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特開2023-85859金属ゼオライト触媒の再生方法及び金属ゼオライト触媒の再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085859
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】金属ゼオライト触媒の再生方法及び金属ゼオライト触媒の再生装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/06 20060101AFI20230614BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 38/08 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20230614BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230614BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20230614BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20230614BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20230614BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B01J38/06
B01J29/90 A ZAB
B01J29/76 A
B01J38/08
B01J38/10 A
B01D53/94 222
B01D53/86 222
B01D53/96 500
F01N3/20 B
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200144
(22)【出願日】2021-12-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、独立行政法人環境再生保全機構、「ディーゼル車排出ガス後処理装置の耐久性能評価手法及び機能回復手法の研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】内澤 潤子
(72)【発明者】
【氏名】小渕 存
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA04
3G091AA06
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA07
3G091BA14
3G091CA17
3G091FC02
3G091GA01
3G091GA03
3G091GA06
3G091GB01W
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB09W
3G091HA12
3G091HA15
3G091HA16
4D148AA06
4D148AB02
4D148BA03Y
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08Y
4D148BA11X
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA35X
4D148BA36Y
4D148BA41Y
4D148BD01
4D148BD03
4D148DA03
4D148DA13
4D148DA20
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA09
4G169AA10
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BD02C
4G169BD06C
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA11
4G169EA18
4G169FB79
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4G169GA03
4G169GA04
4G169GA05
4G169ZA01A
4G169ZA14B
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
【課題】容易に、劣化した銅ゼオライトや鉄ゼオライトなどの金属ゼオライト系のNOx還元触媒の触媒性能を向上させることができる再生方法と再生装置の提供である。
【解決手段】排ガス中の窒素酸化物を還元する金属ゼオライト触媒の再生方法であって、使用により劣化した触媒を、150-500℃の温度条件下、水蒸気濃度が75%以上の再生ガスに接触させる金属ゼオライト触媒の再生方法を提供する。そして、前記再生ガスが、さらに、水素、又は、アンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素、を含むものであってもよい。また、使用により劣化した触媒45を収容するリアクタ47に、水蒸気濃度が75%以上の再生ガスを供給するとともに、リアクタ47を電気炉51により150-500℃の温度に加熱し、触媒45と再生ガスとを反応させて金属ゼオライト触媒を再生する再生装置としてもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素酸化物を還元する金属ゼオライト触媒の再生方法であって、
使用により劣化した触媒を、150-500℃の温度条件下、水蒸気濃度が75%以上の再生ガスに接触させることを特徴とする金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項2】
前記再生ガスが、さらに、水素、又は、アンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素、を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項3】
前記温度条件が150-350℃であり、前記再生ガスが、水蒸気濃度が75%以上であり、かつ残りのガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項1に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項4】
前記温度条件が150-300℃であり、前記再生ガスが水素を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項5】
前記温度条件が200-450℃であり、前記再生ガスがアンモニアを含むことを特徴とする請求項1に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項6】
前記温度条件が300-500℃であり、前記再生ガスがアンモニアと一酸化窒素を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項7】
一定時間ごとに、前記温度条件のうち一定温度範囲における低温と高温との間で交互に温度を変化させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項8】
前記金属ゼオライト触媒は、銅ゼオライトであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項9】
前記排ガスは、ディーゼルエンジンの排ガスであることを特徴とする請求項1から請求項8
のいずれか1項に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法。
【請求項10】
排ガス中の窒素酸化物を還元する金属ゼオライト触媒の再生装置であって、
使用により劣化した触媒を収容する容器と、
前記容器に、水蒸気濃度75%以上の再生ガスを供給する再生ガス供給部と、
前記容器を150-500℃の温度に加熱する加熱器と、
を備えることを特徴とする金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項11】
前記再生ガスが、さらに、水素、又は、アンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素、を含むことを特徴とする請求項10に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項12】
前記温度が150-350℃であり、前記再生ガスが、水蒸気濃度が75%以上であり、かつ残りのガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項10に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項13】
前記温度が150-300℃であり、前記再生ガスが水素を含むことを特徴とする請求項10に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項14】
前記温度が200-450℃であり、前記再生ガスがアンモニアを含むことを特徴とする請求項10に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項15】
前記温度が300-500℃であり、前記再生ガスがアンモニアと一酸化窒素を含むことを特徴とする請求項10に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項16】
前記加熱器の温度を、一定時間ごとに、前記温度のうち一定温度範囲における低温と高温との間で交互に変化させる制御装置を設けたことを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項17】
前記金属ゼオライト触媒は、銅ゼオライトであることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【請求項18】
前記排ガスは、ディーゼルエンジンの排ガスであることを特徴とする請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却炉やボイラなどの定置型の発生源、または鉄道、船舶、自動車、特にディーゼルエンジン駆動の自動車などの移動発生源からの排ガス中の窒素酸化物を還元する触媒、特に金属ゼオライト触媒の再生方法及び再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラなどの定置型の発生源、または自動車などの移動発生源からの排ガス中には、窒素酸化物(以下、NOxという)が含まれており、大気汚染を引き起こす要因となっている。そして、従来から、大気中へのNOxの排出を低減するために、排ガス中のNOxを、アンモニア等を用いて触媒の働きにより無害な窒素と水蒸気に分解する脱硝技術が採用されている。例えば、バスやトラックなどのディーゼルエンジン駆動の重量車には排ガス規制に応じた浄化触媒システムが搭載されている。このような排ガス中の窒素酸化物を削減するために用いられる触媒としては、銅ゼオライトや鉄ゼオライトなどの金属ゼオライト(金属イオンゼオライト)系の触媒が、特に有効である。しかしながら、触媒は使用過程において徐々に劣化し、劣化が進むと、触媒性能が低下することから、有害成分であるNOxの排出量が増加してしまう。
【0003】
上記したディーゼルエンジン駆動の重量車においては、触媒は金属製コンバータ容器内部に固定されており、触媒の性能低下や破損などの不具合が生じた場合は、NOxの排出を防止するためにコンバータ容器ごと新品に交換することになる。しかしながら、このような場合に新品に交換することなく、同じ触媒を使用し続けることができれば、経済的でもあり、資源的にも好ましい。例えば、特許文献1には、NOx還元触媒の再生方法として、バナジウム系のNOx還元触媒を、250~390℃の温度範囲で10~50%の水蒸気と接触させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-534783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される再生方法により、バナジウム系のNOx還元触媒においては、劣化した触媒の触媒性能を向上させることができる。
しかしながら、近年、環境問題が大々的に取り沙汰されるようになり、年々排ガス規制値も厳しくなってきている。この点に関して、特許文献1に記載されているようなバナジウム系のNOx還元触媒では、今後の厳しい排ガス規制値に対応できるものとはいえず、現在は、NOx還元触媒として、厳しい排ガス規制値にも対応できる、銅ゼオライトや鉄ゼオライトなどの金属ゼオライト系の触媒が主流になりつつある。よって、銅ゼオライトや鉄ゼオライトなどの金属ゼオライト系の触媒について、容易に再生できるような方法が望まれる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、劣化した銅ゼオライトや鉄ゼオライトなどの金属ゼオライト系のNOx還元触媒の触媒性能を容易に向上させることができる再生方法及び再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、ゼオライト系の触媒は、高温下で水蒸気にさらされると劣化しやすく、触媒寿命が短くなることが知られている。また、バナジウム系の触媒と異なり、特に銅ゼオライトは排ガス中の水蒸気(10~13%程度)によっても劣化してしまい、触媒性能の低下を招いてしまう。しかしながら、本発明者らは、ゼオライトの合成に水熱合成法が用いられることに着目し、触媒の再生に使用するガスに水蒸気を高濃度で含ませることによって、容易にNOx還元触媒を再生できることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
(1)排ガス中の窒素酸化物を還元する金属ゼオライト触媒の再生方法であって、使用により劣化した触媒を、150-500℃の温度条件下、水蒸気濃度が75%以上の再生ガスに接触させる金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(2)前記再生ガスが、さらに、水素、又は、アンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素、を含む(1)に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(3)前記温度条件が150-350℃であり、前記再生ガスが、水蒸気濃度が75%以上であり、かつ残りのガスが不活性ガスである(1)に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(4)前記温度条件が150-300℃であり、前記再生ガスが水素を含む(1)に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(5)前記温度条件が200-450℃であり、前記再生ガスがアンモニアを含む(1)に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(6)前記温度条件が300-500℃であり、前記再生ガスがアンモニアと一酸化窒素を含む(1)に記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(7)一定時間ごとに、前記温度条件のうち一定温度範囲における低温と高温との間で交互に温度を変化させる(1)から(6)のいずれか1つに記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(8)前記金属ゼオライト触媒は、銅ゼオライトである(1)から(7)のいずれか1つに記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。
(9)前記排ガスは、ディーゼルエンジンの排ガスである(1)から(8)のいずれか1つに記載の金属ゼオライト触媒の再生方法である。ディーゼルエンジン駆動の重量車において、触媒を再生することで、触媒を新品に交換するコストや手間が軽減される。
(10)排ガス中の窒素酸化物を還元する金属ゼオライト触媒の再生装置であって、使用により劣化した触媒を収容する容器と、前記容器に、水蒸気濃度75%以上の再生ガスを供給する再生ガス供給部と、前記容器を150-500℃の温度に加熱する加熱器と、を備える金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(11)前記再生ガスが、さらに、水素、又は、アンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素、を含む(10)に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(12)前記温度が150-350℃であり、前記再生ガスが、水蒸気濃度が75%以上であり、かつ残りのガスが不活性ガスである(10)に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(13)前記温度が150-300℃であり、前記再生ガスが水素を含む(10)に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(14)前記温度が200-450℃であり、前記再生ガスがアンモニアを含む(10)に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(15)前記温度が300-500℃であり、前記再生ガスがアンモニアと一酸化窒素を含む(10)に記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(16)前記加熱器の温度を、一定時間ごとに、前記温度のうち一定温度範囲における低温と高温との間で交互に変化させる制御装置を設けた(10)から(15)のいずれか1つに記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(17)前記金属ゼオライト触媒は、銅ゼオライトである(10)から(16)のいずれか1つに記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
(18)前記排ガスは、ディーゼルエンジンの排ガスである(10)から(17)のいずれか1つに記載の金属ゼオライト触媒の再生装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、銅ゼオライトや鉄ゼオライトなどの金属ゼオライト系のNOx還元触媒の触媒性能を容易に向上させることができる再生方法及び再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】排ガス処理システムの構成の一例を示す図である。
図2】触媒再生処理装置(触媒性能試験装置)の構成図である。
図3】触媒劣化処理装置の構成図である。
図4】劣化品の触媒性能試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明の実施の形態において、ガス濃度は、体積濃度(vol%、ppmv)を意味する。また、温度範囲や濃度範囲等を示すときは、上限値及び下限値を含むものとする。
【0012】
図1には、排ガス処理システムの構成の一例を示す。図示例では、ディーゼルエンジン駆動の重量車の排ガス処理システム1を示している。ディーゼルエンジン駆動の重量車はガソリン車に比べて燃費がよく、二酸化炭素の排出量が少ないことから、環境にもやさしい。また、バスやトラックなどの長距離輸送車、特殊自動車として、今後も長期にわたる使用が想定される。
【0013】
排ガス処理システム1は、図1に示すように、エンジン排ガスの流路の上流側から順に配置された、排ガス中の一酸化窒素(NO)や炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化する酸化触媒(DOC)11、排ガス中の粒子状物質(PM)を除去するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)13、排ガス中のNOxを還元するNOx選択還元触媒(以下、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒という)15、排ガス中のアンモニアを酸化除去するアンモニアスリップ触媒(ASC)17などから構成されている。また、SCR触媒の入り口には還元剤を供給する還元剤供給装置21が配置されている。
【0014】
DOC11は、白金やパラジウムなどの貴金属を担持した酸化触媒であり、下流側のDPF13に至る前に、排ガス中に含まれるNO、HC、COは、貴金属により酸化され、無害な二酸化炭素(CO)や水蒸気(HO)となる。また、NOの一部が二酸化窒素(NO)に酸化される。
【0015】
DPF13は、排ガス中のPMを捕集、除去するものであり、DOC11に余分な燃料を噴射し、これがDOC11で触媒酸化される際に発生する酸化熱により強制的に昇温することによりPMを燃焼(DPF再生)処理するフィルター装置である。フィルターには微粒子を濾過できる耐熱性の高いセラミックスや金属多孔体などが使用され、DOCによって浄化された排ガス中のPMは、排ガスがフィルターの微細な孔を通り抜ける際に捕集される。
【0016】
SCR触媒15は、排ガス中のNOxを還元する触媒であり、SCR触媒15と還元剤供給装置21から供給される還元剤との作用により、排ガス中のNOxが窒素と水蒸気に還元される。還元剤供給装置21は、還元剤が内部に貯留されるタンク、ポンプ、バルブ、噴射ノズル、配管などを含んで構成することができる。還元剤としては、アンモニア(NH)、尿素(尿素水)が使用される。尿素の場合は尿素水の形でタンクに貯蔵できることから、取り扱いにも優れ、好ましい。そして、尿素水はエンジンの排熱で加水分解されるため、排ガスに吹き込むことで、アンモニアガスになる。
【0017】
なお、還元剤の供給箇所としては、DPF13とSCR触媒15との間の排ガス流路でも良いし、SCR触媒15が内部に配置されるコンバータ容器に直接供給しても良い。また、SCR触媒15としては、ゼオライトの担持体に鉄イオンや銅イオンなどの金属イオンを担持させた鉄ゼオライトや銅ゼオライトなどを用いると良い。金属イオンとしては、他にガリウムイオン、コバルトイオン、銀イオン、パラジウムイオンなどがあるが、鉄ゼオライトや銅ゼオライトが、NOx還元効果が高いことで知られており、好ましい。特に、銅ゼオライトは、比較的低温領域でもNOx還元効果が高いため、好適である。そして、触媒形状は、ハニカム形状、板状、粒状など種々のものが使用される。また、ゼオライトの種類(結晶構造)も任意である。例えば、A型(LTA)、フェリエライト(FER)、MCM-22(MWW)、ZSM-5(MFI)、モルデナイト(MOR)、L型(LTL)、X型又はY型(FAU)、ベータ型(BEA)、チャバザイト(CHA)等であってよく、CDO型、GON型等であってもよい。なお、カッコ内には構造コードを示している。
【0018】
排ガスは、大気中の酸素の存在下で、還元剤供給装置21から供給される還元剤とSCR触媒15の作用によって、下記化学反応式(1)―(3)に示すように、NOxが選択的に還元されて、主に窒素と水蒸気が生成される。
【0019】
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O (1)
2NO2+4NH3+O2 → 3N2+6H2O (2)
NO+NO2+2NH3 → 2N2+3H2O (3)
【0020】
このとき、排ガス中に存在するNOxを完全に反応させるために、NOxに対して還元剤が過剰に供給されるが、その下流側のASC17によってこれらの還元剤は酸化され、浄化ガスが生成される。ASC17は、SCR触媒を通過する未反応の還元剤(アンモニア)を酸化するためのアンモニア酸化触媒であり、ゼオライト、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの担体上に銅、鉄、白金、パラジウムなどの金属を含有するものがある。このように、排ガス処理システム1によって、排ガス中のNOxやその他の有害ガスが除去される。
【0021】
そして、SCR触媒は、使用過程において徐々に劣化し、劣化が進むと、触媒性能(活性)が低下する。例えば、図1に示すような排ガス処理システム1において、使用条件にもよるが、新品の触媒に対して、1000~10000時間使用した場合、10~50%程度、触媒性能が低下する。
そこで、本実施形態によれば、使用により劣化した触媒をコンバータ容器から取り出して、再生処理を行うことで、劣化した触媒の触媒性能を向上させることができる。具体的には、触媒性能が低下して劣化した触媒を、150-500℃の温度条件下、高濃度の水蒸気を含む雰囲気ガス(以下、再生ガスという)に接触させる。
【0022】
再生ガス中の高濃度の水蒸気の量は、75-100vol%又は75-90vol%(残りはバランスガス)とするとよい。水蒸気濃度を前記範囲とすることで、触媒を再生することができる。また、再生温度は、150-500℃、好ましくは、ゼオライト骨格構造の再構築や触媒成分の活性化がより期待できる150-350℃程度であるとよい。再生温度が150℃以上であれば、触媒の再生反応を促進することができる。また、高濃度水蒸気下におけるゼオライトの耐久性の観点からも、500℃以下が好ましい。
【0023】
また、再生処理時間は、水蒸気の量や温度、流速やその他の条件によっても異なるが、概ね1-168時間の範囲で行われる。好ましくは、5-50時間程度であれば、触媒と再生ガスとの接触時間として十分である。さらに、触媒の再生処理の間、一定温度を保ちながら再生ガスを流してもよいし、一定時間ごとに、一定温度範囲における低温と高温との間で交互に温度を変化させるようにしてもよい。再生温度を低温と高温との間で変化させることで、化学平衡条件を変動させ触媒の活性化を促す作用が期待される。なお、この温度範囲は、150-500℃の間で任意であるが、広すぎると、実際の触媒自体の温度が、変化した温度に追従するのが難しくなるため、前記温度範囲において、100℃、好ましくは50℃程度とすればよい。例えば、再生時間を20時間とした場合に、30分や1時間ごとに200℃と250℃との間や250℃と300℃との間などで温度を変化させるように制御することが考えられる。この制御は、再生する触媒を収容する反応容器(後述するリアクタ47)を加熱する加熱器(後述する電気炉51)の温度を、図示しない制御装置(タイマを含む)により制御することで、行うことができる。
【0024】
また、再生ガスが、さらに、水素(H)、又は、アンモニア(NH3)、又は、アンモニアと一酸化窒素(NO)、を含んでいてもよい。例えば、排ガスの浄化過程において、鉄ゼオライトや銅ゼオライトに含まれる金属が、排ガス中の酸素(O)により酸化鉄や酸化銅などの金属酸化物となって、不活性化することが考えられる。ここで、再生ガスに水素が含まれる場合は、水素にはこのような金属酸化物を還元する作用があることから、触媒性能の向上に寄与するものといえる。再生ガス中の水素の量は、0.1-10vol%、好ましくは0.25―2.5vol%とするとよい。水素濃度が低すぎると再生効果が小さく、一方、高すぎると触媒成分が過度に還元されるため活性の向上効果は低減する。
【0025】
また、再生ガスに添加するアンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素は、SCR触媒における反応物質であることから、SCR触媒を活性化させる作用を有することが考えられる。
アンモニアのみ添加する場合は、100-10000ppm、好ましくは200-2000ppmとするとよい。また、アンモニアと一酸化窒素を両方添加する場合は、アンモニアが100-10000ppm、好ましくは200-2000ppm、一酸化窒素が100-10000ppm、好ましくは200-2000ppmとするとよい。アンモニアや一酸化窒素の量を前記濃度範囲とすることで、再生効果が高くなる。なお、アンモニアと一酸化窒素は、水素よりも再生効果が高いことから、水素添加量よりも、少なくてよい。
【0026】
図2には、本実施形態において使用する触媒再生処理装置および触媒性能試験装置を示す。
触媒再生処理装置3と触媒性能測定装置は同じ装置であって、触媒の再生と再生後や劣化した触媒の活性測定を行える構成であり、主に、各ガスの流量制御計31、33、35、37、39と、各再生ガスの混合器40と、水蒸気を製造するための水の気化器43と、再生用の触媒試料45を収容するリアクタ47と、リアクタ47の再生ガス等の供給口(入り口)47aと排出口47bのガス濃度を測定、分析するガス分析器49とを有している。なお、図示例では、流量制御計を各ガス流路(配管)61、63、65、67、69に設置し、各ガスを適宜混合することにより所望の組成の再生ガスを得ることとしているが、あらかじめ所望の組成の圧縮再生ガスを複数種類準備し、一つの制御装置によって、特定の再生ガス流路に設置した電磁弁(図示せず)を開閉するようにして異なる組成の再生ガスを供給できるようにしてもよい。
【0027】
触媒再生処理装置として使用する場合、再生ガスには水蒸気を用いることから、供給する水量を、水用流路(配管)71に設置された水流量制御計41を用いて調整し、気化器43で水を水蒸気に変えてからガス流路に導入する。また、気化器43とリアクタ47の間のガス流路73は、その周囲に配置された加熱配管53によって約100-130℃に保持されている。そして、リアクタ47は、その周囲に配置された電気炉51によって所定温度、例えば150-500℃の温度に保持されている。
【0028】
例えば、触媒再生処理装置において、再生ガスとして、水蒸気のみ、バランスガスを窒素とした場合について説明する。なお、バランスガスは、不活性ガスであればよく、ヘリウム、アルゴンを用いてもよい。
まず、使用により劣化した金属ゼオライト系のNOx還元触媒(触媒試料45)、例えば銅ゼオライトをリアクタ47内に設置する。リアクタ47は、耐熱性のあるステンレスあるいは石英製反応容器などが用いられる。そして、窒素を、窒素用流路69に設けた窒素流量制御計39を制御することにより必要量を流し、水も同様に水流量制御計41を制御することにより必要量を気化器43に導入して水蒸気とすることで、水蒸気と窒素の混合ガスがリアクタ47内に供給される。リアクタ47は電気炉51によって所定温度に保持されており、所定時間再生ガスを流すことで、再生ガスが触媒と反応して触媒が再生される。また、電気炉51の温度を制御する制御装置(図示せず)を設け、別途設けた又は内蔵するタイマによって再生温度と再生時間を制御するようにしても良い。金属ゼオライト系の触媒であれば、再生温度150-500℃、概ね20時間程度、再生ガスを流せばよい。
【0029】
また、再生ガスとして、水素やアンモニアや一酸化窒素を使用する場合は、それぞれ水素用流路61に設けた水素流量制御計31、アンモニア用流路65に設けたアンモニア流量制御計35、一酸化窒素用流路63に設けた一酸化窒素流量制御計33を制御することにより必要量流せばよい。これらのガスは、ガス混合器40で混合されて、流路途中で合流する水蒸気とともに供給口47aからリアクタ47に供給される。
【0030】
そして、所定時間再生処理された触媒の性能評価をする場合、リアクタ47に供給するガスの種類や流量、電気炉51の温度等を変えることで、触媒再生処理装置は触媒性能試験装置としても使用できる。したがって、再生処理に続けて、再生後の触媒を設置したまま、触媒性能試験を行うことができる。以下に、触媒性能試験装置としての使用方法について説明する。
【0031】
触媒の性能試験は、再生した触媒や劣化した触媒(触媒試料45)をリアクタ47に設置した状態で、リアクタ47に排ガスの模擬ガスを供給して、リアクタ47の供給口47aの模擬ガスとリアクタ47の排出口47bの模擬ガスをガス分析器49に注入し、各模擬ガス中のNOx濃度を測定することで、行うことができる。模擬ガス中には、排ガスの主な成分である一酸化窒素のほかに、還元剤としてのアンモニアや酸素なども含むことができ、アンモニア流量制御計35や酸素流量制御計37を制御することにより必要量流すことができる。また、触媒試料45を変えることで、新品の触媒も同様に性能試験を行うことができる。
【実施例0032】
(劣化品の作製)
まず、比較対象となる劣化品(劣化触媒)の作製を、触媒劣化処理装置を用いて行った。図3には、触媒劣化処理装置80の構成図を示す。
新品の銅ゼオライト触媒粉末(銅含有量=3.7wt%、ゼオライト=チャバザイト、東ソー株式会社製、H-SSZ-13、HSZ-D12HOA、Si/2Al(モル比)=16.6)2gを試料とし、耐熱性アルミナボート(長さ100mm、幅15mm、高さ15mm)82に充填し、石英管(内径35mm、長さ600mm)84の中央に設置した。なお、劣化の度合いは、触媒の使用条件、環境等によっても様々であることから、本実施例においては、劣化処理として、均一な指標となる劣化品を作製するため、また触媒を加速的に劣化できるように、劣化状態を模擬的に再現する、以下の方法により行った。
【0033】
電気炉86の温度を750℃とし、加熱配管88を130℃に保持して、水蒸気濃度が30vol%となるように、水流量制御計90により水の供給量を調整し、気化器92に導入した。なお、空気をバランスガスとして用いて、ガス流速が500ml/minとなるように、空気流量制御計94により流量を調整して、10時間ガスを流して、劣化品を作製した。
【0034】
(性能試験)
劣化品の性能試験(触媒活性試験)は、図2の装置を用いて以下の方法により行った。上記した方法により作製した劣化品から10mgを計り取り、これにガス透過性を確保するための粒状石英砂(直径0.3~0.5mm)を0.8g添加、混合した試料45をリアクタ47(内径10mm、長さ310mm)の中央に石英ウールで挟んで固定した。
模擬排ガスの条件として、以下のディーゼルガスの組成を模擬したガスを用いて、上記(1)式のスタンダードSCR反応を基準として行った。
模擬ガス組成 200ppmNO、220ppmNH、1%HO、10%O、Nバランス
流速 400ml/min
【0035】
電気炉51により触媒の温度を430℃から230℃まで40℃おきに30分ずつ降温し、各温度(430℃、390℃、350℃、310℃、270℃、230℃の6点)において、リアクタ47の供給口47aのガスと排出口47bのガスをガス分析器49(ガスセル付きFT-IR、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、iS-10、分解能0.5cm―1)に注入してNOx転化率を測定した(すなわち、一つの試料45において、入り口及び出口ガスを6回測定したことになる)。測定条件は以下とした。
NOx転化率=[(NOx)inlet-(NOx)outlet]/(NOx)inlet x 100(%) (4)
【0036】
図4には、劣化品のNOx転化率を測定した結果を示す。前記6点の温度のうち、実際の車両走行時の触媒温度範囲に相当する270℃-390℃におけるNOx転化率の平均値(4点の平均値)を、評価対象とする触媒性能指標(触媒活性値)とした。その場合の劣化品のNOx転化率は76.7%であった(表1)。なお、新品のNOx転化率は概ね99%程度はある。そして、以後の実施例においても同様に、270℃-390℃におけるNOx転化率の平均値を触媒性能指標(触媒活性値)とした。
【0037】
(再生処理)(実施例1)
上記した方法により劣化した触媒について、以下の方法により再生処理を施した。
作製した劣化品から10mgを計り取り、これにガス透過性を確保するための粒状石英砂(直径0.3~0.5mm)を0.8g添加、混合した試料45をリアクタ47(内径10mm、長さ310mm)の中央に石英ウールで挟んで固定した。再生温度は電気炉51の温度を調整することで200℃とし、水蒸気濃度を1%、30%、50%、75%、90%として、窒素をバランスガスとして用いて(すなわち、再生ガス成分は水蒸気と窒素のみとなる)、再生時間を20時間とした。また、再生ガスの全流速が75ml/minとなるように、窒素流量制御計39及び水流量制御計41を調整した。また、加熱配管53の保持温度は水蒸気の結露を防ぐために100-130℃(実験例1(HO1%)では100℃、実験例2-5では130℃)とした。こうして得られた再生処理試料について、上記した劣化品の性能試験と同様の方法で、触媒活性試験を行った。その結果を表1に示す。
【表1】
【0038】
表1の結果から、実験例4及び5の水蒸気濃度を75%以上の高濃度とした場合に、NOx転化率の明らかな向上が認められたことから、水蒸気濃度を75%とし、再生温度を変えた条件で、その他の条件は同様として、さらに検討を行った。また、再生温度を一定温度に保持するだけでなく、一定時間ごとに低温と高温との間で交互に温度を変化させる方法も実施した。なお、試料の調製およびリアクタへの設置方法は上記した方法(実験例1-5)と同様である。そして、このようにして得られた再生処理試料についても、同様に触媒活性試験を行った。その結果を表2に示す。実験例9においては、30分ごとに250℃と300℃との間で温度を変化させ、実験例10においては、30分ごとに300℃と350℃との間で温度を変化させた。この温度変化は、電気炉51の温度調節器の設定温度と時間を調整して行った。なお、再生ガスの全流速は、実験例1-5と同様とし、以下に示すすべての例において、同じ流速とした。また、バランスガスとして窒素を用いたこと、再生時間を20時間としたことも同様である。
【0039】
【表2】
この結果から、150℃から350℃の広い温度範囲において、安定してNOx転化率の向上が認められた。したがって、高濃度の水蒸気を再生ガスとして用いることで、安定して比較的高いNOx転化率を得ることができることが確認された。また、低温と高温との間で温度を変化させた場合にも、同様に、80%ほどのNOx転化率となり、NOx転化率の向上効果を有することが認められた。
【0040】
(実施例2)
次に、水素の添加効果を調べるため、水素用流量制御計31を用いて水素の添加量を調整し、前記再生ガスに水素を少量添加して、再生処理を行った。試料の調製およびリアクタへの設置方法は実施例1と同様である。再生温度は電気炉51の温度を調整することで設定し、水蒸気濃度を75%として、窒素をバランスガスとして用い、再生時間を20時間とした。そして、水素添加量は0.25vol%と2.5vol%の2種類の条件とした。また、再生ガスの全流速が75ml/minとなるように、水素用流量制御計31、窒素流量制御計39及び水流量制御計41を調整した。このようにして得られた再生処理試料について、実施例1と同様に触媒活性試験を行った。その結果を表3に示す。
【表3】
【0041】
上記結果から、特に、300℃以下の中間から低温領域では、高濃度の水蒸気ガスに水素を添加した再生ガスを用いることで、NOx転化率の向上効果が高いことが認められた。また、水素の添加量は、0.25vol%程度といった微量でも、NOx転化率の向上に寄与することが確認された。特に、水素の添加によって、実験例12、17にも示されるように、90%以上の大きな機能回復が認められた。
【0042】
(実施例3)
さらに、アンモニアの添加効果を調べるため、アンモニア用流量制御計35を用いてアンモニアの添加量を調整し、再生ガスにアンモニアを微量添加して、再生処理を行った。試料の調製およびリアクタへの設置方法は実施例1等と同様である。再生温度は電気炉51の温度を調整することで設定し、水蒸気濃度を75%として、窒素をバランスガスとして用い、再生時間を20時間とした。また、再生ガスの全流速が75ml/minとなるように、アンモニア用流量制御計35、窒素流量制御計39及び水流量制御計41を調整した。このようにして得られた再生処理試料について、実施例1等と同様に触媒活性試験を行った。その結果を表4に示す。
【表4】
【0043】
上記結果から、特に、200-450℃の中間温度領域において、高濃度の水蒸気ガスにアンモニアを添加した再生ガスを用いることで、NOx転化率の向上効果が認められた。なお、450℃において、劣化品とは2.5%程の転化率の違いではあるが、この程度の差であっても有意に活性が回復したとみることができる。
【0044】
(実施例4)
また、さらに一酸化窒素を添加した場合の効果を調べるため、アンモニア用流量制御計35を用いてアンモニアの添加量を調整すると共に、一酸化窒素用流量制御計33を用いて一酸化窒素の添加量を調整し、再生ガスにアンモニアと一酸化窒素を微量添加して、再生処理を行った。試料の調製およびリアクタへの設置方法は実施例1等と同様である。再生温度は電気炉51の温度を調整することで設定し、水蒸気濃度を75%として、窒素をバランスガスとして用い、再生時間を20時間とした。また、再生ガスの全流速が75ml/minとなるように、アンモニア用流量制御計35、一酸化窒素用流量制御計33、窒素流量制御計39及び水流量制御計41を調整した。このようにして得られた再生処理試料について、実施例1等と同様に触媒活性試験を行った。その結果を表5に示す。
【表5】
【0045】
上記結果から、特に、300-500℃の高温領域において、高濃度の水蒸気ガスにアンモニアと一酸化窒素を添加した再生ガスを用いることで、安定してNOx転化率の向上効果が高いことが認められた。なお、実施例においては金属ゼオライト触媒として、銅ゼオライトを用いた例を示したが、金属ゼオライト触媒の性能低下及び機能回復のメカニズムは、主にゼオライト構造の破壊及び修復に起因するものと考えられることから、他の金属種のゼオライトでも同様の再生作用及び効果を奏するものといえる。
【0046】
以上のように、水蒸気濃度を75%含有する再生ガスに劣化した触媒を接触させて再生処理を行うことにより、触媒性能の向上が認められた。また、本実施形態によれば、水蒸気のみ(他窒素)や、水蒸気に、水素、又は、アンモニア、又は、アンモニアと一酸化窒素、のガスを少量添加するだけで容易に再生ガスを調整できるため、簡易な再生方法及び再生装置であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ごみ焼却炉やボイラなどの定置型の発生源、または鉄道、船舶、自動車などの移動発生源に限られず、これら以外の種々の燃焼装置からの排ガス中の窒素酸化物を還元する触媒の再生方法及再生装置に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0048】
1 排ガス処理システム
3 触媒再生処理装置(触媒性能試験装置)
11 DOC
13 DPF
15 触媒
17 ASC
21 還元剤供給装置
31、33、35、37、39、41 流量制御計
40 混合器
43 気化器
45 触媒試料
47 リアクタ
49 ガス分析器
51 電気炉
53 加熱配管
61、63、65、67、69、71、73 流路
80 触媒劣化処理装置
82 アルミナボート
84 石英管
86 電気炉
88 加熱配管
90 水流量制御計
92 気化器
94 空気流量制御計

図1
図2
図3
図4