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特開2023-85920セメントクリンカの製造方法、セメントクリンカの製造システム、汚泥供給方法、及び汚泥供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085920
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】セメントクリンカの製造方法、セメントクリンカの製造システム、汚泥供給方法、及び汚泥供給装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20230614BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20230614BHJP
   C04B 7/43 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C04B7/38
C02F11/00 M ZAB
C04B7/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200240
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】追立 修士
(72)【発明者】
【氏名】中河 久典
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA05
4D059AA23
4D059BB02
4D059BF15
4D059CB01
4D059CB06
4D059CC04
4D059EB01
(57)【要約】
【課題】セメントクリンカの品質の安定化を図る。
【解決手段】本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、加熱工程と、吸引工程と、供給工程とを含む。加熱工程は、汚泥が供給される加熱部においてセメント原料を加熱する。吸引工程は、ポンプ圧送部のピストンを移動させることで、収容部から汚泥を吸引する。供給工程は、第1位置から第2位置までピストンを移動させることで、吸引した汚泥を加熱部に接続された供給配管内に送り出す。供給工程は、第1位置から、第1位置と第2位置との間の中間位置までピストンを移動させることと、中間位置においてピストンを停止させることと、中間位置から第2位置までピストンを移動させることと、を含む。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥が供給される加熱部においてセメント原料を加熱する加熱工程と、
ポンプ圧送部のピストンを移動させることで、収容部から汚泥を吸引する吸引工程と、
第1位置から第2位置まで前記ピストンを移動させることで、吸引した汚泥を前記加熱部に接続された供給配管内に送り出す供給工程と、を含み、
前記供給工程は、
前記第1位置から、前記第1位置と前記第2位置との間の中間位置まで前記ピストンを移動させることと、
前記中間位置において前記ピストンを停止させることと、
前記中間位置から前記第2位置まで前記ピストンを移動させることと、を含む、セメントクリンカの製造方法。
【請求項2】
前記供給工程において、前記第1位置からの前記ピストンの移動開始のタイミングから所定時間が経過したときに前記ピストンを停止させることで、前記中間位置に前記ピストンを停止させる、請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項3】
前記供給工程において、前記中間位置に対応する位置に配置されたセンサによって前記ピストンの到達が検知されたときに前記ピストンを停止させることで、前記中間位置に前記ピストンを停止させる、請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項4】
前記供給工程は、前記ピストンを前記第1位置と前記第2位置との間で停止させずに前記第1位置から前記第2位置まで移動させる第1動作モードで前記ピストンを駆動することを更に含み、
動作モードの切替に関するユーザ指示に基づいて、前記第1動作モードから、前記ピストンを前記第1位置から前記中間位置まで移動させて前記中間位置で停止させた後に、前記ピストンを前記第2位置まで移動させる第2動作モードに切り替える、請求項1~3のいずれか一項に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項5】
前記供給工程は、前記ピストンを前記第1位置と前記第2位置との間で停止させずに前記第1位置から前記第2位置まで移動させる第1動作モードで前記ピストンを駆動することを更に含み、
前記供給配管内の圧力を示す情報に基づいて、前記第1動作モードから、前記ピストンを前記第1位置から前記中間位置まで移動させて前記中間位置で停止させた後に、前記ピストンを前記第2位置まで移動させる第2動作モードに切り替える、請求項1~3のいずれか一項に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項6】
前記供給工程は、前記ピストンを前記第1位置と前記第2位置との間で停止させずに前記第1位置から前記第2位置まで移動させる第1動作モードで前記ピストンを駆動することを更に含み、
前記加熱部でのセメント原料の加熱状況を示す情報に基づいて、前記第1動作モードから、前記ピストンを前記第1位置から前記中間位置まで移動させて前記中間位置で停止させた後に、前記ピストンを前記第2位置まで移動させる第2動作モードに切り替える、請求項1~3のいずれか一項に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項7】
前記加熱部でのセメント原料の加熱状況を示す情報は、前記加熱部の温度、前記加熱部において加熱された後のセメント原料の温度、前記加熱部から排出される排ガスに含まれる所定成分の濃度、及び前記加熱部に供給されるエネルギー源の供給量から成る群から選択される1種以上の情報を含む、請求項6に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項8】
タンク内に収容された汚泥をスクリューフィーダによって前記収容部を含む下流領域に向けて送り出す送出工程を更に含み、
前記タンク内に収容されている汚泥の含水率は80%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項9】
セメント原料を加熱する加熱部を有し、セメントクリンカを生成するセメントクリンカ製造装置と、
汚泥を収容する収容部と、前記加熱部に接続された供給配管と、ピストンの往復移動によって前記収容部から汚泥を吸引して、前記供給配管内に汚泥を送り出すポンプ圧送部とを有し、前記加熱部に対して汚泥を供給する汚泥供給装置と、
前記汚泥供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ピストンを第1位置から第2位置まで移動させることで、前記収容部から吸引した汚泥を前記供給配管内に送り出す供給制御を実行し、
前記供給制御は、
前記第1位置から、前記第1位置と前記第2位置との間の中間位置まで前記ピストンを移動させることと、
前記中間位置において前記ピストンを停止させることと、
前記中間位置から前記第2位置まで前記ピストンを移動させることと、を含む、セメントクリンカの製造システム。
【請求項10】
セメント原料を加熱する加熱部に対して汚泥を供給する汚泥供給方法であって、
ポンプ圧送部のピストンを移動させることで、収容部から汚泥を吸引する吸引工程と、
第1位置から第2位置まで前記ピストンを移動させることで、吸引した汚泥を前記加熱部に接続された供給配管内に送り出す供給工程と、を含み、
前記供給工程は、
前記第1位置から、前記第1位置と前記第2位置との間の中間位置まで前記ピストンを移動させることと、
前記中間位置において前記ピストンを停止させることと、
前記中間位置から前記第2位置まで前記ピストンを移動させることと、を含む、汚泥供給方法。
【請求項11】
汚泥を収容する収容部と、
セメント原料を加熱する加熱部に接続された供給配管と、
ピストンの往復移動によって、前記収容部から汚泥を吸引して前記供給配管内に汚泥を送り出すポンプ圧送部と、を備え、
前記ポンプ圧送部は、前記ピストンを第1位置から第2位置まで移動させることで、前記収容部から吸引した汚泥を前記供給配管内に送り出す供給動作を実行し、
前記供給動作は、
前記第1位置から、前記第1位置と前記第2位置との間の中間位置まで前記ピストンが移動することと、
前記中間位置において前記ピストンが停止することと、
前記中間位置から前記第2位置まで前記ピストンが移動することと、を含む、汚泥供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメントクリンカの製造方法、セメントクリンカの製造システム、汚泥供給方法、及び汚泥供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低含水率汚泥の輸送方法が開示されている。この輸送方法は、汚泥を解砕し塊状物とする工程と、塊状物に滑材を添加する工程と、滑材が添加された塊状物を、圧送ポンプを介して輸送する工程とを含む。また、上記輸送方法では、塊状物の含水率を調整することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-260526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、セメントクリンカの品質の安定化に有用なセメントクリンカの製造方法、セメントクリンカの製造システム、汚泥供給方法、及び汚泥供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、加熱工程と、吸引工程と、供給工程とを含む。加熱工程は、汚泥が供給される加熱部においてセメント原料を加熱する。吸引工程は、ポンプ圧送部のピストンを移動させることで、収容部から汚泥を吸引する。供給工程は、第1位置から第2位置までピストンを移動させることで、吸引した汚泥を加熱部に接続された供給配管内に送り出す。供給工程は、第1位置から、第1位置と第2位置との間の中間位置までピストンを移動させることと、中間位置においてピストンを停止させることと、中間位置から第2位置までピストンを移動させることと、を含む。
【0006】
供給配管内に導入される汚泥の含水率が低くなると、ピストンの1回の往復動作によって汚泥が加熱部に導入されずに、ピストンの複数回の往復動作によって多くの量の汚泥の塊が加熱部に導入され得る。加熱部に導入される汚泥の塊の量が多いと、汚泥の塊の一部が焼却されない可能性があり、加熱部でのセメント原料の加熱に対して影響を及ぼすおそれがある。これに対して、上記製造方法では、第1位置から第2位置までピストンを移動させる間に、上記中間位置でピストンを停止させる。これにより、第2位置に向かうピストンの連続した移動に伴って供給配管内に送り出される汚泥の量が少なくなる。そのため、汚泥の含水率が低くなり、ピストンの複数回の往復動作によって汚泥の塊が加熱部に導入される場合でも、加熱部に導入される汚泥の塊の量が少なくなる。その結果、汚泥が焼却されないことに起因した、加熱部での加熱への影響を抑制できる。従って、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【0007】
上記製造方法は、供給工程において、第1位置からのピストンの移動開始のタイミングから所定時間が経過したときにピストンを停止させることで、上記中間位置にピストンを停止させてもよい。この場合、中間位置にピストンを停止させるためにセンサ等を設置する必要がない。従って、装置構成の簡素化に有用である。
【0008】
上記製造方法は、供給工程において、中間位置に対応する位置に配置されたセンサによってピストンの到達が検知されたときにピストンを停止させることで、中間位置にピストンを停止させてもよい。この場合、ピストンの往復動作を繰り返し実行する際に、ピストンを第1位置と第2位置との間の目標位置に安定して停止させることができ、汚泥の塊の量が多くなってしまう可能性が更に低減される。従って、セメントクリンカの品質の安定化に更に有用である。
【0009】
供給工程は、ピストンを第1位置と第2位置との間で停止させずに第1位置から第2位置まで移動させる第1動作モードでピストンを駆動することを更に含んでもよい。上記製造方法は、動作モードの切替に関するユーザ指示に基づいて、第1動作モードから、ピストンを第1位置から中間位置まで移動させて中間位置で停止させた後に、ピストンを第2位置まで移動させる第2動作モードに切り替えてもよい。この場合、汚泥による加熱部での加熱への影響がないと判断される期間では、第1動作モードでピストンを動作させることができる。従って、ピストンの動作の簡素化とセメントクリンカの品質の安定化との両立に有用である。
【0010】
供給工程は、ピストンを第1位置と第2位置との間で停止させずに第1位置から第2位置まで移動させる第1動作モードでピストンを駆動することを更に含んでもよい。上記製造方法は、供給配管内の圧力を示す情報に基づいて、第1動作モードから、ピストンを第1位置から中間位置まで移動させて中間位置で停止させた後に、ピストンを第2位置まで移動させる第2動作モードに切り替えてもよい。供給配管内の圧力から、供給配管内の汚泥の含水率を推定することができる。そのため、上記方法では、供給配管内の汚泥の含水率が低くなったときに、第2動作モードに切り替えることができる。その結果、汚泥の含水率が高く、汚泥に起因した加熱部での加熱への上記影響がないと判断される期間では、第1動作モードでピストンを動作させることができる。従って、ピストンの動作の簡素化とセメントクリンカの品質の安定化との両立に有用である。
【0011】
供給工程は、ピストンを第1位置と第2位置との間で停止させずに第1位置から第2位置まで移動させる第1動作モードでピストンを駆動することを更に含んでもよい。上記製造方法は、加熱部でのセメント原料の加熱状況を示す情報に基づいて、第1動作モードから、ピストンを第1位置から中間位置まで移動させて中間位置で停止させた後に、ピストンを第2位置まで移動させる第2動作モードに切り替えてもよい。セメント原料の加熱状況から、既に加熱部に導入された汚泥に起因した加熱部での加熱への影響を推定することができる。そのため、上記方法では、汚泥に起因した加熱部での加熱への影響があるときに、その影響を低減又は解消するために第2動作モードに切り替えることができる。その結果、汚泥に起因した加熱部での加熱への上記影響がないと推定される期間では、第1動作モードでピストンを動作させることができる。従って、ピストンの動作の簡素化とセメントクリンカの品質の安定化との両立に有用である。
【0012】
加熱部でのセメント原料の加熱状況を示す情報は、加熱部の温度、加熱部において加熱された後のセメント原料の温度、加熱部から排出される排ガスに含まれる所定成分の濃度、及び加熱部に供給されるエネルギー源の供給量から成る群から選択される1種以上の情報を含んでもよい。これらの情報は、既に加熱部に導入された汚泥に起因した加熱部での加熱への上記影響によって変動する。従って、汚泥による加熱部での加熱への影響を把握したうえで、ピストンの動作を制御することが可能となる。
【0013】
上記製造方法は、タンク内に収容された汚泥をスクリューフィーダによって上記収容部を含む下流領域に向けて送り出す送出工程を更に含んでもよい。タンク内に収容されている汚泥の含水率は80%以下であってもよい。タンク内に収容されている汚泥の含水率が低いと、ピストンの1回の往復動作によって汚泥が加熱部に導入されずに、ピストンの複数回の往復動作によって多くの量の汚泥の塊が加熱部に導入される現象が起こる可能性が高くなる。上記製造方法では、ピストンが中間位置で一旦停止し、加熱部に導入される汚泥の塊の量が少なくなるので、汚泥が焼却されないことに起因した加熱部での加熱への影響を抑制できる。従って、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【0014】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造システムは、セメントクリンカ製造装置と、汚泥供給装置と、汚泥供給装置を制御する制御装置と、を備える。セメントクリンカ製造装置は、セメント原料を加熱する加熱部を有し、セメントクリンカを生成する。汚泥供給装置は、汚泥を収容する収容部と、加熱部に接続された供給配管と、ピストンの往復移動によって収容部から汚泥を吸引して、供給配管内に汚泥を送り出すポンプ圧送部とを有し、加熱部に対して汚泥を供給する。制御装置は、ピストンを第1位置から第2位置まで移動させることで、収容部から吸引した汚泥を供給配管内に送り出す供給制御を実行する。供給制御は、第1位置から、第1位置と第2位置との間の中間位置までピストンを移動させることと、中間位置においてピストンを停止させることと、中間位置から第2位置までピストンを移動させることと、を含む。この製造システムでは、第1位置から第2位置までピストンが移動する間に、上記中間位置でピストンが停止する。従って、上記製造方法と同様に、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【0015】
本開示の一側面に係る汚泥供給方法は、セメント原料を加熱する加熱部に対して汚泥を供給する方法である。汚泥供給方法は、ポンプ圧送部のピストンを移動させることで、収容部から汚泥を吸引する吸引工程と、第1位置から第2位置までピストンを移動させることで、吸引した汚泥を加熱部に接続された供給配管内に送り出す供給工程と、を含む。供給工程は、第1位置から、第1位置と第2位置との間の中間位置までピストンを移動させることと、中間位置においてピストンを停止させることと、中間位置から第2位置までピストンを移動させることと、を含む。この汚泥供給方法では、第1位置から第2位置までピストンを移動させる間に、上記中間位置でピストンを停止させる。従って、上記製造方法と同様に、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【0016】
本開示の一側面に係る汚泥供給装置は、汚泥を収容する収容部と、セメント原料を加熱する加熱部に接続された供給配管と、ピストンの往復移動によって、収容部から汚泥を吸引して供給配管内に汚泥を送り出すポンプ圧送部と、を備える。ポンプ圧送部は、ピストンを第1位置から第2位置まで移動させることで、収容部から吸引した汚泥を供給配管内に送り出す供給動作を実行する。供給動作は、第1位置から、第1位置と第2位置との間の中間位置までピストンが移動することと、中間位置においてピストンが停止することと、中間位置から第2位置までピストンが移動することと、を含む。この汚泥供給装置では、第1位置から第2位置までピストンが移動する間に、上記中間位置でピストンが停止する。従って、上記製造方法と同様に、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、セメントクリンカの品質の安定化に有用なセメントクリンカの製造方法、セメントクリンカの製造システム、汚泥供給方法、及び汚泥供給装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、セメントクリンカの製造システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、汚泥供給装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、ポンプ圧送部の一例を示す模式図である。
図4図4は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図5図5は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6(a)及び図6(b)は、ポンプ圧送部の動作の一例を示す模式図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、ポンプ圧送部の動作の一例を示す模式図である。
図8図8は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9(a)及び図9(b)は、ポンプ圧送部の動作の一例を示す模式図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、ポンプ圧送部の動作の一例を示す模式図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、変形例に係るポンプ圧送部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
[セメントクリンカの製造システム]
図1には、一実施形態に係るセメントクリンカの製造システムが模式的に示されている。図1に示される製造システム1(セメントクリンカの製造システム)は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを製造するシステムである。製造システム1は、セメントクリンカ製造装置2と、制御装置90と、を有する。
【0021】
セメントクリンカ製造装置2は、セメント原料を加熱してセメントクリンカを生成する装置である。セメントクリンカ製造装置2は、例えば、プレヒータ10と、ロータリキルン30と、クリンカクーラ38と、汚泥供給装置40と、を有する。以下、セメントクリンカ製造装置2に含まれる各装置と、制御装置90とについてそれぞれ説明する。
【0022】
プレヒータ10は、ニューサスペンションプレヒータ(NSP)である。プレヒータ10は、ロータリキルン30でのセメント原料の焼成の前に、ロータリキルン30からの排ガスを含む高温のガス(以下、単に「高温ガス」という。)を用いて、セメント原料の予熱及び仮焼を行う。高温ガスは、セメント原料を予熱及び仮焼できる程度の温度を有する。プレヒータ10は、複数のサイクロンと、仮焼炉14と、ライジングダクト16と、原料供給部17と、を有する。複数のサイクロンは、例えば、サイクロンC1,C2,C3,C4を含む。図1に示される例と異なり、サイクロンの個数が、5個以上又は3個以下であってもよい。
【0023】
サイクロンC1,C2,C3,C4は、上からこの順で配置されており、各サイクロンは、セメント原料(予熱した原料)と高温ガスとを分離する。仮焼炉14は、ロータリキルン30からの排ガスを含む高温ガスによってセメント原料の仮焼を行う炉体である。仮焼炉14は、セメント原料を加熱する加熱部として機能する。仮焼炉14での加熱温度は、一例では、700℃~900℃程度である。
【0024】
仮焼炉14は、ライジングダクト16を介してロータリキルン30の窯尻32に接続されている。仮焼炉14の下端には、ライジングダクト16の一端と接続される通風口14aが設けられている。ライジングダクト16は、ロータリキルン30からの排ガスを、通風口14aを介して仮焼炉14内に導く。ロータリキルン30の窯尻32からの排ガスは、ライジングダクト16内及び仮焼炉14内を上昇するように流れる。
【0025】
仮焼炉14は、石炭(例えば微粉炭)等のエネルギー源と空気とを混合させて、仮焼炉14の内部に燃焼ガスを供給するバーナ(不図示)を有する。上記高温ガスには、ロータリキルン30からの排ガスと、仮焼炉14のバーナからの燃焼ガスとが含まれる。仮焼炉14の内部において、バーナからの燃焼ガスによって、旋回しながら上昇する旋回流が形成されてもよい。仮焼炉14において生成された高温ガス(仮焼炉14から排出される排ガス)は、サイクロンC4に流れ、その後、サイクロンC3,C2,C1をこの順に通過するように上方に流れる。
【0026】
原料供給部17は、サイクロンC1とサイクロンC2との間のガスダクトに、前工程(原料工程)で生成されたセメント原料を投入する。供給されたセメント原料は、サイクロン間のガスダクトでの高温ガスとの熱交換、及びサイクロンでの高温ガスとの分離を繰り返しながら、サイクロンC1,C2,C3の順に下降する。サイクロンC3で高温ガスと分離されたセメント原料が、仮焼炉14の内部に導入される。仮焼炉14での高温ガスとの熱交換により、セメント原料に含まれる石灰石(炭酸カルシウム:CaCO3)の脱炭酸が行われる。仮焼された(脱炭酸)されたセメント原料は、高温ガスと共にサイクロンC4に導入され、サイクロンC4で高温ガスと分離された後に、ロータリキルン30の窯尻32に供給される。
【0027】
ロータリキルン30は、プレヒータ10で予熱及び仮焼された後のセメント原料を焼成する装置である。ロータリキルン30での加熱温度は、一例では、1000℃~1500℃程度である。ロータリキルン30は、本体部34と、その本体部34の後端に設けられたバーナ36とを有する。ロータリキルン30は、バーナ36からの燃焼ガスによってセメント原料を加熱することで、セメントクリンカを生成する。ロータリキルン30は、生成したセメントクリンカをクリンカクーラ38に排出する。クリンカクーラ38は、冷却用の空気等を用いてセメントクリンカを冷却する。
【0028】
汚泥供給装置40は、仮焼炉14に対して汚泥を供給する装置である。汚泥が仮焼炉14内に供給されることで、汚泥の一部の成分(例えば、Al)がセメント原料として用いられる。汚泥は、燃えやすい性質を有する。汚泥供給装置40は、仮焼炉14の上半分のいずれかの箇所に設けられた供給口から、仮焼炉14内に汚泥を導入してもよい。汚泥供給装置40から仮焼炉14に導入された汚泥は、仮焼炉14内において、落下しつつ高温ガスにより焼却される。
【0029】
汚泥供給装置40は、いかなる種類の汚泥を仮焼炉14に供給してもよい。汚泥供給装置40は、複数種類の汚泥が混合された汚泥を仮焼炉14に供給してもよい。汚泥供給装置40によって供給される汚泥は、水分が多い未消化汚泥と、水分が少ない消化汚泥とを含んでもよい。一例では、未消化汚泥の含水率は83%~85%であり、消化汚泥の含水率は、78~79%であり、又は78%よりも小さい。汚泥供給装置40によって供給される汚泥は、臭気が強い汚泥を含んでもよい。有機汚泥(有機性汚泥)の臭気は強い傾向がある。有機汚泥の具体例としては、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥等が挙げられる。
【0030】
図2には、汚泥供給装置40の一例が模式的に示されている。図2に示される汚泥供給装置40では、外部への臭気の漏れを防ぐため、汚泥が密閉された空間に収容され、密閉された状態で汚泥が仮焼炉14まで輸送される。汚泥供給装置40は、例えば、密閉設備42と、タンク44と、スクリューフィーダ46と、注液部48と、ホッパ49と、ポンプ圧送部50と、供給配管52と、を有する。
【0031】
密閉設備42は、汚泥の臭気の漏れを防ぐように、密閉された空間を形成する設備である。密閉設備42は、タンク44、スクリューフィーダ46、注液部48の一部、ホッパ49、ポンプ圧送部50、及び供給配管52の一部を収容する。密閉設備42の1つの側壁には、シャッターにより開閉可能な搬入口が設けられてもよい。その搬入口からトラック等を用いて、種々の汚泥がタンク44内に供給されてもよい。
【0032】
タンク44に収容されている汚泥は、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥から成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。タンク44に収容されている汚泥の含水率は、80%以下であってもよい。一例では、タンク44に収容されている汚泥の含水率の上限値は、78%、76%、又は75%である。タンク44内の汚泥の含水率は、汚泥のサンプルを40℃の炉内で24時間乾燥させ、乾燥前後のサンプルの重量に基づき以下の式(1)で算出することができる。
含水率(%)=(乾燥前重量-乾燥後重量)/乾燥前重量×100 (1)
【0033】
スクリューフィーダ46は、タンク44内の汚泥を下流に向けて送り出す装置である。スクリューフィーダ46から送り出された汚泥は、ホッパ49まで搬送される。本開示は、搬送される汚泥の流れを基準に「上流」及び「下流」の用語を使用する。すなわち、汚泥は上流から下流に向けて搬送される。スクリューフィーダ46とポンプ圧送部50との間には、他のホッパ、及び、他のフィーダが設けられてもよい。注液部48は、汚泥の含水率を上昇させるように、スクリューフィーダ46によって送り出されている汚泥に対して液体を供給する。
【0034】
ホッパ49(収容部)は、スクリューフィーダ46から送り出された汚泥を受け入れて、その汚泥を一時的に収容する。ホッパ49は、上記スクリューフィーダ46よりも下流の領域に配置されている。ホッパ49は、汚泥を収容するための空間(以下、「収容空間S」という。)を形成する。ホッパ49は、例えば、底壁と側壁とを含み、上端が開放された収容空間Sを形成する。
【0035】
ポンプ圧送部50は、ピストンの往復移動によって、ホッパ49から汚泥を吸引して、仮焼炉14に向けて汚泥を圧送するピストンポンプである。ポンプ圧送部50と仮焼炉14との間は、供給配管52によって接続されている。供給配管52では、汚泥の臭気が外部に漏れないように、その管内が密閉されている。ポンプ圧送部50から圧送される汚泥は、供給配管52を通して仮焼炉14の内部に導かれる。
【0036】
製造システム1(汚泥供給装置40)の稼働開始後に、ポンプ圧送部50は、汚泥を供給配管52の一方の端部52aから管内に汚泥を徐々に送り出す。これにより、供給配管52内において汚泥が充填される。汚泥が管内に充填された状態で、ポンプ圧送部50が、ある量の汚泥を端部52aから供給配管52内に汚泥を更に送り出すと、供給配管52の仮焼炉14に接続されている他方の端部52bから、端部52b及び端部52bの近傍に位置していた汚泥が仮焼炉14内に導入され得る。ポンプ圧送部50は、ある量の汚泥を供給配管52内に送り出して、供給配管52内の汚泥の一部を仮焼炉14内に導入する動作(ピストンの往復移動)を繰り返し実行する。
【0037】
図3には、ポンプ圧送部50の一例が模式的に示されている。ポンプ圧送部50は、ポンプ部60と、切替部70と、開閉バルブ78とを有する。ポンプ部60は、ホッパ49内の汚泥を吸引して、吸引した汚泥を送り出す機能を有する。ポンプ部60は、2系統の(1組の)ピストン機構を有してもよい。ポンプ部60は、例えば、容器62A、ピストン64A、ピストン駆動部66A、及び位置センサ68A,69Aと、容器62B、ピストン64B、ピストン駆動部66B、及び位置センサ68B,69Bと、を含む。
【0038】
容器62Aは、その内部に汚泥を収容することが可能となるように構成されている。容器62Aは、一方向に沿って延びるように筒状に形成されている。以下、容器62Aの延在方向を「方向D」と表記する。容器62Aの方向Dにおける一端は、開口されており、ホッパ49の1つの側壁に接続されている。ホッパ49内の汚泥は、容器62Aの方向Dにおける一端から、容器62A内に導入され得る。
【0039】
ピストン64Aは、容器62A内に設けられており、容器62A内において、ホッパ49内の収容空間Sと接続される吸引空間を形成する。ピストン64Aの方向Dにおける位置によって、容器62Aとピストン64Aとによって区画される上記吸引空間の容積が変化する。ピストン64Aは、容器62Aの方向D2における断面を塞ぐことが可能な形状を有する。ピストン64Aは、方向Dに沿って延びるピストンロッドを介してピストン駆動部66Aに接続されていてもよい。
【0040】
ピストン駆動部66Aは、制御装置90からの動作指示に基づいて、ピストン64Aを方向Dに沿って往復移動させるように構成された駆動部である。ピストン駆動部66Aは、例えば、油圧シリンダである。ピストン駆動部66Aは、方向Dにおいて、所定の後退位置P1と所定の前進位置P2との間でピストン64Aを往復移動させてもよい。方向Dにおいて、ホッパ49、前進位置P2、及び後退位置P1が、この順に並ぶ。本開示では、後退位置P1(第1位置)と前進位置P2(第2位置)との間を「1ストローク」と定義する。1ストロークの距離は、0.5m~2.0m程度であってもよい。
【0041】
本開示では、ピストンを後退位置P1から前進位置P2まで移動させることを「前進」と称し、ピストンを前進位置P2から後退位置P1まで移動させることを「後退」と称する。前進位置P2から後退位置P1に向かってピストン64Aが後退していくことで、容器62A内の吸引領域の容積が増加していき、ホッパ49の収容空間Sから汚泥が容器62A内に吸引されていく。後退位置P1から前進位置P2に向かってピストン64Aが前進していくことで、容器62A内の吸引領域の容積が減少していき、容器62A内から汚泥が押し出される。
【0042】
位置センサ68Aは、後退位置P1にピストン64Aが達したことを検知(感知)するセンサである。位置センサ68Aは、例えば、前進位置P2から後退位置P1に向かってピストン64Aが後退する際に、後退位置P1にピストン64Aが到達したときに、ピストン64Aの到達を示す信号を生成する。位置センサ68Aは、ピストン64Aの後退位置P1への到達を検知できれば、いずれの方式のセンサであってもよく、いずれの位置に配置されてもよい。位置センサ68Aは、ピストン64Aの後退位置P1への到達を直接検知してもよく、ピストン64Aに接続された部材(例えば、上記ピストンロッド)の一部の到達を検知することで、ピストン64Aの後退位置P1への到達を検知してもよい。
【0043】
位置センサ69Aは、前進位置P2にピストン64Aが達したことを検知(感知)するセンサである。位置センサ69Aは、例えば、後退位置P1から前進位置P2に向かってピストン64Aが前進する際に、前進位置P2にピストン64Aが到達したときに、ピストン64Aの到達を示す信号を生成する。位置センサ69Aは、ピストン64Aの前進位置P2への到達を検知できれば、いずれの方式のセンサであってもよく、いずれの位置に配置されてもよい。位置センサ69Aは、ピストン64Aの前進位置P2への到達を直接検知してもよく、ピストン64Aに接続された部材の一部の到達を検知することで、ピストン64Aの前進位置P2への到達を検知してもよい。
【0044】
容器62Bは、容器62Aと同様の構成及び同様の機能を有する。ピストン64Bは、ピストン64Aと同様の構成及び同様の機能を有する。ピストン駆動部66Bは、ピストン駆動部66Aと同様の構成及び同様の機能を有する。位置センサ68B,69Bは、位置センサ68A,69Aとそれぞれ同様の機能を有する。ピストン駆動部66Bは、ピストン64Aの後退によって容器62A内に汚泥が吸引されている最中には、ピストン64Bを後退位置P1から前進位置P2に向かって前進させる。ピストン駆動部66Bは、ピストン64Aの前進によって容器62Aから汚泥が送出されている最中には、ピストン64Bを前進位置P2から後退位置P1に向かって後退させる。
【0045】
切替部70は、ポンプ圧送部50からの圧送の状態を、第1状態と第2状態との間で切り替える。第1状態は、容器62Aから供給配管52への汚泥の送出が可能であり、且つ、ホッパ49の収容空間Sから容器62Bへの汚泥の吸引が可能な状態である。第1状態では、容器62Bから供給配管52への汚泥の送出ができず、且つ、ホッパ49の収容空間Sから容器62Aへの汚泥の吸引ができない。
【0046】
第2状態は、容器62Bから供給配管52への汚泥の送出が可能であり、且つ、ホッパ49の収容空間Sから容器62Aへの汚泥の吸引が可能な状態である。第2状態では、容器62Aから供給配管52への汚泥の送出ができず、且つ、ホッパ49の収容空間Sから容器62Bへの汚泥の吸引ができない。切替部70は、例えば、接続管72と、切替駆動部74とを有する。
【0047】
接続管72は、容器62Aの開放された端部と供給配管52の端部52aとの間、及び、容器62Bの開放された端部と供給配管52の端部52aとの間それぞれを、異なるタイミングで接続する配管である。接続管72は、その端部72aの接続先を、容器62Aの端部又は容器62Bの端部に切り替えることが可能となるように設けられている。接続管72の端部72aと反対側の端部72bは、端部72aの接続先に依らずに、供給配管52の端部52aに接続されている。接続管72の端部72aが容器62Aの端部と接続されることで上記第1状態となり、端部72aが容器62Bの端部と接続されることで上記第2状態となる。
【0048】
切替駆動部74は、制御装置90からの動作指示に基づいて、容器62Aの端部と供給配管52の端部52aとの間が接続される第1状態と、容器62Bの端部と供給配管52の端部52aとの間が接続される第2状態とを切り替えるように、接続管72を駆動する。容器62Aの端部と供給配管52の端部52aとの間が接続管72を介して接続された状態では、ホッパ49内の収容空間Sと容器62B内の空間(上記吸引空間)とが接続されている。容器62Bの端部と供給配管52の端部52aとの間が接続管72を介して接続された状態では、収容空間Sと容器62A内の空間(上記吸引空間)とが接続されている。
【0049】
開閉バルブ78は、制御装置90からの動作指示に基づいて、供給配管52内の流路の開閉状態を切り替えるバルブである。開閉バルブ78は、供給配管52において、ホッパ49に接続される端部52aの近傍に設けられていてもよい。開閉バルブ78は、制御装置90からの動作指示に基づいて、供給配管52内の流路を閉状態から開状態に切り替える。開閉バルブ78は、制御装置90からの動作指示に基づいて、供給配管52内の流路を開状態から閉状態に切り替える。開閉バルブ78が開状態であるときに、供給配管52内(より詳細には、供給配管52のうちの開閉バルブ78よりも下流部分)に汚泥を導入することが可能であり、供給配管52から仮焼炉14内に汚泥が供給される。開閉バルブ78は、供給配管52内の開閉状態の切替が可能であれば、どのような種類のバルブであってもよい。
【0050】
図1に示されるように、セメントクリンカ製造装置2は、取得装置82を備えてもよい。取得装置82は、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況を示す情報(以下、「加熱情報」という。)を取得する装置である。取得装置82は、取得した加熱情報を制御装置90に出力する。取得装置82は、例えば、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況を示す温度を計測する。取得装置82は、仮焼炉14の温度を計測してもよい。仮焼炉14の温度は、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況によって変動する。取得装置82は、仮焼炉14の外表面から放射される赤外線等を検出することで、その外表面の温度を計測してもよい。
【0051】
図2に示されるように、セメントクリンカ製造装置2は、圧力計84を備えてもよい。圧力計84は、供給配管52内の圧力を計測する。圧力計84は、供給配管52内の圧力を示す情報(以下、「圧力情報」という。)を制御装置90に出力する。供給配管52内に充填されている汚泥の含水率によって、供給配管52内の圧力が変動し得る。供給配管52内の汚泥の含水率が低くなると、供給配管52内の圧力が高くなる傾向があり、供給配管52内の汚泥の含水率が高くなると、供給配管52内の圧力が低くなる傾向がある。
【0052】
制御装置90は、少なくとも汚泥供給装置40を制御するコンピュータである。制御装置90は、セメントクリンカ製造装置2の全体を制御するコンピュータであってもよい。以下では、制御装置90が、セメントクリンカ製造装置2の全体を制御するコンピュータである場合を例示する。制御装置90は、図4に示されるように、回路91を有する。回路91は、少なくとも1つのプロセッサ92と、メモリ93と、ストレージ94と、入出力ポート95と、タイマ96とを含む。ストレージ94は、セメントクリンカ製造装置2に含まれる各要素を制御するためのプログラムを記録する。ストレージ94は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0053】
メモリ93は、ストレージ94からロードされたプログラム、プロセッサ92の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ92は、メモリ93と協働してプログラムを実行することで、セメントクリンカ製造装置2に含まれる各要素に対する制御を実行する。入出力ポート95は、プロセッサ92からの指令に応じ、ピストン駆動部66A,66B、位置センサ68A,68B,69A,69B、切替駆動部74、及び開閉バルブ78等の間で電気信号の入出力を行う。タイマ96は、プロセッサ92からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。
【0054】
制御装置90には、入出力デバイス98が接続されてもよい。入出力デバイス98は、作業員等のオペレータからの指示を制御装置90に入力すると共に、制御装置90からの情報をオペレータに報知するための装置である。入出力デバイス98は、入力デバイスとして、キーボード、操作パネル、又はマウスを含んでいてもよく、出力デバイスとして、モニタ(例えば液晶ディスプレイ)を含んでいてもよい。入出力デバイス98は、入力デバイス及び出力デバイスが一体化されたタッチパネルであってもよい。制御装置90及び入出力デバイス98が一体化されていてもよい。
【0055】
制御装置90は、仮焼炉14に供給される微粉炭の供給量(単位時間あたりの供給量)を、仮焼炉14の温度の計測結果に応じて調節してもよい。制御装置90は、仮焼炉14の温度が所定の目標範囲に含まれるように(目標温度に近づくように)、微粉炭の供給量を調節してもよい。制御装置90は、ポンプ圧送部50から供給される汚泥の供給量(単位時間あたりの供給量)が、所定の目標範囲に含まれるようにポンプ圧送部50を制御してもよい。一例では、制御装置90は、ピストン64A及びピストン64Bの往復動作による汚泥の吸引と汚泥の送出とを含む動作が所定の周期で繰り返されるようにポンプ圧送部50を制御する。
【0056】
制御装置90は、ポンプ圧送部50の動作モードを切り替えるように構成されていてもよい。制御装置90は、後退位置P1と前進位置P2との間の1ストロークにおいてピストン64A,64Bを停止させることなく動作させる動作モード(以下、「第1動作モード」という。)でポンプ圧送部50を制御してもよい。制御装置90は、1ストロークにおいてピストン64A,64Bを一旦停止させて動作させる動作モード(以下、「第2動作モード」という。)でポンプ圧送部50を制御してもよい。
【0057】
第1動作モードでは、制御装置90は、ピストン64Aを後退位置P1と前進位置P2との間で停止させずに後退位置P1から前進位置P2まで移動させるように、ピストン駆動部66Aによりピストン64Aを駆動させる。第1動作モードでは、制御装置90は、ピストン64Bについても、ピストン64Aの駆動と同様にピストン駆動部66Bにより駆動させる。
【0058】
第2動作モードでは、制御装置90は、ピストン64Aを後退位置P1から、後退位置P1と前進位置P2との間の中間位置Pmまで移動させて、その中間位置Pmで停止させるようにピストン駆動部66Aを制御する。その後、制御装置90は、ピストン64Aを中間位置Pmから前進位置P2まで移動させるように、ピストン駆動部66Aを制御する。第2動作モードでは、制御装置90は、ピストン64Bについても、ピストン64Aに対する制御と同様にピストン駆動部66Bを制御する。
【0059】
供給配管52から仮焼炉14への汚泥の供給では、ピストン64A,64Bが前進を開始してから停止するまでの間の移動距離に応じた量の汚泥が仮焼炉14内へ投入され得る。第2動作モードでは、中間位置Pmでピストンが一度停止するので、ピストン64A,64Bが前進を開始して中間位置Pmで停止するまでの間の移動距離に応じた量の汚泥が仮焼炉14内へ投入され得る。その後、ピストン64A,64Bが、前進を再開してから前進位置P2で停止するまでの間の移動距離に応じた量の汚泥が仮焼炉14へ投入され得る。そのため、第2動作モードにおいて、ピストンの移動から停止までの1回の動作に伴う汚泥の供給量(1回の供給動作で投入される汚泥の量)が、第1動作モードでの1回の動作に伴う供給量よりも小さくなり得る。
【0060】
制御装置90は、作業員等のオペレータの指示がない限り、第1動作モードでポンプ圧送部50を制御してもよい。制御装置90は、オペレータからの切替指示(ユーザ指示)に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。仮焼炉14へ送られる汚泥の含水率が低いと、仮焼炉14の通風口14aを塞いでしまう場合がある。汚泥の含水率が低いと、以下の現象が生じると考えられる。含水率が低くなり供給配管52内の汚泥が硬くなると、1回のピストンの往復動作によって汚泥が仮焼炉14内に押し出されない場合がある。この場合、複数回のピストンの往復動作を実行した後に、仮焼炉14内に多くの汚泥が塊となって一気に押し出される可能性がある。多くの汚泥が塊となって仮焼炉14内に導入されると、汚泥の一部が焼却されずに、通風口14aの一部が詰まってしまうおそれがある。仮焼炉14の通風口14aを汚泥が塞いでしまうと、ライジングダクト16からの高温ガスの通風障害が発生し、仮焼炉14の温度が低下してしまうトラブルが発生し得る。
【0061】
オペレータは、通風口14aが塞がれていると推定した場合、又は汚泥の含水率が低下していると推定した場合に、ポンプ圧送部50の動作モードの切替を行ってもよい。オペレータは、取得装置82による温度の計測結果の推移、又は、圧力計84による計測結果の推移を確認しながら、第2動作モードでの制御が必要か否かを判断してもよい。オペレータは、切替が必要であると判断したときに、入出力デバイス98を介して、制御装置90に切替指示を入力してもよい。第2動作モードへの切替後、制御装置90は、オペレータの指示に基づいて、第2動作モードから第1動作モードに切り替えてもよい。
【0062】
[セメントクリンカの製造方法]
上述の製造システム1を用いて、セメント原料からセメントクリンカを製造することができる。製造システム1におけるセメントクリンカの製造方法は、予熱仮焼工程(加熱工程)と、焼成工程と、冷却工程と、汚泥供給工程と、を含む。以上の工程により生成されたセメントクリンカが粉砕等を含む仕上げ工程を経ることで、セメントが製造される。
【0063】
予熱仮焼工程では、プレヒータ10によってセメント原料の予熱及び仮焼が行われる。予熱仮焼工程では、微粉炭及び汚泥が供給されている仮焼炉14において、セメント原料の仮焼(加熱)が行われてもよい。焼成工程では、ロータリキルン30によってセメント原料の焼成が行われ、その結果、セメントクリンカが生成される。焼成工程では、ロータリキルン30において、予熱及び仮焼された後のセメント原料が焼成(加熱)される。冷却工程では、ロータリキルン30で生成されたセメントクリンカが、クリンカクーラ38によって冷却される。
【0064】
汚泥供給工程は、予熱仮焼工程、焼成工程、及び冷却工程が実行されている期間の少なくとも一部と重複する期間において実行される。汚泥供給工程(汚泥供給方法)では、汚泥供給装置40によって汚泥が仮焼炉14に供給される。汚泥供給工程は、例えば、受入工程と、送出工程と、注液工程と、圧送工程と、を含む。受入工程では、タンク44内に含水率が80%以下である汚泥が供給されて、タンク44内に当該汚泥が収容される。
【0065】
送出工程では、スクリューフィーダ46によって、タンク44内の汚泥が、ホッパ49及びポンプ圧送部50を含む下流領域に向けて送り出される。注液工程では、スクリューフィーダ46によって送り出されている汚泥に対して、液体が供給される。送出工程及び注液工程を経ることで、ホッパ49内に汚泥が収容される。
【0066】
圧送工程では、ポンプ圧送部50によって、ホッパ49内の汚泥が供給配管52を通して仮焼炉14内に向けて圧送される。供給配管52内が汚泥で充填されている状態で、圧送工程においてポンプ圧送部50から供給配管52内に汚泥が導入されることで、供給配管52内に充填されていた汚泥の一部が仮焼炉14内に導入される。圧送工程は、吸引工程と、供給工程と、を含む。
【0067】
吸引工程では、ピストン駆動部66Aによってピストン64Aが前進位置P2から後退位置P1に移動することで、ホッパ49から容器62A内に汚泥が吸引される。吸引工程では、ピストン駆動部66Bによってピストン64Bが前進位置P2から後退位置P1に移動することで、ホッパ49から容器62B内に汚泥が吸引される。容器62A内への汚泥の吸引と容器62B内への汚泥の吸引とは、交互に実行される。
【0068】
供給工程では、容器62A内に汚泥が充填されている状態で、ピストン駆動部66Aによってピストン64Aが後退位置P1から前進位置P2に移動することで、汚泥が供給配管52内に送り出される。供給工程では、容器62B内に汚泥が充填されている状態で、ピストン駆動部66Bによってピストン64Bが後退位置P1から前進位置P2に移動することで、汚泥が供給配管52内に送り出される。容器62Aからの汚泥の送り出しと容器62Bからの汚泥の送り出しとは、交互に実行される。
【0069】
供給工程の実行内容の詳細は、ポンプ圧送部50の動作モードの設定(切替結果)によって変化する。第1動作モードに設定されている場合、供給工程では、ピストン64A,64Bが、後退位置P1と前進位置P2との間で停止することなく、前進位置P2まで前進するようにピストン駆動部66A,66Bが制御される。第2動作モードに設定されている場合、供給工程では、ピストン64A,64Bが、後退位置P1から中間位置Pmまで移動して中間位置Pmで停止した後に、中間位置Pmから前進位置P2まで前進するようにピストン駆動部66A,66Bが制御される。
【0070】
続いて、図5図10を用いて、第2動作モードでの制御装置90による制御方法の一例を説明する。図5は、ポンプ圧送部50の動作モードが第2動作モードに切り替えられている場合に、ピストン64Aを1ストロークの前進させる際に実行される一連の処理を示すフローチャートである。この一連の処理は、製造システム1の稼働開始後、供給配管52内に汚泥が充填されている状態で実行される。この一連の処理の初期状態では、ピストン64Aが後退位置P1に位置し、ピストン64Bが前進位置P2に位置している。また、開閉バルブ78は開状態であり、容器62Aと供給配管52とが接続管72を介して接続されている。
【0071】
制御装置90は、最初にステップS01を実行する。ステップS01では、制御装置90が、ピストン64Aの前進を開始するようにピストン駆動部66Aを制御し、ピストン64Bの後退を開始するようにピストン駆動部66Bを制御する。図6(a)には、ステップS01が開始された後の様子が模式的に示されている。ステップS01の実行により、容器62A内の汚泥が接続管72を介して供給配管52に導入されるのが開始され、ホッパ49の収容空間Sから容器62B内への汚泥の吸引が開始される。
【0072】
次に、制御装置90は、ステップS02,S03を実行する。ステップS02では、制御装置90が、ステップS01の実行から所定の設定時間(所定時間)が経過するまで待機する。ステップS03では、制御装置90が、ピストン64Aの前進を中断するようにピストン駆動部66Aを制御し、ピストン64Bの後退を中断するようにピストン駆動部66Bを制御する。上記設定時間は、オペレータにより予め設定されていてもよい。上記設定時間は、移動を中断させた際にピストン64A及びピストン64Bが、後退位置P1と前進位置P2との間で停止するように設定されている。
【0073】
図6(b)には、ステップS03の実行後の様子が模式的に示されている。中間位置Pmは、後退位置P1からのピストン64Aの移動開始のタイミングから上記設定時間が経過してピストン64Aを停止させたときに、ピストン64Aが停止する位置に相当する。ステップS03の実行後に、ピストン64Aが停止する位置と、ピストン64Bが停止する位置とが、互いに略一致していてもよく、互いに異なっていてもよい。ステップS03の実行と略同一のタイミングで、制御装置90は、開状態から閉状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御してもよい。
【0074】
次に、制御装置90は、ステップS04を実行する。ステップS04では、制御装置90が、ステップS03の実行後から所定の停止時間が経過するまで待機する。上記停止時間は、オペレータにより予め設定されていてもよい。停止時間は、供給配管52の端部52bから仮焼炉14に導入され得る汚泥の塊が途切れる程度の時間に設定されてもよい。停止時間は、第1動作モードでピストンを1ストローク移動させる時間の1/4~3/4程度であってもよく、一例では、1.0秒~3.0秒程度である。
【0075】
次に、制御装置90は、ステップS05を実行する。ステップS05では、制御装置90が、ピストン64Aの前進を再開するようにピストン駆動部66Aを制御し、ピストン64Bの後退を再開するようにピストン駆動部66Bを制御する。ステップS05の実行と略同一のタイミングで、又は、ステップS05の実行前に、制御装置90は、閉状態から開状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御してもよい。図7(a)には、ピストン64A,64Bの移動を再開させた後の様子が模式的に示されている。
【0076】
次に、制御装置90は、ステップS06,S07を実行する。ステップS06では、制御装置90が、ピストン64Aが前進位置P2に到達するまで待機する。制御装置90は、ピストン64Aの前進位置P2への到達を示す信号を位置センサ69Aから受けるまで待機してもよい。ステップS07では、制御装置90が、ピストン64Aの前進を停止するようにピストン駆動部66Aを制御する。以上のステップにより、ピストン64Aが中間位置Pmから前進位置P2まで移動して、容器62A内の汚泥が、接続管72を介して供給配管52内に更に導入される。
【0077】
ステップS06,S07の実行と並行して、制御装置90は、ステップS08,S09を実行する。ステップS08では、例えば、制御装置90が、ピストン64Bが後退位置P1に到達するまで待機する。制御装置90は、ピストン64Bの後退位置P1への到達を示す信号を位置センサ68Bから受けるまで待機してもよい。ステップS09では、制御装置90が、ピストン64Bの後退を停止するようにピストン駆動部66Bを制御する。以上のステップにより、ピストン64Bが後退位置P1まで移動して、容器62B内に汚泥が充填される。
【0078】
次に、制御装置90は、ステップS11,S12,S13を実行する。ステップS11では、制御装置90が、開状態から閉状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御する。ステップS12では、制御装置90が、容器62Aと供給配管52とが接続された第1状態から、接続管72を介して容器62Bと供給配管52とが接続された第2状態に切り替わるように、切替部70の切替駆動部74を制御する。図7(b)には、接続管72による接続状態の切替の様子が例示されている。ステップS13では、制御装置90が、閉状態から開状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御する。
【0079】
図8は、ポンプ圧送部50の動作モードが第2動作モードに切り替えられている場合に、ピストン64Aを1ストローク分後退させる際に実行される一連の処理を示すフローチャートである。図8に示される一連の処理は、上述のステップS13の実行が完了した後に続けて実行される。
【0080】
ステップS13の実行後に、制御装置90は、ステップS21を実行する。ステップS21では、制御装置90が、ピストン64Aの後退を開始するようにピストン駆動部66Aを制御し、ピストン64Bの前進を開始するようにピストン駆動部66Bを制御する。図9(a)には、ステップS21が開始された後の様子が模式的に示されている。ステップS21の実行により、ホッパ49の収容空間Sから容器62A内への汚泥の吸引が開始され、容器62B内の汚泥が接続管72を介して供給配管52に導入されるのが開始される。
【0081】
次に、制御装置90は、ステップS22,S23を実行する。ステップS22では、制御装置90が、ステップS21の実行から所定の設定時間が経過するまで待機する。ステップS23では、制御装置90が、ピストン64Aの後退を中断するようにピストン駆動部66Aを制御し、ピストン64Bの前進を中断するようにピストン駆動部66Bを制御する。上記設定時間は、上述したステップS02で用いる設定時間と同じ時間に予め設定されていてもよい。
【0082】
図9(b)には、ステップS23の実行後の様子が模式的に示されている。中間位置Pmは、後退位置P1からのピストン64Bの移動開始のタイミングから上記設定時間が経過してピストン64Bを停止させたときに、ピストン64Bが停止する位置に相当する。ステップS23の実行後にピストン64Bが停止する位置と、上述のステップS03の実行後にピストン64Aが停止する位置とが、互いに略一致していてもよく、互いに異なっていてもよい。ステップS23の実行と略同一のタイミングで、制御装置90は、開状態から閉状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御してもよい。
【0083】
次に、制御装置90は、ステップS24を実行する。ステップS24では、制御装置90が、ステップS23の実行後から所定の停止時間が経過するまで待機する。上記停止時間は、上述したステップS04で用いる停止時間と同じ時間に予め設定されていてもよい。
【0084】
次に、制御装置90は、ステップS25を実行する。ステップS25では、制御装置90が、ピストン64Aの後退を再開するようにピストン駆動部66Aを制御し、ピストン64Bの前進を再開するようにピストン駆動部66Bを制御する。ステップS25の実行と略同一のタイミングで、又は、ステップS25の実行前に、制御装置90は、閉状態から開状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御してもよい。図10(a)には、ピストン64A,64Bの移動を再開させた後の様子が模式的に示されている。
【0085】
次に、制御装置90は、ステップS26,S27を実行する。ステップS26では、制御装置90が、ピストン64Aが後退位置P1に到達するまで待機する。制御装置90は、ピストン64Aの後退位置P1への到達を示す信号を位置センサ68Aから受けるまで待機してもよい。ステップS27では、制御装置90が、ピストン64Aの後退を停止するようにピストン駆動部66Aを制御する。以上のステップにより、ピストン64Aが後退位置P1まで移動して、容器62A内に汚泥が充填される。
【0086】
ステップS26,S27の実行と並行して、制御装置90は、ステップS28,S29を実行する。ステップS28では、例えば、制御装置90が、ピストン64Bが前進位置P2に到達するまで待機する。制御装置90は、ピストン64Bの前進位置P2への到達を示す信号を位置センサ69Bから受けるまで待機してもよい。ステップS29では、制御装置90が、ピストン64Bの前進を停止するようにピストン駆動部66Bを制御する。以上のステップにより、ピストン64Bが中間位置Pmから前進位置P2まで移動して、容器62B内に充填されている汚泥が、接続管72を介して供給配管52内に導入される。
【0087】
次に、制御装置90は、ステップS31,S32,S33を実行する。ステップS31では、制御装置90が、開状態から閉状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御する。ステップS32では、制御装置90が、容器62Bと供給配管52とが接続された第2状態から、接続管72を介して容器62Aと供給配管52とが接続された第1状態に切り替わるように、切替部70の切替駆動部74を制御する。図10(b)には、接続管72による接続状態の切替の様子が例示されている。ステップS33では、制御装置90が、閉状態から開状態に切り替わるように開閉バルブ78を制御する。
【0088】
以上に例示した一連の処理(供給工程)では、制御装置90は、後退位置P1から前進位置P2までピストン64Aを移動させることで、ホッパ49から吸引した汚泥を供給配管52に送り出す供給制御を実行する。制御装置90は、供給制御において、後退位置P1から中間位置Pmまでピストン64Aをピストン駆動部66Aにより移動させることと、中間位置Pmにおいてピストン64Aをピストン駆動部66Aにより停止させることと、中間位置Pmから前進位置P2までピストン64Aをピストン駆動部66Bにより移動させることと、を実行する。制御装置90は、供給制御において、ピストン64Bの動作についても、ピストン64Aと同様の動作が実行されるようにピストン駆動部66Bを制御する。
【0089】
制御装置90は、所定の周期ごとに、ステップS01からステップS13までの一連の処理と、ステップS21からステップS33までの一連の処理とを実行する。これにより、所定の周期ごとに、供給配管52から仮焼炉14に汚泥が供給される。ポンプ圧送部50の動作モードが、中間位置Pmにおいてピストンを停止させない第1動作モードに設定されている場合、制御装置90は、上記一連の処理においてステップS02~S05の実行、及びステップS22~S25の実行が省略された一連の処理を実行する。
【0090】
[変形例]
上述した一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、制御装置90は、一のステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御装置90は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。
【0091】
取得装置82は、仮焼炉14の温度に代えて又は加えて、仮焼炉14で加熱された後のセメント原料の温度を示す情報を、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況を示す加熱情報として取得してもよい。取得装置82は、例えば、サイクロンC4のセメント原料の出口付近において窯尻32に投入される直前のセメント原料の温度を計測してもよい。仮焼炉14で加熱された後のセメント原料の温度は、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況によって変動する。
【0092】
取得装置82は、仮焼炉14の温度に代えて又は加えて、仮焼炉14から排出される排ガスに含まれる所定成分の濃度を示す情報を、上記加熱情報として取得してもよい。取得装置82は、仮焼炉14からの排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を計測してもよい。仮焼炉14からの排ガスに含まれる所定成分(例えば、一酸化炭素)の濃度は、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況によって変動する。
【0093】
制御装置90が、仮焼炉14の温度を目標範囲に維持するように、汚泥以外の微粉炭等のエネルギー源の仮焼炉14への供給量を調節する場合、その供給量が、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況によって変動する。すなわち、仮焼炉14の温度が目標範囲から低下すると微粉炭等の供給量が増加され、仮焼炉14の温度が目標範囲を上回ると微粉炭等の供給量が減少される。制御装置90は、仮焼炉14へのエネルギー源の供給量を示す情報を、上記加熱情報として取得してもよい。
【0094】
上述の例では、オペレータからの切替指示に基づいて、ポンプ圧送部50の動作モードが、第1動作モードから、中間位置Pmでピストンを停止させる第2動作モードに切り替えられるが、動作モードの切替方法は、この例に限られない。制御装置90は、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況を示す上記加熱情報に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。
【0095】
制御装置90は、仮焼炉14の温度、仮焼炉14において加熱された後のセメント原料の温度、仮焼炉14から排出される排ガスに含まれる所定成分の濃度、及び仮焼炉14に供給されるエネルギー源の供給量から成る群から選択される1種以上の情報に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。制御装置90は、いずれかの加熱情報と所定閾値との比較結果に応じて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。
【0096】
一例では、制御装置90は、仮焼炉14の温度又は加熱後のセメント原料の温度が、所定の閾値を下回った場合に、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。制御装置90は、仮焼炉14からの排ガスの一酸化炭素の濃度が、所定の閾値を上回った場合に、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。制御装置90は、仮焼炉14へのエネルギー源(例えば、微粉炭)の供給量が所定の閾値を上回った場合に、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。第2動作モードへの切替後、制御装置90は、いずれかの加熱情報に基づいて、第2動作モードから第1動作モードに切り替えてもよい。
【0097】
制御装置90は、加熱情報に代えて又は加えて、圧力計84によって取得される供給配管52内の圧力を示す上記圧力情報に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。一例では、制御装置90は、供給配管52内の圧力の計測値が、所定の閾値を上回った場合に、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。
【0098】
制御装置90は、第1動作モードでのポンプ圧送部50に対する制御を実行せずに、製造システム1が稼働している間に、第2動作モードでポンプ圧送部50を動作させてもよい。制御装置90は、ピストン64A,64Bを前進位置P2から後退位置P1に後退させる吸引工程において、ピストン64A,64Bを後退位置P1と前進位置P2との間で停止させなくてもよい。
【0099】
図11(a)には、ポンプ圧送部50の別の例が示されている。後退位置P1からの移動の開始タイミングからの設定時間の経過に代えて、中間位置Pmに対応する位置に配置された位置センサ79Aによってピストン64Aの到達が検知(感知)された場合に、ピストン64Aを停止させるようにピストン駆動部66Aを制御してもよい。中間位置Pmは、位置センサ79Aがピストン64Aの到達を検知する位置に略一致してもよい。
【0100】
位置センサ79Aは、例えば、後退位置P1から前進位置P2に向かってピストン64Aが前進する際に、検知可能な位置にピストン64Aが到達したときに、ピストン64Aの到達を示す信号を生成する。位置センサ79Aは、ピストン64Aの到達を検知できれば、いずれの方式のセンサであってもよく、いずれの位置に配置されてもよい。位置センサ79Aは、後退位置P1と前進位置P2との間に配置されて、ピストン64Aの到達を直接検知してもよい。位置センサ79Aは、ピストン64Aに接続された部材(例えば、上記ピストンロッド)の一部の到達を検知することで、ピストン64Aの到達を検知してもよい。制御装置90は、ピストン64Bについても、位置センサによる検知結果に応じて、後退位置P1と前進位置P2との間で停止させてもよい。
【0101】
図11(b)には、第2動作モードでのピストンの駆動方法の別の例が示されている。制御装置90は、ピストン64Aを後退位置P1から前進位置P2に向かって前進させる際に、後退位置P1と前進位置P2との間の2箇所以上の中間位置でそれぞれピストン64Aを停止させてもよい。制御装置90は、ピストン64Bについても、後退位置P1と前進位置P2との間の2箇所以上の中間位置でそれぞれピストン64Aを停止させてもよい。
【0102】
一例では、制御装置90は、後退位置P1から第1中間位置pm1までピストン64Aを移動させて、第1中間位置pm1でピストン64Aを停止させるようにピストン駆動部66Aを制御する。そして、制御装置90は、第1中間位置pm1から第2中間位置pm2までピストン64Aを移動させて、第2中間位置pm2でピストン64Aを停止させるようにピストン駆動部66Aを制御する。その後、制御装置90は、第2中間位置pm2から前進位置P2までピストン64Aを移動させるようにピストン駆動部66Aを制御する。
【0103】
ポンプ圧送部50は、2系統のピストン機構に代えて、1系統(単一の)ピストン機構を有してもよい。汚泥供給装置40は、仮焼炉14に代えて又は加えて、ロータリキルン30(加熱部)に対して汚泥を供給してもよい。
【0104】
[実施形態の効果]
以上に説明したセメントクリンカの製造方法では、後退位置P1から前進位置P2までピストン64A,64Bを移動させる間に、中間位置Pmでピストン64A,64Bを停止させる。これにより、前進位置P2に向かうピストン64A,64Bの連続した移動に伴って供給配管52内に送り出される汚泥の量が少なくなる。そのため、汚泥の含水率が低くなり、ピストン64A,64Bの複数回の往復動作によって汚泥の塊が仮焼炉14に導入される場合でも、仮焼炉14に導入される汚泥の塊の量が少なくなる。その結果、汚泥が焼却されないことに起因した仮焼炉14での加熱への影響(例えば、高温ガスの通風障害による仮焼炉14の温度低下)を抑制できる。従って、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【0105】
以上に説明した上記製造方法は、供給工程において、後退位置P1からのピストン64A,64Bの移動開始のタイミングから所定の設定時間が経過したときにピストン64A,64Bを停止させることで、中間位置Pmにピストン64A,64Bを停止させてもよい。この場合、中間位置Pmにピストン64A,64Bを停止させるために位置センサ等を設置する必要がない。従って、ポンプ圧送部50の装置構成の簡素化に有用である。
【0106】
以上に説明した上記製造方法は、供給工程において、中間位置Pmに対応する位置に配置されたセンサによってピストン64A,64Bの到達が検知されたときにピストン64A,64Bを停止させることで、中間位置Pmにピストン64A,64Bを停止させてもよい。この場合、ピストン64A,64Bの往復動作を繰り返し実行する際に、ピストン64A,64Bを後退位置P1と前進位置P2との間の目標位置に安定して停止させることができ、汚泥の塊の量が多くなってしまう可能性が更に低減される。従って、セメントクリンカの品質の安定化に更に有用である。
【0107】
以上に説明した上記製造方法は、動作モードの切替に関するユーザ指示に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。この場合、汚泥に起因した仮焼炉14への上記影響がないと判断される期間では、第1動作モードでピストン64A,64Bを動作させることができる。従って、ピストン64A,64Bの動作の簡素化とセメントクリンカの品質の安定化との両立に有用である。
【0108】
以上に説明した上記製造方法は、供給配管内の圧力を示す情報に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。供給配管52内の圧力から、供給配管52内の汚泥の含水率を推定することができる。そのため、上記方法では、供給配管52内の汚泥の含水率が低くなったときに、第2動作モードに切り替えることができる。その結果、汚泥の含水率が高く、汚泥に起因した仮焼炉14での加熱への上記影響がないと判断される期間では、第1動作モードでピストン64A,64Bを動作させることができる。従って、ピストン64A,64Bの動作の簡素化とセメントクリンカの品質の安定化との両立に有用である。
【0109】
以上に説明した上記製造方法は、仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況を示す情報に基づいて、第1動作モードから第2動作モードに切り替えてもよい。セメント原料の加熱状況から、既に仮焼炉14に導入された汚泥に起因した仮焼炉14での加熱への上記影響を推定することができる。そのため、上記方法では、汚泥に起因した仮焼炉14での加熱への上記影響があるときに、その影響を低減又は解消するために第2動作モードに切り替えることができる。その結果、汚泥に起因した仮焼炉14での加熱への影響がないと推定される期間では、第1動作モードでピストン64A,64Bを動作させることができる。従って、ピストン64A,64Bの動作の簡素化とセメントクリンカの品質の安定化との両立に有用である。
【0110】
仮焼炉14でのセメント原料の加熱状況を示す情報(加熱情報)は、仮焼炉14の温度、仮焼炉14において加熱された後のセメント原料の温度、仮焼炉14から排出される排ガスに含まれる所定成分の濃度、及び仮焼炉14に供給されるエネルギー源の供給量から成る群から選択される1種以上の情報を含んでもよい。これらの情報は、仮焼炉14に既に導入された汚泥に起因した仮焼炉14での加熱への上記影響によって変動する。従って、汚泥による仮焼炉14への影響を把握したうえで、ピストン64A,64Bの動作を制御することが可能となる。
【0111】
以上に説明した上記製造方法は、タンク44内に収容された汚泥をスクリューフィーダ46によってホッパ49を含む下流領域に向けて送り出す送出工程を更に含んでもよい。タンク44内に収容されている汚泥の含水率は80%以下であってもよい。タンク44に収容されている汚泥の含水率が低いと、ピストン64A,64Bの1回の往復動作によって汚泥が仮焼炉14に導入されずに、ピストン64A,64Bの複数回の往復動作によって多くの量の汚泥の塊が仮焼炉14に導入される現象が起こる可能性が高くなる。上記製造方法では、ピストン64A,64Bが中間位置Pmで一旦停止し、仮焼炉14に導入される汚泥の塊の量が少なくなるので、汚泥が焼却されないことに起因した仮焼炉14での加熱への影響を抑制できる。従って、セメントクリンカの品質の安定化に有用である。
【符号の説明】
【0112】
1…セメントクリンカの製造システム、2…セメントクリンカ製造装置、14…仮焼炉、40…汚泥供給装置、44…タンク、46…スクリューフィーダ、49…ホッパ、50…ポンプ圧送部、52…供給配管、64A,64B…ピストン、P1…後退位置、P2…前進位置、Pm…中間位置、79A…位置センサ、90…制御装置。
図1
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図11