとともにICチップ情報の読取/書込を実施する構成が採用される。したがって、カートリッジ内のインクが空になった状態(インクエンド)において、交換の後に新たなカートリッジが装着されたことを確実に判断できる。
【0005】
一方、ドラム容器方式ではドラム容器にICチップを搭載することが難しく、メインタンクとは別にICチップを搭載したICカードを用い、ICカードリーダにおいてICチップ情報の読取/書込を実施する構成になる。
【0006】
いずれの方式であっても、インクをメインタンクからサブタンクへ供給する供給ユニット内に、メインタンクから混入する空気を捕捉するためにエアートラップタンクが設けられる。そして、エアートラップタンク内に規定時間内にインクが充填されない場合、メインタンクが空になっていると認識するインクエンド処理が利用される(例えば特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているインクエンド判断処理をドラム容器方式に適用すると、誤判断になることがある。ドラム容器方式では、ドラム容器と供給経路のジョイント接続する作業と、ICカードを読取装置に設置する作業が別作業となる。そのため、ジョイント接続の状態とICカードに記録されている情報の内容と関連付けが異なっても、供給経路を介したインク送液動作を行うことができる。したがって、エアートラップタンク内が規定時間内にインクが充填されない状態であっても、それが「インクエンド」によるものか、「ジョイント未接続」によるものかの区別は困難である。
【0008】
仮に、誤ってジョイント未接続のままであってもICカードを設置・動作開始させた場合は、液体吐出装置の制御部はドラム容器が接続済みと認識する状態になり、ジョイント未接続で供給動作を進めることになる。この場合、エアートラップタンクにインクが満たされることはなく、ドラム容器内に十分にインクが残っていてもICカードに対しては「メインタンクは空」とする誤った情報が書き込まれてしまう。
【0009】
以上のように従来のインクエンド判断処理をドラム容器方式に適用すると、メインタンクのインクエンド判断処理に関して、ジョイント未接続とインクエンドの判断を誤ることになる。
【0010】
本発明は、メインタンクにインク残量情報を保持する記録媒体を備えることができない方式において、メインタンクの供給経路へのジョイント未接続とインクエンドと切り分けを精度よく行うことができる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、液体吐出装置に関し、液体を吐出する液体吐出ヘッドに供給する液体を一時的に貯留するサブタンクと、前記サブタンクに供給する液体を貯留するメインタンクと、前記メインタンクと前記サブタンクとを通じる液体経路と、前記メインタンクと前記液体経路の接続又は遮断を行う継手と、前記液体経路に設置され、前記液体の含まれる気体を捕捉する空気捕捉手段と、前記空気捕捉手段の送液方向下流に設置された送液手段と、前記送液手段と前記サブタンクを不通にし、前記送液手段の接続先を前記メインタンクへと変更する逆流経路と、前記送液手段から前記サブタンクへの経路の連通又は不通と、前記送液手段から前記逆流経路への不通又は連通を切り替える切替手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、メインタンクにインク残量情報を保持する記録媒体を備えることができない方式において、メインタンクの供給経路へのジョイント未接続とインクエンドと切り分けを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る液体吐出装置の実施形態の全体構成を例示する概略構成図。
【
図2】上記液体吐出装置が備える吐出ユニットの平面説明図。
【
図3】上記液体吐出装置が備える吐出ユニットの側面説明図。
【
図4】上記液体吐出装置が備える液体供給ユニットの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図面においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。
【0015】
[液体吐出装置の実施形態]
図1は、本実施形態に係る液体吐出装置1の全体構成を例示する概略構成図である。液体吐出装置1は、搬入部10と、印刷部20と、乾燥部30と、搬出部40とを備えている。液体吐出装置1は、搬入部10から搬入されるシート状部材であるシート材Pに対し、印刷部20で液体を付与して所要の画像形成処理(印刷処理)を実行し、乾燥部30でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部40に回収する。
【0016】
搬入部10は、複数のシート材Pが積載される搬入トレイ11と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12と、シート材Pを印刷部20へ送り込むレジストローラ対13とを備えている。
【0017】
給送装置12には、ローラやコロを用いた装置や、エアー吸引を利用した装置など、様々な構成を用いることが可能であり、積載されているシート材Pを分離して下流側の送り出せる構成であればよい。給送装置12により搬入トレイ11から送り出されたシート材Pは、レジストローラ対13により印刷部20へと送り出される。レジストローラ対13は、シート材Pの先端が到達した後、所定のタイミングで駆動して、シート材Pを搬送する。
【0018】
印刷部20は、シート材Pを外周面に担持して搬送する第一回転部材である搬送ドラム21と、搬送ドラム21に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部22とを備えている。
【0019】
また、印刷部20は送り込まれたシート材Pを受け取って搬送ドラム21との間でシート材Pを渡す第二回転部材である渡し胴24と、搬送ドラム21によって搬送されたシート材Pを乾燥部30へ受け渡す受け渡し胴25を備えている。
【0020】
搬入部10から印刷部20へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴24に設けられた後述するシートグリッパとしての第二把持手段によって先端が把持され、渡し胴24の回転に伴って搬送される。渡し胴24により搬送されたシート材Pは、搬送ドラム21との対向位置で搬送ドラム21へ受け渡される。
【0021】
搬送ドラム21の表面にもシートグリッパとしての第一把持手段が設けられており、シート材Pの先端が第一把持手段によって把持される。搬送ドラム21の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されている。吸引段である吸引装置26によって搬送ドラム21の吸引口から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。そして、渡し胴24から搬送ドラム21へ受け渡されたシート材Pは、第一把持手段によって先端が把持されるとともに、吸引装置26による吸い込み気流によって搬送ドラム21上に吸着され、搬送ドラム21の回転に伴って搬送される。
【0022】
液体吐出部22は、液体吐出手段である吐出ユニット23(23A~23F)を備えている。例えば、吐出ユニット23Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット23Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット23Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット23Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、吐出ユニット23F,23Fは、YMCKのいずれか、或いは、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出に使用する。更に、表面コート液などの処理液を吐出する吐出ユニット23を設けることもできる。
【0023】
液体吐出部22の各吐出ユニット23は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。搬送ドラム21に担持されたシート材Pが液体吐出部22との対向領域を通過するときに、吐出ユニット23から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。液体吐出部22の各吐出ユニット23には、液体供給部80の液体供給ユニット81(81A~81D)から所要の色の液体が供給される。
【0024】
乾燥部30は、印刷部20でシート材P上に付着した液体を乾燥させるための乾燥機構部31と、印刷部20から搬送されてくるシート材Pを吸引した状態で搬送する(吸引搬送する)吸引搬送機構部32とを備えている。
【0025】
印刷部20から搬送されてきたシート材Pは、吸引搬送機構部32に受け取られた後、乾燥機構部31を通過するように搬送され、搬出部40へ受け渡される。乾燥機構部31を通過するとき、シート材P上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0026】
搬出部40は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ41を備えている。乾燥部30から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ41上に順次積み重ねられて保持される。
【0027】
なお、液体吐出装置1には、例えば、シート材Pに対して前処理を行う前処理部を印刷部20の上流側に設置したり、液体が付着したシート材Pに対して後処理を行う後処理部を乾燥部30と搬出部40との間に設置したりすることもできる。
【0028】
前処理部としては、例えば、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシート材Pに塗布する先塗り処理を行うものが挙げられる。また、後処理部としては、例えば、印刷部20で印刷されたシートを反転させて再び印刷部20へ送ってシート材Pの両面に印刷するためのシート反転搬送処理や、複数枚のシートを綴じる処理などを行うものが挙げられる。
【0029】
[吐出ユニットの実施形態]
次に、液体吐出装置1が備える吐出ユニット23の構成について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は同吐出ユニットの平面説明図、
図3は同吐出ユニットの側面説明図である。
【0030】
吐出ユニット23は、複数の液体吐出ヘッド100をヘッドベース52上に千鳥設置にしている。複数の液体吐出ヘッド100は、上方に設置された液体分配用のマニホールド103に供給経路104を通じて接続されている。なお、液体吐出ヘッド100としては、フロースルー型ヘッド(循環型ヘッド)を使用することもできる。
【0031】
マニホールド103の上流側には、液体吐出ヘッド100に供給する液体インクを一時的に貯留するサブタンク105が設置されており、サブタンク105に負圧を形成して、液体吐出ヘッド100のノズルのメニスカス圧力を生じさせている。サブタンク105には、メインタンク201を含む液体供給ユニット81から液体経路200を介して所要の色の液体インクが供給される。
【0032】
サブタンク105には内部の液体インクの残量に応じて変位するフィラ135を備えていて、フィラ135が満杯位置になったことを検知する満杯センサ107と、フィラ135が不足位置になったことを検知する不足センサ108とを備えている。
【0033】
[液体供給ユニットの実施形態]
次に、本発明に係る液体供給ユニットの実施形態について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係る液体供給部80に含まれる複数の液体供給ユニット81のうちの一つを抜き出した構成例を示す図である。液体供給部80に含まれる複数の液体供給ユニット81は、その1つ1つにおいて、サブタンク105に供給する液体インクとしての液体300を貯留する液体貯留手段であるメインタンク201を備えている。なお、液体供給ユニット81においてメインタンク201は着脱可能である。
【0034】
メインタンク201は、例えば100~200リットル程度の容量を有している。メインタンク201には第一液体経路202の一端が、メインタンク201との接続に用いる継手としてのジョイント203を介して接続される。また、第一液体経路202のもう一端は、開閉弁221に接続されている。そして、開閉弁221の他端には、第二液体経路204が設けられていて、三方コネクタ232と第三液体経路209を介して空気捕捉手段であるエアートラップタンク205に通じている。なお、第一液体経路202、第二液体経路204、第三液体経路209を通じてメインタンク201からエアートラップタンク205へと液体300を送液し、その後の経路を介してサブタンク105へと液体300を送ることを「正転送液」とする。開閉弁221は、第一液体経路202と第二液体経路204の連通を制御する。
【0035】
エアートラップタンク205は、例えば0.3~1リットル程度の密閉容器であり、PE、PP、PETなどのように透過性、耐薬品性を有する樹脂、あるいは、ガラス瓶などで構成されている。エアートラップタンク205には、複数の液面検出手段としての液面センサ206が設置されている。これら液面センサ206によって、エアートラップタンク205内の液体300の量(液量、貯留量ともいう。)を検知できるようになっている。なお、液面センサ206には、赤外線反射型のセンサを用いていることができる。また、複数の長さの異なる電極を設置しておき、その各電極間の静電容量によって液面高さを検知するセンサを用いることもできる。
【0036】
複数の液面センサ206は、例えば、上限検出手段としての上限センサ206aや下限検出手段としての下限センサ206cを少なくとも備える。上限センサ206aは、エアートラップタンク205における液体300の貯留可能限界に至っていることを検出するためのセンサである。下限センサ206cは、エアートラップタンク205が空になっていることを検出するためのセンサである。また、エアートラップタンク205に、適量の液体300が貯留されていることを検出するための適量検出手段としての適量センサ206bを備えてもよい。
【0037】
エアートラップタンク205の上部には、排気手段を構成する排気経路211が接続されている。排気経路211には、排気経路211を開閉する排気弁212と、排気経路211を通じてエアートラップタンク205内の空気を吸い出す排気ポンプ213が設けられている。なお、排気ポンプ213は、複数の液体供給ユニット81において共用されるものでもよい。
【0038】
排気経路211に設置されている排気弁212を開放し、排気ポンプ213を稼働してエアートラップタンク205内のエアーを大気に排気すると、エアートラップタンク205内の気圧が低下する。これによって、第一液体経路202、第二液体経路204及び第三液体経路209を介してメインタンク201内の液体300をエアートラップタンク205内に引き込むことができる。
【0039】
また排気弁212とエアートラップタンク205の間には大気開放弁241が設けられていて、エアートラップタンク205の内部を大気と連通させることができる。
【0040】
エアートラップタンク205の底部には、サブタンク105につながる第四液体経路207の一端部が接続されていて、他端には切替手段としての三方弁231が接続されている。また、第四液体経路207には、送液手段である送液ポンプ208が設置されている。そして、三方弁231を介して液体供給弁210へと連なるように設置がなされている。なお、第四液体経路207は、エアートラップタンク205の上部に接続してもよい。その場合、第四液体経路207をエアートラップタンク205の底部まで延伸する構成にすればよい。また、送液ポンプ208としては、ダイヤフラムポンプなどの非可逆型送液ポンプを使用している。
【0041】
本実施形態に係る液体供給ユニット81は、第一液体経路202、第二液体経路204、第三液体経路209、第四液体経路207によってメインタンク201とサブタンク105とをつなぐ液体経路200を構成している。この液体経路200に空気捕捉手段であるエアートラップタンク205を設け、エアートラップタンク205の送液方向下流側に送液手段としての送液ポンプ208を設置している。
【0042】
本実施形態に係る液体供給ユニット81は、エアートラップタンク205からメインタンク201へ液体300を逆転送液するための経路として、逆流経路230を備えている。逆流経路230は、三方弁231と三方コネクタ232の間に設置されている。三方弁231は、正転送液時においてエアートラップタンク205からサブタンク105への送液を可能にし、逆転送液時においてエアートラップタンク205からサブタンク105への送液を不能にする。また、三方コネクタ232も、正転送液時においてエアートラップタンク205からサブタンク105への送液を可能にし、逆転送液時においてエアートラップタンク205からサブタンク105への送液を不能にして逆流経路230へと送液する。
【0043】
逆流経路230は、三方弁231と第四液体経路207を介して、その一端部が送液ポンプ208に接続され、他端は三方コネクタ232によってエアートラップタンク205の上流側で第二液体経路204に接続されている。通常の供給動作ではこの逆流経路230は使用しない。したがって逆流経路230は、送液手段としての送液ポンプ208とサブタンク105が不通の状態で、送液ポンプ208の接続先をメインタンク201へと変更する経路でもある。
【0044】
また、液体供給部80には、メインタンク201の種類、残量、ロット情報等を書き込んで記録した記録媒体としてのICカード261から、情報を読み出すための書込/読取部260が設けられている。書込/読取部260は、ICカード261への情報の書き込みと、ICカード261からの情報の読み出しを行う書込読出手段としての機能する。
【0045】
液体300を、エアートラップタンク205を介して、メインタンク201からサブタンク105へ送液する正転送液を行うことで、液体吐出ヘッド100から液体300が吐出される。この供給動作を行うためには、第一液体経路202の端部に設けられているジョイント203をメインタンク201に接続するとともに、メインタンク201に同梱されたICカード261を書込/読取部260に設置する。これによって、残量情報、液種類情報等の整合をとる必要がある。なお、ICカード261を書込/読取部260に設置しなければ、正転送液は行われない。その場合、ICカード261には、液体300がメインタンク201に残置している量が書き込まれているので、これがゼロではない(インクエンドではない)ことが条件になる。以下、より詳細に説明する。
【0046】
[液体供給部80における動作]
次に、通常の画像形成処理を実行するときの液体供給部80の動作について説明する。エアートラップタンク205の底部に設けられた流路に設置されている送液ポンプ208を稼動させることで、エアートラップタンク205内の液体300がサブタンク105へと送液される。このとき、開閉弁221は開き、排気弁212は閉じている。したがって、エアートラップタンク205~メインタンク201の間は密閉状態になっている。この状態のときに、エアートラップタンク205内の液体300を送液ポンプ208によって送液されると、エアートラップタンク205内は負圧になる。その結果、メインタンク201の液体300が第一液体経路202、第二液体経路204及び第三液体経路209を介してエアートラップタンク205内に引き込まれる。これによって、エアートラップタンク205内には適量の液体300が維持される。
【0047】
次に、エアートラップタンク205の作用について説明する。メインタンク201の送液方向下流にエアートラップタンク205を設けることで、更にエアートラップタンク205よりも送液方向下流の送液ポンプ208にエアーを送ることを防止できる。仮に、エアートラップタンク205を設けないとすれば、メインタンク201からサブタンク105へ送られる液体300と一緒に、エアーが送られることがある。その場合、サブタンク105から液体供給ユニット81へ供給される液体300にエアーが紛れることになり、正常な吐出動作を行えずに、画像形成の品質を低下させることになる。
【0048】
次に、液体供給部80からサブタンク105に向かう液体の流れについて説明する。例えば、メインタンク201から液体が供給されるときには、開閉弁221は開いておき、適量センサ206bが液体300の液面を検出する状態を維持し、排気弁212は閉じられている。そして、サブタンク105のフィラ135の位置に応じて、液体供給弁210は開閉を繰り返す状態にある。これにより、送液ポンプ208を稼働しているときには、メインタンク201からサブタンク105に液体300が流れることになる。
【0049】
画像形成処理が進行して、液体300が液体吐出ヘッド100から吐出されて消費されると、メインタンク201に貯留されている液体300が減少していく。そして、メインタンク201が空になるときには、エアートラップタンク205の液面が適量から下降し、例えば下限センサ206cによって下限値以下になったことが検出される。
【0050】
ここで、エアートラップタンク205に着目した動作の説明をする。エアートラップタンク205の液面が適量から下降し、例えば適量センサ206b以下になったことが検出されると、液体吐出装置1の制御部は、排気弁212を開放し、排気ポンプ213を動作させる。これによって、エアートラップタンク205の内部に気圧が下がるので、第一液体経路202、第二液体経路204及び第三液体経路209を介して液体300が引き込まれる状態になる。その結果、メインタンク201から液体300を引き込んで液面を適量にしようとする。
【0051】
このとき、予め定めた所定時間(例えば1~10秒)を経過しても、エアートラップタンク205の液面が回復しない場合、すなわち、適量センサ206bが液面を検出しないときは、メインタンク201が空になったものと判断する。言い換えるとメインタンク201における液体300の貯留量が一定量以下になったものと判断する。
【0052】
この「メインタンク201が空になった」状態を、インクエンドとする。そして、書込/読取部260に取り付けられているICカード261に「インクエンドである」ことを示す情報を記録する。この処理を「インクエンド処理」とする。
【0053】
液体供給部80は、インクエンドが記録されたICカード261が書込/読取部260に取り付けられているときには、上記の供給動作を実行しない。したがって、メインタンク201が空になった「インクエンド」になったときには、メインタンク201を交換し、また、メインタンク201に付属する新たなICカード261を書込/読取部260に取り付ける必要がある。この操作をしないと、通常、供給動作は再開されない。
【0054】
しかしながら、新たなメインタンク201を第一液体経路202に接続するにはジョイント203を介した接続操作をし、この操作とは別に、新たなICカード261を書込/読取部260に取り付ける必要がある。すなわち、ジョイント203の接続操作と、ICカード261の取り替え操作は別作業である。そのため、この操作を行うユーザが手順を誤ると、ジョイント203が未接続の状態のままで、新たなICカード261を書込/読取部260に取り付けることになる。
【0055】
このようなイレギュラーな操作が実行されたときに、誤って供給動作を再開しないようにするには、ジョイント203の接続状態検出動作を、供給動作の再開の前に実行すればよい。ジョイント203の接続状態検出動作を行うタイミングは、例えば、液体吐出装置1の起動時や、液体吐出装置1のエラー処理からの復帰時、インクエンド後にメインタンク201を交換した時などである。なお、ジョイント203の接続状態検出動作は、画像形成処理中には実行されない。
【0056】
[ジョイント203の接続状態検出動作]
次に、メインタンク201に第一液体経路202の端部に設けられているジョイント203が「接続されている」か「接続されていない(未接続)」であるかを検出する接続状態検出動作について説明する。この動作は、メインタンク201からエアートラップタンク205へと液体300が送液される状態になっているか否かを判断する動作でもある。
【0057】
まず、順流確認動作が実行される。順流確認動作では、開閉弁221及び排気弁212を開いて、排気ポンプ213を動作させることでメインタンク201からエアートラップタンク205へ液体300が供給される。エアートラップタンク205内の液容量が適量センサ206b以下の場合、メインタンク201からの液供給によって規定時間内に液面が適量センサ206bに達することを確認することで、ジョイント203が接続されていることを確認できる。
【0058】
仮に、インクエンド処理のされていないICカード261が取り付けられているにも関わらず、順流確認動作にて規定時間内に液面が適量センサ206bに達しない場合は、ジョイント203が未接続であると判断できる。すなわち、規定時間内において、エアートラップタンク205における液体300の貯留量が所定量を超えないとき、ジョイント203が未接続であると判断できる。仮にメインタンク201が空の場合は、エアートラップタンク205へ液体300が供給されずに、規定時間内に液面が適量センサ206bまで達しない。この場合、後述の逆流確認動作を実行することによって、ジョイント203の接続状態の確認を行うことができる。
【0059】
次に、逆流確認動作について説明する。上記のように、インクエンドが検知された後の供給動作を開始する前において、順流確認動作に続いて逆流確認動作を実行する。
【0060】
逆流確認動作としては、まず、開閉弁221を開き、排気弁212及び大気開放弁241も開き、そして、三方弁231を動作させて第四液体経路207とバイパス経路としての逆流経路230を連通状態にする。そして、送液ポンプ208を動作させて、エアートラップタンク205からメインタンク201への逆転送液を実行する。
【0061】
エアートラップタンク205内の液容量が適量センサ206b以上の場合、逆転送液を開始してからの経過時間が規定時間を過ぎるまでに、適量センサ206bに達することを検出すれば、ジョイント203が接続されていると判断できる。
【0062】
また、エアートラップタンク内の液容量が適量センサ206b以下の場合は、逆転送液を開始してから規定時間を経過するまでに、エアートラップタンク205内の液容量が下限センサ206cに達すれば、ジョイント203が接続されていると判断できる。
【0063】
仮に、ジョイント203が接続されていないとき(未接続状態のとき)、第一液体経路202を介してメインタンク201への液体300の逆転送液は行えず、液体300がエアートラップタンク205内で減少することがない。したがって、逆転送液を開始してからの経過時間が所定の規定時間を過ぎても、エアートラップタンク205内の液体300の量が所定の量よりも少なくならなけれは、ジョイント203がメインタンク201に接続されていないと判断できる。
【0064】
以上のとおり、本実施形態に係る液体吐出装置1が備える液体供給部80によれば、メインタンク201と第一液体経路202との接続を保持するジョイント203における接続状態を確実に確認できる。そして、インクエンドとジョイントセット未接続の切り分けが可能になる。また、本実施形態に係る液体供給部80によれば、インクエンド処理において、メインタンク201の液体300が空になったときICカード261へのインクエンド情報の書込み処理を確実に行うことができる。
【0065】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 :液体吐出装置
23 :吐出ユニット
80 :液体供給部
81 :液体供給ユニット
100 :液体吐出ヘッド
103 :マニホールド
104 :供給経路
105 :サブタンク
107 :満杯センサ
108 :不足センサ
135 :フィラ
200 :液体経路
201 :メインタンク
202 :液体経路
203 :ジョイント
204 :液体経路
205 :エアートラップタンク
206 :液面検知センサ
206a :上限センサ
206b :適量センサ
206c :下限センサ
207 :液体経路
208 :送液ポンプ
209 :液体供給弁
211 :排気経路
212 :排気弁
213 :排気ポンプ
221 :開閉弁
230 :逆流経路
231 :三方弁
232 :三方コネクタ
241 :大気開放弁
260 :書込部
261 :ICカード
300 :液体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】