(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085450
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02255 20210101AFI20230613BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20230613BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/02257
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061199
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2019005520の分割
【原出願日】2019-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中垣 政俊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼鶴 一真
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体レーザ素子用の光反射部材が設けられつつも全体としてコンパクト化を図ることができる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、半導体レーザ素子170と、半導体レーザ素子が配される底部118、および、半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部111とを有する基部と、半導体レーザ素子からの光を反射するための光反射部材150と、を有し、枠部が段差111Aを有し、光反射部材が段差に立て掛けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子が配される底部、および、該半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部とを有する基部と、
前記半導体レーザ素子からの光を反射するための光反射部材と、
を有し、
前記枠部が段差を有し、前記光反射部材が該段差に立て掛けられており、
前記底部と前記光反射部材とが接合剤を用いて接合されており、
前記光反射部材は、前記枠部と接した状態で、かつ、前記底部からは浮いた状態で、配されて、
前記底部と前記光反射部材との間が、前記接合剤により埋められている、発光装置。
【請求項2】
半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子が配される底部、および、該半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部とを有する基部と、
前記半導体レーザ素子からの光を反射するための光反射部材と、
を有し、
前記枠部が段差を有し、前記光反射部材が該段差に立て掛けられており、
前記底部と前記光反射部材とが接合剤を用いて接合されており、
前記光反射部材は、前記枠部との距離よりも前記底部との距離の方が離れており、
前記底部と前記光反射部材との間が、前記接合剤により埋められている、発光装置。
【請求項3】
前記光反射部材が平板形状を有する、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記枠部の前記光反射部材と接する領域は、前記段差のエッジ部分のみである、請求項1~3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
断面視において、前記段差のエッジ部分を形成する上面と側面とが成す角度は、該上面と前記光反射部材の接合面とが成す角度よりも小さい、請求項1~4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記枠部と前記光反射部材とが接合剤を用いて接合される、請求項1~5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記接合剤が金属粒子を含んで成る、請求項1~6のいずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記半導体レーザ素子が少なくとも2つ設けられ、1つの前記光反射部材が少なくとも2つの該半導体レーザ素子からの光を反射する、請求項1~7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記枠部は、前記段差の、前記光反射部材が立て掛けられるエッジ部分を形成する側面とは異なる側面と交わる上面において、前記半導体レーザ素子の電気的接続のための金属層を有する、請求項1~8のいずれかに記載の発光装置。
【請求項10】
発光装置の製造方法であって、
半導体レーザ素子が設けられる基部に対して、該半導体レーザ素子からの光を反射するための光反射部材を設ける工程
を含み、
前記基部が、前記半導体レーザ素子が配される底部と、該半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部とを有し、前記光反射部材を該枠部の段差に立て掛け、
前記光反射部材を前記底部から離隔させた状態で前記光反射部材の前記立て掛けを行う、 発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記光反射部材が平板形状を有する、請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記枠部のうち前記段差のエッジ部分のみが前記光反射部材と接するように該光反射部材を立て掛ける、請求項10または11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
コレットを用いて前記光反射部材を前記底部から前記離隔させた状態を維持しつつ、前記底部に配した接合剤に該光反射部材を押し当て、前記光反射部材の前記立て掛けを行う、請求項10~12のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記段差のエッジ部分を形成する前記枠部の上面の一部には、前記半導体レーザ素子の電気的接続のための金属層が設けられており、
前記金属層が設けられている前記上面の前記一部とは異なる上面領域を有する前記段差に対して前記光反射部材を立て掛ける、請求項10~13のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LED素子や半導体レーザ素子などの発光素子を光源とした発光装置が知られている。かかる発光装置は、発光素子、それが配置される基部、およびレンズ部材などとともにパッケージ化されている。
【0003】
また、発光装置では、発光素子から放射された光を取り出すときに光反射部材が用いられることがある。光反射部材を用いる理由はいくつか考えられるが、例えば、発光素子が半導体レーザ素子である場合、光路長を長くする目的や、放熱性を向上させる目的などが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにパッケージの内側に光反射部材を配置することで、その分だけ発光装置のサイズは大きくなる。また、光反射部材の形状が複雑になると、生産性にも影響を与える。小型化や生産性の向上は、その発光装置の有用性を高め、産業への利用性を高める。そのため、光反射部材の配置または形状には改善の余地があるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、
半導体レーザ素子と、
半導体レーザ素子が配される底部、および、半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部とを有する基部と、
半導体レーザ素子からの光を反射するための光反射部材と、
を有し、
枠部が段差を有し、光反射部材が段差に立て掛けられている。
【0007】
また、本発明では、発光装置の製造方法も提供される。かかる本発明に係る製造方法は、
半導体レーザ素子が設けられる基部に対して、半導体レーザ素子からの光を反射するための光反射部材を設ける工程
を含み、
基部が半導体レーザ素子が配される底部と、半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部とを有し、光反射部材を枠部の段差に対して立て掛ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光反射部材が設けられた発光装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の発光装置の内部構造を説明するための上面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-IIIを結ぶ直線に沿って切り取った発光装置の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る発光装置の内部構造を示す模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の発光装置の特徴を説明するための模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の発光装置の特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、基部の底部に配された接合剤の特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、基部の枠部に配された接合剤の特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、接合剤の介在により底部と直接的に接していない光反射部材の特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、半導体レーザ素子の各々に対応して個々に光反射部材が設けられている特徴を説明するための模式的な斜視図である。
【
図11】
図11(a)~(c)は、本発明の製造方法の特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図12】
図12(a)~(c)は、底部に接合剤を配置し、光反射部材を底部から浮かせた状態を維持して立て掛ける特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図13】
図13(a)~(c)は、枠部にも接合剤を配置し、光反射部材を底部から浮かせた状態を維持して立て掛ける特徴を説明するための模式的な断面図である。
【
図14】
図14は、光反射部材の形状に関する変更例を説明するための模式的な断面図である。
【
図15】
図15は、本発明に対して比較対象となる光反射部材の態様を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施形態を図面を参照しながら例示的に説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、特段の説明を付さない限り、本発明を明確にするために誇張していることがある。
【0011】
本明細書で直接的または間接的に用いる「上下方向」は、
図3における上下方向に相当する。
【0012】
本明細書において「断面視(断面図)」は、半導体レーザ素子または発光装置の厚み方向に沿って切り取った仮想断面に基づいている。別の切り口からいえば、半導体レーザ素子が配されるパッケージ面(具体的には、パッケージの底部の主面)に直交する方向に沿って切り取った断面が「断面視(断面図)」に相当する。また、本明細書で用いる「平面視(上面図などの平面図)」とは、上記厚みの方向に沿って対象物を上側からみた場合の見取図に相当する。
【0013】
《発光装置》
図1~
図4を参照して、実施形態の発光装置の全体的な構成をまず説明する。
図1は、一実施形態に係る発光装置1の外観を示す模式的斜視図であり、
図2は、発光装置1の内部構造を説明するための上面図であり、
図3は、
図1のIII-IIIを結ぶ直線における矢印方向の断面図を示す。
図4は、レンズ部材140および蓋部120などの上側部分を除して発光装置の内部を表した斜視図である。なお、
図2においては内部構造を表すため、蓋部120、接着部130及びレンズ部材140を破線で記し、これらの部材を透過した場合に見られる部分を実線で記している。また、図が煩雑になるのを避けるため、
図2及び
図3で示されているワイヤ180は、
図4にて省略している。
【0014】
発光装置1は、半導体レーザ素子170から放射された光が、光反射部材150の光反射面で反射され、レンズ部材140を通過して外部へと出射する装置である。用いられる半導体レーザ素子170は、複数に限らず、単一であってもよい。発光装置1において、複数の半導体レーザ素子170から放射された光は、光反射部材150によって反射され、レンズ部材140を介して外部へと取り出される。半導体レーザ素子170は、サブマウント160に設けられている。
図2に示すように、複数のサブマウント160は、それぞれの半導体レーザ素子170の光の出射方向が揃うように並べられている。光反射部材150は、かかる複数の半導体レーザ素子170に対応するように配置されている。
【0015】
発光装置1は、光を出射するパッケージに加えて、パッケージを実装する実装基板を有していてよい。実装基板を含めたものを発光装置1と捉えることができるが、本発明は必ずしもそれに限定されず、例えば、パッケージのみを発光装置1と捉えてもよい。
【0016】
発光装置1の構成をより具体的に説明していく。発光装置1は、例えば、実装基板としての基板100と、パッケージを構成する構成要素としての、基部110、蓋部120、接着部130、レンズ部材140、光反射部材150、サブマウント160、半導体レーザ素子170、および、ワイヤ180を有する。また、基部110と蓋部120とが接合することで形成される閉空間において、光反射部材150と、半導体レーザ素子170を配したサブマウント160とが配置される。さらに基部110の上に配置された半導体レーザ素子170を電気的に接続するワイヤ180が張られている。
【0017】
また、
図3に示されるように、基部110は、枠部111と底部118とを有している。図示する形態から分かるように、基部110の底部118の上に半導体レーザ素子170が設けられ、その半導体レーザ素子170が枠部111に囲まれるようにしてパッケージを成している。
【0018】
基板110の底部118に半導体レーザ素子170が設けられ、ワイヤ180が半導体レーザ素子170から基部110の枠部111にまで延びている。
図3から分かるように、枠部111は段差111Aを有している。つまり、基板110の枠部111は、電気的接続のためのワイヤ180の接続に資する面111A1が供されているところ、かかる面に起因して段差111Aが形成されている。
【0019】
基板100は、枠部111または底部118の少なくとも一方と接合されている。また、枠部111は、基板100との接合面と反対の側で、蓋部120に接合されている。段差111Aは、基板100と接合する下面よりも上方で、かつ、蓋部120と接合する上面よりも下方に形成される。つまり、基部110の最上面と最下面の間に段差111Aは設けられる。また、接着部130を介して蓋部120とレンズ部材140とが互いに接合されている。
【0020】
以下では、発光装置を詳細に説明していく。発光装置は、半導体レーザ素子が配される底部、および、半導体レーザ素子を囲むように設けられる枠部とを有する基部を有する。また、枠部は、底部と交わり上方に向かって設けられる側面と、この側面と交わる上面とで構成される段差111Aを有する。また、
図3および
図4に示すように、光反射部材150が段差111Aに立て掛けられている。
【0021】
光反射部材150の立て掛け対象である段差111Aの段差上面111A1は、半導体レーザ素子170の電気的接続に資する部分である(
図2および
図3参照)。つまり、光反射部材150が配置されている枠部111の段差111Aの段差上面111A1は、光反射部材150が配置される領域とは別の領域で、ワイヤ180の電気的接続に資する段差上面111A1を構成する。発光装置1は、このように電気的な接続のために設けられる段差111Aをそのまま延長して光反射部材150の設置に利用している。このように光反射部材150の設置に段差111Aを利用することで、光反射部材150を枠部111に近付けて配置することができ、発光装置のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
また、“立て掛け”の態様により、光反射部材の立て掛け角度を柔軟に決定することができる。例えば、
図15のような光反射部材300の場合、異なる角度の傾斜を実現するには、それぞれに光反射部材300を製造する必要がある。一方で、実施形態の光反射部材150であれば、立て掛ける位置を調整することで、同じ光反射部材150を用いることができる。
【0023】
ある態様では、光反射部材は、平板形状を有している。つまり、
図5及び
図6に示すように、光反射部材150が全体として板状に扁平した形態を有している。このような平板形状の光反射部材150は、枠部111の段差への立て掛けに好適に供し得る。
【0024】
また、平板状の光反射部材は、形状が比較的シンプルゆえ、その製造がより簡易である。例えば、大判な平板ミラーをダイシング処理することで比較的簡易に得ることができる。さらに、“立て掛け”が行われていない光反射部材300(
図15)と比べて、平板形状の光反射部材150は、薄くて体積が小さいので、光反射部材の材料コストを抑えることができる。このようなことは、発光装置の量産にとって特に望ましく、発光装置の低コスト製造に寄与する。従って、発光装置の生産性を向上させることができる。また、薄い平板形状の光反射部材は、発光装置の軽量化に寄与し得る。従って、平板形状の光反射部材が用いられることによって、発光装置のコンパクト化と軽量化との双方において利点を得ることもできる。
【0025】
本明細書において「平板形状」とは、広義には、全体的な外観が板状になっていることを意味しており、狭義には、厚み寸法よりも幅寸法(互いに直交する一方の幅寸法および/または他方の幅寸法)が相当程度大きくなっている形状を意味している。相当程度とは、例えば光反射部材の主面における互いに直交する一方の幅寸法および/または他方の幅寸法が、光反射部材の厚み寸法の5倍以上となる条件を満たす。また例えば、2つの幅寸法が形成する平面の面積が、いずれかの幅寸法と厚み寸法とが形成する平面の面積の5倍以上となる条件を満たす。また、これらの条件に限らず、当業者が板状と捉えることのできる実態的な形状を含む。ここで平板形状にいう“平板”といった用語は、柔軟に解釈されるものであり、平板の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が行われた形状も平板の概念に含まれる。また、かかる“平板”は、幅方向における平面形状が、図示されるような矩形状に限らず、多角形状も含まれ、同様に多角形の特定の隅に対して角丸め等の加工が行われた形も“平板”の概念に含まれる。
【0026】
光反射部材の材質および構成について詳述しておく。光反射部材は、半導体レーザ素子からの放射光を受けるため、熱に強い材料を主材として用い、反射率の高い材料を光反射面に用いることが望ましい。主材として、石英若しくはBK7(硼珪酸ガラス)等のガラス、アルミニウム等の金属、又はSi等を採用することができる。光反射面としては金属および/または誘電体多層膜等を採用することができる。
【0027】
発光装置1では、
図5に示されるように、立て掛けられる光反射部材150の主面は、基部110との接合面155に相当する。具体的には、平板形状の光反射部材では、対向する2つの主面の一方が、基部110の枠部111及び底部118との接合面155に相当する。発光装置1は、光反射部材150の接合面155の端部157が底部118に配され、かつ、当該接合面155の端部以外の位置で段差111Aの端部(エッジ部分)に対して光反射部材150が立て掛けられる。
【0028】
発光装置のある態様では、枠部の光反射部材と接する領域は、段差のエッジ部分のみとなっている。ここでの接するとは、実質的に接していることを示す。実質的に接するとは、接するようにした状態で接合することにより介在する接合剤などを許容する。例えば、2つの部材を接合するときに、一方の部材から他方の部材に重力などの力が働く状態であれば、接合剤が介在されていても実質的に接しているといえる。一方で、例えば、意図的に浮かせた状態にして一方の部材から他方の部材に重力などの力が働かない状態であれば、接合剤を介在させて2つの部材を接合させたとしても、2つの部材は実質的に接していないといえる。
図3~
図5から分かるように、枠部111の段差111Aにおいて、角張っているエッジ部分(特に、発光装置の内側に向いて角張っているエッジ部分)のみが光反射部材150と接するように、光反射部材150が枠部111の段差111Aに立て掛けられていてよい。換言すれば、光反射部材150は、枠部111が有する段差上面111A1の端部に立て掛けられた構造を有している。なお、光反射部材150が接する枠部111のエッジ部分は、外観上、角張った形態であり、実質的にエッジと見做せるものであれば、製造上の精度限界から生じる丸みや、形状や強度安定のための研磨などによる面取りなどを有していてもよい。
【0029】
枠部において段差のエッジ部分のみが光反射部材と接する態様では、光反射部材の立て掛け角度を所望のものとし易い。つまり、光反射部材を配置させる際、枠部の形状などから受ける影響が少なく(枠部の形状に過度に依存することなく)、所望の立て掛け角度となるように調整を図ることができる。よって、光反射部材による所望の光反射(反射光の方向)がより実現され易くなる。
【0030】
段差111Aのエッジ部分は、枠部111の断面視において段差111Aの輪郭が垂直な角度を成していることが、一形態として挙げられる。より具体的には、断面視において、枠部111のエッジ部分を形成している側面と上面とが互いに垂直に交わっている。ここでいう「垂直」とは、厳密な垂直(90°)に限らず、90°±1°の範囲を許容する。
【0031】
発光装置1のような“立て掛け”構造では、段差のエッジ部分を形成する上面と側面とが成す角度が、当該上面と光反射部材の接合面とが成す角度よりも小さくなっている。
図6に示す断面図でいえば、エッジ部分を形成する段差上面111A1と段差側面111A2とが成す角度を「角度A」とし、段差上面111A1と光反射部材150の接合面155とが成す角度を「角度α」とする場合、A<αの関係が成り立つ。
【0032】
このような説明及び
図6から分かるように、本明細書でいう「段差のエッジ部分を形成する上面と側面とが成す角度」とは、段差のエッジ部分を形成する上面と側面とが成す角度であって、枠部側の角度のことを意味している。つまり、段差のエッジ部分を形成する上面と側面とが成す角度の解釈を広く捉えれば“A”だけでなく“360-A”も考え得るところ、本明細書では角度Aを指す。そして、本明細書でいう「上面(段差のエッジ部分を形成する上面)と光反射部材の接合面とが成す角度」とは、光反射部材の接合面のうちでも、光反射部材と枠部との接点箇所よりも下方(底側)に位置する領域と、段差のエッジ部分を形成する上面とが成す角度のことを意味している。端的にいえば、それは、上面からみて側面へと、角度Aと同じ向きに進む方向で捉えた「上面と光反射部材の接合面とが成す角度」であるといえる。
【0033】
“立て掛け”構造の特徴を別の切り口から説明する。実施形態では底部118と光反射部材150の接合面155とが成す角度と比較して、底部118と枠部111とが成す角度は大きくなっていることが好ましい。
図6から分かるように、底部118と光反射部材150の接合面155とが成す角度が45°である場合、底部118と枠部111とが成す角度はその45°よりも大きくなっていることが好ましい。
【0034】
発光装置において、光反射部材は立て掛けられた構造で接合剤により接合される。ある態様では、
図7に示すように、基部110の底部118と光反射部材150とが接合剤190Aを用いて接合されている。接合剤を用いることで、光反射部材の所望の立て掛け状態をより安定的に保持または固定化することが可能となる。また、別のある態様では、
図8に示すように、さらに、基部110の枠部111と光反射部材150とが接合剤190Bを用いて接合されている。枠部111にも接合剤が用いられることで、光反射部材の立て掛け固定をさらに安定化させることができる。なお、接合剤は、立て掛けられた光反射部材の長さに全て沿って設けられている必要はなく、光反射部材の長さに沿って局所的に設けられたようなものでもよい。
【0035】
接合剤の種類は特に制限されるものではない。例えば、接合剤の材質は、樹脂系であってよく、あるいは、金属系であってもよい。樹脂系の接合剤は、樹脂を主成分としたものであり、同様にして金属系の接合剤は、金属を主成分としたものである。
【0036】
樹脂系の接合剤には、例えば、アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系接合剤、シリコーンゴム等のシリコーン系接合剤、エポキシ樹脂系接合剤等を用いることができる。なお、1種の接合剤を単独で用いる他、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
金属系の接合剤は、金属粒子を含んで成る。また、金属系の接合剤の材質は、例えば、金属の焼結材となっていてよい。かかる金属の焼結材は、金属粒子と、バインダ樹脂および/または有機溶剤等とを含んだ金属ペーストを焼結・焼成することを通じて得ることができる。なお、“金属系の接合剤”でいう「金属」とは、当業者にとって通常金属と認識されるものを指しており、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄およびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種、またはそれらの合金などであってよい。あくまでも例示にすぎないが、金属の焼結材における金属粒子は、金属ナノ粒子、例えばAuナノ粒子であってよい。なお、このような金属系の接合剤の場合、耐熱性が良い。よって、半導体レーザ素子から光(即ち、レーザ光)によって光反射部材が温度上昇に付されて接合剤に熱が伝わってしまう場合であっても、接合剤が劣化し難い。また、レーザ光などの高出力な光が用いられるところ、金属系の接合剤は“集塵防止”の点で好ましい。具合的には、半導体レーザ素子から出射される高エネルギーのレーザ光と空間に存在する有機物が反応して光の出射端面に化合物が形成される現象を抑制する効果が奏され得る。
【0038】
“金属系の接合剤”の原料となる金属ペーストに含まれ得る上述のバインダ樹脂は、金属粒子同士のより十分な接触と形状保持に資するものであれば、いずれの熱可塑性樹脂、および/または、いずれの熱硬化性樹脂であってもよい。また、“金属系の接合剤”の原料となる金属ペーストに含まれ得る有機溶剤は、当該ペーストの焼結・焼成で揮発するものであれば、いずれの有機溶剤であってもよい。あくまでも例示にすぎないが、かかる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどを用いることができる。なお、単独で用いる他、これらの2種類以上の溶剤から成る混合物も用いてもよい。
【0039】
発光装置1の一態様では、基部110の底部118と光反射部材150とが直接的に接していない状態で、接合材190Aの介在によって接合される(
図9参照)。より具体的には、光反射部材150は、基部110の枠部111と接し、かつ、基部110の底部118からは浮いた状態で、底部118と光反射部材150との間が、接合剤190により埋められている。このような態様は、後述する“光反射部材の立て掛けプロセス”に起因しており、より高い精度の立て掛けに関係する。
【0040】
立て掛け角度は、半導体レーザ素子170からの光を反射する光反射面が望ましい角度となるように決定される。発光装置1の例では、例えば45°である。つまり、光反射部材の光反射面と底部との成す角度が45°となるように光反射部材が立て掛けられていることが好ましい。これによって、半導体レーザ素子からの光を所望の方向へと反射して取り出すことができる。例えば、光反射部材の光反射面と底部との成す角度が45°となるように立て掛けた光反射部材によって、半導体レーザ素子からの光がレンズ部材へと向かうように反射させられ、当該レンズ部材にてコリメートされて発光装置の外側へと光が出射される。出射される光は必ずしもコリメートされた光に限定されるわけではなく、集光または光拡散するようなものであってもよい。
【0041】
本明細書にいう「光反射部材の光反射面と底部との成す角度」とは、光反射部材と底部との成す角度のことを指すが、具体的には立て掛けられた光反射部材150の光反射面156と底部118とが成す角度のうち鋭角の方の角度βのことを意味している(
図9参照)。端的にいえば、この角度βは、立て掛けられた光反射部材150の光反射面156と底部118と成す角度のうち底部118から上方に進む方向で捉えた角度のことを意味している。なお、実施形態において、光反射部材の光反射面と底部との成す角度βが45°であるとは、その値に過度に拘泥されるのではなく、半導体レーザ素子からの光がレンズ部材の方向へと所望に向かうのであればよく、それゆえ実装誤差も含めた“略45°”であることを意味している。実装誤差は、部材公差や実装精度などによるため一義的に範囲は定まらないが、例えば、5°以内の誤差を含むものとする。
【0042】
図9に示す態様に係る光反射部材150は、枠部111との距離よりも底部118との距離の方が離れており、底部118と光反射部材150との間が、接合剤190により埋められているともいえる。具体的には、光反射部材150と枠部111との最短離隔距離をL1とし、光反射部材150と底部118との最短離隔距離をL2とすると、L1<L2となっている。特に、光反射部材150と枠部111とは接しているため、その最短離隔距離L1は“0”となる。また、光反射部材150と底部118との最短離隔距離L2は、特に制限するわけではないが、例えば、5~100μmの範囲である。あるいは、最短離隔距離L2は、10~80μmの範囲、または、20~70μmの範囲であってもよい。このような数値範囲は、後述する製造方法による値のばらつきの程度を示すものである。言い換えると、光反射部材150は、底部118から5~100μm程度の範囲内で(例えば10~80μmまたは20~70μm)浮いた状態で配され得る。
【0043】
ある態様では、半導体レーザ素子が少なくとも2つ設けられ、1つの光反射部材が少なくとも2つの半導体レーザ素子からの光を反射する。具体的な一態様として、
図4に示すように、半導体レーザ素子170が3つ設けられ、3つの半導体レーザ素子170に対して光反射部材150が単一で設けられている。かかる場合、3つの半導体レーザ素子170からそれぞれ発せられる光が、いわゆるRGBの3色であってよく、あるいは、3つ全てが青色光であってもよい。また、青色以外の色であってもよい。なお、4つ以上の半導体レーザ素子が配されてもよい。
【0044】
別のある態様では、半導体レーザ素子が少なくとも2つ設けられ、複数の光反射部材が個々に少なくとも2つの半導体素子からの光をそれぞれ反射する。例えば、
図10に示すように、半導体レーザ素子170が3つ設けられ、それら半導体レーザ素子170の各々に対応して個々に光反射部材150が設けられている。かかる場合、少なくとも2つの半導体レーザ素子の各々からの光を個々に所望方向に反射させることが可能となる。図示する形態では、光反射部材150の全てが同じ平板形状(即ち、フラットミラー形状)であるが、必ずしもそれに限定されない。例えば、複数の光反射部材のなかにフラットミラーと曲面ミラーとが含まれていてもよい。
【0045】
上述したように、実施形態の発光装置において、光反射部材150が立て掛けられている箇所は、基部110の枠部111の段差111Aであるところ、その段差の上面は、半導体レーザ素子の電気的接続にも利用される。よって、段差を成す面の少なくとも一部は、半導体レーザ素子と基板(配線基板などの実装基板)との間の電気的接続のための金属層を有している。
【0046】
ここで、半導体レーザ素子から延びるワイヤ180が光反射部材150を横切ると、光反射部材で反射された光がワイヤ180によって遮られる虞が出てくるので、好ましくない。つまり、半導体レーザ素子170から延びるワイヤ180が光反射部材150を横切って光反射部材150の後方側の枠部領域で電気的接続に供されるのは好ましくない。従って、光反射部材150のそのような後方側の枠部領域には、半導体レーザ素子と基板(配線基板などの実装基板)との間の電気的接続のための金属層が設けられなくてよい。換言すれば、枠部は、その段差の、光反射部材が立て掛けられるエッジ部分を形成する側面とは異なる側面と交わる上面において、半導体レーザ素子の電気的接続のための金属層を有しているといえる。
【0047】
本発明に係る発光装置は、種々の態様で具現化することができる。以下それについて詳述しておく。
【0048】
(基板設置の態様)
本態様は、発光装置が基板を備えている態様である。特にかかる態様の発光装置は、実装基板(例えば配線基板)としての基板を付加的に備えており、パッケージと接合されている。
【0049】
基板100は、
図3に示すように、例えば放熱部101、絶縁部102、金属膜103を有していてよい。放熱部101は、例えばCu等の金属で形成され、絶縁部102は絶縁材料で形成され、金属膜103は、放熱部101と同様にCu等の金属で形成される。なお、放熱部101と異なる金属で形成されていてもよい。
【0050】
基板100は、枠部111及び底部118と接合される。また、基板100の金属膜103と枠部111の裏面の金属層(以下では「裏面金属層」とも称する)とが互いに接するように枠部111と基板100とが接合される。なお、接合のための接合剤には、はんだを使用することができる。
【0051】
なお、枠部では、かかる裏面金属層が、好ましくは表面の金属層(以下では「表面金属層」とも称する)と互いに電気的に導通している。例えば、枠部の内部を貫通する導電材(例えばビアホールなど)又は枠部の側面で延在する導電材によって、枠部111の裏面金属層と表面金属層とが互いに電気的に接続されている。表面金属層は、半導体レーザ素子170から延びるワイヤ180が電気的に接続される箇所であり、それゆえ、半導体レーザ素子170と基板100とも電気的に接続され得る。発光装置1の段差上面111A1に設けられた金属層は“表面金属層”に相当する。
【0052】
(底部および枠部に関する態様)
本態様は、基部の底部と枠部の構成に関する態様である。本発明に係る発光装置では、底部と枠部とが同一または同様の材質から成るものであってよく、また、一体化されていてもよい。あるいは、底部と枠部とが、互いに異なる材質から成っていてもよく、それらが別部材として供され、接合されていてもよい。
【0053】
底部118と枠部111とを異なる部材とする場合、底部118を金属の材質とし、枠部111をセラミックの材質とする態様が挙げられる。例えば、底部118としては、CuやAl等の金属を用いることができ、枠部111としては、アルミナ(Al2O3)、AlN等のセラミックを用いることができる。かかる場合、枠部111において強度および/または形状安定性が担保されつつも、底部118の方が枠部111よりも熱伝導率を高くすることができ、底部118が放熱性に優れることになる。つまり、底部118には半導体レーザ素子170が設置されるところ、かかる半導体レーザ素子170から熱を底部118を介してより効果的に放熱させることができる。
【0054】
底部118は、基板100と接合する接合面、及び、光反射部材150、サブマウント160、半導体レーザ素子170が配置される配置面において、矩形または多角形の形状を有していてよい。また、接合面から配置面までの厚みは均一であってよい。なお、ここでいう「矩形」とは、本発明において柔軟に解釈されるものであり、矩形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が行われた形状も矩形に含まれる。同様にして、ここでいう「多角形」も、柔軟に解釈されるものであり、多角形の1以上の隅に対して角丸め等の加工が行われたものも多角形に含まれる。また、矩形または多角形における各辺について、隅に加工が施されている場合には、加工された部分も含めて辺と捉える。なお、底部118にて、基板100と接合する接合面を底面と捉えることができる。
【0055】
枠部111は、基板100と接合する面の底面において裏面電極層を有することができる。裏面電極層は、例えば金属層で構成され、基板100の金属膜103と接合していてよい。また、枠部111は、底面の反対側に相当する表面において表面電極層を有することができる。つまり、上面から見た段差部平面に半導体レーザ素子170と電気的に接続するための表面電極層114が設けられていてよい。表面電極層と裏面電極層とは例えばビアホールを介して互いに電気的に接続されている。よって、半導体レーザ素子170への電力供給は、表面電極層、裏面電極層および基板100の金属膜103を経由して可能となる。また、枠部111は、その裏面内側に窪み部分を備えており、かかる窪み部分に収まるように底部118が設けられてよい。
【0056】
枠部に設けられる段差は、平面視(特に上面視)にて枠の内側四辺すべてを形成されていてよいものの、必ずしもそれに限定されない。枠部に設けられる段差は、平面視(特に上面視)にて枠の内側二辺または内側三辺のみに亘って設けられていてもよい。つまり、段差は枠の全周に設けられる必要はなく、発光装置1に配される半導体レーザ素子170の数や、複数の半導体レーザ素子170を配する場合の組合せ、さらには、光反射部材150の数や設置箇所などに応じて、段差を設ける領域が適宜調整できる。例えば、枠の一辺あるいは二辺に沿って設けられれば十分なこともあれば、全周に設ける必要があることもある。なお、ここでいう、複数の半導体レーザ素子170を配する場合の組合せとは、例えば、同色、同性能の半導体レーザ素子を複数配置するか、異なる色の半導体レーザ素子を配置するかなどである。
【0057】
枠部111と底部118との接合は、例えばAgを主成分とし、Cuを含んだ銀ろうが用いることができるが、他の金属ろうを利用してよい。枠部111は基板100と接合する底面を上に向けた状態で、その接合面に銀ろうを付し、加熱によって銀ろうが溶けた状態で、枠部111の枠に底部118を嵌め込む。その上で銀ろうを冷まして枠部111と底部118とを接合することで、枠部111と底部118とを有する基部110を形成することができる。
【0058】
(半導体レーザ素子およびその周辺部材に関する具体的な態様)
本態様は、半導体レーザ素子およびその周辺部材の具体的な態様に関するものである。
【0059】
発光装置において、半導体レーザ素子170は、底部に設けられたサブマウント160と接合し、光反射部材150に近い側の側面から光を放射する。サブマウント160の材質としては、窒化アルミニウムまたは炭化ケイ素を用いることができる。また、サブマウント160には金属膜が設けられてよく、半導体レーザ素子170はAu-Sn等の導電層によりサブマウント160に固定されていてよい。なお、サブマウント160を有さず、半導体レーザ素子170が直接底部118に設けられてもよい。
【0060】
半導体レーザ素子170から放射されるレーザ光は、光の出射端面と平行な面において、活性層を含む複数の半導体層の積層方向の長さがそれに垂直な方向の長さよりも長い、楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を有する。ここでいうFFPとは、半導体レーザ素子の光出射端面からある程度離れた位置における放射光の形状や光強度分布を測定したものである。
【0061】
発光装置は、1以上の半導体レーザ素子170を有している。
図10で示されるように、例えば3つの半導体レーザ素子170が配置されていてよい。配置される半導体レーザ素子170の数はこれに限らず1以上でよい。また、これらの半導体レーザ素子170が放射する光は同じ色で揃っていてもよく、異なる色であってもよい。例えば、発光装置1が有する3つの半導体レーザ素子170はそれぞれ、赤色光を発する第1半導体レーザ素子、緑色光を発する第2半導体レーザ素子、青色光を発する第3半導体レーザ素子、の3つで構成してよい。
【0062】
赤色光の発光ピーク波長は、例えば605nm~750nmの範囲内にある。赤色発光の半導体レーザ素子としては、例えばInAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。緑色光の発光ピーク波長は、例えば495nm~570nmの範囲内にある。緑色のレーザ光を発する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。青色光の発光ピーク波長は、例えば420nm~494nmの範囲内にある。青色のレーザ光を発する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えばGaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。
【0063】
半導体レーザ素子170にはワイヤが接続される。例えば、ワイヤを、枠部111の表面電極層114及び半導体レーザ素子170に接合することで、その表面電極層114と半導体レーザ素子170とを電気的に接続する。例えば、ワイヤーボンド装置を利用し、Auワイヤの一端を半導体レーザ素子170に、他端を表面電極層114に接合して、電気的に接続することができる。なお、サブマウント160に、ツェナーダイオード等の保護素子175が配されてもよく(
図4参照)、その場合には保護素子175もワイヤによって電気的に接続される。
【0064】
半導体レーザ素子170から放射された光は、光反射部材150の光反射面を介して反射され、レンズ部材140を通過して外部へと取り出される。レンズ部材140は、
図1に示すように、複数のレンズ部が連結したレンズ形状を有していてよい。また、1のレンズ部が1の半導体レーザ素子に対応し、各レンズ部が異なる半導体レーザ素子から放射された光の主要部分を通過させるように設計されてよい。レンズ部材140の材質には、例えば、BK7やB270等のガラス等を用いることができる。なお、レンズ部材140を有していなくてもよい。
【0065】
レンズ部材140は、接着剤を用いて蓋部120に対して接着されていてよい。かかる接着に起因して、蓋部120とレンズ部材140との間に接着部130が形成され得る(
図3参照)。なお、接着部130は、蓋部120の上面の全域あるいはレンズ部材140の下面の全域に形成されてはおらず、半導体レーザ素子170から発せられた光の経路の邪魔にならない位置に設けられることが好ましい。具体的には、発光装置1において、半導体レーザ素子170が発する光の主要部分はレンズ部材140のレンズ形状を有している領域に入射し、この領域から出射する。従って、レンズ形状を有している領域に対応するレンズ部材140の下面に接着部130は形成されず、レンズ部材140の外縁の領域に形成されるように利用するのが望ましい。接着部130を形成する接着剤としては、紫外線硬化型の樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化型の樹脂は加熱せずに比較的短い時間で硬化することができるため所望の位置にレンズ部材140を固定しやすい。
【0066】
《発光装置の製造方法》
次に、
図11~
図13を参照して、実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する。
【0067】
具体的には、実施形態に係る発光装置の製造方法は、
半導体レーザ素子170が設けられる基部110に対して、半導体レーザ素子170からの光を反射するための光反射部材150を設ける工程を含み、
基部110が、半導体レーザ素子170が配される底部118と、半導体レーザ素子170を囲むように設けられる枠部111とを有し、光反射部材150を枠部111の段差に立て掛ける。
【0068】
発光装置の製造方法では、図示するように、まず、基部110が準備される。ここで準備される基部110は、半導体レーザ素子170が配置されている。なお、半導体レーザ素子170が配置されていない状態であってもよい。つまり、光反射部材150を接合してから半導体レーザ素子170を配置するようにしてもよい。次に、基部110の底部118の所定の領域に接合剤190を設ける。そして、光反射部材150を基部110の枠部111の段差111Aに立て掛けるようにして設置し、接合剤190で固定して、光反射部材150を基部110に接合する。
【0069】
立て掛けに用いる光反射部材150は、平板形状を有していてよい。つまり、光反射部材150としては、上述したような全体として板状に扁平した形態を有する光反射部材を用いてよい。かかる光反射部材は、薄くて体積が比較的小さいので、上述したように発光装置のコンパクト化と軽量化とを図り易くなる。また、そのような比較的シンプルな形状はハンドリングし易く、例えばコレットなどの吸着手段によってピックアップした状態で移動させることができ、好適な立て掛けにも資する。
【0070】
ある態様では、光反射部材150と枠部111との当接において、段差111Aのエッジ部分のみが光反射部材150と接するように光反射部材150を立て掛ける(
図11~13参照)。つまり、枠部111において、角張っているエッジ部分(特に、発光装置の内側に向いて角張っているエッジ部分)のみが光反射部材150と接することになるように、光反射部材150を枠部111の段差111Aに立て掛けてよい。このような態様では、光反射部材150との接点となる段差111Aのエッジ部分を基点として立て掛け角度を調整できるので、所望の立て掛け角度で光反射部材150を配置し易い。なお、光反射部材150の立て掛け操作は、
図11(a)~(c)に示すように、例えば枠部111の上方から行うことができる。つまり、枠部111の上方側から下降させるように光反射部材150を移送し、枠部111の段差111Aのエッジ部分及び底部118に光反射部材150を当接させて、立て掛けるように配置する。
【0071】
図11~
図13に示すように、光反射部材150の立て掛けには接合剤190(190AまたはB)が用いられる。接合剤190の使用によって、光反射部材150の所望の立て掛け状態をより安定に保持することが可能となる。例えば、
図11(a)~(c)や
図12(a)~(c)に示すように、基部110の底部118に接合剤190Aを配し、かつ、枠部111の段差111Aには接合剤を配さずに、光反射部材150を立て掛けてよい。底部118に設ける接合剤190Aは、具体的には底部118の主面のなかでもサブマウントと枠部との間の領域に配されることが好ましい。また、基部110の底部118に代えて又はそれに加えて、基部110の枠部111に対して接合剤190Bを配し、光反射部材150を枠部111の段差111Aに立て掛けてもよい(
図13(a)~(c)参照)。枠部111に設ける接合剤190Bは、具体的には枠部111の段差上面111A1に配され、好ましくはエッジ近傍の領域に配されるとよい。例えば、接合剤190Bは、エッジを形成する辺とこの辺に対向する辺との間で、この2辺の最短距離の中点よりもエッジ側に配されるとよい。また、この中点よりもエッジから遠ざかる領域にまで接合剤190Bが配されないようにするとよい。接合剤190Bとの接合面積が大きくなりすぎると、枠部111からの応力が大きくなり、光反射部材150の変形や剥離に繋がる可能性がある。このような光反射部材150の立て掛けに際しては、図示するようにコレット200などの吸着手段を用いてよい。つまり、真空作用または減圧作用を利用した移送具を光反射部材の立て掛け操作に用いてよい。接合剤の具体的な種類は上述で例示したが、簡易的には枠部111と蓋部120との接合に用いる接合剤を用いてもよい。
【0072】
図11のように上方から下降させて枠部と底部に当接させる方法の他に、
図12および13に示されるように、光反射部材150を底部118から離した状態にして光反射部材150の立て掛けを行うこともできる。底部118から離すことで、底部118に当接させる場合と比べて光反射部材150は上方に配置されることになるが、立て掛けにおける角度の保持が行いやすくなる。例えば、半導体レーザ素子170との距離が一定となるように光反射部材150を所定の位置に下降させて当接させると、底部118と枠部111における部材公差や実装公差などの影響で光反射部材150の角度にばらつきが生じる。そのため、公差の影響を加味し、予め光反射部材150が底部118に当接しない程度の距離をあけた状態で、光反射面の角度を保ったまま枠部に立て掛けることで、角度の精度が向上することも考えられる。また、接合剤190Aが光反射部材150と底部118の間を埋めることで光反射部材150と底部118とを接合させることができる。
【0073】
このような底部118から離した状態での立て掛けに先立っては、基部110に接合剤を配しておくことが好ましい。これにより、所望の立て掛け角度でもって光反射部材を安定的に立て掛け易くなる。例えば
図12(a)~(c)に示すように、光反射部材150を底部118から離した状態を維持しつつ、底部118に配した接合剤190Aに光反射部材150を押し当て、光反射部材150の立て掛けを行う。また、枠部111に対しても接合剤190Bを予め配しておいてもよい。かかる場合、光反射部材150を底部118から離した状態を維持しつつ、枠部111に配した接合剤190Bに光反射部材150を押し当て、光反射部材150の立て掛けを行ってよい(
図13(a)~(c)参照)。なお、
図12~
図13に示すように、光反射部材150を底部118から離した状態を維持するには、コレット200を用いてよい。図示する形態から分かるように、コレット200を用いると、立て掛け角度またはそれに近い角度で光反射部材150を予め傾けておくことができ、その状態で光反射部材150の立て掛け操作を行うことができる。
【0074】
接合剤を予め配しておくと、その接合剤に光反射部材が移動しながら押し当たるので、接合剤は、所定方向に押し流された又は押しつぶされたような形状を最終的にとり易い。
図12および
図13に示されるように左右方向から光反射部材を立て掛けた場合、接合剤190A,190Bはより外側へと(すなわち、より枠部へと向かう方向に)先端が押し流された又は押しつぶされたような形状を取り易くなる。このような形状は、光反射部材と接合剤との接合面の増加につながり得るので、立て掛けられた光反射部材の安定的な固定化に寄与し得る。
【0075】
上述したように、光反射部材の立て掛けは、光反射部材の光反射面と底部との成す角度が45°となるように行うことが好ましい。これは、最終的に得られる発光装置において、光反射部材の光反射面と底部との成す角度が好ましくは45°となっていることを意味している。これにつき、光反射部材の立て掛けは、例えば接合剤の経時変化などを加味して行ってよい。例えば接合剤として焼結剤を用いる場合、その焼結処理に伴う接合剤の体積収縮分を予め加味しておいてよい。これにつき例示すると、金属粒子と、バインダ樹脂および/または有機溶剤等とを含んだ金属ペーストに対して光反射部材が押し当てられて光反射部材の立て掛け操作を行う場合を挙げることができる。かかる金属ペーストは、光反射部材の立て掛け操作後に焼結に付されるが、その焼結処理では金属ペーストの体積収縮などの変化に伴って光反射部材の立て掛け角度が変わってしまうことがあり得る。よって、その体積収縮分を予め考慮して焼結前の接合剤に対して光反射部材の立て掛けを行っておいてよい。
【0076】
実施形態の製造方法では、光反射部材150を立て掛けるが、その対象は、半導体レーザ素子の電気的接続に資する“基部の枠部”の段差であることが好ましい。かかる枠部111の段差111A(特に段差上面)は、半導体レーザ素子170の電気的接続のための表面金属層114を有するので、そのような表面金属層114を備えた枠部111の段差111Aに対して光反射部材150を立て掛けてよい(
図4参照)。
【0077】
なお、枠部のなかでも光反射部材150が立て掛けられる領域には金属層を設けておかなくてよい。なぜなら、かかる領域に金属層が設けられ、そこに半導体レーザ素子から延びるワイヤ180が接続された場合、光反射部材の反射光がワイヤ180によって遮られてしまう虞があるからである。ここで、接合剤として金属ペーストを用いる場合では、接合剤と枠部との接合の点で枠部に金属層などの金属材が用いられることが好ましい。従って、「枠部にて光反射部材が立て掛けられる領域に設けておく必要がない金属層」とは、半導体レーザ素子と基板との電気的接続に資する金属層(特に、かかる接続のためのワイヤが光反射部材を横切るといった延在形態に直接関係する金属層)のことを指している。
【0078】
このようなことから、エッジ部分を形成する枠部111の段差上面の一部には、半導体レーザ素子170の電気的接続のための金属層114が設けられているところ、実施形態の製造方法では、かかる金属層114が設けられている段差上面の当該一部とは異なる上面領域111A1aを有する段差111Aに対して光反射部材150を立て掛けることが好ましい(
図4および
図10参照)。光反射部材150が立て掛けられるエッジ部分、言い換えると、光反射部材150との接触領域は、絶縁領域となっている。
【0079】
実施形態の製造方法のより詳細な事項、更なる具体的な態様などその他の事項は、上述の《発光装置》で説明しているので、重複を避けるために説明を省略する。
【0080】
以上、実施形態に係る発光装置を説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、実施形態の技術思想を実現する発光装置はこれに限らず、種々の態様が考えられる。
【0081】
例えば、上述した態様では光反射部材の平板形状は全てのエッジが角張っているものであったが、実施形態はそれに限定されない。例えば、
図14に示すように光反射部材150における接合面のエッジ158が面取りされているものであってもよい。かかる場合、エッジが面取りされた平面領域が基部110の底部118に接するようにして光反射部材150の立て掛けを行うことができる。なお、両端のエッジ158を同様に面取りすることで実装時に、いずれの面取り領域が底部118側にきたとしても実装できる。
【0082】
また、上記説明で参照した図面は、立て掛けられた光反射部材の下方側の端部がサブマウントからは離隔しているものであったが、実施形態はそれに限定されない。立て掛けられた光反射部材の下方側の端部がサブマウントに当接するように、光反射部材が枠部の段差に立て掛けられている形態であってもよい。
【0083】
最後に、本発明により開示される技術的特徴を有する発光装置および製造方法は、上述した構造および工程に限られるわけではないことを付言しておく。例えば、上述した発光装置に開示のない構成要素を有する発光装置においても本発明は適用され得るものであり、開示された発光装置と違いがあることは本発明を適用できないことの根拠とはならない。一方で、上述した発光装置の全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずとも、本発明は適用され得る。例えば、特許請求の範囲に、上述した発光装置の一部の構成要素が記載されていなかった場合、その構成要素については、上記で開示されたものに限らず、代替、省略、形状の変形、材料の変更などといった当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを請求するものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る発光装置は、プロジェクタ、車載ヘッドライト、照明、およびディスプレイ等に使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…発光装置
100…基板
101…放熱部
102…絶縁部
103…金属膜
110…パッケージ基部
111…枠部
111A…段差
111A1…段差上面
111A1a…段差上面(金属層の非設置領域)
111A2…段差側面
118…底部
120…蓋部
130…接着部
140…レンズ部材
150…光反射部材
155…接合面
156…光反射面
157…端部
158…接合面の面取りされたエッジ
160…サブマウント
170…半導体レーザ素子
175…保護素子
180…ワイヤ
190…接合剤
190A…底部に配される接合剤
190B…枠部に配される接合剤
200…コレット
300…光反射部材